説明

電子装置

【課題】簡易な構成で、電子部品を略均一に冷却できる電子装置を提供する。
【解決手段】電子装置100は、筐体1と、筐体1の内部に収容される電子部品と、筐体1の一方の壁面6であって電子部品よりも上方位置に形成される排気口10と、一方の壁面6に対向する他方の壁面5であって電子部品よりも下方位置に形成される吸気口8と、吸気口8と電子部品との間に配置されるフィルタ9とを備える。フィルタ9は、他方の壁面5から一方の壁面6に向かって単調に下降する傾斜面9Aを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子装置に関し、更に詳しくは、筐体の内部に収容された電子部品を冷却する構造を有する電子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ブレードサーバは、筐体の内部にサーバブレードを隣り合わせて並べて収容すると共に、収容したサーバブレードを稼動するための電子装置である。サーバブレードは、一般に、細長い基板上に各種回路部品が搭載された回路基板である。本明細書では、以下このような回路基板を含め、種々の形態の電子装置の部品を、電子部品と称する。
【0003】
ブレードサーバでは、高実装化に伴い、多数の電子部品が搭載される場合がある。そのため、ブレードサーバには、電子部品の稼動時に発生する熱を冷却する構造が必要となる。
【0004】
特許文献1には、冷却対象となる電子部品を冷却する構造を有する電子装置が記載されている。この電子装置は、電子部品を収容する収容部と、電子部品の背面側であって収容部の上方位置に形成された排気口と、排気口の近傍に配置された冷却ファンと、電子部品の前面側であって収容部の下方位置に形成された吸気口とを備えている。また、この電子装置では、吸気口と収容部との間に、気流の経路を形成する気流ディレクタが配置されている。気流ディレクタには、収容部に収容された電子部品の前面側、中央側、及び背面側に気流を供給するための経路が形成されている。
【0005】
【特許文献1】特表2008−501200号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の電子装置では、冷却ファンの吸引力により吸気口から取り込まれた外気が、気流ディレクタの各経路を通過して分散し、さらに、電子部品の前面側、中央側及び背面側を通過し、排気口から外部に排気されることで、電子部品を略均一に冷却する。
【0007】
しかし、気流ディレクタは、気流を分散させるために気流の流れ方向や風量を考慮した上で各経路を形成しなければならず、構造が複雑になるという問題があった。さらに、気流ディレクタを配置するためのスペースを確保する必要もあった。
【0008】
本発明は、簡易な構成で、電子部品を略均一に冷却できる電子装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、筐体と、該筐体の内部に収容される電子部品と、前記筐体の一方の壁面であって前記電子部品よりも上方位置に形成される排気口と、前記一方の壁面に対向する他方の壁面であって前記電子部品よりも下方位置に形成される吸気口と、前記吸気口と前記電子部品との間に配置されるフィルタとを備え、
前記フィルタは、前記他方の壁面から前記一方の壁面に向かって単調に下降する傾斜面を形成することを特徴とする電子装置を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の電子装置によると、フィルタが傾斜面を形成するので、電子部品を通過する気流を分散化でき、簡易な構成で電子部品を略均一に冷却できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の例示的な実施の形態について詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る電子装置の構成を示す図である。同図では、電子装置の冷却構造を主に示し、他の構成部材は適宜省略している。電子装置は、ブレードサーバであり、また、冷却対象物は、サーバブレード等の電子部品である。図2には、図1に示すブレードサーバのA方向から見た断面と、ブレードサーバの内部での気流の動きを示した。
