説明

電子機器

【課題】筐体の外部に配置された金属部品と筐体の内部に収容された回路基板との確実な電気接続と筐体の防水性が得られるとともに、良好な組立性が得られる電子機器を提供する。
【解決手段】第1筐体および第2筐体は、その間に設けられている案内部材のレール30に沿って相対的に移動可能である。第1筐体の壁部24に設けられた貫通孔27にはピン部材26が挿通されており、ピン部材26は貫通孔27に挿通された軸部261と、軸部261の端部に設けられた鍔部262を有する。鍔部262は第1筐体の内側において第1筐体に収容されている回路基板に接続されるレール30とともに壁部24に押圧され、壁部24と鍔部262との間には、防水部材264が設けられている。また、ピン部材26は、第1筐体の外側において外側端部がレールに係合されており、ピン部材26の軸部261が第1筐体の外側に引き出される方向に力が発生するように係合している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二つの筐体が相対的にスライドする電子機器において、防水構造の筐体内の回路基板と筐体の外側の金属部品とを電気的に接続した電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、防水構造の筐体内の回路基板と筐体の外側の金属部品とを電気的に接続する電子機器が知られている(例えば、特許文献1参照)。
図5に示すように、特許文献1に記載の電子機器は、腕時計型携帯電話機等の携帯型送受信機100であり、防水構造の筐体である本体ケース101内には回路基板102が収容されている。また、本体ケース101の外側には、金属部品であるアンテナ103が取り付けられている。
【0003】
本体ケース101内の回路基板102と、本体ケース101外のアンテナ103とは、アンテナ103に一体的に設けられているピン型導通部材104および導通用板ばね部材105を介して電気的に接続される。
ピン型導通部材104は、導通用貫通穴106に挿嵌されて、防水接着剤107で固定されて防水している。また、導通用板ばね部材105は、一端が回路基板102に接続され、他端がばね力によりピン型導通部材104に押し付けられて電気的に接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−48449号公報(第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述した特許文献1に記載の携帯型送受信機100においては、導通用板ばね部材105がピン型導通部材104に確実に接触するためにはある程度のばね力が必要となり、ピン型導通部材104を脱落する方向(すなわち、外側)へ付勢することになる。
このため、確実な電気的接続および防水性を得るためには、ピン型導通部材104を導通用貫通孔106にきつく圧入することが望まれるが、組立性を悪化させるおそれがあるという問題があった。
【0006】
本発明は、従来の問題を解決するためになされたもので、筐体の外部に配置された金属部品と筐体の内部に収容された回路基板との確実な電気接続と筐体の防水性が得られるとともに、良好な組立性が得られる電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の電子機器は、互いに積層され、積層方向に対して直交する方向に沿って相対的に移動可能な第1筐体および第2筐体と、前記第1筐体および前記第2筐体間に配置され、前記第1筐体の外面に沿ってレールが設けられた案内部材と、前記第1筐体に収容された回路基板と、前記第1筐体の壁部に設けられた貫通孔に挿通される軸部を有するとともに、前記第1筐体の外側において外側端部が前記レールに係合されるピン部材と、前記ピン部材が、前記第1筐体の内側において前記軸部の端部に設けられ、前記回路基板に接続されるとともに前記壁部に押圧される鍔部と、前記壁部と前記鍔部との間に介装されて圧縮される防水部材とを有し、前記ピン部材の前記外側端部に対して前記レールが係合されたときに、前記ピン部材の軸部が前記第1筐体の外側に引き出されるような力が発生するものである。
【0008】
また、本発明の電子機器は、前記ピン部材が、前記第1筐体の外側において前記軸部に設けられた段部を有し、前記レールが、当該レールの長手方向端部に設けられ、前記軸部を軸線に対して直交する方向に沿って挟持するとともに前記段部に係合する挟持部を有するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、鍔部は防水部材を介して壁部に押し付けられるので、貫通孔における確実な防水性を得ることができる。また、ピン部材を介して回路基板とレールとが接続されるので、確実な電気接続を得ることができる。また、レールをピン部材の外側端部に係合させることにより回路基板とレールを接続できるので、容易に組み立てることができるという効果を有する電子機器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る実施形態の電子機器を下筐体側から見た分解斜視図
【図2】ピン部材とレールとの接続を示す斜視図
【図3】図2中III−III位置の断面図
【図4】(A)ないし(C)はレールを下筐体に取り付ける工程を示す断面図
【図5】従来の電子機器の断面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る実施形態の電子機器について、図面を用いて説明する。
なお、以下の説明において、特記する場合を除き、「上」(上方、上側、正面等を含む。)とは、電子機器を通常使用する状態における上をいい、「下」(下方、下側、下面等を含む。)とは通常使用する状態における下をいうこととする。
