説明

電子機器

【課題】液晶表示パネルを備えた電子機器において、ヒータ等の加温手段を用いることなく、液晶表示パネルの低温環境における表示の切り換え制御に対する応答性の低下に起因する誤操作を改善すること。
【解決手段】本発明に係る電子装置は、入力手段と制御手段と液晶表示手段を備えるとともに、少なくとも前記液晶表示手段の周囲温度を検出し、前記周囲温度に応じた温度データを出力する温度センサを備え、前記制御手段は、前記温度データに応じて予め設定された所定の受け付け待機時間内において前記入力手段が複数回連続して繰り返し操作された場合、予め設定された繰り返し回数以下の繰り返し操作に対応した操作データに関しては、前記操作データに対応した制御データを生成して前記液晶表示手段に対して表示データを出力し、予め設定された繰り返し回数を越えて繰り返し操作された操作データは無視することにより、前記受け付け待機時間が経過するまで次の操作データを受け付けないという制御を行うように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低温環境で使用される液晶表示器の操作性を改善する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
携帯用無線通信機等の電子機器に備えられている液晶表示器には、通信周波数や通信チャンネル等の情報や、音量や信号強度等の情報等が表示される。
そして、当該電子機器に備えられている操作用のキーの何れか、例えば通信チャンネル変更用のキーを操作すると、その操作に応じて、前記液晶表示器に表示されている情報、この場合は通信チャンネルを示す数字表示が変更するように構成されている。
【0003】
ところが、液晶表示器に使用されているTFT等の液晶表示パネルは、−10℃や−20℃のような低温環境下において画面表示の応答速度が大きく低下するという応答速度の問題がある。
例えば0℃以上の環境下においては50ms以下の応答速度であっても、−10℃以下では150ms以上の応答速度に低下してしまうという問題がある。
【0004】
前述したように、液晶表示パネルの応答速度が低下すると、周囲の他の電子回路は温度変化に対する応答速度の変化がほとんどないため、電子回路の動作と、液晶表示部の動作とがずれてしまい、以下のような誤操作の原因となる。
例えば、
通信チャンネルを1チャンネルから25チャンネルに変更する場合、
外部環境の温度が+10℃の場合、内部の電子回路の応答速度は無視できる程度であって、液晶表示パネルの応答速度は20ms程度と高速であるため、
チャンネルアップキーを1回押すと、表示情報も直ちに1チャンネルから2チャンネルに変化する。
したがって、使用者は、チャンネルアップキーを数回連続して押して、表示情報を確認するという操作を繰り返し、表示情報が所望の25チャンネルになる直前には、キーを1回ずつ押して、25チャンネルに設定するという連続押し操作が可能である。
【0005】
ところが、外部環境の温度が、例えば−10℃の場合には、前記連続押し操作は行えない。
つまり、チャンネルアップキーを数回連続押しした場合、内部の電子回路から液晶表示パネルへは、次々に表示情報を変更すべき制御データが出力されるが、液晶表示パネルの応答速度が150ms程度に低下しているために、表示情報は順次スムーズに変更されず、視認できない表示状態となってしまう。
そのため、何回かキーを連続押しした場合には、25チャンネルを大きく越えたチャンネルに誤って設定されてしまうことがある。
そこで、目的の25チャンネルに戻すために、今度はチャンネルダウンキーを連続押しすると、今度は25チャンネルを過ぎて、チャンネルを下げ過ぎてしまうということがある。
【0006】
以上のような誤操作を避けるためには、チャンネルアップキーを1回押して指を離し、表示情報が1チャンネルから2チャンネルに変化したことを確認した後、再び、チャンネルアップキーを1回押して指を離し、表示情報が2チャンネルから3チャンネルに変化したことを確認して次の操作を行う。というように、所望の25チャンネルが表示されるまで繰り返すという面倒な操作が必要となる。
このように、外部環境が低温の場合には、液晶表示パネルの応答速度の低下により、操作性が悪化するという問題がある。
【0007】
