説明

電子機器用ケースにおける防水構造

【課題】電子機器用ケースの組み立て効率を向上すること。
【解決手段】N個(Nは2以上の自然数)の押しボタン202を有する電子機器200を内部に収容する筺体110と、N個の押しボタン110に対応する位置で筺体110に形成されたN個の孔120と、N個の孔120を介してユーザが筺体110の外方からN個の押しボタン202を操作するための操作部130と、を備える電子機器用ケース100であって、操作部130が、N個の孔120のそれぞれに挿入される軸部131aを有するN個の操作ボタン131と、N個の軸部131aのそれぞれに嵌め込まれるN個のリング部132aが一体的に形成され、かつ、リング部132aが軸部131aと筺体110との間で挟み込まれることにより、N個の孔120を密閉する密閉部材132と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器を密閉状態で内部に収容する電子機器用ケースに関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルカメラ等の電子機器を内部に収容する電子機器用ケースには、電子機器に設けられた押しボタンをケース外方から押下するための操作ボタンが設けられているものがある。この場合、ケースには、操作ボタンの軸部が挿入される孔が形成されているため、操作ボタンの軸部にOリングを嵌め込むことにより孔からの浸水を防止する技術がある。また、操作ボタンが押下された後に初期位置に復帰させ、また、押し込んだ位置だけでなく初期位置でもゴム部材を圧縮した状態となるように、操作ボタンと筺体との間にゴム部材を挟み込んだ状態でケース内方側に突出した軸部にEリングを装着する技術がある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−19112号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、電子機器に押しボタンが多数設けられており、ケース外方からこれらの操作を可能とするためには、ケースにも多数の押しボタンに対応する位置に多数の孔を設け、これらの孔に操作ボタンの軸部をそれぞれ挿入する必要があり、当該多数の孔からの水の浸入を防止する必要がある。
【0005】
しかしながら、操作ボタンの軸部にOリングを嵌め込むことにより孔からの浸水を防止する場合、組み付け時に多数のOリングをそれぞれの軸部に挿入する必要があるため、特にケースに操作ボタンを多数設ける場合には組み立て効率を低下させる要因となっている。
【0006】
また、特許文献1のように、弾性部材をOリングの代替として用いるためには、多数の操作ボタンのそれぞれについて、操作ボタンと筺体との間でゴム部材を挟み込んだ状態でケースの内方側から操作ボタンの軸部にEリングを装着するという作業が必要であるため、組み立て効率がOリングを挿入する場合よりも悪い。
【0007】
本発明の目的は、電子機器用ケースの組み立て効率を向上することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明に係る電子機器用ケースは、N個(Nは2以上の自然数)の押しボタンを有する電子機器を内部に収容する筺体と、前記N個の押しボタンに対応する位置で前記筺体に形成されたN個の孔と、前記N個の孔を介してユーザが前記筺体の外方から前記N個の押しボタンを操作するための操作部と、を備える電子機器用ケースであって、前記操作部が、前記N個の孔のそれぞれに挿入される軸部を有するN個の操作ボタンと、前記N個の軸部のそれぞれに嵌め込まれるN個のリング部が一体的に形成され、かつ、前記リング部が前記軸部と前記筺体との間で挟み込まれることにより、前記N個の孔を密閉する密閉部材と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、電子機器用ケースの組み立て効率を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】(a)は本発明の第1の実施形態に係る電子機器用ケース100の背面図であり、(b)はA−A線に沿った断面図である。
【図2】電子機器用ケース100の操作部130の組付状態を示す分解斜視図である。
【図3】カバー部材の正面図及びB−B線に沿った断面図である。
【図4】押さえ部材の正面図及びC−C線に沿った断面図である。
【図5】密閉部材の正面図及びD−D線に沿った断面図である。
