説明

電子機器

【課題】複数の筐体同士の接合部における腐食を防止することが可能な電子機器を提供する。
【解決手段】本技術の一形態に係る電子機器は、第1のシール部材と、第2のシール部材と、本体とを具備する。上記第1のシール部材は、導電性を有する。上記第2のシール部材は、弾性材料で形成される。上記本体は、導電性の第1の筐体と、導電性の第2の筐体と、上記第1の筐体と上記第2の筐体とを接合する接合部とを有する。上記接合部は、上記第1のシール部材が装着される第1の装着部と、上記第1の装着部より外気側に形成され上記第2のシール部材が装着される第2の装着部と、上記第2の装着部と上記第2のシール部材との接触部よりも外気側に形成された防食用の保護層とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、例えば屋外で使用される撮像装置等の電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、ビデオカメラなどの電子機器は、屋外において使用されることも多い。このため、電子部品等が配置される本体内部に雨滴等が侵入しないよう、本体が防水構造を有する必要がある。例えば、特許文献1には、筐体ボディと筐体カバーとの間を密封するために、複数のガスケットが一体化されたガスケットを取り付けることが可能な、CATV中継装置などの屋外機器の金属筐体が記載されている。また、特許文献2には、筐本体と蓋の互いの当接面にOリング等の防水パッキンが嵌めこまれた、屋外設置の通信機器用の金属筐体が記載されている。
【0003】
一方、これらの電子機器は、本体内部に収容される自己の電子部品等から発生する電磁波の外部への放射を抑制するために、あるいは外部から本体内部への電磁波の侵入を抑制するために、本体自身が電磁シールド機能を有することが必要である。具体的には、本体を構成する複数の筐体が導電性を有する金属等で構成され、かつ筐体同士の接合部にも、上述の防水効果だけでなく導電性を確保することが求められる。これによって、本体内外からの電磁波が本体及び接合部を通過するとき、その表面での反射と内部での吸収とによって電磁波が減衰し、本体が全体として電磁シールド機能を発揮することができる。
【0004】
例えば、特許文献1では、接合される金属筐体同士とシールドガスケットとが接触する構成によって、金属筐体全体の導電性が確保される。特許文献2では、上記防水パッキンが導電性を有することで、金属からなる筐本体と蓋との接触部が導電性を維持する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−71362号公報
【特許文献2】特開2001−124206号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、本体が金属筐体からなる電子機器は、雨滴等によって筐体の表面が腐食される可能性がある。この点について、特許文献1では明記されていないが、特許文献2では、筐本体と蓋に防錆塗装が施されている旨が記載されている。しかしながら、特許文献2についても、導通を確保するために、防水パッキンが配置される筐本体と蓋との当接面では防錆塗装が省略されている。このため、上記当接面において、上記防水パッキンによって密封される部分より外気側では、水分の侵入により筐体を構成する金属等が腐食し、美的外観を損ねることがあった。さらに、腐食が進行し、接触面での導通の確保に問題が生じる可能性があった。
【0007】
以上のような事情に鑑み、本技術の目的は、複数の筐体同士の接合部における腐食を防止することが可能な電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本技術の一形態に係る電子機器は、第1のシール部材と、第2のシール部材と、本体とを具備する。
上記第1のシール部材は、導電性を有する。
上記第2のシール部材は、弾性材料で形成される。
上記本体は、導電性の第1の筐体と、導電性の第2の筐体と、上記第1の筐体と上記第2の筐体とを接合する接合部とを有する。上記接合部は、上記第1のシール部材が装着される第1の装着部と、上記第1の装着部より外気側に形成され上記第2のシール部材が装着される第2の装着部と、上記第2の装着部と上記第2のシール部材との接触部よりも外気側に形成された防食用の保護層とを有する。
