説明

電子機器及び電子機器に装着可能なリング状部材

【課題】機器本体に対してリング状部材が着脱可能に装着されている電子機器において、着脱機構の簡易化を図る。
【解決手段】本発明に係る電子機器において、リング状部材2には、その周方向にずれた位置に、複数の係合片22が突設される一方、機器本体1には、前記係合片22がそれぞれ係合すべき複数の係合受け部12が形成されており、リング状部材2を一方向に挟圧してリング状部材を弾性変形させる操作と、リング状部材2に対する挟圧を解除してリング状部材を弾性復帰させる操作によって、係合片22を係合受け部12に対して係脱させることが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機器本体に対してアダプターリング等のリング状部材を着脱可能に装着してなる電子機器、及び電子機器に装着可能なリング状部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、光学フィルター等の補助光学部品をカメラ本体に装着するために、カメラ本体にアダプターリングを取り付け、該アダプターリングの内周面に形成された内ネジに対して補助光学部品をねじ込む構造が採用されている。
【0003】
カメラ本体にアダプターリングを取り付けるための構造としては、一般に、バネによって一方向に付勢された可動式のフック片をアダプターリングに配備する一方、カメラ本体には前記フック片が係合すべきフック受け部を形成してなるフック機構が採用されている(特許文献1)。
【0004】
カメラ本体にアダプターリングを取り付ける際には、前記バネに抗してフック片をロック解除位置まで移動させた状態で、アダプターリングをカメラ本体に装着し、その状態で、前記バネの付勢によりフック片をロック位置まで移動させることによって、フック片を係合受け部に係合させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−51386号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、カメラ本体にアダプターリングを取り付けるための着脱機構として上述のフック機構を採用した場合、フック片を可動構造とすると共に、該フック片を一方向に付勢するバネを配備する必要があり、これによって構造が複雑となる問題があった。
【0007】
そこで本発明の目的は、機器本体に対してリング状部材を着脱可能に装着してなる電子機器において、着脱機構の簡易化を図ることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る電子機器においては、機器本体に対してリング状部材が着脱可能に装着されており、リング状部材には、その周方向にずれた位置に、複数の係合片が突設される一方、機器本体には、前記係合片がそれぞれ係合すべき複数の係合受け部が形成されており、リング状部材を一方向に挟圧してリング状部材を弾性変形させる操作と、リング状部材に対する挟圧を解除してリング状部材を弾性復帰させる操作によって、前記係合片を係合受け部に対して係脱させることが可能である。
【0009】
上記電子機器において、機器本体に対してリング状部材を取り付けるときは、リング状部材を一方向に挟圧し、リング状部材を弾性変形によって湾曲させる。これによって、リング状部材の複数の係合片がリング状部材の内側若しくは外側に向かって弾性変位することになる。この状態で、リング状部材を機器本体に装着し、リング状部材の挟圧を解除する。
この結果、リング状部材が弾性復帰し、これに伴って、リング状部材の複数の係合片が機器本体の複数の係合受け部にそれぞれ係合し、これによってリング状部材が機器本体に係止されることになる。
【0010】
機器本体からリング状部材を取り外すときは、リング状部材を一方向に挟圧し、リング状部材を弾性変形させる。これによって、リング状部材の複数の係合片が弾性変位することになる。これに伴って、リング状部材の複数の係合片が機器本体の複数の係合受け部からそれぞれ離脱する。
この状態で、リング状部材を機器本体から取り外し、リング状部材の挟圧を解除する。これによって、リング状部材が弾性復帰する。
【0011】
具体的態様において、前記リング状部材は円筒体を呈し、その内周面に内ネジが形成されている。
該具体的態様によれば、機器本体にリング状部材を装着した状態で、該リング状部材の内ネジに、各種若しくは特定の部品、部材、器具等をねじ込むことが出来る。
【0012】
又、具体的態様において、前記複数の係合片は、前記リング状部材の筒軸を中心として180度の角度差を有する2つの位置に突設されている。
この場合、前記2つの位置とは90度ずれた2つの位置にて、リング状部材を挟圧して、リング状部材を楕円状に湾曲させる。
【0013】
他の具体的態様において、前記リング状部材には、前記2つの位置とは90度ずれた2つの位置に、リング状部材のその位置での断面積を縮小する切り欠きがそれぞれ形成されている。
これによって、リング状部材の弾性変形が容易なものとなる。
【0014】
更に具体的な態様において、前記係合片は、先端が前記リング状部材の内側へ向けてL字状に屈曲するフック片によって形成される一方、前記係合受け部は、リング状部材が装着されるべきリング状部分の内側へ向けて凹むフック受け凹部によって形成されている。
この場合、リング状部材を着脱する際には、各フック片をフック受け凹部から脱出させる方向に、リング状部材を湾曲させる。
【0015】