なお、液晶表示パネルのコントラストが温度によって変化するというコントラストの温度特性の問題に対応するために、特許文献1には、サーミスタ等の温度センサを備えて、液晶表示パネルのバックライトの光源部の印加電圧を制御する技術が開示されている。この技術では、コントラストの温度特性の変化には対応可能であっても、表示の切り換え制御に対する応答性の温度特性には対応できない。
【0008】
液晶表示パネルの低温環境における表示の切り換え制御に対する応答性の低下を改善するために、特許文献2に記載のように、温度検出回路とヒータ等の加温手段を用いることが可能であるが、液晶表示パネルの加温手段を配置するためのスペースの問題や、加温手段を動作させるための電力等のエネルギーが必要となるという別の問題が発生するので、加温手段を用いるという方法は現実的ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第3514946号公報
【特許文献2】実開昭56−128618号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明では、ヒータ等の加温手段を用いることなく、液晶表示パネルの低温環境における表示の切り換え制御に対する応答性の低下に起因する誤操作を改善することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の請求項1に係る電子装置は、
使用者が操作して操作データを入力する入力手段と、
前記操作データに基づいて制御データを生成する制御手段と、
前記制御データに基づいて所定の表示パターンを表示する液晶表示手段とを備えた電子装置において、
少なくとも前記液晶表示手段の周囲温度を検出し、前記周囲温度に応じた温度データを出力する温度センサを備え、
前記制御手段は、
前記温度データに応じて予め設定された所定の受け付け待機時間内において前記入力手段が複数回連続して繰り返し操作された場合、
予め設定された繰り返し回数以下の繰り返し操作に対応した操作データに関しては、前記操作データに対応した制御データを生成し、
予め設定された繰り返し回数を越えて繰り返し操作された操作データは無視し、
前記受け付け待機時間が経過するまで次の操作データを受け付けないという制御を行うように構成した。
請求項2では、
前記制御手段は、
入力される温度データが設定温度に対応した温度未満の場合にのみ、
前記受け付け待機時間が経過するまで次の操作データを受け付けないという前記制御を行い、
入力される温度データが設定温度に対応した温度以上の場合には、
前記受け付け待機時間内であっても次の操作データは受け付けるように構成されている。
請求項3の電子装置では、
前記制御手段は、
入力される温度データに対応した受け付け待機時間データを出力する出力手段と、
該出力手段から出力される受け付け待機時間データに応じて、前記入力手段から入力される操作データの受け付け待機時間を制御するように構成されている。
請求項4の電子装置では、
前記出力手段は、
入力される温度データ毎に、該温度データに対応した受け付け待機時間データを対応させて記憶させたデータテーブルと、
入力される温度データ毎に前記データテーブルを参照して、対応した受け付け待機時間データを読み出して出力するデータ読み出し手段と
を備えている。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る請求項1に記載の電子装置によれば、
使用者が操作して操作データを入力する入力手段と、
前記操作データに基づいて制御データを生成する制御手段と、
前記制御データに基づいて所定の表示パターンを表示する液晶表示手段とを備えた電子装置において、
少なくとも前記液晶表示手段の周囲温度を検出し、前記周囲温度に応じた温度データを出力する温度センサを備え、
前記制御手段は、
前記温度データに応じて予め設定された所定の受け付け待機時間内において前記入力手段が複数回連続して繰り返し操作された場合、
予め設定された繰り返し回数以下の繰り返し操作に対応した操作データに関しては、前記操作データに対応した制御データを生成し、
予め設定された繰り返し回数を越えて繰り返し操作された操作データは無視し、
前記受け付け待機時間が経過するまで次の操作データを受け付けないという制御を行うように構成したので、
