説明

電子機器

【課題】筐体の内部の換気性を維持しつつ複数の鉛蓄電池の保温効果を高めることができ、鉛蓄電池が外気温の影響を受け難くなる電子機器を得ることにある。
【解決手段】電子機器は、換気口を有する筐体、仕切り板、少なくとも一つの支持板を備えている。仕切り板は、筐体の内部を第1の室と換気口が開口された第2の室とに気密に仕切っている。支持板は、第2の室を筐体の高さ方向に沿って複数の領域に分けるとともに、領域に連通された開口部を有する。電気回路モジュールが第1の室に収容されている。鉛蓄電池が第2の室の領域に個々に収容されている。鉛蓄電池を保温するためのヒーターが支持板に支持されている。ヒーターは、支持板の開口部を覆っている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、屋外で使用する密閉形の電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば屋外で使用する防災無線用の電子機器では、電気回路モジュールおよび鉛蓄電池が風雨や日射に耐え得る密閉形の筐体に収容されている。
【0003】
鉛蓄電池は、過充電時に水素ガスを放出する。このため、密閉された筐体を有する電子機器といえども、鉛蓄電池が発する水素ガスを筐体の外に放出して電気回路モジュールを水素ガスから保護することが必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−213784号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
水素ガスを筐体の外に放出するため筐体の内部の換気性を高めた場合、筐体の内部が外気温の影響を受け易くなる。このため、例えば外気温が−10℃以下となるような環境の下では、鉛蓄電池の電圧が低下するのを避けられず、電子機器の動作が不安定となる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態によれば、電子機器は、換気口を有する筐体、仕切り板、少なくとも一つの支持板を備えている。前記仕切り板は、前記筐体の内部を第1の室と前記換気口が開口された第2の室とに気密に仕切っている。前記支持板は、前記第2の室を前記筐体の高さ方向に沿って複数の領域に分けるとともに、前記領域に連通された開口部を有している。電気回路モジュールが前記第1の室に収容されている。鉛蓄電池が前記第2の室の前記領域に個々に収容されている。前記鉛蓄電池を保温するためのヒーターが前記支持板に支持されている。前記ヒーターは、前記支持板の前記開口部を覆っている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】実施形態に係る無線通信用の電子機器の側面図。
【図2】前扉を本体から取り外して本体の内部を露出させた状態を示す電子機器の正面図。
【図3】本体の天板の一部を破断して本体の内部を露出させた状態を示す電子機器の平面図。
【図4】支持板に開口された開口部とシリコンラバーヒーターとの位置関係を示す電子機器の平面図。
【図5】筐体の正面図。
【図6】筐体の平面図。
【図7】筐体を左側から見た側面図。
【図8】図2のF8−F8線に沿う断面図。
【図9】鉛蓄電池を保温するヒーターモジュールの平面図。
【図10】図9を矢印F10の方向から見たヒーターモジュールの側面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態について、図1ないし図10を参照して説明する。
【0009】
図1ないし図3は、屋外で使用する防災無線用の電子機器1を示している。電子機器1は、例えば建物の外壁のような起立した設置面2又は電柱に据え付けられている。電子機器1は、電子機器1の外郭となる金属製の筐体3を備えている。筐体3は、本体4と前扉5とで構成されている。
【0010】
図4ないし図6に示すように、本体4は、底板6、左右の側板7a,7b、背板8および天板9を有している。底板6、側板7a,7b、背板8および天板9は、例えば板金材で構成されている。底板6、側板7a,7b、背板8および天板9は、例えばスポット溶接等の手段により一体的に結合されて、四角い箱形に組み立てられている。さらに、本体4は、背板8の反対側に向けて全面的に開口された開口部10を有している。開口部10は、本体4の前端に位置されている。
