説明

電子機器及びプログラム

【課題】6軸センサで検出された検出結果に基づいて方位計測をする際に、振動発生中であっても精度のよい方位計測ができるようにする。
【解決手段】6軸センサ15は、通常時は3軸加速度(傾斜)センサの検出結果も用いて、3軸の地磁気センサにより地磁気を検出して方位を計測する。電話の着信があった場合、バイブレータ13或いはスピーカ14の報知動作による振動が6軸センサ15に伝わるため、3軸加速度センサに悪影響を与え、方位計測の精度劣化が生じる。これを防止するため、6軸センサ15で検出される検出結果のうち、バイブレータ13或いはスピーカ14の報知動作が行われるときは、3軸加速度(傾斜)センサの検出結果を使用しないようにして方位計測を行うようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、方位計測処理を実行する電子機器及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、携帯電話などの電子機器のおいては、携帯電話本来の機能である通信機能以外に付加機能を求めるユーザが増え、方位計測を備えたものが製品化されている。このような方位計測は、基本的には、地磁気センサを用いて方位を計測している。
【0003】
しかし、携帯電話等の携帯機器では、水平に保持された状態で方位計測が行われるとは限らない。このため、地磁気センサとともに機器の傾きを補正するための傾斜センサを併用し、水平時以外にも正確な方位を計測できるようにする技術が知られている。(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平08−278137号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、携帯電話などの電子機器のおいては、電話の着信などがあった場合、スピーカによる報音或いはバイブレータによる機器自体の振動などによって着信を報知させることが行われており、例えば、方位計測中に報音或いは機器自体の振動がなされると、傾斜センサ(例えば、3軸の加速度センサ)が報音或いは機器自体の振動を検知してしまい、方位計測が正しく行われずに誤った方位を計測、表示してしまうという欠点があることが、出願人の検討でわかってきた。
【0006】
更に、報音或いは機器自体の振動は、電話機能の着信時だけでなく、例えば予め設定されたアラーム時刻になったときやタイマーのタイムアップ時、或いは、ゲームの実行時などに於いても発生するものであり、このようなとき3軸の加速度センサが誤動作してしまい本来の機能を遂行できなくなるという問題があった。
【0007】
本発明は上記の課題を解決するためになされたもので、精度よく方位計測するための傾斜(姿勢)情報が、振動が加わってしまい本来の傾斜(姿勢)が正しく検出できなくなった場合でも、精度よく方位計測ができるようにしたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の請求項1に記載の電子機器は、
地磁気を検出する地磁気検出手段と、水平からの傾斜を検出する傾斜検出手段と、前記地磁気検出手段による検出結果と前記傾斜検出手段による検出結果に基づいて方位計測を行う方位計測手段と、を有する電子機器であって、
当該電子機器に振動があるか否かを判別する振動判別手段と、
当該振動判別手段により振動があると判別された場合に、前記傾斜検出手段による検出結果を排除した前記方位計測手段による方位計測を行わせる制御手段と、
を備えることを特徴とする。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1に記載の電子機器において、
前記制御手段は、
前記振動判別手段により振動があると判別された場合に、前記傾斜検出手段による検出結果を除いた方位計測を行わせる、
ことを特徴とする。
【0010】
請求項3の発明は、請求項1に記載の電子機器において、
前記制御手段は、
前記振動判別手段により振動があると判別された場合に、前記傾斜検出手段による検出自体を停止させる、
ことを特徴とする。
【0011】
請求項4の発明は、請求項1に記載の電子機器において、
前記制御手段は、
前記振動判別手段により振動がないと判別された場合に、前記地磁気検出手段による検出結果とともに、前記傾斜検出手段による検出結果に基づいた方位計測を行わせる、
ことを特徴とする。
【0012】
請求項5の発明は、請求項1に記載の電子機器において、
前記振動判別手段は、
振動がなくなるか否かを判別する停止判別手段を含み、
