説明

電子機器

【課題】ファンを用いることなく、筐体の温度を所定の範囲内に収めることができる放熱機構を備えた電子機器を得ること。
【解決手段】主面1aに矩形状の画像表示面2を備えた偏平箱形の筐体1内に金属製のシャーシ10が収容され、動作中に発熱する発熱部品12と、前記発熱部品12の熱がヒートパイプ14で伝達された一対の放熱体15とが、前記シャーシ10に固着された電子機器100であって、前記発熱部品12が、前記シャーシ10における、前記画像表示面2の水平方向に延在する2つの辺の内の一方の辺2dの左右方向中央部分近傍の領域に固着され、前記一対の放熱体15が、前記シャーシ10における、前記画像表示面の水平方向に延在する2つの辺の内の他方の辺2aの左右方向中央部から離間した位置近傍の領域に、それぞれ固着されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動作時に発熱する発熱部品を筐体内に有する電子機器、例えば発熱部品であるCPU(中央処理装置)を備えたタブレット型パソコン等の電子機器に関し、特に、発熱部品からの熱が筐体内の特定箇所に集中しない構成の電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の一例であるノートパソコンやタブレット型パソコンにおいては、その性能向上にともなってCPU等の発熱部品からの発熱量が増大している。また、携帯型の電子機器であるノートパソコンやタブレット型パソコンでは、携帯型の電子機器としての小型化軽量化が求められているため、狭い筐体の内部に各種の電子部品が詰め込まれることとなり、発熱部品からの熱を効果的に筐体の外部に放出することが必要となる。
【0003】
このような要請に応じるために、発熱部品からの熱を直接的に、または、ヒートパイプなどによって間接的に、板状の放熱フィンを複数備えた放熱体に伝達するとともに、放熱体に近接してファンを配置して、ファンからの冷却風で放熱体の温度を下げる放熱ユニットを用いる電子機器が提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
また、フィンを備えた放熱体を用いるのではなく、パソコンの筐体内部に配置したヒートパイプの複数の箇所にファンからの冷却風を吹き付けてその温度を下げるという電子機器も提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−280281号公報
【特許文献2】特開2001−068883号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来の電子機器で用いられている放熱の機構は、発熱部品であるCPUなどの熱がヒートパイプにより伝達されたフィンを備えた放熱体や、ヒートパイプそのものにファンからの冷却風を吹き付けることで、その熱を筐体に設けた排気孔から外部に放出するものである。
【0007】
しかし、例えば筐体に水や埃がかかるような環境で使用されることを想定したパソコンの場合には、筐体に排気孔を設けることが許されない。また、タブレット型のパソコンの場合には、ユーザが筐体を手でもって使用するために、筐体の一部から高い温度の風が吹き出すことは好ましくない。このように、筐体内の熱を強制的に排出するための排気孔を設けることができない場合には、従来の放熱機構において主要な部品として用いられているファンを放熱機構として用いることができない。
【0008】
また、上記したように、タブレット型パソコンの場合には、ユーザが筐体を手でもって使用することが前提として想定されている。このため、ユーザが使用時に熱さを感じないように、動作時の筐体に許容される最高温度が規定されていて、筐体全体をこの許容される最高温度以下の温度に収める必要がある。しかし、従来は、筐体内において熱源である発熱部品と放熱部材とを近接して配置していたため、その周囲の温度が高くなって許容された筐体の温度を上回ってしまう場合がある。
【0009】
