説明

電子線硬化性組成物、電子線硬化樹脂およびその用途

【課題】本発明は、電子線による硬化を促進する手段を開発し、各種性能に秀でた硬化物を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、(A)エチレン性不飽和二重結合を有する化合物、好ましくはエチレン性不飽和二重結合を2個以上有する化合物と、(B)多官能チオール化合物または(C)ジスルフィド化合物を(100−X):X(ただし、10≧X>0)の質量比で含有することを特徴とする電子線硬化性組成物、当該電子線硬化性組成物及びその用途を提供するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐溶剤性に優れる電子線硬化樹脂を得るに好適な電子線硬化性組成物及びその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エチレン性不飽和基を含有する樹脂組成物を硬化させる手段として様々な手段が知られている。とくに、紫外線硬化や電子線硬化といった硬化プロセスは、使用する溶媒を低減でき、環境への負荷が軽減されるため、一層の関心が集まっている。
【0003】
しかしながら、紫外線硬化においては、赤外線による硬化物の変形、開始剤の混入、酸素阻害の影響を受けやすい、エネルギーレベルの低さから、必ず幾分かの残モノマーが発生し十分な硬化が得られない場合があるなど、種々の問題点がある。
【0004】
一方、電子線により塗膜を硬化させる方法は、1950年代にポリエチレンの架橋に用いられて以来、実用化に向けて様々な試みがなされてきた。特に近年においては300kV以下の低エネルギータイプの電子線加速機が開発されその応用が容易になり、それに伴って使用するモノマー、プレポリマーの開発も進み、応用展開が進んできた。しかしながら、それでも電子線加速器の性能は依然として十分とは言えず、また、電子線硬化に適当なモノマーの開発が不完全であるといった要因から、急速な普及には至っていない。しかし、用途によってはエネルギー効率が良好であること、機器の扱いが容易なこと、塗料の光透過度に依存しない等の特徴を有利に活用し、現在では工業的に利用されるまでになっている。主な用途としては紙やフィルムのコーティングをはじめ、欧州での自動車のホイールやハードボード等の木工製品の塗装などが挙げられる。
【0005】
また、電子線による硬化プロセスには開始剤が不要であること、不飽和基の形状を選ばないこと、短時間での硬化を可能としていることなどから、種々の光学フィルムやレジスト材料への応用も盛んに行われるようになり、それに伴い、種々の添加剤を用いて樹脂の性能を高める試みがなされている(例えば、特許文献1;特開平10−101716号公報、特許文献2;特開2002−303986号公報)
しかしながら、電子線による硬化には、照射が強すぎると分子構造を破壊してしまう一方、弱すぎると均一な硬化物を得難いという問題がある。
【特許文献1】特開平10−101716号公報
【特許文献2】特開2002−303986号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、電子線による硬化を促進する手段を開発し、各種性能に秀でた硬化物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、エチレン性不飽和二重結合を有する化合物、好ましくはエチレン性不飽和二重結合を2個以上有する化合物に、特定量の多官能チオール化合物、あるいはジスルフィド化合物を添加することにより、二重結合の反応性が向上し、電子線による硬化を促進することができることを見出した。
【0008】
すなわち、本発明は以下の事項を含む。
〔1〕(A)エチレン性不飽和二重結合を有する化合物と、(B)多官能チオール化合物
または(C)ジスルフィド化合物を(100−X):X(ただし、10≧X>0)の質量比で含有することを特徴とする電子線硬化性組成物。
〔2〕(A)エチレン性不飽和二重結合を有する化合物と、(B)多官能チオール化合物または(C)ジスルフィド化合物を(100−X):X(ただし、10≧X>0)の質量比で含有し、かつ、化合物(A)中のエチレン性不飽和二重結合を有する官能基の数と、化合物(B)中のメルカプト基の数または化合物(C)中のジスルフィド基の数の比が、(100−Y):Y(ただし、10≧Y>0)であることを特徴とする電子線硬化性組成物。
〔3〕(A)エチレン性不飽和二重結合を有する化合物が、エチレン性不飽和二重結合を2個以上有する化合物である前記〔1〕または〔2〕に記載の電子線硬化性組成物。
〔4〕前記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の電子線硬化性組成物に、電子線を照射することにより得られる電子線硬化樹脂。
〔5〕前記〔4〕に記載の電子線硬化樹脂からなる光学フィルム。
【発明の効果】
【0009】
本発明の電子線硬化性組成物は硬化性に関して非常に優れており、低コストで高い生産性を与え、硬化させた電子線硬化樹脂は、光学フィルムあるいはレジスト部材として好適に使用し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明における実施形態について詳細に説明する。
[(A)エチレン性不飽和二重結合を含有する化合物]
本発明の電子線硬化性組成物に含まれる成分の一つである、エチレン性不飽和二重結合を含有する化合物(A)は、分子内にエチレン性不飽和二重結合を有する化合物であって、架橋反応および付加反応により硬化可能な化合物である。エチレン性不飽和二重結合を含有する化合物(A)としては、具体的には、例えば、アリルアルコール誘導体、エチレン性不飽和芳香族化合物、(メタ)アクリル酸と多価アルコールとのエステル類およびウレタン(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリレート類が挙げられ、これら化合物は1種又は2種以上を用いることができる。
【0011】
[エチレン性不飽和芳香族化合物]
エチレン性不飽和芳香族化合物としては、具体的には、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、ジイソプロペニルベンゼン、o−クロロスチレン、m−クロロスチレン、p−クロロスチレン、1,1−ジフェニルエチレン、p−メトキシスチレン、N,N−ジメチル−p−アミノスチレン、N,N−ジエチル−p−アミノスチレン、エチレン性不飽和ピリジン、エチレン性不飽和イミダゾールなどが挙げられる。
【0012】
[(メタ)アクリレート類]
(メタ)アクリレート類としては、具体的には、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などのカルボキシル基含有化合物;
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレートな
どのアルキル(メタ)アクリレート類;
トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロイソプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、ヘプタデカフルオロデシル(メタ)アクリレートなどのフルオロアルキル(メタ)アクリレート類;
ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類;
フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレートなどのフェノキシアルキル(メタ)アクリレート類;
メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、プロポキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシブチル(メタ)アクリレートなどのアルコキシアルキル(メタ)アクリレート類;
ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートなどのポリエチレングリコール(メタ)アクリレート類;
ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレートなどのポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート類;
シクロヘキシル(メタ)アクリレート、4−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエニル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレートなどのシクロアルキル(メタ)アクリレート類;
ベンジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリオキシエチル(メタ)アクリレートなどが挙げられ、ウレタン(メタ)アクリレート類としては、トリス(2−ヒドキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等あるいは下記一般式(1)〜(6)で示されるようなウレタン(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0013】
【化1】

