電子機器
【課題】筐体内における無線通信の品質を向上させることが可能な電子機器を提供する。
【解決手段】実施形態の電子機器100は、基板10と、筐体11と、電波吸収体30とを備える。基板10は、無線通信を行うための無線通信部20を有する。筐体11は、基板10を収納する。電波吸収体30は、筐体11の内部に含まれる、電波を反射する反射材の表面のうち、無線通信部20の通信範囲と重なる領域の少なくとも一部に設けられて電波を吸収する。
【解決手段】実施形態の電子機器100は、基板10と、筐体11と、電波吸収体30とを備える。基板10は、無線通信を行うための無線通信部20を有する。筐体11は、基板10を収納する。電波吸収体30は、筐体11の内部に含まれる、電波を反射する反射材の表面のうち、無線通信部20の通信範囲と重なる領域の少なくとも一部に設けられて電波を吸収する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子回路がそれぞれに実装された複数の基板が筐体に収納された電子機器において、基板間の通信を無線で行う技術が知られている。筐体内で無線通信を行う場合、筐体の内壁等で無線信号が反射することによってマルチパスフェージングが発生し、通信品質が低下する要因となる。そこで、筐体の内壁のうち面積が最大となる面に、電波を吸収する電波吸収体を設けてマルチパスフェージングを低減するという技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−150256号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の技術では、例えば無線通信を行う通信部を有する基板が、筐体の内壁のうち面積が最大ではない面の近くに配置された場合などにおいては、当該面における無線信号の反射によって生じるマルチパスフェージングを低減することはできない。すなわち、筐体内における無線通信の品質を十分に確保できないという問題がある。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、筐体内における無線通信の品質を向上させることが可能な電子機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の電子機器は、基板と、筐体と、電波吸収体とを備える。基板は、無線通信を行うための無線通信部を有する。筐体は、基板を収納する。電波吸収体は、筐体の内部に含まれる、電波を反射する反射材の表面のうち、無線通信部の通信範囲と重なる領域の少なくとも一部に設けられて電波を吸収する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】第1実施形態の電子機器の概略構成の一例を示す図。
【図2】第2実施形態の電子機器の概略構成の一例を示す図。
【図3】第3実施形態の電子機器の概略構成の一例を示す図。
【図4】変形例1の構成を説明するための図。
【図5】変形例1のバリエーションを説明するための図。
【図6】変形例1のバリエーションを説明するための図。
【図7】変形例2の構成を説明するための図。
【図8】変形例2のバリエーションを説明するための図。
【図9】変形例2のバリエーションを説明するための図。
【図10】変形例2のさらなる変形の構成を説明するための図。
【図11】変形例2のさらなる変形のバリエーションを説明するための図。
【図12】変形例2のさらなる変形のバリエーションを説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態の電子機器100の概略構成の一例を示す図である。図1に示すように、電子機器100は、複数の基板10a〜10dと、その複数の基板10a〜10dを収納する筐体11とを備える。ここでは、図1において、左から数えて1番目の基板を10a、第2番目の基板を10b、第3番目の基板を10c、第4番目の基板を10dと表記する。各基板10a〜10dを区別する必要が無い場合は、単に基板10と表記する。図1に示すように、基板10a〜10dは、互いに所定の間隔をあけて、並列に配置される。より具体的には、基板10a〜10dの各々は、互いに平行となるように、筐体11内の側面に対して垂直に配置される。
【0009】
各基板10は、無線通信を行う無線通信部20を有する。ここでは、基板10aが有する無線通信部を20a、基板10bが有する無線通信部を20b、基板10cが有する無線通信部を20c、基板10dが有する無線通信部を20dと表記する。各無線通信部20a〜20dを区別する必要が無い場合は、単に無線通信部20と表記する。本実施形態では、無線通信部20aは、無線通信部20bのみと無線通信を行う。また、無線通信部20bは、無線通信部20aおよび無線通信部20cの各々と無線通信を行う。また、無線通信部20cは、無線通信部20bおよび無線通信部20dの各々と無線通信を行う。さらに、無線通信部20dは、無線通信部20cのみと無線通信を行う。なお、詳細な図示は省略するが、各基板10には、無線通信部20の他にも、トランジスタやダイオードなどの能動素子、抵抗やコンデンサなどの受動素子を含む電子回路が搭載(実装)される。
【0010】
本実施形態では、筐体11の内面のうち、無線通信部20の通信範囲と重なる領域に、電波を吸収する電波吸収体が設けられる。通信範囲とは、無線通信部20の通信距離を半径とする略球状の領域であると捉えることができる。そして、通信距離とは、無線通信部20が通信データの送受信を行うことができる距離(無線通信可能な距離)を意味する。通信距離は、例えば送信電力、アンテナゲイン、受信側無線部のNF(Noise Figure)、通信データを誤りなく受信するのに必要なSNR(Signal to Noise Ratio)などによって算出することができる。また、例えば規格化された無線通信方式を用いている場合は、その通信規格で通信距離が示される場合もある。なお、無線通信部20における通信距離の始点は任意に設定可能であり、例えば無線通信部20の端部を、通信距離の始点とすることもできるし、無線通信部20が備えるアンテナの端部を、通信距離の始点とすることもできる。
【0011】
なお、本実施形態では、各無線通信部20は、筐体11の外部の機器との間で無線通信を行うものではないので、各無線通信部20の通信距離は、筐体11内の任意の2点間を結ぶ直線のうち最大長の直線よりも短い値に設定される。なお、これに限らず、各無線通信部20は、筐体11の外部の機器との間で無線通信を行うものであってもよく、各無線通信部20の通信距離は、筐体11内の任意の2点間を結ぶ直線のうち最大長の直線以上の値に設定されてもよい。
【0012】
以下では、図1を参照しながら、無線通信部20aに着目して説明する。無線通信部20aは、無線通信部20bとの間でのみ無線通信を行うので、無線通信部20aの通信距離は、無線通信部20aと無線通信部20bとを結ぶ直線よりも長く、かつ、無線通信部20aと無線通信部20cとを結ぶ直線よりも短い値dに設定される。したがって、無線通信部20aの通信範囲Waは、当該通信距離dを半径とする略球状の領域であると捉えることができる。
【0013】
図1に示すように、本実施形態では、筐体11内の底面101は、無線通信部20aの通信範囲Waと重なる領域Taを有し、当該領域Taには、電波吸収体30が設けられる。ここでは、領域Taの全領域にわたって電波吸収体30が設けられているが、これに限らず、例えば領域Taのうちの一部の領域のみに電波吸収体30が設けられてもよい。要するに、電波吸収体30は、領域Taの少なくとも一部に設けられるものであればよい。
【0014】
電波吸収体30は、電波を吸収するものであればよく、その構成は任意である。例えば磁性材料を樹脂に混合させて構成することもできるし、鉄粉を合成ゴムに混合させて構成することもできるし、ウレタンフォームやスチロール等の樹脂にカーボンを含浸させて構成することもできる。
【0015】
