説明

電子機器

【課題】蓋部材の撓み強度を向上させ、且つ、確実に蓋部材の開閉検知を行うことができる構造を有する電子機器を提供する。
【解決手段】電子機器は、メモリカードが挿入されるカードスロット13a,13bが実装される基板14と、カードスロット13a,13bの挿入口を同時に露出させるための開口部9を有する外装カバー8と、開口部9を開閉するカード蓋1とを有する。基板14はカードスロット13a,13bの間に形成されたスリット11を有し、カード蓋1の開閉状態を検知する開閉検知スイッチ15を備える。カード蓋1は開口部9を閉じたときにスリット11に挿入される補強用のリブ5を有する。開閉検知スイッチ15は、スリット11にリブ5が挿入された状態でカード蓋1が開口部9を閉じた状態を、スリット11にリブ5が挿入されていない状態でカード蓋1が開口部を開いた状態を検知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子機器に関し、特に、電子機器に記録媒体等の部品を着脱する際に用いられる開閉可能な蓋部材の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、SDカード等の記録媒体が着脱可能な電子機器が広く普及してきている。このような電子機器は、記録媒体へのアクセス中にその記録媒体が取り外された場合、記録媒体に記憶されているデータが破損する可能性があるため、一般的にアクセス中に記録媒体を取り外すことができない構造が採用されている。
【0003】
例えば、記録媒体を収容するスロットの挿入口を覆う回動可能なカード蓋と、このカード蓋に設けられたスイッチ押し部と、電子機器の内部に設けられ、スイッチ押し部が押される度にON/OFFが切り替わる検知スイッチとを有する電子機器が提案されている。この電子機器では、検知スイッチによりカード蓋の開閉状態が検知され、カード蓋が閉じていると検知されている場合にのみ、電子機器に収容されている記録媒体を取り出すことができる構造となっている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−165714号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、記録媒体には規格や形状が異なる複数の種類があるため、これらを収容することができるように、また、大きな記憶容量を確保することができるように、最近では、複数種や複数枚の記録媒体を収容することができる電子機器が普及してきている。そして、今後、複数のカードスロットを搭載した電子機器は益々増えてくるものと思われる。
【0006】
そこで、一例として、2つのカードスロットを並べて配置したダブルスロット形式の電子機器に対して、特開2000−165714号公報に記載されている技術を適用した構成を考え、その場合の構成例を表した斜視図を図7に示す。図7に示される電子機器101は、並べて配置された2つのカードスロット102a,102bを備えており、カード蓋(蓋部材)103は、β軸を回転軸として電子機器101の本体に回動可能に取り付けられている。
【0007】
カード蓋103の開閉検知は、電子機器101の孔部105の奥に配置された検知スイッチ(不図示)により行われる。カード蓋103が閉じられたときにカード蓋103に設けられた検知スイッチ押し部104が検知スイッチを押すことにより、検知スイッチはカード蓋103が閉じたことを認識する。なお、カード蓋103の開閉は、電子機器101の操作者が、指かけ部106に指先(爪等)を引っ掛けて引っ張ることにより行われる。
【0008】
この例のように並べて配置された2つのカードスロット102a,102bを1つのカード蓋103で覆うようにすると、カード蓋103の横幅が長くなってしまい、カード蓋103の撓み強度が弱くなってしまう。また、カード蓋103に設けられた検知スイッチ押し部104の指かけ部106からの長さLが長くなると、カード蓋103の開閉操作時のガタつきが大きくなる。これにより、カード蓋103の検知スイッチ押し部104と不図示の検知スイッチとの位置ずれが発生し、検知スイッチの押し不良が発生するおそれがある。
【0009】
本発明は、蓋部材の撓み強度を向上させ、且つ、確実に蓋部材の開閉検知を行うことができる構造を有する電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る電子機器は、複数のスロットが並べて実装される基板と、前記複数のスロットを露出させるための開口部を有する外装カバーと、前記外装カバーの前記開口部を開閉する蓋部材と、前記基板に実装され、前記蓋部材の開閉状態を検知する開閉検知スイッチと、を備え、前記基板は、前記複数のスロットの間に形成されたスリットを有し、前記蓋部材は、前記蓋部材が前記開口部を閉状態にしたときに前記スリットに挿入されるリブを有し、前記開閉検知スイッチは、前記スリットに前記リブが挿入された状態で前記蓋部材により前記開口部が閉状態にあることを検知し、前記スリットに前記リブが挿入されていない状態で前記蓋部材により前記開口部が開状態にあることを検知することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、蓋部材の撓み強度を向上させることができ、且つ、確実に蓋部材の開閉検知を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態に係る電子機器の構成を示す分解斜視図である。
【図2】図1に示される電子機器の構成を図1に示される矢印B方向から見た分解斜視図である。
【図3】図1,2に示される各種の部品を組み付けた状態を、カード蓋により外装カバーの開口部が閉じられている閉状態のときに、外装カバー側から見た斜視図である。
