説明

電子機器

【課題】外部からのごみや塵埃をプロジェクタ機器の内部に吸引することなく、電子機器が発生する熱を抑制することによって液晶パネルなどの長寿命化を図りながら、投射される画質の向上を可能とする電子機器を提供する。
【解決手段】外気を吸入する吸入口と吸入した外気を排出する排出口とを設けた冷却部筐体と、密閉空間をなす構造とした本体部筐体とで構成され、冷却部筐体に載置された冷却装置が、異なる2つの通風流路を構成し、冷却装置の通風流路の一方は、冷却部筐体の吸入口と排気口とを連通して冷却風流路を構成し、冷却装置の他方の通風流路は、本体部筐体と密閉空間をなすように接続され電子機器内の空気循環流路を構成としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器の冷却に係わり、外気空気を供給して冷却する装置において外部からのごみや塵埃の進入を阻止するプロジェクタ機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プロジェクタ機器は、高画質化に伴って、情報のプレジェンテーションのニーズや、映像の鑑賞などに対応した大画面の表示機器として使途を幅広く拡大している。
【0003】
このプロジェクタ機器は、一般的に高圧水銀ランプを光源とし、光源の光を表示パネルに投射して情報を形成し、投射光学系によって拡大表示するものである。情報の高輝度化、高精細化などの要望に対応して、光源や、情報処理回路などの発熱量も増大している。しかも、液晶表示パネルのような耐熱特性の強靭でない部品等を有している。これらのことから、プロジェクタ機器は、一般的にファンによって外部空気を取り込んで冷却を行っている。
【0004】
さらには、プロジェクタ機器の使途の拡大によって、オフィスのような室内環境での使用だけでなく、土塵、粉塵が比較的多く飛散する環境などでにおいても使用されることから、空気の取込み口には、エアフィルターが設置されている状況にある。
【0005】
ただ、エアフィルターによる防塵は、エアフィルターの捕塵能力を経時変化させる。例えば、微細粒子は次第に通過してしまい、逆にフィルターは目詰まりにより冷却効率を低下させることになる。
【0006】
これらの課題に対応し、防塵を図る技術として特許文献1、及び特許文献2が開示されている。
【0007】
【特許文献1】特開2001−343707号公報
【特許文献2】特開2005−121250号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ただ、上記した従来技術においては、解決しなければならない課題がある。
【0009】
特許文献1に記載の防塵装置は、一方に清浄空気の供給孔、もう一方に冷却に使用された暖気の排気口を設けた格納箱とし、光学電子機器を格納箱に配置して、排気口を光学機器の光の出口として利用するものである。しかし、特許文献1に記載の技術は、箱内圧力を十分高くすることによって、複数の小さな穴から空気は流出するが、粉塵は流入しない構造とすることから、空気の流入量を増大させる必要がある。すなわち、空気の流入量の増大は、大型のファンによる装置の大型化や、ファンの高速回転による騒音の増大等の問題が生じる懸念があるが、何らの配慮もなされていない。
【0010】
特許文献2に記載のリアプロジェクタは、被冷却体と送風装置を密閉空間に収納し、送風装置に対向して熱電変換素子の低温部を配置し、熱電変換素子の低温部で冷却された空気を被冷却体に送風する冷却装置を搭載している。しかし、特許文献2に記載の技術においては、熱伝変換素子や、その温度制御のための温度センサ、および制御回路等を必要とすることでコスト増加を招く懸念がある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明における電子機器は、吸入する外気で熱変換によって発熱部を冷却する電子機器であって、電子機器と、電子機器を搭載する本体部筐体と、電子機器を冷却する冷却装置と、冷却装置を載置する冷却部筐体と、を有している。
【0012】
冷却部筐体は、外気を吸入する吸入口と、吸入した外気を排出する排出口とを設けてあり、本体部筐体は、密閉空間をなしている。
【0013】
冷却装置は、フィンを設けた熱交換器と、熱交換器の通風路に対向して配置され通風流路を形成するダクトとを有し、ダクトは、異なる2つの通風流路を構成し、通風流路の一方は、冷却部筐体の吸入口と排気口とを連通して冷却風流路を構成され、他方の通風流路は、本体部筐体と密閉空間をなすように接続されて電子機器内の空気循環流路を構成している。
【発明の効果】
【0014】
本発明の上記のような構成としたプロジェクタ機器によれば、外部からのごみや塵埃をプロジェクタ機器の内部に吸引することなく、電子機器が発生する熱を抑制することによって液晶パネルの長寿命化などを図りながら、投射される画質の向上を可能とする電子機器が提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0016】
図1は、本発明の実施例における電子機器の構成概念図である。図1において、平面図は電子機器の本体部筐体内を示し、正面図は冷却装置を搭載する冷却部筐体内を概念的に示している。
【0017】
図1に示すように、本発明の実施例である電子機器(プロジェクタ機器)1は、本体部筐体2と、冷却部筐体3と、を隣接、積層して有している。
【0018】
本体部筐体2は密閉空間を構成する構造とされ、密閉空間内にプロジェクタ機器1を構成する部品として、光源11、表示パネル等の光学モジュール12、レンズ等の投射光学系13、および電源14などを載置している。これらの構成部品は、発熱する状況にあり、この構成部品を冷却するために本体部筐体2の内部には、複数個のファン4を搭載している。