周囲温度が低下したときには、操作データの受け付け待機時間が長くなり、次の操作データを受け付けない時間が長くなる。したがって、前記受け付け待機時間の間では、入力手段を繰り返し回数以上に連続して操作しても、繰り返し回数以上の操作データは受け付けられず、制御データには反映されない。したがって、低温環境下において、液晶表示手段の表示の切り換えが遅れるために、同じ操作を繰り返して過剰な操作データを入力してしまうという誤操作を防止することができる。
請求項2では、
前記制御手段は、
入力される温度データが設定温度に対応した温度未満の場合にのみ、
前記受け付け待機時間が経過するまで次の操作データを受け付けないという前記制御を行い、
入力される温度データが設定温度に対応した温度以上の場合には、
前記受け付け待機時間内であっても次の操作データは受け付けるように構成されているので、
設定温度未満のときには前記誤操作を防止でき、
設定温度以上のときには操作データが速やかに制御データに反映され、優れた応答性が得られる。
請求項3では、
入力される温度データに対応した受け付け待機時間データに応じて、前記入力手段から入力される操作データの受け付け待機時間を制御するので、温度変化に応じた操作性が得られる。
請求項4では、
入力される温度データ毎に、該温度データに対応した受け付け待機時間データを対応させて記憶させたデータテーブルを備えることにより、
データテーブルを参照するだけで、温度データに対応した受け付け待機時間が得られるので、制御手段の構成が簡略化できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る電子装置の実施形態としての携帯型無線通信機のブロック構成図である。
【図2】前記携帯型無線通信機の制御部における入力制御プログラムのフローチャートである。
【図3】前記携帯型無線通信機の制御部における応答速度データテーブルの一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下においては、本発明を実施するための形態として、本発明の実施例1における携帯型無線通信機について詳細に説明する。
【実施例1】
【0015】
実施例1の携帯型無線通信機のブロック図を示した図1において、
1は本発明の実施形態の携帯型無線通信機であり、送信部Tと受信部Rを備えるとともに、さらに、各種情報を表示するための液晶表示部2と、当該携帯型無線通信機1の各種機能を制御するために必要な操作情報を入力するための複数の操作用のキー31を備えた操作部3と、後述する制御プログラムに基づいて当該携帯型無線通信機1の各種機能を制御するためのCPU41を備えた制御部4等を備えている。
5は前記液晶表示部2の近傍に配設された温度センサである。
前記CPU41に内蔵されたメモリ42には、当該携帯型無線通信機1の全体を制御するための制御プログラムと必要なデータ等が書き込まれている。前記制御プログラムには、後述する入力制御プログラムと、応答速度データテーブルも含まれている。
なお、前記携帯型無線通信機1は特許請求の範囲に記載された電子機器に対応し、
前記液晶表示部2は特許請求の範囲に記載された液晶表示手段に対応し、
前記操作部3は特許請求の範囲に記載された入力手段に対応し、
前記制御部4は特許請求の範囲に記載された制御手段に対応している。
【0016】
前記キー31の何れかを操作すると、その操作情報は前記制御部4に入力されて、前記制御プログラムは入力された操作情報に応じて当該携帯型無線通信機1の各部を制御し、必要に応じて、前記液晶表示部2に各種情報を表示させる。
前記液晶表示部2には、たとえば、受信モードの場合には、現在の受信チャンネル、信号強度、および電波形式等の種々のデータが表示される。
そして、たとえば、受信チャンネルを変更しようとする場合には、何れか該当するキー31を操作すると、その操作情報は、前記制御部4に入力されて、前記制御プログラムは入力された操作情報に応じて当該携帯型無線通信機1の受信部Rにおける受信チャンネルを変更するためのチャンネル制御データを受信部へ出力するとともに、前記液晶表示部2に表示されているチャンネルデータを変更するための表示制御データを液晶表示部2へ出力する。
【0017】
液晶表示部2に使用されている液晶表示パネル、たとえばTFT液晶表示パネルの場合は、−10℃や−20℃のような低温環境下において画面表示の応答速度が常温時に比べて大きく低下するという問題があるので、制御部4の動作と、液晶表示部2の動作とがずれてしまい、前述したような誤操作の原因となる。
そこで、本発明では、低温時には、1回目の操作情報が入力されてから所定のウェイト時間の間は、連続した操作に対応する操作情報の受け付けを制限して、キー入力に対する応答速度を見かけ上遅くするように制御する。