(1)
【0014】
(式中、R7は水素原子またはメチル基を表わし、R8は炭素数1〜10の直鎖または分岐状のアルキレン基あるいは芳香環を含んだ構造であり、R9は酸素、硫黄またはイミノ基
を表わし、Xは脂肪族基、芳香族基、複素環基から選ばれる一種の基を表わす。)
【0015】
【化2】

(2)
【0016】
(式中、R10は炭素数1〜10の直鎖または分岐しているアルキレン基であり、R11は水素原子またはメチル基を表わし、R12は炭素数0〜5の直鎖または分岐状のアルキレン基を表わし、R13は水素原子、炭素数1〜6の直鎖または分岐状のアルキレン基およびアリール基からなる群から選ばれる少なくとも一種の基を表わし、R14は酸素、硫黄またはイミノ基を表わし、Xは脂肪族基、芳香族基、複素環基から選ばれる一種の基を表わし、nは1〜4を表わす。)
【0017】
【化3】

(3)
【0018】
(式中、R14は水素原子あるいはメチル基を表わし、Xは脂肪族基、芳香族基、複素環基から選ばれる一種の基を表わす。)
【0019】
【化4】

(4)
【0020】
(式中、Xは脂肪族基、芳香族基、複素環基から選ばれる一種の基を表わす。)
【0021】
【化5】

(5)
【0022】
(式中、Xは脂肪族基、芳香族基、複素環基から選ばれる一種の基を表わす。)
【0023】
【化6】

(6)
【0024】
(式中、Xは脂肪族基、芳香族基、複素環基から選ばれる一種の基を表わす。)
なお、本発明に係るウレタン結合とは、一般式(1)中のR9および一般式(2)中の
14が酸素原子の場合のチオウレタン結合、R9がイミノ基の場合の尿素結合も含む。
一般式(1)〜(6)で表されるウレタン(メタ)アクリレートとしては、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、2,2−ビス(アクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート、1,1−ビス(アクリロイルオキシメチル)メチルイソシアネート、4−(メタ)アクリロイルオキシフェニルイソシアネート、5−(メタ)アクリロイルオキシペンチルイソシアネートなどがアルコールのような活性水素に付加した化合物であり、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ノルボルネンジメタノール、ノルボルナンジメタノール、ポリカーボネートジオール、両末端ヒドロキシポリシリコーン、ビスフェノールAエトキシレートなどのようなポリオールに、上記のようなイソシアネート化合物を付加させた化合物が挙げられる。また、これらは一種または二種以上の組み合わせでも使用できる。
【0025】
本発明に係る(A)エチレン性不飽和二重結合を含有する化合物としては、分子内にエチレン性不飽和二重結合を有する化合物であって、架橋反応および付加反応により硬化可能な化合物であれば、上記記載の化合物に限定されるものではない。また、エチレン性不飽和二重結合を含有する化合物としては、高分子量体中にエチレン性不飽和二重結合を含有している化合物でもよい。
これら、エチレン性不飽和二重結合を含有する化合物(A)としては、エチレン性不飽和二重結合を2個以上有する化合物が好ましい。
【0026】
[(B)多官能チオール化合物]
本発明の電子線硬化性組成物に含まれる成分の一つである、(B)多官能チオール化合物は、一般式(7)
【0027】
【化7】

(7)
【0028】
で示される基を2個以上含有する化合物である。
上記一般式(7)中、R1およびR2は炭素数1〜10のアルキル基、あるいは水素原子である。なお、R1およびR2がともにアルキル基の場合は、両者は同じであっても異なっていても良い。R1およびR2が表わす炭素数1〜10のアルキル基は、直鎖状であっても分岐状であってもよく、その例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、tert−ブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基等が挙げられ、中でもメチル基またはエチル基が好ましい。mは0または1〜2の整数であり、nは0または1である。
【0029】
本発明に係る(B)多官能チオール化合物としては、例えば、上記一般式(7)で表されるメルカプト基を含有する基が、(a)炭化水素構造、(b)下記一般式(8)で示されるようなカルボン酸誘導体構造、あるいは、(c)一般式(9)で示されるようなエーテル誘導体構造を含む多官能チオール化合物が挙げられる。
【0030】
【化8】