【0011】
底板6の前縁、側板7a,7bの前縁および天板9の前縁に夫々パッキン受け部11が形成されている。パッキン受け部11は、底板6の前縁、側板7a,7bの前縁および天板9の前縁から本体4の外側に向けてフランジ状に直角に折り曲げられている。パッキン受け部11は、開口部10を取り囲んでいるとともに、同一の垂直面上に位置されている。そのため、パッキン受け部11は、段差を生じることなく開口部10の周方向に連続している。
【0012】
複数のボス部13が左右の側板7a,7bに一体に形成されている。ボス部13は、側板7a,7bの側方に向けて突出された先端面を有している。
【0013】
前扉5は、本体4に取り外し可能に支持されている。前扉5は、図示しないリング状のパッキンを介して本体4のパッキン受け部11に突き合わされて、本体4の開口部10を密封している。このため、筐体3は、自然環境に耐え得るような防風・防水性を兼ね備えている。
【0014】
図4ないし図6に示すように、底板6の下面および天板9の上面に夫々ブラケット15a,15bが固定されている。ブラケット15a,15bは、本体4の幅方向に延びているとともに、夫々ボルト16を介して設置面2に固定されている。
【0015】
この結果、筐体3は、屋外の設置面2に沿うような起立した姿勢で設置面2に据え付けらており、本体4の底板6が地面から離れている。
【0016】
第1ないし第4の日除け板17,18,19,20が筐体3の本体4に支持されている。第1ないし第4の日除け板17,18,19,20は、日射による筐体3の温度上昇を抑制するための要素である。
【0017】
第1の日除け板17は、本体4の側板7aから突出されたボス部13の先端面にねじ21で固定されて、側板7aを本体4の外から覆っている。第2の日除け板18は、本体4の側板7bから突出されたボス部13の先端面にねじ(図示せず)で固定されて、側板7bを本体4の外から覆っている。
【0018】
第3の日除け板19は、一対の延長部19a,19bを有している。一方の延長部19aは、第3の日除け板19の左側縁から下向きに延びているとともに、側板7aの上端部に位置されたボス部13の先端面にねじ21で固定されている。他方の延長部18bは、第3の日除け板19の右側縁から下向きに延びているとともに、側板7bの上端部に位置されたボス部13の先端面にねじ(図示せず)で固定されている。これにより、第3の日除け板19は、側板7a,7bに支持されて天板9を本体4の外から覆っている。
【0019】
第4の日除け板20は、前扉5の内面にねじ(図示せず)で固定されている。
【0020】
図2ないし図5に示すように、仕切り板22が筐体3の本体4に収容されている。仕切り板22は、例えば板金材で構成されている。仕切り板22は、側板7a,7bの間で本体4の高さ方向に沿うように起立されている。仕切り板22の上縁、下縁および後縁に夫々フランジ部22a,22b,22cが形成されている。
【0021】
フランジ部22aは、仕切り板22の上縁から天板9に沿うように直角に折り曲げられている。フランジ部22aは、天板9の内面に複数のねじで固定されている。フランジ部22bは、仕切り板22の下縁から底板6に沿うように直角に折り曲げられている。フランジ部22bは、底板6の内面に複数のねじで固定されている。フランジ部22cは、仕切り板22の後縁から背板8に沿うように直角に折り曲げられている。フランジ部22cは、背板8の内面に複数のねじで固定されている。
【0022】
この結果、仕切り板22は、底板6の内面、背板8の内面および天板9の内面に連続して突き合わされて、本体4の内部を第1の室24と第2の室25とに気密に仕切っている。さらに、仕切り板22は、底板6と天板9との間に架け渡されて、本体4を内側から補強する桁としての機能を兼ね備えている。
【0023】
本実施形態によると、仕切り板22の前縁にパッキン受け部26が形成されている。パッキン受け部26は、前扉5の内面に沿うように仕切り板22の前縁から直角に折り曲げられているとともに、本体4の開口部10の内側で本体4の高さ方向に延びている。
