説明

電子機器接続ケーブル

【課題】デジタルノイズの影響の抑制と、使い勝手の両立を図ることができる電子機器接続ケーブルを提供すること。
【解決手段】USBケーブル1は、電子機器間でのデジタルデータの送受信を行う信号線51,52が含まれ、可撓性を有する信号用ケーブル5と、電子機器間で電力の授受を行う電源線61,62が含まれ、可撓性を有する電源用ケーブル6と、信号線51,52および電源線61,62の両端部にそれぞれに電気的に接続され、電子機器と電気的に接続可能な接続端子と、信号用ケーブル5と電源用ケーブル6との間に挟み込まれ、可撓性を有するセパレータ7と、信号用ケーブル5、電源用ケーブル6およびセパレータ7を被覆し、信号用ケーブル5および電源用ケーブル6の変形に追従して変形する被覆部材8と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器接続ケーブルに関し、特に信号線と電源線を有する電子機器接続ケーブルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子機器間、例えばパーソナルコンピュータなどのホスト機器と周辺機器との間でデータを送受信するために電子機器接続ケーブルが用いられる。電子機器接続ケーブルには、例えばUSB(Universal・Serial・Bus)ケーブルなどのように、デジタルデータの送受信とともに、ホスト機器から周辺機器へ電力を供給する複合ケーブルがある。
【0003】
近年、ハードディスクドライブなどの記録媒体に記録された音声デジタルデータ(声、音楽などに友付いたデジタルデータが含まれる)に基づいて出力される音の音質の向上を目的として、例えばUSBオーディオ機器などの音楽再生用周辺機器が用いられている。USBオーディオ機器には、記録媒体に記録された音声デジタルデータがホスト機器から電子機器接続ケーブルを介してデジタル信号として入力され、入力されたデジタル信号に基づいて音を出力するものである。このとき、電子機器接続ケーブルでは、デジタル信号を信号線によりホスト機器からUSBオーディオ機器に伝送するとともに、電力を電源線によりホスト機器からUSBオーディオ機器に供給する。
【0004】
ここで、USBケーブルを介して伝送されるデジタル信号は、アナログ信号とは異なる。アナログ信号は、例えば映像信号が1Vp-p、音声信号が0db(0.776Vか1V)で伝送される。一方、デジタル信号は、「1」か「0」、実際には、5Vか0Vで伝送される。従って、デジタル信号は、アナログ信号よりも信号自体が持つエネルギーが高い。また、アナログ信号の伝送は、インピーダンス整合を考慮した形で行われているため、ノイズの発生が抑制されている。しかしながら、デジタル信号の伝送では、インピーダンス整合の考えがない。これらから、デジタル信号の伝送を行う複合ケーブルにおいては、複合ケーブル内で信号線によるデジタル信号の伝送が他の信号線にデジタルノイズとして影響を及ぼす虞があるので、シールド性を向上させることが重要である。また、USBケーブルにおける電源線には、例えばホスト機器内で発生した高周波ノイズ、高速クロックノイズなどのデジタルノイズが乗ることとなり、電源線と信号線が1つのケーブル内に収容されている場合は、電源線に電磁誘導、静電誘導が発生すると、信号線にデジタルノイズの影響が生じることとなる。デジタル信号では、デジタルノイズの影響を受けると、誤認識する場合がある。上述したUSBオーディオ機器では、USBケーブルから入力されたデジタル信号に基づいて音を出力することとなるので、音声デジタルデータに基づいて実際に出力される音には、上記誤認識があった場合となかった場合とで差が生じることとなり、出力される音の音質の向上を十分に図れない虞がある。つまり、デジタルノイズの影響を受けると、USBオーディオ機器から出力される音の音質に悪影響を与えることとなるため、デジタルノイズの影響が少ないUSBケーブルが望まれている。
【0005】