【0009】
上記第1のシール部材と上記第1の装着部とによって、第1の筐体と第2の筐体との間の導電性を確保し、本体に電磁シールド機能を付与することができる。また、第1のシール部材より外気側に配置される上記第2のシール部材と上記第2の装着部とによって、これらの接触部より内側への水分の侵入を抑制することができる。さらに、防食用の上記保護層によって、接合部における腐食の進行を抑制することが可能である。これらのことから、本体全体としての電磁シールド機能を維持し、さらに美観を維持することが可能となる。
【0010】
上記接合部は、上記第1の筐体に形成された第1のフランジ部と、上記第2の筐体に形成された第2のフランジ部とを含み、
上記第2の装着部は、上記第1のフランジ部に形成され上記第2のシール部材を収容する溝部と、上記第2のフランジ部に形成され上記溝部と対向する平面部とを有してもよい。
このことによって、弾性材料で形成された第2のシール部材が、上記溝部と上記平面部とに密着することができ、第2の装着部と第2のシール部材とのシール性を高めることが可能となる。
【0011】
上記溝部は、上記保護層が形成される第1の領域と、上記保護層が形成されない第2の領域とを有してもよい。
上記溝部の第1の領域に保護層を形成することによって、溝部においても第2のシール部材と第2の装着部との接触部より外気側に保護層を形成することができる。このことによって、上記接触部の外気側での腐食を抑制し、接合部の美観を維持することが可能となる。また、溝部全体への保護層の形成の手間を省略できるため、作業性を向上させることができる。
【0012】
上記第1のフランジ部は、上記第2のフランジ部よりも外側に突出し、
上記平面部は、上記溝部の一部を被覆してもよい。
このことによって、第1のフランジ部と第2のフランジ部との間に、第2のシール部材の一部が露出する程度の段差を設けることができる。この段差によって、水分が狭い領域に貯留せず、接合部の内側への水分の侵入をより抑制することが可能となる。
【0013】
また、上記保護層は、塗膜であってもよく、さらに具体的には、吹き付け塗膜であってもよい。
このことによって、保護層の形成が容易になり、例えば溝部へ適切に保護層を形成することが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本技術によれば、複数の筐体同士の接合部における腐食を防止し、それによって美観を維持することが可能な電子機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本技術の第1の実施形態に係る電子機器の本体の分解上面図である。
【図2】本技術の第1の実施形態に係る第1の筐体を[A]方向から見たときの側面図である。
【図3】本技術の第1の実施形態に係る第2の筐体を[B]方向から見たときの側面図である。
【図4】本技術の第1の実施形態に係る接合部の構成を示す概略断面図であり、図2の[C]−[C]方向の断面と、図3の[D]−[D]方向の断面とが接合された態様を示す。
【図5】本技術の第1の実施形態に係る接合部の構成を示す概略断面図であり、図4の要部を拡大した図である。
【図6】本技術の第1の実施形態に係る第1のフランジ部と第1の装着部との構成を示す概略断面図であり、図4の要部を拡大した図である。
【図7】本技術の第1の実施形態に係る防食塗膜の形成方法を示す模式的な断面図である。
【図8】本技術の第1の実施形態の変形例に係る防食塗膜の形成方法を示す模式的な断面図である。
【図9】本技術の第2の実施形態に係る接合部の構成を示す概略断面図である。
【図10】本技術の実施形態の変形例に係る接合部の構成を示す概略断面図である。
【図11】本技術の実施形態の他の変形例に係る接合部の構成を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら、本技術に係る実施形態を説明する。
【0017】
<第1の実施形態>
(電子機器の構成)
図1〜3は、本実施形態に係る電子機器100の本体1の構成を示す。本体1は、第1の筐体10と、第2の筐体20と、第3の筐体30とを有する。図1は、本体1の分解上面図、図2は、図1の[A]方向から見たときの第1の筐体10の側面図、図3は、図1の[B]方向から見たときの第2の筐体20の側面図である。
