説明

電子機器

【課題】所定の回転角度の範囲内で回転操作が可能な操作部材を回転操作するときに生じる操作音を軽減させるとともに、操作部材の回転可能範囲を規制する回転規制部材にかかる負荷を軽減させる。
【解決手段】操作部材4を回転可能な最大の回転角度まで回転させるとき、操作部材に設けられた第1の突起部15aを覆う緩衝部材12が外装カバー11に設けられた第1の貫通穴11aの側面と当接した後に、操作部材に設けられた第2の突起部15bが外装カバーに設けられた第2の貫通穴11bの側面に当接する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の角度範囲内で回転操作が可能な操作部材を有する電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、デジタルスチルカメラや、ビデオカメラのような撮像装置には、撮影光学系の一部のレンズを光軸上で移動させて変倍を行う光学ズーム機能や、撮像素子からの画像信号を電子的に制御して画面の拡大表示を行うようにした電子ズーム機能を有するものがある。また、こうした撮像装置の中には、動画記録中に光学ズーム機能や電子ズーム機能を使用可能なものもある。
【0003】
また、こうした撮像装置には、光学及び電子ズーム機能を使用する際、回転操作可能なズームレバーを回転させることで、光学及び電子ズーム操作を行うものがある。ズームレバーを回転させてズーム操作を行う構成は、ズーム倍率を広角側へ変更するときと望遠側へ変更するときとでそれぞれ別のボタンを操作する構成よりも、画像表示部などで被写体を確認しながらでも簡単にズーム操作を行えるため広く用いられている。
【0004】
このようなズームレバーを回転させてズーム操作を行うズーム操作装置について、例えば、特許文献1では、ズームレバーを回転操作が可能な範囲の中立位置へ復帰させるためのバネ片とズームレバーとを一体としたズーム操作装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−339838号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のズーム操作装置の構成では、広角側または望遠側へズームレバーを回転させていくと、ズームレバーに設けられたスリットの側面がズームレバーの回転角度の範囲を規制する規制ピンに当接し当接音が発生してしまうという問題があった。特に、動画記録中に、例えば撮像画像を拡大させて所望の拡大画像となるように望遠側へズームレバーを回転させた際に上述した当接音が発生してしまうと、撮影者の意図しない当接音も録音されるという問題があった。
【0007】
また、特許文献1のズーム操作装置の構成では、規制ピンでのみズームレバーの回転操作ガ可能範囲を規制しており、ズームレバーを操作したときに規制ピンに過度の負荷がかかるとは、規制ピンが破損してしまうという問題があった。
【0008】
そこで、本発明は、所定の回転角度の範囲内で回転操作が可能な操作部材を回転操作するときに生じる操作音を軽減させるとともに、操作部材の回転可能範囲を規制する回転規制部材にかかる負荷を軽減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明にかかる電子機器は、外装カバーと、前記外装カバーに対して所定の回転角度の間で回転操作が可能な操作部材と、を有する電子機器であって、前記操作部材は、前記電子機器の内部方向へ突出し、周囲が緩衝部材で覆われた第1の突起部と、前記電子機器の内部方向へ突出し、当該操作部材を前記外装カバー内に設けられたホルダと固定するための第2の突起部と、を有し、前記外装カバーは、前記第1の突起部を挿入させる第1の貫通穴と、前記第2の突起部を挿入させる第2の貫通穴と、を有し、前記操作部材を回転可能な最大の回転角度まで回転させるとき、前記第1の突起部を覆う緩衝部材が前記第1の貫通穴の側面と当接した後に前記第2の突起部が前記第2の貫通穴の側面に当接することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、所定の回転角度の範囲内で回転操作が可能な操作部材を回転操作するときに生じる操作音を軽減することができるとともに、操作部材の回転可能範囲を規制する回転規制部材にかかる負荷を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態におけるデジタルカメラの外観図である。
【図2】本発明の第1の実施形態におけるデジタルカメラのズームレバーの構成を示す図である。
【図3】ズームレバーを中立位置から回転させた状態を示す図である。