(8)
【0031】
(式中、R1およびR2は各々独立して水素原子または炭素数1〜10のアルキル基を表わし、mは0または1〜2の整数であり、nは0または1である。)。
【0032】
【化9】

(9)
【0033】
(式中、R1およびR2は各々独立して水素原子または炭素数1〜10のアルキル基を表わし、mは0または1〜2の整数であり、nは0または1である。)。
【0034】
[(a)炭化水素構造を含む多官能チオール化合物]
(a)炭化水素構造を含む多官能チオール化合物としては、o−ジメルカプトベンゼン、m−ジメルカプトベンゼン、p−ジメルカプトベンゼン、1,3,5−トリメルカプトベンゼン、1,2,4−トリメルカプトベンゼン、o−ジ(メルカプトメチル)ベンゼン、m−ジ(メルカプトメチル)ベンゼン、p−ジ(メルカプトメチル)ベンゼン、o−ジ(メルカプトエチル)ベンゼン、m−ジ(メルカプトエチル)ベンゼン、p−ジ(メルカプトエチル)ベンゼン、1,3−ジメルカプト−5−メチル−ベンゼン、1,3−ジメルカプト−5−エチル−ベンゼン、1,3−ジメルカプト−5−ブチル−ベンゼン、2,5−ジメルカプトチオフェン、2,3,5−トリメルカプトチオフェン、2,5−ジメルカプトピロール、3−メルカプトピロール、2,3,5−トリメルカプトピロール、2,5−ジメルカプトフラン、2,3,5−トリメルカプトフラン、2,4,6−トリメルカプト−1,3,5−トリアジン、4,6−ジメルカプト−2−(ジメチルアミノ)−1,3
,5−トリアジン、4,6−ジメルカプト−2−(ジエチルアミノ)−1,3,5−トリアジン、4,6−ジメルカプト−2−(ジプロピルアミノ)−1,3,5−トリアジン、4,6−ジメルカプト−2−(ジブチルアミノ)−1,3,5−トリアジン、4,6−ジメルカプト−2−(フェニルアミノ)−1,3,5−トリアジン、4,6−ジメルカプト−2−(ジフェニルアミノ)−1,3,5−トリアジン、2−メルカプト−1,3,4−チアジアゾール、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール等の芳香族多官能チオール類。
【0035】
メタンジチオール、1,2−ジメルカプトエタン、1,3−ジメルカプトプロパン、1,4−ジメルカプトブタン、1,3−ジメルカプト−2−チア−プロパン、1,4−ジメルカプト−2−チア−ブタン、1,5−ジメルカプト−2−チア−ペンタン、1,6−ジメルカプト−2−チア−ヘキサン、1,4−ジメルカプト−3−チア−ブタン、1,5−ジメルカプト−3−チア−ペンタン、1,6−ジメルカプト−3−チア−ヘキサン、1,7−ジメルカプト−3−チア−ヘプタン、1,5−ジメルカプト−4−チア−ペンタン、1,6−ジメルカプト−4−チア−ヘキサン、1,7−ジメルカプト−4−チア−ヘプタン、1,8−ジメルカプト−4−チア−オクタン、1,6−ジメルカプト−5−チア−ヘキサン、1,7−ジメルカプト−4−チア−ヘプタン、1,8−ジメルカプト−4−チア−オクタン、1,9−ジメルカプト−4−チア−ノナン、1,5−ジメルカプト−2,4−ジチア−ペンタン、1,6−ジメルカプト−2,4−ジチア−ヘキサン、1,7−ジメルカプト−2,4−ジチア−ヘプタン、1,8−ジメルカプト−2,4−ジチア−オクタン、1,7−ジメルカプト−3,6−ジチア−ヘプタン、1,8−ジメルカプト−3,6−ジチア−オクタン、1,9−ジメルカプト−3,6−ジチア−ノナン、1,10−ジメルカプト−3,6−ジチア−デカン、1,9−ジメルカプト−4,8−ジチア−ノナン、1,10−ジメルカプト−4,8−ジチア−デカン、1,11−ジメルカプト−4,8−ジチア−ウンデカン、1,12−ジメルカプト−4,8−ジチア−ドデカン、1,11−ジメルカプト−5,9−ジチア−ウンデカン、1,12−ジメルカプト−5,9−ジチア−ドデカン、1,13−ジメルカプト−5,9−ジチア−トリデカン、1,14−ジメルカプト−5,9−ジチア−テトラデカン、1,7−ジメルカプト−2,4,6−トリチア−ヘプタン、1,8−ジメルカプト−2,4,6−トリチア−オクタン、1,9−ジメルカプト−2,4,6−トリチア−ノナン、1,10−ジメルカプト−2,4,6−トリチア−デカン、1,10−ジメルカプト−3,6,9−トリチア−デカン、1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチア−ウンデカン、1,12−ジメルカプト−3,6,9−トリチア−ドデカン、1,13−ジメルカプト−3,6,9−トリチア−トリデカン、
1,13−ジメルカプト−4,8,12−トリチア−トリデカン、1,14−ジメルカプト、4,8,12−トリチア−テトラデカン、1,15−ジメルカプト−4,8,12−トリチア−ペンタデカン、1,16−ジメルカプト−4,8,12−トリチア−ヘキサデカン、1,16−ジメルカプト−5,10,15−トリチア−ヘキサデカン、1,17−ジメルカプト−5,10,15−トリチア−ヘプタデカン、1,18−ジメルカプト−5,10,15−トリチア−オクタデカン、1,19−ジメルカプト−5,10,15−トリチア−ノナデカン、1,9−ジメルカプト−2,4,6,8−テトラチア−ノナン、1,10−ジメルカプト−2,4,6,8−テトラチア−デカン、1,11−ジメルカプト−2,4,6,8−テトラチア−ウンデカン、1,12−ジメルカプト−2,4,6,8−テトラデカ−ドデカン、1,13−ジメルカプト−3,6,9,12−テトラチア−トリデカン、1,14−ジメルカプト−3,6,9,12−テトラチア−テトラデカン、1,15−ジメルカプト−3,6,9,12−テトラチア−ペンタデカン、1,16−ジメルカプト−3,6,9,12−テトラチア−ヘキサデカン、1,17−ジメルカプト−4,8,12,16−テトラチア−ヘプタデカン、1,18−ジメルカプト−4,8,12,16−テトラチア−オクタデカン、1,19−ジメルカプト−4,8,12,16−テトラチア−ノナデカン、1,20−ジメルカプト−4,8,12,16−テトラチア−イコサン、1,21−ジメルカプト−5,10,15,20−テトラチア−ヘミコサン、1
