説明

電子機器

【課題】複数のタスクに排他処理を実装しても、それぞれのタスクの処理の競合、及びデッドロックの発生を回避することができる電子機器を提供すること。
【解決手段】携帯電話機1は、複数のタスクを実行するタスク実行部461と、タスク実行部461により複数のタスクが実行される際、これら複数のタスクに共通なリソース60へデータの送受信を実行する処理部462と、処理部462により複数のタスクがリソース60へデータの送受信を行う場合、これら複数のタスクのそれぞれに互いに異なる排他処理を実行する排他処理部463とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のタスクを実行する電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数のタスクを実行する電子機器において、それぞれのタスクの競合を回避しつつ、共通のリソースにアクセス可能にするためには、排他処理を実装する必要がある。
【0003】
排他処理は、電子機器内の複数のタスクを実行するソフトウェアにクリティカルセクションやセマフォを実装することで実現できる。また、特許文献1〜3に提案された技術を用いて排他処理を実行させることによっても実現することできる。
【0004】
特許文献1には、複数のタスクを実行するときの優先度を可変にし、一のタスクがリソースにアクセスしている間は、この一のタスクの優先度を他のタスクより高くすることにより、他のタスクによる割り込み処理を防ぐ事によって排他処理を実行する技術が提案されている。
【0005】
特許文献2及び3には、一のタスクがハードウェアからの割り込み処理を契機としてリソースにアクセスする場合、一のタスクがリソースにアクセスしている間は他のタスクによる割り込み処理を禁止し、リソースへのアクセスが終了した後に他のタスクの割り込み処理を有効にする技術が提案されている。
【特許文献1】特開平9−160790号公報
【特許文献2】特開平9−81526号公報
【特許文献3】特開平11−203149号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した特許文献1〜3の技術では、以下に示すような問題がある。図7及び図8は、従来の電子機器における処理の流れを示すシーケンス図である。図7に示すように、タスク120の書き込み処理と、タスク110の読み込み処理とを一対の処理Dとする。そして、処理D及びタスク120の書き込み処理を排他するために一の排他処理を実装すると、図8に示すように、タスク120はタスク110からの読み込み処理終了待ち、タスク110はタスク120の排他処理終了待ちとなる。このとき、タスク110とタスク120とは互いの処理の終了待ち状態となり、タスク110とタスク120とが動作しない状態(デッドロック)が発生してしまうことが想定される。
【0007】
そこで、本発明は、複数のタスクに排他処理を実装しても、それぞれのタスクの処理の競合、及びデッドロックの発生を回避することができる電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る電子機器は、上記課題を解決するために、複数のタスクを実行するタスク実行部と、前記タスク実行部により前記複数のタスクが実行される際、当該複数のタスクに共通なリソースへデータの送受信を実行する処理部と、前記処理部により前記複数のタスクが前記リソースへデータの送受信を行う場合、当該複数のタスクのそれぞれに互いに異なる排他処理を実行する排他処理部とを備えることを特徴とする。
【0009】
また、前記電子機器は、前記複数のタスクのうちの一のタスクへ前記リソースからの割り込み処理を実行する割り込み処理部と、前記タスク実行部により実行される際の優先度が前記複数のタスクのうちの他のタスクより前記一のタスクが低い場合、前記一のタスクにおいて前記割り込み処理部による前記リソースからの割り込み処理を禁止する割り込み禁止処理を実行する割り込み禁止処理部とを更に備えることが好ましい。
【0010】
また、前記電子機器において、前記処理部は、前記一のタスクにおいて前記リソースへデータを送信する送信処理を実行する送信処理部と、前記送信処理部によるデータの送信に応じて、前記リソースからデータを受信する受信処理を実行する受信処理部とを更に備え、前記排他処理部は、前記一のタスクにおいて前記送信処理部による送信処理と、前記受信処理部による受信処理とが実行される場合、前記排他処理に加えて更に異なる排他処理を実行することが好ましい。