又、本発明に係るリング状部材は、電子機器に装着することが可能なリング状部材であって、リング状本体と、リング状本体の周方向にずれた位置に突設された複数の係合片とを具え、リング状本体を一方向に挟圧してリング状本体を弾性変形させる操作と、リング状本体に対する挟圧を解除してリング状本体を弾性復帰させる操作によって、装着相手となる電子部品に形成された係合受け部に対して前記係合片を係脱させることが可能である。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る電子機器及び電子機器に装着可能なリング状部材によれば、機器本体に対してリング状部材を着脱可能に装着するための機構として、リング状部材全体の弾性変形を利用した着脱機構が採用されているので、従来の着脱機構におけるフック片の可動構造やフック片を付勢するバネは不要となり、これによって着脱機構の簡易化が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本発明の一実施形態であるカメラの斜視図である。
【図2】図2は、該カメラにおいてカメラ本体からアダプターリングを取り外した状態を示す分解斜視図である。
【図3】図3は、該カメラの一使用形態を示す図である。
【図4】図4は、該カメラにおいてカメラ本体にアダプターリングを取り付ける際の操作を説明する側面図である。
【図5】図5は、アダプターリングの他の実施形態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明をカメラに実施した形態につき、図面に沿って具体的に説明する。
本発明の一実施形態であるカメラは、図1及び図2に示す如く、シャッター釦(13)及び撮影レンズ(10)を具えたカメラ本体(1)に対して、合成樹脂製のアダプターリング(2)を着脱可能に装着して構成される。
【0019】
図2の如く、カメラ本体(1)には、撮影レンズ(10)を包囲して、リング状のマウント部(11)が形成されており、該マウント部(11)に対してアダプターリング(2)が装着される。
アダプターリング(2)には、円筒体を呈するリング状本体(20)の内周面に内ネジ(21)が形成されており、図1の如くカメラ本体(1)にアダプターリング(2)が取り付けられた状態で、該アダプターリング(2)の内ネジ(21)に、光学フィルター、コンバージョンレンズ、レンズフード等の部品若しくは部材や、接写撮影用のストロボ発光器等の器具をねじ込んで装着することが出来る。
【0020】
又、カメラ本体(1)にアダプターリング(2)を取り付けた状態で、図3に示す如くアダプターリング(2)の開口縁を被写体の周囲に接触させて設置することにより、カメラ本体(1)の被写体との距離Sを固定して、被写体の撮影、特に接写を行なうことが出来る。
【0021】
カメラ本体(1)にアダプターリング(2)を取り付けるための構造として、具体的には、図2及び図4に示す如く、アダプターリング(2)には、リング状本体(20)の背面に、180度の角度位相差で2つのフック片(22)(22)が一体成型によって一体に突設される一方、カメラ本体(1)には、マウント部(11)の外周面に、前記2つのフック片(22)(22)がそれぞれ係合すべき2つのフック受け凹部(12)(12)が形成されている。
【0022】
尚、図示する例では、2つのフック受け凹部(12)(12)は、マウント部(11)の中心を通過する鉛直の直径線と交差する2つの位置、即ちマウント部(11)の上端部と下端部に配置されている。
【0023】
図4の如く、アダプターリング(2)のフック片(22)は、先端がカメラ本体(1)側へ向けて突出すると共にリング状本体(20)の内側へ向けて屈曲するL字状を呈している。
一方、カメラ本体(1)のフック受け凹部(12)は、マウント部(11)の内側へ向けて凹んでおり、フック片(22)の先端部が係合することが可能となっている。
【0024】
カメラ本体(1)に対してアダプターリング(2)を取り付けるときは、図2中に矢印Pで示す様に、2つのフック片(22)(22)と90度ずれた2つの位置にて、アダプターリング(2)を挟圧する。
【0025】
これによって、アダプターリング(2)が弾性変形して、鉛直方向を長軸とする楕円状に湾曲し、図4中に2点鎖線で示す様に、上側のフック片(22)が上方へ、下側のフック片(22)が下方へ弾性変位することになる。
この状態で、アダプターリング(2)をカメラ本体(1)のマウント部(11)に装着し、アダプターリング(2)の挟圧を解除する。
【0026】
この結果、アダプターリング(2)が弾性復帰し、これに伴って、アダプターリング(2)の2つのフック片(22)(22)がカメラ本体(1)の2つのフック受け凹部(12)(12)にそれぞれ係合し、これによって、図1の如くアダプターリング(2)がカメラ本体(1)に係止されることになる。
【0027】
カメラ本体(1)からアダプターリング(2)を取り外すときは、アダプターリング(2)を図2中の矢印Pと同じ方向に挟圧し、アダプターリング(2)全体を弾性変形させる。
尚、カメラ本体(1)のマウント部(11)とアダプターリング(2)との間には、アダプターリング(2)の装着状態でアダプターリング(2)の弾性変形を許容する隙間が設けられている。
【0028】
上述の如くアダプターリング(2)が弾性変形することによって、2つのフック片(22)(22)が、図4中に2点鎖線の矢印で示す方向へ弾性変位することになる。これに伴って、アダプターリング(2)の2つのフック片(22)(22)がカメラ本体(1)の2つのフック受け凹部(12)(12)からそれぞれ離脱する。