例えば、従来の電子機器接続ケーブルにおいては、電源線と信号線をそれぞれ異なるケーブルに収容し、各ケーブルの両端部をUSB接続端子に接続したものが提案されている。この電子機器接続ケーブルでは、各ケーブルを離すことができるので、1つのケーブル内に電源線と信号線とが収容されている電子機器接続ケーブルと比較して、各ケーブルを離間することができるので電源線に乗ったデジタルノイズの信号線に対する影響を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】登録実用新案第3162601号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来の電子機器接続ケーブルでは、各ケーブルが離れることとなるので、ホスト機器と周辺機器とを接続後、各ケーブルを引っかけやすくなる。また、各ケーブルを引っかけることで、各ケーブルに外力が加わり、電源線や信号線などの各線の断線や、各線とUSB接続端子との接続部が破損することで電子機器用接続ケーブルとしての機能を損なう虞がある。従って、取り扱いに注意を要し、使い勝手が悪いという問題があった。
【0008】
そこで、本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、デジタルノイズの影響の抑制と、使い勝手の両立を図ることができる電子機器接続ケーブルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明では、電子機器間でのデータの送受信を行う信号線が含まれ、可撓性を有する信号用ケーブルと、前記電子機器間で電力の授受を行う電源線が含まれ、可撓性を有する電源用ケーブルと、前記信号線および前記電源線の両端部にそれぞれに電気的に接続され、前記電子機器と電気的に接続可能な接続端子と、前記信号用ケーブルと前記電源用ケーブルとの間に挟み込まれ、可撓性を有するセパレータと、前記信号用ケーブル、前記電源用ケーブルおよび前記セパレータを被覆し、前記信号用ケーブルおよび前記電源用ケーブルの変形に追従して変形する被覆部材と、を備えることを特徴とする。
【0010】
また、本発明では、電子機器間でのデジタルデータの送受信を行う第1信号線が含まれ、可撓性を有する第1信号用ケーブルと、前記第1信号用ケーブルとは異なるデジタルデータの送受信を行う第2信号線が含まれ、可撓性を有する第2信号用ケーブルと、前記第1信号線および前記第2信号線の両端部にそれぞれに電気的に接続され、前記電子機器と電気的に接続可能な接続端子と、前記第1信号用ケーブルと前記第2信号用ケーブルとの間に挟み込まれ、可撓性を有するセパレータと、前記第1信号用ケーブル、前記第2信号用ケーブルおよび前記セパレータを被覆し、前記第1信号用ケーブルおよび前記第2信号用ケーブルの変形に追従して変形する被覆部材と、を備えることを特徴とする。
【0011】
また、上記電子機器接続ケーブルにおいて、前記セパレータは、長手方向と直交する平面での断面視において、前記信号用ケーブルおよび前記電源用ケーブルにそれぞれ接触するとともに、互いに対向する2つの凹部が形成されていることが好ましい。
【0012】
また、上記電子機器接続ケーブルにおいて、前記被覆部材は、線状素材を編みことで可撓性を有する編組チューブであることが好ましい。
【0013】
また、上記電子機器接続ケーブルにおいて、前記線状素材は、金属製であることが好ましい。
【0014】
また、上記電子機器接続ケーブルにおいて、前記セパレータは、前記2つの凹部と直交する方向の長さが前記信号用ケーブルおよび前記電源用ケーブルの直径と同一であることが好ましい。
【0015】
また、上記電子機器接続ケーブルにおいて、前記セパレータは、電波吸収材で形成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明にかかる電子機器接続ケーブルは、各ケーブルがセパレータを介して被覆部材により被覆されるので、デジタルノイズの影響の抑制と使い勝手の両立を図ることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、実施形態に係る電子機器接続ケーブルを示す図である。
【図2】図2は、接続コネクタの構成例を示す図である。
【図3】図3は、接続コネクタの構成例を示す図である。
【図4】図4は、実施形態に係る電子機器接続ケーブルの断面図である。
【図5】図5は、電子機器接続ケーブルの製造工程フローを示す図である。
【図6】図6は、実施形態に係る電子機器接続ケーブルの性能を評価する図である。
