説明

電子機器ユニット

【課題】開口を通じて侵入した異物による不具合発生を効果的に防止でき得る電子機器ユニットを提供する。
【解決手段】電子機器ユニットであるインバータは、略箱状のケース12と当該ケース12の内部に設けられた端子台20などを備えている。ケース12のうち端子台20と対向する位置には作業用の開口であるサービスホール14が設けられている。端子台20のうちサービスホール14より傾斜方向下側の位置からは、当該サービスホール14から侵入した異物50の端子台20からの落下を防止する端子台側落下防止壁24が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部へのアクセスを許容する開口が設けられたケースと、前記開口と対向してケース内に設けられた端子台と、をそなえた電子機器ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
車両などに搭載されるインバータなどの電子機器ユニットは、通常、ケースの内部に制御基板などの電子部品が収容されている。かかる電子機器ユニットの中には、ケース内部に収容された端子台へのアクセスを許容する開口、いわゆるサービスホールを、ケースに設けることがある。
【0003】
例えば特許文献1には、ケース内部に収容した付属部品へのアクセスを許容するアクセス開口部をカバーに設けた車両用防塵・防水ケースが開示されている。この防塵・防水ケースでは、アクセス開口部を通じての塵の侵入を防止するために、アクセス開口部を覆うとともに、付属部品にアクセスする際には取り外されるサブカバーが設けられている。かかるケースによれば、電子機器ユニットのケース内部への異物混入をある程度、防止できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−127802号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1記載の技術によれば、サブカバーでアクセス開口部を覆っている間は、異物混入を防止できるものの、サブカバーを取り外してアクセス開口部を外部露出させた際における異物混入は防止できない。このとき混入した導電性の異物が、ケース内部に設けられた制御基板等の電子部品に接触すると短絡による機能不具合が発生したりする。
【0006】
そこで、本発明では、開口を通じて侵入した異物による不具合発生を効果的に防止でき得る電子機器ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の電子機器ユニットは、内部へのアクセスを許容する開口が形成されたケースと、前記開口と対向して設けられた端子台と、を備え、傾斜して設置される電子機器ユニットであって、前記端子台が、前記開口より前記傾斜方向下側の位置から立脚し、前記開口から侵入した異物の端子台からの落下を防止する端子台側落下防止壁が設けられている、ことを特徴とする。
【0008】
好適な態様では、前記ケースは、前記開口の縁周辺からケース内部に向かって延びるケース側落下防止壁が設けられている。他の好適な態様では、前記ケースを傾斜して設置した状態で、前記端子台側侵入防止壁の先端と前記ケース側落下防止壁の先端とを結ぶ線と水平線とが成す角度が90度未満である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、端子台側落下防止壁が設けられているため、開口から侵入した異物が、端子台より奥側に落下することが効果的に防止される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態であるインバータの概略上面図である。
【図2】図1におけるA方向視図である。
【図3】図1における概略B−B断面図である。
【図4】ケース側落下防止壁と端子台側落下防止壁との相対角度関係を示す概略図である。
【図5】ケース側落下防止壁と端子台側落下防止壁との相対角度関係を示す概略図である。
【図6】ケース側落下防止壁と端子台側落下防止壁との相対角度関係を示す概略図である。
【図7】ケース側落下防止壁と端子台側落下防止壁との相対角度関係を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明の実施形態である車載用のインバータ10の概略上面図である。また、図2は、このインバータ10の概略正面図(図1のA方向視図)である。
【0012】
本実施形態のインバータ10は、モータを用いた電気自動車や、モータと内燃機関の両方を用いたハイブリッドカー等に搭載され、直流電流を交流電流に変換する電子機器ユニットである。
【0013】
このインバータ10は、アルミニウムなどからなる略箱状のケース12で覆われており、当該ケース12の内部には、各種電子基板(図示せず)や端子台20などが収容されている。端子台20は、外部部品(例えばモータ・ジェネレータなど)と結線を行うための端子が設置された台であり、ケース12内の上側寄りの位置に固定設置されている。この端子台20より奥側には、半導体素子などの電子部品を電子基板に配置して構成される制御基板や電気回路などが設けられている。