【図4】本発明の第2の実施形態におけるデジタルカメラのズームレバーの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態におけるデジタルカメラの外観図である。図1において、1はカメラ本体であり、その前面部には撮影レンズ2が設けられている。図1では、撮影レンズ2がカメラ本体1内に沈胴している状態を示している。なお、カメラ本体1に設けられた電源スイッチ3をオンすると、撮影レンズ2がカメラ本体1から突出して撮影可能な状態となる。
4は、カメラ本体1に対して所定の回転角度の範囲内で回転操作が可能なズームレバーであり樹脂の成形品である。このズームレバー4を回転させることにより、撮影レンズ2を広角側または望遠側へと移動させて画角を変更することができる。あるいは、撮像素子からの画像信号を電子的に制御して画面の拡大表示を行うことができる。
【0013】
そして、レリーズボタン5を押下することにより、不図示の撮像素子(CCDやCMOSセンサ等)により撮像され、カメラ本体1内に装填された半導体メモリ等の記憶媒体に撮影した画像が記録される。なお、カメラ本体1には、不図示のモード選択スイッチがあり、静止画撮影モードと動画撮影モードとを切替え可能であり、レリーズボタン5を押下することで、選択されたモードに応じて静止画撮影または動画撮影を行う。
【0014】
6は音声入力用のマイクである。マイク6からの音声データは、画像データと合わせて記録媒体に記録することができる。また、カメラ本体1の上面には、音声再生用スピーカー7が設けられており、記録媒体に記録されている音声を再生したり、不図示のメモリに予め記録されている効果音を操作に合わせて再生できる。
【0015】
カメラ本体1の背面には、不図示の画像表示部として液晶ディスプレイが設けられている。この画像表示部には、撮像素子により逐次撮像される被写体の画像や記録媒体に記録されている画像が表示される。
【0016】
次に、本実施形態における回転操作が可能なズームレバー4の構成について説明する。図2(a)はズームレバー4をカメラ本体1の上面(外観側)から見た図であり、説明のため、ズームレバー4の内部を透かして示している。なお、図2(a)では、ズームレバー4を広角側及び望遠側のどちらにも回転させていない、すなわち、回転可能範囲の中間位置にある中立状態を示している。
【0017】
4aは指掛かり部であり、ズーム操作を行う際に操作者がここに指を引っ掛けることでズームレバー4を容易に回転させることができる。13は外装カバー11の内部方向へ突出し、ズームレバー4の回転可能な角度の範囲(以下、回転可能範囲とも表す)を規制する規制ピン(第1の突起部)であり、筒状の緩衝部材12が周囲を覆っている。
【0018】
15a、15bはズームレバー4と後述する外装カバー11の内部に設けられたホルダ10とをネジにより締結するためのボス(第2の突起部)である。なお、ボス15a及び15bは、ズームレバー4とホルダ10とをしっかり固定するためにある程度大きく強度を強くする必要があるが、規制ピン13はズームレバーの回転可能範囲を規制するためのものなので、ボス15a及び15bよりも小さくてもよい。
【0019】
11a、11b、11cはそれぞれ外装カバー11に設けられた第1、第2、第3の貫通穴である。そして、上述した規制ピン13及び緩衝部材12が第1の貫通穴11aを、ボス15aが第2の貫通穴11bを、ボス15bが貫通穴11cを通っている。第1の貫通穴11aのズームレバー4の周方向の長さによってズームレバー4の回転可能範囲が規制される。また、第2の貫通穴11bの周方向の長さは、ズームレバー4を回転させたときに緩衝部材12と第1の貫通穴11aの側面とが当接してから更に所定角度回転させると、ボス15aと第2の貫通穴11bの側面とが当接するような長さである。この、ボス15aと第2の貫通穴11bの側面とが当接する回転角度が、ズームレバー4の回転可能な最大の回転角度となる。また、第3の貫通穴11cの周方向の長さは、ボス15aと第2の貫通穴11bの側面とが当接する回転角度と略等しい回転角度だけズームレバー4を回転させたときにボス15bと第3の貫通穴11cの側面とが当接するような長さである。なお、第1の貫通穴11a、第2の貫通穴11b、第3の貫通穴11cは、ズームレバー4を回転させたときに指掛かり部4aを移動する領域のズームレバー4の回転軸と平行な方向に位置しないように設けられる。すなわち、図2(a)のようにズームレバー4を上面から見た場合に、ズームレバー4を回転させたときの指掛かり部4aの移動軌跡と重複しない位置に設けられる。これは、外装カバー11において、第1の貫通穴11a、第2の貫通穴11b、第3の貫通穴11cの近傍の部分は外装カバー11の他の部分に比べて強度が弱く、強度の弱い部分にズームレバー4の操作時に操作者の上からの力がかかりにくくするためである。