【図4】図1,2に示される各種の部品を組み付けた状態を、カード蓋により外装カバーの開口部が閉じられている閉状態のときに、基板側から見た斜視図(a)、及び、(a)中のC部の詳細図(b)である。
【図5】図1,2に示される各種の部品を組み付けた状態を、カード蓋により外装カバーの開口部が開かれている開状態のときに、外装カバー側から見た斜視図である。
【図6】図1,2に示される各種の部品を組み付けた状態を、カード蓋により外装カバーの開口部が開かれている開状態のときに、基板側から見た斜視図(a)、及び、(a)中のD部の詳細図(b)である。
【図7】ダブルスロット形式の電子機器に対して従来技術を適用した構成例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態に係る電子機器について、添付図面を参照して詳細に説明する。本実施形態では、電子機器としてデジタルビデオカメラやデジタルカメラを想定し、デジタルビデオカメラに記録媒体(メモリカード)を着脱する部位について詳細に説明する。但し、本発明に係る電子機器はこれらに限定されるものではなく、電子機器に対して着脱される部品もメモリカードに限定されるものではない。
【0014】
図1は、本発明の実施形態に係る電子機器の構成を示す分解斜視図であり、図2は、図1に示される電子機器の構成を図1に示される矢印B方向から見た分解斜視図である。電子機器は、大略的に、外装カバー8、カード蓋1、ホルダー10及び基板14を備えている。
【0015】
外装カバー8は、メモリカードを収容するために基板14に設けられたカードスロット13a,13bの挿入口を同時に露出させるために設けられており、且つ、蓋部材であるカード蓋1によって開閉される開口部9を有している。外装カバー8はまた、カード蓋1を回転自在に取り付けるための軸受け29a,29bを有している。外装カバー8はさらに、取り付けられたカード蓋1を開く際に指かけ部として用いられる凹部28と、基板14及びホルダー10を取り付けるための位置決めピン19a,19b及びビスボス26a,26bを有している。
【0016】
カード蓋1は、カード蓋1を回動させるための回転軸部2a,2bを有しており、回転軸部2a,2bは、共にα軸上に設けられ、外装カバー8に設けられた軸受け29a,29bとホルダー10に設けられた軸受け7a,7bとに挟み込まれて、保持される。カード蓋1の長手方向端(α軸方向端)にはカード蓋リブ3a,3bが設けられており、カード蓋リブ3a,3bを挟んで回転軸部2a,2bと対向する側には、クリックバネ18a,18b(後述する)へのバネ当て部4a,4bが形成されている。カード蓋1の長手方向中央の位置には、カード蓋1の撓みを低減するための補強用のリブ5が形成されている。補強用のリブ5のリブ先端部6は、後述するように、カード蓋1の開閉を検知するために基板14に配置された開閉検知スイッチ15を押すための押し部として機能する。
【0017】
ホルダー10は、外装カバー8に対するカード蓋1の位置を規制する部品であり、前述したように、外装カバー8に設けられた軸受け29a,29bと共にカード蓋1の回転軸部2a,2bを挟み込むための軸受け7a,7bを有している。ホルダー10はまた、カード蓋1に形成されている補強用のリブ5の幅よりも広い幅を有するスリット穴12と、スリット穴12の周囲を補強するリブ30とを有している。ホルダー10はさらに、外装カバー8に設けられた位置決めピン19a,19bに挿通される位置決め穴20a,20bと、外装カバー8に設けられたビスボス26a,26bでビス留めするためのビス穴23a,23bを有している。
【0018】
基板14における外装カバー8側の面には、メモリカードを収容するためのカードスロット13a,13bが、カード挿入方向がγ方向となるように、並べて実装されている。なお、カードスロット13a,13bはそれぞれプッシュオン・プッシュオフ機構等のメモリカードの着脱を行うための機構を備えている。図5,6を参照して後述するように、外装カバー8の開口部9が開状態となっている状態で、電子機器の操作者は、カードスロット13a,13bに対するメモリカードの着脱操作を行うことができる。
【0019】
基板14における外装カバー8側の面とは反対側の面には、カード蓋1の開閉状態を検知するための開閉検知スイッチ15及びコネクタ16が実装されている。基板14には、カードスロット13a,13bの間の位置にスリット11が設けられており、開閉検知スイッチ15のスイッチ先端部15aがスリット11側に突出しており、Y方向に押し込まれることによって開閉検知スイッチ15はONとなる。なお、開閉検知スイッチ15のスイッチ先端部15aは、カード蓋1により外装カバー8の開口部9が閉状態となっているときに、補強用のリブ5のリブ先端部6によりY方向に押し込まれる。
【0020】
コネクタ16にはフレキ17が接続されており、カードスロット13a,13bを通じてメモリカードから取得した情報等を電子機器の本体の内部に組み込まれた制御部(不図示)に送り、逆に、メモリカードに情報を記憶させることができるようになっている。基板14には、ホルダー10と同様に、外装カバー8に対する位置決めと固定を行うための位置決め穴21a,21b及びビス穴24a,24bが設けられている。
【0021】
基板14における外装カバー8側の面とは反対の面には、金属板で構成されたクリックバネ(板バネ)18a,18bが取り付けられる。クリックバネ18a,18bはそれぞれ、位置決め穴22a,22及びビス穴25a,25bを有しており、ホルダー10及び基板14と共に、外装カバー8に対して位置決めされ、固定される。クリックバネ18a,18bは、カード蓋1の開閉時にカード蓋リブ3a,3bに当接してチャージされることにより、カード蓋1にクリック力を持たせる役割を果たす。
