説明

電子機器

【課題】簡素な構造により、操作部の上にこぼれた液体の捕捉量を増大して防滴効果を高めるとともに、操作部の操作感を向上させる。
【解決手段】載置部14を有する筐体9と、上記載置部14に装着される操作部(タッチパッド6)と、載置部14の外周寸法よりも大きな外形寸法を有し、載置部14の下面側に設けられるとともに、平坦部27と、この平坦部27の周囲に立設されたリブ28,29,30と、平坦部27から下方に垂下し、上記操作部の下方の構造物(例えばベース筐体11や電子基板36等)に当接する凹部33,34とを有する防滴部材26と、を具備することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作部における防水性を向上させた電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えばノート型パソコンのキーボードあるいはタッチパッドのような操作部における防水性(防滴性)を確保するために、操作部の下方に防滴部材を設置した技術が特許文献1に開示されている。
【0003】
ここでは、キーボードの下方に平坦な浅い受け皿状(トレー状)の防滴部材が設置されている。これにより、万一キーボードの上に液体をこぼしても液体は防滴部材上に捕捉されるため、キーボードの下方に設置された電子基板等が濡れたり汚損して故障することを防止できる。
【特許文献1】特開2002−352659号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に開示された構造では、防滴部材が平坦な浅い受け皿状に形成されているため、捕捉できる液体の量が少ないという難点があった。このため、キーボードのように面積の広い操作部をカバーする場合はまだしも、タッチパッドのように面積の狭い操作部をカバーする場合には液体の捕捉量が絶対的に不足し、十分な防滴効果が得られなかった。
【0005】
しかも、防滴部材を定位置に保持してずれ等を防止するため、専用の嵌合形状や保持具を設けなければならず、構造が複雑になる懸念があった。
【0006】
さらに、操作部の下方が防滴部材によって筐体内壁や下方の構造物等から遮蔽されるため、操作部を下方から支持する支持脚等の構造物を設けることができず、このため操作部を押圧操作した際に操作部が下方に撓む傾向があって操作感が悪いという問題があった。
【0007】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、簡素な構造により、操作部の上にこぼれた液体の捕捉量を増大して防滴効果を高めるとともに、操作部の操作感を向上させることのできる電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係る電子機器は、載置部を有する筐体と、上記載置部に装着される操作部と、上記載置部の外周寸法よりも大きな外形寸法を有し、上記載置部の下面側に設けられるとともに、平坦部と、この平坦部周囲に立設されたリブと、上記平坦部から下方に垂下し、上記操作部の下方の構造物に当接する凹部とを有する防滴部材と、を具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る電子機器によれば、簡素な構造により、操作部の上にこぼれた液体の捕捉量を増大して防滴効果を高めるとともに、操作部の操作感を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0011】
[第1実施形態]
図1は、本発明の実施形態が適用された電子機器の一例を示すノート型パーソナルコンピューターの斜視図である。このパーソナルコンピューター1は、本体2に表示部3がヒンジ部4を介して開閉可能に接続されている。本体2の上面にはキーボード5やタッチパッド6等の操作部が設けられている。また、表示部3内部には液晶表示パネル(LCD)7が設けられている。
【0012】
本体2は樹脂製の本体筐体9を有し、表示部3は樹脂製の表示部筐体10を有する。本体筐体9は下側のベース筐体11と、このベース筐体11に上から被装固定されるカバー筐体12とを備えている。図2に示すように、カバー筐体12の上面にはキーボード5が装着される開口部状の載置部13と、タッチパッド6が装着される凹部状の載置部14とが形成され、載置部14には手前側に開口部15が形成されている。載置部14の左右両側は平坦なパームレスト領域16である。
【0013】
タッチパッド6はパッド部20とタッチパッドボタン21,22とが枠体23に保持されて一体にユニット化されており、枠体23が載置部14に密に嵌合して固定される。これにより、パッド部20とタッチパッドボタン21,22と枠体23の上面がパームレスト領域16の上面と滑らかに続く高さとなる。なお、タッチパッドボタン21,22は開口部15の真上に整合する。
【0014】
そして、防滴部材26が載置部14(開口部15)の下面側から被装され、これによりタッチパッド6の下面が覆われる。図3は防滴部材26を上方より見た斜視図、図4は防滴部材26を下方より見た斜視図、図5は図1のV−V線に沿う縦断面により本発明の第1実施形態を示す図である。
【0015】
防滴部材26は、例えばPET樹脂等の樹脂シートをフォーミング成形して形成され、平坦部27と、この平坦部27の周囲に起立するリブ28,29,30とを備えたトレー状に一体形成され、載置部14の外周寸法よりも大きな外形寸法を有している。リブ28,29,30は平坦部27の手前側と左右両側とに設けられ、平坦部27の奥側には設けられていない。平坦部27の奥側の部分は例えば両面テープ31で載置部14の下面に接着される。リブは28,29,30はそれぞれ載置部14の前縁と左右両側縁とに外接する。
【0016】
防滴部材26の平坦部27には下方に垂下する左右2つの凹部33,34が一体形成されている。これらの凹部33,34は防滴部材26のフォーミング成形時に同時に絞り加工される。各凹部33,34の位置は、防滴部材26が載置部14の下面側に被装された時に開口部15の下方に位置するように設定され、凹部33がタッチパッド6のタッチパッドボタン21の直下に位置し、凹部34がタッチパッドボタン22の直下に位置している。