【0011】
また、前記電子機器において、前記処理部は、前記一のタスクから前記リソースへデータの書き込み処理を実行する書き込み処理部と、前記リソースからのデータの読み込み処理を実行する読み込み処理部と、前記リソースによる処理の終了を待機する待機処理を実行する待機処理部とを更に備え、前記排他処理部は、前記書き込み処理部による書き込み処理と前記待機処理部による待機処理とが実行される前記複数のタスクのうちの第1のタスクと、前記割り込み処理部による割り込み処理に応じて前記読み込み処理部による読み込み処理が実行される前記複数のタスクのうちの第2のタスクとのそれぞれに互いに異なる排他処理を実行することが好ましい。
【0012】
また、前記電子機器において、前記割り込み禁止処理部は、前記タスク実行部により実行される際の優先度が前記第2のタスクよりも前記第1のタスクが低い場合、前記第1のタスクにおいて割り込み禁止処理を実行することが好ましい。
【0013】
また、前記電子機器において、前記処理部は、前記リソースへ描画処理を実行する描画処理部と、前記描画処理部による描画処理に応じて前記リソースからデータを受信する受信処理を実行する描画受信処理部とを更に備え、前記排他処理部は、前記複数のタスクのうちの第3のタスクにおいて前記描画処理部による描画処理と前記描画受信処理部による受信処理とが実行される場合、前記排他処理に加えて更に異なる排他処理を実行することが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、複数のタスクに排他処理を実装しても、それぞれのタスクの処理の競合、及びデッドロックの発生を回避することができる電子機器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について説明する。図1は、本発明に係る携帯電子機器の一例である携帯電話機1の外観斜視図を示す。なお、図1は、いわゆる折り畳み型の携帯電話機の形態を示しているが、本発明に係る携帯電話機の形態としては特にこれに限られない。例えば、両筐体を重ね合わせた状態から一方の筐体を一方向にスライドさせるようにしたスライド式や、重ね合せ方向に沿う軸線を中心に一方の筐体を回転させるようにした回転式(ターンタイプ)や、操作部と表示部とが一つの筐体に配置され、連結部を有さない形式(ストレートタイプ)でもよい。
【0016】
携帯電話機1は、操作部側筐体部2と、表示部側筐体部3と、を備えて構成される。操作部側筐体部2は、表面部に、操作部11と、携帯電話機1の使用者が通話時に発した音声が入力されるマイク12と、を備える。操作部11は、各種設定や電話帳機能やメール機能等の各種機能を作動させるための機能設定操作キー13と、電話番号の数字やメール等の文字等を入力するための入力操作キー14と、各種操作における決定やスクロール等を行う決定操作キー15と、から構成されている。
【0017】
また、表示部側筐体部3は、表面部に、各種情報を表示するためのLCD(Liquid Crystal Display)表示部21と、通話の相手側の音声を出力するスピーカ22と、を備える。
【0018】
また、操作部側筐体部2の上端部と表示部側筐体部3の下端部とは、ヒンジ機構4を介して連結されている。また、携帯電話機1は、ヒンジ機構4を介して連結された操作部側筐体部2と表示部側筐体部3とを相対的に回転することにより、操作部側筐体部2と表示部側筐体部3とが互いに開いた状態(開放状態)にしたり、操作部側筐体部2と表示部側筐体部3とを折り畳んだ状態(折畳み状態)にしたりできる。
【0019】
また、操作部側筐体部2は、外平面部に、時計やメールの着信等が表示されるサブLCD表示部30が備えられている。
【0020】
図2は、携帯電話機1の機能を示す機能ブロック図である。携帯電話機1は、図2に示すように、操作部11(入力部)と、マイク12と、メインアンテナ40と、RF回路部41と、LCD制御部42と、音声処理部43と、メモリ44(記憶部)と、制御部45と、が操作部側筐体部2に備えられ、LCD表示部21(表示部)と、スピーカ22と、ドライバIC23と、サブLCD表示部30とが表示部側筐体部3に備えられている。