なお、他の無線通信部20b〜20dについても同様であり、ここでは、他の無線通信部20b〜20dの各々の通信距離もdに設定される。したがって、無線通信部20bの通信範囲Wb、無線通信部20cの通信範囲Wc、および、無線通信部20dの通信範囲Wdの各々は、通信距離dを半径とする略球状の領域であると捉えることができる。そして、筐体11内の底面101のうち、通信範囲Wbと重なる領域Tb、通信範囲Wcと重なる領域Tc、および、通信範囲Wdと重なる領域Tdの各々には、電波吸収体30が設けられる。以下では、各通信範囲Wa〜Wdを区別する必要が無い場合は、単にWと表記し、各領域Ta〜Tdを区別する必要が無い場合は、単にTと表記する。
【0016】
ここで、無線通信部20の通信範囲でマルチパスフェージングが発生した場合、当該無線通信部20が受信した無線信号に歪みが生じるため、通信品質を向上させるという観点からは、無線通信部20の通信範囲で発生するマルチパスフェージングを低減することが特に好ましい。上述したように、本実施形態では、筐体11の内面(ここでは底面101)のうち、各無線通信部20の通信範囲Wと重なる領域Tの少なくとも一部に電波吸収体30が設けられるので、各無線通信部20の通信範囲で発生するマルチパスフェージングが低減される。したがって、本実施形態によれば、筐体11内における無線通信の品質を向上させることができるという有利な効果を奏する。
【0017】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。以下では、上述の第1実施形態と相違する部分を中心に説明する。第1実施形態と共通する部分については、同一の符号を付して適宜に説明を省略する。
【0018】
第2実施形態では、電波吸収体30は、筐体11内の底面101のうち、上述の領域Tを含む領域に設けられる点で、第1実施形態と相違する。図2は、第2実施形態の電子機器200の概略構成の一例を示す図である。図2に示すように、筐体11の底面101は、領域Taを含む矩形の領域Saと、領域Tbを含む矩形の領域Sbと、領域Tcを含む矩形の領域Scと、領域Tdを含む矩形の領域Sdとを有する。各領域Sa〜Sdを区別する必要が無い場合は、単に領域Sと表記する。そして、領域Sa〜Sdの各々の全域にわたって電波吸収体30が設けられる。なお、これに限らず、各領域Sにおいて、当該領域Sの一部のみに電波吸収体30が設けられてもよいが、当該領域Sに含まれる領域Tのうちの少なくとも一部に電波吸収体30が設けられていることが必要である。
【0019】
本実施形態では、各領域Sに電波吸収体30が設けられることにより、各無線通信部20の通信範囲だけでなく、通信範囲外で発生するマルチパスフェージングも低減することが可能になる。したがって、筐体11内における無線通信の品質を一層向上させることができるという有利な効果を奏する。なお、ここでは、領域Sの形状が矩形である例を挙げて説明したが、これに限らず、領域Sの形状は任意である。例えば領域Sの形状が円であってもよい。
【0020】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態について説明する。以下では、上述の第1実施形態と相違する部分を中心に説明する。第1実施形態と共通する部分については、同一の符号を付して適宜に説明を省略する。
【0021】
本実施形態では、電波吸収体30は、筐体11内の底面101のうち、無線通信部20の通信範囲Wと重なる領域Tだけでなく、基板10のうち、無線通信部20の通信範囲Wと重なる領域にも設けられる点で上述の第1実施形態と相違する。図3は、第3実施形態の電子機器300の概略構成の一例を示す図である。図3に示すように、基板10aは、無線通信部20bの通信範囲Wbと重なる領域Qabを有する。そして、当該領域Qabには、電波吸収体30が設けられる。また、基板10bは、無線通信部20aの通信範囲Waと重なる領域Qbaと、無線通信部20cの通信範囲Wcと重なる領域Qbcとを有する。そして、領域QbaおよびQbcの各々には、電波吸収体30が設けられる。
【0022】
また、基板10cは、無線通信部20bの通信範囲Wbと重なる領域Qcbと、無線通信部20dの通信範囲Wdと重なる領域Qcdとを有する。そして、領域QcbおよびQcdの各々には、電波吸収体30が設けられる。さらに、基板10dは、無線通信部20cの通信範囲Wcと重なる領域Qdcを有する。そして、当該領域Qdcには、電波吸収体30が設けられる。
【0023】
ここで、マルチパスフェージングは、基板10における無線信号の反射によっても発生する。本実施形態では、電波吸収体30は、基板10のうち、各無線通信部20の通信範囲Wと重なる領域にも設けられるので、上述の第1実施形態に比べて、各無線通信部20の通信範囲Wで発生するマルチパスフェージングを一層低減できる。したがって、筐体11内における無線通信の品質をさらに向上させることができるという有利な効果を奏する。
【0024】
以上、本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。以下、変形例を記載する。なお、以下の変形例は任意に組み合わせることもできる。
【0025】
(変形例1)
各無線通信部20の通信距離は、筐体11内の任意の2点間を結ぶ直線のうち最大長の直線より短いものであればよく、その範囲において、通信範囲Wは任意に変更可能である。
例えば図4に示すように、各無線通信部20の通信距離が、上述のdよりも大きいd2に設定され、各無線通信部20の通信範囲Wが、筐体11内の底面101だけでなく、側面102および103と重なってもよい。以下では、図4を参照しながら、無線通信部20aに着目して説明する。
【0026】
図4に示すように、筐体11内の底面101は、無線通信部20aの通信範囲Waと重なる領域T2aを有し、当該領域T2aには、電波吸収体30が設けられる。ここでは、領域T2aの全域にわたって電波吸収体30が設けられているが、これに限らず、例えば領域T2aのうちの一部の領域のみに電波吸収体30が設けられてもよい。要するに、電波吸収体30は、領域T2aの少なくとも一部に設けられるものであればよい。また、筐体11内の側面102は、通信範囲Waと重なる領域Xaを有し、当該領域Xaには電波吸収体30が設けられる。ここでは、領域Xaの全域にわたって電波吸収体30が設けられているが、これに限らず、例えば領域Xaのうちの一部の領域のみに電波吸収体30が設けられてもよい。要するに、電波吸収体30は、領域Xaの少なくとも一部に設けられるものであればよい。さらに、筐体11内の側面103は、通信範囲Waと重なる領域Yaを有し、当該領域Yaには電波吸収体30が設けられる。ここでは、領域Yaの全域にわたって電波吸収体30が設けられているが、これに限らず、例えば領域Yaのうちの一部の領域のみに電波吸収体30が設けられてもよい。要するに、電波吸収体30は、領域Yaの少なくとも一部に設けられるものであればよい。
【0027】
無線通信部20b〜20dについても同様である。図4に示すように、筐体11内の底面101のうち、通信範囲Wbと重なる領域T2b、通信範囲Wcと重なる領域T2c、および、通信範囲Wdと重なる領域T2dの各々には、電波吸収体30が設けられる。各領域T2a〜T2dを区別する必要が無い場合は、単にT2と表記する。また、筐体11内の側面102のうち、通信範囲Wbと重なる領域Xb、通信範囲Wcと重なる領域Xc、および、通信範囲Wdと重なる領域Xdの各々にも、電波吸収体30が設けられる。各領域Xa〜Xdを区別する必要が無い場合は、単にXと表記する。さらに、筐体11内の側面103のうち、通信範囲Wbと重なる領域Yb、通信範囲Wcと重なる領域Yc、および、通信範囲Wdと重なる領域Ydの各々にも、電波吸収体30が設けられる。各領域Ya〜Ydを区別する必要が無い場合は、単にYと表記する。
【0028】
図4の例においても、筐体11の内面のうち、各無線通信部20の通信範囲Wと重なる領域の少なくとも一部には電波吸収体30が設けられるので、マルチパスフェージングが低減される。
【0029】
ただし、上述の各実施形態のように、通信範囲Wが狭ければ(無線通信部20の通信距離が短ければ)、筐体11の内面のうち通信範囲Wと重なる領域も少なくなるので、少ない電波吸収体30でマルチパスフェージングを低減できるという利点がある。なお、ミリ波信号は、伝播距離の増加に伴う振幅の減衰量が大きく、無線通信に用いれば、通信距離を短くすることができるので、上述の各実施形態においては、ミリ波信号を用いて無線通信を行うのが好適である。