【0017】
図5(a)または(b)に示すように、凹部33,34の長さ(深さ)は、凹部33,34の下端がタッチパッド6の下方の構造物に軽く当接する程度とされる。図5(a)の例では凹部33,34がベース筐体11に当接する長さとされ、図5(b)の例では凹部33,34が電子基板36に当接する長さとされている。電子基板36はビス37でベース筐体11の底面に形成された締結ボス38に締結固定されている。
【0018】
なお、ベース筐体11や電子基板36に限らず、他の内部構造物に凹部33,34の下端が当接するようにしてもよい。また、ここでは凹部33,34が四角柱状に形成されているが、上部が開放された有底形状であれば多角柱状や円柱状、円錐台状等、他の形状にすることも考えられる。凹部33,34の容積は、凹部33,34の側面が他の内部構造物に干渉しない範囲で、できるだけ大きくするのが望ましい。
【0019】
このような防滴部材26を設けたことにより、万一タッチパッド6の上に液体をこぼし、この液体が枠体23とタッチパッドボタン21,22の間の隙間を通って下方に流下しても、この液体は防滴部材26上に捕捉されるため、タッチパッド6の下方に設置された電子基板36等が濡れたり汚損して故障することを防止できる。その際、防滴部材26に形成した凹部33,34により、防滴部材26が捕捉できる液体の量が大幅に増大するため、十分な防滴効果を得ることができる。
【0020】
また、凹部33,34により、防滴部材26の上下方向への動き(ずれ)が規制されるため、専用の嵌合形状や保持具を設ける必要がなく、この点で構造を簡素化することができる。
【0021】
しかも、タッチパッド6のタッチパッドボタン21,22下方に位置する凹部33,34の下端が、タッチパッド6下方の内部構造物に軽く当接しているため、凹部33,34自体がタッチパッドボタン21,22を下方から支持する支持脚として機能する。このため、タッチパッドボタン21,22を押圧操作した際にタッチパッド6全体が下方に撓むことがなく、タッチパッドボタン21,22の操作感を向上させることができる。
【0022】
[第2実施形態]
図6は図1のVI−VI線に沿う縦断面により本発明の第2実施形態を示す図である。
【0023】
ここでは、操作部であるキーボード5のボード基板41を下方から覆うように面積の大きな防滴部材42が設けられている。この防滴部材42もPET樹脂等の樹脂シートをフォーミング成形して形成されており、平坦部43と、この平坦部43の周囲に起立するリブ44,45とを備えたトレー状に一体形成され、キーボード5が嵌め込まれる載置部13の外周寸法よりも大きな外形寸法を有している。
【0024】
防滴部材42の平坦部43には下方に垂下する複数の凹部46,47が一体形成されている。これらの凹部46,47の位置はキーボード5のキー48の位置に応じて適宜設定される。
【0025】
凹部46,47の長さ(深さ)は、凹部46,47の下端がキーボード5下方の構造物に軽く当接する程度とされる。例えば凹部46はキーボード5の下方に設置された電子基板49に当接する長さであり、凹部47はベース筐体11に当接する長さである。凹部46,47を電子基板49やベース筐体11以外の構造物に当接させてもよい。
【0026】
この防滴部材42を設けたことにより、キーボード5上にこぼれた液体を凹部46,47により確実に捕捉して電子基板49等の損傷を防止するとともに、凹部46,47を下方の内部構造に当接させたことにより防滴部材42の上下方向への動き(ずれ)を規制して専用の嵌合形状や保持具を省き構造を簡素化し、同時にキーボード5のキー48を操作する際におけるボード基板41の下方への撓みを阻止してキーボード5の操作感を向上させることができる。
【0027】
なお、第1実施形態の防滴部材26および第2実施形態の防滴部材42は共にPET樹脂等の樹脂シートをフォーミング成形して形成されているが、例えば軽合金シート等、他の材質のシートをプレス成形して防滴部材を形成すること等も考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施形態が適用された電子機器の一例を示すノート型パーソナルコンピューターの斜視図。
【図2】カバー筐体およびタッチパッド、防滴部材の斜視図。
【図3】防滴部材を上方より見た斜視図。
【図4】防滴部材を下方より見た斜視図。
【図5】図1のV−V線に沿う縦断面により本発明の第1実施形態を示す図で、(a)は防滴部材の凹部をベース筐体に当接させた状態を示す縦断面図、(b)は凹部を電子基板に当接させた状態を示す縦断面図。
【図6】図1のVI−VI線に沿う縦断面により本発明の第2実施形態を示す図。
【符号の説明】
【0029】
1 パーソナルコンピューター(電子機器)
2 本体筐体
6 タッチパッド(操作部)
9 本体筐体
11 ベース筐体(操作部の下方の構造物)
14 載置部
21,22 タッチパッドボタン
26 防滴部材
27 平坦部
28,29,30 リブ
33,34 凹部
36 電子基板(操作部の下方の構造物)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
載置部を有する筐体と、
上記載置部に装着される操作部と、
上記載置部の外周寸法よりも大きな外形寸法を有し、上記載置部の下面側に設けられるとともに、平坦部と、この平坦部周囲に立設されたリブと、上記平坦部から下方に垂下し、上記操作部の下方の構造物に当接する凹部とを有する防滴部材と、
を具備することを特徴とする電子機器。
【請求項2】
上記防滴部材は樹脂シートをフォーミング成形して上記平坦部と上記リブと上記凹部とを一体形成したことを特徴とする請求項1に記載の電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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