【0022】
図1,2に示される各種の部品を組み付けた状態(以下「組み付け状態」という)を図3乃至図6に示す。図3は、カード蓋1により外装カバー8の開口部9が閉じられている閉状態のときに、組み付け状態を外装カバー8側から見た斜視図である。図4は、外装カバー8の開口部9が閉状態のときに、組み付け状態を基板14側から見た斜視図[図4(a)]と、図4(a)中のC部の詳細図[図4(b)]である。図5は、カード蓋1により外装カバー8の開口部9が開かれている開状態のときに、組み付け状態を外装カバー8側から見た斜視図である。図6は、外装カバー8の開口部9が開状態のときに、組み付け状態を基板14側から見た斜視図[図6(a)]と、図6(a)中のD部の詳細図[図6(b)]である。
【0023】
図4に示される閉状態では、カード蓋1のリブ先端部6が、ホルダー10のスリット穴12を通して基板14のスリット11に挿入され、スイッチ先端部15aをY方向に押し込んだ状態となっている。こうして開閉検知スイッチ15が押された状態(すなわちON状態)のとき、電子機器の本体の内部に組み込まれた制御部(不図示)は、カード蓋1が閉じられていると認識し、カードスロットに挿入されたメモリカード(不図示)に対してアクセス可能となる。
【0024】
図3,4に示される閉状態から図5,6に示される開状態にするには、図3の指かけ部28に指(指先)を挿し込み、カード蓋1をX方向に回動させればよい。図5,6に示される開状態では、リブ先端部6はスイッチ先端部15aへ届いておらず、よって、開閉検知スイッチ15はOFFの状態となっている。このとき、制御部(不図示)は、カード蓋1が開いていると認識し、カードスロットに挿入されたメモリカード(不図示)に対してアクセス不可となる。
【0025】
以上に説明したように、複数のカードスロットが並べて配置された、本実施形態に係る電子機器では、カード蓋1の撓み強度をカード蓋1に補強用のリブ5を設けることによって向上させている。これにより、開閉検知スイッチ15を動作させる補強用のリブ5のリブ先端部6の位置がずれることなく安定させることができるため、カード蓋1の開閉動作に伴う開閉検知スイッチ15の動作不良が起こり難く、確実にカード蓋1の開閉検知を行うことができる。
【0026】
以上、本発明をその好適な実施形態に基づいて詳述してきたが、本発明はこれら特定の実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の様々な形態も本発明に含まれる。
【0027】
例えば、上記実施形態では、カードスロットが2つの場合について説明したが、カードスロットの数は3つ以上であってもよい。この場合、複数のカードスロットが並べて配置されていなくとも、カード蓋においてカードスロットの間に対応する位置に補強リブを設け、且つ、補強リブによりON/OFFされる開閉検知スイッチをカードスロットが実装されている基板に設ければよい。これにより、上述した実施形態の場合と同様の効果を十分に得ることができる。
【0028】
また、上記実施形態では、カード蓋1による開口部9の開閉を回動動作によって行うとしたが、これに限られず、例えば、カード蓋のスライド動作によって外装カバーに設けられた開口部の開閉を行う構造とすることも可能である。
【符号の説明】
【0029】
1 カード蓋
3a,3b カード蓋リブ
5 補強リブ
8 外装カバー
9 開口部
10 ホルダー
11 スリット
12 スリット穴
13a,13b カードスロット
14 基板
15 開閉検知スイッチ
30 リブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のスロットが並べて実装される基板と、
前記複数のスロットの挿入口を同時に露出させるための開口部を有する外装カバーと、
前記外装カバーの前記開口部を開閉する蓋部材と、
前記基板に実装され、前記蓋部材の開閉状態を検知する開閉検知スイッチと、を備え、
前記基板は、前記複数のスロットの間に形成されたスリットを有し、
前記蓋部材は、前記蓋部材が前記開口部を閉状態にしたときに前記スリットに挿入されるリブを有し、
前記開閉検知スイッチは、前記スリットに前記リブが挿入された状態で前記蓋部材により前記開口部が閉状態にあることを検知し、前記スリットに前記リブが挿入されていない状態で前記蓋部材により前記開口部が開状態にあることを検知することを特徴とする電子機器。
【請求項2】
前記開閉検知スイッチは、前記基板において前記スロットが実装されている面とは反対側の面に実装されていることを特徴とする請求項1記載の電子機器。
【請求項3】
前記リブは、前記蓋部材の長手方向中央の位置に形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の電子機器。
【請求項4】
前記蓋部材は、回動動作によって前記開口部の開閉を行うことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の電子機器。
【請求項5】
前記蓋部材は、スライド動作によって前記開口部の開閉を行うことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の電子機器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−129620(P2012−129620A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−277152(P2010−277152)
【出願日】平成22年12月13日(2010.12.13)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】