【0020】
図2(b)は、図2(a)を裏側(カメラ本体1の内部側)から見た図である。図2(c)は図2(b)のA−A断面を右側から見た図である。図2(b)及び図2(c)において、14はズームレバー4の位置決めボスであり、10はホルダである。11dは外装カバー11に設けられた位置決めボス14が通る貫通穴である。10aはホルダ10に設けられた位置決め穴であり、位置決めボス14が挿入される。すなわち、ズームレバー4は、位置決めボス14が貫通穴11dを通り、位置決め穴10aに挿入されることで外装カバー及びホルダ10に対して位置決めされる。このとき、緩衝部材12はズームレバー4とホルダ10との間に保持されている。
【0021】
また、ズームレバー4のボス15aと15bが、それぞれ第2、第3の貫通穴11b、11cを通りホルダ10にネジにより締結されている。そのため、ズームレバー4を回転させると、ホルダ10はズームレバー4とともに回転することになる。16は外装カバー11に固定されたバネである。18はホルダ10に設けられ、バネ16の間に配置される突出部である。突出部18がバネ16の間に配置されることで、ズームレバー4を回転させた後に、バネ16の突出部18への付勢力によりズームレバー4を中立状態に復帰させることができる。
【0022】
17はスイッチであり、不図示の基板上に実装されている。19はホルダ10に設けられたスイッチ作動部であり、スイッチ作動部19が回転してスイッチ17を付勢することでスイッチ17を作動させる。従って、ズームレバー4を回転させることによりホルダ10も同様に回転し、スイッチ作動部19がスイッチ17を作動させることにより広角側、または望遠側へとズーム操作が始動する。また、ここではネジにてホルダ10を固定しているが、熱溶着やその他の手段にて固定してもよく、ボス15bを位置決めピンとして、ズームレバー4とホルダ10との位置を決めることに用いてもよい。
【0023】
次に、ズームレバー4を回転させた状態について図3を用いて説明する。図3は図2(a)に示した中立状態から広角側へズームレバー4を回転させた状態である。このとき、緩衝部材12は第1の貫通穴11aの側面と当接しており、ズームレバー4の広角側の回転可能範囲を規制する第1の回転規制部として機能している。
【0024】
ズームレバー4を緩衝部材12が第1の貫通穴11aの側面と当接するまで回転させることにより、スイッチ作動部19がスイッチ17を付勢してスイッチ17が広角側の回転操作を検出し、撮影レンズ2が広角側へと移動される。
【0025】
このとき、緩衝部材12が第1の貫通穴11aの側面と当接する際に発生する当接音は、緩衝部材12によって高音域はカットされ低音域のみとなるため、動画記録中にズーム操作を行っても録音されるズーム操作の操作音が軽減される。もし、緩衝部材12がなかった場合には高音域での当接音も発生し、動画記録中にズーム操作の操作音が録音されてしまう。なお、緩衝部材12の厚みを厚くすることにより、操作音をより軽減することが可能となる。
【0026】
また、上記のような構成では、所望するズーム倍率までズーム操作を継続する場合に、緩衝部材12が変形し、規制ピン13に過度な負荷がかかってしまうことがある。そこで、緩衝部材12が変形するほどズームレバー4を回転させると、ボス15aが第2の貫通穴11bの側面に当接して第2の回転規制部として機能し、規制ピン13に過度な負荷がかかるのを防ぐ構造となっている。
【0027】
このとき、ボス15aが第2の貫通穴11bの側面と当接するタイミングと略同一のタイミングでボス15bと第3の貫通穴11cの側面とが当接するようにすれば、規制ピン13にかかる負荷をさらに軽減させることができる。
【0028】
なお、ここではボスを2つで構成しているが、ズームレバー4の固定が十分であれば、ボス15a及び15bのいずれか一方のみが設けられた構成でもよく、1つのボスで第2の回転規制部として機能させてもよい。また、ボスを2つで構成している場合であっても、1つのボスだけを第2の回転規制部として機能させてもよい。
【0029】
このように、ズームレバー4の回転可能範囲を規制する規制ピン13を緩衝部材12で覆うことで、ズームレバー4を回転端まで回転させたときに生じる当接音を軽減することができる。また、回転操作により緩衝部材12が変形した際に、ズームレバー4とホルダ10とをネジにより締結するためのボス15aでさらに回転を規制することで、規制ピン13にかかる負荷を軽減することができる。
【0030】
(第2の実施形態)