前記制御手段は、
前記振動判別手段により振動がなくなると判別された場合に、前記地磁気検出手段による検出結果とともに、前記傾斜検出手段による検出結果に基づいた方位計測を再開させる、
ことを特徴とする。
【0013】
請求項6の発明は、請求項1に記載の電子機器において、
当該電子機器に振動を発生させる振動発生手段を更に備え、
前記振動判別手段は、前記振動発生手段による振動方向を判別する方向判別手段を含み、
前記制御手段は、
当該振動判別手段により振動があると判別された場合に、前記傾斜検出手段に、前記振動発生手段による振動方向と一致する方向の振動を排除して傾斜を検出させ、前記方位計測手段による方位計測を行わせる、
ことを特徴とする。
【0014】
請求項7の発明は、請求項1に記載の電子機器において、
前記傾斜検出手段は、加速度を検出する加速度検出手段である、
ことを特徴とする。
【0015】
請求項8の発明は、請求項1に記載の電子機器において、
通信のための通信手段と、
前記通信手段に対する着信があったことを報知するための着信報知手段と、
を更に備え、
前記振動発生手段は、前記着信報知手段としてのスピーカまたは、バイブレータである、
ことを特徴とする。
【0016】
請求項9の発明は、
コンピュータに、
地磁気を検出する地磁気検出機能と、
水平からの傾斜を検出する傾斜検出機能と、
前記地磁気検出機能による検出結果と前記傾斜検出機能による検出結果に基づいて方位計測を行う方位計測機能と、
当該コンピュータに振動があるか否かを判別する振動判別機能と、
当該振動判別機能により振動があると判別された場合に、前記傾斜検出機能による検出結果を排除した方位計測を行わせる制御機能と、
を実現させる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、振動発生中でも方位計測の精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の携帯電話装置1の構成を示した回路ブロック図。
【図2】図1のアプリ情報記憶部11の詳細な構成図
【図3】図1のバイブレータ13、着信報知用スピーカ14及び6軸センサ15の配置関係を示した図。
【図4】図1の携帯電話装置1の全体動作を示すフローチャート図。
【図5】同じく携帯電話装置1の全体動作を示すフローチャート図。
【図6】図4及び図5の方位計測処理の詳細なフローチャート図(第1実施形態)
【図7】同じく図4及び図5の方位計測処理の詳細なフローチャート図(第1実施形態の変形例)
【図8】同じく図4及び図5の方位計測処理の詳細なフローチャート図(第2実施形態)
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0020】
<第1実施形態>
図1は、本発明の電子機器の一例である携帯電話装置1の回路ブロック図である。図において、中央制御部(CPU)2は、プログラム記憶部3に記憶されている各種のプログラムに応じてこの携帯電話装置1の全体の動作を制御する。即ち、プログラム記憶部3には、後述する図4乃至図6に示すフローチャートを実行させるためのプログラムや各種のアプリケーションを実行させるためのアプリケーションプログラムが格納されたROM(図示せず)が備えられており、中央制御部2は、上記ROMに記憶されたプログラムに基づいてこの携帯電話装置1の全体の動作を制御するものである。
【0021】
無線通信部(送受信部)4は、電話の通話機能としての動作時にはアンテナ5から取り込んだ音声の無線信号を受信ベースバンド信号に復調した後に、音声信号処理部6を介して受話スピーカ7から音声出力させる。また、送話マイク8から入力された音声信号を音声信号処理部6で処理させた後に無線通信部4に送り、無線通信部4では音声信号を送信ベースバンド信号に符号化したのちにアンテナ5から送信出力させる。
【0022】
また、電子メール機能、インターネット接続機能等の動作時には、アンテナ5及び無線通信部4を介して電子メールの送受信およびWebサイトの閲覧が可能であり、電子メールの送受信情報及びWebサイトの閲覧情報は表示部9に送られて表示出力される。
【0023】
表示部9は、例えば、ドットマトリクスタイプの液晶表示装置あるいはEL表示装置から構成され、電話装置として必要な情報(相手方の電話番号、電波受信状態、電池残量等の情報)を表示するとともに、上述した如く電子メールやWebサイトの内容表示を行う。また、後述する如く方位計測機能において計測された方位も表示部9に表示される。
【0024】