本発明は、上記従来の課題を解決するためのものであり、ファンを用いることなく、筐体の温度を所定の範囲内に収めることができる放熱機構を備えた電子機器を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため本発明の電子機器は、主面に矩形状の画像表示面を備えた偏平箱形の筐体内に金属製のシャーシが収容され、動作中に発熱する発熱部品と、前記発熱部品の熱がヒートパイプで伝達された一対の放熱体とが、前記シャーシに固着された電子機器であって、前記発熱部品が、前記シャーシにおける、前記画像表示面の水平方向に延在する2つの辺の内の一方の辺の左右方向中央部分近傍の領域に固着され、前記一対の放熱体が、前記シャーシにおける、前記画像表示面の水平方向に延在する2つの辺の内の他方の辺の左右方向中央部から離間した位置近傍の領域に、それぞれ固着されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の電子機器は、発熱源である発熱部品と発熱部品からの熱が伝達される一対の放熱体とが、筐体内の金属製シャーシの互いに隔てられた位置に固着される。このため、筐体の温度を所定の範囲内に収めることができる電子機器を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施形態にかかるタブレット型パソコンの外観を示す斜視図である。
【図2】本実施形態にかかるタブレット型パソコンの概略構成を示す分解斜視図である。
【図3】本実施形態にかかるタブレット型パソコンの筐体内に配置されるシャーシに各種部品が固着された状態を示す平面図である。
【図4】本実施形態にかかるタブレット型パソコンの使用時における、第1の保持方法を説明する図である。
【図5】本実施形態にかかるタブレット型パソコンの使用時における、第2の保持方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の電子機器は、主面に矩形状の画像表示面を備えた偏平箱形の筐体内に金属製のシャーシが収容され、動作中に発熱する発熱部品と、前記発熱部品の熱がヒートパイプで伝達された一対の放熱体とが、前記シャーシに固着された電子機器であって、前記発熱部品が、前記シャーシにおける、前記画像表示面の水平方向に延在する2つの辺の内の一方の辺の左右方向中央部分近傍の領域に固着され、前記一対の放熱体が、前記シャーシにおける、前記画像表示面の水平方向に延在する2つの辺の内の他方の辺の左右方向中央部から離間した位置近傍の領域に、それぞれ固着されている。
【0014】
上記本発明の電子機器は、発熱部品が、シャーシにおいて画像表示面の水平方向に延在する2つの辺の内の一方の辺の左右方向中央部分近傍の領域に固着され、発熱部品の熱が伝達される一対の放熱体が、画像表示面の水平方向に延在する2つの辺の内の他方の辺の左右方向中央部から離間した位置近傍の領域に配置される。このように、金属製のシャーシに熱を伝える3つの熱源が平面的に互いに離れた位置に分散配置されるため、シャーシの温度分布を平均化して、ファンを用いなくても筐体に所定の温度以上となる部分が生じることを回避することができる。
【0015】
上記構成の電子機器において、前記筐体の内部における、前記発熱部品が搭載された前記回路基板が配置された部分と前記放熱体が配置された部分との間の領域の水平方向両端部分に、一対の二次電池が配置されていることが好ましい。このようにすることで、重量が重い二次電池を筐体内でバランスよく配置できるので、電子機器をユーザが手に持って使用する際の使用勝手が向上する。
【0016】
また、前記画像表示面の前記他方の辺側に位置する前記筐体の側面部分に、入出力端子が配置されていることが好ましい。このようにすることで、入出力端子に各種のケーブルを接続した状態でも電子機器の良好な保持性を確保することができる。
【0017】
さらに、前記画像表示面の前記他方の辺側に位置する前記筐体の外殻に、前記筐体を保持する把手の両端部が固着されていることが好ましい。このようにすることで、電子機器の保持性を高めることができる把手を、バランスよく配置することができる。
【0018】
(発明の実施の形態)
以下、本発明の実施形態として、電子機器がタブレット型パソコンである場合を例示しながら説明する。以下図示して説明するタブレット型パソコンは、例えば医療現場で使用されることを想定したものであり、把手を備え、機器全体として防水対策が施されたものである。
【0019】
図1は、本実施の形態にかかる電子機器としてのタブレット型パソコン100である。
【0020】
本実施形態のタブレット型パソコン100は、偏平箱形の筐体1を備え、最も面積の大きな主面1aには、液晶パネルなどの平板型画像表示デバイスが配置されて矩形状の画像表示面2が形成されている。
【0021】