【0030】
また、図4の例において、領域T2、領域Xおよび領域Yのうち、アンテナの感度が低くなる領域(アンテナの指向特性から外れる領域)には、電波吸収体30を設けなくてもよい。これにより、少ない電波吸収体30でも効果的にマルチパスフェージングを低減できるという利点がある。
【0031】
また、上述の第2実施形態と同様に、筐体11内の底面101のうち上述の領域T2を含む領域、側面102のうち上述の領域Xを含む領域、および、側面103のうち上述の領域Yを含む領域の各々に電波吸収体30を設けることができる。この場合、例えば図5に示すように、筐体11の底面101は、領域T2a、領域T2b、領域T2cおよび領域T2dを含む矩形(長方形)の領域S2を有し、当該領域S2には電波吸収体30が設けられる。また、筐体11の側面102は、領域Xa、領域Xb、領域Xcおよび領域Xdを含む矩形の領域S3を有し、当該領域S3には電波吸収体30が設けられる。さらに、筐体11の側面103は、領域Ya、領域Yb、領域Ycおよび領域Ydを含む矩形の領域S4を有し、当該領域S4には電波吸収体30が設けられる。
【0032】
さらに、上述の第3実施形態と同様に、基板10のうち、無線通信部20の通信範囲Wと重なる領域にも電波吸収体30を設けることができる。この場合、例えば図6に示すように、基板10aは、無線通信部20bの通信範囲Wbと重なる領域Q2abを有する。そして、当該領域Q2abには、電波吸収体30が設けられる。また、基板10bは、無線通信部20aの通信範囲Waと重なる領域Q2baと、無線通信部20cの通信範囲Wcと重なる領域Q2bcとを有する。そして、領域Q2baおよびQ2bcの各々には、電波吸収体30が設けられる。
【0033】
また、基板10cは、無線通信部20bの通信範囲Wbと重なる領域Q2cbと、無線通信部20dの通信範囲Wdと重なる領域Q2cdとを有する。そして、領域Q2cbおよびQ2cdの各々には、電波吸収体30が設けられる。さらに、基板10dは、無線通信部20cの通信範囲Wcと重なる領域Q2dcを有する。そして、当該領域Q2dcには、電波吸収体30が設けられる。
【0034】
(変形例2)
上述の各実施形態では、4つの基板10が筐体11に収納されているが、これに限らず、筐体11に収納される基板10の数は任意である。例えば筐体11に収納される基板10の数は1つのみであってもよいし、5つ以上であってもよい。また、例えば図7に示すように、基板10a〜10dの各々と無線通信を行う基板40が筐体11内に収納される構成であってもよい。
【0035】
図7は、変形例に係る電子機器400の概略構成の一例を示す図である。図7に示すように、筐体11の底面101には基板40が配置され、基板40の表面には、複数の信号転送部50a〜50dが配列される。ここでは、図4の左から数えて1番目の信号転送部を50a、2番目の信号転送部を50b、3番目の信号転送部を50c、4番目の信号転送部を50dと表記する。各信号転送部50a〜50dを区別する必要が無い場合は、単に信号転送部50と表記する。
【0036】
各信号転送部50間では、通信線60を介した有線通信が行われる。より具体的には、信号転送部50aは、通信線60を介して信号転送部50bと有線通信を行う。また、信号転送部50bは、通信線60を介して信号転送部50cと有線通信を行う。さらに、信号転送部50cは、通信線60を介して信号転送部50dと有線通信を行う。これにより、各信号転送部50間でのデータ転送が可能になる。また、信号転送部50は、相互に直接、有線通信を行ってもよい。例えば信号転送部50aは、通信線60を介して信号転送部50cや信号転送部50dと直接有線通信を行ってもよい。
【0037】
図7の例では、信号転送部50aは、基板10aが有する無線通信部110aとの間でのみ無線通信を行い、無線通信部110aは、信号転送部50aとの間でのみ無線通信を行う。信号転送部50bは、基板10bが有する無線通信部110bとの間でのみ無線通信を行い、無線通信部110bは、信号転送部50bとの間でのみ無線通信を行う。信号転送部50cは、基板10cが有する無線通信部110cとの間でのみ無線通信を行い、無線通信部110cは、信号転送部50cとの間でのみ無線通信を行う。信号転送部50dは、基板10dが有する無線通信部110dとの間でのみ無線通信を行い、無線通信部110dは、信号転送部50dとの間でのみ無線通信を行う。なお、各無線通信部110a〜110dを区別する必要が無い場合は、単に無線通信部110と表記する。
【0038】
図7の例では、基板10a〜10dと、基板40との位置関係は、無線通信部110aの少なくとも一部が信号転送部50aに重なり、無線通信部110bの少なくとも一部が信号転送部50bに重なり、無線通信部110cの少なくとも一部が信号転送部50cに重なり、無線通信部110dの少なくとも一部が信号転送部50dに重なるように設定される。
【0039】
ここでは、無線通信部110aと信号転送部50aとの組(ペア)をUa、無線通信部110bと信号転送部50bとの組をUb、無線通信部110cと信号転送部50cの組をUc、無線通信部50dと信号転送部50dの組をUdと表記する。各組を区別する必要が無い場合は、単に組Uと表記する。
【0040】
以下では、組Uaに着目して説明する。無線通信部110aの通信距離は、無線通信部110aと信号転送部50aとを結ぶ直線以上に長く、かつ、筐体11内の任意の2点を結ぶ直線のうち最大長の直線よりも短い値に設定される。また、信号転送部50aの通信距離も、無線通信部110aと信号転送部50aとを結ぶ直線以上に長く、かつ、筐体11内の任意の2点を結ぶ直線のうち最大長の直線よりも短い値に設定される。ここでは、無線通信部110aの通信距離と信号転送部50aの通信距離は、共にd3に設定されるものとする。したがって、無線通信部110aの通信範囲W2aの大きさは、信号転送部50aの通信範囲W3aの大きさと同じである。
【0041】
図7の例では、筐体11の底面101は、無線通信部110aの通信範囲W2a、および、信号転送部50aの通信範囲W3aの各々と重なる領域を有する。ここでは、筐体11の底面101のうち、無線通信部110aの通信範囲W2aと重なる領域は、筐体11の底面101のうち、信号転送部50aの通信範囲W3aと重なる領域T3aに包含される。そして、当該領域T3aのうち基板40と重なる領域以外の領域には、電波吸収体30が設けられる。これにより、無線通信部110aおよび信号転送部50aの各々の通信範囲(W2a、W3a)で発生するマルチパスフェージングが低減される。なお、基板40は、領域T3aのうち基板40と重なる領域(つまりは基板40の裏面側)に無線信号が進行することを妨げるので、当該領域に電波吸収体30を設けなくても、当該領域における無線信号の反射によって発生するマルチパスフェージングを低減できる。
【0042】
なお、他の組Ub〜Udについても同様であり、筐体11の底面101は、通信範囲W3bと重なる領域T3bを有し、当該領域T3bのうち基板40と重なる領域以外の領域に電波吸収体30が設けられる。また、筐体11内の底面101は、通信範囲W3cと重なる領域T3cを有し、当該領域T3cのうち基板40と重なる領域以外の領域に電波吸収体30が設けられる。さらに、筐体11内の底面101は、通信範囲W3dと重なる領域T3dを有し、当該領域T3dのうち基板40と重なる領域以外の領域に電波吸収体30が設けられる。領域T3a〜T3dの各々を区別する必要が無い場合は、単に領域T3と表記する。
【0043】
また、上述の第2実施形態と同様に、筐体11の底面101のうち上述の領域T3を含む領域に電波吸収体30を設けることもできる。この場合、例えば図8に示すように、筐体11の底面101は、領域T3a、領域T3b、領域T3cおよび領域T3dを含む矩形(長方形)の領域S5を有し、当該領域S5のうち基板40と重なる領域以外の領域に電波吸収体30が設けられる。なお、これに限らず、基板40の表面のうち領域S5と重なる領域に電波吸収体30が設けられてもよい。これにより、基板40の表面における無線信号の反射が抑制されるので、マルチパスフェージングを一層低減できる。