【0021】
メインアンテナ40は、第1の使用周波数帯(例えば、800MHz)で基地局等と通信を行い、GPS通信のための第2の使用周波数帯(例えば、1.5GHz)に対応できるデュアルバンド対応構成である。なお、本実施の形態では、第1の使用周波数帯として、800MHzとしたが、これ以外の周波数帯であってもよい。また、メインアンテナ40は、第1の使用周波数帯で外部装置と通信を行い、GPS通信のための第2の使用周波数帯に対応できるアンテナを別途設けてもよい。
【0022】
RF回路部41は、メインアンテナ40によって受信した信号を復調処理し、処理後の信号を制御部45に供給する。そして、制御部45から供給された信号を変調処理し、メインアンテナ40を介して外部装置(基地局)に送信する。また、その一方で、メインアンテナ40によって受信している信号の強度を制御部45に通知する。
【0023】
LCD制御部42は、制御部45の制御にしたがって、所定の画像処理を行い、処理後の画像データをドライバIC23に出力する。ドライバIC23は、LCD制御部42から供給された画像データをフレームメモリに蓄え、所定のタイミングでLCD表示部21又はサブLCD表示部30に出力する。
【0024】
音声処理部43は、制御部45の制御にしたがって、RF回路部41から供給された信号に対して所定の音声処理を行い、処理後の信号をスピーカ22に出力する。スピーカ22は、音声処理部43から供給された信号を外部に出力する。
【0025】
また、音声処理部43は、制御部45の制御にしたがって、マイク12から入力された信号を処理し、処理後の信号をRF回路部41に出力する。RF回路部41は、音声処理部43から供給された信号に所定の処理を行い、処理後の信号をメインアンテナ40に出力する。
【0026】
メモリ44は、例えば、ワーキングメモリを含み、制御部45による演算処理に利用される。また、メモリ44には、複数のアプリケーションや当該アプリケーションが必要とする各種のテーブルや各種情報等が記憶されている。また、メモリ44は、着脱可能な外部メモリを兼ねていてもよい。
【0027】
制御部45は、携帯電話機1の全体を制御しており、中央処理装置(CPU)等を用いて構成される。
【0028】
図3は、制御部45及びLCD制御部42の機能及び動作について示す機能ブロック図である。図3に示すように、制御部45は、少なくとも、ベースバンド用のCPUであるCPU451と、ワンセグデータのデコード機能や画像処理、表示処理、カメラ機能に関する処理等を実行するコプロセッサであるCPU452とを含んで構成される。
【0029】
LCD制御部42は、CPU452を基準としてCPU451とは反対側に配置され、CPU451とCPU452とは、共通のデータバス50を用いて通信を行い、また、CPU452と、LCD制御部42とは、共通のデータバス51を用いて通信を行う。
【0030】
すなわち、CPU451に対するCPU452及びLCD制御部42は、CPU451から共通にアクセスし、CPU451へ共通にアクセスされるリソースであるといえる。以下、リソースとしてのCPU452及びLCD制御部42をリソース60という。
【0031】
このように、本実施形態の制御部45により実行される複数のタスクには、これら複数のタスクからのリソース60への同時アクセスによる競合の発生を防ぐために、各々のタスクに排他処理を実行させることが必要となる。
【0032】
CPU451は、複数のタスクを並行して実行するタスク実行部461と、複数のタスクに所定の処理を実行する処理部462と、複数のタスクに排他処理を実行する排他処理部463と、複数のタスクに割り込み禁止処理を実行する割り込み禁止処理部464とを備える。
【0033】
CPU452は、タスクを実行するタスク実行部481と、所定の処理を実行する処理部491とを備える。また、処理部491は、CPU451へ割り込み処理を実行する割り込み処理部491を備える。
【0034】
タスク実行部461は、複数のタスクの実行を管理し、これら複数のタスクを並行して実行する。また、複数のタスクのそれぞれには、タスク実行部461により実行される際の優先度が予め設定され、メモリ44に記憶されている。
【0035】
処理部462は、タスク実行部461により複数のタスクが実行される際、これら複数のタスクに共通なリソース60へデータの送受信を実行する。