なお、画像表示面2では、主として図中矢印Aとして示した方向を上下方向として画像が表示されることから、以下本明細書では、画像表示面2の辺2aおよび辺2dが延在する方向を水平方向、この水平方向に直交し、画像表示面2の辺2bおよび辺2cが延在する方向を垂直方向として説明を行う。また、画像表示面2の中心に対して辺2aの方向を上方、辺2dの方向を下方、辺2bの方向を左方、辺2cの方向を右方と称することとする。また、矩形状の画像表示面2とは、長方形や正方形などの、角部で2つの辺が直角に交わるものに限られず、画像表示面2が全体として矩形状であれば、2つの辺が角部で曲線により接続されているような形状や、角部が短い斜辺で接続されている形状をも含むものである。
【0022】
図1に示すように、本実施形態のタブレット型パソコン100は、画像表示面2が形成された主面1aの上側に位置する辺に、タブレット型パソコン100を保持するための把手3が形成されている。
【0023】
このため、本明細書において電子機器の筐体が偏平箱形とは、図1に示すタブレット型パソコン100の筐体1のように、全体形状が略箱形であってその厚さ方向、すなわち、画像表示面2が形成される主面1aに直交する方向の高さが小さい形態を言う。したがって、偏平な直方体形状には限られず、図1に示す本実施形態のタブレット型パソコン100のように、把手3や、左右方向の突出部分が形成されていてもかまわない。
【0024】
本実施形態のタブレット型パソコン100では、主面1aにおける画像表示面2の周辺部分、いわゆる額縁部分のうち画像表示面の右側の辺2cに沿って、タブレット型パソコン100を操作するための操作部4が配置されている。
【0025】
筐体1の4つの側面の内、筐体1の下側の側面1bには、図1には現れていないが接続コネクタが配置されていて、タブレット型パソコン100を図示しないクレードルに搭載することで、タブレット型パソコン100を外部電源線や各種信号の入出力線と、コネクタを介して接続することができる。筐体1の右側側面1cには、二次電池を収容するための二次電池ホルダの蓋体5aと、電源端子や信号ケーブルが接続される接続部を覆う蓋体6が形成されている。これら蓋体5aと蓋体6とは、タブレット型パソコン100の防水仕様に対応して、ロック機能を有するとともに水の侵入を防ぐ防水パッキンが配置されている。
【0026】
図1には現れていないが、筐体1の左側側面1dには、右側側面1cにおける蓋体5bに対応する位置に、もう一つの二次電池ホルダの蓋体が形成されている。また、把手3が形成されている側である筐体1の上側側面1eには、図中左側に位置する把手3と筐体1との接続部の後方に、LANコネクタなどの入出力端子が配置されている。また、本実施形態のタブレット型パソコン100では、図中右側に位置する把手3と筐体1との接続部分に、指紋認証システムの読み取り部7が配置されている。
【0027】
図2は、本実施形態のタブレット型パソコン100の主要な構成を示す分解斜視図である。
【0028】
図2に示すように、本実施形態のタブレット型パソコン100は、筐体1を形成する前面カバー1fと、背面カバー20との間に、金属製のシャーシ10が配置されている。
【0029】
前面カバー1fは、図1に示した筐体1の主面1a側を構成し、前面カバー1fの内部に、画像表示面2を構成する液晶モジュールが配置されている。また、図示は省略するが、主面1aに配置された操作部4でのボタン操作を関知するスイッチ回路類や、指紋認証システムの読み取り部7に付随した回路基板、その他前面カバー1fに配置される各種機能部品の駆動部やこれら駆動部に電源や必要な信号を供給等するための回路基板が、前面カバー1fのシャーシ10に対向する側に固着されている。
【0030】
また、タブレット型パソコン100の把手3も、前面側部分3aと背面側部分3bとに分割され、把手3の前面側部分3aが、前面カバー1fと一体に形成されている。
【0031】
シャーシ10は、アルミニウムやマグネシウムなどの金属製であり、このシャーシ10に、前面カバー1fと背面カバー20とがねじ止めなどによってそれぞれ固着されることで、筐体1として一体化される。
【0032】
図2では一部の図示を省略するが、シャーシ10の両面に、タブレット型パソコン100のパソコンとしての各種機能を発揮させるための回路ユニットが搭載された回路基板や、主記憶装置であるHDDドライブなどの電子部材が固着される。
【0033】
タブレット型パソコン100の筐体1の内部に搭載される電子部品の中で、動作時に高温となる発熱部品である中央演算素子(CPU)12が搭載された回路基板11は、シャーシ10における、画像表示面2の水平方向に延在する2つの辺2aおよび辺2dの内の、一方の辺である下側の辺2dの左右方向の中央部、すなわち、シャーシ10において、筐体1の下側側面1b側に位置する辺10aの左右方向の中央部近傍の領域に配置されている。