【0012】
ブレードサーバ100は、筐体1の内部に複数の電子部品を収容して稼動する電子装置である。筐体1は、電子部品を収容する空間である収容部2と、収容部2の上方であって収容部2と空気の流通が可能な上方空間3と、収容部2の下方であって収容部2と空気の流通が可能な下方空間4とに区切られている。
【0013】
収容部2の前面部5には、図示しない正面板が取り付けられ、筐体1の外部の空気(外気)の流入を遮断している。また、収容部2の背面部6には、バックプレーン7が配置されており、外気の流入を遮断している。収容部2には、電子部品が縦方向に隣り合って並べられ、かつ、バックプレーン7に電気的に接続された状態で搭載される。
【0014】
筐体1の下方空間4は、吸気口8と集塵フィルタ9とを有する。吸気口8は、外気を取り込むための開口であり、筐体1の前面であって電子部品よりも下方位置に形成されている。
【0015】
集塵フィルタ9は、吸気口8と電子部品との間に配置されており、平面的又は立体的な細かい網目状の濾過材で形成されている。集塵フィルタ9は、図示のように、筐体1の前面から背面に向かって単調に下降する傾斜面9Aを形成している。この傾斜面9Aは、水平方向に対して、略10°の傾斜角を有する。なお、濾過材は、例えば化学繊維等を含み、多孔性構造を有しており、通過する空気中の塵埃を取り除く機能を有する。
【0016】
筐体1の上方空間3は、排気口10と、冷却ファン(第1の冷却ファン)11a〜11dと、冷却ファン(第2の冷却ファン)12a〜12dとを有する。排気口10は、気流を筐体1の外部に排出するための開口であり、筐体1の背面であって電子部品よりも上方位置に形成されている。冷却ファン11a〜11dは、排気口10に隣接して配置され、ファンの回転に伴う吸引力により、筐体1内の空気を吸引して排気口10から排出する。
【0017】
冷却ファン12a〜12dは、搭載板13上に搭載されており、筐体1の前面の近傍であって冷却ファン11a〜11dの前方に配置されている。搭載板13は、筐体1の前面から背面に向かって上方に傾斜する壁部13aと、この壁部13aの頂部から筐体1の背面に向かって下方に傾斜する壁部13bとを備える。冷却ファン12a〜12dは、搭載板13の壁部13bに搭載されている。
【0018】
冷却ファン12a〜12dは、軸流ファンであって、搭載板13の壁部13bに搭載されることで、軸流ファンの排気方向が垂直上方向から背面側に向かって傾斜している。なお、冷却ファン12a〜12dの傾斜角は、略45°である。
【0019】
冷却ファン11a〜11d,12a〜12dは、同じ排気能力を有する。また、冷却ファン11a〜11dは、冷却ファン12a〜12dからの排気だけでなく、収容部2を通過する気流の一部も吸引するので、その風量が、冷却ファン12a〜12dの風量よりも大きく設定される。
【0020】
以下、図2を参照して、冷却対象である電子部品を冷却するときのブレードサーバ100の動作を説明する。まず、冷却ファン11a〜11d,12a〜12dを駆動すると、ファンの回転に伴う吸引力により、吸気口8から外気が取り込まれ、筐体1の下方空間4に気流101a,101b,101cが発生する。
【0021】
気流101a,101b,101cは、集塵フィルタ9に水平方向で衝突して抵抗を受けながら、濾過材を通過する。この際に、気流101a,101b,101c内の塵埃が取り除かれ、かつ、気流の流れ方向が水平方向から略90°偏向して、垂直方向の気流102a,102b,102cとなる。気流102a,102b,102cは、図示のように、収容部2内を略垂直方向に流れる。
【0022】
気流101a,101b,101cは、図示のように、傾斜した集塵フィルタ9の平面であって収容部2の前面側、背面側、中央側に位置する集塵フィルタ9の平面に、それぞれ衝突する。集塵フィルタ9に衝突して通過する気流101a,101b,101cは、収容部2に収容された電子部品の周囲及び内部をそれぞれ通過する気流102a,102b,102cとなる。即ち、吸気口8から取り込まれた外気は、集塵フィルタ9を通過することで、均一に分散された状態で収容部2に流れ込む。
