説明

電子輸送二重層およびそのような二重層から製造したデバイス

電子輸送層として有用な二重層組成物を開示する。本発明の二重層は、電子輸送材料を含有する第1の層と、フラーレンを含有する第2の層とを有する。電子輸送二重層を含む有機発光ダイオードもまた開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、電子デバイスにおいて有用な電子輸送二重層に関する。
【背景技術】
【0002】
有機電子デバイスは、活性層を含む製品の分類の1つである。このようなデバイスは、電気エネルギーを放射線に変換したり、電子的過程を介して信号を検出したり、放射線を電気エネルギーに変換したり、1つ以上の有機半導体層を含んだりする。
【0003】
有機発光ダイオード(OLED)は、エレクトロルミネッセンス(EL)が可能な有機層を含む有機電子デバイスである。導電性ポリマーを含有するOLEDは、以下の構成を有することができる:
アノード/EL材料/カソード
【0004】
通常、アノードは、たとえば、インジウム/スズ酸化物(ITO)などの、透明であり、かつEL材料中に正孔を注入する能力を有するあらゆる材料である。場合により、アノードは、ガラスまたはプラスチックの基体上に支持されている。EL材料としては、蛍光化合物、蛍光性およびリン光性の金属錯体、共役ポリマー、ならびにそれらの混合物が挙げられる。通常、カソードは、EL材料中に電子を注入する能力を有するあらゆる材料(たとえばCaまたはBaなど)である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
EL材料とアノードおよび/またはカソードとの間には1つ以上の層が存在しうる。これらの層は、主として電荷輸送の目的で存在するが、他の機能を果たす場合もある。OLEDダイオードの全体的な順方向バイアス電圧は、各層での電圧降下に依存する。デバイスの出力効率を増加させるためには、エレクトロルミネッセンスを犠牲にすることなく各層での電圧降下を減少させることが条件となる。EL層とカソードとの間の電子輸送層は、大きな電圧降下の影響を受けるこのような層の1つである。したがって、電圧降下が顕著に減少させ、それによってOLEDデバイスの出力効率を増加させる電子輸送層が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
電子輸送材料を含む少なくとも1つの第1の層と、フラーレンを含む第2の層とを含む電子輸送二重層を提供する。
【0007】
アノード、光活性層、およびカソードを含み、上記電子輸送二重層が光活性層とカソードとの間の存在する電子デバイスもまた提供する。
【0008】
以上の概要および以下の詳細な説明は、単に例示的および説明的なものであり、添付の特許請求の範囲によって規定される本発明を限定するものではない。
【0009】
本開示において提供される概念の理解を進めるために、添付の図面において実施形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】有機電子デバイスの概略図である。
【図2】赤色EL材料のフラーレン濃度の関数としてのOLEDデバイス電圧のグラフである。
【図3】緑色EL材料のフラーレン濃度の関数としてのOLEDデバイス電圧のグラフである。
【図4】青色EL材料のフラーレン濃度の関数としてのOLEDデバイス電圧のグラフである。
【0011】
当業者であれば理解しているように、図面中の物体は、平易かつ明快にするために示されており、必ずしも縮尺通りに描かれているわけではない。たとえば、実施形態を理解しやすいようにするために、図面中の一部の物体の寸法が他の物体よりも誇張されている場合がある。
【発明を実施するための形態】
【0012】
多数の態様および実施形態を上記で説明したが、これらは単に例示的で非限定的なものである。本明細書を読めば、本発明の範囲から逸脱しない他の態様および実施形態が実現可能であることが、当業者には分かるであろう。
【0013】
いずれか1つまたは複数の本発明の実施形態のその他の特徴および利点は、以下の詳細な説明および特許請求の範囲から明らかとなるであろう。この詳細な説明は、最初に、用語の定義および説明を扱い、続いて、電子輸送二重層、電子デバイス、および最後に実施例を扱う。
【0014】
1.用語の定義および説明
以下に説明する実施形態の詳細を扱う前に、一部の用語について定義または説明を行う。
【0015】
層、材料、部材、または構造に関して言及される場合用語「電荷輸送」は、そのような層、材料、部材、または構造から、別の層、材料、部材、または構造の中への電荷の移動を推進または促進するそのような層、材料、部材、または構造を意味することを意図している。一部の光活性材料または電気活性材料も電荷輸送特性を有する場合があるが、用語「電荷輸送」は、主機能が発光または光吸収である材料を含むことを意図していない。
【0016】
用語「電子輸送」は、負電荷に関する電荷輸送を意味する。