操作部10は、この携帯電話装置1に設けられた操作キーであり、詳細は図示していないが、電源のオン・オフキー、数値情報及び文字情報を入力する数値文字入力キー、各種機能(アプリケーション)の起動及び終了を選択する各種のアプリケーションキー(方位計機能の動作開始及び停止を指示する方位計キーを含む)、通常は報音によって行われる着信報知を後述するバイブレータの振動によって行わせるように設定するマナーモードキー及び通話のオンフックキー及びオフフックキー等を備えている。
【0025】
アプリ情報記憶部11は、各種のアプリケーションに関連する情報を記憶するもので、例えば、図2に示すように、アドレス帳機能のアドレス帳情報(多数の氏名、住所及び電話番号など)を記憶するアドレス帳情報記憶部11A、メール機能の送受信メール情報を記憶するメール情報記憶部11B、インターネット機能のWebサイトのURL
情報などを記憶するWeb情報記憶部11Cなどの記憶領域が設けられている。
【0026】
また、このアプリ情報記憶部11には、夫々のアプリケーションを制御する情報も記憶されているもので、図2に示すように、通常は「0」であり着信があってユーザに着信報知を行う際にフラグ情報「1」が設定される報知中フラグ記憶部11D、上記着信の報知等の報知をバイブレータの振動によって行わせる際に「1」が設定されるマナーモードフラグ記憶部11E、着信報知中にオフフックキー操作がなされて通話可能な状態になった際に「1」が設定される通話中フラグ記憶部11Fが設けられている。
【0027】
更に、上記アプリ情報記憶部11には、方位計関連の記憶部として、方位計機能の動作中に「1」が設定される方位計動作フラグ記憶部11G及び計測された方位を記憶する方位記憶部11Hも設けられている。
【0028】
図1に戻り、計時部12は、基準信号を計数して現在の年、日付、曜日、時分等の現在日時情報を得る時計回路部(図示せず)や、アラーム時刻などが設定され現在時刻情報がアラーム時刻情報と一致するとアラーム音などによってアラーム時刻に到ったことを報知するアラーム時刻回路部(図示せず)等から構成されている。
【0029】
バイブレータ13は、図3に示すように回転軸13Aに図示しない錘が取り付けられたモータ13Bであり、携帯電話装置1の機器ケース(図示せず)内部の回路基板16に取り付けられ、モータ13Bの回転によって回路基板16を介して携帯電話装置1の機器ケースを振動させるものである。
【0030】
図1の報知用スピーカ14は大音量の報知音によって着信をユーザに知らしめるものであり、また、着信時以外の、例えば音楽再生機能の動作時などにおいても大音量で音楽を再生報音するものである。なお、報知用スピーカ14も、図3に示すように回路基板16に取り付けられている。
【0031】
図1の6軸センサ15は、3軸の地磁気センサと、3軸(X軸(縦)、Y軸
(横)及びZ軸(上下))方向の加速度から携帯電話装置1の夫々の方向の振動の大きさを計測できる3軸加速度センサから成り、この3軸加速度センサは、ここでは携帯電話装置1の傾斜(姿勢)を検出する傾斜センサとして機能する。
【0032】
この6軸センサ15は、例えば、図3に示すように回路基板16の上記モータ13Bと報知用スピーカ14との間に近接して設けられている。即ち、図3に示すように、バイブレータ13(モータ13B)の回転軸13Aが矢印A方向に回転して振動が発生すると、その振動が回路基板16を介して6軸センサ15に伝わる位置に設けられている。
【0033】
この場合、バイブレータ13(モータ13B)の回転により回路基板16は矢印Y軸方向(横方向)及び矢印Z軸方向(上下方向)に振動するので6軸センサ15はバイブレータ13(モータ13B)によるY軸(横)方向及びZ軸(上下)方向の振動を検知してしまい、携帯電話装置1の傾斜の計測に悪影響を及ぼす。
【0034】
同様に、回路基板16に取り付けられた報知用スピーカ14もその報音振動が6軸センサ15に伝わる位置に設けられている。したがって、報知用スピーカ14から報音がなされると、その報音による上下方向の振動が6軸センサ15に伝わり、6軸センサ15は報知用スピーカ14によるZ軸(上下)方向の振動を検知してしまい、携帯電話装置1の傾斜の計測に悪影響を及ぼす。
【0035】
図1に戻り、電源部17は図示していない充電可能な二次電池と、この二次電池の電池電圧が低下した際に各回路部をバックアップするバックアップ電池とからなり、上述した各回路部に駆動電圧を供給するものである。
【0036】
上記のごとく構成された携帯電話装置1の動作について、図4乃至図6のフローチャートを参照して説明する。
【0037】