【0018】
本実施形態に係る電子機器100は、シールドチューブ(第1のシール部材)T1と、弾性チューブ(第2のシール部材)T2とをさらに有する。本体1は、第1の筐体10と第2の筐体20との間に形成された接合部40と、第1の筐体10と第3の筐体30との間に形成された接合部50とを有し、シールドチューブT1及び弾性チューブT2はこれら接合部40、50にそれぞれ装着される。電子機器100は、例えば放送業務用のポータブルカメラ等であり、本体1の内部空間には、図示せずとも、撮像素子、信号処理回路、記録再生装置等の各種電子部品、さらには、光学レンズ、レンズ駆動機構等の各種機構部品が収容される。
【0019】
なお、各図においてX軸方向及びY軸方向は互いに直交する水平方向を示し、Z軸方向はX軸とY軸とに垂直な方向を示す。また、本実施形態において、X軸方向は本体1の幅方向、Y軸方向は本体1の前後方向、Z軸方向は本体1の高さ方向(鉛直方向)をそれぞれ示し、第2の筐体20は本体1の左側面を、第3の筐体30は本体1の右側面をそれぞれ構成するものとする。また以下の説明において、「内側」あるいは「内部」とは、第1の筐体10、第2の筐体20及び第3の筐体30に囲まれる側、あるいは囲まれる部分を示し、「外気側」あるいは「外部」とは、第1の筐体10、第2の筐体20及び第3の筐体30を挟んで、「内側」あるいは「内部」とは反対側の部分を示すものとする。
【0020】
[本体の構成]
本体1は本実施形態において、第1の筐体10と、第2の筐体20と、第3の筐体30とによって構成されるが、さらに図示しない複数の筐体及び部品等を有してもよい。第1の筐体10と第2の筐体20とは、螺子等によって数箇所固定されることで一体化し、接合部40を構成する。接合部40には、シールドチューブT1と弾性チューブT2とが装着される。
同様に、第1の筐体10と第3の筐体30とは、螺子等によって数箇所固定されることで一体化し、接合部50を構成する。接合部50は、接合部40と同様の構成を有し、接合部50には、シールドチューブT1と弾性チューブT2とがそれぞれ装着される。
【0021】
なお、第1の筐体10と、第2の筐体20と、第3の筐体30との外気側の表面には、後述する防食塗膜P1が形成されている(図1〜3において図示せず)。
【0022】
(第1の筐体)
第1の筐体10は、Z軸方向に相互に対向する上板11、下板12とを有し、それぞれが背面フレーム13と内部フレーム14とによって接続されている。背面フレーム13は、本体1の背面を構成する。また、内部フレーム14は、X軸方向に直交するYZ平面を有する支持体であり、第1の筐体10の内部に形成され、上板11及び下板12を支持する。すなわち、第1の筐体10は、前面及び両側面が開放された構成を有する。本体1の前面に形成された開放領域には、鏡筒等の撮像光学系が設置される。
【0023】
第1の筐体10は、金属材料で形成され、本実施形態ではマグネシウム(Mg)のダイキャストで形成される。したがって、第1の筐体10は導電性を有するとともに、高強度かつ軽量に構成される。
【0024】
第1の筐体10は、第1のフランジ部15を有する。第1のフランジ部15は、上板11と背面フレーム13と下板12各々の周縁に沿って連続的に形成されている。第1のフランジ部15は、第1の筐体10と第2の筐体20とを相互に接合する接合部40を構成する。第1のフランジ部15には、第2の筐体20側に開口を有する溝部421が形成されており、溝部421には、図2の太線で示す弾性チューブT2が嵌合される。本実施形態において溝部421は、図2に示す上板11上の点S1と下板12上の点S2との間にわたって連続的に形成される1本の溝で形成される。
【0025】
弾性チューブT2は、点S1と点S2との間に形成される溝部421に装着される有端の線状シール部材で形成される。弾性チューブT2の構成材料は特に限定されず、本実施形態ではシリコーンゴムで形成される。
【0026】
溝部421は、上記2点の間を連続的に形成される構成に限られない。例えば、点S1と点S2との間において、溝部421が非連続的に形成されてもよい。さらに、弾性チューブT2は、主として、本体1の外部から内部への雨滴等の侵入を防止するためのシール部材として構成されるものであるため、当該弾性チューブT2を収容する溝部421は、上板11と背面フレーム13の周縁にのみ形成されてもよい。