【図6】電子機器用ケース100の操作部130の組付状態を示す分解断面図である。
【図7】(a)は図1(b)の要部を拡大した図であり、(b)は操作部130を押下した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<第1の実施形態>
図1(a)は本発明の第1の実施形態に係る電子機器用ケース100の背面図であり、図1(b)はA−A線に沿った断面図である。図2は、電子機器用ケース100の操作部130の組付状態を示す分解斜視図である。なお、図2で示す筺体110は、要部を切り出した部位のみを示している。
【0012】
電子機器用ケース100は、電子機器200を密閉状態でケース内部に収容する。この電子機器用ケース100は、防塵用又は防水用として用いられる。電子機器用ケース100に収容される電子機器200としては、本実施形態では、例えば、デジタルカメラを想定する。電子機器200は、背面に設けられ、撮影した画像等を表示する液晶パネル201と、液晶パネル201に隣接して設けられ、ユーザが種々の入力操作を行うための9個の押しボタン202とを備える。
【0013】
なお、電子機器200には、9個の押しボタン202に加えて、他の部位に押しボタンが設けられていても構わないが、本実施形態では、液晶パネル201に隣接して、互いに近接する位置(つまり、まとまった位置)に配設された9個の押しボタンに着目した例について説明する。また、電子機器200は、デジタルカメラに限定されるものではなく、デジタルビデオカメラや携帯電話等の他の電子機器であってもよい。
【0014】
電子機器用ケース100は、電子機器200を内部に収容する筺体110と、9個の押しボタン202に対応する位置で筺体110に形成された9個の孔120と、9個の孔120を介して筺体110の外方からユーザが9個の押しボタン202を操作するための操作部130とを備える。
【0015】
筺体110は、図1(b)で示すように、例えば、正面ケース部材111と、正面ケース部材111に組み付けられる背面ケース部材112との2つのケース部材で構成され、その内部に電子機器100の種々の機能部品を収容する。また、筺体110の正面ケース部材111には、例えば、レンズ鏡筒を収容するための鏡筒収容部111aが形成される。
【0016】
筺体110は、図2及び図6で示すように、その外面からケース外方に2段階に突出する円筒状の突出部113を有する。つまり、突出部113のうちの根本部分が大径部113a、先端部分が小径部113bを形成する。大径部113aの深さが後述の密閉部材132の厚さと略同じであり、小径部113bの深さが後述の押さえ部材135の厚さと略同じである。
【0017】
9個の孔120のケース外方側の開口には、図6で示すように、後述する9個のリング部132aを収容するための収容部121が形成される。収容部121は、リング部132の厚さ(断面の直径)よりも小さい幅に形成されている。
【0018】
操作部130は、図2で示すように、9個の操作ボタン131と、9個の孔120を密閉するための密閉部材132と、操作ボタン131にケース外方への付勢力を負荷する9個の弾性部材133と、筺体110にネジ134bで固定され、9個の操作ボタン131及び9個の弾性部材133を内部に収容するカバー部材134と、9個の弾性部材133と密閉部材132のシート132bとの間に設けられ、9個の弾性部材133からケース内方への付勢力を受けると共に、密閉部材132をケース外方から押さえる押さえ部材135とを備える。
【0019】
9個の操作ボタン131は、図6で示すように、9個の孔120のそれぞれに挿入される軸部131aと、9個の軸部131aのケース外方側にそれぞれ設けられ、軸部131aよりも断面積が大きいボタン部131bとを有する。軸部131aの内方側端部には、電子機器200の押しボタン202に傷を付けないように、又は衝撃吸収のために、ボタンキャップ136が嵌められている。ボタン部131bの内方側端部には、ボタン部131bよりも径方向外方に突出した庇部131cが形成されている。庇部131cは、ボタン部131bの内方側端部に近接するにつれて径方向外方に突出するように傾斜している。
【0020】
弾性部材133は、操作ボタン131のボタン部131bの内方側端面と押さえ部材135との間にそれぞれ配設される。また、弾性部材133は、例えば、金属製のコイルスプリングである。しかし、これ以外にも、シリコンゴム等で形成された筒状のゴム部材等を用いることも可能である。