図1に示すように、本発明に係る実施形態の電子機器10は、防水機能を有する第1筐体である下筐体20の上(図1において下)に第2筐体である上筐体40を積層して有する例えば携帯端末である。上筐体40と下筐体20とは、相対的にスライド可能に連結されている。
【0012】
図1に示すように、下筐体20は、下方(図1において上方)が開口(開口部212)した矩形箱状の部材であるケース21と、ケース21の開口部212を密閉するカバー22とから、防水機能を有する矩形箱状に形成される。
ケース21は、壁部である矩形板状のベースプレート24と、ベースプレート24の外周縁に沿って立設された縦壁25を有し、縦壁25の下端(図1において上端)が開口部212となる。
ケース21の内部には、回路基板23が収容されて、ベースプレート24の内面241に固定される。
【0013】
下筐体20のケース21の外面である上面(図1において下面)211には、ケース21の幅方向両端部に長手方向に沿って、一対の案内部材であるレール30、30が取り付けられている。レール30は、強度が要求されるので、金属製となっている。
一方、上筐体40の下面(図1において上面)41には、レール30に沿って移動可能な一対のスライダ42が取り付けられている。
これにより、上筐体41と下筐体20は、長手方向に相対的に所定距離だけ移動可能に支持される。
【0014】
下筐体20外部の金属部品であるレール30はアンテナ性能に悪影響を及ぼすため、GND接続する必要がある。また、レール30を介して下筐体20と上筐体40とがスライド可能に支持されるため、レール30を下筐体20に対して高強度で取り付けることが要求される。
このため、下筐体20の外面242にレール30を取り付けるために、ベースプレート24に貫通孔27(図3参照)を設けるとともに、ベースプレート24の内面241側から外面242側に貫通孔27を貫通するピン部材26を設けた。
また、ベースプレート24には、貫通孔27に対応して、貫通ねじ孔28が設けられている。この貫通ねじ孔28は、後述するように、レール30の他端部をねじ29で固定するためのものである。
【0015】
図2に示すように、ピン部材26は金属製であり、下筐体20内部において回路基板23に電気的に接続されるとともに、下筐体20の外部においてレール30を支持して導通している。
ピン部材26は、円柱形状の軸部261の下端(図2において上端)に例えば矩形板状の鍔部262を有し、鍔部262の上面(図2において下面であり、軸部261側面)には、ゴムパッキンのような防水部材264が取り付けられている。なお、鍔部262の下面(図2において上面)は、回路基板23に接触する。
【0016】
なお、軸部261の外径は、ベースプレート24の貫通孔27の内径よりも小さい。従って、軸部261は貫通孔27に挿通可能である。
また、軸部261の外側端部265には、段部として例えば円板形状の笠部263を有する。笠部263の外径は、貫通孔27の内径よりも小さいが、軸部261の外径よりも大きい。従って、笠部263は貫通孔27を通過可能であり、軸部261の外側端部265において外側に突出している。
【0017】
図3に示すように、ベースプレート24の貫通孔27にベースプレート24の内面241側から取り付けられたピン部材26は、鍔部262が防水部材264を介してベースプレート24の内面241に当接する。軸部261は貫通孔27を貫通し、笠部263はベースプレート24の下面から下方へ突出する。
【0018】
図2および図3に示すように、レール30は、金属製の細長い帯板状部材であり、長手方向端部であるピン部材側端部31の先端には、挟持部として2本の係止突起32、32が設けられていて、両係止突起32の間には係止空間33が形成されている。両係止突起32の間隔、すなわち係止空間33の幅は、ピン部材26の軸部261の外径よりも大きく、かつ、笠部263の外径よりも小さい。レール30の下面301における係止空間33に沿った縁部には、ピン部材26の笠部263を収容する段差36が設けられている。
【0019】
また、係止突起32には、先端に向かって尖るように、厚さ方向の中央部側に傾斜した傾斜面321、322が設けられている。傾斜面321、322は平面形状でもよいし、外側に凸の曲面形状でも可能である。
また、図3に示すように、レール30におけるピン部材26と反対側の端部34には、ねじ孔35が形成されている。なお、ねじ孔35の周囲に防水部材351を設けて、ねじ孔35の防水を確保する。
【0020】
次に、レール30の取付け方について説明する。
図4(A)に示すように、ベースプレート24の貫通孔27にピン部材26の笠部263および軸部261を挿通し、軸部261の一部と笠部263をベースプレート24の外面242から外側へ突出させておく。
レール30を、係止突起32を前にしてピン部材26に向かって移動する(図4(A)中矢印A)。このとき、レール30の傾斜面321をベースプレート24の外面242に近付けるように傾けて、係止突起32をピン部材26の笠部263とベースプレート24との間に入れ易くした状態(図4(A)において二点鎖線で表示)で移動させるようにしてもよい。
【0021】
図4(B)に示すように、レール30の先端の係止突起32を笠部263とベースプレート24との間に入れて、ピン部材26の軸部261をレール30の係止空間33(図2参照)に収容する。
なお、レール30を移動させる際に傾けている場合(図4(A)中二点鎖線の状態)には、レール30がベースプレート24の外面242に接触するように、レール30を平行にする。
【0022】