【0027】
一方、第1の筐体10の上板11、下板12及び背面フレーム13の反対側の側面には、第1のフランジ部15と同様の構成の第3のフランジ部17が形成されており、第3のフランジ部17を含む接合部50を介して、第1の筐体10と第3の筐体30とが相互に接合される。
【0028】
(第2の筐体)
第2の筐体20は、本体1の左側面を構成する板状構造を有する。第2の筐体20は、第1の筐体10と同様に、Mgのダイキャストで形成される。
【0029】
第2の筐体20は、第2のフランジ部25を有する。第2のフランジ部25は、第2の筐体20の内面側の周縁に沿って連続的かつ環状に形成されている。第2のフランジ部25には、第1の筐体10側に開口を有する溝部411が形成されており、溝部411には、シールドチューブT1が嵌合されている。第2のフランジ部25は、第1の筐体10と第2の筐体20とが螺子等によって固定されることで、第1のフランジ部15とX軸方向に接合される。第1のフランジ部15と第2のフランジ部25とは、ともに接合部40の一部を構成する。
【0030】
溝部411は、第2のフランジ部25の端面にそって連続的かつ環状に形成されているが、非連続的に形成されていてもよい。シールドチューブT1は、溝部411に沿って連続的かつ環状に装着される。これに限られず、シールドチューブT1は、溝部411の所定位置に非連続的に装着されてもよい。
【0031】
(第3の筐体)
第3の筐体30は、本体1の右側面を構成する板状構造を有する。第3の筐体30は、第1の筐体10と同様に、Mgのダイキャストで形成される。
【0032】
第3の筐体30は、第4のフランジ部37を有する。第4のフランジ部37は、第3の筐体30の内面側の周縁に沿って連続的かつ環状に形成される第4のフランジ部37には、第1の筐体10側に開口を有する図示しない溝部が形成されており、当該溝部は、溝部411と同様の構成を有しており、当該溝部にはシールドチューブT1が嵌合されている。第4のフランジ部37は、第1の筐体10と第3の筐体30とが螺子等によって固定されることで、第3のフランジ部17とX軸方向に接合される。第3のフランジ部17と第4のフランジ部37とは、ともに接合部50の一部を構成する。
【0033】
以上のように、第1の筐体10、第2の筐体20及び第3の筐体30が構成される。次に、第1の筐体10と第2の筐体20とが接合される接合部40の詳細な構成について説明する。なお、接合部50は接合部40の構成と同様なため、以下説明を省略する。
【0034】
[接合部の構成]
図4は、本実施形態に係る接合部40の構成を示す概略断面図であり、図2の[C]−[C]方向の断面と、図3の[D]−[D]方向の断面とが接合された状態を示す図である。図5は、接合部40の構成を示す概略断面図であり、図4の要部を拡大した図である。図6は、第1のフランジ部15及び第1の装着部41の構成を示す概略断面図であり、図4の要部を拡大した図である。
【0035】
接合部40は、第1のフランジ部15と第2のフランジ部25とから構成され、第1の装着部41と、第2の装着部42と、防食塗膜(保護層)Pとを有する。第1のフランジ部15と第2のフランジ部25とは、X軸方向に対向しており、第1のフランジ部15は、第2のフランジ部よりも所定の高さだけ外側に突出している。第1の装着部41には、シールドチューブT1が装着される。第2の装着部42には、弾性チューブT2が装着される。防食塗膜P1は、第2の装着部42と弾性チューブT2との接触面(接触部)C1,C2よりも外気側に形成される。なお、図4〜図11においては、防食塗膜P1の形成される部位を太線で示している。
【0036】
(第1の装着部)
第1の装着部41は、溝部411と、平面部412とを有する。溝部411は、第2の筐体20の第2のフランジ部25に形成され、第1のフランジ部15側に開口を有する溝であり、溝部411にはシールドチューブT1が嵌合される。一方、平面部412は、溝部411の一部を被覆するように溝部411と対向し、第1の筐体10の第1のフランジ部15に形成される。すなわち、本実施形態において、第1の装着部41は、溝部411と平面部412とによって形成されるシールドチューブT1を収容するための空間部を形成する。