【0017】
用語「正孔輸送」は、正電荷に関する電荷輸送を意味する。
【0018】
用語「フラーレン」は、炭素原子の6角形および5角形の基で構成されるかご形中空分子を意味する。ある実施形態においては、少なくとも60個の炭素原子が分子中に存在する。
【0019】
用語「層」は、用語「フィルム」と交換可能に使用され、希望する領域を覆うコーティングを意味する。この用語は大きさによって限定されない。この領域は、デバイス全体の大きさであってもよいし、実際の視覚的表示などの特殊な機能の領域の小ささ、または1つのサブピクセルの小ささであってもよい。
【0020】
用語「二重層」は、組成が異なる少なくとも2つの層で構成されるデバイス中の機能層を意味する。
【0021】
層または材料に言及する場合の用語「電気活性」は、電子的または電気放射的(electro−radiative)性質を示す層または材料を意味することを意図している。電気活性層材料は、放射線を発する場合もあるし、放射線を受けた場合に電子−正孔対の濃度変化を示す場合もある。
【0022】
用語「光活性」は、印加電圧によって活性化した場合に光を発する材料(OLEDまたは化学セル中など)、あるいは放射エネルギーに応答し、バイアス電圧の印加を伴ってまたは伴わずに信号を発生する材料(光検出器中など)を意味する。
【0023】
本明細書において使用される場合、用語「含んでなる」、「含んでなること」、「含む」、「含むこと」、「有する」、「有すること」、またはそれらの他のあらゆる変形は、非排他的な包含を扱うことを意図している。たとえば、ある一連の要素を含むプロセス、方法、物品、または装置は、それらの要素にのみに必ずしも限定されるわけではなく、そのようなプロセス、方法、物品、または装置に関して明示されず固有のものでもない他の要素を含むことができる。さらに、反対の意味で明記されない限り、「または」は、包含的な「または」を意味するのであって、排他的な「または」を意味するのではない。たとえば、条件AまたはBが満たされるのは、Aが真であり(または存在し)Bが偽である(または存在しない)、Aが偽であり(または存在せず)Bが真である(または存在する)、ならびにAおよびBの両方が真である(または存在する)のいずれか1つによってである。
【0024】
また、本発明の要素および成分を説明するために「a」または「an」も使用されている。これは単に便宜的なものであり、本発明の一般的な意味を提供するために行われている。この記述は、1つまたは少なくとも1つを含むものと読むべきであり、明らかに他の意味となる場合を除けば、単数形は複数形も含んでいる。
【0025】
元素周期表中の縦列に対応する族の番号は、CRC Handbook of Chemistry and Physics、第81版(2000−2001)に見ることができる「新表記法」(New Notation)の規則を使用している。
【0026】
特に定義しない限り、本明細書において使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されている意味と同じ意味を有する。本明細書に記載されているものと類似または同等の方法および材料を使用して、本発明の実施形態の実施または試験を行うことができるが、好適な方法および材料についてを以下に説明する。すべての刊行物、特許出願、特許、およびその他の参考文献は、特に明記しない限り、それらの記載内容全体が参照により援用される。矛盾が生じる場合には、定義を含めて本明細書に従うものとする。さらに、材料、方法、および実施例は、単に説明的なものであって、限定を意図したものではない。
【0027】
本明細書に記載されていない程度の、具体的な材料、処理行為、および回路に関する多くの詳細は従来通りであり、それらについては、有機発光ダイオードディスプレイ、光検出器、光電池、および半導体要素の技術分野の教科書およびその他の情報源中に見ることができる。
【0028】
2.電子輸送二重層
電子輸送二重層は、電子輸送材料を含む第1の層と、フラーレンを含む第2の層とを有する。ある実施形態においては、二重層は全体の厚さが5〜200nmの範囲内であり、ある実施形態においては10〜100nmの範囲内である。
【0029】
a.電子輸送材料
電子輸送二重層の第1の層中には、あらゆる従来の電子輸送材料を使用することができる。このような材料はOLEDの分野において周知である。電子輸送材料の例としては、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(p−フェニル−フェノラト)アルミニウム(III)(BAlQ)、トリス(8−ヒドロキシキノラト)アルミニウム(Alq)、およびテトラキス(8−ヒドロキシキノラト)−アルミニウム(ZrQ)などの金属キレート化オキシノイド化合物;2−(4−ビフェニリル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(PBD)、3−(4−ビフェニリル)−4−フェニル−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール(TAZ)、および1,3,5−トリ(フェニル−2−ベンズイミダゾール)ベンゼン(TPBI)などのアゾール化合物;2,3−ビス(4−フルオロフェニル)キノキサリンなどのキノキサリン誘導体;9,10−ジフェニルフェナントロリン(DPA)および2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(DDPA)などのフェナントロリン誘導体;ならびにそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0030】
