説明

電子機器

【課題】放熱効果を高めつつ、コンパクト化を図ること。
【解決手段】デジタルカメラ10の筐体内に、電池101を収納する電池室の一部を構成する金属シャーシ20と、金属シャーシ20と前カバー11とに接触して設けられる第1熱伝導シート16とを配置し、金属シャーシ20は、メイン回路基板21から受ける熱を、第1熱伝導シート16を介して前カバー11へ伝導する。また、メイン回路基板21のパッケージ21bとLCDシャーシ26とに接触して設けられる第2熱伝導シート25を配置し、LCDシャーシ26は、メイン回路基板21から受ける熱を、第2熱伝導シート25を介して後ろカバー12へ伝導する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放熱構造を有する電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルカメラは、高画質化とコンパクト化との両立が求められており、撮影の際の電力消費によってカメラ内部の電子部品からの発熱が増加する傾向にある。そのため、発熱する電子部品の熱を放熱する構造が必要とされている。その放熱構造として、CMOSイメージセンサーとメイン回路基板との間に金属製の放熱板を配置し、この放熱板に熱伝導部を設け、放熱板に伝わった熱を熱伝導部を介して周辺に放出することにより電子部品の温度上昇を抑制する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−93797号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、特許文献1の放熱構造に用いられる放熱板は、CMOSイメージセンサーやメイン回路基板と離れて配置されているため、製品の寸法が増し、コンパクト化に対する阻害要因となっている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明による電子機器は、被写体に面する前カバーと前記前カバーに対向して配置される後ろカバーとを有するカメラ筐体と、前記カメラ筐体内に配置され、電池を収納する電池室と、前記電池室の一部を構成する金属製の電池室シャーシと、前記電池室シャーシと前記前カバーとに接触して設けられ、前記電池室シャーシの熱を前記前カバーへ伝導する第1の熱伝導部材と、前記電池室シャーシの後方に前記電池室シャーシに対向して配置されるメイン回路基板と、を備え、前記電池室シャーシは、前記メイン回路基板から受ける熱を、前記第1の熱伝導部材を介して前記前カバーへ伝導することを特徴とする。
請求項2の発明による電子機器は、被写体に面する前カバーと前記前カバーに対向して配置される後ろカバーとを有するカメラ筐体と、前記カメラ筐体内に配置され、電池を収納する電池室と、前記電池室の一部を構成する金属製の電池室シャーシと、前記電池室シャーシと前記前カバーとに接触して設けられ、前記電池室シャーシの熱を前記前カバーへ伝導する第1の熱伝導部材と、前記電池室シャーシの後方に前記電池室シャーシに対向して配置されるメイン回路基板と、前記メイン回路基板と前記後カバーとの間に設けられるLCDシャーシと、前記メイン回路基板と前記LCDシャーシとに接触して設けられ、前記メイン回路基板の熱を前記LCDシャーシへ伝導する第2の熱伝導部材と、を備え、前記電池室シャーシは、前記メイン回路基板から受ける熱を、前記第1の熱伝導部材を介して前記前カバーへ伝導し、前記LCDシャーシは、前記メイン回路基板から受ける熱を、前記第2の熱伝導部材を介して前記後ろカバーへ伝導することを特徴とするを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の電子機器によれば、電池室シャーシがメイン回路基板から受けた熱を、電池室シャーシと前カバーとに接触して設けられている第1の熱伝導部材を介して前カバーへ伝導するので、放熱効果を高めつつ、コンパクト化を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の実施の形態に係るデジタルカメラの外観を模式的に示す斜視図である。
【図2】デジタルカメラを模式的に示す図であり、図2(a)は正面図、図2(b)は後面図である。