【0044】
さらに、上述の第3実施形態と同様に、基板10のうち、無線通信部110の通信範囲W2と重なる領域に電波吸収体30を設けることもできる。この場合、例えば図9に示すように、基板10aは、無線通信部110bの通信範囲W2bと重なる領域Q3abを有する。そして、当該領域Q3abには、電波吸収体30が設けられる。また、基板10bは、無線通信部110aの通信範囲W2aと重なる領域Q3baと、無線通信部110cの通信範囲W2cと重なる領域Q3bcとを有する。そして、領域Q3baおよびQ3bcの各々には、電波吸収体30が設けられる。
【0045】
また、基板10cは、無線通信部110bの通信範囲W2bと重なる領域Q3cbと、無線通信部110dの通信範囲W2dと重なる領域Q3cdとを有する。そして、領域Q3cbおよびQ3cdの各々には、電波吸収体30が設けられる。さらに、基板10dは、無線通信部110cの通信範囲W2cと重なる領域Q3dcを有する。そして、当該領域Q3dcには、電波吸収体30が設けられる。
【0046】
さらに、図9の例では、基板40の表面のうち、無線通信部110の通信範囲W2および信号転送部50の通信範囲W3と重なる領域にも電波吸収体30が設けられる。ここでは、筐体11の底面101のうち無線通信部110の通信範囲W2と重なる領域は、当該底面101のうち信号転送部50の通信範囲W3と重なる領域T3に包含されるので、結局は、当該底面101に配置された基板40の表面のうち無線通信部110の通信範囲W2と重なる領域は、基板40の表面のうち信号転送部50の通信範囲W3と重なる領域に包含される。そして、基板40の表面のうち信号転送部50の通信範囲W3と重なる領域とは、基板40の表面のうち領域T3と重なる領域であると捉えることができる。したがって、基板40の表面のうち領域T3と重なる領域に電波吸収体30が設けられる。これにより、基板40の表面における無線信号の反射が抑制されるので、マルチパスフェージングを一層低減できる。
【0047】
なお、ここでは、詳細な図示は省略するが、基板10のうち、信号転送部50の通信範囲W3と重なる領域の少なくとも一部にも、電波吸収体30を設けることができる。
【0048】
(変形例2のさらなる変形)
上述の変形例2では、信号転送部50a〜信号転送部50dがひとつの基板40上に設けられているが、これに限らず、信号転送部50a〜信号転送部50dが、それぞれ別個の基板に設けられてもよい。例えば図10に示すように、筐体11の底面101には、信号転送部50aが搭載される基板70aと、信号転送部50bが搭載される基板70bと、信号転送部50cが搭載される基板70cと、信号転送部50dが搭載される基板70dとが設けられてもよい。基板70a〜70dを区別する必要が無い場合は、単に基板70と表記する。図10の例では、筐体11の底面101の領域T3のうち、基板70と重なる領域以外の領域に電波吸収体30が設けられる。その他の内容は、図7の内容と同じである。
【0049】
図10の例において、上述の第2実施形態と同様に、筐体11内の底面101のうち領域T3を含む領域に電波吸収体30を設けることもできる。この場合、例えば図11に示すように、筐体11の底面101は、領域T3a、領域T3b、領域T3cおよび領域T3dを含む矩形(長方形)の領域S6を有し、当該領域S6のうち各基板70a〜70dと重なる領域以外の領域に電波吸収体30が設けられる。なお、これに限らず、各基板70a〜70dの表面のうち領域S6と重なる領域に電波吸収体30が設けられてもよい。これにより、各基板70a〜70dの表面における無線信号の反射が抑制されるので、マルチパスフェージングを一層低減できる。
【0050】
図10の例において、上述の第3実施形態と同様に、基板10のうち、無線通信部110の通信範囲W2と重なる領域にも電波吸収体30を設けることができる。この場合、例えば図12に示すように、基板10aは、無線通信部110bの通信範囲W2bと重なる領域Q3abを有する。そして、当該領域Q3abには、電波吸収体30が設けられる。また、基板10bは、無線通信部110aの通信範囲W2aと重なる領域Q3baと、無線通信部110cの通信範囲W2cと重なる領域Q3bcとを有する。そして、領域Q3baおよびQ3bcの各々には、電波吸収体30が設けられる。
【0051】
また、基板10cは、無線通信部110bの通信範囲W2bと重なる領域Q3cbと、無線通信部110dの通信範囲W2dと重なる領域Q3cdとを有する。そして、領域Q3cbおよびQ3cdの各々には、電波吸収体30が設けられる。さらに、基板10dは、無線通信部110cの通信範囲W2cと重なる領域Q3dcを有する。そして、当該領域Q3dcには、電波吸収体30が設けられる。上記内容は、図9の内容と同じである。
【0052】
さらに、図12の例では、基板70の表面のうち、無線通信部110の通信範囲W2および信号転送部50の通信範囲W3と重なる領域にも電波吸収体30が設けられる。ここでは、筐体11の底面101のうち無線通信部110の通信範囲W2と重なる領域は、当該底面101のうち信号転送部50の通信範囲W3と重なる領域T3に包含されるので、結局は、当該底面101に配置された基板70の表面のうち無線通信部110の通信範囲W2と重なる領域は、基板70の表面のうち信号転送部50の通信範囲W3と重なる領域に包含される。そして、基板70の表面のうち信号転送部50の通信範囲W3と重なる領域とは、基板70の表面のうち領域T3と重なる領域であると捉えることができる。したがって、基板70の表面のうち領域T3と重なる領域に電波吸収体30が設けられる。これにより、基板70の表面における無線信号の反射が抑制されるので、マルチパスフェージングを一層低減できる。
【0053】
(変形例3)
以上においては、筐体11の内面(底面101、側面102、側面103等)や基板(10、40、70等)の表面のうち、無線通信部(20、50、110)の通信範囲と重なる領域の少なくとも一部に電波吸収体30が設けられる構成が例示されているが、これに限られるものではない。要するに、筐体11の内部に含まれる、電波を反射する反射材の表面のうち、無線通信部の通信範囲と重なる領域の少なくとも一部に電波吸収体30が設けられるものであればよい。反射材の一例としては、筐体11の内面(101、102、103等)、筐体11に収納された基板(10、40、70等)の他、筐体11の内部に配置された電源、ケーブル、基板を取り付けるための金具、他の電子部品等が挙げられる。
【符号の説明】
【0054】
10 基板
11 筐体
20 無線通信部
30 電波吸収体
40 基板
50 信号転送部
60 通信線
70 基板
100 電子機器
101 底面
102 側面
103 側面
110 無線通信部
200 電子機器
300 電子機器
400 電子機器
Q 領域
S 領域
T 領域
U 組
W 通信範囲
X 領域
Y 領域
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子回路がそれぞれに実装された複数の基板が筐体に収納された電子機器において、基板間の通信を無線で行う技術が知られている。筐体内で無線通信を行う場合、筐体の内壁等で無線信号が反射することによってマルチパスフェージングが発生し、通信品質が低下する要因となる。そこで、筐体の内壁のうち面積が最大となる面に、電波を吸収する電波吸収体を設けてマルチパスフェージングを低減するという技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−150256号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の技術では、例えば無線通信を行う通信部を有する基板が、筐体の内壁のうち面積が最大ではない面の近くに配置された場合などにおいては、当該面における無線信号の反射によって生じるマルチパスフェージングを低減することはできない。すなわち、筐体内における無線通信の品質を十分に確保できないという問題がある。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、筐体内における無線通信の品質を向上させることが可能な電子機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の電子機器は、基板と、筐体と、電波吸収体とを備える。基板は、無線通信を行うための無線通信部を有する。筐体は、基板を収納する。電波吸収体は、筐体の内部に含まれる、電波を反射する反射材の表面のうち、無線通信部の通信範囲と重なる領域の少なくとも一部に設けられて電波を吸収する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】第1実施形態の電子機器の概略構成の一例を示す図。
