説明

電子装置及び電子部品

【課題】電子部品を収容した筐体内に発生する不要電波を抑制する。
【解決手段】筐体20内に発生する不要電波の波長λ1に基づき、筐体20に収容される半導体チップ30の内部に、その底面側に配設した金属膜40から、λ1’/4(λ1’は半導体チップ30内を伝播する電波の波長)の位置に、抵抗膜31を配設することによって、当該半導体チップ30をλ/4型電波吸収体とし、筐体20内の不要電波の発生を抑制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電波吸収能力を有する電子装置及び電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品を筐体に収容した際には、導波管モードの共振により、その筐体内に不要な電波が発生する場合がある。筐体内に発生する不要電波を抑制するために、筐体に電波吸収体を設ける技術、電子部品が実装される回路基板の表面に電波吸収体を設ける技術等が知られている。
【0003】
また、電波の抑制に関し、従来、電子部品表面を被覆する電磁波遮蔽シート等も提案されている。
尚、半導体分野では、ポリシリコンを半導体素子内に形成する抵抗に用いる技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−40909号公報
【特許文献2】特開2002−124592号公報
【特許文献3】国際公開第2003/081973号パンフレット
【特許文献4】特開2006−332428号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これまで、電子部品を収容した筐体内の不要電波の発生を抑制するためには、電子部品や筐体等に電波吸収体を別途設けることによる材料費の増加、電波吸収体を設ける工程を追加することによる加工費の増加等、コストの増加が避けられなかった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一観点によれば、電子部品と、前記電子部品を収容する導体からなる筐体と、前記電子部品の第1面側に配設され、電波を反射する反射部と、前記第1面から、前記電子部品に入射される電波の(2m−1)/4波長(mは自然数)離れた位置に配設された抵抗部と、を有する電子装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
開示の電子装置によれば、所定波長の電波を、低コストで抑制することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】電子部品を収容した筐体内の電界分布の一例を模式的に示す図である。
【図2】電子装置の一例の要部を模式的に示す図である。
【図3】λ/4型電波吸収体の説明図である。
【図4】半導体チップの一例の要部断面模式図である。
【図5】半導体チップモデルの説明図である。
【図6】チップ層の厚さを変化させた場合の入射波の減衰特性である。
【図7】抵抗膜の面抵抗を変化させた場合の入射波の減衰特性である。
【図8】近似モデルの説明図である。
【図9】不要電波の周波数と信号励振ポート間の信号レベルとの関係を示す図である。
【図10】抵抗膜のレイアウトイメージの一例を示す図である。
【図11】電子装置の製造フローの一例を示す図である。
【図12】電子装置の第1構成例を示す図である。
【図13】電子装置の第2構成例を示す図である。
【図14】電子装置の第3構成例を示す図である。
【図15】電子装置の第4構成例を示す図である。
【図16】電子装置の第5構成例を示す図である。
【図17】別形態の半導体チップの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は電子部品を収容した筐体内の電界分布の一例を模式的に示す図である。
半導体素子、或いは半導体素子が実装された回路基板等の電子部品1010を、金属等の筐体1020に収容して使用する形態の電子装置1000では、筐体1020内で生じる導波管モードの共振により、不要電波による定在波が発生する場合がある。不要電波は、筐体1020内に、例えば、図1に矢印で示すように、電子部品1010付近で大きく、電子部品1010から離れるに従って小さくなるような電界分布を生じさせる。
【0010】
筐体1020内に発生する不要電波は、筐体1020の寸法に依存して発生する。今、電子部品1010の動作周波数の波長がλで、筐体1020の寸法がa×b×cであるとした場合、a,b,cのうちの少なくとも1つが約λ/2を上回ると、筐体1020内に不要電波が発生する可能性が高くなる。
【0011】
不要電波は、電子部品1010の信号伝播特性を劣化させる一因となり得る。このような不要電波を発生させる共振は、電子部品1010の動作周波数が、ミリ波帯やマイクロ波帯等、高周波数帯域である場合に生じ易い。
【0012】
以下、上記のような不要電波の抑制が可能な電子部品及び電子装置の形態について、説明する。
図2は電子装置の一例の要部を模式的に示す図であって、(A)は斜視図、(B)は断面図である。
【0013】
図2に示す電子装置10では、金属等の筐体20内に、電子部品として、例えば、半導体チップ(半導体素子)30が収容されている。尚、図2では、筐体20内の空間の寸法をa×b×cとしている。また、図2では、半導体チップ30の筐体20外部との接続構造については図示を省略している。
【0014】
半導体チップ30の一方の面(底面)には、筐体20内で生じる電波を反射する金属膜(反射部)40が配設されている。金属膜40は、筐体に電気的に接続され、接地電位とされる。金属膜40が配設された半導体チップ30が、その金属膜40の配設面側に設けた接着層50を介して、筐体20の底部内面に固定されている。
【0015】
半導体チップ30の内部には、図2(B)に示すように、抵抗膜(抵抗部)31が配設されている。抵抗膜31には、ポリシリコン等、所定の面抵抗を有するものを用いる。