ある実施形態においては、電子輸送材料は、BAlQ、Alq、ZrQ、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0031】
ある実施形態においては、第1の層は単層である。ある実施形態においては、第1の層は、同じまたは異なる組成を有する2つ以上の層で構成される。
【0032】
電子輸送二重層の第1の層は、気相堆積、液相堆積(連続技術および不連続技術)、および熱転写などの従来のあらゆる堆積技術によって形成することができる。連続液相堆積技術としては、スピンコーティング、グラビアコーティング、カーテンコーティング、浸漬コーティング、スロットダイコーティング、スプレーコーティング、および連続ノズルコーティングが挙げられるが、これらに限定されるものではない。不連続液相堆積技術としては、インクジェット印刷、グラビア印刷、およびスクリーン印刷が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0033】
ある実施形態においては、第1の層は全体的な層として形成される。ある実施形態においては、第1の層は、あるパターンで形成される。
【0034】
ある実施形態においては、電子輸送二重層の第1の層は第2の層よりも薄い。ある実施形態においては、第1の層の厚さは2〜100nmの範囲内であり、ある実施形態においては5〜50nmの範囲内である。
【0035】
b.フラーレン
電子輸送層の第2の層はフラーレンを含む。フラーレン類は、水素原子を有さず三次元座標の偶数個の炭素原子からなる閉じたかご形構造を特徴とする炭素の同素体である。フラーレン類は周知であり、広範囲にわたって研究されている。
【0036】
フラーレン類の例としては、以下のC60、C60−PCMB、およびC70
【0037】
【化1】

【0038】
ならびにC84およびより高次のフラーレンが挙げられる。いずれのフラーレンも、C70−PCBM、C84−PCBM、およびより高次の類似体など、(3−メトキシカルボニル)−プロピル−1−フェニル基で誘導体(「PCBM」)化することができる。複数のフラーレンの組み合わせを使用することができる。
【0039】
ある実施形態においては、フラーレンは、C60、C60−PCMB、C70、C70−PCMB、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0040】
電子輸送二重層の第2の層は、前述のような気相堆積、液相堆積(連続技術および不連続技術)、および熱転写などの従来のあらゆる堆積技術によって形成することができる。
【0041】
ある実施形態においては、第2の層は、第1の層の上に重ねられるが、第1の層を越えて延在することはない。電子輸送二重層の第1の層が全体的に形成される場合、第2の層も全体的な層として形成することができるし、あるパターンで形成することもできる。第1の層があるパターンで形成される場合、第2の層は、第1の層のパターンと一致するパターンで形成される。
【0042】
ある実施形態においては、電子輸送二重層の第2の層の厚さは3〜150nmの範囲内であり、ある実施形態においては10〜100nmの範囲内である。
【0043】
3.電子デバイス
2つの電気接触層の間に位置決めされた少なくとも1つの電気活性層を含み、本発明の新規な電子輸送二重層をさらに含む電子デバイスを提供する。
【0044】
図1に示されるように、典型的なデバイス100は、アノード層110、緩衝層120、電気活性層130、電子輸送二重層140、およびカソード層150を有する。二重層140は、正孔輸送材料を含む第1の層141を有する。二重層140は、フラーレンを含む第2の層142を有する。フラーレン層142はカソード150に隣接している。
【0045】
このデバイスは、アノード層110またはカソード層150に隣接することができる支持体または基体(図示せず)を含むことができる。ほとんどの場合、支持体はアノード層110に隣接している。支持体は、可撓性の場合も剛性の場合もあるし、有機の場合も無機の場合もある。支持体材料の例としては、ガラス、セラミック、金属、およびプラスチックフィルムが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0046】
