説明

電子移動剤のホスフェート誘導体を含有する処方

【課題】治療剤生成物の効能に対して有害効果を有さず、そしてモノ電子移動剤ホスフェート誘導体の皮膚浸透および/または効能を高める有益性をもたらすことになる相乗効果を奏する組成物を提供する。
【解決手段】(a)少なくとも1種のモノ電子移動剤ホスフェート誘導体、(b)少なくとも1種のジ電子移動剤ホスフェート誘導体(モノ電子移動剤ホスフェート誘導体の量が、ジ電子移動剤ホスフェートの量と等モル以上である)、および(c)適当な担体を含む、治療投与用のエマルション組成物が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子移動剤のホスフェート誘導体を含有する治療用処方に関する。とりわけ、本発明は、モノ電子移動剤ホスフェート誘導体およびジ電子移動剤ホスフェート誘導体を含有する治療用処方に関する。
【0002】
本発明はまた、界面活性剤を含有する洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
本明細書において、知識についての文書、行為または事項が言及または議論される場合、この言及または議論は、知識についての該文書、行為もしくは事項またはそれらのいずれかの組合わせが優先日において、(a)一般常識の一部であった、または(b)本明細書がかかわるいずれかの問題を解決しようとする試みに関係があると知られていた、という自認と見なされるべきでない。
【0004】
次の議論はトコフェロールおよび皮膚治療に関わるが、電子移動剤を含有する治療用処方が使用可能ないかなる用途にも同じ原理が適用されることも理解されるべきである。
【0005】
皮膚は体の最大の器官であり、そしてとりわけ、内部器官を外部の化学的、物理的および病理学的危険から保護するよう機能する。正常な皮膚は、各層が異なる区域より成る複数の皮下層を覆う外面表皮で構成されている。表皮の外面角質化層は強度、可撓性、高い電気インピーダンスおよび乾燥度(dryness)の性質を有し、微生物の浸透および増殖を遅らせる。この角質化保護層は、真皮と表皮の接合部にて形成される成熟しつつあるケラチノサイトの移行により形成される。
【0006】
ビタミンE(トコフェロール)は皮膚のダイナミクスの必須部分であり、そして皮膚の健康にとって非常に重要であると知られており、その欠乏は、角質化した鱗片状の弱い皮膚、厚くなった表皮、落屑、発疹、慢性感染症、炎症および紅斑として現れる。ビタミンEは、皮膚をストレスから保護する主要な天然に存在する脂溶性薬剤であり、また細胞膜脂質を過酸化から保護する主要な脂溶性薬剤である。
【0007】
皮膚は、日々の要素−日光、風および水−への暴露に因り、絶え間ないストレスを受ける。その結果、ローション、モイスチャライザー、シャンプーおよびコンディショナーのような多くの局所用パーソナルケア製品は、通常、皮膚の健康を維持するのを助けるために、ビタミンEを種々の形態にて含有する。皮膚の健康を維持するのを助けるために、ビタミンEは真皮の標的域に達することが必要である。このターゲティングを達成する多くの直接法は、局所用処方を疾患域に適用することである。しかしながら、現在の処方を用いての皮膚へのビタミンEの局所適用は、多くの外部要素に対する不浸透性バリヤーを築くべき皮膚の能力に因り、その成功変動しやすい。表皮を通じての真皮へのビタミンEの浸透をもたらすことが決定的に重要である。
【0008】
遊離トコフェロールの使用は、それが不安定である故避けられ、それ故適当な誘導体が見出されねばならない。消化管において、トコフェロールのエステル典型的にはアセテートエステルから遊離トコフェロールを放出するリパーゼ活性があることが見出されている。このリパーゼ活性は、ビタミンEの栄養源としてのトコフェリルアセテートの使用を可能にする。
【0009】
対照的に、皮膚の表面は、皮脂排泄物を消化することのできる微生物に感染されていなければリパーゼ活性を欠いている。かくして、トコフェリルアセテートは、最初に表皮を通じて活力のある真皮(真皮において、細胞は、非常に限られたビタミンE放出リパーゼ活性を有する)中に拡散しなければならない。トコフェロールアセテートを用いての局所用処方は、表皮層を越えて適切なトコフェロールを送達することができなかったと信じられ、そしてそれ故ほとんど有益性をもたらさない。トコフェリルアセテートは水中油型エマルションでもっての処方を必要とする脂質物質であるので、かかる処方からの吸収は、最適より小さい。
【0010】
表皮は、トコフェリルホスフェートのような水溶性物質に対して透過性である。今日まで、トコフェリルホスフェートを含有する処方の製造者は、リン酸化中生成された混合物から単離されたモノトコフェリルホスフェートを利用した。リン酸化は、典型的には、オキシ塩化リンを用いて達成されてきた。副生成物のすべてが水溶性であるとは限らない故副生成物はモノトコフェリルホスフェートの効能に有害であると信じられた故、生成物は精製された。認知された有害効果は、複雑な精製方法のコストを容認するのに充分に有意であると考えられた。典型的には、精製は、エタノールを用いてジトコフェリルホスフェートおよび遊離トコフェロール副生成物を抽出することにより遂行される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
未精製または半精製電子移動剤リン酸化治療剤生成物の使用が有効である、ということが見出された。特に、非水溶性ジ電子移動剤ホスフェート誘導体は、該治療剤生成物の効能に対して有害効果を有さず、そしてモノ電子移動剤ホスフェート誘導体の皮膚浸透および/または効能を高める有益性をもたらすことになる相乗効果を奏することもできる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1の面によれば、(a)少なくとも1種のモノ電子移動剤ホスフェート誘導体、(b)少なくとも1種のジ電子移動剤ホスフェート誘導体であって、該モノ電子移動剤ホスフェート誘導体の量が、ジ電子移動剤ホスフェート誘導体の量と等モル以上であるもの、および(c)適当な担体、を含む治療投与用のエマルション組成物が提供される。
【0013】
本発明の第2の面によれば、(a)少なくとも1種のモノ電子移動剤ホスフェート誘導体、(b)少なくとも1種のジ電子移動剤ホスフェート誘導体であって、該モノ電子移動剤ホスフェート誘導体の量が、ジ電子移動剤ホスフェート誘導体の量と等モル以上であるもの、および(c)適当な担体を含むエマルション組成物を投与する工程を含む、電子移動剤ホスフェート誘導体を対象者に投与する方法が提供される。
【0014】
本発明は、以下の態様[1]〜[9]を含むことができる。
【0015】
[1] (a)少なくとも1種のモノ電子移動剤ホスフェート誘導体、(b)少なくとも1種のジ電子移動剤ホスフェート誘導体であって、該モノ電子移動剤ホスフェート誘導体の量が、ジ電子移動剤ホスフェート誘導体の量と等モル以上であるもの、および(c)適当な担体を含む治療(therapeutic)投与用のエマルション組成物。
【0016】
[2] モノ電子移動剤ホスフェート誘導体に対するジ電子移動剤ホスフェート誘導体のモル比が、85:15から65:35の範囲にある、[1]に記載の組成物。
【0017】
[3] モノ電子移動剤ホスフェート誘導体およびジ電子移動剤ホスフェート誘導体が、アルファ−トコフェロールから誘導されている、[1]に記載の組成物。
【0018】
[4] モノ電子移動剤ホスフェート誘導体およびジ電子移動剤ホスフェート誘導体が、両性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、窒素官能基を有するアミノ酸、およびこれらのアミノ酸に富むタンパク質から選択された錯化剤で錯化されている、[1]に記載の組成物。
【0019】
[5] (a)少なくとも1種のモノ電子移動剤ホスフェート誘導体、(b)少なくとも1種のジ電子移動剤ホスフェート誘導体であって、該モノ電子移動剤ホスフェート誘導体の量が、ジ電子移動剤ホスフェート誘導体の量と等モル以上であるもの、および(c)適当な担体を含むエマルション組成物を投与する工程を含む、電子移動剤のホスフェート誘導体を対象者に投与する方法。
【0020】
[6] (a)P10を用いて1種またはそれ以上の電子移動剤をリン酸化して(phosphorylating)、少なくとも1種のモノ電子移動剤ホスフェート誘導体と少なくとも1種のジ電子移動剤ホスフェート誘導体の混合物を形成させ、しかもモノ電子移動剤ホスフェート誘導体の量が、ジ電子移動剤ホスフェート誘導体の量と等モル以上であり、(b)モノ電子移動剤ホスフェート誘導体とジ電子移動剤ホスフェート誘導体の該混合物を適当な担体と組合せる、工程を含む、電子移動剤のホスフェート誘導体を含有する治療用処方を製造する方法。
【0021】
[7] (a)少なくとも1種のモノトコフェリルホスフェート誘導体、(b)少なくとも1種のジトコフェリルホスフェート誘導体であって、該モノトコフェリルホスフェート誘導体の量は、ジトコフェリルホスフェート誘導体の量と等モル以上であるもの、および、(c)適当な担体、を含む、局所適用(application)用のエマルション組成物。
【0022】
[8] モノトコフェリルホスフェート、その塩およびそれらの混合物から成る群から選択された界面活性剤を含む組成物。
【0023】
[9] モノトコフェリルホスフェート、その塩およびそれらの混合物から成る群から選択された界面活性剤を添加することにより、組成物の界面活性および洗浄力(detergency)を増加する方法。
【発明を実施するための形態】
【0024】
用語「電子移動剤」は、本明細書において、リン酸化され得かつ(非リン酸化形態にて)1個の電子を受け取って比較的安定な分子ラジカルを発生し得るかまたは2個の電子を受け取ってその化合物が可逆的レドックス系に参加することが可能になり得る化学物質のクラスを指すために用いられる。リン酸化され得る電子移動剤化合物のクラスの例は、エナンチオマーおよびラセミ体の形態のアルファ、ベータおよびガンマトコフェロール、トコールおよびトコトリエノールを含めてヒドロキシクロマン;ビタミンK1およびユビキノンの還元形態であるキノール;レチノールを含めてヒドロキシカロテノイド;並びにアスコルビン酸を包含する。
【0025】
電子移動剤のホスフェート誘導体は、リン酸基のリン原子に酸素により共有結合された化合物を含む。該酸素原子は、典型的には、電子移動剤におけるヒドロキシル基に由来する。ホスフェート誘導体は、遊離ホスフェート酸、その塩、ジホスフェートエステル(それにより2分子の電子移動剤を含む)、電子移動剤から選択された2種の異なる化合物を含む混合エステル、遊離ホスフェート酸素がアルキルもしくは置換アルキル基との結合を形成しているホスファチジル化合物、または両性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、窒素官能基を有するアミノ酸もしくはこれらのアミノ酸に富むタンパク質から選択された錯化剤との錯体の形態にて存在し得る。
【0026】
モノトコフェロールホスフェート誘導体の許容され得る塩の例は、二ナトリウム、二カリウム、二リチウム、二マグネシウム、一ナトリウム、一カリウム、一リチウムもしくは一マグネシウム塩またはそれらの混合物から成る群から選択される。好ましくは、ジトコフェリルホスフェート誘導体の許容され得る塩は、ナトリウム、カリウム、リチウムまたはマグネシウム塩から選択される。ジトコフェリルホスフェート誘導体は、通常、モノトコフェリルホスフェート誘導体の二金属塩を形成することが必要とされる環境において塩を形成するのみである。
【0027】
好ましくは、モノ電子移動剤ホスフェート誘導体に対するジ電子移動剤ホスフェート誘導体のモル比は、85:15から65:35の範囲にある。エマルションを形成するのにかつモノ電子移動剤ホスフェート誘導体が完全に溶解するのを防ぐのに充分なジ電子移動剤ホスフェート誘導体が存在しなければならないが、しかし沈殿があるほど多いジ電子移動剤ホスフェート誘導体が存在してはならない。
【0028】
モノ電子移動剤ホスフェート誘導体とジ電子移動剤ホスフェート誘導体の混合物は、精製された個々の成分を再び組合せることによりまたはリン酸化法の未精製または半精製反応生成物を用いることにより、製造され得る。好ましくは、該混合物は、リン酸化法の反応生成物を用いることにより得られる。トコフェリルホスフェート誘導体の混合物の源は、好ましくは、P10を用いてのトコフェロールのリン酸化の反応生成物である。
【0029】
用語「許容され得る担体」は、本明細書において、薬、食品または化粧品技術における当業者により、非経口用または経腸用処方にて人間、動物または植物を処置するために用いられる場合に無毒であると考えられる担体を指すために用いられる。選ばれる担体は、投与経路に依存する。摂取可能な処方は、タブレット、カプセル、粉末、そしゃくタブレット、カプセル、経口用懸濁液、小児用処方、経腸用飼料、栄養薬効品および機能性食品を包含する。局所適用について、担体は、典型的には、水、グリセロール、ポリエチレングリコール、ソルビトールまたはプロパノールのような親水性物質を含む。たとえば、組成物は、局所適用として、シャンプー、ヘアコンディショナー、潤い付与性のクリームもしくはローション、またはリップスティックとして使用可能な。
【0030】
本発明の第3観点によれば、電子移動剤のホスフェート誘導体を含有する治療用処方を製造する方法であって、次の工程すなわち(a)P10を用いて1種またはそれ以上の電子移動剤をリン酸化して、少なくとも1種のモノ電子移動剤ホスフェート誘導体と少なくとも1種のジ電子移動剤ホスフェート誘導体の混合物を形成させ、しかもモノ電子移動剤ホスフェート誘導体の量が、ジ電子移動剤ホスフェート誘導体の量と等モル以上であり、そして(b)モノ電子移動剤ホスフェート誘導体とジ電子移動剤ホスフェート誘導体の該混合物を適当な担体と組合せる工程を含む方法がある。
【0031】
モノ電子移動剤ホスフェート誘導体は良好な水溶性を有し、それ故それらが皮膚または毛髪中に吸収され得る前に、水性の局所適用用組成物は乾燥しなければならない。対照的に、ジ電子移動剤ホスフェート誘導体は水溶性でなく、そして水および他の親水性溶媒で乳化される場合不安定なエマルションの形成を引き起こす。理論により縛られることを欲しないが、皮膚は疎水性であり、従って組成物が皮膚上に延展される時、エマルション中の液滴が皮膚に引きつけられる、ということが記される。これらのミセルは疎水性表面近くで不安定になりそして壊れ、その結果モノ電子移動剤ホスフェート誘導体が皮膚上に放出される。モノ電子移動剤ホスフェート誘導体は、次いで表皮を通じて真皮中に拡散し得る。それ故、ジ電子移動剤ホスフェート誘導体(かって厄介な副生成物と考えられた)は、モノ電子移動剤ホスフェート誘導体用の有効な展着剤として機能する。
【0032】
やはり理論により縛られることを欲しないが、摂取されることになっている製品は、吸収を容易にするために、洗浄力および適切な界面張力を含めていくつかのタイプの界面活性を有することが必要であると考えられる。モノ電子移動剤ホスフェート誘導体は強い洗浄力を有し得るが、しかし充分な界面張力効果を有さない。それ故、モノ電子移動剤ホスフェート誘導体と、両タイプの界面活性すなわち洗浄力および強い界面張力を含む自己乳化性を有するジ電子移動剤ホスフェート誘導体との混合物は、特に小腸において、より良好に吸収される。
【0033】
驚くべきことに、更に、純モノトコフェリルホスフェートおよびその塩は強力な界面活性剤かつ洗浄剤であって、安定な泡を与える、ということが見出された。
【0034】
本発明の第4観点によれば、モノトコフェリルホスフェート、その塩およびそれらの混合物から成る群から選択された界面活性剤を含む洗浄剤組成物が提供される。
【0035】
モノトコフェリルホスフェート、その塩およびそれらの混合物から成る群から選択された界面活性剤を添加することにより、組成物の界面活性および洗浄力を増加する方法も提供される。
【0036】
やはり理論により縛られることを欲しないが、この洗浄性は、モノトコフェリルホスフェートが極性頭部および非極性尾部の形態にあるということに因り得る、と考えられる。対照的に、ジトコフェリルホスフェートは、2つの非極性尾部および1つの極性中心基(界面活性にする)を有するが、しかしそれは洗浄剤でなく、何故なら高濃度においてそれは組成物の表面層中に蓄積しそして破泡剤として働く(表面が主として非極性になる故)からである。

さて、本発明は、次の非制限的例を参照することにより、更に例示および説明される。例1
この例において、本発明による治療用処方が、電子移動剤としてトコフェロールを用いて製造された。
トコフェリルホスフェート混合物の製造
500gのdl−アルファ−トコフェロールを取り、そして高剪断混合機でもって各々21gのP10の4つのアリコートと、12分間隔にて、温度を60℃より高く維持しながら混合した。この混合物が依然熱い間に、62.5gの水中に溶解された91.5gの水酸化ナトリウムを50℃にて1.5時間かけて添加して、トコフェリルホスフェートを加水分解および中和した。この生成物を周囲温度に冷却し、そして次いで液体窒素でもって更に冷却して脆い生成物が得られ、しかしてこの生成物を粉末に粉砕しそして真空下で乾燥した。
【0037】
モノトコフェリルホスフェート対ジトコフェリルホスフェートのモル比は、おおよそ70:30であった。この生成物は、モノおよびジナトリウムトコフェリルホスフェート(おおよそ65〜85モル%)、ナトリウムジトコフェリルホスフェート(おおよそ10〜35モル%)および若干のナトリウムジトコフェリルピロホスフェートを含有していた。
局所用処方の製造および適用
この乾燥された粉末を、5%溶液として水中に分散した。10mlのこの溶液を手に適用して、皮膚へのトコフェリルホスフェートの満足な適用が得られた。例2
本発明によるモノおよびジトコフェリルホスフェートの混合物の皮膚浸透性を、トコフェリルアセテートと比較した。
試験処方
試験物質は、95/5の蒸留水/エタノールから成る賦形剤中5%混合活性物質(モノトコフェリルホスフェート(TP)、ジトコフェリルホスフェート(T2P)またはトコフェリルアセテート)に基づいて組成され、しかもpHが調整される(必要なら、クエン酸または希薄NaOHでもって6.5〜7.0に)。
TPおよびT2P(混合ナトリウム塩)
93.75w/w%の95/5の水/エタノール混合物中の6.25w/w%の80%混合TPおよびT2Pのスラリーを製造した。
【0038】
【表1】

【0039】
錯化されたTPおよびT2P
用いられたTPC(錯化されたトコフェリルホスフェート)は、ラウリルイミノプロピオン酸(Deriphat 160)およびトコフェリルホスフェートから形成された界面活性両性物質ホスフェートエステル錯体であるラウリルイミノジプロピオン酸トコフェリルホスフェートであった。その溶液は40%活性混合ホスフェートに基づいており、しかして後者は60/40の両性物質/混合ホスフェートの重量比(1.9−1のモル比)にて反応/化合されている。12.5w/w%の該錯体を、87.5w/w%の95/5の水/エタノール混合物中に溶解した。
【0040】
【表2】

【0041】
トコフェリルアセテート
トコフェリルアセテートは、Roche/BASFから得られる。5.0w/w%のトコフェリルアセテートを、95.0w/w%の95/5の水/エタノール混合物中に分散した。
方法
試験処方は、試験管内での人間の皮膚の浸透調査にて評価される。試料は、モノおよびジトコフェリルホスフェート、遊離アルファ−トコフェロール、およびトコフェリルアセテートについて、高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)により分析される。試験は、DermTech International(カリフォルニア州サンディエゴ)により行われる。人間の死体の皮膚の試料が、入手されて準備される。各処方は、各提供者からの三重反復試料片について、5μL/cmの局所適用投与量にて評価される。受容体溶液を、前もって選定された時間間隔にて48時間にわたって集める。48時間後、皮膚表面をイソプロピルアルコールで洗浄し、そしてこの皮膚を集めそして表皮と真皮に分離する。これらの皮膚試料片を、イソプロピルアルコールで抽出する。集められた試料のすべてを処理し、そしてトコフェロール、トコフェリルアセテート、トコフェリルホスフェートおよびジトコフェリルホスフェートについて検定する。
【0042】
試料からの質量収支は、適用投与量の80〜120%の間にある。
【0043】
トコフェロールは、受容体溶液中に認められない。これは、検出限界未満である量または今のところ特性決定されていない他の化合物への各種トコフェロール種の分解の結果であり得た。
【0044】
【表3】

【0045】
結論
これらの結果は、処方中に20ないし30%のT2Pを含めることはトコフェリルホスフェート製品の性能に対して有害な効果を有さなかったことを示している。更に、TP/T2P混合物は両方共、トコフェリルアセテート製品よりも効率的に真皮中に輸送された。
例3
この例において、本発明に従って作られるモノユビキニルホスフェートおよびジユビキニルホスフェートを含む混合物が製造された。
【0046】
100gのユビキノンを、200mlの熱氷酢酸中に部分的に溶解した。激しく撹拌されているこの溶液に、溶液が黄色から緑色に変わりそして次いで無色になるまで、少量の亜鉛(総計30g)を添加した。この熱溶液を濾過し、そして未反応亜鉛を熱氷酢酸で更に2回(50ml)洗浄して、残存ユビキノールを回収した。氷酢酸をユビキノールから、真空蒸留によりまたは溶液を0℃に冷却しそして結晶化ユビキノールから濾別することにより除去した。更に微量の酢酸を除去するために、ユビキノールを高真空(1mmHg)下に2時間置いた。
【0047】
このユビキノール生成物を、直ちに、100℃に加熱しそして33gのP10を添加することにより処理した。この混合物を3時間撹拌し、そして次いでこの混合物中に500mlの水をゆっくり導入した。反応の温度を、沸点のちょっと下に更に1時間維持した。水の除去により、ユビキニルホスフェートおよびリン酸が得られた。該リン酸を、熱水での更なる洗浄により部分的に除去した。
【0048】
最終生成物は、139gのモノユビキニルホスフェート、ジユビキニルホスフェートおよびリン酸から成っていた。この生成物を31P−NMRにより分析し、モノユビキニルホスフェート:ジユビキニルホスフェートのモル比は76:24であった。例4
この例において、モノトコフェリルホスフェートの界面活性特性が調べられた。
【0049】
0.1gの純ジナトリウムモノトコフェリルホスフェートを、50mlの円筒形の施栓容器中の10mlの純蒸留水中に溶解した。該容器を試験管撹拌装置にて振とうして、ヘッドスペースを安定な泡で満たした。この泡は日ベースで調べられて、1日間完全な安定性を示し、そして次いで4日間の期間の残りにわたってゆっくり崩壊した。
【0050】
それ故、モノトコフェリルホスフェートは、洗浄性を有する界面活性剤である。
【0051】
本明細書および請求の範囲において用いられる場合の語「含む」および語「含む」の形態は、請求の範囲に記載された発明を、いかなる変型または付加も排除するようには限定しない。
【0052】
本発明への改変および改良は、当業者にとって容易に明らかである。かかる改変および改良は、本発明の範囲内にあるよう意図されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)少なくとも1種のモノ電子移動剤ホスフェート誘導体、(b)少なくとも1種のジ電子移動剤ホスフェート誘導体であって、該モノ電子移動剤ホスフェート誘導体の量が、ジ電子移動剤ホスフェート誘導体の量と等モル以上であるもの、および(c)適当な担体を含む治療(therapeutic)投与用のエマルション組成物。
【請求項2】
モノ電子移動剤ホスフェート誘導体に対するジ電子移動剤ホスフェート誘導体のモル比が、85:15から65:35の範囲にある、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
モノ電子移動剤ホスフェート誘導体およびジ電子移動剤ホスフェート誘導体が、アルファ−トコフェロールから誘導されている、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
モノ電子移動剤ホスフェート誘導体およびジ電子移動剤ホスフェート誘導体が、両性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、窒素官能基を有するアミノ酸、およびこれらのアミノ酸に富むタンパク質から選択された錯化剤で錯化されている、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
(a)少なくとも1種のモノ電子移動剤ホスフェート誘導体、(b)少なくとも1種のジ電子移動剤ホスフェート誘導体であって、該モノ電子移動剤ホスフェート誘導体の量が、ジ電子移動剤ホスフェート誘導体の量と等モル以上であるもの、および(c)適当な担体を含むエマルション組成物を投与する工程を含む、電子移動剤のホスフェート誘導体を対象者に投与する方法。
【請求項6】
(a)P10を用いて1種またはそれ以上の電子移動剤をリン酸化して(phosphorylating)、少なくとも1種のモノ電子移動剤ホスフェート誘導体と少なくとも1種のジ電子移動剤ホスフェート誘導体の混合物を形成させ、しかもモノ電子移動剤ホスフェート誘導体の量が、ジ電子移動剤ホスフェート誘導体の量と等モル以上であり、(b)モノ電子移動剤ホスフェート誘導体とジ電子移動剤ホスフェート誘導体の該混合物を適当な担体と組合せる、工程を含む、電子移動剤のホスフェート誘導体を含有する治療用処方を製造する方法。
【請求項7】
(a)少なくとも1種のモノトコフェリルホスフェート誘導体、(b)少なくとも1種のジトコフェリルホスフェート誘導体であって、該モノトコフェリルホスフェート誘導体の量は、ジトコフェリルホスフェート誘導体の量と等モル以上であるもの、および、(c)適当な担体、を含む、局所適用(application)用のエマルション組成物。
【請求項8】
モノトコフェリルホスフェート、その塩およびそれらの混合物から成る群から選択された界面活性剤を含む組成物。
【請求項9】
モノトコフェリルホスフェート、その塩およびそれらの混合物から成る群から選択された界面活性剤を添加することにより、組成物の界面活性および洗浄力(detergency)を増加する方法。

【公開番号】特開2010−241818(P2010−241818A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−127096(P2010−127096)
【出願日】平成22年6月2日(2010.6.2)
【分割の表示】特願2002−542406(P2002−542406)の分割
【原出願日】平成13年11月14日(2001.11.14)
【出願人】(503129590)バイタル ヘルス サイエンシズ プロプライアタリー リミティド (11)
【Fターム(参考)】