説明

電子機器及び液晶テレビジョン受像器

【課題】生産ラインにおいてビスの誤配置が検出される組立構造を備えた電子機器を提供する。
【解決手段】合体されて電子機器の筐体を構成する第1及び第2のケース2、3と、複数のねじ孔が形成された主基板5と、第1のケース2に配設され、主基板5のねじ孔に対応するねじ孔を有する複数の受け部が形成された取付板金6と、を有し、固定部位として設定された主基板5のねじ孔51と取付板金6の受け部61のねじ孔61aのセットに、ビス7を螺合して主基板5を取付板金6に対して固定した後、第1及び第2のケース2、3を合体して組立てられる電子機器1において、第2のケース3に、固定部位以外のねじ孔52、62aのセットに螺合されたビス7のビス頭に当接して第1及び第2のケース2、3の合体を阻止するビス誤配置検出突起31を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビスの誤配置を検出する組立構造を備えた電子機器及び液晶テレビジョン受像器、即ち、複数のねじ孔のうちの固定部位として設定されたねじ孔以外にビスが螺合された場合にそれを組立工程において検出することが可能な電子機器及び液晶テレビジョン受像器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の技術について液晶テレビジョン受像器を例にして図面を参照して説明する。図4は、従来の液晶テレビジョン受像器の主基板及びリアケースを取り外して示す組立図である。図5は、図4に示す従来の液晶テレビジョン受像器を幅方向の中央部で切断した断面図であり、(a)は主基板固定用のビスが固定部位として設定されたねじ孔に螺合された(正配置された)状態を、(b)は主基板固定用のビスが固定部位以外のねじ孔に螺合された(誤配置された)状態を、それぞれ示している。
【0003】
液晶テレビジョン受像器1の筐体は、図4に示すように、液晶モジュール4や主基板5が配設されるフロントケース2と、フロントケース2の背面開口部に嵌め込みで固定されるリアケース3と、から構成されている。リアケース3の前面開口部は、外壁面に段差ができるように薄肉に形成されており、フロントケース2の背面開口部に嵌合されるようになっている。このとき、フロントケース2の背面開口部の内壁面に形成された各フック部2aが、リアケース3の前面開口部の壁面を貫通して形成された、対応する係合孔3aに係合してフロントケース2とリアケース3が合体される。
【0004】
フロントケース2には、液晶モジュール4の背後に、主基板5を取付けるための取付板金6が配設される。取付板金6には、所々に、図に参照符号61、62を付して示す複数のねじ孔を有する受け部が切り起こしで形成されていて、主基板5に貫設された、図に参照符号51、52を付して示す複数のねじ孔と、対応する取付板金6の受け部のねじ孔とにビス7を螺合することにより、主基板5は取付板金6に対して固定される。
【0005】
ここで、単純に主基板5の固定のことだけを考えれば、主基板5のねじ孔と取付板金6の受け部のねじ孔のセットは、3乃至4セットもあれば充分であるが、現実の製品設計では、主基板5と取付板金6の接触を利用して、主基板5上の回路のGND点を、取付板金6を介してリアケース3などに設けられたアース(不図示)へと接地させる構成を採用している。このため、主基板5のねじ孔と取付板金6の受け部のねじ孔のセット数は、固定部位として必要な数よりも多めに設定されている。
【0006】
ここでも、単純に固定のことだけを考えれば、複数ある主基板5のねじ孔と取付板金6の受け部のねじ孔のセットのうちどれを用いてビス止めしようとも、即ち、どのねじ孔のセットにビス7が螺合されようとも、問題となることはほとんどない。極端な場合、すべてのねじ孔のセットにビスが螺合されてもよいことになる。しかしながら、上述したように主基板5と取付板金6の接触を利用してGND点の接地を取っているため、不要なねじ孔に金属部品であるビスが螺合されるとノイズ要因となったり、静電気放電(ESD)破壊対策試験等でNGとなる場合がある。このような実情に鑑みて、ねじ孔のセットのすべてにビスが螺合されるのではなく、性能試験等により最も性能的に良いねじ孔のセットがいくつか固定部位として選択され、ビス7が螺合される。
【0007】