【0021】
図3は、カバー部材134の正面図及びB−B線に沿った断面図である。カバー部材134は、庇部131cを除くボタン部131bが通過可能なサイズであり、庇部131cが通過不可能なサイズである操作孔134aと、ネジ134bを通過させるためのネジ孔134b’とを有する。カバー部材134は、9個の操作ボタン131が操作されていない状態で操作孔134aからボタン部131bの一部がカバー部材134の外面から突出した状態となる(図5(a)参照)。カバー部材134は、例えば、ABS樹脂で形成される。
【0022】
操作孔134aは、ケース内方側の開口に近接するにつれて広がるように傾斜した斜面部134a’を有する。一方、ボタン部131bの庇部131cは、上記の通り、操作孔134aの斜面部134a’に対応して傾斜した斜面を形成している。操作ボタン131は、庇部131cが操作孔134aの斜面部134a’に当接することにより、カバー部材134の外方への飛び出しが規制される。
【0023】
これにより、庇部131cをカバー部材134の斜面部134a’に係止させるため、軸部131aを筺体110の内方に挿入してEリングで抜け留めを行う等の作業を省略できる。また、Eリング自体を用いないため、部品点数の削減につながる。更に、操作ボタン131が押下されていない状態で庇部131cと斜面部134a’が当接して操作孔134aを閉鎖するため、砂等の異物が軸部131aの摺動部に浸入することを防止することができる。
【0024】
図4は、押さえ部材135の正面図及びC−C線に沿った断面図である。押さえ部材135は、軸部131aを挿入するための軸挿入孔135cと、ケース外方から突出部113の小径部113bに嵌め込んで位置決めを行うための複数(本実施形態では、3つ)の位置決め孔135aと、軸挿入孔135cの周縁で押さえ部材135の外面から突出し、弾性部材133としてのコイルスプリングの位置決めを行うための突出部135bと、突出部135bの根本周縁に形成され、コイルスプリングの位置決めを行うための溝部135dとを有する。押さえ部材135は、例えば、ABS樹脂で形成される。
【0025】
図5は、密閉部材132の正面図及びD−D線に沿った断面図である。密閉部材132には9個の軸部131aのそれぞれに嵌め込まれ、かつ、軸部131aと筺体110との間で挟み込まれる9個のリング部132aが1つのシート132bに一体的に形成されている。密閉部材132は、例えば、ニトリルゴム等の合成ゴムにより形成される。
【0026】
9個のリング部132aは、シート132bからケース内方に向けて突出し、収容部121内で軸部131aと筺体110との間で径方向に挟み込まれる。密閉部材132は、ケース外方から突出部113の大径部113aに嵌め込んで位置決めを行うための複数(本実施形態では、3つ)の位置決め孔132cと、軸部131aを挿入するための軸挿入孔132dとを有する。
【0027】
図6は、電子機器用ケース100の操作部130の組付状態を示す分解断面図である。操作部130を筺体110に組み付ける際には、まず、密閉部材132の位置決め孔132cを筺体110の大径部113aに嵌め込むと共に、リング部132aを筺体110の収容部121に挿入する。そして、押さえ部材135の位置決め孔135aを筺体110の小径部113bに嵌め込む。次に、弾性部材133を押さえ部材135の突出部135bの周縁に配置し、弾性部材133、押さえ部材135、密着部材132及び筺体110に操作ボタン131の軸部131aを挿入する。その状態で、操作ボタン131をケース外方側から覆うようにカバー部材134を筺体110にネジ134bで固定する。これにより、操作ボタン131のボタン部131bは、操作孔134aを介してカバー部材134の外面から突出した状態となる。最後に、筺体110の内部に突出した軸部131aにボタンキャップ136を嵌め込んで組み付け作業が終了する。
【0028】
図7(a)は図1(b)の要部を拡大した図であり、図7(b)は操作部130を押下した状態を示す図である。ユーザが弾性部材133の弾性力に反して9個の操作ボタン131のいずれかのボタン部131bを押下すると、図7(b)で示すように、操作ボタン131の軸部131aがケース内方に挿入されていき、軸部131aの先端に嵌められたボタンキャップ136により電子機器200の押しボタン202が押下されることとなる。ユーザがボタン部131bから指を離すと、操作ボタン131は弾性部材133の弾性力により元の位置に復帰する。