,22−ジメルカプト−5,10,15,20−テトラチア−ドコサン、1,23−ジメルカプト−5,10,15,20−テトラチア−トリコサン、1,24−ジメルカプト−5,10,15,20−テトラチア−テトラコサン、1,25−ジメルカプト−5,10,15,20−テトラチア−ペンタコサン、テトラ(メルカプトメチル)メタン、1,6−ジメルカプト−3−チア−5,5'−ジメルカプトメチルヘキサン、1,5−ジメルカ
プト−3−チア−4,4'−ジメルカプトメチルペンタン、1,9−ジメルカプト−3,
7−ジチア−5,5'−ジメルカプトメチルノナン、1,8−ジメルカプト−3,6−ジ
チア−5,5'−ジメルカプトメチルオクタン、1,9−ジメルカプト−3,7−ジチア
−5−メルカプトエチルチオメチル−5'−メルカプトメチルノナン、1,9−ジメルカ
プト−3,7−ジチア−5−メルカプトエチルチオ−5'−メルカプトメチルノナン、テ
トラ(メルカプトエチルチオメチル)メタン、1,9−ジメルカプト−3,7−ジチア−5−メルカプトエチルチオメチル−5'−メルカプトエチルチオノナン、トリメルカプト
メチルメタン、1,1',1''−トリメルカプトメチルエタン、1,1',1''−トリメルカプトメチルプロパン、1,1',1''−トリメルカプトメチルブタン、ジ(メルカプト
メチル)−メルカプトエチルチオメチルメタン、1,1'−ジメルカプトメチル−1''−
メルカプトエチルチオメチルエタン、1,1'−ジメルカプトメチル−1''−メルカプト
エチルチオメチルプロパン、1,1'−ジメルカプトメチル−1''−メルカプトエチルチ
オメチルブタン、ジ(メルカプトメチル)−メルカプトエチルチオメタン、1,1'−ジ
メルカプトメチル−1''−メルカプトエチルチオエタン、1,1'−ジメルカプトメチル
−1''−メルカプトエチルチオプロパン、1,1'−ジメルカプトメチル−1''−メルカ
プトエチルチオブタン、ジ(メルカプトエチルチオメチル)−メルカプトメチルメタン、1,1'−ジ(メルカプトエチルチオメチル)−1''−メルカプトメチルエタン、1,1'−ジ(メルカプトエチルチオメチル)−1''−メルカプトメチルプロパン、1,1'−ジ
(メルカプトエチルチオメチル)−1''−メルカプトメチルブタン、メルカプトエチルチオメチル−メルカプトエチルチオ−メルカプトメチルメタン、1−メルカプトエチルチオメチル−1'−メルカプトエチルチオ−1''−メルカプトメチルエタン、1−メルカプト
エチルチオメチル−1'−メルカプトエチルチオ−1''−メルカプトメチルプロパン、1
−メルカプトエチルチオメチル−1'−メルカプトエチルチオ−1''−メルカプトメチル
ブタン、トリ(メルカプトエチルチオメチル)メタン、1,1',1''−トリ(メルカプ
トエチルチオメチル)エタン、1,1',1''−トリ(メルカプトエチルチオメチル)プ
ロパン、1,1',1''−トリ(メルカプトエチルチオメチル)ブタン、ジ(メルカプト
エチルチオメチル)−メルカプトエチルチオメタン、1,1'−ジ(メルカプトエチルチ
オメチル)−1''−メルカプトエチルチオエタン、1,1'−ジ(メルカプトエチルチオ
メチル)−1''−メルカプトエチルチオプロパン、1,1'−ジ(メルカプトエチルチオ
メチル)−1''−メルカプトエチルチオブタン等の脂肪族多官能1級チオール類。
【0036】
2,5−ヘキサンジチオール、2,9−デカンジチオール、1,4−ビス(1−メルカプトエチル)ベンゼン等の脂肪族多官能2級チオール類。
エチレングリコールジチオグリコレート、エチレングリコールジチオプロピオネート、1,4ーブタンジオールジチオグリコレート、1,3ーブタンジオールジチオグリコレート、ネオペンチルグリコールジチオグリコレート、ネオペンチルグリコールジチオプロピオネート、トリメチロールプロパントリチオグリコレート、トリメチロールプロパントリチオプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラチオグリコレート、ペンタエリスリトールテトラチオプロピオネート、ペンタエリスリトールトリチオグリコレート、ペンタエリスリトールトリチオプロピオネート、ジエチレングリコールジチオグリコレート、ジエチレングリコールジチオプロピオネート、トリエチレングリコールジチオグリコレート、トリエチレングリコールジチオプロピオネート、ポリエチレングリコールジチオグリコレート、ポリエチレングリコールジチオプロピオネート、1,4−シクロヘキサンジオールジチオグリコレート、1,4−シクロヘキサンジオールジチオプロピオネート、1,4−シクロヘキサンジメタノールジチオグリコレート、1,4−シクロヘキサンジメタノールジ
チオプロピオネート、2,5−ジヒドロキシ−1,4−ジチアンジチオグリコレート、2,5−ジヒドロキシ−1,4−ジチアンジチオプロピオネート等の多官能チオール基を有するカルボン酸エステル類。
【0037】
2,5−ビス(メルカプトメチル)−1,4−ジチアン、2,5−ビス(メルカプトメチルチオエチル)−1,4−ジチアン、2,5−ビス(メルカプトエチル)−1,4−ジチアン、2,3,5−トリス(メルカプトメチル)−1,4−ジチアン、2,3、5−トリス(メルカプトメチルチオエチル)−1,4−ジチアン、2,3、5−トリス(メルカプトエチル)−1,4−ジチアン、2,3,5,6−テトラキス(メルカプトメチル)−1,4−ジチアン、2,3,5,6−テトラキス(メルカプトメチルチオエチル)−1,4−ジチアン、2,3,5,6−テトラキス(メルカプトエチル)−1,4−ジチアン等のジチアン環を有するポリチオール類などが挙げられる。
【0038】
[(b)カルボン酸誘導体構造を含む多官能チオール化合物]
(b)カルボン酸誘導体構造を含む多官能チオール化合物としては、一般式(10)
【0039】
【化10】