図の例では、主基板5のねじ孔と取付板金6の受け部のねじ孔の25セットが、5行5列の行列状に並んで配置され、固定部位として設定された主基板5のねじ孔51と取付板金6の受け部61のねじ孔61aの5セットに、ジグザグ状にビス7が螺合される。なお、固定部位以外の主基板5のねじ孔52と取付板金6の受け部62のねじ孔62aの20セットにはビス7は螺合されない。
【特許文献1】特開2006−46362号公報
【特許文献2】特開平11−294436号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このようにすべてのねじ孔のセットにビスが螺合されるわけではないので、製品の生産ラインの作業者のミスで、誤って固定部位以外のねじ孔のセットにビスを螺合する、ビスの誤配置の問題が起こりえる。しかしながら、従来は、生産ラインにおいてビスの誤配置が検出される組立構造とはなっていなかった。つまり、図5(b)のようにビスの誤配置が起こっても、図5(a)のようにビスが正しく配置されたときと同様に、フロントケース2とリアケース3が合体されると、組立は完了してしまうために、出荷前の性能試験等で初めてビスの誤配置が確認されることが多く、筐体を分解してビス止めをやり直すという手間が発生していた。
【0009】
本発明は、上記の従来の問題に鑑みてなされたものであり、生産ラインにおいてビスの誤配置が検出される組立構造を備えた電子機器及び液晶テレビジョン受像器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、請求項1の液晶テレビジョン受像器は、合体されて液晶テレビジョン受像器の筐体を構成するフロントケース及びリアケースと、前記フロントケースに配設される液晶モジュールと、所定の数と配置で複数のねじ孔が形成された主基板と、前記フロントケースの前記液晶モジュールの背後に配設され、所定の数と配置で主基板の前記ねじ孔に対応するねじ孔を有する複数の受け部が形成された取付板金と、を有し、主基板の前記ねじ孔と取付板金の受け部の前記ねじ孔のセットのうち固定部位として設定されたねじ孔のセットに、ビスを螺合して前記主基板を前記取付板金に対して固定した後、前記フロントケース及び前記リアケースを合体して組立てられる液晶テレビジョン受像器において、前記リアケースに、固定部位以外のねじ孔のセットに螺合されたビスのビス頭に当接して前記フロントケース及び前記リアケースの合体を阻止するビス誤配置検出突起を設けたことを特徴としている。
【0011】
また、請求項2の電子機器は、合体されて電子機器の筐体を構成する第1及び第2のケースと、複数のねじ孔が形成された主基板と、前記第1のケースに配設され、主基板の前記ねじ孔に対応するねじ孔を有する複数の受け部が形成された取付板金と、を有し、主基板の前記ねじ孔と取付板金の受け部の前記ねじ孔のセットのうち固定部位として設定されたねじ孔のセットに、ビスを螺合して前記主基板を前記取付板金に対して固定した後、前記第1及び第2のケースを合体して組立てられる電子機器において、前記第2のケースに、固定部位以外のねじ孔のセットに螺合されたビスのビス頭に当接して前記第1及び第2のケースの合体を阻止するビス誤配置検出突起を設けたことを特徴としている。
【0012】
また、請求項3の電子機器は、請求項2に記載の電子機器において、前記ビス誤配置検出突起が、前記第2のケースを前記主基板と共に前記取付板金にビスで共締めするためのボスであることを特徴としている。
【0013】
また、請求項4の電子機器は、請求項2又は3に記載の電子機器において、所定の数と配置で、主基板の前記ねじ孔と取付板金の受け部の前記ねじ孔のセットが形成されたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の液晶テレビジョン受像器によると、固定部位以外の主基板のねじ孔と取付板金の受け部のねじ孔のセットにビスが螺合された(誤配置された)場合には、その後の組立工程でリアケースをフロントケースに嵌合させて両者を合体させるときに、対応するリアケースの突起がビスのビス頭に当接するため、それ以上フロントケースとリアケースの距離を縮めることができず、合体が阻止される。つまり、製品の組立を完成させることができない。これにより、組立作業の自然な流れの中でビスの誤配置を容易に検出することができる。
【0015】