アノード層110は、カソード層150よりも正孔の注入が効率的な電極である。アノードは、金属、混合金属、合金、金属酸化物、または混合酸化物を含有する材料を含むことができる。好適な材料としては、2族元素(すなわち、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra)(これらはアノード材料であろうか?)の混合酸化物、11族元素、4族、5族、および6族の元素、ならびに8〜10族の遷移元素が挙げられる。アノード層110を光透過性にするためには、インジウム・スズ酸化物などの12族、13族、および14族の元素の混合酸化物を使用することができる。本明細書において使用される場合、語句「混合酸化物」は、2族元素、あるいは12族、13族、または14族の元素から選択される2種類以上の異なる陽イオンを有する酸化物を意味する。アノード層110の材料の一部の非限定的な具体例としては、インジウム・スズ酸化物(「ITO」)、インジウム・亜鉛酸化物、アルミニウム・スズ酸化物、金、銀、銅、およびニッケルが挙げられるが、これらに限定されるものではない。アノードは、有機材料、特に、ポリアニリンなどの導電性ポリマー、たとえば、「Flexible light−emitting diodes made from soluble conducting polymer」,Nature vol.357,pp 477 479(11 June 1992)に記載される代表的な材料も含むことができる。発生した光を観察できるように、アノードおよびカソードの少なくとも1つは、少なくとも部分的に透明となるべきである。
【0047】
アノード層110は、化学蒸着法または物理蒸着法、あるいはスピンキャスト法によって形成することができる。化学蒸着は、プラズマ化学蒸着(「PECVD」)または金属有機化学蒸着(「MOCVD」)として行うことができる。物理蒸着としては、イオンビームスパッタリングなどのスパッタリング、ならびにeビーム蒸発、および抵抗蒸発のあらゆる形態を挙げることができる。物理蒸着の具体的な形態としては、高周波マグネトロンスパッタリング、および誘導結合プラズマ物理蒸着(「ICP−PVD」)が挙げられる。これらの堆積技術は、半導体製造分野においては周知である。
【0048】
一実施形態においては、アノード層110は、リソグラフィ作業中にパターン化される。このパターンは、希望に応じて変更することができる。これらの層は、第1の電気接触層材料を適用する前に、第1の可撓性複合バリア構造上にパターン化されたマスクまたはレジストを配置することなどによってパターンを形成することができる。あるいは、これらの層は、全体の層として適用することができ(ブランケット堆積とも呼ばれる)、続いて、たとえば、パターン化されたレジスト層と湿式化学エッチングまたはドライエッチング技術とを使用してパターン化することができる。当技術分野において周知の他のパターニング方法を使用することもできる。
【0049】
緩衝層120は緩衝材料を含む。用語「緩衝層」または「緩衝材料」は、導電性材料または半導体材料を意味することを意図しており、限定するものではないが、下にある層の平坦化、電荷輸送および/または電荷注入特性、酸素または金属イオンなどの不純物の捕捉、ならびに有機電子デバイスの性能を促進または改善する他の特徴などの、1つ以上の機能を有機電子デバイス中で有することができる。
【0050】
緩衝材料は、ポリアニリン(PANI)またはポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)などのポリマー材料であってよく、これらはプロトン酸がドープされることが多い。プロトン酸は、たとえば、ポリ(スチレンスルホン酸)、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸)などであってよい。緩衝層120は、銅フタロシアニンおよびテトラチアフルバレン−テトラシアノキノジメタン系(TTF−TCNQ)などの電荷輸送化合物などを含むことができる。一実施形態においては、緩衝層120は、導電性ポリマーとコロイド形成性ポリマー酸との分散体から形成される。ある実施形態においては、コロイド形成性ポリマー酸はフッ素化スルホン酸である。このような材料は、たとえば、米国特許出願公開第2004−0102577号明細書および同第2004−0127637号明細書に記載されている。
【0051】
通常、緩衝層は、当業者に周知の種々の技術を使用して基体上に堆積される。典型的な堆積技術としては、前述したように、気相堆積、液相堆積(連続技術および不連続技術)、および熱転写が挙げられる。
【0052】