【図7】図7は、従来の電子機器接続ケーブルの性能を評価する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、下記の実施形態により本発明が限定されるものではない。また、下記の実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0019】
図1は、実施形態に係る電子機器接続ケーブルを示す図である。図2および図3は、接続コネクタの構成例を示す図である。図4は、実施形態に係る電子機器接続ケーブルの断面図である。なお、図4は、図1のI−I断面図である。
【0020】
本実施形態では、電子機器間、すなわちホスト機器であるパーソナルコンピュータ(以下、単に「PC」と称する)と、周辺機器であるUSBオーディオ機器との間を電気的に接続するUSBケーブルとして電子機器接続ケーブルを説明する。USBケーブルは、デジタル信号を伝達する+、−計2本の信号線および、電力を伝達する+、−計2本の電源線の計4本を2対のケーブルとして被覆することより一本のケーブルにまとめたものである。USBケーブル1は、図1に示すように、2つの接続コネクタ2,3と、ケーブル部4とを含んで構成されている。
【0021】
接続コネクタ2は、図2に示すように、プラグ21が形成されている。プラグ21は、実施形態ではUSB−A端子(オス)である。プラグ21には、複数の接続端子が形成されている。本実施形態では、プラグ21には、電源用端子であるVBus端子22、GND端子25、信号用端子である−D端子23、+D端子24が形成されている。各接続端子22〜25はそれぞれ、VBus端子22が後述する電源用ケーブル6の電源線61、−D端子23が後述する信号用ケーブル5の信号線51、+D端子24が信号用ケーブル5の後述する信号線52、GND端子25が電源用ケーブル5の後述する電源線62と電気的に接続されている。接続コネクタ2は、図示しないPCに形成されたプラグ(USB−A端子(メス))に接続され、各接続端子22〜25がPCと電気的に接続される。
【0022】
接続コネクタ3は、図3に示すように、プラグ31が形成されている。プラグ31は、実施形態ではUSB−B端子(オス)である。プラグ31には、複数の接続端子が形成されている。本実施形態では、プラグ31には、電源用端子であるVBus端子32、GND端子35、信号用端子である−D端子33、+D端子34が形成されている。各接続端子32〜35はそれぞれ、VBus端子32が電源線61、−D端子33が信号線51、+D端子34が信号線52、GND端子35が電源線62と電気的に接続されている。接続コネクタ3は、図示しないUSBオーディオ機器に形成されたプラグ(USB−B端子(メス))に接続され、各接続端子32〜35がUSBオーディオ機器と電気的に接続される。つまり、各接続端子22〜25,32〜35は、信号線51,52および電源線61,62の両端部にそれぞれに電気的に接続されているので、PCとUSBオーディオ機器とを電気的に接続する。従って、USBケーブル1は、PCから出力されたデータ、本実施形態では音データに基づく信号をUSBケーブル1の信号線51,52を介してUSBオーディオ機器に入力でき、PCからの電力をUSBケーブル1の電源線61,62を介してUSBオーディオ機器に供給することができる。
【0023】
ケーブル部4は、両端部が接続コネクタ2,3に接続され、可撓性を有する。ケーブル部4は、図4に示すように、信号用ケーブル5と、電源用ケーブル6と、セパレータ7と、被覆部材8とを含んで構成されている。ここで、本実施形態では、信号用ケーブル5と電源用ケーブル6との直径Dは同一である。
【0024】
信号用ケーブル5は、電子機器間でのデジタルデータの送受信を行うものであり、長手方向(同図紙面、鉛直方向)と直交する平面における断面形状が円形状である。信号用ケーブル5は、可撓性を有し、複数の信号線、本実施形態では2本の信号線51,52を含んで構成されている。各信号線51,52は、電子機器間でのデータの送受信を行うものであり、複数の電線53を撚ったものを可撓性のある材料で被覆することで形成されている。2つの信号線51,52は、可撓性を有するテープシールド54、編組シールド55およびジャケット56により被覆されている。テープシールド54は、絶縁性を有するテープであり、2つの信号線51,52を被覆する。ここで、テープシールド54と2つの信号線51,52との間には、綿糸、ジュード、ピアノ線、合成繊維などからなる介在57が設けられている。編組シールド55は、テープシールド54を被覆するものであり、静電シールド性・電磁シールド性の高い金属材料(例えば銅、銀、アルミニウム、鉄)、アモルファス合金、カーボンを含有する材料などからなる素線を編むことで形成されるものである。ジャケット56は、編組シールド55を被覆するものであり、ポリ塩化ビニル、ポリウレタンなどで形成されている。