【0019】
ファン4は、発熱する構成部品に本体部筐体2内の空気を矢印で示すように送風する。構成部品の発熱は、ファンによって送風される空気とで熱交換される。すなわち、構成部品は冷却され、本体部筐体2内の空気は高温となる。
【0020】
一方、本体部筐体2は、外部からの塵埃等の進入を遮断するために前述したように密閉空間として構成されている。このため、発熱部品を冷却し続けるためには、発熱部品に送風する本体部筐体2内の空気を低温状態に変換しておく必要がある。
【0021】
ここで、この本体部筐体2内の発熱構成部品によって熱伝達され高温となった空気を低温状態に変換するための冷却装置5について説明する。
【0022】
冷却装置5は、本体部筐体2の積層方向の下部において隣接して設置されている冷却部筐体3に載置されている。図1に記載された冷却装置は、説明を分かり易くするために通風流路を概念的に2つとして記述してある。ただ、通風流路は、図示した形状に限定されるものではない。
【0023】
また、本体部筐体2には、密閉空間の唯一の開口部として冷却部筐体3内の冷却装置5と接続される通風口6(6a、6b)を形成している。しかし、本体部筐体2の通風口6(6a、6b)は、冷却装置5(詳細は後述する)の一方の通風流路をなす流路口の各々と接合されている。すなわち、冷却装置5の一方の通風流路5aを含めて密閉空間の構成をなし、図1の正面図の矢印で示すように、本体部筐体2内の空気が、冷却装置5の一方の通風流路5aにおいて循環される。
【0024】
一方、冷却装置5が載置されている冷却部筐体3には、外気の吸気口31と排気口32とが設置されている。冷却部筐体3の吸気口31から吸入された外気の冷却空気は、冷却装置5に設けられた他の通風流路5bを白抜きの矢印に示すように通風され、冷却部筐体3の排気口32から外部に放出される。
【0025】
よって、1つの冷却装置5は、2つの通風流路5a、5bを形成することによって、本体部筐体2内と外部とを遮断する構造である。
【0026】
ここで、冷却装置5の構造と実施の形態について説明する。
【0027】
図2は、本発明の実施例における冷却装置の概要を示す分解斜視図である。図2に示すように、冷却装置5は、熱交換器51と、熱交換器51への通風流路を構成するダクト52、53とを有する。熱交換機51は、枠体511を複数の棚板512で区画され、すべての棚板512間には、コルゲートフィン(以後フィンと称す)513を付設している。フィン513を設けた棚板512間が熱交換器51の通風流路51a、51bとして形成される。
【0028】
フィン513は、熱交換器51を通風される空気との接触面積を増大させ、空気との熱交換の性能を向上させる機能を有している。
【0029】
また、熱交換機51に矢印で示すように通風路を形成するために熱交換器51の通風上流部、および下流部にフィン513と対向してダクト52、および53を密設して配置している。
【0030】
ここで、ダクト52、53は、熱交換器51の棚板512(間隔d)に対向して同間隔dで区画された通風流路5a(52a、52b)、および5b(53a、53b)を形成している。
【0031】
熱交換器51の両平面からダクト52、53を契合して一体に組み立てられることによって、通風流路5a(52a→51a→53a)、および5b(52b→51b→53b)が形成される。通風流路5aと、5bとは、熱交換器51に対し、異なる通風流路を形成する
異なる通風流路5a、5bにおいて、例えば、ダクト52における通風流路52a側からは、電子機器1内で発熱体から熱伝達によって高温となった空気を本体部筐体2から通風させるとした場合、熱交換器51の通風流路51aでフィン513間を通風され、ダクト53の通風流路53aを通風されて、電子機器1の本体部筐体2に循環されることになる。一方、ダクト52における通風流路52b側からは、外気からの低温空気を吸入して通風させ、熱交換器51の通風流路51bでフィン513間を通風され、ダクト53の通風流路53bに通風され、筐体外部に排気される。
【0032】
すなわち、電子機器1内の高温風、及び外気の低温風を異なる通風路5a、5bによって通風させている。熱交換器51における通風流路51aのフィン513は、高温風よって熱伝達され高温状態になり、隣接する通風流路52aのフィン513は、低温風によって熱伝達され低温状態になっている。各々のフィン513に熱伝達された温度状態は、熱交換器51の通風流路5a、5bを形成する棚板512を共用していることから、棚板512は、各々のフィン513からの熱伝達によって熱変換を行うことになる。よって、棚板512で熱変換された各々の空気がダクト53の通風流路53a、53bから送風されることになる。すなわち、電子機器1に還流する空気を冷却することになる。
【0033】
故に、通風流路5a、5bは熱交換器51の棚板512の積層方向で交互に配置されることが好ましい。また、フィン513、及び棚板512は、熱伝導性のよいアルミニウム材などの金属材質で形成されることが好ましい。
【0034】
図2に示す実施例においては、交互に配置される通風路52a、52bへの吸気や、53a、53bからの排気を集合して通風する通風路を図示していないが、これらの集合通風路の構造や、電子機器1の温度上昇度の度合いによっては、高温空気、及び低温空気の通風流路の吸気側と、排気側とを異なるダクト52、53に設けて、熱変換器51への通風方向を交差する構成であっても良い。
【0035】