【0023】
なお、集塵フィルタ9の傾斜角は、上記したように略10°としたが、これに限られず、集塵フィルタ9を通過する際に気流が分散化されるのであれば、適宜の角度を選択してもよい。一例として、傾斜角は、0°〜20°の範囲が好ましい。
【0024】
気流102aの流れ方向は、収容部2の前面部5の近傍に傾斜して配置された冷却ファン12a〜12dの吸引力により、電子部品の前面側を通過する方向となる。また、気流102bの流れ方向は、筐体1の背面側に形成された排気口10の近傍に配置された冷却ファン11a〜11dの吸引力により、電子部品の背面側を通過する方向となる。気流102cの流れ方向は、冷却ファン11a〜11d,12a〜12dの両方の吸引力により、電子部品の中央側を通過し、その後、収容部2の内部で冷却ファン11a〜11d,12a〜12dに向かってそれぞれ分岐する方向となる。
【0025】
気流102a,102b,102cの風量は、集塵フィルタ9により吸気口8から取り込まれた外気を分散化したこと、また、冷却ファン11a〜11dだけでなく、冷却ファン12a〜12dの吸引力を収容部2に発生させたことにより、略均等となっている。
【0026】
気流102aと、気流102cの一部とは、電子部品の前面に近い領域で発生した熱を奪いながら、冷却ファン12a〜12dによって吸引され、排気103として冷却ファン11a〜11dに向けて排出される。また、気流102bと、気流102cの一部とは、電子部品の背面に近い領域で発生した熱を奪いながら、冷却ファン11a〜11dによって吸引され、排気104として排気口10から筐体1の外部へ排出される。なお、排気104には、気流102bと気流102cの一部だけでなく、冷却ファン12a〜12dからの排気103も含まれる。
【0027】
このように、収容部2の前面部5に近い領域は、気流102a、気流102cの一部により冷却され、また、収容部2の背面部6に近い領域は、気流102b、気流102cの一部により冷却される。このため、収容部2に収容された電子部品は、略均一に冷却される。
【0028】
図3は、比較例としてのブレードサーバの構成を示す図である。ブレードサーバ100Aは、略水平方向に設置された集塵フィルタ9Bを有する点、及び、筐体1の上方空間3に上記冷却ファン12a〜12dが配置されていない点で、上記実施形態に係るブレードサーバ100と異なる。なお、ブレードサーバ100と同一部材には同一符号を付し、説明を適宜省略した。
【0029】
ブレードサーバ100Aでは、図示のように、集塵フィルタ9Bが略水平方向に配置され、また、冷却ファンは排気口10の付近に配置された冷却ファン11a〜11dのみであるので、収容部2の背面側に気流が集中し、収容部2の前面側には、電子部品を冷却できるだけの十分な気流が発生し難い。
【0030】
具体的には、冷却ファン11a〜11dの吸引力により吸気口8から取り込まれる気流201a,201b,201cは、その大部分が収容部2の背面側に偏った状態で集塵フィルタ9Bの平面を通過する。そのため、集塵フィルタ9Bを通過して収容部2に流れ込む気流202a,202b,202cの風量は、収容部2の背面側から前面側に向かって小さくなり、電子部品の前面側を十分に冷却することが困難となる。なお、収容部2を通過した気流202a,202b,202cは、筐体1の上方空間3で気流203となり、冷却ファン11a〜11dによって吸引され、排気口10から排気204として排出される。
【0031】
これに対して、本実施形態に係るブレードサーバ100では、上記したように、筐体1の下方空間4に集塵フィルタ9を傾斜して配置することで、収容部2に流れ込む気流を分散化できる。さらに、筐体1の上方空間3に冷却ファン12a〜12dを傾斜して配置することで、収容部2に略均等な気流を通過させ、排気口10の近傍に配置された冷却ファン11a〜11dから排出できる。従って、ブレードサーバ100によれば、簡易な構成で、収容部2に収容された電子部品を略均一に冷却できる。
【0032】
上記実施形態では、冷却ファン11a〜11d,12a〜12dをそれぞれ4つ並べて配置したが、これに限定されず、ブレードサーバ100の筐体1のサイズに合わせて適宜の数を配置してもよい。