【0037】
シールドチューブT1は、導電性の第1の筐体10と導電性の第2の筐体20との導通を確保することで、本体1の全領域に電磁シールド機能を付与するために用いられる。シールドチューブT1を形成する材料は、表面が導電性を有する材料で形成されれば特に制限されない。例えば、弾性材料からなる中空のシリコーンチューブを核とし、その周囲がニッケル(Ni)等の金属材料で被覆されたものを採用することができる。シールドチューブT1の径は特に制限されず、溝部411の開口幅の大きさによって適宜選定され、例えば、約2mm径のものを用いることができる。このようなシールドチューブT1は、自身も弾性特性を有することで、溝部411と平面部412とに対して一定の弾性力で密着する。
【0038】
溝部411の形成される大きさは特に制限されないが、開口から底部までの距離及び壁面間の幅が、ともにシールドチューブT1の径よりも小さくなるように形成することができる。例えば、本実施形態においては、溝部411の開口から底部までの距離及び壁面間の幅が、いずれも2mm未満に形成される。このことによって、弾性特性を有するシールドチューブT1は、図5に示すように第1の装着部41で角丸形につぶれ、溝部411及び平面部412の一部と密着するように収容される。なお、溝部411及び平面部412とには、後述する防食塗膜P1は施されておらず、これらとシールドチューブT1との間の導電性は確保される。
【0039】
以上より、シールドチューブT1は、導電性の第1の筐体10と導電性の第2の筐体20と接触し、これらとの導電性を確保することが可能となる。シールドチューブT1を上記構成の第1の装着部41に装着することによって、本体1全体に導電性を付与することが可能となる。これによって、本体1内外からの電磁波が本体1及び接合部40、50等を通過するとき、その表面での反射と内部での吸収とによって電磁波が減衰し、本体1が全体として電磁シールド機能を発揮することが可能となる。
【0040】
(第2の装着部)
第2の装着部42は、第1の装着部41よりも外周側に形成される。第2の装着部42は、溝部421と、平面部422とを有する。溝部421は、弾性チューブT2を嵌合させるための溝であり、第2のフランジ部25側に開口を有し、第1の筐体10の第1のフランジ部15に形成される。一方、平面部422は、第2の筐体20の第2のフランジ部25に形成される。平面部422は、溝部421と対向し、溝部421を一部被覆するように第2のフランジ部25に形成される。すなわち、第2の装着部42は、溝部421と平面部422とによって形成され弾性チューブT2を収容する空間部を形成する。なお、図5を参照し、平面部422が溝部421を被覆する幅をH2とし、溝部421の開口が露出される幅をH1とする。
【0041】
弾性チューブT2は、接合部40から本体1の内部への雨滴等の水分の侵入を抑制するために用いられる。弾性チューブT2を形成する材料は、弾性材料で形成されれば特に制限されず、例えば、シールドチューブT1の核に用いたシリコーンチューブと同様のものを採用することが可能である。弾性チューブT2の径は特に制限されず、溝部421の開口幅の大きさによって適宜選定され、例えば、約1.6mm径のものを用いることができる。
【0042】
溝部421の形成される大きさは特に制限されないが、開口から底部までの距離及び壁面間の幅(すなわち図5におけるH1+H2)が、ともに弾性チューブT2の径よりも小さくなるように形成することができる。例えば、本実施形態において、開口から底部までの距離及び壁面間の幅は、いずれも1.6mm未満に形成される。このことによって、弾性チューブT2は、図5に示すように第2の装着部42内で角丸形につぶれる。すなわち、弾性チューブT2は、溝部421と平面部422との接触面(接触部)C1、C2で、それぞれ密着するように形成される。
【0043】
接触面C1は、溝部421と弾性チューブT2とが接触する面のうち、図5に示すように最も外気側で接触する面である。一方、接触面C2は、平面部422と弾性チューブT2とが接触する面であり、第2のフランジ部25の端面25a付近に形成される。これらの接触面C1,C2は、全体として、溝部421及び弾性チューブT2の延在方向に沿って形成される。接触面C1,C2によって、弾性チューブT2と、第1の筐体10及び第2の筐体20とが密着し、外気側からの水分等の侵入を抑制することが可能となる。