抵抗膜31は、例えば、半導体チップ30の動作時に筐体20の寸法bに依存して発生する不要電波の波長をλ1とした場合、半導体チップ30の底面(金属膜40の配設面)から、当該波長λ1を基に設定された半導体チップ30内の位置に配設される。
【0016】
抵抗膜31は、例えば、波長λ1の電波が半導体チップ30に入射してその内部を伝播する際に生じる波長短縮を考慮し、当該電波の波長短縮後の波長λ1’を用い、半導体チップ30底面からλ1’/4離れた位置に配設する。即ち、抵抗膜31を含む半導体チップ30、及び金属膜40により、所謂λ/4型電波吸収体を構成する。
【0017】
ここで、λ/4型電波吸収体について、図3を参照して説明する。
ある媒質A(誘電率εr)の一方の側に導電反射層Bが存在し、媒質Aの他方の側が自由空間Sであり、自由空間Sから媒質Aに電波が垂直入射する場合を想定する。
【0018】
媒質Aの特性インピーダンスをZa、導電反射層Bの特性インピーダンスをZbとすると、自由空間Sから入射する電波の、導電反射層Bの入射面における反射係数Γは、次式(1)で与えられる。
【0019】
Γ=(Zb−Za)/(Zb+Za) ・・・(1)
導電反射層Bの特性インピーダンスZb=0であるので、式(1)より、反射係数Γ=−1となり、導電反射層Bに入射した電波は、導電反射層Bで完全反射する。その結果、媒質Aに入射する電波と導電反射層Bから反射した電波とが干渉し、定在波が発生することになる。
【0020】
この場合、媒質A内を伝播する電波(波長λ)の、導電反射層Bからλ/4離れた位置でのインピーダンスは無限大となる。仮に、この位置に、面抵抗Rの抵抗膜を配置し、自由空間Sにおける空間伝播インピーダンスをZoとすると、当該位置での反射係数Γsは、次式(2)で与えられる。
【0021】
Γs=(R−Zo)/(R+Zo) ・・・(2)
式(2)より、配置する抵抗膜の面抵抗Rが、自由空間Sの空間伝播インピーダンスZo(≒377Ω/□)と等しいときに、反射係数Γs=0となる。即ち、導電反射層Bで反射した電波が、抵抗膜の位置で反射せず、抵抗膜に完全に吸収されることになる。電波の吸収量α(デシベル表示)は、次式(3)で表される。
【0022】
α=20log|(R−Zo)/(R+Zo)| ・・・(3)
上記の半導体チップ30では、底面に配設した金属膜40と、底面からλ1’/4(λ1’は半導体チップ30内を伝播する電波の波長)の位置に配設した抵抗膜31とにより、それ自体をλ/4型電波吸収体として機能させる。このような半導体チップ30の抵抗膜31としてポリシリコンを用いた場合、ポリシリコンは、その面抵抗が450Ω/□程度であり、約377Ω/□の空間伝播インピーダンスに近いため、良好な電波吸収特性を得ることが可能になる。
【0023】
このように、上記の電子装置10では、筐体20に収容する半導体チップ30内の所定位置に抵抗膜31を配設し、当該半導体チップ30をλ/4型電波吸収体として機能させる。そのため、電波吸収体を筐体表面や半導体チップ表面等に別途外付けで設けることなく、低コストで、不要電波の発生を抑制することができる。
【0024】
上記の電子装置10では、その構造上、半導体チップ30の厚さ方向に伝播する電波を効果的に吸収することができる。そのため、電子装置10によれば、筐体20の寸法bに依存して発生する不要電波を効果的に抑制することができる。
【0025】
尚、図2では、半導体チップ30の底面に金属膜40を配設する場合を例示したが、半導体チップ30の底面に対向する筐体20の底部が金属である場合には、半導体チップ30の底面に必ずしも金属膜40を配設することを要しない。その筐体20の底部を反射膜(反射部)として機能させることができるためである。金属膜40を配設しない場合には、筐体20の底部内面からλ1’/4(λ1’は半導体チップ30内を伝播する電波の波長)の位置に抵抗膜31を配設した半導体チップ30を用いるようにすればよい。
【0026】
続いて、半導体チップ30の構成について、より詳細に説明する。
図4は、半導体チップ30の一例の要部断面模式図である。
半導体チップ30は、上記のように、例えば、その底面に金属膜40が配設され、当該金属膜40の配設面側で、接着層50を介して、筐体20に固定される。尚、接着層50には、半田、共晶半田、導電性ペースト等を用いることができる。
【0027】
半導体チップ30は、ウェル領域32aが形成されたシリコン(Si)等の半導体基板32を有し、この半導体基板32に、トランジスタ素子、抵抗素子、容量素子等の図示しない所定の回路素子が形成される。半導体基板32の表層部には、STI(Shallow Trench Isolation)法、又はLOCOS(Local Oxidation of Silicon)法を用いて、素子分離領域33が形成される。
【0028】
半導体基板32の上方には、層間絶縁膜、配線及びビア(プラグ)を含む配線層34が形成される。配線層34は、例えば、インターミディエイト配線層34A、セミグローバル配線層34B、及びグローバル配線層34Cに大別される。
【0029】
インターミディエイト配線層34Aには、例えば、半導体基板32に形成されている、比較的短距離の回路素子間を接続する配線、及び当該配線を他の配線と接続するビア(プラグ)が形成される(配線及びビア(プラグ)は図示を省略)。セミグローバル配線層34Bには、例えば、比較的長距離の配線、及び当該配線を他の配線と接続するビアが形成される(配線及びビアは図示を省略)。グローバル配線層34Cには、例えば、電源ラインに電気的に接続される配線34a及びビア34bが形成される。
【0030】
配線層34の上方には、電源ラインに電気的に接続される、外部接続用の配線(電極パッドを含む)35が形成される。尚、配線層34上には、例えば、配線35の一部を残し、図示しない無機系(酸化シリコン等)及び/又は有機系(ポリイミド等)の保護膜が形成される。
【0031】