【0025】
電源用ケーブル6は、電子機器間で電力の授受を行うものであり、長手方向(同図紙面、鉛直方向)と直交する平面における断面形状が円形状である。電源用ケーブル6は、可撓性を有し、複数の電源線、本実施形態では2本の電源線61,62を含んで構成されている。各電源線61,62は、電子機器間で電力の授受を行うものであり、複数の電線63を撚ったものを可撓性のある材料で被覆することで形成されている。2つの電源線61,62は、可撓性を有するテープシールド64、編組シールド65およびジャケット66により被覆されている。テープシールド64は、絶縁性を有するテープであり、2つの電源線61,62を被覆する。ここで、テープシールド64と2つの電源線61,62との間には、綿糸、ジュード、ピアノ線、合成繊維などからなる介在67が設けられている。編組シールド65は、テープシールド64を被覆するものであり、静電シールド性・電磁シールド性の高い金属材料(例えば銅、銀、アルミニウム、鉄)、アモルファス合金、カーボンを含有する材料などからなる素線を編むことで形成されるものである。ジャケット66は、編組シールド65を被覆するものであり、ポリ塩化ビニル、ポリウレタンなどで形成されている。
【0026】
セパレータ7は、信号用ケーブル5と電源用ケーブル6との間に挟み込まれるものである。セパレータ7は、信号用ケーブル5および電源用ケーブル6に沿って、信号用ケーブル5および電源用ケーブル6と同一(ほぼ同一)の長さで形成されている。セパレータ7は、本実施形態では、オレフィン系エラストマーにより、可撓性を有して形成されている。セパレータ7は、長手方向(同図紙面、鉛直方向)と直交する平面での断面視において、2つの凹部7a,7bが形成されている。凹部7a,7bは、信号用ケーブル5と電源用ケーブル6とに挟まれる位置に、互いに対向して形成されている。2つの凹部7a,7bは、一方が他方に向かって互いに凹み、長手方向と直交する平面での断面視において双曲線状に形成されている。本実施形態では、2つの凹部7a,7bの曲率半径は、信号用ケーブル5および電源用ケーブル6の半径と同一(製造時における誤差などを含む)に形成されている。セパレータ7は、長手方向(同図紙面、鉛直方向)と直交する平面での断面視において、2つの凹部7a,7bと直交する方向(同図紙面、上下方向)に凸部7c,7dがそれぞれ形成されている。セパレータ7は、2つの凹部7a,7bと直交する方向の長さL、すなわち凸部7c,7dの間の距離がケーブル、本実施形態では信号用ケーブル5および電源用ケーブル6の直径Dと同一である。つまり、セパレータ7は、信号用ケーブル5および電源用ケーブル6が接触する被覆部材8と信号用ケーブル5と電源用ケーブル6との間で接触することができる。ここで、セパレータ7の2つの凹部7a,7bの最短距離(信号用ケーブル5および電源用ケーブル6が2つの凹部7a,7bにそれぞれ接触した状態における信号用ケーブル5と電源用ケーブル6との距離)は、信号用ケーブル5および電源用ケーブル6の直径Dの30%〜75%となるように、設定されていることが好ましい。
【0027】
被覆部材8は、信号用ケーブル5、電源用ケーブル6およびセパレータ7を被覆するものである。被覆部材8は、信号用ケーブル5および電源用ケーブル6の変形に追従して変形するように構成されている。本実施形態では、被覆部材8は、例えばポリアミド合成繊維などの樹脂繊維である線状素材を全体として可撓性を有するように編むことで形成される編組チューブである。被覆部材8は、セパレータ7の2つの凹部7a,7bとそれぞれ接触した信号用ケーブル5および電源用ケーブル6に接触して信号用ケーブル5および電源用ケーブル6を被覆する。
【0028】