(10)
【0040】
(式中の記号は前記の記載と同じ意味を表わす。)
で表されるメルカプト基含有カルボン酸とアルコール類をエステル化することにより合成できる化合物が含まれる。この際、エステル化反応後の化合物を多官能チオール化合物とするために、アルコール類として多官能アルコールを用いる。
【0041】
また、上記多官能チオール化合物の製造方法は、特に限定されるものではないが、上述した一般式(10)で表されるメルカプト基含有カルボン酸とアルコール類とを常法に従って反応させてエステルを形成させることにより、得ることができる。エステル反応の条件については特に制限はなく、従来公知の反応条件の中から適宜選択することができる。
【0042】
一般式(10)で表されるメルカプト基含有カルボン酸の具体例としては、チオグリコール酸、チオプロピオン酸、2−メルカプトプロピオン酸、3−メルカプト−3−フェニルプロピオン酸、3−メルカプト酪酸、2−メルカプトイソ酪酸、3−メルカプトイソ酪酸、2−メルカプト−3−メチル酪酸、3−メルカプト−3−メチル酪酸、3−メルカプト吉草酸、3−メルカプト−4−メチル吉草酸等が挙げられる。
【0043】
多官能アルコールの具体的な例としては、アルキレングリコール(但し、炭素数2〜10のアルキレン基が好ましく、その炭素鎖は枝分かれしていてもよい。例としては、エチレングリコール、トリメチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、テトラメチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等が挙げられる。)、ジエチレングリコール、グリセリン、ジグリセロール、ポリグリセリン、ジプロピレングリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ノルボルネンジメタノール、ノルボルナンジメタノール、トリスヒドロキシエチルイソシアヌレート、ポリカーボネートジオール、両末端ヒド
ロキシポリシリコーン、芳香環を含有したポリオールなどが挙げられる。
【0044】
中でも、好ましい多官能アルコールとしては、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、トリメチロールプロパン、トリスヒドロキシエチルイソシアヌレート、ペンタエリスリトール、ポリカーボネートジオール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノールなどが挙げられ、芳香環を含有したポリオールとしては、ビスフェノールA−ジヒドロキシエチルエーテル、4、4'−(9−フルオレニリデン)ジフェノール
、4、4'−(9−フルオレニリデン)ビス(2−フェノキシエタノール)などが挙げら
れる。
【0045】
これらの多官能アルコールをエステル化してなるカルボン酸誘導体構造を含む多官能チオール化合物の具体例としては、一般式(11)〜(15)で表される多官能チオール化合物が好ましい。
【0046】
【化11】