図4において、ステップS1では、電源オフ状態において操作部10の電源オンキーが操作されたか否かが判断され、電源オンキーが操作されたことが検出されるとステップS2に進み、各種初期化処理が行われる。そして、ステップS3に進み、待ち受け処理を行って携帯電話装置1を電話の着信が可能な状態に設定する。
【0038】
ステップS3において待ち受け処理が完了した後はステップS4に進み、図2の報知フラグ記憶部11Dの報知フラグが「1」に設定されているか否かが判断される。
【0039】
この時点では、ステップS2において行われる初期設定により、報知フラグは「1」に設定されていないのでステップS5に進み、図2の通話中フラグ記憶部11Gの通話中フラグが「1」に設定されているか否かが判断される。この時点においては、ステップS2において行われる初期設定により、通話中フラグも「1」には設定されていないので図5のステップS6に進み、着信の有無が判別(検出)される。
【0040】
着信が検出された場合にはステップS7に進むが、着信が検出されなかった場合にはステップS8に進み、ユーザによる操作部10への操作が有ったか否かがを検出する。
ユーザによる操作が有ったと検出された場合、ステップS9に進み、操作部10への操作が方位計キーへの操作であったか否かが判別される。方位計キーは、その最初のキー操作で方位計(方位計測)機能を開始させ2回目の操作で方位計機能を停止させるキー(トグル操作仕様のキー)である。
【0041】
上記ステップS9で方位計キーの操作が検出された場合にはステップS10に進み、図2の方位計フラグ記憶部11Hの方位計フラグが「0」か否かが判別される。
【0042】
方位計フラグは、前述した如く方位計機能の動作中に「1」が設定されるフラグであり、電源がオンされた状態においては、ステップS2において行われる初期設定により、方位計フラグは「0」なので、ステップS11に進み方位計フラグが「1」に設定され、次のステップS12で方位計の動作を開始させるための初期設定がなされる。
【0043】
これにより、後述するフローチャートで説明する如く、6軸センサ15が備える3軸地磁気センサの検出結果に基づいて、適宜、3軸加速度センサの検出結果を参照し、中央制御部2が方位を計算し、その計測された方位が図2の方位記憶部11Hで記憶され、その方位が表示部9に表示される。
【0044】
一方、上記ステップS10において方位計フラグが「0」でない場合には、既に方位計フラグが「1」の方位計動作状態において方位計キーが操作されたものとしてステップS13に進み、方位計フラグが「0」に設定され、次のステップS14で方位計測の停止処理がなされる。
【0045】
また、上記ステップS9において、方位計キーの操作が検出されなかった時にはステップS15に進み、電源オフキーの操作であったか否かを検出する。
ここで、電源オフキーの操作であったあると検出されると、次のS16に進み、電源OFF処理が行われて、動作フローは終了する。
【0046】
また、ステップS15において、電源オフキーの操作でないと検出された場合、その他のキーの操作であったとして、ステップS17に進み、その他のキーに対応する処理が行われる。
【0047】
その他のキーに対応する処理とは、例えば、電源オン時には、ステップS2において行われる初期設定により、着信の報知を報知用スピーカ14による報音で行わせるように設定されるが、上記ステップS15:NOで、マナーモードキーが操作されたことが検出されると、ステップS17では、アプリ情報記憶部11の図示しないマナーモードフラグを「1」に設定する処理を行う。これにより、着信時には、後述する如くバイブレータ13による着信報知がなされる。
【0048】
また、発呼のための電話番号入力や、アドレス帳のデータ入力、メール機能におけるメール文作成のためのキー入力の検出などはすべて上記ステップS15:NOでなされ、そのキー入力に応じた処理がステップS17で行われる。
【0049】
一方、上記ステップS8で、ユーザによる操作部10への操作がなかったと検出された時は、ステップS18に進み方位計フラグ記憶部11Hの方位計フラグが「1」か否かの判断がなされ、方位計フラグが「1」であった場合にはステップS19に進んで方位計測処理がなされ、方位計フラグが「0」の場合は図4のステップS3の待ち受け処理に戻る。
【0050】
即ち、ステップS9で方位計キーが操作されたと検出され、ステップS11で方位計フラグが「1」に設定されると、それ以降は上記ステップS19で方位計測処理がなされ、表示部9に計測された方位が表示されるものである。尚、ステップS19の方位計測処理の詳細については後述する。