図示されていないが、緩衝層120と電気活性層130との間に、場合により層が存在することができる。この層は正孔輸送材料を含むことができる。正孔輸送材料の例は、たとえば、Y.WangによりKirk−Othmer Encyclopedia of Chemical Technology,Fourth Edition,Vol.18,p.837−860,1996にまとめられている。正孔輸送分子および正孔輸送ポリマーの両方を使用することができる。一般に使用される正孔輸送分子としては:4,4’,4”−トリス(N,N−ジフェニル−アミノ)−トリフェニルアミン(TDATA);4,4’,4”−トリス(N−3−メチルフェニル−N−フェニル−アミノ)−トリフェニルアミン(MTDATA);N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン(TPD);1,1−ビス[(ジ−4−トリルアミノ)フェニル]シクロヘキサン(TAPC);N,N’−ビス(4−メチルフェニル)−N,N’−ビス(4−エチルフェニル)−[1,1’−(3,3’−ジメチル)ビフェニル]−4,4’−ジアミン(ETPD);テトラキス−(3−メチルフェニル)−N,N,N’,N’−2,5−フェニレンジアミン(PDA);α−フェニル−4−N,N−ジフェニルアミノスチレン(TPS);p−(ジエチルアミノ)−ベンズアルデヒドジフェニルヒドラゾン(DEH);トリフェニルアミン(TPA);ビス[4−(N,N−ジエチルアミノ)−2−メチルフェニル](4−メチルフェニル)メタン(MPMP);1−フェニル−3−[p−(ジエチルアミノ)スチリル]−5−[p−(ジエチルアミノ)フェニル]ピラゾリン(PPRまたはDEASP);1,2−trans−ビス(9H−カルバゾール−9−イル)シクロブタン(DCZB);N,N,N’,N’−テトラキス(4−メチルフェニル)−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン(TTB);N,N’−ビス(ナフタレン−1−イル)−N,N’−ビス−(フェニル)ベンジジン(α−NPB);および銅フタロシアニンなどのポルフィリン系化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。一般に使用される正孔輸送ポリマーとしては、ポリビニルカルバゾール、(フェニルメチル)ポリシラン、ポリ(ジオキシチオフェン)類、ポリアニリン類、およびポリピロール類が挙げられるが、これらに限定されるものではない。ポリスチレンやポリカーボネートなどのポリマー中に、上述のものなどの正孔輸送分子をドープすることによって、正孔輸送ポリマーを得ることもできる。
【0053】
デバイスの用途に依存するが、電気活性層130は、印加電圧によって活性化される発光層(発光ダイオードまたは発光電気化学セル中など)、放射エネルギーに応答し、バイアス電圧の印加を伴ってまたは伴わずに信号を発生する材料の層(光検出器中など)であってよい。一実施形態においては、電気活性材料は、有機エレクトロルミネッセンス(「EL」)材料である。限定するものではないが、小分子有機蛍光化合物、蛍光性およびリン光性の金属錯体、共役ポリマー、ならびにそれらの混合物などのあらゆるEL材料をデバイス中に使用することができる。蛍光化合物の例としては、ピレン、ペリレン、ルブレン、クマリン、それらの誘導体、およびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。金属錯体の例としては、トリス(8−ヒドロキシキノラト)アルミニウム(Alq3)などの金属キレート化オキシノイド化合物;ペトロフ(Petrov)らの米国特許第6,670,645号明細書、ならびに国際公開第03/063555号パンフレットおよび国際公開第2004/016710号パンフレットに開示されるような、フェニルピリジン配位子、フェニルキノリン配位子、またはフェニルピリミジン配位子を有するイリジウムの錯体などのシクロメタレート化イリジウムおよび白金エレクトロルミネッセンス化合物、ならびに、たとえば国際公開第03/008424号パンフレット、国際公開第03/091688号パンフレット、および国際公開第03/040257号パンフレットに記載されるような有機金属錯体、ならびにそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。電荷輸送ホスト材料と金属錯体とを含むエレクトロルミネッセンス発光層が、Thompsonらの米国特許第6,303,238号明細書、ならびにBurrowsおよびThompsonの国際公開第00/70655号パンフレット、および国際公開第01/41512号パンフレットに記載されている。共役ポリマーの例としては、ポリ(フェニレンビニレン)、ポリフルオレン、ポリ(スピロビフルオレン)、ポリチオフェン、ポリ(p−フェニレン)、それらのコポリマー、およびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0054】
電子輸送二重層140は、通常、当業者に周知の種々の技術を使用して基体上に堆積される。典型的な堆積技術としては、前述のような気相堆積、液相堆積(連続技術および不連続技術)、および熱転写が挙げられる。
【0055】