請求項2の電子機器によると、固定部位以外の主基板のねじ孔と取付板金の受け部のねじ孔のセットにビスが螺合された(誤配置された)場合には、その後の組立工程で第2のケースを第1のケースに嵌合させて両者を合体させるときに、対応する第2のケースの突起がビスのビス頭に当接するため、それ以上第1のケースと第2のケースの距離を縮めることができず、合体が阻止される。つまり、製品の組立を完成させることができない。これにより、組立作業の自然な流れの中でビスの誤配置を容易に検出することができる。
【0016】
請求項3の電子機器によると、第1及び第2のケースの合体後、ビス誤配置検出突起をボスとして使用して第2のケースを主基板と共に取付板金にビスで共締めすることができる。
【0017】
請求項4の電子機器によると、同一サイズの主基板を、異なる製品モデル(例えば、画面サイズの異なる15インチモデルと20インチモデル)間で共通で使用する場合でも、生産ラインで組立てるときに、製品モデルごとに設定された固定部位を選んでビス止めするという効率的な作業を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明の実施形態に係る液晶テレビジョン受像器の主基板及びリアケースを取り外して示す組立図である。図2は、図1に示す液晶テレビジョン受像器を幅方向の中央部で切断した断面図であり、(a)は主基板固定用のビスが固定部位として設定されたねじ孔に螺合された(正配置された)状態を、(b)は主基板固定用のビスが固定部位以外のねじ孔に螺合された(誤配置された)状態を、それぞれ示している。これらの図において、図4及び図5に示す従来の液晶テレビジョン受像器と共通の部材には同一の符号を附し、詳しい説明を省略する。
【0019】
リアケース3の背壁の内面側には、固定部位以外の主基板5のねじ孔52と取付板金6の受け部62のねじ孔62aの20セットに対応する箇所に、前方に突出する所定高さの複数の突起31が一体に形成されている。その一方、リアケース3の背壁の内面側の、固定部位の主基板5のねじ孔51と取付板金6の受け部61のねじ孔61aの5セットに対応した箇所には、突起31は設けられていない。突起31の高さhは、少なくともフロントケース2とリアケース3が合体された状態でリアケース3の背壁の内面からビス7のビス頭までの距離dを有している。図示の例では、突起31の先端がねじ孔に挿入されるようにしているが、上記突起31の高さが確保されさえすれば、必ずしもねじ孔に挿入されなくてもよい。なお、図3に示すように、リアケース3に設ける突起は、リアケース3を、主基板5と共に取付板金6にビス8で共締めするためのボス32としても良い。また、このようなボス32を上記の突起31と組み合わせても構わない。
【0020】
この構成によると、図2(a)に示すように、固定部位の主基板5のねじ孔51と取付板金6の受け部61のねじ孔61aの5セットにビス7が螺合された(正配置された)場合には、その後の組立工程でリアケース2をフロントケース3に嵌合させて両者を合体させるときに、リアケース3の突起31はいずれもビス7のビス頭に当接することはないため、合体が妨げられることがない。つまり、製品の組立を首尾良く完成させることができる。
【0021】
その一方、図2(b)に示すように、固定部位以外の主基板5のねじ孔52と取付板金6の受け部62のねじ孔62aの20セットの少なくとも1つにビス7が螺合された(誤配置された)場合には、その後の組立工程でリアケース2をフロントケース3に嵌合させて両者を合体させるときに、対応するリアケース3の突起31がビス7のビス頭に当接するため、それ以上フロントケース2とリアケース3の距離を縮めることができず、合体が阻止される。つまり、製品の組立を完成させることができない。これにより、組立作業の自然な流れの中でビスの誤配置を容易に検出することができる。
【0022】
また、本実施形態では、所定の数と配置で、主基板5のねじ孔と取付板金6の受け部のねじ孔のセットを形成している。例えば、図4のように、ねじ孔の25セットを5行5列の行列状に配置している。これによると、同一サイズの主基板を、異なる製品モデル(例えば、画面サイズの異なる15インチモデルと20インチモデル)間で共通で使用する場合でも、生産ラインで組立てるときに、製品モデルごとに設定された固定部位を選んでビス止めするという効率的な作業を実現することができる。
【0023】