【0036】
また、処理部462は、一のタスクからリソース60へデータの書き込み処理を実行する書き込み処理部471と、リソース60からのデータの読み込み処理を実行する読み込み処理部472と、リソース60による処理の終了を待機するための待機処理を実行する待機処理部473と、一のタスクにおいてリソース60へデータを送信する送信処理を実行する送信処理部474と、送信処理部474によるデータの送信に応じて、リソース60からデータを受信する受信処理を実行する受信処理部475と、リソース60に対して描画処理を実行する描画処理部476と、描画処理部476による描画処理に応じて、リソース60からデータを受信する受信処理を実行する描画受信処理部477と備える。
【0037】
排他処理部463は、処理部462により複数のタスクがリソース60データの送受信を行う場合、これら複数のタスクのそれぞれに互いに異なる排他処理を実行する。
【0038】
そして、割り込み禁止処理部464は、タスク実行部461により実行される際の優先度が、複数のタスクのうちの他のタスクより一のタスクが低い(以降、「他のタスク>一のタスク」と表現することがある)場合、一のタスクにおいて、割り込み処理部491によるリソース60からの割り込み処理を禁止する割り込み禁止処理を実行する。
【0039】
そして、排他処理部463は、一のタスクにおいて送信処理部474によるリソース60への送信処理と、受信処理部475によるリソース60からの受信処理とが実行される場合、一のタスクにおいて実行される排他処理に加えて、更に異なる排他処理を一のタスクにおいて実行する。
【0040】
また、排他処理部463は、書き込み処理部471による書き込み処理と待機処理部473による待機処理とが実行される第1のタスクと、割り込み処理部491による割り込み処理に応じて、読み込み処理部472による読み込み処理を実行する第2のタスクとのそれぞれに互いに異なる排他処理を実行する。
【0041】
そして、割り込み禁止処理部464は、タスク実行部461により実行される際の優先度が第2のタスクよりも第1のタスクが低い(第2のタスク>第1のタスク)場合、第1のタスクにおいて割り込み禁止処理を実行する。
【0042】
そして、排他処理部463は、複数のタスクのうちの第3のタスクにおいて描画処理部476による描画処理と、描画受信処理部477による受信処理とが実行される場合、第3のタスクにおいて実行される排他処理に加えて、更に異なる排他処理を実行する。
【0043】
次に、本発明に係る第1実施形態〜第3実施形態について説明する。
【0044】
<第1実施形態>
図4は、本発明の第1実施形態に係る制御部45の処理の流れを示すシーケンス図である。第1実施形態では、CPU451において、タスク実行部461によりタスク100及びタスク110が実行され、CPU452において、タスク実行部481によりタスク200が実行される。また、タスク実行部461によりタスクが実行される際の優先度は、「タスク100>タスク110」と設定されている。
【0045】
ステップS1において、排他処理部463は、タスク110における排他処理Aの実行を開始する。
【0046】
ステップS2において、排他処理部463は、タスク110における書き込み処理部471による書き込み処理の開始前に、排他処理Aの実行を開始する。このとき、ステップS1での排他処理Aの開始と重複するが、同一タスク上での処理であるため、無視される。
【0047】
ステップS3において、書き込み処理部471は、CPU452のタスク200に対して書き込み処理を実行する。
【0048】
ステップS4において、排他処理部463は、ステップS3における書き込み処理の終了に応じて、排他処理Aを終了する。
【0049】
ステップS5において、待機処理部473は、タスク100における読み込み処理の終了を待機する待機処理を実行する。
【0050】
ステップS6において、割り込み処理部491は、タスク100に対して割り込み処理を実行する。
【0051】
ステップS7において、排他処理部463は、ステップS6における割り込み処理に応じて、タスク100における読み込み処理部472による読み込み処理の開始前に、排他処理Bの実行を開始する。
【0052】