不要電波の抑制に用いる上記抵抗膜31は、このような構成を有する半導体チップ30の、例えば、素子分離領域33上に形成される。抵抗膜31は、半導体チップ30内の回路(トランジスタ素子、抵抗素子、容量素子等、当該素子に電気的に接続されている配線及びビア)からは分離された状態で形成される。抵抗膜31をポリシリコンで形成する場合には、抵抗膜31を、トランジスタ素子のゲート電極や、回路内の抵抗素子と共に形成することができる。尚、その際、抵抗膜31として用いるポリシリコンには、シリサイド化を行わない。
【0032】
抵抗膜31は、金属膜40(図4では半導体チップ30の底面)から、当該抵抗膜31(図4では素子分離領域33の表面)までの厚さt1が、筐体20内に発生する不要電波の波長λ1を基に、半導体チップ30内伝播時の波長λ1’の1/4に設定される。例えば、筐体20の寸法a,b,c、及び不要電波の波長λ1を基に、予め半導体基板32に対して実施する裏面研削(バックグラインド)時の研削量を調整し、厚さt1をλ1’/4にする。
【0033】
尚、金属膜40から抵抗膜31までの厚さt1は、例えば、100μm〜775μm程度とすることができる。配線層34の厚さt2は、金属膜40から抵抗膜31までの厚さt1より十分小さい、10μm未満とすることができる。また、金属膜40の厚さt3は、例えば、1μm未満とすることができる。
【0034】
続いて、半導体チップ30の設計例について説明する。
ここでは、便宜上、図5に示すような半導体チップモデル(近似モデル)100を想定する。半導体チップモデル100は、チップ層101の表裏面に(表裏面共全面に)それぞれ、金属膜102と抵抗膜103が配設された構造を有している。
【0035】
この半導体チップモデル100において、チップ層101の厚さはt[m]とする。チップ層101の誘電率εrは、Siを用いた半導体チップの場合その主要成分がSiとなることに鑑み、Siの誘電率である11.7とする。また、抵抗膜103は、面抵抗R[Ω/□]とする。そして、このような半導体チップモデル100の抵抗膜103側から、電波(入射波X)が入射するものとする。
【0036】
チップ層101の厚さt[m]は、入射波Xのチップ層101内での波長短縮を考慮した場合、次式(4a)〜(4c)から求めることができる。式(4a)〜(4c)においては、光速をCo[m/s]とし、入射波Xは、その周波数をf0[Hz]、波長をλ0[m]、チップ層101内伝播時の波長をλ0’[m]とする。
【0037】
λ0’=λ0/(εr)1/2 ・・・(4a)
λ0=Co/f0 ・・・(4b)
t=λ0’/4=Co/{4×f0×(εr)1/2} ・・・(4c)
ここで、チップ層101の厚さt、又は抵抗膜103の面抵抗Rを変化させた場合の、入射波Xの減衰特性を、図6及び図7に示す。
【0038】
まず、図6は、チップ層101の厚さtを変化させた場合の入射波Xの減衰特性である。
この図6には、抵抗膜103の面抵抗Rを450Ω/□に固定し、チップ層101の厚さtを300μm,550μm,775μmと変化させた場合における、入射波Xの周波数[GHz]とその減衰量[dB]との関係を示している。
【0039】
図6より、チップ層101の厚さtを300μmとした場合には、約28GHzに入射波Xの減衰ピークが見られる。チップ層101の厚さtを550μmとした場合には、約40GHzに入射波Xの減衰ピークが見られる。チップ層101の厚さtを775μmとした場合には、約73GHzに入射波Xの減衰ピークが見られる。
【0040】
このように、チップ層101の厚さt、即ち金属膜102から抵抗膜103までの距離を調整することにより、抵抗膜103で吸収できる入射波Xの周波数(波長)を制御することができる。換言すれば、抵抗膜103で吸収したい周波数(波長)を基に、チップ層101の厚さtを、式(4a)〜(4c)を用いて見積もることができる。
【0041】
また、図7は、抵抗膜103の面抵抗Rを変化させた場合の入射波Xの減衰特性である。
この図7には、チップ層101の厚さtを550μmに固定し、抵抗膜103の面抵抗Rを370Ω/□,450Ω/□,530Ω/□と変化させた場合における、入射波Xの周波数[GHz]とその減衰量[dB]との関係を示している。
【0042】
図7及び上記図6からもわかるように、チップ層101の厚さtが550μmである場合には、約40GHzに入射波Xの減衰ピークが見られるが、厚さtを固定し、面抵抗Rを変化させた場合には、面抵抗Rの値によって入射波Xの減衰量が変化する。しかし、面抵抗Rがいずれの値でも、約40GHzの電波は吸収されることがわかる。即ち、抵抗膜103の面抵抗Rの値が変動しても、チップ層101の厚さtを550μmとしていれば、約40GHzの入射波Xを吸収することができる。
【0043】
図6及び図7の知見より、上記半導体チップ30について、吸収する所望の不要電波の波長λ1を基に、金属膜40から抵抗膜31までの厚さt1を、半導体チップ30内伝播時の波長λ1’の1/4に調整する。それにより、たとえ抵抗膜31の面抵抗が変動する場合にも、抵抗膜31により、筐体20内に発生する不要電波を効果的に吸収することができる。
【0044】
また、図8及び図9は、抵抗膜の配設面積と不要電波の抑制効果との関係の説明図である。
図8は近似モデルの説明図であって、(A)は不要電波抑制用の抵抗膜を含まない近似モデルの説明図、(B)は不要電波抑制用の抵抗膜を含む近似モデルの説明図である。
【0045】
ここでは、筐体200を、金属筐体(完全導体)であるとし、筐体200の寸法を、a=4.0mm,b=3.75mm,c=6.0mmとしている。この筐体200内の底部に、半導体チップを配置するチップ層201を設定している。筐体200の対向する側面には、一対の信号励振ポート202a,202bを設けている。
【0046】
チップ層201の厚さtは550μmに設定している。また、チップ層201に配置する半導体チップの平面サイズは、図8(B)のチップ層201表面に実線P100で図示するようなサイズとし、ここでは2.0mm×3.0mmに設定している。
【0047】
尚、チップ層201の誘電率は11.7とし、筐体200内のチップ層201より上層にある空間層(寸法b)の誘電率は1としている。