【0051】
上記ステップS6において、着信が検出されるとステップS7に進んで図2の報知中フラグ記憶部11Dの報知中フラグが「1」に設定されると共に、次のステップS20において、その時の報知モードがマナーモードか否かが判断される。マナーモードが設定されていた場合(マナーモードフラグ=1の場合)には、ステップS21に進み、バイブレータ13による振動処理を開始させ、その後、図4のステップS4に戻る。
【0052】
一方、ステップS20において、マナーモードが設定されていない(マナーモードフラグ=0)と判断された場合にはステップS22において、着信報知用スピーカ14による報音が開始され、その後、図4のステップS4に戻る。
【0053】
即ち、ステップS6で着信が検出された場合には、報知中フラグが「1」に設定されると共に、その時にマナーモードが設定されているか否かにより、バイブレータ13もしくは着信報知用スピーカ14のいずれか一方による着信報知が開始されて、図4のステップS4に戻るのである。
【0054】
このようにして、着信検出後にステップS4に戻った場合、ステップS4においては、報知中フラグが「1」に設定されていてバイブレータ13もしくは着信報知用スピーカ14のいずれか一方による着信報知が行われていること(報知中フラグ=1)が検出されるので次のステップS23に進む。
【0055】
ステップS23では、方位計フラグが「1」に設定されているか否か、すなわち方位計機能が動作中か否かが判断され、方位計機能が動作中の場合にはステップS24に進み、動作中でない場合にはそのままステップS25に進む。
【0056】
上記ステップS24は、図5のステップS19の方位計測処理と同一の処理であり、その詳細については後述する。そして、次のステップS25に進む。
【0057】
ステップS25は、操作部10のオフフックキーが操作されたか否かを判断する処理であり、オフフックキーが操作されたことが検出された場合にはステップS26以降の処理に進むが、オフフックキーの操作が検出されない場合にはステップS27に進み着信終了の処理がなされたか否かが判断される。
【0058】
着信終了の処理とは、例えば、ユーザが着信を拒否するために着信拒否キーの操作を行ったこと、あるいは、着信があってから予め定められた時間が経過したことを検出する処理であり、着信拒否キーの操作や予め定められた時間の経過が検出された時にはステップS28に進みが、そうでないときにはステップS27からステップS4に戻る。
【0059】
即ち、着信の報知中においては、方位計機能が動作中の場合、ステップS25のオフフックキーの操作検出あるいはステップS27の着信終了の検出がなされない限り、上記ステップS4、S23、S24、S25およびS27の処理が繰り返されることとなり、着信報知中の方位はステップS24で計測されることとなる。
【0060】
ステップS25においてオフフックキーの操作が検出されると、次のステップS26では報知中フラグを「0」に設定し、次のステップS29では、バイブレータ13あるいは着信報知用スピーカ14による着信の報知を停止する処理を行う。
【0061】
次のステップS30では、図2の通話中フラグ記憶部11Fの通話中フラグを「1」に設定すると共に、次のステップS31で電話をかけてきた相手との通話を開始させる処理を行ってステップS4に戻る。
【0062】
一方、ステップS27で着信終了の検出がなされた場合には、ステップS28に進んでステップS26同様に報知中フラグを「0」に設定し、次のステップS32でステップS29同様に着信の報知を停止する処理を行った後、ステップS4に戻る。
【0063】
上記ステップS25においてオフフックキーの操作が検出されてステップS26以降に進み、ステップS30において通話中フラグが「1」に設定されてステップS31で通話が開始されると、これ以降は、ステップS5で通話中フラグが「1」であることが検出されるのでステップS33に進んで通話処理がなされ、次のステップS34で方位計フラグが「1」であるか否か、すなわち方位計機能の動作中であるか否かが判断される。
【0064】
ステップS34で方位計機能の動作中でない場合にはステップS36に進んでオンフックキーの操作がなされたか否かの検出がなされるが、方位計機能の動作中(方位計フラグ=1)の場合にはステップS34からステップS35に進み、方位を計測する処理を行い、ステップS36に進む。
【0065】
即ち、着信後オフフックキーの操作がなされて通話が開始すると、オンフックキーの操作がステップS36で検出されるまでは、ステップS4、S5、S33、S34、S35及びS36の処理が繰り返し実行される。そのため、通話中であっても方位はステップS35で計測されるのである。