【0034】
回路基板11上のCPU12は、CPU12の動作時の発熱を伝達するための受熱部13に覆われている。受熱部13には、2本のヒートパイプ14a、14bが接続されていて、第1のヒートパイプ14aの先端には第1の放熱体15aが、第2のヒートパイプ14bの先端には第2の放熱体15bがそれぞれ接続されている。図2に示すように、一対の放熱体15aと15bは、シャーシ10における、画像表示面2の水平方向に延在する2つの辺2aおよび辺2dの内の、他方の辺である上側の辺2aの左右方向の中央部から離間した位置、すなわち、シャーシ10において、筐体1の上側側面1e側に位置する辺10bの、左右方向中央部から所定の距離離間した位置の近傍に、それぞれ配置されている。
【0035】
なお、本実施形態のタブレット型パソコン100において、一対の放熱体15aと15bとは同じ大きさではなく、図中左側に配置された第1の放熱体15aが、図中右側に配置された第2の放熱体15bよりも少し小さくなっていて、図中左側に配置された第1の放熱体15aの横には、筐体1の上側側面1eに設けられた入出力端子に接続された回路基板16が配置されている。
【0036】
一対の放熱体15a、15bが配置された部分と、CPU12が搭載された回路基板11が配置された部分との間の領域、すなわち、シャーシ10の2つの対向する辺10aおよび10bとの中間の領域の、水平方向両端部分のシャーシ10の背面カバー20側には、二次電池17aと17bとがそれぞれ配置される。
【0037】
背面カバー20は、両面に各種の回路部品が固着されたシャーシ10が、その内部に収容されるように全体として有底筒状をしている。背面カバー20の垂直方向中間部の左右両端部分には、二次電池17aおよび17bがそれぞれ配置される電池配置部21a、21bが形成されている。図2中左側の第1の電池配置部21aの側面には、配置される二次電池17aを出し入れするための蓋体5aが形成されている。また、図2中右側の第2の電池配置部21bの側面には、配置される二次電池17bを出し入れするための蓋体5bが形成されている。
【0038】
背面カバー20には、把手3の背面側部分3bが一体的に形成されている。このため、前面カバー1fと背面カバー20とが組み合わされて筐体1を構成すると同時に、把手3が形づくられる。
【0039】
背面カバー20の、筐体1の下側側面1b側近傍の内面には、シャーシ10の下側に位置する辺10a近傍に固着された、CPU12の熱を筐体1に伝わりにくくするためのクッション材22が配置されている。
【0040】
次に、図3を用いて、本実施形態のタブレット型パソコン100のシャーシ10の構成を詳細に説明する。
【0041】
図3は、シャーシ10に固着された各種電子部品の配置状況を示す平面図であり、シャーシ10を前面カバー1f側から見た状態を示している。
【0042】
図3に示すように、シャーシ10の周辺部分には、前面カバー1fと背面カバー20とをそれぞれ固着するための複数の固着部10cが形成されている。本実施形態のシャーシ10は、その主要構成面の背面カバー20側、すなわち、図3では現れない裏面側により多くの電子部品が固着されている。
【0043】
図3に示すように、シャーシ10の下側の辺10aに近い部分には、シャーシ10を貫通する開口部分10dが設けられていて、開口部分10dを通して、シャーシ10の背面カバー20に面する側の面に固着された回路基板11が見えている。回路基板11の図3における手前側の面、すなわち前面カバー1f側の面の略中央部には、CPU12が搭載されている。また、発熱部品であるCPU12からの熱を受熱するために、銅などの金属板により形成された受熱部13が、CPU12とその周囲の回路基板11を覆って配置されている。このCPU12の配置位置は、図2を用いて説明したように、本実施形態のタブレット型パソコン100において、筐体1の主面1aに配置された画像表示面2の水平方向に延在する2つの辺の内の、一方の辺である下側の辺2dの左右方向中央部の近傍に当たる領域である。
【0044】
一対の放熱体15a、15bは、シャーシ10の上側の辺10bの近傍部分に、互いの配置位置が、シャーシ10の左右方向の中央部分から所定の距離離間するように配置、固着されている。より具体的には、中央よりも少し左側に寄った位置に第1の放熱体15aが、中央よりも少し右側に寄った位置に第2の放熱体15bが、それぞれ配置されている。この放熱体15a、15bの配置位置は、図2を用いて説明したように、本実施形態にかかるタブレット型パソコン100の、筐体1の主面1aに配置された画像表示面2の水平方向に延在する2つの辺の内の、他方の辺である上側の辺2aの左右方向中央部から離間した位置の近傍に当たる領域である。