ここで、USBケーブル1の製造方法について説明する。図5は、電子機器接続ケーブルの製造工程フローを示す図である。まず、被覆部材8により、信号用ケーブル5、電源用ケーブル6およびセパレータ7を被覆して、ケーブル部4を製造する(ステップST1)。ここでは、セパレータ7の2つの凹部7a,7bにすでに製造されている信号用ケーブル5および電源用ケーブル6をそれぞれ接触させて、信号用ケーブル5と電源用ケーブル6との間にセパレータ7を挟み込む。次に、セパレータ7を挟み込んでいる信号用ケーブル5および電源用ケーブル6の外周面を覆うように、可撓性を有するように線状素材を編み込む。このとき、セパレータ7は、2つの凹部7a,7bに信号用ケーブル5および電源用ケーブル6がそれぞれ接触しているので、線状素材を編み込む際に、信号用ケーブル5と電源用ケーブル6とが相対移動することを規制することができる。また、線状素材を編み込む際に、信号用ケーブル5および電源用ケーブル6とともにセパレータ7が線状素材と接触することができる。これらにより、線状素材を編み込む際に、線状素材にテンションをかけながら編み込むことができ、編み込まれた線状素材からなる被覆部材8が信号用ケーブル5および電源用ケーブル6を互いに近づく方向に押圧した状態で被覆することができる。従って、ケーブル部4を容易に製造することができる。また、製造されたケーブル部4において、被覆部材8内の信号用ケーブル5、電源用ケーブル6およびセパレータ7が離れることを抑制することができ、互いの位置関係を一定のものとすることができる。
【0029】
次に、ケーブル部4を任意の長さ(例えば、1m程度)に切断し、両端部における信号線51,52、電源線61,62を各プラグ21,31の各接続端子22〜25,32〜35にそれぞれ電気的に接続することで、ケーブル部4をプラグ21,31に接続する(ステップST2)。
【0030】
次に、信号線51,52、電源線61,62を各接続端子22〜25,32〜35に電気的に接続した状態で、ケーブル部4の両端部が内部に含まれるように、樹脂材料を射出成形することで、各接続コネクタ2,3を成形する(ステップST3)。つまり、各接続コネクタ2,3は、樹脂材料を射出成形することで、ケーブル部4と一体的に形成される。
【0031】
以上のように、実施形態にかかるUSBケーブル1は、可撓性を有する信号用ケーブル5および電源用ケーブル6の間に可撓性を有するセパレータ7が挟まれた状態で、可撓性を有する被覆部材8により被覆されることでケーブル部4が形成されている。従って、ケーブル部4は、被覆部材8により信号用ケーブル5、電源用ケーブル6およびセパレータ7が一体的に形成されているので、一本のケーブルとして取り扱うことができる。これにより、信号用ケーブル5と電源用ケーブル6とが離間しているUSBケーブルと比較して、各ケーブルを引っかけることがなく、取り扱いに注意を要することが抑制でき、使い勝手を向上することができる。
【0032】
また、セパレータ7により信号用ケーブル5と電源用ケーブル6とが接触することなく、平行フィーダーのように、信号用ケーブル5および電源用ケーブル6を平行配置でき、信号用ケーブル5と電源用ケーブル6と間の距離を安定して、均一に維持することができる。これにより、信号線51,52と電源線61,62とをジャケットで被覆した、すなわち信号線51,52および電源線61,62を1本のケーブルとして構成した従来のUSBケーブルと比較して、信号線51,52と電源線61,62との間の距離が離れているので、デジタルノイズの影響を抑制することができる。また、ケーブル部4がケーブル部4の軸方向周りにねじられても、セパレータ7の復元力により信号用ケーブル5および電源用ケーブル6は、セパレータ7に外力が作用していない状態におけるセパレータ7との位置関係に復帰することができる。
【0033】
図6は、実施形態に係る電子機器接続ケーブルの性能を評価する図である。図7は、従来の電子機器接続ケーブルの性能を評価する図である。本実施形態に係るUSBケーブル1と、上記従来のUSBケーブルとをアイパターン測定による比較を行った。なお、図6,7において横軸は時間、縦軸は電圧である。また、1Sは、信号用ケーブル5から出力されるデジタル信号の1周期(クロック)の長さであり、+V,−Vは、信号用ケーブル5から出力されるデジタル信号の電圧値である。また、BIPは、基準となるタイミングマージンおよび電圧マージンを示す菱形のアイパターンである。ここで、USBケーブル1は、信号用ケーブル5および電源用ケーブル6の直径D(セパレータ7は、2つの凹部7a,7bと直交する方向の長さL)が4.0mm、セパレータ7の2つの凹部7a,7bの最短距離が1.5mm、セパレータ7の長手方向(同図紙面、鉛直方向)と直交する平面での断面視における長手方向(幅方向)の最大距離(最大幅)が3.0mm、被覆部材8の厚みが0.5mm、ケーブル部4の上記断面視における長手方向(幅方向)が9.5mm、短手方向(高さ方向)が5.0mmとする。