【0024】
加えて、パッキン受け部26は、本体4のパッキン受け部11に面一に連続されて、前記パッキンの一部に接している。言い換えると、仕切り板22は、前記パッキンを介して前扉5の内面に気密に接している。そのため、第1の室24と第2の室25との間が本体4の開口部10と前扉5との間を通じて互いに連通し合うことはない。
【0025】
図2および図5に示すように、水平な棚板28が第1の室24の下部に配置されている。棚板28は、例えば板金材で構成されている。棚板28は、本体4の側板7bの内面と仕切り板22との間に架け渡されているとともに、側板7bおよび仕切り板22に対し複数のねじで固定されている。このため、棚板28は、本体4を内側から補強する梁としての機能を兼ね備えている。
【0026】
図2、図5および図7に示すように、水平な支持板30が第2の室25の高さ方向に沿う中間部に配置されている。支持板30は、例えば板金材で構成されている。支持板30は、第1ないし第3の固定片30a,30b,30cを有している。
【0027】
第1の固定片30aは、支持板30の左側縁から側板7aに沿うように下向きに直角に折り曲げられている。第2の固定片30bは、支持板30の右側縁から仕切り板22に沿うように上向きに直角に折り曲げられている。第3の固定片30cは、支持板30の前縁から下向きに直角に折り曲げられて、本体4の開口部10に面している。
【0028】
第1の固定片30aは、複数のねじで側板7aに固定されている。同様に、第2の固定片30bは、複数のねじで仕切り板22に固定されている。したがって、支持板30は、第2の室25の内部で側板7aと仕切り板22との間に架け渡されている。
【0029】
支持板30は、第2の室25を下部領域32と上部領域33とに分けている。下部領域32は、支持板30の下側に位置されている。上部領域33は、支持板30の上側に位置されている。
【0030】
図4に示すように、複数の四角い開口部34が支持板30に形成されている。開口部34は、本体4の奥行き方向に間隔を存して一列に並んでいる。開口部34は、支持板30を厚み方向に貫通して下部領域32および上部領域33に連通されている。
【0031】
支持板30の前縁は、開口部10よりも本体4の内側に位置されている。支持板30の後縁は、本体4の背板8に突き当たることなく背板8から離れている。そのため、支持板30の前縁と前扉5との間に隙間35aが生じているとともに、支持板30の後縁と背板8との間にも隙間35bが生じている。
【0032】
この結果、上部領域32と下部領域33との間は、隙間35a,35bを通じて互いに連通されている。
【0033】
さらに、側板7aと仕切り板22との間に架け渡された支持板30は、前記棚板28と同様に本体4を内側から補強する梁としての機能を兼ね備えている。
【0034】
図1および図2に示すように、複数の換気口37が側板7aの上部に設けられている。本実施形態の換気口37は、ルーバー状であり、空気の流れが下向きとなるように側板7aから一体に切り起こされている。換気口37は、第2の室25の上部領域32に開口されているとともに、側板7aと第1の日除け板17との間から筐体3の外に通じている。
【0035】
換気口37は、上部領域32の内側から金網38で覆われている。金網38は、虫等の異物が換気口37から上部領域32に入り込むのを防止するための要素であって、側板7aの内面に例えば溶接等の手段により固定されている。
【0036】
図2に示すように、無線通信用の電気回路モジュール40が本体4の第1の室24に収容されている。電気回路モジュール40は、複数のプリント回路板や複数の回路部品を内蔵した箱形のケース41を備えている。ケース41は、棚板28の上に支持されている。
【0037】
一対のケーブルガイド42a,42bが本体4の底板6に取り付けられている。ケーブルガイド42a,42bは、一対のケーブル43a,43bを筐体3の外から第1の室24に導くための要素である。ケーブル43a,43bは、第1の室24の内部で電気回路モジュール40に電気的に接続されている。
【0038】