このような近似モデルにおいて、チップ層201表面に、面抵抗430Ω/□の抵抗膜203を、その面積を変化させて配設する。ここでは、抵抗膜203を、チップ層201に配置する半導体チップの全表面に配設した場合(P100)、全表面の50%に配設した場合(鎖線P50)、全表面の30%に配設した場合(一点鎖線P30)、及び全表面の23%に配設した場合(点線P23)を想定する。尚、P50での抵抗膜の平面サイズは2.0mm×1.5mm、P30での抵抗膜の平面サイズは2.0mm×0.9mm、P23での抵抗膜の平面サイズは2.0mm×0.7mmとしている。
【0048】
このような近似モデルを用いた場合における、その筐体200内に発生する不要電波の周波数と、信号励振ポート202a,202b間を伝播する信号レベル(dB)との関係を、図9に示す。
【0049】
信号励振ポート202a,202b間を伝播する信号レベル(dB)は、理想的には−∞であるが、筐体200内での不要電波(共振)の発生により、図9に示すように、特定周波数で信号が伝わり易くなる(例えば図9に矢印で示した箇所)。
【0050】
図9より、抵抗膜203を設けている場合(図8(B))には、抵抗膜203を設けていない場合(図8(A))に比べて、当該特定周波数での信号レベルが小さく抑えられ、不要電波の影響が低減されていることがわかる。更に、当該低減効果は、抵抗膜203の面積が大きくなるほど大きくなる傾向があるが、抵抗膜203が、上記のP23のように、半導体チップ平面サイズの20%程度であっても、十分な効果が得られていることがわかる。
【0051】
図8及び図9の知見より、上記半導体チップ30についても、抵抗膜31を配設することにより、筐体20内に発生する不要電波の発生を、効果的に抑制することができると言える。また、配設する抵抗膜31は、例えば、半導体チップ30の平面サイズの20%程度であっても、十分な効果を得ることが可能であると言うことができる。
【0052】
半導体チップ30内に抵抗膜31を配設する場合には、抵抗膜31は、例えば、当該半導体チップ30内に形成される他の回路素子の配置に応じて配設する。
抵抗膜31のレイアウトイメージの一例を図10に示す。
【0053】
この図10には、半導体チップ30に含まれる回路素子として、トランジスタ素子111、インダクタ素子112、容量素子113、これらを電気的に接続する配線114、及び外部接続用の電極パッド115がレイアウトされている場合を例示している。抵抗膜31は、このような回路素子のレイアウトに対し、例えば、当該回路素子の未形成領域に配設することができる。
【0054】
尚、図10は、回路素子及び抵抗膜31のレイアウトを透視的に示した図であり、回路素子の構成要素の全部、及び抵抗膜31が、全て同一層内に形成されるものではない。抵抗膜31は、例えば、透視的に見た場合の回路素子の未形成領域に、広範に配設することが可能である。
【0055】
半導体チップ30内への抵抗膜31の配設にあたり、抵抗膜31は、各回路素子との間にそれぞれ、一定距離を設けて配設することが好ましい。抵抗膜31と回路素子との間隔が近くなると、回路内を流れる信号、特に高周波信号の、抵抗膜31による損失が生じ、電圧降下等によって、所望の回路機能を実現することができなくなる場合があり得るためである。このような点を考慮し、抵抗膜31は、半導体チップ30の動作周波数にも依るが、例えば、平面的或いは立体的に、全ての回路素子との間にそれぞれ、配線114の幅の2倍以上の間隔を設けて配設する。
【0056】
但し、抵抗膜31の存在が、回路機能上問題とならないような場合には、抵抗膜31を回路素子の少なくとも1つに対して、より近づけて配置することもできる。また、抵抗膜31の存在が、回路機能上問題とならないような場合には、立体的に、抵抗膜31の一部或いは全部が、回路素子の少なくとも1つとオーバーラップするように配置することもできる。
【0057】
続いて、以上説明したような半導体チップ30を含む電子装置10の製造フローの一例について説明する。
図11は、電子装置10の製造フローの一例を示す図である。
【0058】
まず、製造する電子装置10の用途等を基に、商品企画を行う(ステップS1)。このステップS1では、半導体チップ30の機能、動作周波数及び寸法等、並びに、筐体20の材質及び寸法等の情報を含む、電子装置10の仕様を決定する。
【0059】
次いで、製造する電子装置10の仕様に基づき、当該電子装置10の設計(回路設計を含む)を行う(ステップS2)。
このステップS2では、例えば、トランジスタ素子等の回路素子を含む、半導体チップ30の論理機能の回路設計を行う。更に、このステップS2では、筐体20の寸法、及び半導体チップ30の動作周波数を基に、当該筐体20内で発生する不要電波(共振)の周波数f1(波長λ1)を求め、半導体チップ30内に配設する抵抗膜31の位置(厚さt1)を求める。
【0060】
前述のように、筐体20内の不要共振は、その寸法に依存して発生する。そのため、まず、筐体20の寸法、及び半導体チップ30の動作周波数に基づき、筐体20内に発生し得る不要電波の周波数f1(波長λ1)を求める。そして、求めた不要電波の周波数f1(波長λ1)と、誘電率εrとを用い、上記の式(4a)〜(4c)から、半導体チップ30内に配設する抵抗膜31の位置(厚さt1)を求める。
【0061】
即ち、式(4a),(4b)におけるf0(λ0)をf1(λ1)とし、誘電率εrと半導体チップ30内を伝播する電波の波長λ1’を用いて式(4c)により得られるt(=λ1’/4)を、厚さt1とする。
【0062】
式(4c)を用いて厚さt1を求める際の誘電率εrは、例えば、半導体チップ30の底面に金属膜40を配設し、当該半導体チップ30の半導体基板32としてSi基板を用いる場合には、Siの誘電率とすることができる。また、半導体基板32として、シリコンゲルマニウム(SiGe)基板、ゲルマニウム(Ge)基板、ガリウムヒ素(GaAs)基板等、他の基板を用いる場合には、それぞれの基板の誘電率を、式(4c)の誘電率εrに用いればよい。