そのために、図1に示したように温度センサ5を備えるとともに、図3に示したような応答速度データテーブルを制御部4に内蔵し、周囲温度により、連続した2回目以降の操作データを受け付けるまでの受け付け待機時間(以下、「ウェイト時間」という。)を変更するようにしたものである。
なお、液晶表示部2の輝度を周囲温度の変化に応じて制御するために、温度センサ5を用いて周囲温度の変化を検出して、低温時の輝度を制御することが行われている。
【0018】
上記構成の携帯型無線通信機1において、前記制御部4には、周囲温度に応じて、前記ウェイト時間を変更するために、図2に示したような入力制御プログラムと、図3に示したような応答速度データテーブルが書き込まれている。
【0019】
前記プログラムを、図2に示したフローチャートを参照して以下に説明する。
ステップS1で、電源をオンすると、
ステップS2で、温度センサ5によって温度の検出を開始する。ステップS3では、検出した温度データを制御回路4に取り込んで、設定温度T0と比較し、検出した周囲温度が設定温度T0より小さい場合には、ステップS4へ進み、設定温度T0以上の場合にはステップS12へ進む。
前記設定温度T0未満の場合にのみ、操作部3のチャンネルアップキーもしくはチャンネルダウンキーの操作入力の受け付けが制御されるのである。
また、周囲温度が前記設定温度T0以上の場合には十分に暖かいので、キーの操作入力の受け付けを制限する動作は省略される。
前記設定温度T0は、例えば25℃等に設定される。
【0020】
ステップS4では、操作部3のチャンネルアップキーもしくはチャンネルダウンキーの何れかの操作の有無をチェックして、操作データの有無をチェックし、チャンネルアップキーもしくはチャンネルダウンキーの何れかの操作が行われたことに対応する操作データが入力された場合にはステップS5へ進み、操作されていない場合にはステップS2へ戻る。
【0021】
ステップS5では、補正モードに移行して、メモリ42に書き込まれている応答速度データテーブルから、前記検出した温度データに対応する補正データDを読み出す。
応答速度データテーブルからは、周囲温度が例えば、
0℃以上の場合には、補正データDとしては0(mS)が読み出され、
−10℃以上〜0℃未満の場合には、補正データDとしては100(mS)が読み出され、
−20℃以上〜−10℃未満の場合には、補正データDとしては300(mS)が読み出され、
−30℃以上〜−20℃未満の場合には、補正データDとしては400(mS)が読み出され、
−30未満の場合には、補正データDとしては500(mS)が読み出される。
これらの補正データDは、特許請求の範囲に記載された受け付け待機時間データに対応するものである。
【0022】
ステップS6では、経過時間を計測するタイマーによる計時をスタートさせるとともに、操作回数カウンタNを初期値1に設定する。
続いて、ステップS7では、前記ステップS4におけるキーの操作に基づいて入力された操作データを、対応する制御データに変換して、該制御データに応じてチャンネル設定値を変更する。前記ステップS4におけるキーの操作が例えばチャンネルアップキーの場合には、チャンネル設定値を1ステップだけ増加させる制御データとし、チャンネルダウンキーの場合には、チャンネル設定値を1ステップだけ減少させる制御データとし、これらの制御データに基づいて前記送信部Tもしくは受信部Rのチャンネルが切り換えられる。
続いて、ステップS8では、ステップS4と同様に、操作部3のチャンネルアップキーもしくはチャンネルダウンキーの何れかの操作の有無をチェックして、操作された場合にはステップS9へ進み、操作されていない場合にはステップS12へ進んで、変更されたチャンネル設定値に基づいたチャンネルで通常の運用を開始する。
【0023】
ステップS9では、前記操作回数カウンタNを予め設定された繰り返し回数Mと比較して、繰り返し回数がM回未満の場合にはステップS10へ進み、M回以上の場合にはステップS13へ進む。
前記繰り返し回数Mは、予め例えばM=3として登録されているが、使用者が好みに応じて設定することが可能である。この繰り返し回数Mを越えた場合には、チャンネルアップキーもしくはチャンネルダウンキーの操作は無視される。