【0034】
図7に示すように、従来のUSBケーブルでは、信号用ケーブル5から出力されたデジタル信号の波形がBIPと一部重なっている。特に、電圧方向においてBIPと一部重なっているため、電圧マージンが低い。また、デジタル信号どうしのずれが大きいため、幅が太い波形パターンが形成されていることからジッターが多く発生している。一方、図6に示すように、本実施形態に係るUSBケーブル1では、信号用ケーブル5から出力されたデジタル信号の波形がBIPと重なっておらず、タイミングマージンおよび電圧マージンを十分に確保することができている。また、デジタル信号どうしのずれが少ないため、幅が細い波形パターンが形成されていることからジッターの発生が抑制されている。つまり、本実施形態にかかるUSBケーブル1は、従来のUSBケーブルと比較して、良好な波形を形成することができており、デジタルノイズの影響を抑制することができている。従って、PCから出力された音データがUSBケーブル1を介して入力されたUSBオーディオ機器から出力される音の音質の向上を図ることができる。以上のことから、本実施形態に係るUSBケーブル1は、デジタルノイズの影響の抑制および使い勝手の両立を図ることができる。
【0035】
なお、上記実施形態では、電子機器接続ケーブルとして信号用ケーブル5および電源用ケーブル6を有するUSBケーブル1について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、電子機器間でのデジタル信号の送受信を行うUSBケーブル以外の複合ケーブルであってもよい。この場合、電源用ケーブル6の代わりに信号用ケーブルであってもよい。つまり、電子機器接続ケーブルは、電子機器間でのデジタルデータの送受信を行う第1信号線を含む第1信号用ケーブル(信号用ケーブル5と同様の構成)、第1信号用ケーブルとは異なるデジタルデータの送受信を行う第2信号線を含む第2信号用ケーブル(信号用ケーブル5と同様の構成)、セパレータ7を被覆部材8により被覆してケーブル部を構成しても良い。ケーブル部4の両端部の接続コネクタ2,3は、電子機器に接続できるように形成されていればよい。これによれば、可撓性を有する第1信号用ケーブルおよび第2信号用ケーブルの間に可撓性を有するセパレータ7が挟まれた状態で、可撓性を有する被覆部材8により被覆されることでケーブル部4が形成されている。従って、上述のように、使い勝手を向上することができる。また、セパレータ7により第1信号用ケーブルと第2信号用ケーブルとが接触することがなく、上述のように、第1信号用ケーブルと第2信号用ケーブルと間の距離を安定して、均一に維持することができる。これにより、第1信号用ケーブルの信号線と第2信号用ケーブルの信号線との間の距離が離れているので、各線が電磁、静電誘導を発生することで他の線に及ぼすデジタルノイズの影響を抑制することができる。
【0036】
また、上記実施形態では、被覆部材8に樹脂繊維である線状素材を用いたが本発明はこれに限定されるものではなく、静電シールド性・電磁シールド性の高い金属材料、例えば銅メッキ線や銀線などの金属繊維を用いてもよい。この場合は、信号用ケーブル5の編組シールド55および電源用ケーブル6の編組シールド65とともにシールドとして機能するので、USBケーブル1を2重シールドとすることができ、USBケーブル1から外部に放射される不要輻射波を抑制することができ、外部の電子機器に対する輻射ノイズを抑制することができる。これにより、USBケーブル1の使用できる環境の拡大、例えば外部に放射される不要輻射波の量が制限される医療環境などに使用することができる。
【0037】
また、上記実施形態において、セパレータ7を電波吸収材で形成してもよい。電波吸収材としては、例えばバスタレード(登録商標)などがある。セパレータ7を電波吸収材で形成することで、電源用ケーブル6から外部に放出される不要輻射波を吸収することができるので、デジタルノイズの影響をさらに抑制することができる。また、セパレータ7は、誘電率を高める材料で形成されていることが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0038】