【0063】
尚、式(4c)を用いて厚さt1を求める際の誘電率εrには、電波の伝播経路となる反射部(金属膜40や筐体20等)から抵抗膜31までの間に存在する半導体チップ30内外の材料の物性値を用いて得られる誘電率を用いることもできる。例えば、半導体基板32のほか、電波の伝播経路内のウェル領域32aや素子分離領域33、或いは接着層50等の存在を考慮し、誘電率εrを求めるようにしてもよい。
【0064】
ステップS2の設計後は、半導体チップ30の論理機能を実現するトランジスタ素子、配線等の回路素子、及び抵抗膜31のレイアウトを行う(ステップS3)。
このステップS3では、例えば、まず、半導体チップ30が備える回路素子のレイアウトを、所定の設計ルールに従って実行する。その後、レイアウト済みの回路素子の未形成領域に、抵抗膜31を広範にレイアウトする。その際、抵抗膜31は、前述のように、平面的或いは立体的に回路素子と一定距離を設けてレイアウトしたり、立体的に回路素子とオーバーラップさせてレイアウトしたりすることが可能である。
【0065】
ステップS3のレイアウト後は、半導体チップ30を形成するウェーハプロセスに移る(ステップS4)。
例えば、図3に例示したような構成を有する半導体チップ30の場合であれば、まず、所定の半導体基板(ウェーハ)32に、STI法等を用いて素子分離領域33を形成し、イオン注入法を用いてウェル領域32aを形成する。そして、ウェル領域32a形成後の半導体基板32に、トランジスタ素子、容量素子、抵抗素子等の回路素子を形成すると共に、素子分離領域33上に、抵抗膜31を形成する。
【0066】
その後は、層間絶縁膜の形成並びに、形成したトランジスタ素子等の回路素子に電気的に接続されるビア(プラグ)及び配線の形成を行い、配線層34を形成する。尚、層間絶縁膜は、CVD(Chemical Vapor Deposition)法等を用いて形成することができ、ビア(プラグ)及び配線は、フォトリソグラフィ技術及びエッチング技術と、CVD法やスパッタ法或いはめっき法等の成膜技術とを用いて形成することができる。
【0067】
最後に、外部接続用の電極パッドを含む配線35を形成し、更に、電極パッドの一部が露出するように保護膜を形成する。
ステップS4では、このようにして、1枚の半導体基板(ウェーハ)32に、複数の半導体チップ30を形成する。
【0068】
ステップS4のウェーハプロセス後は、半導体基板(ウェーハ)32に形成されている複数の半導体チップ30それぞれに対し、ウェーハ状態のまま、一次試験を行う(ステップS5)。この一次試験で良判定とされた半導体チップ30が、後の組み立て工程(ステップS6)において、電子装置10に組み立てられる。
【0069】
ステップS6の組み立て工程には、複数の半導体チップ30が形成されている半導体基板(ウェーハ)32のバックグラインド工程、及び個々の半導体チップ30に個片化するダイシング工程が含まれる。また、半導体チップ30の底面に金属膜40を配設する形態の場合、このステップS6の組み立て工程には、半導体チップ30底面への金属膜40の配設工程が含まれる。
【0070】
尚、金属膜40の配設工程は、ダイシングによって個片化された半導体チップ30に個別に行っても、或いは、バックグラインド後でダイシングを行う前に、半導体基板(ウェーハ)32の裏面全面に一括で形成してもよい。
【0071】
ステップS6におけるバックグラインド工程では、例えば、バックグラインド後の半導体基板(ウェーハ)32の裏面から、抵抗膜31までの距離が、上記ステップS2で求めた厚さt1になるまで、バックグラインドを行う。
【0072】
そして、金属膜40の配設まで行った後は、接着層50を用いて半導体チップ30を筐体20の底部内面に固定し、半導体チップ30の電極パッドを用いた電気接続を行って、半導体チップ30を筐体20内に収容した状態に組み立てる。これにより、所定の位置に抵抗膜31が形成された半導体チップ30を含む、電子装置10が得られる。
【0073】
ステップS6の組み立て工程後は、得られた個々の電子装置10についてそれぞれ、二次試験を行う(ステップS7)。そして、この二次試験で良判定とされた電子装置10が出荷されるようになる(ステップS8)。
【0074】
以上、電子装置10を例に説明した。以下には、電子装置の構成例について例示する。
図12は、電子装置の第1構成例を示す図である。
図12に示す電子装置300は、半導体チップ30と、当該半導体チップ30が収容される金属の筐体310とを備えている。半導体チップ30は、その底面に金属膜40が配設され、当該金属膜40の配設面側で、接着層50を介して、筐体310の底部内面に固定されている。
【0075】
筐体310には、その側壁部に、筐体310の内外間で信号を伝送するための端子部320が設けられている。端子部320は、信号伝送部321aをメタライズ処理により形成したセラミック端子321と、当該セラミック端子321の筐体310外の部分に形成されている信号伝送部321aに接続されたアウターリード322とを含んでいる。
【0076】
半導体チップ30は、当該セラミック端子321の筐体310内の部分に形成されている信号伝送部321aに、ワイヤ330で接続されている。
このような電子装置300では、筐体310内に発生し得る不要電波の波長λ1を基に、金属膜40から厚さt1=λ1’/4(λ1’は半導体チップ30内伝播時の波長)の位置に抵抗膜31が配設された半導体チップ30を設ける。それにより、筐体310内の不要電波を効果的に抑制することができる。
【0077】
尚、上記のように筐体310に金属を用いている場合には、金属膜40は必ずしも半導体チップ30底面に配設することを要しない。金属膜40を配設しない場合には、筐体310の底部内面から厚さt1の位置に抵抗膜31を配設した半導体チップ30を用いるようにすればよい。
【0078】
図13は、電子装置の第2構成例を示す図である。