【0066】
そして、ステップS36でオンフックキーの操作が検出されると、ステップS37で通話中フラグが「0」に戻され、次のステップS38で通話停止処理がなされてステップS3の待ち受け処理に戻る。
【0067】
図6は、ステップS19、S24及びS35の方位計測処理の詳細を示している。図において、まずステップB1では、携帯電話装置1が振動しているか否かが判別される。
具体的には、ステップB1において、報知中フラグ記憶部11Dの報知中フラグが1か否かを判別すれば、容易に判別できる。
【0068】
ステップB1で振動有りと判別された場合には、ステップB2に進む。
振動有りと判別された場合は、6軸センサが備える加速度センサ(傾斜センサ)機能の傾斜検出値が安定しないので、ステップB2においては、3軸地磁気センサのみを用いた方位計測を行い、計測された方位を方位記憶部11Hに格納するとともに、ステップB3で、計測された方位表示を行う。
【0069】
一方、ステップB1で振動なしと判別された場合には、ステップB4に進む。
この場合、加速度センサ(傾斜センサ)による傾斜検出値が安定しているので、ステップB4では、地磁気センサ及び加速度センサ(傾斜センサ)を用いた方位計測処理(傾斜を考慮した方位計測)を行い、計測された方位を方位記憶部11Hに格納するとともに、同様に、ステップB3で、計測された方位表示を行う。
【0070】
なお、ステップS35及びステップS19においても、ステップB1の処理ステップを設けてあるのは、例えば、着信報知中ではない状態において、方位計測中に現在時刻がアラーム時刻に至ってバイブレータ13もしくは着信報知用スピーカ14による報知がなされた場合、方位が振動により正確に計測できないので、着信報知中と同様にして方位を正しく計測するためである。
【0071】
このように、上記の実施形態によれば、6軸センサ15で検出して方位計測を行う際に、着信報知のためにバイブレータ13或いは着信報知用スピーカ14といった他の要因による振動が6軸センサ15に加わっても、バイブレータ13或いは着信報知用スピーカ14による振動による影響を受ける傾斜(姿勢)情報を排除(無視)して方位計測を行っているので、振動が発生する場合でも発生しない場合でも誤った計測が発生せず、精度の高い方位計測を行うことができる。
【0072】
<第1の実施形態の変形例>
図7は、第1の実施形態の変形例を説明するための図であり、第1の実施形態とは、図7の方位計測処理の一部分が異なるので、その部分のみ説明する。
【0073】
図7において、第1の実施形態と同様に、まずステップC1では、携帯電話装置1が振動しているか否かが判別される。
具体的には、ステップC1において、報知中フラグ記憶部11Dの報知中フラグが1か否かを判別すれば、容易に判別できる。
【0074】
ステップC1で振動有りと判別された場合には、ステップC2に進み、マナーモードであるか否かを判別する。
具体的には、ステップC2において、マナーモードフラグ記憶部11Eのマナーモードフラグが1か否かを判別すれば、容易に判別できる。
【0075】
ステップC2でマナーモードであると判別された場合には、ステップC3に進む。
この場合、振動はバイブレータ13によって発生することになるので、バイブレータ13の振動方向であるY軸方向とZ軸方向に関して、6軸センサが備える加速度センサ(傾斜センサ)機能による傾斜検出値が悪影響を受ける。(図2参照。)
【0076】
したがって、ステップC3では、地磁気センサの検出値を基に、加速度センサ(傾斜センサ)の検出値のうち2軸(Y軸とZ軸)を排除(無視)した検出値を用いて方位計測処理を行い、計測された方位を方位記憶部11Hに格納するとともに、ステップC4で、計測された方位表示を行う。
【0077】
一方、ステップC2でマナーモードでないと判別された場合には、ステップC5に進む。
この場合、振動は着信報知用スピーカ14によって発生することになるので、バイブレータの振動方向であるZ軸方向関して、6軸センサが備える加速度センサ(傾斜センサ)機能の傾斜検出値が悪影響を受ける。(図2参照。)
【0078】
したがって、ステップC5では、地磁気センサの検出値を基に、加速度センサ(傾斜センサ)の検出値のうち1軸(Z軸)を排除(無視)した検出値を用いて方位計測処理を行い、計測された方位を方位記憶部11Hに格納するとともに、同様に、ステップC4で、計測された方位表示を行う。
【0079】
また、ステップC1で振動なしと判別された場合には、ステップC6に進む。