ステップS8において、読み込み処理部472は、タスク200からの読み込み処理を実行する。
【0053】
ステップS9において、読み込み処理部472は、タスク100における読み込み処理の終了をタスク110へ通知する。
【0054】
ステップS10において、排他処理部463は、タスク100における排他処理Bを終了する。
【0055】
ステップS11において、排他処理部463は、タスク110における排他処理Aを終了する。
【0056】
このように第1実施形態の携帯電話機1によれば、排他処理部463は、割り込み処理に応じて読み込み処理が実行されるタスク100と、書き込み処理と待機処理とが実行されるタスク110とで互いに異なる排他処理を実行する。
【0057】
これにより、排他処理Aと排他処理Bとは互いに干渉しないため、タスク110において排他処理Aを開始した後に、タスク110よりも優先度の高いタスク100において排他処理Bを開始した場合であっても、タスク100の処理が停止することなく、タスク100における読み込み処理が実行される。そして、タスク100における読み込み処理の終了によりタスク110の待機処理を終了させることが可能となり、デッドロックの発生を回避することができる。
【0058】
<第2実施形態>
図5は、第2実施形態に係る制御部45の処理の流れを示すシーケンス図である。第2実施形態も第1実施形態と同様に、CPU451において、タスク実行部461によりタスク100及びタスク110が実行され、CPU452において、タスク実行部481によりタスク200が実行される。また、タスク実行部461によりタスクが実行される際の優先度は、「タスク100>タスク110」と設定されている。
【0059】
ステップS21において、排他処理部463は、タスク110における排他処理Aの実行を開始する。
【0060】
ステップS22において、排他処理部463は、タスク110における書き込み処理部471による書き込み処理の開始前に、排他処理Aの実行を開始する。このとき、ステップS21での排他処理Aの開始と重複するが、同一タスク上での処理であるため、無視される。
【0061】
ステップS23において、書き込み処理部471は、CPU452のタスク200に対して書き込み処理を実行する。また、同時に割り込み禁止処理部464は、タスク100よりも優先度の低いタスク110において、割り込み禁止処理を実行する。
【0062】
ステップS24において、排他処理部463は、ステップS23における書き込み処理の終了に応じて、排他処理Aを終了する。また、同時に割り込み禁止処理部464は、タスク110における割り込み禁止処理を終了する。
【0063】
ステップS25において、待機処理部473は、タスク100における読み込み処理の終了を待機する待機処理を実行する。
【0064】
ステップS26において、割り込み処理部491は、タスク100に対して割り込み処理を実行する。ここで、割り込み処理部491は、ステップS23の書き込み処理中には、タスク110に割り込み禁止処理が実行されているため、ステップS23の書き込み処理の終了後に、割り込み処理を実行する。
【0065】
ステップS27において、排他処理部463は、ステップS26における割り込み処理に応じて、タスク100における読み込み処理部472による読み込み処理の開始前に、排他処理Bの実行を開始する。
【0066】
ステップS28において、読み込み処理部472は、タスク200からの読み込み処理を実行する。
【0067】
ステップS29において、読み込み処理部472は、タスク100における読み込み処理の終了をタスク110へ通知する。
【0068】
ステップS30において、排他処理部463は、タスク100における排他処理Bを終了する。
【0069】
ステップS31において、排他処理部463は、タスク110における排他処理Aを終了する。
【0070】
このように第2実施形態の携帯電話機1によれば、排他処理部463により、タスク100と、タスク110とで互いに異なる排他処理を実行することに加え、割り込み禁止処理部464は、タスク100よりも優先度の低いタスク110において、タスク200からの割り込みを禁止する割り込み禁止処理を実行する。
【0071】