ステップS10では、操作回数カウンタNを1だけ増加させて、ステップS11へ進み、ステップS11では、前記ステップS8におけるキーの操作に基づいてチャンネル設定値を変更する。前記ステップS8におけるキーの操作が例えばチャンネルアップキーの場合には、チャンネル設定値を1ステップだけ増加させ、チャンネルダウンキーの場合には、チャンネル設定値を1ステップだけ減少させる。
続いて、ステップS12へ進んで、変更されたチャンネル設定値に基づいたチャンネルで通常の運用を開始する。
【0024】
ステップS13では、ステップS6で計時スタートしたタイマーによる経過時間を、ステップS5で読み出した補正データDと比較して、経過時間が前記補正データDで示された時間未満の場合には、ステップS14に進んで、現在は操作入力を受け付けない状態(入力無効の状態)であることを、LEDなどのインジケータを点灯させて使用者に報知する。
経過時間が前記補正データDで示された時間以上の場合には、変更されたチャンネル設定値を液晶表示部2に表示するとともに、前記インジケータを点灯させていた場合には消灯させて、ステップS2に戻り、再びチャンネルアップ/ダウンキーの入力を待つ状態となる。
【0025】
前記繰り返し回数Mは、同じ操作キーを繰り返し入力する操作、いわゆる先行入力を受け付ける回数である。M=1に設定される場合は、一旦操作キーからの入力が行われると、補正データDで示された時間が経過するまで、2回目の先行入力を受け付けない状態となる。誤操作防止の観点でいえば、このような設定でも問題は十分に解決されるが、操作時間や操作性を考慮すると、チャンネルアップ/ダウンキー等に関しては、下記のように、例えば3回程度までの先行入力を受け付ける設定が適切であると思われる。
例えば、液晶表示部における応答特性が1秒程度かかる氷点下数十度の低温環境において、チャンネルを001チャンネルから004チャンネルまで変更操作する場合を想定してみると、M=1に設定される場合(複数回の先行入力を受け付けない場合)は、誤操作を防ぐために、
チャンネルアップキーを1回押して、その後表示が001から002チャンネルに切り換えられるまで約1秒間待機し、
表示が002チャンネルに切り換えられたことを確認した後に、再度、チャンネルアップキーを1回押して、その後表示が002から003チャンネルに切り換えられるまで約1秒間待機し、
表示が003チャンネルに切り換えられたことを確認した後に、再度、チャンネルアップキーを1回押して、その後表示が003から004チャンネルに切り換えられるまで約1秒間待機する必要があり、所望のチャンネルに設定されたことを確認するまでに合計3秒間を要する。
【0026】
本実施例の電子機器の場合には、繰り返し回数Mとして3回の先行入力を受け付ける設定にしておけば、
チャンネルアップキーを3回押すと、制御データはほぼ瞬時に3段階アップされて004チャンネルに対応するデータとなり、表示データもほぼ瞬時に3段階アップされて004チャンネルに対応するデータとなって、液晶表示部2へ出力される。液晶表示部2においては、004チャンネルに対応する表示に切り換えるまで約1秒間を必要とする。したがって、約1秒後には、004チャンネルと表示されたことを確認することができる。
つまり、M=1に設定される場合は、表示の切り換え確認に3秒を要していたものが、1秒でよくなり、時間短縮が可能になり、優れた操作性が得られるのである。
なお、4回以上繰り返して操作した場合には、3回以上の操作は無視され、ステップS14において、現在は操作入力を受け付けない状態(入力無効の状態)であることが、LEDなどのインジケータの点灯により使用者に報知されるので、誤操作を防止することができる。
【0027】
このようにして、周囲温度が設定温度未満の場合には、1回目のキー操作が行われてから周囲温度に応じた受け付け待機時間(ウェイト時間)が経過するまでのキー操作を制限するようにしたので、同じキー操作を多数回繰り返してしまい、過剰な操作データを入力してしまうという誤操作を防止することができる。
なお、前記設定温度T0、繰り返し回数M、および応答速度データテーブルの各数値データは一例であって、予め工場出荷時に書き込んでおいたものを使用してもよいが、使用者が書き換えることを可能としてもよい。
また、上記実施例においては、電源投入時に周囲温度が設定温度T0以上である場合には、キー操作入力の受け付け制御を行わないようにすることで、補正データDの読み出し等、キー操作入力の受け付け制御に必要な処理を省略できるようにしたが、設定温度T0を設けず、周囲温度と設定温度T0と比較するステップS3の処理を省略して常に周囲温度に応じた補正データDを読み出す構成としてもよい。