【図3】デジタルカメラの内部構成を示す図であり、図2(a)の矢視I−Iに沿って見たカメラの部分断面図である。
【図4】デジタルカメラの前方の構成部品の配置を示す分解斜視図である。
【図5】デジタルカメラの後方の構成部品の配置を示す分解斜視図である。
【図6】デジタルカメラのLCDシャーシを後ろカバーにセットした状態を示す図であり、図6(a)は正面図、図6(b)は上面図、図6(c)は下面図である。
【図7】デジタルカメラのLCDシャーシから後ろカバーまでの内部構成を示す図であり、図7(a)は後面図、図7(b)は図7(a)の矢視II−II断面図である。
【図8】デジタルカメラの電池室を模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態による電子機器、例えばデジタルカメラの構成について、図面を参照しながら説明する。
図1及び図2(a)に示されるように、デジタルカメラ10のカメラ筐体10Aは、撮影時に被写体に対向する前カバー11と、後ろカバー12と、上カバー13と、右カバー14と、左カバー15と、下カバー(不図示)とを有する。前カバー11にはホールド性向上のための突起11aが形成されている。撮影レンズ鏡筒18は、前カバー11の円開口11bから突出するように装着されている。上カバー13には、電源ボタン111、レリーズボタン112、撮影モードや再生モードを選択するためのモードダイヤル113が配設されている。
【0009】
図2(b)に示されるように、後ろカバー12には、LCD用の開口12aが形成され、メニューキー121やマルチセレクタ122などの背面操作部材が配設されている。メニューキー121は、撮影時や再生時に用いられるメニュー項目の表示/非表示を切り替える操作部材であり、マルチセレクタ122は、上下左右の4つのキー操作により目的とするメニュー項目にカーソルを合わせてカーソルを合わせたメニュー項目の機能を設定する操作部材である。
【0010】
図3は、図2(a)の矢視I−Iに沿って見たデジタルカメラ10の部分断面図である。
デジタルカメラ10の前から後ろ(図中、上から下)へ向かって、前カバー11、第1熱伝導シート16及び樹脂フレーム17、電池101を保持する金属シャーシ20、メイン回路基板21、第2熱伝導シート25、LCDシャーシ26、背面操作部材用のフレキシブルプリント配線板(FPC配線板)29a、FPC配線板29aを保持するFPCシャーシ29、背面操作部材用の基板31及び後ろカバー12が順に配置されている。第1熱伝導シート16と樹脂フレーム17の前後方向の位置は、ほぼ同じである。
【0011】
図3の右側に示すように、前カバー11に形成された円開口11b及び樹脂フレーム17に形成された円開口17bを通して撮影レンズ鏡筒18が装着されている。樹脂フレーム17は、前カバー11にほぼ平行に配置され、カメラ全体の機械的強度を保持する構成部材である。
【0012】
金属シャーシ20は、断面がほぼL字状であり、前カバー11及び後ろカバー12に平行配置される本体部20aと、本体部20aからほぼ垂直に前カバー11の方に折り曲げられた折曲部20bと、折曲部20bの先端に位置する先端部20cとを有する。図示のように、本体部20aと折曲部20bと右カバー14と樹脂フレーム17とによって電池101を収納する空間を形成するので、金属シャーシ20と右カバー14と樹脂フレーム17とは実質的に電池室を構成する。また、図示されていないが、電池101の上下をカバーする板状部材も電池室の構成部材である。なお、電池室をカメラの左側に設ける場合は、本体部20aに対する折曲部20bの位置を変えるとともに、右カバー14の代わりに左カバー15を用いる。
【0013】
金属シャーシ20の先端部20cは、樹脂フレーム17の開口部17aを通って第1熱伝導シート16を前カバー11の裏面に押圧し、樹脂フレーム17の一部である固定部17cは、先端部20cを前カバー11に押し付けた状態で固定する。これにより、金属シャーシ20、第1熱伝導シート16、前カバー11の隣接する各部材が接触した状態となる。金属シャーシ20は、熱伝導性の良いアルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金で製作するのが望ましいが、普通鋼、合金鋼、工具鋼、特殊鋼などを用いてもよいし、亜鉛合金、マグネシウム合金、金属粉を含有した樹脂などを用いてもよい。第1熱伝導シート16は、熱伝導率が高く弾力性をもつ材質、例えば、金属粉を含有した樹脂やゴムなどを用いるのが望ましい。