【0014】
インバータ10は、図2に示すように、傾斜した状態で車両内に設置される。ケース12が傾斜して設置されることで、当然ながら、当該ケース12内に固定設置された端子台20等も傾斜した状態となる。
【0015】
ケース12のうち、この端子台20と対向する位置には、作業者による当該端子台20へのアクセスを許容するための開口であるサービスホール14が複数、設けられている。外部部品とインバータ10とを結線する際には、当該サービスホール14から手を差し入れ、端子台20上の端子に、外部部品とインバータ10とを電気的に接続するためのケーブルを接続する。
【0016】
ここで、サービスホール14を介して結線作業を行うのは次の理由による。通常、インバータ10は車両組み立て工程とは、別の工程または別の工場で組み立てられた後、車両組み立て工程に納入され、組み立て作業が行われる。そのため、輸送時等にインバータ10の内部に設けられた各種電子部品への異物の付着を防止するため、インバータ10は箱形のケース12で完全にケーシングされた状態で車両組み立て工程に供給される必要がある。一方で、車両組み立て行程に供給された後は、外部部品と結線を行う必要がある。インバータ10の構成部品をケース12から取り出すことなく、こうした結線作業を行うために、従来から、インバータ10のケース12には結線作業のための開口、すなわち、サービスホール14が設けられている。このサービスホール14は、輸送時などには、カバーに覆われ、異物の混入が防止される。
【0017】
しかしながら、結線等の作業を行う場合、当然のことながら、サービスホール14は開放された状態となる。このとき、当該サービスホール14から、塵埃などの異物がインバータ10内に侵入することがあった。
【0018】
こうしたサービスホール14から侵入した異物が端子台20上に滞留するだけであれば、殆ど問題ない。しかし、既述したように、通常インバータ10は、傾斜して設置されており、当該インバータ10内に設置された端子台20も傾斜した状態となっている。そのため、端子台20上に落下した異物が重力により、当該端子台20上から滑り落ち、端子台20より奥側に落下することがあった。また、サービスホール14から侵入した異物が、そのまま、端子台20の脇をすり抜けて、端子台20より奥側へと落下することがあった。
【0019】
こうした端子台20より奥側に侵入した異物の中には、端子台20より奥側に設置された制御基板などの電子部品に接触することがある。そして、かかる電子部品に接触する異物が導電性を有していた場合には、短絡などを招き、結果として、インバータ10の機能不具合を生じる恐れがあった。
【0020】
そこで、本実施形態では、かかる異物混入に起因する機能不具合を防止するために、サービスホール14および端子台20周辺を特殊な構成としている。以下、これについて図3を参照して説明する。図2は、図1におけるB−B概略断面図である。
【0021】
既述したとおり、また、図3から明らかなとおり、本実施形態では、ケース12の上面にサービスホール14が設けられており、このサービスホール14と対向する位置に端子22が配置された端子台20が設置されている。この端子台20は、ケース12の上面と平行になるようにケース12の内部に固定設置されている。そのため、ケース12を図2に示すように角度αだけ傾斜して設置した場合、当然、この端子台20も角度αだけ傾斜した状態となる。
【0022】
本実施形態では、この端子台20のうち、傾斜方向下側(すなわちインバータ10を傾斜して設置したときに下方になる側、図3において左下側)の端部に端子台側落下防止壁24を設けている。この端子台側落下防止壁24は、端子台20の上面から、当該端子台20に対向して位置するケース12の上面に向かって立脚する壁である。端子台20上に落下し、当該端子台20上を重力により滑り落ちる異物50は、最終的には、この端子台側落下防止壁24に当たることになる。そして、これにより、異物が端子台20から滑り落ちて、当該端子台20より奥側に位置する各種電子部品に接触することが防止される。
【0023】
また、本実施形態では、サービスホール14の周縁のうち、少なくとも傾斜方向下側端部付近に、端子台20に向かって延びるケース側落下防止壁16を設けている。このケース側落下防止壁16を設けることにより、サービスホール14から侵入した異物が、傾斜方向下側に移動することが効果的に防止され、結果として、異物が端子台20より奥側に位置する各種電子部品に接触することが防止される。
【0024】
そして、本実施形態では、異物が端子台20より奥側に落下することをより効果的に防止するために、端子台側落下防止壁24が、サービスホール14より傾斜方向下側に位置するようにしている。別の言い方をすれば、本実施形態では、端子台側落下防止壁24が、ケース側落下防止壁16よりも、サービスホール14の中心から離れて位置するように、端子台20およびケース12を設計している。
【0025】