【0044】
図6を参照し、溝部421は、防食塗膜P1が施される第1の領域R1と、防食塗膜P1が施されない第2の領域R2とを有する。第1の領域R1は、少なくとも溝部421の接触面C1よりも外気側に形成される領域であり、溝部421内の外気側の外側壁面421aに形成される。一方、第2の領域R2は、溝部421の接触面C1よりも内側に形成される領域である。すなわち、本実施形態においては、外気に接触し雨滴等が付着する可能性のある第1の領域R1に防食塗膜P1が施されている。このため、接合部40内においても錆等による腐食を抑制することができ、美観を維持することが可能となる。さらに、溝部421の全体へ防食塗膜P1を行う手間を省略できるため、作業性を向上させることができる。
【0045】
ここで、第1の領域R1における防食塗膜P1の形成方法について説明する。
【0046】
図7は、溝部421内への防食塗膜P1の形成方法を示す模式的な断面図である。防食塗膜P1は、本実施形態において、吹き付け塗装で形成された吹き付け塗装である。吹き付け塗装は、例えばスプレーガンG等によってミスト状にされた塗料P0を所望の領域に吹き付けることで、防食塗膜P1を形成する塗装方法である。なお、本実施形態において用いる塗料P0は、防食(防錆)機能を有すれば特に制限されない。
【0047】
図7における破線は、外側壁面421aに吹き付けられる塗料P0を模式的に示している。溝部421の第1の領域R1に塗料P0を塗布するためには、例えば図7のように、スプレーガンGによって斜め方向から塗料P0を吹き付ける。塗料P0は、スプレーガンGから、溝部421の外側壁面421aに対して角度r1で入射する。
【0048】
溝部421の開口の一部は、板状あるいはテープ状のマスクMで遮蔽される。スプレーガンGは、マスクMとの相対位置を変化させながら、塗料P0を外側壁面421aに向かって吹き付ける。このことによって、塗料P0を第1の領域R1に適切に形成することが可能となる。
【0049】
ここで、図8に、本実施形態の変形例として、第1の領域R11が外側壁面421aの全面に形成される例を示す。本変形例では、塗料P0は、スプレーガンGから第1の領域R11を構成する外側壁面421aに対して角度r11で入射することができる。ここで、角度r11は、角度r1よりも小さい。
本変形例によれば、第1の領域R11を外側壁面421aの全面に形成することにより、より接合部40の防食効果を高めることが可能である。
【0050】
一方、本実施形態においては、接触面C1で弾性チューブT2と溝部421とが密着するため、本体1に付着した雨滴等を接触面C1の内部に侵入させない構造とすることができる。このため、接触面C1の外気側の第1の領域R1に防食塗膜P1が施されていれば、接合部40の防食機能としては十分なものとなる。第1の領域R1のみに防食塗膜P1を形成することにより、上記変形例よりも緩やかな角度から吹き付け塗装を行うことが可能となり、吹き付け塗装の作業性をより向上させることができる。
【0051】
防食塗膜P1は、第1の領域R1だけでなく、接合部40の接触面C1,C2より外気側に形成されている。なお、防食塗膜P1は、第1の筐体10と第2の筐体20との外気側の表面全体に形成されることが可能である。
【0052】
接触面C2では、弾性チューブT2と平面部422とが密着する。このことによって、第1の装着部41への水分等の侵入を抑制することができる。さらに、防食塗膜P1によって、接触面C2の内部への腐食の進行も抑制できるため、シールドチューブT1と、第1の筐体10と第2の筐体20との導電性を維持し、本体1全体としての電磁シールド機能を維持することができる。
【0053】
また、図5を参照すると、溝部421は、本実施形態において、平面部422によってH2だけ被覆され、H1だけ露出されている。このため、第2のフランジ部25の端面25aは、本実施形態において、第1のフランジ部15の溝部421の外側壁面421aよりH1だけ内部側に配置されることとなる。H1とH2との比は特に限られないが、例えば1:2程度に設定することができる。
【0054】