【0014】
金属シャーシ20の後方には、本体部20aに対して所定の間隔を開けてメイン回路基板21が対向配置されている。メイン回路基板21は、プリント基板21aと、このプリント基板21aに搭載されるパッケージ21bとを有する。パッケージ21bは、画像処理エンジンとして機能するCPU(電子回路)などを内蔵する。第2熱伝導シート25は、パッケージ21bのほぼ全面に接触して配設されている。第2熱伝導シート25も、第1熱伝導シート16と同様に、熱伝導率が高く弾力性をもつ材質、例えば、金属粉を含有した樹脂やゴムなどを用いるのが望ましい。
【0015】
第2熱伝導シート25の後方には、LCDシャーシ26が配置されており、第2熱伝導シート25は、LCDシャーシ26にも接触して配設されている。すなわち、第2熱伝導シート25は、その両面でパッケージ21b及びLCDシャーシ26に接触している。第2熱伝導シート25は、その全面がLCDシャーシ26に接触している。LCDシャーシ26の後方に、LCD用のフレキシブルプリント配線板(FPC配線板)27a、背面操作部材用のフレキシブルプリント配線板(FPC配線板)29a、FPCシャーシ29が配置され、最も後方に、背面操作部材用の基板31が装着されている後ろカバー12が配置されている。背面操作部材用の基板31の開口31aからマルチセレクタ122が突出している。
【0016】
LCDシャーシ26は、図中の左下に、紙面と直角方向に長い長穴26aを有する。図3では示していないが、後述するLCD用のFPC配線板27aの先端部分及び背面操作部材用のFPC配線板29aの先端部分は、この長穴26aを通ってメイン回路基板21のコネクタに接続される。LCDシャーシ26は、熱伝導性の良いアルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金で製作するのが望ましいが、普通鋼、合金鋼、工具鋼、特殊鋼などを用いてもよいし、亜鉛合金、マグネシウム合金、金属粉を含有した樹脂などを用いてもよい。
【0017】
図4、図5を参照しながら、デジタルカメラ10の構成部品の配置を説明する。図3では、デジタルカメラ10の右半分の部分断面図により構成部品とその配置を説明したが、図4、図5では、各部品の全体形状を示して説明する。
【0018】
図4に示されるデジタルカメラ10において、最も前に配置される前カバー11から最も後ろに配置される後ろカバー12まで順に説明する。上述したように、円開口11bが形成されている前カバー11と、電源ボタン111、レリーズボタン112及びモードダイヤル113が配設されている上カバー13と、右カバー14と、左カバー15と、下カバー(不図示)とによりカメラ筐体が構成される。
【0019】
前カバー11の後方には、第1熱伝導シート16、樹脂フレーム17、撮影レンズ鏡筒18及びレンズ駆動機構19が順に配置されている。樹脂フレーム17には、矩形開口17aと円開口17bとが形成されている。組立後は、撮影レンズ鏡筒18が樹脂フレーム17の円開口17b及び前カバー11の円開口11bを通してカメラの外部に突出する。
【0020】
デジタルカメラ10の右側においては、樹脂フレーム17の後方に、電池室の一部を構成する金属シャーシ20が配置されている。金属シャーシ20は、本体部20aと、折曲部20bと、折曲部20bの先端に位置する先端部20cとを有する。組立により、折曲部20bは、樹脂フレーム17の矩形開口17aを貫通して第1熱伝導シート16に当接し、第1熱伝導シート16を前カバー11の裏面に押し付けた状態となる。本体部20aと折曲部20bと右カバー14と樹脂フレーム17とによって電池101を収納するための断面が矩形の空間が形成される。
【0021】
金属シャーシ20の後方には、プリント基板21aと、電子回路を内蔵するパッケージ21bとを有するメイン回路基板21が配置されており、組立後は、金属シャーシ20とメイン回路基板21とは離間して配置される。パッケージ21bの後方には、第2熱伝導シート25が配置されており、組立後は、第2熱伝導シート25がパッケージ21bの全面に接触して配設される。さらに、第2熱伝導シート25の後方には、LCDシャーシ26が配置されており、組立後は、第2熱伝導シート25の全面がLCDシャーシ26に接触して配設される。
【0022】
図5は、図4に示したLCDシャーシ26から後方の構成部品の配置を示しており、デジタルカメラ10の前から後へ向かって、LCDシャーシ26、LCD27、LCDクッション枠28、LCD保護パネル30及び後ろカバー12が順に配置されている。LCD27はその右側にFPC配線板27aを有し、LCDクッション枠28の右側には、背面操作部材用のFPC配線板29aを保持するFPCシャーシ29が配置され、LCD保護パネル30の右側には、複数個の操作部材を搭載する背面操作部材用基板31が配置されている。なお、背面操作部材の1つであるマルチセレクタ122は、本実施の形態ではFPCシャーシ29に配設されている。後ろカバー12には、LCD27の表示画面用の開口12a及び背面操作部材用の開口12bが設けられている。
【0023】
LCDシャーシ26は、デジタルカメラ10の後面及び左右の側面のほぼ全域に拡がり、水平断面(横方向の切断面)が「コの字」状である。LCDシャーシ26は、LCD27を搭載する搭載部261と、搭載部261から右方向に延在する延在部262とを有し、延在部262の右端には縦長の長穴26aが形成されている。LCD27用FPC配線板27aの折り曲げられた先端部270a及び背面操作部材用FPC配線板29aの先端部は、部組により、この長穴26aを通ってメイン回路基板21のコネクタ(不図示)に接続される。長穴26aは、FPC配線板27aの先端部270a及びFPC配線板29aの先端部を通過させるのに必要十分な大きさを有していればよいので、延在部262として大きな面積をとることができる。これは、パッケージ21bの大きさが大きくなり、第2熱伝導シート25の面積が広くなっても対応できるという利点がある。
【0024】
LCDクッション枠28は、弾性力を有した枠(例えばゴム、スポンジ製)であり、LCD27の厚み寸法が誤差を持った場合でもLCDシャーシ26と確実に接触させる。
LCD保護パネル30は、例えば透明アクリル樹脂製であり、液晶の表示画面に対する傷や汚れを防止する。LCD保護パネル30は、部組により、後ろカバー12の開口12bに密着してセットされる。また、マルチセレクタ122や背面操作部材用基板31に配設された各種の操作部材は、部組により、後ろカバー12の開口12bなどを通して外部に突出する。最後に、LCDシャーシ26を後ろカバー12に、溶着、接着、スナップフィット、ビス締結などを行うことによって部組が完成する。
【0025】
LCDシャーシ26から後ろカバー12までの部組完成品は、前カバー11から第2熱伝導シート25までの前方に配置される構成部品とともに組み立てられてデジタルカメラ10が完成する。組立後は、第2熱伝導シート25の全面がLCDシャーシ26に接触して配設され、LCD27用FPC配線板27aの先端部270a及び背面操作部材用FPC配線板29aの先端部は、長穴26aを通ってメイン回路基板21のコネクタ(不図示)に接続される。
【0026】
図6(a)は、LCDシャーシ26を後ろカバー12にセットした状態でカメラ前方(被写体側)から見た正面図であり、図6(b)は上面図、図6(c)は下面図である。LCDシャーシ26は、前述したように、カメラ後面及び左右の側面のほぼ全域に延在し、長穴26aは、カメラ前方から見てLCDシャーシ26の左端に上下に長く伸びた形状を呈している。長穴26aの上部は、背面操作部材用FPC配線板29aの先端部が通過し、長穴26aの下部は、LCD27用FPC配線板27aの先端部270aが通過する。図6(b)の上面図では、背面操作部材用FPC配線板29aの先端部が示され、図6(c)の下面図では、LCD27用FPC配線板27aの先端部270aが示されている。
【0027】
図7は、LCDシャーシ26から後ろカバー12までの部組完成品の内部構成を示す図である。図7(a)の後面図を参照すると、後ろカバー12には、LCD27用の開口12aが形成され、メニューキー121やマルチセレクタ122などの背面操作部材が配設されている。
また、図7(b)の矢視II−II断面図を参照すると、LCDシャーシ26の搭載部261から後ろカバー12までの間には、LCD27、LCDクッション枠28、LCD保護パネル30が順に配置され、LCDシャーシ26の延在部262から後ろカバー12までの間には、LCD27用FPC配線板27a、背面操作部材用基板31及びマルチセレクタ122が配設されている。LCD27用FPC配線板27aの先端部270aは、長穴26aを通過してカメラ前方(図中では、下方)へ伸びている。
【0028】
このように構成されたデジタルカメラ10において、内蔵する構成部品の熱伝導による放熱プロセスを以下説明する。
デジタルカメラ10の発熱源は、主としてメイン回路基板21と電池101の2つである。デジタルカメラには高画質化とコンパクト化との両立が求められており、特に撮影時には、撮影条件の設定、画像処理、画像の保存などのためにメイン回路基板21の電力消費が多くなり、その分だけメイン回路基板21からの発熱量が増大して温度が上昇する。コンパクト化を達成するためにカメラ筐体内に構成部品を密に詰め込むと、より一層筐体内の温度上昇を招きやすい。また、メイン回路基板21の電力消費の増大に伴って電池101の温度も上昇する。
【0029】
−第1熱伝導シート16を介するカメラ前方への放熱プロセス−
第1熱伝導シート16は、図3に示されるように、金属シャーシ20の先端部20cに接触して、前カバー11の裏面に当接している。メイン回路基板21で発生した熱は、輻射及び対流によって金属シャーシ20の本体部20aへ伝わる。金属シャーシ20は、熱伝導率が高い材料で作製されているため、本体部20aが受けた熱は、短時間で折曲部20bの先端、すなわち先端部20cまで伝わる。先端部20cの熱は、第1熱伝導シート16を介して前カバー11の裏面へ伝達され、前カバー11の外側表面から大気中へ放出される。金属シャーシ20から前カバー11までは部品同士が接触しているので、熱伝導により効率的に伝熱が生じる。
【0030】
一方、電池101で発生した熱は、金属シャーシ20の本体部20a及び折曲部20bへ伝わり、金属シャーシ20では最も温度が低い折曲部20cまで伝わる。上述したように、先端部20cの熱は、第1熱伝導シート16を介して前カバー11の裏面へ伝達され、前カバー11の外側表面から大気中へ放出される。
【0031】
このように、メイン回路基板21の熱も電池101の熱も、金属シャーシ20から第1熱伝導シート16を介して前カバー11へ熱伝導で伝わり、前カバー11の外側表面から外界へ放出される。これにより、カメラ筐体10A内部の温度上昇を防止することができる。
【0032】
−第2熱伝導シート25を介するカメラ後方への放熱プロセス−
第2熱伝導シート25は、図3に示されるように、その両面で、メイン回路基板21とLCDシャーシ26とに接触した状態で配設されている。メイン回路基板21で発生した熱は、輻射及び対流によってカメラの前方へ伝達されるとともに、熱伝導によってカメラの後方へも伝達される。すなわち、メイン回路基板21の熱は、パッケージ21bに接触している第2熱伝導シート25を介してLCDシャーシ26へ伝わる。LCDシャーシ26は、熱伝導率が高い材料で作製されているため、第2熱伝導シート25を介して受けた熱は、短時間でLCDシャーシ26の全体に拡がる。LCDシャーシ26の熱は、主として輻射及び対流によって後ろカバー12の内側表面に伝わり、後ろカバー12の外側表面から大気中へ放出される。
【0033】
メイン回路基板21からLCDシャーシ26までは部品同士が接触しているので、熱伝導により効率的に伝熱が生じる。さらに、LCDシャーシ26は、カメラの後面をほぼ覆う大きな面積を有しているため、輻射及び対流によって伝達される熱量が多い。
このように、メイン回路基板21の熱は、熱伝導によって第2熱伝導シート25を介してLCDシャーシ26へ伝わり、LCDシャーシ26へ伝わった熱は、輻射及び対流によって後ろカバー12へ伝わり、後ろカバー12の外側表面から外界へ放出される。これにより、カメラ筐体10A内部の温度上昇を防止することができる。
【0034】
本実施の形態のデジタルカメラ10は、次の作用効果を奏する。
(1)カメラ前方への放熱プロセスは、金属シャーシ20の本体部20aが受けた熱を先端部20cまで伝え、先端部20cの熱を第1熱伝導シート16を介して前カバー11の裏面へ伝達し、前カバー11の外側表面から大気中へ放出する。金属シャーシ20から前カバー11までは部品同士が接触しているので、コンパクト化を図れるとともに熱伝導によって早く効率的に熱を伝えることができる。
(2)カメラ前方への放熱プロセスでは、金属シャーシ20を熱伝導率が高い材料で作製したので、本体部20aが受けた熱は、短時間で先端部20cまで伝えることができる。
(3)カメラ後方への放熱プロセスは、メイン回路基板21の熱をパッケージ21bに接触している第2熱伝導シート25を介してLCDシャーシ26へ伝え、LCDシャーシ26の熱を後ろカバー12の内側表面に伝え、後ろカバー12の外側表面から大気中へ放出する。メイン回路基板21からLCDシャーシ26までは部品同士が接触しているので、コンパクト化を図れるとともに熱伝導によって効率的に伝熱が生じる。
(4)カメラ後方への放熱プロセスでは、LCDシャーシ26を熱伝導率が高い材料で作製するとともに、カメラの後面全体をカバーするほどの大面積で作製したので、短時間で多量の熱量を後ろカバー12へ伝達することができる。特に、LCDシャーシ26の延在部262は、大きな面積をとることができるので、第2熱伝導シート25の面積が広くなっても対応できる。
(5)パッケージ21bの全面が第2熱伝導シート25に接触し、第2熱伝導シート25の全面がLCDシャーシ26に接触しているので、メイン回路基板21の発熱を早くLCDシャーシ26へ伝えることができる。
【0035】
本実施の形態の変形例は以下のとおりである。
(1)本実施の形態のデジタルカメラ10は、第1熱伝導シート16と第2熱伝導シート25とを備え、メイン回路基板21から金属シャーシ20が受けた熱は第1熱伝導シート16を介してカメラ前方へ伝導するとともに、メイン回路基板21の熱を第2熱伝導シート25を介してLCDシャーシ26へ伝え、LCDシャーシ26が受けた熱をカメラ後方へ伝導する機能をもっていたが、第2熱伝導シート25を省略し、主としてカメラ前方への熱伝達によって放熱する構成も本発明に含まれるものである。
(2)本実施の形態のデジタルカメラ10は、金属シャーシ20と右カバー14と樹脂フレーム17とにより電池室を構成するものであったが、右カバー14と樹脂フレーム17を使用せずに専用の部材を使って電池室を構成してもよい。
すなわち、図8に示されるように、右カバー14の代わりに板状部材201を用い、樹脂フレーム17の代わりに絶縁性をもつプラスチック製の板状部材202を用いて、金属シャーシ20の本体部20aと、曲折部20bと、2つの板状部材201、202とにより電池室を構成してもよい。
(3)第1熱伝導シート16及び第2熱伝導シート25は、いずれも形状は矩形であったが、接触する相手部品に合わせて形状を変えてもよい。また、伝熱量を多くするために、第1熱伝導シート16及び第2熱伝導シート25は、接触する相手部品の面積に応じて最大の面積をとることが望ましい。
【0036】
本発明は、その特徴を損なわない限り、以上説明した実施の形態に何ら限定されるものではない。
【符号の説明】
【0037】
10:デジタルカメラ 10A:カメラ筐体
11:前カバー 12:後ろカバー
14:右カバー 15:左カバー
16:第1熱伝導シート 17:樹脂フレーム
20:金属シャーシ 20a:本体部
20b:折曲部 20c:先端部
21:メイン回路基板 21a:プリント基板
21b:パッケージ 25:第2熱伝導シート
26:LCDシャーシ 26a:長穴
27:LCD 27a:LCD用FPC配線板
29:FPCシャーシ 29a:背面操作部材用FPC配線板
261:搭載部 262:延在部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体に面する前カバーと前記前カバーに対向して配置される後ろカバーとを有するカメラ筐体と、
前記カメラ筐体内に配置され、電池を収納する電池室と、
前記電池室の一部を構成する金属製の電池室シャーシと、
前記電池室シャーシと前記前カバーとに接触して設けられ、前記電池室シャーシの熱を前記前カバーへ伝導する第1の熱伝導部材と、
前記電池室シャーシの後方に前記電池室シャーシに対向して配置されるメイン回路基板と、を備え、
前記電池室シャーシは、前記メイン回路基板から受ける熱を、前記第1の熱伝導部材を介して前記前カバーへ伝導することを特徴とする電子機器。
【請求項2】
被写体に面する前カバーと前記前カバーに対向して配置される後ろカバーとを有するカメラ筐体と、
前記カメラ筐体内に配置され、電池を収納する電池室と、
前記電池室の一部を構成する金属製の電池室シャーシと、
前記電池室シャーシと前記前カバーとに接触して設けられ、前記電池室シャーシの熱を前記前カバーへ伝導する第1の熱伝導部材と、
前記電池室シャーシの後方に前記電池室シャーシに対向して配置されるメイン回路基板と、
前記メイン回路基板と前記後カバーとの間に設けられるLCDシャーシと、
前記メイン回路基板と前記LCDシャーシとに接触して設けられ、前記メイン回路基板の熱を前記LCDシャーシへ伝導する第2の熱伝導部材と、を備え、
前記電池室シャーシは、前記メイン回路基板から受ける熱を、前記第1の熱伝導部材を介して前記前カバーへ伝導し、
前記LCDシャーシは、前記メイン回路基板から受ける熱を、前記第2の熱伝導部材を介して前記後ろカバーへ伝導することを特徴とする電子機器。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電子機器において、
前記メイン回路基板は、前記電池室シャーシと離間して配置されることを特徴とする電子機器。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の電子機器において、
前記前カバーと前記電池室シャーシとの間に前記前カバーとほぼ平行に配置された、開口部が設けられた樹脂フレームを更に備え、
前記カメラ筐体は、前記前カバーと後ろカバーとを接続する右側および左側カバーを更に有し、
前記電池室シャーシは、前記前カバーにほぼ平行に延在する本体部と、前記本体部の端からほぼ垂直に前記前カバーの方へ折れ曲がった折曲部と、前記折曲部の先端に位置する先端部とを有し、
前記電池室は、断面が矩形の電池収納空間を有し、
前記収納空間は、前記電池室シャーシの本体部および折曲部と、前記右側および左側カバーの一方と、前記樹脂フレームとによって形成され、
前記先端部は、前記樹脂フレームの開口部を貫通して前記第1の熱伝導部材を前記前カバーに押圧することを特徴とする電子機器。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の電子機器において、
前記電池室シャーシは、前記電池が発生する熱を、前記第1の熱伝導部材を介して前記前カバーへ伝導することを特徴とする電子機器。
【請求項6】
請求項2に記載の電子機器において、
前記メイン回路基板は、ICパッケージと、このICパッケージを搭載するプリント基板とを含み、
前記第2の熱伝導部材は、前記ICパッケージのほぼ全面に接触して設けられていることを特徴とする電子機器。
【請求項7】
請求項2に記載の電子機器において、
前記LCDシャーシと前記後ろカバーとの間に配置され、フレキシブルプリント配線板が接続されたLCDを更に備え、
前記LCDシャーシは、前記後ろカバーにほぼ平行に並置され、前記LCDを搭載する搭載部と、前記搭載部の端から延在する延在部と、前記延在部に穿設された開口部とを有し、
前記第2の熱伝導部材は、前記延在部の前記前カバー側の表面に当接し、
前記フレキシブルプリント配線板は、前記延在部の開口部を貫通して前記メイン回路基板に接続されることを特徴とする電子機器。










【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−88519(P2013−88519A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−227088(P2011−227088)
【出願日】平成23年10月14日(2011.10.14)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】