(11)
【0047】
(式中、Lは前記一般式(7)で示される基を表わす。)。
【0048】
【化12】

(12)
【0049】
(式中、Lは前記と同じ意味を表わす。)。
【0050】
【化13】

(13)
【0051】
(式中、Lは前記と同じ意味を表わす。)。
【0052】
【化14】

(14)
【0053】
(式中、Lは前記と同じ意味を表わす。)。
【0054】
【化15】

(15)
【0055】
(式中、Lは前記と同じ意味を表わす。)。
中でも好ましくは、ブタンジオールビス(3−メルカプト−3−フェニルプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプト−3−フェニルプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプト−3−フェニルプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−メルカプト−3−フェニルプロピオネート)、トリスヒドロキシエチルイソシアヌレートトリス(3−メルカプト−3−フェニルプロピオネート)、ブタンジオールビス(3−メルカプトブチレート)、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトブチレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−メルカプトブチレート)、トリスヒドロキシエチルイソシアヌレートトリス(3−メルカプトブチレート)、ブタンジオールビス(2−メルカプトイソブチレート)、トリメチロールプロパントリス(2−メルカプトイソブチレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(2−メルカプトイソブチレート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(2−メルカプトイソブチレート)、トリスヒドロキシエチルイソシアヌレートトリス(2−メルカプトイソブチレート)、ブタンジオールビス(3−メルカプト−3−メチルブチレート)、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプト−3−メチルブチレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプト−3−メチルブチレート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−メルカプト−3−メチルブチレート)、トリスヒドロキシエチルイソシアヌレートトリス(3−メルカプト−3−メチルブチレート)、ブタンジオールビス(3−メルカプト4−メチルペンチレート)、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプト4−メチルペンチレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプト4−メチルペンチレート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−メルカプト4−メチルペンチレート)、トリスヒドロキシエチルイソシアヌレートトリス(3−メルカプト4−メチルペンチレート)が挙げられる。
【0056】
[(C)ジスルフィド化合物]
本発明の電子線硬化性組成物に含まれる成分の一つである、(C)ジスルフィド化合物は、一般式(16)
【0057】
【化16】

(16)
【0058】
(式中、R3は脂肪族基、芳香族基または複素環基のいずれかである。)
で示される基を含有するジスルフィド化合物である。
本発明に係る(C)ジスルフィド化合物としては、具体的には、例えば、ジメチルジスルフィド、ジエチルジスルフィド、ジアリルスルフィド、ジ−n−プロピルジスルフィド、
ジ−n−ブチルジスルフィド、ジ−sec−ブチルジスルフィド、ジ−tert−ブチルジスルフィド、ジ−tert−アミルジスルフィド、ジシクロヘキシルジスルフィド、ジ−tert−オクチルジスルフィド、ジ−n−ドデシルジスルフィド、ジ−tert−ドデシルジスルフィドなどの脂肪族ジスルフィド化合物;ジフェニルジスルフィドなどの芳香族ジスルフィド化合物、あるいは、一般式(17)で表されるような化合物が挙げられる。
【0059】
【化17】