【図2】第2実施形態の電子機器の概略構成の一例を示す図。
【図3】第3実施形態の電子機器の概略構成の一例を示す図。
【図4】変形例1の構成を説明するための図。
【図5】変形例1のバリエーションを説明するための図。
【図6】変形例1のバリエーションを説明するための図。
【図7】変形例2の構成を説明するための図。
【図8】変形例2のバリエーションを説明するための図。
【図9】変形例2のバリエーションを説明するための図。
【図10】変形例2のさらなる変形の構成を説明するための図。
【図11】変形例2のさらなる変形のバリエーションを説明するための図。
【図12】変形例2のさらなる変形のバリエーションを説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態の電子機器100の概略構成の一例を示す図である。図1に示すように、電子機器100は、複数の基板10a〜10dと、その複数の基板10a〜10dを収納する筐体11とを備える。ここでは、図1において、左から数えて1番目の基板を10a、第2番目の基板を10b、第3番目の基板を10c、第4番目の基板を10dと表記する。各基板10a〜10dを区別する必要が無い場合は、単に基板10と表記する。図1に示すように、基板10a〜10dは、互いに所定の間隔をあけて、並列に配置される。より具体的には、基板10a〜10dの各々は、互いに平行となるように、筐体11内の側面に対して垂直に配置される。
【0009】
各基板10は、無線通信を行う無線通信部20を有する。ここでは、基板10aが有する無線通信部を20a、基板10bが有する無線通信部を20b、基板10cが有する無線通信部を20c、基板10dが有する無線通信部を20dと表記する。各無線通信部20a〜20dを区別する必要が無い場合は、単に無線通信部20と表記する。本実施形態では、無線通信部20aは、無線通信部20bのみと無線通信を行う。また、無線通信部20bは、無線通信部20aおよび無線通信部20cの各々と無線通信を行う。また、無線通信部20cは、無線通信部20bおよび無線通信部20dの各々と無線通信を行う。さらに、無線通信部20dは、無線通信部20cのみと無線通信を行う。なお、詳細な図示は省略するが、各基板10には、無線通信部20の他にも、トランジスタやダイオードなどの能動素子、抵抗やコンデンサなどの受動素子を含む電子回路が搭載(実装)される。
【0010】
本実施形態では、筐体11の内面のうち、無線通信部20の通信範囲と重なる領域に、電波を吸収する電波吸収体が設けられる。通信範囲とは、無線通信部20の通信距離を半径とする略球状の領域であると捉えることができる。そして、通信距離とは、無線通信部20が通信データの送受信を行うことができる距離(無線通信可能な距離)を意味する。通信距離は、例えば送信電力、アンテナゲイン、受信側無線部のNF(Noise Figure)、通信データを誤りなく受信するのに必要なSNR(Signal to Noise Ratio)などによって算出することができる。また、例えば規格化された無線通信方式を用いている場合は、その通信規格で通信距離が示される場合もある。なお、無線通信部20における通信距離の始点は任意に設定可能であり、例えば無線通信部20の端部を、通信距離の始点とすることもできるし、無線通信部20が備えるアンテナの端部を、通信距離の始点とすることもできる。
【0011】
なお、本実施形態では、各無線通信部20は、筐体11の外部の機器との間で無線通信を行うものではないので、各無線通信部20の通信距離は、筐体11内の任意の2点間を結ぶ直線のうち最大長の直線よりも短い値に設定される。なお、これに限らず、各無線通信部20は、筐体11の外部の機器との間で無線通信を行うものであってもよく、各無線通信部20の通信距離は、筐体11内の任意の2点間を結ぶ直線のうち最大長の直線以上の値に設定されてもよい。
【0012】
以下では、図1を参照しながら、無線通信部20aに着目して説明する。無線通信部20aは、無線通信部20bとの間でのみ無線通信を行うので、無線通信部20aの通信距離は、無線通信部20aと無線通信部20bとを結ぶ直線よりも長く、かつ、無線通信部20aと無線通信部20cとを結ぶ直線よりも短い値dに設定される。したがって、無線通信部20aの通信範囲Waは、当該通信距離dを半径とする略球状の領域であると捉えることができる。
【0013】
図1に示すように、本実施形態では、筐体11内の底面101は、無線通信部20aの通信範囲Waと重なる領域Taを有し、当該領域Taには、電波吸収体30が設けられる。ここでは、領域Taの全領域にわたって電波吸収体30が設けられているが、これに限らず、例えば領域Taのうちの一部の領域のみに電波吸収体30が設けられてもよい。要するに、電波吸収体30は、領域Taの少なくとも一部に設けられるものであればよい。
【0014】
電波吸収体30は、電波を吸収するものであればよく、その構成は任意である。例えば磁性材料を樹脂に混合させて構成することもできるし、鉄粉を合成ゴムに混合させて構成することもできるし、ウレタンフォームやスチロール等の樹脂にカーボンを含浸させて構成することもできる。
【0015】
なお、他の無線通信部20b〜20dについても同様であり、ここでは、他の無線通信部20b〜20dの各々の通信距離もdに設定される。したがって、無線通信部20bの通信範囲Wb、無線通信部20cの通信範囲Wc、および、無線通信部20dの通信範囲Wdの各々は、通信距離dを半径とする略球状の領域であると捉えることができる。そして、筐体11内の底面101のうち、通信範囲Wbと重なる領域Tb、通信範囲Wcと重なる領域Tc、および、通信範囲Wdと重なる領域Tdの各々には、電波吸収体30が設けられる。以下では、各通信範囲Wa〜Wdを区別する必要が無い場合は、単にWと表記し、各領域Ta〜Tdを区別する必要が無い場合は、単にTと表記する。
【0016】
ここで、無線通信部20の通信範囲でマルチパスフェージングが発生した場合、当該無線通信部20が受信した無線信号に歪みが生じるため、通信品質を向上させるという観点からは、無線通信部20の通信範囲で発生するマルチパスフェージングを低減することが特に好ましい。上述したように、本実施形態では、筐体11の内面(ここでは底面101)のうち、各無線通信部20の通信範囲Wと重なる領域Tの少なくとも一部に電波吸収体30が設けられるので、各無線通信部20の通信範囲で発生するマルチパスフェージングが低減される。したがって、本実施形態によれば、筐体11内における無線通信の品質を向上させることができるという有利な効果を奏する。
【0017】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。以下では、上述の第1実施形態と相違する部分を中心に説明する。第1実施形態と共通する部分については、同一の符号を付して適宜に説明を省略する。
【0018】
第2実施形態では、電波吸収体30は、筐体11内の底面101のうち、上述の領域Tを含む領域に設けられる点で、第1実施形態と相違する。図2は、第2実施形態の電子機器200の概略構成の一例を示す図である。図2に示すように、筐体11の底面101は、領域Taを含む矩形の領域Saと、領域Tbを含む矩形の領域Sbと、領域Tcを含む矩形の領域Scと、領域Tdを含む矩形の領域Sdとを有する。各領域Sa〜Sdを区別する必要が無い場合は、単に領域Sと表記する。そして、領域Sa〜Sdの各々の全域にわたって電波吸収体30が設けられる。なお、これに限らず、各領域Sにおいて、当該領域Sの一部のみに電波吸収体30が設けられてもよいが、当該領域Sに含まれる領域Tのうちの少なくとも一部に電波吸収体30が設けられていることが必要である。