これにより、タスク110における書き込み処理中は、タスク200からの割り込み処理が禁止されるため、タスク110におけるタスク200への書き込み処理中に、タスク100におけるタスク200からの読み込み処理を排他することができ、タスク100とタスク110とで処理が競合することを回避することができる。
【0072】
<第3実施形態>
図6は、第3実施形態に係る制御部45の処理の流れを示すシーケンス図である。第3実施形態は、第1及び第2実施形態に加えて、タスク実行部461によりタスク120が実行される点が第1及び第2実施形態とは異なる。また、タスク実行部461によりタスクが実行される際の優先度は、「タスク100>タスク110>タスク120」と設定されている。
【0073】
ステップS41において、排他処理部463は、タスク110における書き込み処理部471による書き込み処理の開始前に、排他処理Aの実行を開始する。
【0074】
ステップS42において、書き込み処理部471は、タスク110においてCPU452のタスク200に対して書き込み処理を実行する。また、同時に割り込み禁止処理部464は、タスク100よりも優先度の低いタスク110において割り込み禁止処理を実行する。
【0075】
ステップS43において、排他処理部463は、タスク120において排他処理Aを開始する。
【0076】
ステップS44において、排他処理部463は、タスク120において排他処理Bを開始する。
【0077】
ステップS45において、待機処理部473は、タスク120において待機処理を実行する。このとき、待機処理部473は、タスク110において実行される排他処理Bの終了を待機する。
【0078】
ステップS46において、排他処理部463は、タスク110における排他処理Aを終了し、待機処理部473へ通知する。
【0079】
ステップS47において、描画処理部476は、タスク110における排他処理Aの終了通知に応じて、LCD制御部42のタスク300に対して描画処理を実行する。
【0080】
ステップS48において、割り込み処理部491は、タスク100に対して割り込み処理を実行する。
【0081】
ステップS49において、排他処理部463は、排他処理Bの実行を開始する。
【0082】
ステップS50において、待機処理部473は、タスク100において待機処理を実行する。このとき、待機処理部473は、タスク120における排他処理Bの終了を待機する。
【0083】
ステップS51において、描画受信処理部477は、ステップS47における描画処理に応じて、タスク300からの描画処理が終了したことの通知を受信する。
【0084】
ステップS52において、排他処理部463は、タスク120における排他処理Bを終了する。
【0085】
ステップS53において、排他処理部463は、タスク120における排他処理Aを終了する。
【0086】
ステップS54において、読み込み処理部472は、タスク100における読み込み処理を実行する。このとき、読み込み処理部472は、タスク200からデータの読み込み処理を実行する。
【0087】
ステップS55において、排他処理部463は、タスク100における排他処理Aを終了する。
【0088】
このように第3実施形態の携帯電話機1によれば、排他処理部463は、タスク120において描画処理部476による描画処理と、描画受信処理部477による受信処理とが実行される場合、タスク120において、排他処理Aに加えて排他処理Bを実行する。
【0089】
これにより、タスク110における書き込み処理中には、排他処理Aと、割り込み禁止処理が実行される。また、タスク100における読み込み処理中には、排他処理Bが実行される。また、タスク120における描画処理中には、排他処理Aと排他処理Bとが実行される。
【0090】
したがって、これらのタスク100における読み込み処理、タスク110における書き込み処理、及びタスク120における描画処理が同時に実行されて、処理が競合することを回避できる。
【0091】
以上、好適な実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく種々の形態で実施することができる。例えば、本実施形態において、携帯電子機器として携帯電話機1について説明しているが、これに限定されず、PHS(登録商標;Personal Handy phone System)、PDA(Personal Digital Assistant)、ポータブルナビゲーション装置、ノートパソコン等であってもよい。