図2に示すように、第1の鉛蓄電池45が第2の室25の下部領域32に収容されている。第2の蓄電池46が第2の室25の上部領域33に収容されている。第1および第2の鉛蓄電池45,46は、夫々電解液の補充を不要とした、いわゆるメンテナンスフリーバッテリー(MFバッテリー)であって、互いに共通の構成を有している。
【0039】
すなわち、第1および第2の鉛蓄電池45,46は、夫々電解液が封入された電槽47と、電槽47の上端を閉塞する上蓋48とを備えている。電槽47の内部は、複数のセルに仕切られている。各セルは、正極板、負極板およびセパレータを組み合わせた極群を収容している。セルの極群は、電槽47の上部でコネクタを介して直列に接続されている。このため、第1および第2の鉛蓄電池45,46の性能および寿命は、電槽47の上部の温度の影響を受け易い。
【0040】
さらに、正負の接続端子49(一方のみを図示)が上蓋48から突出されている。接続端子49は、ケーブル50を介して電気回路モジュール40に電気的に接続されている。ケーブル50は、第2の室25から仕切り板22を気密に貫通して第1の室24に導かれている。
【0041】
通常、第1および第2の鉛蓄電池45,46は、その電槽47の内部の気密を保つために、上蓋48に内蔵された排気弁が閉じている。しかしながら、例えば充電系統の不具合により過大な充電電流が第1および第2の鉛蓄電池45,46に流れた時は、排気弁が開いて電槽47の内部の圧力を電槽47の外に逃がす。このため、第1および第2の鉛蓄電池45,46が過充電の状態に陥ると、電槽47の内部に生じた水素ガスが排気弁から第2の室25に排出される。
【0042】
第1の鉛蓄電池45は、第2の室25の底となる本体4の底板6の上に置かれている。第1の鉛蓄電池45は、第1の押え金具52を介して底板6の上に保持されている。図2および図8に示すように、第1の押え金具52は、支持部52aと押圧部52bとを有している。
【0043】
支持部52aは、本体4の高さ方向に延びる板状である。押圧部52bは、支持部52aの下端から直角に折り曲げられて、水平方向に延びている。支持部52aの上部は、固定ねじ53を介して前記支持板30の第3の固定片31cに固定されている。固定ねじ53は、支持部52aに開けた貫通孔54を貫通して第3の固定片31cにねじ込まれている。貫通孔54は、本体4の高さ方向に細長い形状を有する長孔である。
【0044】
固定ねじ53を緩めた状態では、第1の押え金具52は、固定ねじ53および貫通孔54をガイドとして本体4の高さ方向に沿って移動可能である。このため、第1の押え金具52の押圧部52bを第1の鉛蓄電池45の上蓋48の上面に突き当てた位置で固定ねじ53を締め付けることにより、第1の押え金具52を支持板30に固定することができる。
【0045】
この結果、第1の鉛蓄電池45が第1の押え金具52の押圧部52bと本体4の底板6との間で挟み込まれ、第1の鉛蓄電池45が第2の室25の下部領域32の定位置に保持される。
【0046】
第2の鉛蓄電池46は、ヒーターモジュール57を介して支持板30の上に置かれている。ヒーターモジュール57は、第1および第2の鉛蓄電池45,46を保温する要素の一例である。図9および図10に示すように、ヒーターモジュール57は、熱拡散板58、シリコンラバーヒーター59およびサーモスタット60を備えている
熱拡散板58は、例えばアルミニウム合金、銅のような板金材よりも熱伝導性に優れた金属材料で構成されている。熱拡散板58は、本体4の奥行き方向に延びる長方形の板状であり、第2の鉛蓄電池46の電槽47の底面に略対応した大きさを有している。
【0047】
熱拡散板58は、支持板30の上面に重ね合わされている。熱拡散板58は、第1の支持部62と第2の支持部63とを備えている。第1の支持部62は、支持板30の上面に向けて開放された真っ直ぐな凹所であり、熱拡散板58の長手方向に延びている。第2の支持部63は、熱拡散板58の左側縁から上向きに直角に折り曲げられて、本体4の側板7aと隣り合っている。
【0048】
固定片64が第1の支持部62の前端部に複数のねじ65で固定されている。図8および図10に示すように、固定片64は、熱拡散板58の前縁から下向きに突出されて、前記支持板30の第3の固定片31cと前記第1の押え金具52の支持部52aとの間に差し込まれている。