図13に示す電子装置400は、金属の筐体410内に、半導体チップ30と、当該半導体チップ30と電気的に接続された回路基板420とが収容された構成を有している。半導体チップ30及び回路基板420は、接着層50を介して、筐体410の底部内面に固定されている。
【0079】
回路基板420には、所定の導電パターン421が形成されたセラミック基板、プリント基板等を用いることができる。半導体チップ30は、この回路基板420の導電パターン421に、ワイヤ431で接続されている。
【0080】
筐体410の側壁部には、端子部440が設けられている。端子部440は、金属等が用いられた導電性の芯線部441と、当該芯線部441の外周を覆う外周部442とを含んでいる。芯線部441は、筐体410の内部から外部に延在している。回路基板420は、芯線部441の筐体410内の部分にワイヤ432で接続されている。
【0081】
このような電子装置400によっても、上記電子装置300と同様、金属膜40から厚さt1=λ1’/4の位置に抵抗膜31を配設した半導体チップ30により、筐体410内の不要電波を効果的に抑制することができる。
【0082】
尚、上記のように筐体310に金属を用いている場合には、金属膜40は必ずしも半導体チップ30底面に配設することを要しない。
また、電子装置は、次の図14〜図16に示すような構成とすることも可能である。
【0083】
図14は、電子装置の第3構成例を示す図である。
図14に示す電子装置500は、所定の導電パターン511及び接地パターン(金属膜)512が形成された回路基板510の、当該接地パターン512上に、接着層50を介して半導体チップ30が搭載されている。
【0084】
回路基板510には、導電パターン511が形成されたセラミック基板、プリント基板等を用いることができる。回路基板510の接地パターン512は、透視的に半導体チップ30の平面サイズと同じか、或いはそれより大きな平面サイズで形成される。半導体チップ30は、この回路基板510の導電パターン511に、ワイヤ521で接続されている。
【0085】
回路基板510は、接着層530を介して、金属の筐体540の底部内面に固定され、半導体チップ30及び回路基板510が、筐体540に収容されている。
筐体540の側壁部には、上記電子装置400で述べたような端子部440が設けられており、回路基板510の導電パターン511は、芯線部441の筐体540内の部分にワイヤ522で接続されている。
【0086】
半導体チップ30の内部には、筐体540内に発生し得る不要電波の波長λ1を基に、接地パターン512から、厚さt1=λ1’/4(λ1’は半導体チップ30及び接着層50内伝播時の波長)の位置に、抵抗膜31が配設される。
【0087】
電子装置500では、回路基板510の接地パターン512を電波の反射部として機能させ、当該接地パターン512から半導体チップ30内の所定の位置に抵抗膜31を配設する。これにより、接地パターン512と抵抗膜31との距離に応じた波長の不要電波を、効果的に抑制することができる。
【0088】
図15は、電子装置の第4構成例を示す図である。
図15に示す電子装置600は、所定の導電パターン611が形成された回路基板610上に、接着層50を介して半導体チップ30が搭載されており、半導体チップ30が導電パターン611に、ワイヤ621で接続された構成を有している。
【0089】
回路基板610には、導電パターン611が形成されたセラミック基板、プリント基板等を用いることができる。この回路基板610には、半導体チップ30の搭載面側と反対の面側に、接地電位で、透視的に半導体チップ30の搭載領域と同じか、或いは当該搭載領域を包含する平面サイズの接地パターン(金属膜)612が配設されている。
【0090】
回路基板610は、接着層630を介して、金属の筐体640の底部内面に固定され、半導体チップ30及び回路基板610が筐体640に収容されている。
筐体640の側壁部には、上記電子装置400で述べたような端子部440が設けられており、回路基板610の導電パターン611は、芯線部441の筐体640内の部分にワイヤ622で接続されている。
【0091】
半導体チップ30には、筐体640内に発生し得る不要電波の波長λ1を基に、回路基板610の接地パターン612から、厚さt1=λ1’/4(λ1’は半導体チップ30、接着層50及び回路基板610内伝播時の波長)の位置に、抵抗膜31が配設される。
【0092】
上記のように、電子装置600では、回路基板610の接地パターン612から半導体チップ30内の所定の位置に抵抗膜31を配設する。これにより、接地パターン612と抵抗膜31との距離に応じた波長の不要電波を、効果的に抑制することができる。
【0093】
抑制したい不要電波の波長が比較的長くなると、その不要電波を抑制するための抵抗膜31を、半導体チップ30の底面からその内部の適当な位置(素子分離領域33上等)に配設することが、当該半導体チップ30の寸法上、行えなくなることが起こり得る。
【0094】
図14,図15に示した電子装置500,600によれば、接地パターン512,612を半導体チップ30から離間して配設するため、接地パターン512,612から抵抗膜31までの距離を確保し、比較的長波長の不要電波を抑制することができる。
【0095】
図16は、電子装置の第5構成例を示す図である。
図16に示す電子装置700は、半導体チップ30が、別の半導体チップ710の上方に接着層50を介して配設され、一体化された、所謂スタック型マルチチップモジュール(MCM)を有している。
【0096】
半導体チップ30,710は、所定の導電パターン721が形成された回路基板720に、それぞれワイヤ731,732で接続された構成を有している。下側の半導体チップ710の底面には、金属膜740が配設されている。
【0097】
金属膜740を含む半導体チップ710及び回路基板720は、接着層750を介して、金属の筐体760の底部内面に固定され、半導体チップ30,710及び回路基板720が筐体760に収容されている。
【0098】