【0045】
本実施形態のタブレット型パソコン100の放熱体15a、15bは、熱伝導性の高い銅製などの金属板を折り曲げて中空の直方体としたものである。放熱体15a、15bが配置されている部分のシャーシ10は、他の部分と比較して背面カバー20側に突出した凹所部10eとなっている。このため、直方体状に折り曲げられて形成された、高さの大きな放熱体15a、15bをシャーシ10の前面カバー1f側に突出させることなく収容することができる。
【0046】
シャーシ10の下方側に配置されたCPU12からの熱を受け取る受熱部13と、シャーシ10の上方側に位置する放熱体15a、15bとの間は、ヒートパイプ14a、14bで接続されている。ヒートパイプ14a、14bは、銅などの熱伝導性の高い金属で構成され、また、ヒートパイプ14a、14b内には熱伝導性の高い代替フロンなどの熱伝導媒体が封入されているために、受熱部13に伝えられたCPU12の熱は効率よく放熱体15a、15bに伝達される。
【0047】
本実施形態のタブレット型パソコン100では、シャーシ10の下側の辺10a近傍の左右方向の中央部分と、上側の辺10b近傍の中央部から所定の距離離間した左側部分と右側部分との三カ所において、直接または間接的にシャーシ10に発熱部品であるCPU12の熱が伝達される。このように、金属製のシャーシ10に熱を伝える3つの熱源が平面的に互いに離れた位置に分散配置されているため、シャーシ10の温度分布を平均化することができ、シャーシ10の熱が筐体1内の空気層を介して伝達される筐体1に、所定の温度以上となる部分が生じることを回避することができる。
【0048】
なお、第1の放熱体15aと第2の放熱体15bの配置位置における離間距離の大きさは、シャーシ10の大きさやシャーシ10に配置される他の電子部品との位置関係から定められることになる。また、使用者がタブレット型パソコン100を保持する際に手が触れる部分にはなるべく熱源を配置しないという観点や、3つの熱源からの熱によってシャーシ10全体の温度を均一に上昇させることができる配置位置はどこかという観点を踏まえて総合的に判断することが好ましい。
【0049】
また、図3に示すように、本実施形態のタブレット型パソコン100では、ヒートパイプ14a、14bがシャーシ10の前面カバー1f側の表面から突出しないように、ヒートパイプ14a、14bが配置される部分で、シャーシ10に溝状の凹み10f、10gを設けている。この溝状の凹み10f、10gの深さと幅を、ヒートパイプ14a、14bの外径よりわずか大きくすることで、ヒートパイプ14a、14bとシャーシ10の溝状の凹み10f、10gの底面部分および側面部分とを近接させることができる。ヒートパイプ14a、14bは、CPU12の熱によって100度近くの高温となるため、ヒートパイプ14a、14bと近接するシャーシ10の溝状の凹み10f、10gの部分との間でも熱伝導が生じ、シャーシ10にCPU12の温度が伝わる箇所がさらに増えることで、シャーシ10の温度をより均一に上昇させることができる。
【0050】
シャーシ10において、発熱部品であるCPU12が配置された部分と、一対の放熱体15aおよび15bとが配置された部分との間の、上下方向の中間部分の両端部に、一対の二次電池17aおよび17bが配置される。
【0051】
このように、重量のある二次電池17a、17bを左右両端部に振り分けて配置することで、タブレット型パソコン100の左右方向の重量バランスを保つことができる。
【0052】
また、二次電池17a、17bの配置部分には、二次電池17aと17bとを収容できるだけの一定の容積を要するため、二次電池配置部分には、他の回路基板等を配置することが困難となる。本実施形態のタブレット型パソコン100では、二次電池17a、17bの配置部分をシャーシ10の上下方向の中間部分とすることで、筐体1の上側側面1e部分に、シャーシ10の上側の辺10bに入出力端子16aを配置することができる。この入出力端子16aに接続される回路基板16は、第1の放熱体15aとともに、シャーシ10の上側の辺10bの左側部分に設けられた凹部10e内に収容されている。
【0053】