【0029】
以上述べた通り、本実施形態によれば、複数のOリングを1つの部材で形成することにより、1つ1つの操作ボタン131の軸部131aにOリングを嵌め込む作業を省略できるため、電子機器用ケース100の組み立て効率を向上することができる。
【0030】
<他の実施形態>
なお、上記第1の実施形態では、電子機器用ケース100が、電子機器200の9個の押しボタン202に対応する位置に設けられた9個の操作ボタン131を備えるものとして説明したが、N個(Nは2以上の自然数)の操作ボタン131を備えているものであってもよい。N個の孔120からの浸水を防止するOリングを一体的に形成することにより、上記同様の効果を得ることができるためである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
N個(Nは2以上の自然数)の押しボタンを有する電子機器を内部に収容する筺体と、
前記N個の押しボタンに対応する位置で前記筺体に形成されたN個の孔と、
前記N個の孔を介してユーザが前記筺体の外方から前記N個の押しボタンを操作するための操作部と、
を備える電子機器用ケースであって、
前記操作部が、
前記N個の孔のそれぞれに挿入される軸部を有するN個の操作ボタンと、
前記N個の軸部のそれぞれに嵌め込まれるN個のリング部が一体的に形成され、かつ、前記リング部が前記軸部と前記筺体との間で挟み込まれることにより、前記N個の孔を密閉する密閉部材と、
を有することを特徴とする電子機器用ケース。
【請求項2】
前記N個の孔のケース外方側の開口に形成され、前記N個のリング部を収容するための収容部を更に備え、
前記N個のリング部が、1つのシートに一体的に形成されており、かつ、該シートからケース内方に向けて突出し、前記収容部内で前記軸部と前記筺体との間で径方向に挟み込まれることを特徴とする請求項1に記載の電子機器用ケース。
【請求項3】
前記N個の操作ボタンは、前記N個の軸部のケース外方側にそれぞれ設けられ、前記軸部よりも大きい断面積のボタン部を更に有し、
前記ボタン部の内方側端部には、前記ボタン部よりも径方向外方に突出した庇部が形成されており、
前記操作部は、
前記ボタン部の内方側端面と前記筺体との間にそれぞれ配設され、前記操作ボタンにケース外方への付勢力を負荷するN個の弾性部材と、
前記筺体に固定され、前記N個の操作ボタン及び前記N個の弾性部材を内部に収容するカバー部材と、を更に備え、
前記カバー部材は、前記庇部が通過不可能なサイズである操作孔を有し、かつ、前記N個の操作ボタンが操作されていない状態で前記操作孔から前記ボタン部の一部を前記カバー部材の外面から突出させることを特徴とする請求項2に記載の電子機器用ケース。
【請求項4】
前記操作孔がケース内方側の開口に近接するにつれて広がるように傾斜した第1の斜面部を有し、前記庇部が前記操作孔の第1の斜面部に対応して傾斜した第2の斜面部を有し、
前記操作ボタンが操作されていない状態で前記第2の斜面部が前記第1の斜面部に当接することにより、前記カバー部材の外方への飛び出しが規制されることを特徴とする請求項3に記載の電子機器用ケース。
【請求項5】
前記操作部は、前記N個の弾性部材と前記密閉部材との間に設けられ、前記N個の弾性部材からケース内方への付勢力を受けると共に、前記密閉部材をケース外方から押さえる押さえ部材を更に備えることを特徴とする請求項4に記載の電子機器用ケース。
【請求項6】
前記筺体は、その外面から突出する突出部を有し、
前記密閉部材及び前記押さえ部材は、ケース外方から前記突出部に嵌め込んで位置決めを行うための複数の位置決め孔を有することを特徴とする請求項5に記載の電子機器用ケース。
【請求項7】
前記N個の弾性部材が、コイルスプリングであり、
前記押さえ部材は、その外面から突出し、前記コイルスプリングの位置決めを行うためのN個の突出部を有することを特徴とする請求項6に記載の電子機器用ケース。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−238491(P2011−238491A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−109571(P2010−109571)
【出願日】平成22年5月11日(2010.5.11)
【出願人】(000126517)株式会社アサヒ (30)
【Fターム(参考)】