このような構成よって、第1のフランジ部15と第2のフランジ部25との間に、弾性チューブT2をH1だけ露出させることができる段差を設けることができる。このような段差を有することによって、本実施形態に係る接合部40は、接触面C1,C2の外気側において、雨滴等の貯留が少なく開放された領域を有する構成とすることができる。したがって、接合部40の内側への水分の侵入をより抑制することが可能となる。
【0055】
<第2の実施形態>
図9は、本技術の第2の実施形態に係る接合部60の構成を示す概略断面図である。本実施形態においては、第1の実施形態と同様の構成の第1の筐体10及び第2の筐体20を有するが、これらによって構成される接合部60が異なる構成を有する。なお、図において上述の第1の実施形態と対応する部分については同一の符号を付し、その詳細な説明は省略するものとする。
【0056】
接合部60は、第1の装着部61と、第2の装着部62と、防食塗膜P2とを有する。第1の装着部61には、シールドチューブT1が装着される。第2の装着部62には、弾性チューブT2が装着される。第1の装着部61は、溝部611と平面部612とで構成され、第2の装着部62は、溝部621と平面部622とで構成される。防食塗膜P2は、第2の装着部62と弾性チューブT2との接触面C21,C22よりも外気側に形成される。
【0057】
接合部60は、第1のフランジ部15と第2のフランジ部25との段差が第1の実施形態に比べて小さい。すなわち、第2のフランジ部25の端面25aが、溝部621の外側壁面621aとほぼ同じ高さに配置される。このことによって、溝部621の開口の、主に接触面C22の外気側の領域が平面部622によって被覆される。
【0058】
第1の実施形態と同様に、平面部622と弾性チューブT2とは接触面C22で密着している。このことから、たとえ溝部621と平面部622との間のわずかな間隙から雨滴等が侵入したとしても、第1の装着部61への侵入を抑制することが可能となる。
【0059】
一方、防食塗膜P2は、第2の筐体20において、平面部622の接触面C22より外気側の領域にも形成されている。このことから、接合面C22の外気側での腐食を抑制することができ、接合部60における美観を維持することが可能となる。さらに、接合部60の構成をコンパクトなものとすることができ、設計上の自由度を高めることができる。
【0060】
以上、本技術の実施形態について説明したが、本技術はこれに限定されることはなく、本技術の技術的思想に基づいて種々の変形が可能である。以下に、本技術の実施形態に係る変形例について説明する。
【0061】
<変形例1>
図10は、本技術の実施形態の変形例1に係る接合部40Aの構成を示す概略断面図である。変形例1においては、第1の筐体10Aの第1のフランジ部15Aと、第2の筐体20Aの第2のフランジ部25Aとが第1の実施形態と異なる構成を有する。
【0062】
変形例1においては、第2のフランジ部25A側に溝部411A,421Aが形成される。このような構成によっても、接触面C1A,C2Aによって、接合部40Aの内部への水分等の侵入を抑制することができる。また、防食塗膜P1Aを接触面C1A,C2Aの外気側に形成することによって、接触面C1A,C2Aの外気側での腐食を抑制することができ、接合部40Aにおける美観を維持することが可能となる。
【0063】
<変形例2>
図11は、本技術の実施形態における変形例2に係る接合部40Bの構成を示す概略断面図である。変形例2においては、第1のフランジ部15Bの構成が第1の実施形態と異なる。すなわち、溝部421Bの外気側の壁面421Baが、第2のフランジ部25の端面25aを覆うように形成され、外側からは第2のフランジ部25が見えないような構成を有する。このような接合部40Bは、第1の実施形態の同様の作用効果に加えて、接合部40Bの外部からの美観を向上させることが可能となる。
【0064】
また以上の実施形態では、保護層が防食塗膜であると説明したが、これに限られない。例えば、防錆フィルム等や、表面処理剤等による防錆処理等によって保護層を形成することも可能である。あるいは、上記保護層は、筐体の表面に形成された不動態皮膜であってもよい。
【0065】
また、防食塗膜の形成方法も吹き付け塗装に限らず、刷毛塗装等を採用することができる。
【0066】
なお、本技術は以下のような構成も採ることができる。
(1)導電性を有する第1のシール部材と、