【0019】
本実施形態では、各領域Sに電波吸収体30が設けられることにより、各無線通信部20の通信範囲だけでなく、通信範囲外で発生するマルチパスフェージングも低減することが可能になる。したがって、筐体11内における無線通信の品質を一層向上させることができるという有利な効果を奏する。なお、ここでは、領域Sの形状が矩形である例を挙げて説明したが、これに限らず、領域Sの形状は任意である。例えば領域Sの形状が円であってもよい。
【0020】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態について説明する。以下では、上述の第1実施形態と相違する部分を中心に説明する。第1実施形態と共通する部分については、同一の符号を付して適宜に説明を省略する。
【0021】
本実施形態では、電波吸収体30は、筐体11内の底面101のうち、無線通信部20の通信範囲Wと重なる領域Tだけでなく、基板10のうち、無線通信部20の通信範囲Wと重なる領域にも設けられる点で上述の第1実施形態と相違する。図3は、第3実施形態の電子機器300の概略構成の一例を示す図である。図3に示すように、基板10aは、無線通信部20bの通信範囲Wbと重なる領域Qabを有する。そして、当該領域Qabには、電波吸収体30が設けられる。また、基板10bは、無線通信部20aの通信範囲Waと重なる領域Qbaと、無線通信部20cの通信範囲Wcと重なる領域Qbcとを有する。そして、領域QbaおよびQbcの各々には、電波吸収体30が設けられる。
【0022】
また、基板10cは、無線通信部20bの通信範囲Wbと重なる領域Qcbと、無線通信部20dの通信範囲Wdと重なる領域Qcdとを有する。そして、領域QcbおよびQcdの各々には、電波吸収体30が設けられる。さらに、基板10dは、無線通信部20cの通信範囲Wcと重なる領域Qdcを有する。そして、当該領域Qdcには、電波吸収体30が設けられる。
【0023】
ここで、マルチパスフェージングは、基板10における無線信号の反射によっても発生する。本実施形態では、電波吸収体30は、基板10のうち、各無線通信部20の通信範囲Wと重なる領域にも設けられるので、上述の第1実施形態に比べて、各無線通信部20の通信範囲Wで発生するマルチパスフェージングを一層低減できる。したがって、筐体11内における無線通信の品質をさらに向上させることができるという有利な効果を奏する。
【0024】
以上、本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。以下、変形例を記載する。なお、以下の変形例は任意に組み合わせることもできる。
【0025】
(変形例1)
各無線通信部20の通信距離は、筐体11内の任意の2点間を結ぶ直線のうち最大長の直線より短いものであればよく、その範囲において、通信範囲Wは任意に変更可能である。
例えば図4に示すように、各無線通信部20の通信距離が、上述のdよりも大きいd2に設定され、各無線通信部20の通信範囲Wが、筐体11内の底面101だけでなく、側面102および103と重なってもよい。以下では、図4を参照しながら、無線通信部20aに着目して説明する。
【0026】
図4に示すように、筐体11内の底面101は、無線通信部20aの通信範囲Waと重なる領域T2aを有し、当該領域T2aには、電波吸収体30が設けられる。ここでは、領域T2aの全域にわたって電波吸収体30が設けられているが、これに限らず、例えば領域T2aのうちの一部の領域のみに電波吸収体30が設けられてもよい。要するに、電波吸収体30は、領域T2aの少なくとも一部に設けられるものであればよい。また、筐体11内の側面102は、通信範囲Waと重なる領域Xaを有し、当該領域Xaには電波吸収体30が設けられる。ここでは、領域Xaの全域にわたって電波吸収体30が設けられているが、これに限らず、例えば領域Xaのうちの一部の領域のみに電波吸収体30が設けられてもよい。要するに、電波吸収体30は、領域Xaの少なくとも一部に設けられるものであればよい。さらに、筐体11内の側面103は、通信範囲Waと重なる領域Yaを有し、当該領域Yaには電波吸収体30が設けられる。ここでは、領域Yaの全域にわたって電波吸収体30が設けられているが、これに限らず、例えば領域Yaのうちの一部の領域のみに電波吸収体30が設けられてもよい。要するに、電波吸収体30は、領域Yaの少なくとも一部に設けられるものであればよい。
【0027】
無線通信部20b〜20dについても同様である。図4に示すように、筐体11内の底面101のうち、通信範囲Wbと重なる領域T2b、通信範囲Wcと重なる領域T2c、および、通信範囲Wdと重なる領域T2dの各々には、電波吸収体30が設けられる。各領域T2a〜T2dを区別する必要が無い場合は、単にT2と表記する。また、筐体11内の側面102のうち、通信範囲Wbと重なる領域Xb、通信範囲Wcと重なる領域Xc、および、通信範囲Wdと重なる領域Xdの各々にも、電波吸収体30が設けられる。各領域Xa〜Xdを区別する必要が無い場合は、単にXと表記する。さらに、筐体11内の側面103のうち、通信範囲Wbと重なる領域Yb、通信範囲Wcと重なる領域Yc、および、通信範囲Wdと重なる領域Ydの各々にも、電波吸収体30が設けられる。各領域Ya〜Ydを区別する必要が無い場合は、単にYと表記する。
【0028】
図4の例においても、筐体11の内面のうち、各無線通信部20の通信範囲Wと重なる領域の少なくとも一部には電波吸収体30が設けられるので、マルチパスフェージングが低減される。
【0029】
ただし、上述の各実施形態のように、通信範囲Wが狭ければ(無線通信部20の通信距離が短ければ)、筐体11の内面のうち通信範囲Wと重なる領域も少なくなるので、少ない電波吸収体30でマルチパスフェージングを低減できるという利点がある。なお、ミリ波信号は、伝播距離の増加に伴う振幅の減衰量が大きく、無線通信に用いれば、通信距離を短くすることができるので、上述の各実施形態においては、ミリ波信号を用いて無線通信を行うのが好適である。
【0030】
また、図4の例において、領域T2、領域Xおよび領域Yのうち、アンテナの感度が低くなる領域(アンテナの指向特性から外れる領域)には、電波吸収体30を設けなくてもよい。これにより、少ない電波吸収体30でも効果的にマルチパスフェージングを低減できるという利点がある。
【0031】
また、上述の第2実施形態と同様に、筐体11内の底面101のうち上述の領域T2を含む領域、側面102のうち上述の領域Xを含む領域、および、側面103のうち上述の領域Yを含む領域の各々に電波吸収体30を設けることができる。この場合、例えば図5に示すように、筐体11の底面101は、領域T2a、領域T2b、領域T2cおよび領域T2dを含む矩形(長方形)の領域S2を有し、当該領域S2には電波吸収体30が設けられる。また、筐体11の側面102は、領域Xa、領域Xb、領域Xcおよび領域Xdを含む矩形の領域S3を有し、当該領域S3には電波吸収体30が設けられる。さらに、筐体11の側面103は、領域Ya、領域Yb、領域Ycおよび領域Ydを含む矩形の領域S4を有し、当該領域S4には電波吸収体30が設けられる。
【0032】
さらに、上述の第3実施形態と同様に、基板10のうち、無線通信部20の通信範囲Wと重なる領域にも電波吸収体30を設けることができる。この場合、例えば図6に示すように、基板10aは、無線通信部20bの通信範囲Wbと重なる領域Q2abを有する。そして、当該領域Q2abには、電波吸収体30が設けられる。また、基板10bは、無線通信部20aの通信範囲Waと重なる領域Q2baと、無線通信部20cの通信範囲Wcと重なる領域Q2bcとを有する。そして、領域Q2baおよびQ2bcの各々には、電波吸収体30が設けられる。
【0033】