以上のように、本発明にかかる電子機器接続ケーブルは、信号線と電源線を有する電子機器接続ケーブルに有用であり、特に、デジタルノイズの影響の抑制と、使い勝手の両立を図ることに適している。
【符号の説明】
【0039】
1 USBケーブル(電子機器接続ケーブル)
2,3 接続コネクタ
21,31 プラグ
22,32 VBus端子
23,33 −D端子
24,34 +D端子
25,35 GND端子
4 ケーブル部
5 信号用ケーブル
51,52 信号線
53 電線
54 テープシールド
55 編組シールド
56 ジャケット56
6 電源用ケーブル
61,62 電源線
63 電線
64 テープシールド
65 編組シールド
66 ジャケット
7 セパレータ
7a,7b 凹部
7c,7d 凸部
8 被覆部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器間でのデジタルデータの送受信を行う信号線が含まれ、可撓性を有する信号用ケーブルと、
前記電子機器間で電力の授受を行う電源線が含まれ、可撓性を有する電源用ケーブルと、
前記信号線および前記電源線の両端部にそれぞれに電気的に接続され、前記電子機器と電気的に接続可能な接続端子と、
前記信号用ケーブルと前記電源用ケーブルとの間に挟み込まれ、可撓性を有するセパレータと、
前記信号用ケーブル、前記電源用ケーブルおよび前記セパレータを被覆し、前記信号用ケーブルおよび前記電源用ケーブルの変形に追従して変形する被覆部材と、
を備えることを特徴とする電子機器接続ケーブル。
【請求項2】
電子機器間でのデジタルデータの送受信を行う第1信号線が含まれ、可撓性を有する第1信号用ケーブルと、
前記第1信号用ケーブルとは異なるデジタルデータの送受信を行う第2信号線が含まれ、可撓性を有する第2信号用ケーブルと、
前記第1信号線および前記第2信号線の両端部にそれぞれに電気的に接続され、前記電子機器と電気的に接続可能な接続端子と、
前記第1信号用ケーブルと前記第2信号用ケーブルとの間に挟み込まれ、可撓性を有するセパレータと、
前記第1信号用ケーブル、前記第2信号用ケーブルおよび前記セパレータを被覆し、前記第1信号用ケーブルおよび前記第2信号用ケーブルの変形に追従して変形する被覆部材と、
を備えることを特徴とする電子機器接続ケーブル。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電子機器接続ケーブルにおいて、
前記セパレータは、長手方向と直交する平面での断面視において、前記信号用ケーブルおよび前記電源用ケーブルにそれぞれ接触するとともに、互いに対向する2つの凹部が形成されている電子機器接続ケーブル。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1つに記載の電子機器接続ケーブルにおいて、
前記被覆部材は、線状素材を編みことで可撓性を有する編組チューブである電子機器接続ケーブル。
【請求項5】
請求項4に記載の電子機器接続ケーブルにおいて、
前記線状素材は、金属製である電子機器接続ケーブル。
【請求項6】
請求項1〜5のうちいずれか1つに記載の電子機器接続ケーブルにおいて、
前記セパレータは、前記2つの凹部と直交する方向の長さが前記信号用ケーブルおよび前記電源用ケーブルの直径と同一である電子機器接続ケーブル。
【請求項7】
請求項1〜6のうちいずれか1つに記載の電子機器接続ケーブルにおいて、
前記セパレータは、電波吸収材で形成されている電子機器接続ケーブル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−65408(P2013−65408A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−202095(P2011−202095)
【出願日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【出願人】(593107926)株式会社クリプトン (6)
【Fターム(参考)】