かかる構成とした場合、サービスホール14を介して侵入してきた異物は、ケース側落下防止壁16の下を潜り抜けたのち、端子台側落下防止壁24の上側を乗り越えるという上下への動きを伴う迷路状の経路Cで移動しない限り端子台20より奥側には到達できないことになる。いわば、端子台20とケース12との間に、ラビリンス機能が生じることになる。これにより、異物の端子台20より奥側への侵入がより効果的に防止される。
【0026】
ここで、ケース側落下防止壁16と端子台側落下防止壁24との相対角度関係について図4、図5を参照してより詳細に説明する。図4は、ケース側落下防止壁16と端子台側落下防止壁24との相対角度関係を示す概略図である。
【0027】
本実施形態では、異物落下をより効果的に防止するために、ケース側落下防止壁16の先端と端子台側落下防止壁24の先端とを結ぶ直線Lと水平線とが成す角度βが90度未満になるように、両壁16,24の位置および形状を設定している。すなわち、図5に示すように、両壁の先端を結ぶ直線Lと水平線とが成す角度βが、90度以上の場合、ケース側落下防止壁16の先端から、重力の作用により垂直真下に落下した異物50は、端子台側落下防止壁24に当たることなく、そのまま、端子台20より奥側に落下することになる。この場合、上述したような、導電性異物による短絡などの不具合が生じるおそれがある。
【0028】
一方、図4に示すように、両壁16,24の先端を結ぶ直線Lと水平線とが成す角度βが、90度未満であれば、ケース側落下防止壁16の先端から重力の作用により垂直真下に落下した異物50は、必ず、端子台側落下防止壁24に当たるか、当該端子台側落下防止壁24より手前側(傾斜方向上側)に落下することになる。そして、その結果、異物50が、端子台20から落下することが効果的に防止される。
【0029】
なお、この角度βは、インバータ10のサイズなどの設計上の制約から過度に小さくすることができない場合もある。一方で、異物の端子台20より奥側への落下を防止するためには、小さければ小さいほど良い。そこで、こうした落下防止と設計上の制約を両立するために、角度βは、(90−α)度以下にすることが望ましい(αは、インバータ10を設置したときの傾斜角度。図2など参照)。換言すれば、両壁16,24の先端を結ぶ直線Lと垂線とが成す角度γが、インバータ10設置時の傾斜角度αより大きくなるようにすることが望ましい。かかる構成とすることで、端子台20より奥側への異物落下をより効果的に防止できる。
【0030】
なお、端子台20上に残留した異物が、振動などを受けて、舞い上がり、端子台側落下防止壁24を乗り越えることを防止するために、当該端子台側落下防止壁24に、舞い上がり防止壁を設けてもよい。すなわち、図7に示すように、端子台側落下防止壁24の側面に、端子台側落下防止壁24の側面から離れるほど下方に延びる壁を舞い上がり防止壁26として設けてもよい。かかる舞い上がり防止壁26を設けた場合、端子台20上に残留している異物が舞い上がったとしても、当該異物は、端子台側落下防止壁24を乗り越える前に、舞い上がり防止壁26に当たり、再び端子台20上に残留することになる。
【0031】
また、これまでの説明では、車両搭載用のインバータ10を例に挙げて説明したが、本願発明は、内部へのアクセスを許容する開口が形成されたケースと、当該開口と対向して設けられた端子台と、を備え、傾斜して設置される電子機器ユニットであれば、インバータ以外の電子機器ユニットに適用されてもよい。また、本実施形態では、端子台側落下防止壁24を、端子台20の端部に設けているが、サービスホール14より傾斜方向下側に位置するのであれば、必ずしも端部でなくてもよい。
【符号の説明】
【0032】
10 インバータ、12 ケース、14 サービスホール、16 ケース側落下防止壁、20 端子台、22 端子、24 端子台側落下防止壁、26 舞い上がり防止壁、50 異物。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部へのアクセスを許容する開口が形成されたケースと、前記開口と対向して設けられた端子台と、を備え、傾斜して設置される電子機器ユニットであって、
前記端子台が、前記開口より前記傾斜方向下側の位置から立脚し、前記開口から侵入した異物の端子台からの落下を防止する端子台側落下防止壁が設けられている、ことを特徴とする電子機器ユニット。
【請求項2】
請求項1に記載の電子機器ユニットであって、
前記ケースは、前記開口の縁周辺からケース内部に向かって延びるケース側落下防止壁が設けられている、ことを特徴とする電子機器ユニット。
【請求項3】
請求項2に記載の電子機器ユニットであって、
前記ケースを傾斜して設置した状態で、前記端子台側侵入防止壁の先端と前記ケース側落下防止壁の先端とを結ぶ線と水平線とが成す角度が90度未満である、ことを特徴とする電子機器ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−94780(P2012−94780A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−242787(P2010−242787)
【出願日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】