この場合、振動は発生しないことになるので、6軸センサが備える加速度センサ(傾斜センサ)機能の傾斜検出値が悪影響を受けることはない。
【0080】
したがって、ステップC6では、地磁気センサの検出値、及び傾斜センサの検出値を用いて方位計測処理を行い、計測された方位を方位記憶部11Hに格納するとともに、同様に、ステップC4で、計測された方位表示を行う。
【0081】
ここでは、図2の配置の場合について説明したが、排除する方向は、6軸センサ15、着信報知用スピーカ14及びバイブレータ13の夫々の配置状態によって適宜決定されることは言うまでもない。
【0082】
このように、上記の第1の実施形態の変形例によれば、6軸センサ15で検出して方位計測を行う際に、着信報知のためにバイブレータ13或いは着信報知用スピーカ14といった他の要因による振動が6軸センサ15に加わっても、バイブレータ13或いは着信報知用スピーカ14による振動による影響のうち影響を受ける方向の振動のみを排除(無視)して、方位計測を行うようにしたので、振動方向に一致しない軸の検出値を用いて傾斜情報を考慮した方位計測が行えるので、方位計測の精度を高めることができる。
【0083】
<第2の実施形態>
図8は、第2の実施形態を説明するための図であり、第1の実施形態とは、図6の方位計測処理の一部分が異なるので、その部分のみ説明する。
【0084】
図8において、まずステップD1では、携帯電話装置1が振動する予定があるか否かが判別される。
具体的には、ステップD1において、報知中フラグ記憶部11Dの報知中フラグが1か否かを判別すれば、容易に判別できる。
【0085】
ステップD1で振動有りと判別された場合には、ステップD2に進み、加速度センサ(傾斜センサ)の動作を停止させる。
そして、次のステップD3において、3軸地磁気センサのみを用いた方位計測を行い、計測された方位を方位記憶部11Hに格納するとともに、ステップD4で、計測された方位表示を行う。
【0086】
即ち、携帯電話装置1が発生させる振動は、振動が発生する以前に検知することができるので、方位計測時に加速度センサ(傾斜センサ)が検出する検出値を無視するのではなく、傾斜情報の検出自体を停止させ、方位計測には、地磁気センサによる地磁気の検出値のみを用いた計測を行うようにする。
【0087】
一方、ステップD1で振動予定なしと判別された場合には、ステップD5に進む。
この場合、加速度センサ(傾斜センサ)による傾斜検出値が安定しているので、ステップD5では、地磁気センサ及び加速度センサを用いた方位計測処理(加速度センサで検出された傾斜を考慮した方位計測)を行い、計測された方位を方位記憶部11Hに格納するとともに、同様に、ステップD4で、計測された方位表示を行う。
【0088】
このように、上記第2実施形態では、6軸センサ15の機能のうち、振動により影響を受ける3軸加速度センサ(傾斜センサ)の機能を計測しない(計測自体を停止する)ようにしており、消費電力の浪費を防止することができる。
【0089】
また、上記各実施形態では、振動がない状態になれば、各種フラグを参照することで、振動の発生、停止を判別することができるので、振動が停止する、または、停止したと判別された場合に、直ちに、地磁気センサによる検出結果とともに、加速度センサ(傾斜センサ)による傾斜情報に基づいて方位計測を再開することができる。
【0090】
なお、上記各実施形態では、地磁気センサと加速度センサ(傾斜センサ)が一体となっている6軸センサの例で説明したが、地磁気センサと加速度センサが別々に設けられている構成であってもよいことは明らかである。
【0091】
また、傾斜情報(姿勢情報)を判定できるものであれば、加速度センサでなくてもよい。例えば、静的な状態を判定することのできる、重り(ボール)を用いた傾斜センサであってもよい。
【0092】
傾斜センサとして、加速度センサを用いると、加速度センサは、方位計測の精度向上のため以外に、歩数計測といって別アプリケーションに用いることができ、好都合である。
また、その場合、加速度センサにより、方位計測時の振動判別を行わせるようにしてもよい。
【0093】
また、上記各実施形態では、同じ回路基板16上に6軸センサ15、着信報知用スピーカ14及びバイブレータ13を配置した例について述べたが、同一基板上でなくそれぞれ異なった位置に配置されている場合であっても、着信報知用スピーカ14或いはバイブレータ13の振動が6軸センサ15に影響を及ぼす場合であれば本発明を適用できる。
【0094】