シャーシ10の前面ケース1f側には、例えばCPU12が配置された回路基板11と入出力端子16aに接続される回路基板16とを接続するフレキシブルプリントケーブル(FPC)18a、回路基板11と、シャーシ10の背面カバー20側に配置されていて図3には現れない他の回路基板と接続するFPC18bが配置されている。
【0054】
ここで、図4と図5を用いて、本実施形態のタブレット型パソコンパソコン100を使用者が保持する方法について説明する。
【0055】
図4は、本実施の形態のタブレット型パソコン100の使用時における第1の保持方法を示している。図4に示す第1の保持方法は、タブレット型パソコン100の筐体1の下側側面1bの左右両端部分を両手で保持する方法である。
【0056】
本実施の形態にかかるタブレット型パソコン100では、図2に示したように筐体1の背面カバー20内部にクッション材22を配置して、発熱部品であるCPU12の熱が筐体1の背面カバー20に伝わりにくくなるようにしている。また、熱源となるCPU12を左右方向の中央部分に配置しているため、図4に示すように、筐体1の左右両端部を保持する場合には、内部の温度が最も高くなっているCPU12が配置された位置近傍を避けて保持することができる。このため、使用者が筐体1の熱を感じにくく、安心してタブレット型パソコン100を保持することができる。
【0057】
図5は、本実施の形態のタブレット型パソコン100の使用時における第2の保持方法を示している。図5に示す第2の保持方法は、タブレット型パソコン100の筐体1の背面ケース20に固着された保持用バンド23に手を通して片手で保持する方法である。
【0058】
本実施の形態にかかるタブレット型パソコン100では、図2および図3に示したように、シャーシ10の上側の辺10a近傍に配置する熱源となる放熱体15a、15bを、左右方向の中央部を避けて互いに離間して配置している。このため、使用者の手の平が当たる筐体1の左右方向の中央部には熱源が無く、使用者は、筐体1の中でも高い温度になりやすい中央部分を避けて保持することができる。このように、使用者が片手でタブレット型パソコン100を保持する場合でも、筐体1の熱を感じにくく安心してタブレット型パソコン100を保持することができる。
【0059】
また、上記したように、背面カバー20の下側の側面1b近傍の部分には、クッション材22が配置されているため、CPU12が配置されている部分に使用者の手首が当たった場合でも熱さを感じにくくなっている。
【0060】
なお、本実施形態のタブレット型パソコン100では、図2および図3を用いて示したように、一対の二次電池17a、17bをシャーシ10の左右両端部に配置しているため、左右方向において良好な重量バランスが確保されている。このため、図5に示すような片手でタブレット型パソコン100を保持する場合には、筐体1が左右いずれかに傾きにくく、良好にタブレット型パソコン100を保持することができる。
【0061】
以上述べたように、本実施形態のタブレット型パソコンでは、筐体内部の熱源である発熱部品と、発熱部品の熱が伝達される放熱体を、シャーシの平面方向において分散された位置に配置しているため、これらの熱源から筐体内部の空気層に熱が伝わった場合でも、その熱は筐体全体を介して筐体の外部に放出される。このため、筐体の一部分が他の部分より突出して高い温度となることを防止することができ、使用者が手で保持して使用することが前提となるタブレット型パソコンに対して求められる、筐体の最高温度を許容範囲内に収めるという要請に応えることができる。
【0062】
なお上記実施の形態では、タブレット型パソコンのシャーシに、第1の放熱体と第2の放熱体との一対の2つのみの放熱体が配置される場合を例示して説明した。しかし、本発明の電子機器において、シャーシに固着される放熱体の数は2つに限られるものではなく、シャーシ全体の温度上昇のバランスを崩さない範囲で、一対の放熱体に加えて、第3の放熱体、第4の放熱体、さらに多数の放熱体を設けることができる。
【0063】
また、上記実施の形態では、2つの二次電池を用い、これをシャーシの左右両端部にバランスよく配置する例を示したが、二次電池の配置位置は上記例示したものに限らない。例えば、2つの二次電池を、ともに筐体のほぼ中央に配置することもできる。また、2つずつの合計4つの二次電池を左右両端部にバランスよく配置することもできるし、一つの二次電池を筐体のほぼ中央部に配置することもできる。
【0064】