(17)
【0060】
(式中、R1は、炭素数1〜6の直鎖または分技のアルキル基を示し、R2は各々独立して水素原子または炭素数1〜6の直鎖または分技のアルキル基、あるいは芳香環を表わす。また、R6は炭素数1〜5の脂肪族基か芳香環である。)。
一般式(17)のジスルフィド骨格含有カルボン酸の具体例としては、例えば、2,2'-
ジチオジプロピオン酸、3,3'-ジチオジプロピオン酸、2,2'-ジメチル-2,2'-ジチオ-ジプロピオン酸、3,3'-ジフェニル-3,3'-ジチオジプロピオン酸、3,3'-ジチオジ
ブタン酸、4,4'-ジチオジブタン酸、3,3'-ジメチル-3,3'-ジチオジブタン酸、3,
3'-ジメチル-2,2'-ジチオジブタン酸、4,4-ジメチル-3,3'-ジチオジペンタン酸などが挙げられる。
【0061】
[電子線硬化性組成物]
本発明の電子線硬化性組成物は、上記(A)エチレン性不飽和二重結合を有する化合物と上記(B)多官能チオール化合物または(C)ジスルフィド化合物を、(100−X):X(ただし、10≧X>0)、好ましくは99:1〜95:5の質量比で含有することを特徴とする。さらに、化合物(A)中のエチレン性不飽和二重結合を有する官能基の数と、化合物(B)中のメルカプト基の数または化合物(C)中のジスルフィド基の数の比、つまり当量比が、(100−Y):Y(ただし、10≧Y>0)を満足していることが好ましい。
(B)多官能チオール化合物または(C)ジスルフィド化合物の量が、10を超える電子線硬化性組成物は、十分な架橋密度が得られない、または硬化樹脂の性能が化合物(B)や化合物(C)の性能に依存し、好ましくない。
【0062】
本発明の電子線硬化性組成物には、(A)エチレン性不飽和二重結合を有する化合物、
(B)多官能チオール化合物または(C)ジスルフィド化合物に加えて、重合開始剤を添加しておいてもよい。
【0063】
[重合開始剤]
前記重合開始剤としては、例えば、光あるいは熱重合開始剤が使用できる。
光重合開始剤は、紫外線あるいは可視光線、あるいは電子線などの活性エネルギー線を照射することで活性化し、樹脂成分がこれに反応することで連鎖的に重合反応および付加反応を起こし硬化物を得ることができる化合物である。
【0064】
このような光重合開始剤の具体例としては、例えば、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2'−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、キサントン、フル
オレン、フルオレノン、ベンズアルデヒド、アントラキノン、トリフェニルアミン、カルバゾール、3−メチルアセトフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4,4'−ジメトキ
シベンゾフェノン、4,4'−ジアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾイルプ
ロピルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、チオキサントン、ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン等の一種単独または二種以上の組み合わせを挙げることができる。これらのうち、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンを用いることが特に好ましい。
【0065】
熱重合開始剤としては、具体的には、例えば、アゾビスジフェニルメタン、2,2'−
アゾビスイソブチロニトリル、ジメチル−2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオネー
ト)などのようなアゾ系化合物、あるいは、ジアシルパーオキサイド類、ケトンパーオキサイド類、ハイドロパーオキサイド類、ジアルキルパーオキサイド類、パーオキシエステル類などの有機過酸化物、過硫酸塩などが使用でき、これらは一種単独または二種以上の組み合わせで使用できる。
【0066】
有機過酸化物の具体例としては、ベンゾイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ステアロイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ−2−メトキシブチルパーオキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシジカーボネート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカネート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシネオデカネート、t−ヘキシルパーオキシネオデカネート、t−ブチルパーオキシネオデカネート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシピバレート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートなどが挙げられる。
【0067】
重合開始剤の使用量については特に制限されるものではないが、前記(A)エチレン性不飽和二重結合を有する化合物100質量部に対して、0.1〜20質量部の範囲内とすることが好ましく、0.5〜10質量部の範囲内とすることがより好ましい。これは、重
合開始剤の使用量が0.1質量部未満の場合は重合速度が遅くなる、あるいは酸素等による重合阻害を受けやすくなる場合があるためである。一方、重合開始剤の使用量が20質量部を超えると逆に重合反応における停止反応が大きくなり、得られる密着強度や透明性に影響を及ぼす虞がある。
【0068】
本発明の電子線硬化性組成物には、前記重合開始剤の他に、必要に応じて、シランカップリング剤や酸性リン酸エステル等の密着性向上剤、酸化防止剤、硬化促進剤、染料、充填剤、顔料、チキソトロピー付与剤、可塑剤、界面活性剤、滑剤、帯電防止剤などの添加剤を加えることもできる。
【0069】
本発明の電子線硬化性組成物には、(A)エチレン性不飽和二重結合を有する化合物、(B)多官能チオール化合物または(C)ジスルフィド化合物に加え、必要に応じて紫外線吸収剤、顔料、充填剤、レベリング剤などを添加してもよい。
【0070】
紫外線吸収剤としては、モノマーの一方又は両方に溶解するものであれば、特に制限はなく、各種のものを使用することができ、具体的には、例えば、2−ヒドロキシベンゾフェノン、2,4−ヒドロキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系、フェニルサリチレート等のサリチレート系、(2’−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2−メチレンビス〔4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール〕等のベンゾトリアゾール系、エチル2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート等のシアノアクリレート系の紫外線吸収剤が挙げられ、これらを単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0071】
顔料としては、例えば、チタン白(R型)、カーボンブラック、ベンガラ、キナクリドン、アントラキノン、モリブデートオレンジ、ペリノン、黄鉛、オーカー、フラバンスロン、イソインドリン、チオインジゴ、ジオキサジン、アルミ粉、マイカ粉、フタロシアニンなどが挙げられる。
【0072】
充填剤としては、例えば、沈降炭酸カルシウム、粘土、木粉、アスベスト、雲母、パルプ粉などが挙げられる。
レベリング剤としては、一般に滑剤と称されているものが平滑性、密着性、アンチブロッキング性、透明性付与のために使用される。具体例としては、流動パラフィン、天然パラフィン、合成パラフィン、ポリオレフィンワックス等の脂肪族炭化水素系滑剤、高級脂肪族系アルコール、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛などの金属石けん系滑剤、脂肪族エステル系滑剤などが挙げられる。