【0092】
また、上述の実施形態では、CPU451は、ベースバンド用のCPUであり、CPU452は、コプロセッサであり、また、リソース60は、CPU452とLCD制御部42とで構成されたが、これに限らず、他の機能及び動作を行うCPUを用いて構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】本発明に係る携帯電子機器の一例である携帯電話機の外観斜視図である。
【図2】携帯電話機の機能を示す機能ブロック図である。
【図3】制御部及びLCD制御部の機能及び動作について示す機能ブロック図である。
【図4】第1実施形態に係る制御部の処理の流れを示すシーケンス図である。
【図5】第2実施形態に係る制御部の処理の流れを示すシーケンス図である。
【図6】第3実施形態に係る制御部の処理の流れを示すシーケンス図である。
【図7】従来の電子機器における処理の流れを示すシーケンス図である。
【図8】従来の電子機器における処理の流れを示すシーケンス図である。
【符号の説明】
【0094】
1 携帯電話機
42 LCD制御部
45 制御部
60 リソース
461 タスク実行部
462 処理部462
463 排他処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のタスクを実行するタスク実行部と、
前記タスク実行部により前記複数のタスクが実行される際、当該複数のタスクに共通なリソースへデータの送受信を実行する処理部と、
前記処理部により前記複数のタスクが前記リソースへデータの送受信を行う場合、当該複数のタスクのそれぞれに互いに異なる排他処理を実行する排他処理部とを備えることを特徴とする電子機器。
【請求項2】
前記複数のタスクのうちの一のタスクへ前記リソースからの割り込み処理を実行する割り込み処理部と、
前記タスク実行部により実行される際の優先度が前記複数のタスクのうちの他のタスクより前記一のタスクが低い場合、前記一のタスクにおいて前記割り込み処理部による前記リソースからの割り込み処理を禁止する割り込み禁止処理を実行する割り込み禁止処理部とを更に備えることを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記処理部は、
前記一のタスクにおいて前記リソースへデータを送信する送信処理を実行する送信処理部と、
前記送信処理部によるデータの送信に応じて、前記リソースからデータを受信する受信処理を実行する受信処理部とを更に備え、
前記排他処理部は、前記一のタスクにおいて前記送信処理部による送信処理と、前記受信処理部による受信処理とが実行される場合、前記排他処理に加えて更に異なる排他処理を実行することを特徴とする請求項2に記載の電子機器。
【請求項4】
前記処理部は、
前記一のタスクから前記リソースへデータの書き込み処理を実行する書き込み処理部と、
前記リソースからのデータの読み込み処理を実行する読み込み処理部と、
前記リソースによる処理の終了を待機する待機処理を実行する待機処理部とを更に備え、
前記排他処理部は、前記書き込み処理部による書き込み処理と前記待機処理部による待機処理とが実行される前記複数のタスクのうちの第1のタスクと、前記割り込み処理部による割り込み処理に応じて前記読み込み処理部による読み込み処理が実行される前記複数のタスクのうちの第2のタスクとのそれぞれに互いに異なる排他処理を実行することを特徴とする請求項2に記載の電子機器。
【請求項5】
前記割り込み禁止処理部は、前記タスク実行部により実行される際の優先度が前記第2のタスクよりも前記第1のタスクが低い場合、前記第1のタスクにおいて割り込み禁止処理を実行することを特徴とする請求項4に記載の電子機器。
【請求項6】
前記処理部は、
前記リソースへ描画処理を実行する描画処理部と、
前記描画処理部による描画処理に応じて前記リソースからデータを受信する受信処理を実行する描画受信処理部とを更に備え、
前記排他処理部は、前記複数のタスクのうちの第3のタスクにおいて前記描画処理部による描画処理と前記描画受信処理部による受信処理とが実行される場合、前記排他処理に加えて更に異なる排他処理を実行することを特徴とする請求項5に記載の電子機器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate