説明

電子端末装置及び電子連動装置

【課題】連動論理部に送信する送信データが正常であるかどうかを判断して送信データの健全性を図り、送信データの信頼性を向上させる。
【解決手段】電子端末装置1の時間差同期処理しているCPU2とCPU3で送信データに含まれるデータとCRCを生成し、一方のCPU2は生成したデータのみを出力し、他方のCPU3は生成したCRCのみを出力し、出力したデータとCRCの論理和処理をして送信データを生成する。生成した送信データに含まれるデータとCRCと2つのCPU2,3でそれぞれ生成したデータとCRCと照合して一致しているかどうかを診断し、2つのCPU2,3の診断結果が正常のときだけ送信データを送信して、送信する送信データの信頼性を向上させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、鉄道の信号保安装置の入出力回路として使用する電子端末装置及び電子連動装置、特に送信データの信頼性の向上に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鉄道の2つ以上の信号機や転てつ器などの相互間で、その取扱いについて一定の順序及び制限を付ける電子連動装置10は、図3に示すように、外部機器12a〜12nとの入出力回路に電子端末装置11a〜11nを使用し、電子端末装置11a〜11nと連動論理部9との間を光LANからなる伝送路8で接続している。この電子端末装置11は、図4に示すように、時間差同期処理する2つのCPU13とCPU14と論理和回路4及び外部機器12aに接続される入出力ユニット7を有し、2つのCPU13とCPU14を用いて連動論理部9に対して送信データを送信している。この2つのCPU13とCPU14を用いて連動論理部9に送信データを送信するとき、特許文献1に示すように、一方のCPU13は入出力ユニット7から入力する外部機器12の状態に応じてデータを生成し、他方のCPU14は誤り検出符号であるCRCを生成する。生成したデータとCRCは2つのCPU13とCPU14の間で伝送の同期をとって論理和回路4に出力される。論理和回路4は入力したデータとCRCの論理和を送信データとして伝送路8を介して連動論理部9に送信する。この電子端末装置11から連動論理部9に送信した送信データの内容が正常であるかどうかの判断は連動論理部9が行っている。また、連動論理部9からの受信データは2つのCPU13とCPU14で処理して入出力ユニット7に出力している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
電子端末装置11は2つのCPU13とCPU14で時間差同期処理を行っているため、一方のCPU13で生成して送信したデータと他方のCPU14で生成して送信したCRCが不一致でも電子端末装置11は正常な送信データを送信していると判断してしまう。このため連動論理部9で電子端末装置11から送信された送信データの内容が正常であるかどうかを判断して送信データの異常を検出したとき、連動論理部9と電子端末装置11との間の伝送路8に故障等の異常が生じているのか、あるいは電子端末装置11から送信された送信データが間違っているのかを判断できないという問題がある。
【0004】
この発明は、このような問題を解消し、連動論理部に送信する送信データが正常であるかどうかを判断して送信データの健全性を図り、送信データの信頼性を向上させることができる電子端末装置及び電子連動装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明の電子端末装置は、時間差同期処理している2つのCPUと論理和回路と送信バッファ及び送信可否判定部を有し、前記2つのCPUは、送信データに含まれるデータと誤り検出符号であるCRCを生成し、一方のCPUは生成したデータのみを前記論理和回路に出力し、他方のCPUは生成したCRCのみを前記論理和回路に出力し、前記論理和回路は、前記一方のCPUから入力したデータと前記他方のCPUから入力したCRCの論理和を行って送信データを生成して前記送信バッファに出力するとともに生成した送信データを前記2つのCPUに折り返して出力し、前記送信バッファは、入力した送信データを一時保存し、前記2つのCPUは、入力した送信データに含まれるデータとCRCとが自CPUで生成したデータとCRCと一致しているか否を診断し、診断結果を前記送信可否判定部に出力し、前記送信可否判定部は、前記2つのCPUから入力した診断結果により、前記送信バッファに一時保存した送信データを送信するか否を判定することを特徴とする。
【0006】
前記送信可否判定部は、前記2つのCPUから入力した診断結果で送信データの内容が正常であるとき、前記送信バッファに送信データの送信許可信号を出力し、診断結果で送信データの内容が異常であるとき、前記送信バッファと前記2つのCPUに送信データの送信禁止信号を出力し、前記2つのCPUは、送信データの送信禁止信号を入力すると、送信データに含まれるデータとCRCの生成処理と送信データの診断処理をリトライし、あらかじめ設定した所定回数リトライすると、送信異常として次の送信まで待機する。
【0007】
この発明の電子連動装置は、前記電子端末装置と、電子端末装置に伝送路を介して接続された連動論理部を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
この発明は、時間差同期処理している2つのCPUで送信データに含まれるデータとCRCを生成し、一方のCPUは生成したデータのみを出力し、他方のCPUは生成したCRCのみを出力し、2つのCPUから出力したデータとCRCの論理和を送信データとし、送信データに含まれるデータとCRCと2つのCPUでそれぞれ生成したデータとCRCと照合して一致しているかどうかを診断し、2つのCPUの診断結果が正常のときだけ送信データを送信するから、送信データの信頼性を向上させることができる。
【0009】
この電子端末装置から送信データを伝送路から連動論理部に送信することにより、電子端末装置から健全な送信データを連動論理部に送信するから、連動論理部で電子端末装置から送信された送信データの内容が正常であるかどうかを判断して送信データの異常を検出したとき、異常発生部位を明確にして早期に復旧させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】この発明の電子端末装置の構成を示すブロック図である。
【図2】電子端末装置で送信データを送信するときの処理を示すフローチャートである。
【図3】電子連動装置の構成を示すブロック図である。
【図4】従来の電子端末装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、この発明の電子端末装置の構成を示すブロック図である。電子端末装置1は、時間差同期処理している2つのCPU2とCPU3と、論理和回路4と送信バッファ5と送信可否判定部6及び外部機器に接続される入出力ユニット7を有し、電子連動装置の入出力回路として使用するものであり、光LANからなる伝送路8を介して連動論理部9に接続されている。
【0012】
電子端末装置1の2つのCPU2とCPU3は、連動論理部9から伝送路8を介して送信された受信データを処理して入出力ユニット7を介して外部機器に出力し、入出力ユニット7から入力する外部機器の状態に応じてデータと誤り検出符号であるCRCを生成し、2つのCPU2とCPU3の間で伝送の同期をとり、一方のCPU2は生成したデータのみを論理和回路4に出力し、他方のCPU3は生成したCRCのみを論理和回路4に出力するとともに送信データが正常であるか異常であるかを診断する。
【0013】
論理和回路4は、CPU2から入力したデータとCPU3から入力したCRCの論理和の送信データを送信バッファ5に出力するとともに2つのCPU2とCPU3に折り返して出力する。送信バッファ5は入力した送信データを一時保存する。送信可否判定部6は、CPU2とCPU3における送信データの診断結果を示す診断信号を入力して送信バッファ5に格納された送信データを連動論理部9に対する送信の適否を判断する。
【0014】
この電子端末装置1で送信データを生成して連動論理部9に送信するときの処理を図2のフローチャートを参照して説明する。
【0015】
電子端末装置1のCPU2とCPU3は連動論理部9から伝送路8を介して送信された受信データを受信すると、受信データを処理して入出力ユニット7を介して外部機器に出力し(ステップS1)、入出力ユニット7から入力する外部機器の状態に応じてデータとCRCを生成する(ステップS2)。CPU2とCPU3はデータとCRCを生成すると、CPU2とCPU3の間で伝送の同期をとり、一方のCPU2は生成したデータのみを論理和回路4に出力し、他方のCPU3は生成したCRCのみを論理和回路4に出力する。論理和回路4はCPU2から入力したデータとCPU3から入力したCRCの論理和の送信データを生成して送信バッファ5に出力する。送信バッファ5は入力した送信データを一時保存する(ステップS3)。
【0016】
また、論理和回路4で生成した送信データはCPU2とCPU3に折り返して出力する。CPU2は入力した送信データに含まれるCPU2自体で生成したデータとCPU3が生成したCRCとがCPU2自体で生成したデータとCRCと一致しているか否を診断し、一致している場合は送信データが正常であることを示す信号を送信可否判定部6に出力し、一致していない場合は送信データが異常であることを示す信号を送信可否判定部6に出力する。CPU3も入力した送信データに含まれるCPU2で生成したデータとCPU3自体が生成したCRCとがCPU3自体で生成したデータとCRCと一致しているか否を診断し、一致している場合は送信データが正常であることを示す信号を送信可否判定部6に出力し、一致していない場合は送信データが異常であることを示す信号を送信可否判定部6に出力する(ステップS4)。送信可否判定部6はCPU2とCPU3の両方から送信データが正常であることを示す信号を入力すると、送信バッファ5に送信データの送信許可信号を出力する(ステップS6)。送信バッファ5は送信データの送信許可信号を入力すると、一時保存した送信データを伝送路8から連動論理部9に送信する(ステップS7)。この処理を受信データを受信するたびに繰り返す(ステップS1〜S7)。
【0017】
また、送信可否判定部6はCPU2とCPU3の両方又はいずれか一方から送信データが異常であることを示す信号を入力すると(ステップS5)、送信バッファ5に対して送信データの送信禁止信号を出力して送信バッファ5に一時保存した送信データを消去し、CPU2とCPU3にも送信データの送信禁止信号を出力する(ステップS8)。
【0018】
CPU2とCPU3は送信可否判定部6から送信データの送信禁止信号を入力すると送信するデータとCRCの生成をリトライする(ステップS9,S2)。この処理を所定回数繰り返しても送信データが異常の場合は、送信異常として次の送信までCPU2とCPU3を待機させる(ステップS8,S9,S1)。
【0019】
このようにCPU2で生成したデータとCPU3で生成したCRCの論理和の送信データと、送信データに含まれるデータとCRCをCPU2とCPU3でそれぞれ生成したデータとCRCと照合して一致しているかどうかを診断し、CPU2とCPU3の診断結果が正常のときだけ送信データを連動論理部9に送信するから、電子端末装置1から送信する送信データの信頼性を向上させることができる。
【0020】
また、連動論理部9は電子端末装置1から送信された送信データの内容が正常であるかどうかを判断して送信データの異常を検出したとき、電子端末装置1からは正常な送信データが送信されているから、異常発生部位は伝送路8であると判定できる。したがって異常発生部位を早期に復旧させることができる。
【符号の説明】
【0021】
1;電子端末装置、2;CPU、3;CPU、4;論理和回路、5;送信バッファ、
6;送信可否判定部、7;入出力ユニット、8;伝送路、9;連動論理部。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【特許文献1】特開2003−237579号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
時間差同期処理している2つのCPUと論理和回路と送信バッファ及び送信可否判定部を有し、
前記2つのCPUは、送信データに含まれるデータと誤り検出符号であるCRCを生成し、一方のCPUは生成したデータのみを前記論理和回路に出力し、他方のCPUは生成したCRCのみを前記論理和回路に出力し、
前記論理和回路は、前記一方のCPUから入力したデータと前記他方のCPUから入力したCRCの論理和を行って送信データを生成して前記送信バッファに出力するとともに生成した送信データを前記2つのCPUに折り返して出力し、
前記送信バッファは、入力した送信データを一時保存し、
前記2つのCPUは、入力した送信データに含まれるデータとCRCとが自CPUで生成したデータとCRCと一致しているか否を診断し、診断結果を前記送信可否判定部に出力し、
前記送信可否判定部は、前記2つのCPUから入力した診断結果により、前記送信バッファに一時保存した送信データを送信するか否を判定することを特徴とする電子端末装置。
【請求項2】
前記送信可否判定部は、前記2つのCPUから入力した診断結果で送信データの内容が正常であるとき、前記送信バッファに送信データの送信許可信号を出力し、診断結果で送信データの内容が異常であるとき、前記送信バッファと前記2つのCPUに送信データの送信禁止信号を出力し、
前記2つのCPUは、送信データの送信禁止信号を入力すると、送信データに含まれるデータとCRCの生成処理と送信データの診断処理をリトライし、あらかじめ設定した所定回数リトライすると、送信異常として次の送信まで待機する請求項1記載の電子端末装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の電子端末装置と、該電子端末装置に伝送路を介して接続された連動論理部を有することを特徴とする電子連動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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