【0073】
[電子線硬化樹脂]
本発明の電子線硬化樹脂は、前記電子線硬化性組成物に種々公知の方法で、電子線を照射することによって得られる。以下、一つの例として、フィルムの片面に前記電子線硬化性組成物を積層して電子線硬化樹脂が形成された積層フィルムを製造する場合について説明する。積層方法としては、現在様々な分野で利用されているプラスチックフィルムへのコーティング技術を応用することができる。コーティング方法としては、溶液法、エマルジョン法、ホットメルト法などがあるが、電子線硬化樹脂の性能から溶液法が好ましい。溶液コーティングは、例えば、グラビヤロール法、マイヤーバー法、ドクターブレード法、リバースロール法、キス(2本ロール)法、スキーズ(3本ロール)法、カレンダー(4本ロール)法、エアーナイフ法、ファンデン法、ダイ法、マイクログラビヤ法などの方法で行うことができる。
【0074】
上記コーティング加工時に用いられるプラスチックフィルムとしては、特に制限はなく
、種々のものが用いられるが、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、セルロースアセテートフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリエステルフィルム(ポリエチレンテレフタレートフィルム)、ポリカーボネートフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、ポリアミドフィルム、ポリイミドフィルム、ポリ四フッ化エチレンフィルム、ポリフッ化ビニルフィルムなどが挙げられる。フィルムは、通常、50〜400μm、さらには75〜200μmの厚さを有するものが好ましい。プラスチックフィルムの厚さが50μm未満のものを用いた場合は、照射した電子線によりプラスチックフィルムが劣化する虞があり、一方、400μmを超える場合は、得られる積層フィルムの巻き取りが困難になる虞がある。
【0075】
上記のコーティング加工において、フィルム状に塗工される電子線硬化性組成物の膜厚は、通常、1〜1000μm、さらには10〜100μmの厚さが好ましい。膜厚が1μm未満の場合は、充分な接着強度を有する電子線硬化樹脂が得られない虞があり、1000μmを超える場合は、電子線硬化性組成物にエネルギー量の大きな電子線を照射した場合、塗膜中で起こる発熱により得られる電子線硬化樹脂の内部歪が目立つようになる虞がある。
【0076】
一般に、電子線照射では、帯電防止、滅菌作用という、紫外線照射には無い効果が得られることが知られている。帯電防止効果については、特に何の処理をする必要もなく、単に電子線を照射することによって得られる。従来は、樹脂内に帯電防止剤を練り込んだり、硬化後に後処理として帯電防止用のコーティングを行っていたが、本発明においては、それらの処理は必要ない。また、滅菌作用についても、特に処理することもなく電子線照射のみで得られる。この硬化は、低エネルギー量の電子線照射装置でも得られる。また、滅菌のレベルも従来から行われている抗菌処理よりも、はるかに高いレベルで細菌類の増殖を抑制する効果がある。また、かびについても同様の防かび効果を持つ。
【0077】
こうして得られたフィルム上に、反射防止膜やハードコート層を設けることによって、光学フィルムとして用いることができる。反射防止膜やハードコートの形成材料としては、高屈折率材料として例えば、ZnO、TiO2 、CeO2、Sb25 、SnO2 、Z
rO2 、Al23などの金属酸化物微粒子、或いはこれら2種以上の複合金属酸化物微
粒子やATO(アンチモン−錫酸化物)やITO(インジウム−錫酸化物)などの導電性金属酸化物超微粒子を挙げることができ、低屈折率材料としてMgF、SiOx (xは1.50≦x≦2.00)、LiF、3NaF・AlF3 、AlF3 、Na3 AlF6 などが挙げられる。またそれらは、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、イオンビームアシスト法など、任意の方法で形成することができる。また本発明においては、反射防止膜は、高屈折率材料を用いた層をλ/2、低屈折率材料を用いた層をλ/4の厚さで設計するのが好ましい(ここで、λは550nm)。また、ここで得られた光学フィルムはワードプロセッサ,コンピュータ,テレビジョン等のディスプレイ、例えばCRTディスプレイ、液晶ディスプレイ、プロジェクションディスプレイ、プラズマディスプレイ、ELディスプレイ等の表面保護、あるいは干渉縞を防止する目的で用いることができる。
【実施例】
【0078】
次に、実施例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれによって制限されるものではない。
[実施例1〜4、比較例1]
〔1〕電子線硬化性組成物および電子線硬化樹脂の製造
表1に記載の(A)エチレン性不飽和二重結合を有する化合物、並びに(B)多官能チオール化合物および(C)ジスルフィド化合物をそれぞれ表2に記載の組成でジクロロメタン(純正化学社製)に室温で撹拌混合し、均一に溶解させて電子線硬化性組成物の溶液を
調製した。
【0079】
次に、これらの硬化性組成物溶液をガラス基板(大きさ50mm×50mm)上に、乾燥膜厚が約20μmとなるように塗布し、40℃で60分間溶剤を真空乾燥させ、ガラス基板上に、電子線硬化性組成物を用意した。
次に、ガラス基板とともに、電子線硬化性組成物を、送り速度20m/分、2Mrad(メガラッド)のエネルギー量の条件下で電子線を照射して電子線硬化させ、厚さ20μmの電子線硬化樹脂からなるフィルムを得た。
〔2〕電子線硬化性組成物および電子線硬化樹脂の評価
(1)反応性の評価
〔1〕で作製した電子線硬化性組成物のエチレン性不飽和二重結合基の吸収ピ−クを赤外分光計(日本分光社製FT/IR7000)で測定したところ、810cm-1であった。次に、電子線硬化性組成物に電子線を照射した後電子線硬化樹脂のエチレン性不飽和二重結合基の吸収ピ−クを測定し、電子線硬化性組成物のエチレン性不飽和二重結合基の吸収ピ−クを測定し、エチレン性不飽和二重結合基の残存度を比較した。その結果を表3に示す。なお、エチレン性不飽和二重結合基の残存度は、比較例1の二重結合残存度を100とした。
(2)耐溶剤性の評価
[1]で作製した電子線硬化樹脂からなるフィルムをo−キシレン(和光純薬工業社製)を含んだ布を用いて、フィルム表面を50回磨耗したときの変化によって判断した。
○;変化無し
△;膨潤、白化
×;溶解
【0080】
【表1】

【0081】
【表2】

【0082】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)エチレン性不飽和二重結合を有する化合物と、(B)多官能チオール化合物または(C)ジスルフィド化合物を(100−X):X(ただし、10≧X>0)の質量比で含有することを特徴とする電子線硬化性組成物。
【請求項2】
(A)エチレン性不飽和二重結合を有する化合物と、(B)多官能チオール化合物または(C)ジスルフィド化合物を(100−X):X(ただし、10≧X>0)の質量比で含有し、かつ、化合物(A)中のエチレン性不飽和二重結合を有する官能基の数と、化合物(B)中のメルカプト基の数または化合物(C)中のジスルフィド基の数の比が、(100−Y):Y(ただし、10≧Y>0)であることを特徴とする電子線硬化性組成物。
【請求項3】
(A)エチレン性不飽和二重結合を有する化合物が、エチレン性不飽和二重結合を2個以上有する化合物である請求項1または2に記載の電子線硬化性組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の電子線硬化性組成物に、電子線を照射することにより得られる電子線硬化樹脂。
【請求項5】
請求項4に記載の電子線硬化樹脂からなる光学フィルム。

【公開番号】特開2008−13690(P2008−13690A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−187228(P2006−187228)
【出願日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】