【0049】
さらに、固定片64は、スリット66を有している。スリット66は、固定ねじ53を受け入れるように固定片64の下縁に開放されている。このため、固定片64を支持板30の第3の固定片31cと第1の押え金具52の支持部52aとの間に挿入した後、固定ねじ53を締め付けることで、熱拡散板58を第1の押え金具52と一緒に支持板30に固定することができる。
【0050】
図9に示すように、ヒーターモジュール57のシリコンラバーヒーター59は、熱拡散板58の長手方向に沿う細長い板状である。シリコンラバーヒーター59は、熱拡散板58の第1の支持部62に収容されている。言い換えると、熱拡散板58は、シリコンラバーヒーター59よりも大きな平面形状(平面の面積がシリコンラバーヒーター59よりも熱拡散板58の方が大きい)を有している。
【0051】
シリコンラバーヒーター59は、板状のヒーターホルダー67に支持されている。ヒーターホルダー67は、第1の支持部62の下面に重ね合わされているとともに、複数のねじ68を介して第1の支持部62に固定されている。
【0052】
このため、シリコンラバーヒーター59は、熱拡散板58の下面に沿うように配置されて、熱拡散板58に熱的に接続されている。
【0053】
熱拡散板58に熱的に接続されたシリコンラバーヒーター59は、熱拡散板58と支持板30との間に介在されている。図4に示すように、シリコンラバーヒーター59は、支持板30に開けた開口部34を上向から覆うように開口部34の配列方向に沿って延びている。このため、シリコンラバーヒーター59は、開口部34を通じて下部領域32の上端に露出されている。
【0054】
前記サーモスタット60は、ブラケット70を介して熱拡散板58の第2の支持部63に支持されている。サーモスタット60は、シリコンラバーヒーター59に対する電流の流れを制御することで、シリコンラバーヒーター59の温度を適切な値に維持するように構成されている。
【0055】
図2に示すように、第2の鉛蓄電池46は、第2の支持金具71を介して熱拡散板58の上に保持されている。第2の支持金具71は、本体4の天板9の内面に固定したブラケット72に固定ねじ73を介して保持されている。第2の支持金具71は、熱拡散板58との間で第2の鉛蓄電池46を挟み込むことにより、第2の鉛蓄電池46の電槽47の底を熱拡散板58に押し付けている。
【0056】
したがって、第2の鉛蓄電池46は、第2の室25の上部領域33で熱拡散板58に熱的に接続されているとともに、第2の室25の上部領域33の定位置に保持されている。
【0057】
このことから、本実施形態では、第1の鉛蓄電池45および第2の鉛蓄電池46は、筐体3の高さ方向に沿って二段に積み上げられた状態で第2の室25に実装されている。
【0058】
このような構成の電子機器1において、例えば第1および第2の鉛蓄電池45,46が過充電の状態に陥ると、電槽47の内部の圧力上昇を抑えるために、上蓋48に内蔵された排気弁が開く。これにより、水素ガスが第1および第2の鉛蓄電池45,46から第2の室25に放出される。
【0059】
第2の室25は、本体4の側板7aに開口された換気口37を通じて筐体3の外に通じている。このため、第2の室25に放出された水素ガスは、換気口37から筐体3の外に排出され、水素ガスが第2の室25に充満することはない。
【0060】
しかも、本実施形態によると、第1および第2の鉛蓄電池45,46が収容された第2の室25と、電気回路モジュール40が収容された第1の室24との間が仕切り板22によって気密に仕切られている。このため、第1および第2の鉛蓄電池45,46から第2の室24に排出された水素ガスが第1の室24が流入することはなく、電気回路モジュールを水素ガスから保護することができる。
【0061】
一方、電子機器1の外気温が例えば−10℃以下となるような環境の下では、第1および第2の鉛蓄電池45,46の電圧が低下するのを防止するため、支持板30に支持されたシリコンラバーヒーター59を動作させて、第1および第2の鉛蓄電池45,46を保温する。
【0062】
具体的には、シリコンラバーヒーター59が発熱すると、シリコンラバーヒーター59の熱が熱拡散板58に伝わる。熱拡散板58は、第2の鉛蓄電池46の電槽47の底に接している。このため、シリコンラバーヒーター59の熱が第2の鉛蓄電池46に直に伝わり、第2の鉛蓄電池46を効率よく保温することができる。
【0063】
しかも、本実施形態によると、シリコンラバーヒーター59の熱は、電槽47の底と略同じ大きさを有する熱拡散板58の隅々まで拡散された状態で電槽47に伝わるので、電槽47の底を均等に温めることができる。
【0064】
この結果、第2の鉛蓄電池46が位置する第2の室25の上部領域33に換気口37が開口するにも拘らず、第2の鉛蓄電池46が換気口37から流入する外気の温度影響を受け難くなり、第2の鉛蓄電池46の保温効果を良好に維持することができる。
【0065】
さらに、シリコンラバーヒーター59は、支持板30に開けた開口部34から第2の室25の下部領域32の上端に露出されて、第1の鉛蓄電池45の上蓋48と向かい合っている。このため、シリコンラバーヒーター59の熱の一部は、開口部34から下部領域32に導かれて、第1の鉛蓄電池45を上方から温める。
【0066】
言い換えると、第1の鉛蓄電池45は、開口部34から下部領域32に向かうシリコンラバーヒーター59の輻射熱を受けることになり、電槽47の上部が局所的に温められる。この際、第1の鉛蓄電池45の性能および寿命は、電槽47の上部の温度の影響を受け易いために、第1の鉛蓄電池45をシリコンラバーヒーター59からの輻射熱で間接的に温める構成でありながら、第1の鉛蓄電池45の保温効果を高めることができる。
【0067】
それとともに、換気口37は、上部領域33の上部に位置するために、下部領域32に向かうシリコンラバーヒーター59の輻射熱が換気口37から筐体3の外に逃げ難くなる。
【0068】
以上のことから、第1の鉛蓄電池45と第2の鉛蓄電池46との間に介在された一つのヒーターモジュール57で第1および第2の鉛蓄電池45,46の双方を効率よく温めることができる。したがって、第1および第2の鉛蓄電池45,46が外気温の影響を受け難くなり、寒気による第1および第2の鉛蓄電池45,46の電圧の低下を防止することができる。
【0069】
加えて、本実施形態によると、仕切り板22、棚板28および支持板30は、筐体3の本体4の内側で互いに直交するように結合されて、本体4を内側から補強する補強部材(桁および梁)として機能する。
【0070】
そのため、本体4の剛性が向上し、支持板30の上に重量が嵩む第2の鉛蓄電池46を載置しても本体4の撓みを防止することができる。
【0071】
さらに、本体4、仕切り板22、棚板28および支持板30を構成する板金材の肉厚を薄くすることができ、筐体3の軽量化を図る上で好都合となるといった利点もある。
【0072】
前記実施形態では、仕切り板、棚板および支持板を本体に対しねじで固定したが、ねじの代わりにリベットを用いてもよいし、あるいはスポット溶接で堅牢に固定するようにしてもよい。
【0073】
さらに、第2の室を二つの支持板で上部領域、下部領域および中間領域の三つに領域に区分けし、各領域に鉛蓄電池を収容するようにしてもよい。
【0074】
加えて、鉛蓄電池を温めるヒーターにしてもシリコンラバーヒーターに特定されるものではなく、例えばニクロム線を用いた電気ヒーターを用いることができる。
【0075】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0076】
3…筐体、6…底板、7a,7b…側板、9…天板、22…仕切り板、24…第1の室、25…第2の室、30…支持板、32,33…領域(下部領域、上部領域)、34…開口部、37…換気口、40…電気回路モジュール、45,46…鉛蓄電池(第1の鉛蓄電池、第2の鉛蓄電池)、58…熱拡散板、59…ヒーター(シリコンラバーヒーター)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
換気口を有する筐体と、
前記筐体に設けられ、前記筐体の内部を第1の室と前記換気口が開口された第2の室とに気密に仕切る仕切り板と、
前記筐体に設けられ、前記第2の室を前記筐体の高さ方向に沿って複数の領域に分けるとともに、前記領域に連通された開口部を有する少なくとも一つの支持板と、