また、基板10cは、無線通信部20bの通信範囲Wbと重なる領域Q2cbと、無線通信部20dの通信範囲Wdと重なる領域Q2cdとを有する。そして、領域Q2cbおよびQ2cdの各々には、電波吸収体30が設けられる。さらに、基板10dは、無線通信部20cの通信範囲Wcと重なる領域Q2dcを有する。そして、当該領域Q2dcには、電波吸収体30が設けられる。
【0034】
(変形例2)
上述の各実施形態では、4つの基板10が筐体11に収納されているが、これに限らず、筐体11に収納される基板10の数は任意である。例えば筐体11に収納される基板10の数は1つのみであってもよいし、5つ以上であってもよい。また、例えば図7に示すように、基板10a〜10dの各々と無線通信を行う基板40が筐体11内に収納される構成であってもよい。
【0035】
図7は、変形例に係る電子機器400の概略構成の一例を示す図である。図7に示すように、筐体11の底面101には基板40が配置され、基板40の表面には、複数の信号転送部50a〜50dが配列される。ここでは、図4の左から数えて1番目の信号転送部を50a、2番目の信号転送部を50b、3番目の信号転送部を50c、4番目の信号転送部を50dと表記する。各信号転送部50a〜50dを区別する必要が無い場合は、単に信号転送部50と表記する。
【0036】
各信号転送部50間では、通信線60を介した有線通信が行われる。より具体的には、信号転送部50aは、通信線60を介して信号転送部50bと有線通信を行う。また、信号転送部50bは、通信線60を介して信号転送部50cと有線通信を行う。さらに、信号転送部50cは、通信線60を介して信号転送部50dと有線通信を行う。これにより、各信号転送部50間でのデータ転送が可能になる。また、信号転送部50は、相互に直接、有線通信を行ってもよい。例えば信号転送部50aは、通信線60を介して信号転送部50cや信号転送部50dと直接有線通信を行ってもよい。
【0037】
図7の例では、信号転送部50aは、基板10aが有する無線通信部110aとの間でのみ無線通信を行い、無線通信部110aは、信号転送部50aとの間でのみ無線通信を行う。信号転送部50bは、基板10bが有する無線通信部110bとの間でのみ無線通信を行い、無線通信部110bは、信号転送部50bとの間でのみ無線通信を行う。信号転送部50cは、基板10cが有する無線通信部110cとの間でのみ無線通信を行い、無線通信部110cは、信号転送部50cとの間でのみ無線通信を行う。信号転送部50dは、基板10dが有する無線通信部110dとの間でのみ無線通信を行い、無線通信部110dは、信号転送部50dとの間でのみ無線通信を行う。なお、各無線通信部110a〜110dを区別する必要が無い場合は、単に無線通信部110と表記する。
【0038】
図7の例では、基板10a〜10dと、基板40との位置関係は、無線通信部110aの少なくとも一部が信号転送部50aに重なり、無線通信部110bの少なくとも一部が信号転送部50bに重なり、無線通信部110cの少なくとも一部が信号転送部50cに重なり、無線通信部110dの少なくとも一部が信号転送部50dに重なるように設定される。
【0039】
ここでは、無線通信部110aと信号転送部50aとの組(ペア)をUa、無線通信部110bと信号転送部50bとの組をUb、無線通信部110cと信号転送部50cの組をUc、無線通信部50dと信号転送部50dの組をUdと表記する。各組を区別する必要が無い場合は、単に組Uと表記する。
【0040】
以下では、組Uaに着目して説明する。無線通信部110aの通信距離は、無線通信部110aと信号転送部50aとを結ぶ直線以上に長く、かつ、筐体11内の任意の2点を結ぶ直線のうち最大長の直線よりも短い値に設定される。また、信号転送部50aの通信距離も、無線通信部110aと信号転送部50aとを結ぶ直線以上に長く、かつ、筐体11内の任意の2点を結ぶ直線のうち最大長の直線よりも短い値に設定される。ここでは、無線通信部110aの通信距離と信号転送部50aの通信距離は、共にd3に設定されるものとする。したがって、無線通信部110aの通信範囲W2aの大きさは、信号転送部50aの通信範囲W3aの大きさと同じである。
【0041】
図7の例では、筐体11の底面101は、無線通信部110aの通信範囲W2a、および、信号転送部50aの通信範囲W3aの各々と重なる領域を有する。ここでは、筐体11の底面101のうち、無線通信部110aの通信範囲W2aと重なる領域は、筐体11の底面101のうち、信号転送部50aの通信範囲W3aと重なる領域T3aに包含される。そして、当該領域T3aのうち基板40と重なる領域以外の領域には、電波吸収体30が設けられる。これにより、無線通信部110aおよび信号転送部50aの各々の通信範囲(W2a、W3a)で発生するマルチパスフェージングが低減される。なお、基板40は、領域T3aのうち基板40と重なる領域(つまりは基板40の裏面側)に無線信号が進行することを妨げるので、当該領域に電波吸収体30を設けなくても、当該領域における無線信号の反射によって発生するマルチパスフェージングを低減できる。
【0042】
なお、他の組Ub〜Udについても同様であり、筐体11の底面101は、通信範囲W3bと重なる領域T3bを有し、当該領域T3bのうち基板40と重なる領域以外の領域に電波吸収体30が設けられる。また、筐体11内の底面101は、通信範囲W3cと重なる領域T3cを有し、当該領域T3cのうち基板40と重なる領域以外の領域に電波吸収体30が設けられる。さらに、筐体11内の底面101は、通信範囲W3dと重なる領域T3dを有し、当該領域T3dのうち基板40と重なる領域以外の領域に電波吸収体30が設けられる。領域T3a〜T3dの各々を区別する必要が無い場合は、単に領域T3と表記する。
【0043】
また、上述の第2実施形態と同様に、筐体11の底面101のうち上述の領域T3を含む領域に電波吸収体30を設けることもできる。この場合、例えば図8に示すように、筐体11の底面101は、領域T3a、領域T3b、領域T3cおよび領域T3dを含む矩形(長方形)の領域S5を有し、当該領域S5のうち基板40と重なる領域以外の領域に電波吸収体30が設けられる。なお、これに限らず、基板40の表面のうち領域S5と重なる領域に電波吸収体30が設けられてもよい。これにより、基板40の表面における無線信号の反射が抑制されるので、マルチパスフェージングを一層低減できる。
【0044】
さらに、上述の第3実施形態と同様に、基板10のうち、無線通信部110の通信範囲W2と重なる領域に電波吸収体30を設けることもできる。この場合、例えば図9に示すように、基板10aは、無線通信部110bの通信範囲W2bと重なる領域Q3abを有する。そして、当該領域Q3abには、電波吸収体30が設けられる。また、基板10bは、無線通信部110aの通信範囲W2aと重なる領域Q3baと、無線通信部110cの通信範囲W2cと重なる領域Q3bcとを有する。そして、領域Q3baおよびQ3bcの各々には、電波吸収体30が設けられる。
【0045】
また、基板10cは、無線通信部110bの通信範囲W2bと重なる領域Q3cbと、無線通信部110dの通信範囲W2dと重なる領域Q3cdとを有する。そして、領域Q3cbおよびQ3cdの各々には、電波吸収体30が設けられる。さらに、基板10dは、無線通信部110cの通信範囲W2cと重なる領域Q3dcを有する。そして、当該領域Q3dcには、電波吸収体30が設けられる。
【0046】
さらに、図9の例では、基板40の表面のうち、無線通信部110の通信範囲W2および信号転送部50の通信範囲W3と重なる領域にも電波吸収体30が設けられる。ここでは、筐体11の底面101のうち無線通信部110の通信範囲W2と重なる領域は、当該底面101のうち信号転送部50の通信範囲W3と重なる領域T3に包含されるので、結局は、当該底面101に配置された基板40の表面のうち無線通信部110の通信範囲W2と重なる領域は、基板40の表面のうち信号転送部50の通信範囲W3と重なる領域に包含される。そして、基板40の表面のうち信号転送部50の通信範囲W3と重なる領域とは、基板40の表面のうち領域T3と重なる領域であると捉えることができる。したがって、基板40の表面のうち領域T3と重なる領域に電波吸収体30が設けられる。これにより、基板40の表面における無線信号の反射が抑制されるので、マルチパスフェージングを一層低減できる。