弾性材料で形成された第2のシール部材と、
導電性の第1の筐体と、
導電性の第2の筐体と、
前記第1の筐体と前記第2の筐体とを接合する接合部を有し、前記接合部は、前記第1のシール部材が装着される第1の装着部と、前記第1の装着部より外気側に形成され前記第2のシール部材が装着される第2の装着部と、前記第2の装着部と前記第2のシール部材との接触部よりも外気側に形成された防食用の保護層とを有する本体と
を具備する電子機器。
(2)前記(1)に記載の電子機器であって、
前記接合部は、前記第1の筐体に形成された第1のフランジ部と、前記第2の筐体に形成された第2のフランジ部とを含み、
前記第2の装着部は、前記第1のフランジ部に形成され前記第2のシール部材を収容する溝部と、前記第2のフランジ部に形成され前記溝部と対向する平面部とを有する
電子機器。
(3)前記(2)に記載の電子機器であって、
前記溝部は、前記保護層が形成される第1の領域と、前記保護層が形成されない第2の領域とを有する
電子機器。
(4)前記(2)または(3)に記載の電子機器であって、
前記第1のフランジ部は、前記第2のフランジ部よりも外側に突出し、
前記平面部は、前記溝部の一部を被覆する
電子機器。
(5)前記(1)〜(4)のうちいずれか1つに記載の電子機器であって、
前記保護層は、塗膜である
電子機器。
(6)前記(5)に記載の電子機器であって、
前記塗膜は、吹き付け塗膜である
電子機器。
【符号の説明】
【0067】
1・・・本体
10,10A,10B・・・第1の筐体
15,15A,15B・・・第1のフランジ部
20,20A・・・第2の筐体
25,25A・・・第2のフランジ部
30・・・第3の筐体
40,40A,40B,50,60・・・接合部
41,41A,41B,61・・・第1の装着部
42,42A,42B,62・・・第2の装着部
421,421A,421B,621・・・溝部
422,422A,422B,622・・・平面部
100・・・電子機器
C1,C2,C1A,C2A,C1B,C2B,C21,C22・・・接触面(接触部)
T1・・・シールドチューブ(第1のシール部材)
T2・・・弾性チューブ(第2のシール部材)
P1,P1A,P1B,P2・・・防水塗膜(保護層)
R1・・・第1の領域
R2・・・第2の領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性を有する第1のシール部材と、
弾性材料で形成された第2のシール部材と、
導電性の第1の筐体と、
導電性の第2の筐体と、
前記第1の筐体と前記第2の筐体とを接合する接合部を有し、前記接合部は、前記第1のシール部材が装着される第1の装着部と、前記第1の装着部より外気側に形成され前記第2のシール部材が装着される第2の装着部と、前記第2の装着部と前記第2のシール部材との接触部よりも外気側に形成された防食用の保護層とを有する本体と
を具備する電子機器。
【請求項2】
請求項1に記載の電子機器であって、
前記接合部は、前記第1の筐体に形成された第1のフランジ部と、前記第2の筐体に形成された第2のフランジ部とを含み、
前記第2の装着部は、前記第1のフランジ部に形成され前記第2のシール部材を収容する溝部と、前記第2のフランジ部に形成され前記溝部と対向する平面部とを有する
電子機器。
【請求項3】
請求項2に記載の電子機器であって、
前記溝部は、前記保護層が形成される第1の領域と、前記保護層が形成されない第2の領域とを有する
電子機器。
【請求項4】
請求項2に記載の電子機器であって、
前記第1のフランジ部は、前記第2のフランジ部よりも外側に突出し、
前記平面部は、前記溝部の一部を被覆する
電子機器。
【請求項5】
請求項1に記載の電子機器であって、
前記保護層は、塗膜である
電子機器。
【請求項6】
請求項5に記載の電子機器であって、
前記塗膜は、吹き付け塗膜である
電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−58595(P2013−58595A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−195889(P2011−195889)
【出願日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】