この状態で、アダプターリング(2)をカメラ本体(1)から取り外し、アダプターリング(2)の挟圧を解除する。これによって、アダプターリング(2)が元の形状に弾性復帰する。
【0029】
上記カメラによれば、カメラ本体(1)に対してアダプターリング(2)を着脱可能に装着するための機構として、アダプターリング(2)全体の弾性変形を利用した着脱機構が採用されているので、従来の着脱機構におけるフック片の可動構造やフック片を付勢するバネは不要となり、これによって着脱機構の簡易化が実現される。
【0030】
又、カメラ本体(1)に装着されたアダプターリング(2)に部品、部材若しくは器具をねじ込んだ状態では、着脱時に生じさせるアダプターリング(2)の弾性変形が制限されるので、アダプターリング(2)がカメラ本体(1)から外れ難くなる効果が得られる。
【0031】
尚、本発明の各部構成は上記実施の形態に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能である。例えば、図5に示す如く、アダプターリング(2)には、2つのフック片(22)(22)とは90度ずれた2つの位置に、リング状本体(20)のその位置での断面積を縮小する切り欠き(23)(23)を形成することによって、アダプターリング(2)の弾性変形をより容易なものとすることが出来る。
【0032】
又、フック片(22)とフック受け凹部(12)のペアの数は2つに限らず、3以上の複数であってもよい。この場合、アダプターリング(2)の弾性変形によって大きな弾性変位を生じる位置にフック片(22)を配置することが望ましい。
【0033】
又、フック片(22)のフック受け凹部(12)に対する係合方向は上記実施形態の如くアダプターリング(2)の内側方向に限らず、アダプターリング(2)の外側方向とすることも可能である。この場合、フック片(22)はアダプターリング(2)の外側へ向けて突設すると共に、カメラ本体(1)のフック受け凹部(12)は、フック片(22)の突設方向、即ちマウント部(11)の外側へ向けて凹設する。
この様なアダプターリング(2)の着脱に際しては、フック片(22)(22)の突設位置にてアダプターリング(2)を挟圧する。
【0034】
又、アダプターリング(2)に替えて、種々の電子機器における様々なリング状部材の着脱機構、例えば装飾用のリング状部材の着脱機構に本発明を実施することも可能である。
更に、リング状部材は、円筒体に限らず、例えば楕円のリング状体や多角形の枠状体であってもよい。
【0035】
更に又、アダプターリング(2)のフック片(22)は一体成型に限らず、別部材として作製したものをリング状本体(20)に接着することも可能である。
【符号の説明】
【0036】
(1) カメラ本体
(10) 撮影レンズ
(11) マウント部
(12) フック受け凹部
(2) アダプターリング
(20) リング状本体
(21) 内ネジ
(22) フック片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機器本体に対してリング状部材が着脱可能に装着されている電子機器において、前記リング状部材には、その周方向にずれた位置に、複数の係合片が突設される一方、機器本体には、前記係合片がそれぞれ係合すべき複数の係合受け部が形成されており、リング状部材を一方向に挟圧してリング状部材を弾性変形させる操作と、リング状部材に対する挟圧を解除してリング状部材を弾性復帰させる操作によって、前記係合片を係合受け部に対して係脱させることが可能であることを特徴とする電子機器。
【請求項2】
前記リング状部材は円筒体を呈している請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記複数の係合片は、前記リング状部材の筒軸を中心として180度の角度差を有する2つの位置に突設されている請求項2に記載の電子機器。
【請求項4】
前記リング状部材には、前記2つの位置とは90度ずれた2つの位置に、リング状部材のその位置での断面積を縮小する切り欠きがそれぞれ形成されている請求項3に記載の電子機器。
【請求項5】
前記機器本体はカメラ本体であって、該カメラ本体に配備された撮影レンズを包囲して、前記リング状部材が着脱可能に装着され、該リング状部材は円筒体を呈し、その内周面に内ネジが形成されている請求項1乃至請求項4の何れかに記載の電子機器。
【請求項6】
前記係合片は、先端が前記リング状部材の内側へ向けてL字状に屈曲するフック片によって形成される一方、前記係合受け部は、リング状部材が装着されるべきリング状部分の内側へ向けて凹むフック受け凹部によって形成されている請求項1乃至請求項5の何れかに記載の電子機器。
【請求項7】
電子機器に装着することが可能なリング状部材において、リング状本体と、リング状本体の周方向にずれた位置に突設された複数の係合片とを具え、リング状本体を一方向に挟圧してリング状本体を弾性変形させる操作と、リング状本体に対する挟圧を解除してリング状本体を弾性復帰させる操作によって、装着相手となる電子部品に形成された係合受け部に対して前記係合片を係脱させることが可能であることを特徴とするリング状部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−159639(P2012−159639A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−18557(P2011−18557)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】