【0033】
また、冷却ファン12a〜12dの傾斜角は、略45°としたが、これに限定されず、吸引力が作用する方向や排気方向が冷却効率に影響を与えることを考慮して、30°〜60°の範囲を適宜選択してもよい。
【0034】
また、傾斜して配置された集塵フィルタ9により、気流を分散できるので、冷却効率を考慮しなければ、冷却ファン12a〜12dを設けずに、冷却ファン11a〜11dの吸引力だけで発生する気流によって、電子部品を冷却してもよい。このようにすれば、より簡易な構成で電子部品の冷却が可能となる。
【0035】
また、冷却ファン11a〜11dは、排気口10の近傍に配置したが、これに限られず、筐体1にダクトを接続し、このダクト内に配置してもよい。これにより、冷却ファン11a〜11dを排気口10から離して配置した場合でも、電子部品の周囲及び内部を通過した気流を排出できる。
【0036】
上記実施形態の電子装置では、一方の壁面が筐体の背面であり、他方の壁面が筐体の前面である。この場合には、フィルタが、筐体の前面から背面に向かって単調に下降する傾斜面を形成して、吸気口から取り込まれた外気がフィルタの全面に衝突し分散化される。
【0037】
排気口に隣接して第1の冷却ファンが配置される。これにより、電子部品を冷却した後の気流を排気口から排気できる。
【0038】
電子装置の上方であって第1の冷却ファンの前方に、第2の冷却ファンを更に有する。この場合には、第2冷却ファンの吸引力により、電子部品の前面側に十分な気流を通過させることができる。
【0039】
第2の冷却ファンが、軸流ファンであり、該軸流ファンの排気方向が垂直方向から背面側に傾斜している。これにより、電子部品の前面側を通過する気流を十分に吸引して第1の冷却ファンに向けて排気できるので、冷却効率が高まる。
【0040】
以上、本発明をその好適な実施形態に基づいて説明したが、本発明の電子装置は、上記実施形態の構成にのみ限定されるものではなく、上記実施形態の構成から種々の修正及び変更を施したものも、本発明の範囲に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の一実施形態に係る電子装置の構成を示す図。
【図2】図1に示す電子装置の断面及び筐体内部での気流の動きを示す図。
【図3】比較例としての電子装置の構成を示す図。
【符号の説明】
【0042】
1:筐体
2:収容部
3:上方空間
4:下方空間
5:前面部
6:背面部
7:バックプレーン
8:吸気口
9:集塵フィルタ
9A:傾斜面
10:排気口
11a〜11d:冷却ファン(第1の冷却ファン)
12a〜12d:冷却ファン(第2の冷却ファン)
13:搭載板
13a,13b:壁部
100:ブレードサーバ
101a〜101c,102a〜102c:気流
103,104:排気

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、該筐体の内部に収容される電子部品と、前記筐体の一方の壁面であって前記電子部品よりも上方位置に形成される排気口と、前記一方の壁面に対向する他方の壁面であって前記電子部品よりも下方位置に形成される吸気口と、前記吸気口と前記電子部品との間に配置されるフィルタとを備え、
前記フィルタは、前記他方の壁面から前記一方の壁面に向かって単調に下降する傾斜面を形成することを特徴とする電子装置。
【請求項2】
前記一方の壁面が前記筐体の背面であり、前記他方の壁面が前記筐体の前面である、請求項1に記載の電子装置。
【請求項3】
前記排気口に隣接して第1の冷却ファンが配置される、請求項1又は2に記載の電子装置。
【請求項4】
前記電子装置の上方であって前記第1の冷却ファンの前方に、第2の冷却ファンを更に有する、請求項3に記載の電子装置。
【請求項5】
前記第2の冷却ファンが、軸流ファンであり、該軸流ファンの排気方向が垂直方向から背面側に傾斜している、請求項4に記載の電子装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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