図4は本発明にかかる第2の実施形態であり、回転規制部として機能する規制ピン13の強度を確保する一例である。図4(a)は図2(b)とほぼ同様の図であり、図2(b)とはホルダ10の形状が異なっている。図4(b)は図4(a)のA−A断面を右側から見た図である。
【0031】
200aはホルダ10に設けられた規制ピン13を挿入可能な位置決め穴であり、200bは位置決め穴200aの周辺領域の位置決め穴周辺部である。201は外装カバー11に位置決め穴周辺部200bに対向させて設けられた逃げ部201である。
【0032】
本実施の形態において、ホルダ10は板金で構成されており、位置決め穴周辺部200bはズームレバー4側へと半抜き形状として、ホルダ10の他の領域よりも外観側に近い形状となっている。そのため、規制ピン13は位置決め穴200aに挿入されているだけでなく、規制ピン13を保持している位置決め穴周辺部200bの位置がよりズームレバー4へと近くなるため、規制ピン13の回転規制部としての強度をより確保することができる。また、位置決め穴周辺部200bと干渉しないように、貫通穴11aの周囲へ逃げ部201を設けることにより、外装カバー11の規制ピン13の周囲以外の肉厚を確保したまま構成することが可能である。そのため、外装カバー11の剛性を可能な限り落とさずに規制ピン13の回転規制部としての強度を確保可能となっている。ここで、ホルダ10を樹脂等の成形品とし、位置決め穴周辺部200bを板金の半抜き寸法以上にズームレバー4側へ近接させることで、規制ピン13の強度をより確保することも可能である。
【0033】
なお、上述した2つの実施形態では、撮像装置におけるズーム操作に用いるズームレバーに適用した場合を説明したが、その他の機能の操作に用いる、中立位置から予め決められた回転角度の間で回転操作が可能な操作部材に適用しても構わない。例えば、記録媒体に記録された複数の画像のうちの1つを画像表示部に表示させる再生モードにおいて、表示させる画像を次の画像に変更する画像送り操作を行う操作部材に適用しても構わない。
【0034】
また、上述した画像送り操作のような、撮像装置以外の電子機器でも実行可能な機能の操作に用いる操作部材にも適用可能であるため、中立位置から予め決められた回転角度の間で回転操作が可能な操作部材を有する電子機器であれば本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0035】
1 カメラ本体
4 ズームレバー
4a 指掛かり部
10 ホルダ
10a 位置決め穴
11 外装カバー
11a 第1の貫通穴
11b 第2の貫通穴
11c 第3の貫通穴
11d 貫通穴
12 緩衝部材
13、213 規制ピン
15a、15b ボス
200a 位置決め穴
200b 位置決め穴周辺部
201 逃げ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外装カバーと、前記外装カバーに対して所定の回転角度の間で回転操作が可能な操作部材と、を有する電子機器であって、
前記操作部材は、
前記電子機器の内部方向へ突出し、周囲が緩衝部材で覆われた第1の突起部と、
前記電子機器の内部方向へ突出し、当該操作部材を前記外装カバーの内部に設けられたホルダと固定するための第2の突起部と、を有し、
前記外装カバーは、
前記第1の突起部を挿入させる第1の貫通穴と、
前記第2の突起部を挿入させる第2の貫通穴と、を有し、
前記操作部材を回転可能な最大の回転角度まで回転させるとき、前記第1の突起部を覆う緩衝部材が前記第1の貫通穴の側面と当接した後に前記第2の突起部が前記第2の貫通穴の側面に当接することを特徴とする電子機器。
【請求項2】
前記操作部材は、前記電子機器の外観側に指掛かり部を有し、
前記第1の貫通穴及び前記第2の貫通穴は、前記操作部材を回転させたときに前記指掛かり部が移動する領域の前記操作部材の回転軸と平行な方向に位置しないように設けられることを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記ホルダは、前記第1の突起部を挿入させて前記操作部材の位置決めをする位置決め穴を有し、
前記ホルダの前記位置決め穴の周辺領域は、前記ホルダの他の領域よりも前記外装カバーの外観側に近いことを特徴とする請求項1または2に記載の電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−8343(P2012−8343A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−144215(P2010−144215)
【出願日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】