筐体760の側壁部には、上記電子装置400で述べたような端子部440が設けられており、回路基板720の導電パターン721は、芯線部441の筐体760内の部分にワイヤ733で接続されている。
【0099】
電子装置700では、上側の半導体チップ30の内部に、筐体760内に発生し得る不要電波の波長λ1を基に、金属膜740から、厚さt1=λ1’/4(λ1’は半導体チップ30,710及び接着層50内伝播時の波長)の位置に、抵抗膜31が配設される。
【0100】
このようにスタック型MCMを用いた場合にも、下側の半導体チップ710底面の金属膜740から上側の半導体チップ30内の所定位置に抵抗膜31を配設することにより、金属膜740と抵抗膜31との距離に応じた波長の不要電波を抑制することが可能になる。即ち、抑制する不要電波が比較的長波長となった場合にも、金属膜740から抵抗膜31までの距離を確保し、当該不要電波を効果的に抑制することができるようになる。
【0101】
尚、図16には、スタック型MCMとして、2つの半導体チップ30,710を積層した場合を例示したが、積層数はこれに限定されるものではない。3つ以上の半導体チップを積層した場合にも、上記図16の例に従い、不要電波が抑制可能な電子装置を構成することが可能である。また、その場合、不要電波抑制のための抵抗膜(上記抵抗膜31に相当)を配設する半導体チップの積層位置は、最上層に限定されるものではなく、最下層の半導体チップ、或いは中間部に積層される半導体チップに、当該抵抗膜が配設されていてもよい。
【0102】
また、図16では、スタック型MCMを例示したが、下側の半導体チップ710に替えて、単なる土台を配設するようにしてもよい。即ち、土台の底面に金属膜740を配設し、金属膜740から所定位置の半導体チップ30内に、抵抗膜31を配設する。それにより、金属膜740から抵抗膜31までの距離を確保し、不要電波を抑制することも可能である。
【0103】
以上、不要電波の抑制が可能な電子装置について説明した。
以上の電子装置によれば、筐体内の不要電波の発生を抑制することが可能になる。以上説明した電子装置では、特に、半導体チップの厚さ方向の筐体寸法に依存して発生する不要電波を、効果的に抑制することができる。
【0104】
尚、半導体チップの平面方向の筐体寸法に依存して発生する不要電波を効果的に抑制するため、以下の図17に示すような構成を採用してもよい。
図17は、別形態の半導体チップの説明図である。
【0105】
図17(A)に示す半導体チップ30Aは、長さ方向Aに対向する側面の一方の側に金属膜(反射部)40Aが配設され、他方の側に抵抗膜(抵抗部)31Aが配設された構成を有している。
【0106】
抵抗膜31Aには、例えば、酸化インジウムスズ(Indium Tin Oxide;ITO)膜を用いることができる。ITO膜は、酸化インジウム(In23)に数%の酸化スズ(SnO2)を添加した化合物であり、空間伝播インピーダンスである377Ω/□程度の抵抗値を容易に実現することができる。
【0107】
半導体チップ30Aでは、金属膜40Aと抵抗膜31Aとの間の距離を、当該半導体チップ30Aが収容される筐体の長さ方向Aの寸法に依存して発生する不要電波の波長λ2を基に、λ2’/4(λ2’は半導体チップ30A内伝播時の波長)に設定する。即ち、長さ方向Aについて、λ/4型電波吸収体構造を形成する。これにより、筐体の長さ方向Aの寸法に依存して発生する不要電波を、金属膜40Aで反射させ、抵抗膜31Aで吸収して、効果的に抑制することが可能になる。
【0108】
また、図17(B)に示す半導体チップ30Cは、幅(奥行き)方向Cに対向する側面の一方の側に金属膜(反射部)40Cが配設され、他方の側に抵抗膜(抵抗部)31Cが配設された構成を有している。
【0109】
この半導体チップ30Cについても、金属膜40Cと抵抗膜31Cとの間の距離を、当該半導体チップ30Cが収容される筐体の幅方向Cの寸法に依存して発生する不要電波の波長λ3を基に、λ3’/4(λ3’は半導体チップ30C内伝播時の波長)に設定する。即ち、幅方向Cについて、λ/4型電波吸収体構造を形成する。これにより、筐体の幅方向Cの寸法に依存して発生する不要電波を抵抗膜31Cで吸収し、不要電波を効果的に抑制することが可能になる。
【0110】
尚、図17の例に従い、1つの半導体チップの長さ方向Aに対向する側面にそれぞれ金属膜40A及び抵抗膜31Aを配設し、更に、当該半導体チップの幅方向Cに対向する側面にそれぞれ金属膜40C及び抵抗膜31Cを配設してもよい。
【0111】
このように側面に金属膜40A,40C及び抵抗膜31A,31Cが配設された半導体チップを、所定の筐体に収容することにより、半導体チップの平面方向A,Cの筐体寸法に依存して発生する不要電波を効果的に抑制することが可能になる。
【0112】
また、上記の抵抗膜31を設けた半導体チップ30に対し、その長さ方向Aに対向する側面にそれぞれ金属膜40A及び抵抗膜31Aを配設し、幅方向Cに対向する側面にそれぞれ金属膜40C及び抵抗膜31Cを配設してもよい。これにより、当該半導体チップ30の厚さ方向B及び平面方向A,Cの筐体寸法に依存して発生する不要電波を、いずれも効果的に抑制することが可能になる。但し、コスト面では、電子装置の使用周波数帯域で問題となる不要電波の発生方向に合わせて、1方向に選択的に、上記のようなλ/4型電波吸収体構造を設けることが好ましい。
【0113】
尚、以上の説明では、不要電波を吸収するための抵抗部(抵抗膜)を、反射部(金属膜等)からλ/4(λは反射部と抵抗部との間を伝播する電波の波長)の位置に配設するようにした。抵抗部は、このような位置に限らず、反射部から(2m−1)×λ/4(mは自然数)の位置に配設すれば、上記同様、不要電波を吸収する。電子装置においては、反射部から(2m−1)×λ/4(mは自然数)の位置に抵抗部を配設することにより、筐体内に発生する不要電波を抑制することが可能である。
【0114】
反射部(金属膜等)は、筐体に電気的に接続することができ、例えば、接地電位の筐体に電気的に接続することによって接地電位にすることができる。