なお、上記の実施形態では液晶テレビジョン受像器を例にして説明したが、本発明は合体されて筐体を構成する第1及び第2のケース内に取付板金を介して主基板が配設される電子機器であればどんなものにでも適用することができる。この場合、第2のケースは、第1のケースに対して着脱可能或いは開閉可能な蓋であっても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】は、本発明の実施形態に係る液晶テレビジョン受像器の主基板及びリアケースを取り外して示す組立図である。
【図2】は、図1に示す液晶テレビジョン受像器を幅方向の中央部で切断した断面図であり、(a)は主基板固定用のビスが固定部位として設定されたねじ孔に螺合された(正配置された)状態を、(b)は主基板固定用のビスが固定部位以外のねじ孔に螺合された(誤配置された)状態を、それぞれ示している。
【図3】は、ビス誤配置検出突起の変形例を示す本発明の液晶テレビジョン受像器の断面図である。
【図4】は、従来の液晶テレビジョン受像器の主基板及びリアケースを取り外して示す組立図である。
【図5】は、図4に示す従来の液晶テレビジョン受像器を幅方向の中央部で切断した断面図であり、(a)は主基板固定用のビスが固定部位として設定されたねじ孔に螺合された(正配置された)状態を、(b)は主基板固定用のビスが固定部位以外のねじ孔に螺合された(誤配置された)状態を、それぞれ示している。
【符号の説明】
【0025】
1 液晶テレビジョン受像器(電子機器の一例)
2 フロントケース(第1のケース)
3 リアケース(第2のケース)
31 突起(ビス誤配置検出突起の一例)
32 ボス(ビス誤配置検出突起の変形例)
4 液晶モジュール
5 主基板
51 固定部位のねじ孔
52 固定部位以外のねじ孔
6 取付板金
61 固定部位の受け部
61a 固定部位の受け部のねじ孔
62 固定部位以外の受け部
62a 固定部位以外の受け部のねじ孔
7 ビス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合体されて液晶テレビジョン受像器の筐体を構成するフロントケース及びリアケースと、
前記フロントケースに配設される液晶モジュールと、
所定の数と配置で複数のねじ孔が形成された主基板と、
前記フロントケースの前記液晶モジュールの背後に配設され、所定の数と配置で主基板の前記ねじ孔に対応するねじ孔を有する複数の受け部が形成された取付板金と、
を有し、
主基板の前記ねじ孔と取付板金の受け部の前記ねじ孔のセットのうち固定部位として設定されたねじ孔のセットに、ビスを螺合して前記主基板を前記取付板金に対して固定した後、前記フロントケース及び前記リアケースを合体して組立てられる液晶テレビジョン受像器において、
前記リアケースに、固定部位以外のねじ孔のセットに螺合されたビスのビス頭に当接して前記フロントケース及び前記リアケースの合体を阻止するビス誤配置検出突起を設けたことを特徴とする液晶テレビジョン受像器。
【請求項2】
合体されて電子機器の筐体を構成する第1及び第2のケースと、
複数のねじ孔が形成された主基板と、
前記第1のケースに配設され、主基板の前記ねじ孔に対応するねじ孔を有する複数の受け部が形成された取付板金と、
を有し、
主基板の前記ねじ孔と取付板金の受け部の前記ねじ孔のセットのうち固定部位として設定されたねじ孔のセットに、ビスを螺合して前記主基板を前記取付板金に対して固定した後、前記第1及び第2のケースを合体して組立てられる電子機器において、
前記第2のケースに、固定部位以外のねじ孔のセットに螺合されたビスのビス頭に当接して前記第1及び第2のケースの合体を阻止するビス誤配置検出突起を設けたことを特徴とする電子機器。
【請求項3】
前記ビス誤配置検出突起が、前記第2のケースを前記主基板と共に前記取付板金にビスで共締めするためのボスであることを特徴とする請求項2に記載の電子機器。
【請求項4】
所定の数と配置で、主基板の前記ねじ孔と取付板金の受け部の前記ねじ孔のセットが形成されたことを特徴とする請求項2又は3に記載の電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−182518(P2008−182518A)
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−14725(P2007−14725)
【出願日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【出願人】(000201113)船井電機株式会社 (7,855)
【Fターム(参考)】