【0028】
また、応答速度データテーブルに代えて、温度データに応じた受け付け待機時間データを出力する関数変換手段等の変換手段を用いることも可能である。
また、液晶表示部2における輝度の温度特性を補償するために備えられている温度センサを、本発明における温度データを得るための温度センサとして兼用することにより、ハードウェアのコストアップを抑制することができる。
【0029】
なお、上記実施例においては、操作部3のキー31の機能例として、チャンネルアップキーとチャンネルダウンキーを例示して説明したが、複数回の繰り返し回数以内の先行入力を受け付ける機能キーの多例としては、ボリュームのアップ/ダウンキー、スケルチコントロールのアップ/ダウンキー、液晶表示部2の輝度調整(ディマー調整)用のアップ/ダウンキーなどがある。
しかし、デュアルワッチ機能のオン/オフ切り換えキーや、スケルチを強制的にオープンさせるモニタ機能のオン/オフ切り換えキーや、秘話機能をオン/オフするキーなどのように、オン/オフ等の選択を行うキーや、トグルスイッチのように短時間で複数回のキー操作を行うことが構造上難しいキーについては、所定の受け付け待機時間内においては1回の操作しか受け付けないことが望ましい。
【産業上の利用可能性】
【0030】
液晶表示部を備えた種々の電子機器において、操作性の改善のために広く利用することができる。
【符号の説明】
【0031】
1 電子機器、携帯型無線通信機
2 液晶表示手段、液晶表示部
3 入力手段、操作部
4 制御手段、制御部
5 温度センサ
42 メモリ、応答速度データテーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者が操作して操作データを入力する入力手段と、
前記操作データに基づいて制御データを生成する制御手段と、
前記制御データに基づいて所定の表示パターンを表示する液晶表示手段とを備えた電子装置において、
少なくとも前記液晶表示手段の周囲温度を検出し、前記周囲温度に応じた温度データを出力する温度センサを備え、
前記制御手段は、
前記温度データに応じて予め設定された所定の受け付け待機時間内において前記入力手段が複数回連続して繰り返し操作された場合、
予め設定された繰り返し回数以下の繰り返し操作に対応した操作データに関しては、前記操作データに対応した制御データを生成し、
予め設定された繰り返し回数を越えて繰り返し操作された操作データは無視し、
前記受け付け待機時間が経過するまで次の操作データを受け付けないという制御を行うように構成したことを特徴とする電子装置。
【請求項2】
前記制御手段は、
入力される温度データが設定温度に対応した温度未満の場合にのみ、
前記受け付け待機時間が経過するまで次の操作データを受け付けないという前記制御を行い、
入力される温度データが設定温度に対応した温度以上の場合には、
前記受け付け待機時間内であっても次の操作データは受け付けるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の電子装置。
【請求項3】
前記制御手段は、
入力される温度データに対応した受け付け待機時間データを出力する出力手段と、
該出力手段から出力される受け付け待機時間データに応じて、前記入力手段から入力される操作データの受け付け待機時間を制御することを特徴とする請求項1または2の何れか1項に記載の電子装置。
【請求項4】
前記出力手段は、
入力される温度データ毎に、該温度データに対応した受け付け待機時間データを対応させて記憶させたデータテーブルと、
入力される温度データ毎に前記データテーブルを参照して、対応した受け付け待機時間データを読み出して出力するデータ読み出し手段と
を備えていることを特徴とする請求項3に記載の電子装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−113341(P2011−113341A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−269689(P2009−269689)
【出願日】平成21年11月27日(2009.11.27)
【出願人】(000100746)アイコム株式会社 (273)
【Fターム(参考)】