また、以上の説明では、電子部品として半導体チップを例にし、当該半導体チップ内に抵抗膜を配設する場合について述べたが、上記手法は、外部に電波を発生する様々な電子部品に対して適用可能である。
【0115】
以上説明した実施の形態に関し、更に以下の付記を開示する。
(付記1) 電子部品と、
前記電子部品を収容する導体からなる筐体と、
前記電子部品の第1面側に配設され、電波を反射する反射部と、
前記第1面から、前記電子部品に入射される電波の(2m−1)/4波長(mは自然数)離れた位置に配設された抵抗部と、
を有することを特徴とする電子装置。
【0116】
(付記2) 前記電子部品は、半導体素子であり、
前記抵抗部は、前記半導体素子の半導体基板内に配設されたポリシリコンであることを特徴とする付記1に記載の電子装置。
【0117】
(付記3) 前記抵抗部は、前記半導体素子に用いられている半導体基板に形成された絶縁部上に配設されていることを特徴とする付記1に記載の電子装置。
(付記4) 前記抵抗部は、前記電子部品内の回路から分離されていることを特徴とする付記1乃至3のいずれかに記載の電子装置。
【0118】
(付記5) 前記筐体に収容され、前記電子部品が電気的に接続された回路基板を更に含むことを特徴とする付記1乃至4のいずれかに記載の電子装置。
(付記6) 前記電子部品は、前記回路基板の上方に配設され、前記反射部は、前記電子部品の前記第1面側で、前記回路基板の表面に配設されていることを特徴とする付記5に記載の電子装置。
【0119】
(付記7) 前記反射部は、前記電子部品の前記第1面に配設されていることを特徴とする付記1乃至5のいずれかに記載の電子装置。
(付記8) 前記反射部は、前記筐体に電気的に接続されていることを特徴とする付記1乃至5のいずれかに記載の電子装置。
【0120】
(付記9) 前記反射部は、前記筐体と一体に形成されていることを特徴とする付記1乃至5のいずれかに記載の電子装置。
(付記10) 形成する電子部品の動作周波数と、前記電子部品を収容する筐体の寸法とに基づき、前記電子部品の動作時に前記筐体内に発生する電波の波長を求める工程と、
前記波長に基づき、前記電子部品の第1面から、前記電子部品内に配設される抵抗部までの距離を、前記電子部品に入射される電波の(2m−1)/4波長(mは自然数)にするときの前記電子部品の厚さを求める工程と、
前記抵抗部を含む前記電子部品を形成する工程と、
形成された前記電子部品を前記厚さに加工する工程と、
加工後の前記電子部品を前記筐体に収容する工程と、
を含むことを特徴とする電子装置の製造方法。
【0121】
(付記11) 加工後の前記電子部品の第1面側に反射部を配設する工程を更に含むことを特徴とする付記10に記載の電子装置の製造方法。
(付記12) 前記反射部は、前記筐体と一体に形成されていることを特徴とする付記10に記載の電子装置の製造方法。
【0122】
(付記13) 第1面側に配設され、電波を反射する反射部と、
前記第1面から、入射される電波の(2m−1)/4波長(mは自然数)の位置に配設された抵抗部と、
を有することを特徴とする電子部品。
【0123】
(付記14) 前記抵抗部は、前記電子部品内の回路から分離されていることを特徴とする付記13に記載の電子部品。
【符号の説明】
【0124】
10,300,400,500,600,700,1000 電子装置
20,200,310,410,540,640,760,1020 筐体
30,30A,30C,710 半導体チップ
31,31A,31C,103,203 抵抗膜
32 半導体基板
32a ウェル領域
33 素子分離領域
34 配線層
34A インターミディエイト配線層
34B セミグローバル配線層
34C グローバル配線層
34a,35,114 配線
34b ビア
40,40A,40C,102,740 金属膜
50,530,630,750 接着層
100 半導体チップモデル
101,201 チップ層
111 トランジスタ素子
112 インダクタ素子
113 容量素子
115 電極パッド
202a,202b 信号励振ポート
320,440 端子部
321 セラミック端子
321a 信号伝送部
322 アウターリード
330,431,432,521,522,622,731,732,733 ワイヤ
420,510,610,720 回路基板
421,511,611,621,721 導電パターン
441 芯線部
442 外周部
512,612 接地パターン
1010 電子部品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品と、
前記電子部品を収容する導体からなる筐体と、
前記電子部品の第1面側に配設され、電波を反射する反射部と、
前記第1面から、前記電子部品に入射される電波の(2m−1)/4波長(mは自然数)離れた位置に配設された抵抗部と、
を有することを特徴とする電子装置。
【請求項2】
前記電子部品は、半導体素子であり、
前記抵抗部は、前記半導体素子の半導体基板内に配設されたポリシリコンであることを特徴とする請求項1に記載の電子装置。
【請求項3】
前記抵抗部は、前記半導体素子内の回路から分離されていることを特徴とする請求項2に記載の電子装置。
【請求項4】
前記反射部は、前記筐体に電気的に接続されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の電子装置。
【請求項5】
前記反射部は、前記筐体と一体に形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の電子装置。
【請求項6】
第1面側に配設され、電波を反射する反射部と、
前記第1面から、入射される電波の(2m−1)/4波長(mは自然数)の位置に配設された抵抗部と、
を有することを特徴とする電子部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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