また、上記実施の形態では、一対の放熱体の形状を、板状の金属を折り曲げて中空の直方体状としたものを例示したが、この放熱体の形状は例示に過ぎない。本発明のタブレット型パソコンのシャーシに固着される放熱体としては、薄い板状のフィンが複数形成されたものや、剣山のように細い針状の突起が多数配列されたものなど、電子機器の放熱部材として用いられる各種形状の放熱体を使用することができる。
【0065】
なお、シャーシへの放熱体の固着方法としては、金属製のネジで直接ネジ止めする方法や、表面に熱導電物質が塗布された両面接着シートを用いる方法、可塑性の樹脂からなる熱伝導部材で固着する方法など、熱伝導性を保ちながら放熱体をシャーシに固着する周知の固着方法を用いることができる。
【0066】
また、上記実施形態では、CPUが配置された側の画像表示面の水平方向に延在する一方の辺を下側の辺、放熱体が配置された他方の辺を画像表示面の上側の辺として説明したが、筐体の保持方法などの関係で熱源の配置が、上側に一つ、下側に2つであることが好ましい場合には、CPUを筐体の上側の側面近傍に、一対の放熱体を筐体の下側側面の近傍にそれぞれ配置してもかまわない。
【0067】
さらに、上記本実施の形態にかかる電子機器として、医療現場で使用されることを想定した、把手を備え防水対策が施されたタブレット型パソコンを例示して説明した。しかし、本発明が適用される電子機器としては、例えばタブレット型パソコンに適用する場合であっても、薄い板状の文字通りのタブレット型パソコンや、本体部に回動可能な表示部が接続されていて表示部の画像表示面を外側にして本体部と重ね合わせることでタブレット型パソコンとして使用できる形態のコンピュータなど、各種形態のタブレット型パソコンに適用することができる。また、このようなタブレット型パソコンに限らず、例えば、ノートパソコンや、携帯電話、携帯用ゲーム機、小型テレビジョン受像器やブルーレイディスプレイヤー、ナビゲーションシステムなどの各種携帯型の電子機器、さらには、デスクトップパソコンや液晶プロジェクタなどの据え置きタイプの各種の電子機器を、本発明を適用する電子機器として用いることができる。
【0068】
また、上記実施形態においては、動作中に発熱する発熱部品としてCPUを例示して示したが、発熱部品はCPUには限られず、ビデオボードなどの画像処理用の半導体チップや二次電池など、使用時に筐体の内部で大きくその温度が上昇する部材を発熱部品とすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明にかかる電子機器は、筐体内の発熱部品からの熱による筐体の温度上昇を均一化して、最高温度部分の温度を所定の範囲内に収めることができる電子機器として、各種用途に適用することができる。
【符号の説明】
【0070】
1 筐体
1a 主面
2 画像表示面
2a 画像表示面の他方の辺
2d 画像表示面の一方の辺
10 シャーシ
12 CPU(発熱部品)
14(14a、14b) ヒートパイプ
15(15a、15b) 放熱体
100 タブレット型パソコン(電子機器)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主面に矩形状の画像表示面を備えた偏平箱形の筐体内に金属製のシャーシが収容され、
動作中に発熱する発熱部品と、前記発熱部品の熱がヒートパイプで伝達された一対の放熱体とが、前記シャーシに固着された電子機器であって、
前記発熱部品が、前記シャーシにおける、前記画像表示面の水平方向に延在する2つの辺の内の一方の辺の左右方向中央部分近傍の領域に固着され、
前記一対の放熱体が、前記シャーシにおける、前記画像表示面の水平方向に延在する2つの辺の内の他方の辺の左右方向中央部から離間した位置の近傍の領域に、それぞれ固着されていることを特徴とする電子機器。
【請求項2】
前記筐体の内部における、前記発熱部品が搭載された前記回路基板が配置された部分と前記放熱体が配置された部分との間の領域の水平方向両端部分に、一対の二次電池が配置されている請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記画像表示面の前記他方の辺側に位置する前記筐体の側面部分に、入出力端子が配置されている請求項1または2に記載の電子機器。
【請求項4】
前記画像表示面の前記他方の辺側に位置する前記筐体の外殻に、前記筐体を保持する把手の両端部が固着されている請求項1〜3のいずれかに記載の電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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