また、上記各実施形態では、本発明を携帯電話装置1に適用した例について述べたが、本発明はデジタルカメラ、パーソナルコンピュータ、音楽プレーヤ、PDAなど、どのような電子機器であっても適用可能である。
【符号の説明】
【0095】
1 携帯電話装置
2 中央制御部
3 プログラム記憶部
4 無線通信部
5 アンテナ
6 音声信号処理部
7 受話スピーカ
8 送話マイク
9 表示部
10 操作部
11 アプリ情報記憶部
12 計時部
13 バイブレータ
14 着信報知用スピーカ
15 6軸センサ(3軸地磁気センサ+3軸加速度(傾斜)センサ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地磁気を検出する地磁気検出手段と、水平からの傾斜を検出する傾斜検出手段と、前記地磁気検出手段による検出結果と前記傾斜検出手段による検出結果に基づいて方位計測を行う方位計測手段と、を有する電子機器であって、
当該電子機器に振動があるか否かを判別する振動判別手段と、
当該振動判別手段により振動があると判別された場合に、前記傾斜検出手段による検出結果を排除した前記方位計測手段による方位計測を行わせる制御手段と、
を備えることを特徴とする電子機器。
【請求項2】
前記制御手段は、
前記振動判別手段により振動があると判別された場合に、前記傾斜検出手段による検出結果を除いた方位計測を行わせる、
ことを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記制御手段は、
前記振動判別手段により振動があると判別された場合に、前記傾斜検出手段による検出自体を停止させる、
ことを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項4】
前記制御手段は、
前記振動判別手段により振動がないと判別された場合に、前記地磁気検出手段による検出結果とともに、前記傾斜検出手段による検出結果に基づいた方位計測を行わせる、
ことを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項5】
前記振動判別手段は、
振動がなくなるか否かを判別する停止判別手段を含み、
前記制御手段は、
前記振動判別手段により振動がなくなると判別された場合に、前記地磁気検出手段による検出結果とともに、前記傾斜検出手段による検出結果に基づいた方位計測を再開させる、
ことを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項6】
当該電子機器に振動を発生させる振動発生手段を更に備え、
前記振動判別手段は、前記振動発生手段による振動方向を判別する方向判別手段を含み、
前記制御手段は、
当該振動判別手段により振動があると判別された場合に、前記傾斜検出手段に、前記振動発生手段による振動方向と一致する方向の振動を排除して傾斜を検出させ、前記方位計測手段による方位計測を行わせる、
ことを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項7】
前記傾斜検出手段は、加速度を検出する加速度検出手段である、
ことを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項8】
通信のための通信手段と、
前記通信手段に対する着信があったことを報知するための着信報知手段と、
を更に備え、
前記振動発生手段は、前記着信報知手段としてのスピーカまたは、バイブレータである、
ことを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項9】
コンピュータに、
地磁気を検出する地磁気検出機能と、
水平からの傾斜を検出する傾斜検出機能と、
前記地磁気検出機能による検出結果と前記傾斜検出機能による検出結果に基づいて方位計測を行う方位計測機能と、
当該コンピュータに振動があるか否かを判別する振動判別機能と、
当該振動判別機能により振動があると判別された場合に、前記傾斜検出機能による検出結果を排除した方位計測を行わせる制御機能と、
を実現させるためのプログラム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−169574(P2010−169574A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−13179(P2009−13179)
【出願日】平成21年1月23日(2009.1.23)
【出願人】(504149100)株式会社カシオ日立モバイルコミュニケーションズ (893)
【Fターム(参考)】