【0047】
なお、ここでは、詳細な図示は省略するが、基板10のうち、信号転送部50の通信範囲W3と重なる領域の少なくとも一部にも、電波吸収体30を設けることができる。
【0048】
(変形例2のさらなる変形)
上述の変形例2では、信号転送部50a〜信号転送部50dがひとつの基板40上に設けられているが、これに限らず、信号転送部50a〜信号転送部50dが、それぞれ別個の基板に設けられてもよい。例えば図10に示すように、筐体11の底面101には、信号転送部50aが搭載される基板70aと、信号転送部50bが搭載される基板70bと、信号転送部50cが搭載される基板70cと、信号転送部50dが搭載される基板70dとが設けられてもよい。基板70a〜70dを区別する必要が無い場合は、単に基板70と表記する。図10の例では、筐体11の底面101の領域T3のうち、基板70と重なる領域以外の領域に電波吸収体30が設けられる。その他の内容は、図7の内容と同じである。
【0049】
図10の例において、上述の第2実施形態と同様に、筐体11内の底面101のうち領域T3を含む領域に電波吸収体30を設けることもできる。この場合、例えば図11に示すように、筐体11の底面101は、領域T3a、領域T3b、領域T3cおよび領域T3dを含む矩形(長方形)の領域S6を有し、当該領域S6のうち各基板70a〜70dと重なる領域以外の領域に電波吸収体30が設けられる。なお、これに限らず、各基板70a〜70dの表面のうち領域S6と重なる領域に電波吸収体30が設けられてもよい。これにより、各基板70a〜70dの表面における無線信号の反射が抑制されるので、マルチパスフェージングを一層低減できる。
【0050】
図10の例において、上述の第3実施形態と同様に、基板10のうち、無線通信部110の通信範囲W2と重なる領域にも電波吸収体30を設けることができる。この場合、例えば図12に示すように、基板10aは、無線通信部110bの通信範囲W2bと重なる領域Q3abを有する。そして、当該領域Q3abには、電波吸収体30が設けられる。また、基板10bは、無線通信部110aの通信範囲W2aと重なる領域Q3baと、無線通信部110cの通信範囲W2cと重なる領域Q3bcとを有する。そして、領域Q3baおよびQ3bcの各々には、電波吸収体30が設けられる。
【0051】
また、基板10cは、無線通信部110bの通信範囲W2bと重なる領域Q3cbと、無線通信部110dの通信範囲W2dと重なる領域Q3cdとを有する。そして、領域Q3cbおよびQ3cdの各々には、電波吸収体30が設けられる。さらに、基板10dは、無線通信部110cの通信範囲W2cと重なる領域Q3dcを有する。そして、当該領域Q3dcには、電波吸収体30が設けられる。上記内容は、図9の内容と同じである。
【0052】
さらに、図12の例では、基板70の表面のうち、無線通信部110の通信範囲W2および信号転送部50の通信範囲W3と重なる領域にも電波吸収体30が設けられる。ここでは、筐体11の底面101のうち無線通信部110の通信範囲W2と重なる領域は、当該底面101のうち信号転送部50の通信範囲W3と重なる領域T3に包含されるので、結局は、当該底面101に配置された基板70の表面のうち無線通信部110の通信範囲W2と重なる領域は、基板70の表面のうち信号転送部50の通信範囲W3と重なる領域に包含される。そして、基板70の表面のうち信号転送部50の通信範囲W3と重なる領域とは、基板70の表面のうち領域T3と重なる領域であると捉えることができる。したがって、基板70の表面のうち領域T3と重なる領域に電波吸収体30が設けられる。これにより、基板70の表面における無線信号の反射が抑制されるので、マルチパスフェージングを一層低減できる。
【0053】
(変形例3)
以上においては、筐体11の内面(底面101、側面102、側面103等)や基板(10、40、70等)の表面のうち、無線通信部(20、50、110)の通信範囲と重なる領域の少なくとも一部に電波吸収体30が設けられる構成が例示されているが、これに限られるものではない。要するに、筐体11の内部に含まれる、電波を反射する反射材の表面のうち、無線通信部の通信範囲と重なる領域の少なくとも一部に電波吸収体30が設けられるものであればよい。反射材の一例としては、筐体11の内面(101、102、103等)、筐体11に収納された基板(10、40、70等)の他、筐体11の内部に配置された電源、ケーブル、基板を取り付けるための金具、他の電子部品等が挙げられる。
【符号の説明】
【0054】
10 基板
11 筐体
20 無線通信部
30 電波吸収体
40 基板
50 信号転送部
60 通信線
70 基板
100 電子機器
101 底面
102 側面
103 側面
110 無線通信部
200 電子機器
300 電子機器
400 電子機器
Q 領域
S 領域
T 領域
U 組
W 通信範囲
X 領域
Y 領域
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信を行うための無線通信部を有する基板と、
前記基板を収納する筐体と、
前記筐体の内部に含まれる、電波を反射する反射材の表面のうち、前記無線通信部の通信範囲と重なる領域の少なくとも一部に設けられて電波を吸収する電波吸収体と、を備える、
ことを特徴とする電子機器。
【請求項2】
前記無線通信部の通信距離は、前記筐体内の任意の2点間を結ぶ直線のうち最大長の直線よりも短い、
ことを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記反射材は前記筐体の内面である、
ことを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項4】
前記電波吸収体は、
前記筐体の内面のうち、前記無線通信部の通信範囲と重なる領域を含む領域に設けられる、
ことを特徴とする請求項3に記載の電子機器。
【請求項5】
前記反射材は、前記筐体に収納された他の基板である、
ことを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項6】
前記無線通信部は、ミリ波を用いて無線通信を行う、
ことを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項1】
無線通信を行うための無線通信部を有する基板と、
前記基板を収納する筐体と、
前記筐体の内部に含まれる、電波を反射する反射材の表面のうち、前記無線通信部の通信範囲と重なる領域の少なくとも一部に設けられて電波を吸収する電波吸収体と、を備える、
ことを特徴とする電子機器。
【請求項2】
前記無線通信部の通信距離は、前記筐体内の任意の2点間を結ぶ直線のうち最大長の直線よりも短い、
ことを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記反射材は前記筐体の内面である、
ことを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項4】
前記電波吸収体は、
前記筐体の内面のうち、前記無線通信部の通信範囲と重なる領域を含む領域に設けられる、
ことを特徴とする請求項3に記載の電子機器。
【請求項5】
前記反射材は、前記筐体に収納された他の基板である、
ことを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項6】
前記無線通信部は、ミリ波を用いて無線通信を行う、
ことを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−195534(P2012−195534A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−60186(P2011−60186)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
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