このとき、レール30を笠部263とベースプレート24との間に挿入することにより、笠部263を上方(図4(B)において下方、矢印B参照)へ移動させる力、すなわち軸部261を下筐体20の外側に引き出すような力が発生する。これにより、防水部材264をベースプレート24の内面241に押し付けて圧縮する。
【0023】
図4(C)に示すように、レール30の係止突起32の縁がピン部材26の軸部261に当接するまで、レール30を移動させる。
これにより、軸部261が収容空間33に収容されるとともに、ピン部材26の笠部263がレール30の先端の収容空間33に沿った段差36に収容される。
そして、最後に、図3に示すように、ねじ29によりレール30の反対側端部34をベースプレート24に固定する。
【0024】
以上、説明した本発明に係る実施形態の電子機器10によれば、下筐体20のベースプレート24に設けられた貫通孔27に挿通されたピン部材26は、貫通孔27に挿通された軸部261と、この軸部261の端部に設けられた鍔部262を有する。鍔部262は下筐体20の内側において下筐体20に収容されている回路基板23に接続される。ベースプレート24と鍔部262との間には、防水部材264が設けられている。
このようなピン部材26は、下筐体20の外側において外側端部265がレール30に係合されており、ピン部材26の軸部261が下筐体20の外側に引き出される方向に力が発生するように係合している。
このため、鍔部262は防水部材264を介してベースプレート24に押し付けられるので、防水部材264が変形して貫通孔27における確実な防水性を得ることができる。また、ピン部材26を介して回路基板23とレール30とが接続されるので、確実な電気接続を得ることができる。また、レール30をピン部材26の外側端部265に係合させることにより、回路基板23とレール30を接続できるので、容易に組み立てることができる。
【0025】
また、本発明の電子機器10では、ピン部材26が、軸部261の外側端部265に下筐体20の外側に突出する笠部263を有するので、レール30をピン部材26の外側端部265に係合させる際に、笠部263に引っかかる。このため、レール30を確実にピン部材26に係合させることができる。
また、レール30のピン部材側端部31に、軸部261を軸線に対して直交する方向に沿って挟持する係止突起32を設けたので、レール30を確実かつ容易にピン部材26に係合させることができる。
【0026】
なお、本発明の電子機器は、前述した実施形態に限定されるものでなく、適宜な変形,改良等が可能である。
前述した実施形態においては、レール30におけるピン部材26と反対側端部34にねじ孔35を設けて、ベースプレート24の内面241側からねじ29を挿入して、ねじ29の先端部をねじ孔35に螺合して固定する場合を例示した。この他、ベースプレート24にねじ孔を設けるとともに、レール30の反対側端部34に貫通孔を設け、レール30側からねじを挿入してベースプレートに固定することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0027】
以上のように、本発明にかかる電子機器では、鍔部が防水部材を介して壁部に押し付けられるので、貫通孔における確実な防水性を得ることができる。また、ピン部材を介して回路基板とレールとが接続されるので、確実な電気接続を得ることができる。また、レールをピン部材の外側端部に係合させることにより回路基板とレールを接続できるので、容易に組み立てることができるという効果を有し、二つの筐体が相対的にスライドする電子機器において、防水構造の筐体内の回路基板と筐体の外側の金属部品とを電気的に接続する電子機器等として有用である。
【符号の説明】
【0028】
10 電子機器
20 下筐体(第1筐体)
23 回路基板
24 ベースプレート(壁部)
242 外面
26 ピン部材
261 軸部
262 鍔部
263 笠部(段部)
264 防水部材
265 外側端部
27 貫通孔
30 レール(案内部材)
31 ピン部材側端部(長手方向端部)
32 係止突起(挟持部)
40 上筐体(第2筐体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに積層され、積層方向に対して直交する方向に沿って相対的に移動可能な第1筐体および第2筐体と、
前記第1筐体および前記第2筐体間に配置され、前記第1筐体の外面に沿ってレールが設けられた案内部材と、
前記第1筐体に収容された回路基板と、
前記第1筐体の壁部に設けられた貫通孔に挿通される軸部を有するとともに、前記第1筐体の外側において外側端部が前記レールに係合されるピン部材と、
前記ピン部材が、前記第1筐体の内側において前記軸部の端部に設けられ、前記回路基板に接続されるとともに前記壁部に押圧される鍔部と、前記壁部と前記鍔部との間に介装されて圧縮される防水部材とを有し、
前記ピン部材の前記外側端部に対して前記レールが係合されたときに、前記ピン部材の軸部が前記第1筐体の外側に引き出されるような力が発生する電子機器。
【請求項2】
請求項1に記載の電子機器であって、
前記ピン部材が、前記第1筐体の外側において前記軸部に設けられた段部を有し、
前記レールが、当該レールの長手方向端部に設けられ、前記軸部を軸線に対して直交する方向に沿って挟持するとともに前記段部に係合する挟持部を有する電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−191557(P2012−191557A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−55307(P2011−55307)
【出願日】平成23年3月14日(2011.3.14)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】