前記第1の室に収容された電気回路モジュールと、
前記第2の室の前記領域に収容された複数の鉛蓄電池と、
前記開口部を覆うように前記支持板に支持され、前記鉛蓄電池を保温するためのヒーターと、
を具備する電子機器。
【請求項2】
請求項1の記載において、前記支持板の上側に位置する前記領域に収容された前記鉛蓄電池は、前記ヒーターに熱的に接続される電子機器。
【請求項3】
請求項2の記載において、前記支持板の下側に位置する前記領域に収容された前記鉛蓄電池は、前記開口部を通じて前記ヒーターから輻射された熱を受ける電子機器。
【請求項4】
請求項1の記載において、前記ヒーターに熱的に接続される熱拡散板をさらに備え、前記熱拡散板は、前記ヒーターよりも大きな形状を有するとともに前記支持板に支持された電子機器。
【請求項5】
請求項4の記載において、前記熱拡散板は、前記支持板の上面に支持され、前記ヒーターは、前記熱拡散板と前記支持板との間に介在されるとともに、前記支持板の上側に位置する前記領域に収容された前記鉛蓄電池の底が前記熱拡散板に接触された電子機器。
【請求項6】
請求項5の記載において、前記ヒーターは、前記支持板の前記開口部を通じて前記支持板の下側に位置する前記領域に露出された電子機器。
【請求項7】
請求項5の記載において、前記換気口は、前記支持板の上側に位置する前記領域に開口された電子機器。
【請求項8】
請求項1の記載において、前記支持板は、前記筐体の内面と前記仕切り板との間に亘って水平に架設された電子機器。
【請求項9】
底板、左右の側板および天板を有するとともに、換気口が設けられた筐体と、
前記筐体の前記底板と前記天板との間に架け渡され、前記筐体の内部を第1の室と前記換気口が開口された第2の室とに気密に仕切る仕切り板と、
前記第2の室に露出された前記側板と前記仕切り板との間に架け渡され、前記第2の室を前記筐体の高さ方向に沿って複数の領域に分けるとともに、前記領域に連通された開口部を有する少なくとも一つの支持板と、
前記第1の室に収容された電気回路モジュールと、
前記第2の室の前記領域に収容された複数の鉛蓄電池と、
前記開口部を覆うように前記支持板に支持され、前記鉛蓄電池を保温するためのヒーターと、
を具備する電子機器。
【請求項10】
請求項9の記載において、前記ヒーターに熱的に接続される熱拡散板をさらに備え、前記熱拡散板は、前記ヒーターよりも大きな形状を有するとともに前記支持板に支持された電子機器。
【請求項11】
底板、左右の側板および天板を有するとともに、換気口が設けられた筐体と、
前記筐体の前記底板と前記天板との間に架け渡され、前記筐体の内部を第1の室と前記換気口が開口された第2の室とに気密に仕切る仕切り板と、
前記第2の室に露出された前記側板と前記仕切り板との間に架け渡され、前記第2の室を前記筐体の高さ方向に沿って複数の領域に分けるとともに、前記領域に連通された開口部を有する少なくとも一つの支持板と、
前記支持板の上に配置され、前記支持板の上側に位置する前記領域に露出された熱拡散板と、
前記支持板と前記熱拡散板との間に介在され、前記熱拡散板に熱的に接続されるとともに、前記支持板の前記開口部を通じて前記支持板の下側に位置する前記領域に露出されたヒーターと、
前記第1の室に収容された電気回路モジュールと、
前記第2の室の前記領域に収容された複数の鉛蓄電池と、
を具備する電子機器。
【請求項12】
請求項11の記載において、前記支持板の上側に位置する前記領域に収容された前記鉛蓄電池は、前記熱拡散板の上に載置されて前記熱拡散板に熱的に接続されるとともに、前記支持板の下側に位置する前記領域に収容された前記鉛蓄電池は、前記開口部から前記支持板の下側の前記領域に輻射された前記ヒーターの熱を受ける電子機器。
【請求項13】
請求項11又は請求項12の記載において、前記第1の室に露出された前記側板と前記仕切り板との間に架け渡された棚板をさらに備え、前記電気回路モジュールが前記棚板の上に載置された電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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