図3は本発明における冷却装置の他の実施例を示す構成図である。
【0036】
図3(1)(2)は、高温空気の通風流路を長くとることを目的としている。図3(1)は上面図を表し、ダクト52から吸入した電子機器1内の高温空気を通風流路5aを通じて熱交換器51に通風させた後、ダクト53の排気部分を遮蔽し、通風路を折り返す構成として形成し、再度、熱交換器51を通風させて、ダクト52の他の開口部から排気する構造としている場合である。この際、外気の低温風が通風流路5bを通じて、高温空気の吸入方向とは逆の方向から吸入しているのは、高温風を平均的に熱変換するためであるが、高温風の吸入方向と同じ方向としても良い。ただ、積層方向においては図3(2)で示すように、通風流路5a、通風流路5bは交互に配置されることが好ましい。
【0037】
さらに、図3(3)は、高温空気の吸入通風流路52aに対応して、熱変換器51を分割して、各々の熱交換機の熱的な接続を分離した構造としている場合である。これは、高温空気の吸入直前の高温状態を熱交換器51の他部分に熱伝導されることを回避し、各々の熱交換器51の性能を十分に引き出すことを目的にしている。
【0038】
尚、高温空気と低温空気の通風方向の関係、高温空気と低温空気の折り返し回数、熱交換器の分割数等の選定は、上記の記載に限定されるものではなく、発熱量に応じて種々の構成とすることが出来る。
【0039】
以上のように、冷却装置5の一方の通風流路5aと他方の通風流路5bとは、熱伝導性の良い金属製アルミニウム材などによる棚板512によって隣接して形成されていることから、一方の通風流路5aを通風される高温の空気が隣接する他方の通風流路5bを通風される低温の外気によって熱交換されて、本体部筐体2内の空気を低温とすることになる。ここで、冷却装置5の一方の通風流路5aと、他方の通風流路5bとの空気は混合されることが無いので、通風流路5bを通風される外気に塵埃等が混入されていても、電子機器1の本体部筐体2内に搬入されることはない。
【0040】
本発明における冷却装置は、電子機器の防塵を図るために密閉された筐体に電子機器を配置して、電子機器内部の空気を冷却する方法であることから、プロジェクタ機器に限らず他の電子機器においても有効なものである。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の実施例における電子機器の構成概念図である。
【図2】本発明の実施例における冷却装置の概要を示す分解斜視図である。
【図3】本発明における冷却装置の他の実施例を示す構成図である。
【符号の説明】
【0042】
1:電子機器、2:本体部筐体、3:冷却部筐体、4:ファン、5:冷却装置、5a:通風流路、5b:通風流路、51:熱交換器、52:ダクト、53:ダクト、513:フィン、512:棚板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸入する外気での熱変換によって発熱部を冷却する電子機器において、
前記電子機器と、前記電子機器を搭載する本体部筐体と、前記電子機器を冷却する冷却装置と、前記冷却装置を載置する冷却部筐体と、を有し、
前記冷却部筐体は、外気を吸入する吸入口と、吸入した外気を排出する排出口とを設けてなり、
前記本体部筐体は、密閉空間をなす構造であり、
前記冷却装置は、フィンを設けた熱交換器と、前記熱交換器の通風路に対向して配置され通風流路を形成するダクトとを有し、
前記ダクトは、異なる2つの通風流路を構成し、前記通風流路の一方は、前記冷却部筐体の前記吸入口と前記排気口とを連通して冷却風流路を構成し、前記通風流路の他方は、前記本体部筐体と密閉空間をなすように接続され電子機器内の空気循環流路を構成した
ことを特徴とする電子機器。
【請求項2】
請求項1に記載の電子機器において、
前記ダクトの異なる2つの通風流路は、交互に積層方向で隣接して形成されている
ことを特徴とする電子機器。
【請求項3】
請求項1乃至2のいずれかに記載の電子機器において、
前記ダクトの異なる2つの通風流路は、通流風の流れが対向するように構成されている
ことを特徴とする電子機器。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の電子機器において、
前記ダクトの少なくとも電子機器内の空気循環流路は、平面上で1回あるいは複数回の折り返しにより構成されている
ことを特徴とする電子機器。
【請求項5】
請求項4に記載の電子機器において、
前記熱交換器は、前記ダクトの通風流路の折り返しに対応して分割され、分離されて配置されている
ことを特徴とする電子機器。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の電子機器において、
前記冷却装置は、コルゲートフィンで通風流路を形成されている
ことを特徴とする電子機器。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載の電子機器において、
前記電子機器は、プロジェクタ機器である
ことを特徴とする電子機器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2010−96878(P2010−96878A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−265876(P2008−265876)
【出願日】平成20年10月15日(2008.10.15)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】