図示していないが、電子輸送二重層140とカソード150との間に任意選択の層が存在することができる。この任意選択の層は無機であってよく、BaO、LiF、LiOなどを含むことができる。
【0056】
カソード層150は、電子または負電荷キャリアの注入に特に有効な電極である。カソード層150は、第1の電気接触層(この場合はアノード層110)よりも低い仕事関数を有するあらゆる金属または非金属であってよい。本明細書において使用される場合、用語「低い仕事関数」は、約4.4eV以下の仕事関数を有する材料を意味することを意図している。本明細書において使用される場合、「高い仕事関数」は、少なくとも約4.4eVの仕事関数を有する材料を意味することを意図している。
【0057】
カソード層の材料は、1族のアルカリ金属(たとえば、Li、Na、K、Rb、Cs,)、2族金属(たとえば、Mg、Ca、Baなど)、12族金属、ランタニド(たとえば、Ce、Sm、Euなど)、およびアクチニド(たとえば、Th、Uなど)から選択することができる。アルミニウム、インジウム、イットリウム、およびそれらの組み合わせなどの材料を使用することもできる。カソード層150の材料の非限定的な具体例としては、バリウム、リチウム、セリウム、セシウム、ユウロピウム、ルビジウム、イットリウム、マグネシウム、サマリウム、ならびにそれらの合金および組み合わせが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0058】
通常、カソード層150は、化学蒸着法または物理蒸着法によって形成される。ある実施形態においては、カソード層は、アノード層110に関して前述したように、パターン化することができる。
【0059】
デバイス中の他の層は、そのような層が果たすべき機能を考慮することによってそのような層に有用であることが知られているあらゆる材料でできていてよい。
【0060】
ある実施形態においては、水および酸素などの望ましくない成分がデバイス100内に入るのを防止するために、接触層150の上に封入層(図示せず)が堆積される。このような成分は、有機層130に対して悪影響を及ぼす場合がある。一実施形態においては、封入層は障壁層またはフィルムである。一実施形態においては、封入層はガラス蓋である。
【0061】
図示していないが、デバイス100が追加の層を含むことができることは理解できよう。当技術分野において周知である別の層、またはその他の別の層を使用することができる。さらに、前述のいずれかの層は、2つ以上の副層を含む場合があるし、層状構造を形成している場合もある。あるいは、アノード層110 正孔輸送層120、電子輸送層140、カソード層150、および別の層の一部またはすべては、電荷担体輸送効率またはデバイスの他の物理的性質を向上させるために、処理、特に表面処理を行うことができる。各構成層の材料の選択は、デバイスの稼働寿命を考慮して高いデバイス効率を有するデバイスを得ること、製造時間、および複雑な要因、ならびに当業者に認識されている他の問題点の目標の釣り合いを取ることによって、好ましくは決定される。最適な構成要素、構成要素の構成、および組成の決定は、当業者の日常的な作業であることは理解できるであろう。
【0062】
一実施形態においては、種々の層は以下の範囲の厚さを有する:アノード110、500〜5000Å、一実施形態においては1000〜2000Å;緩衝層120、50〜2000Å、一実施形態においては200〜1000Å;光活性層130、10〜2000Å、一実施形態においては100〜1000Å;場合による電子輸送層140、50〜2000Å、一実施形態においては100〜1000Å;カソード150、200〜10000Å、一実施形態においては300〜5000Å。デバイス中の電子−正孔再結合領域の位置、したがってデバイスの発光スペクトルは、各層の相対厚さによって影響されうる。たとえば、電子−正孔再結合領域が発光層中に存在するように、電子輸送層の厚さを選択すべきである。層の厚さの望ましい比は、使用される材料の厳密な性質に依存する。
【0063】
動作中、適切な電源(図示せず)からの電圧がデバイス100に印加される。したがって、デバイス100の層全体に電流が流れる。電子が有機ポリマー層に入り、フォトンを放出する。アクティブマトリックスOLEDディスプレイと呼ばれる一部のOLEDでは、光活性有機フィルムの個別の堆積物を、電流の流れによって独立に励起させることができ、それによって個別のピクセルを発光させることができる。パッシブマトリックスOLEDディスプレイと呼ばれる一部のOLEDでは、光活性有機フィルムの堆積物は、電気接触層の横列および縦列によって励起させることができる。
【実施例】
【0064】
本明細書に記載の概念は、以下の実施例でさらに説明されるが、これらの実施例は、特許請求の範囲に記載される本発明の範囲を限定するものではない。
【0065】
デバイスの製造
電子デバイスを、以下の手順に従って作製した。パターン化されたITOコーティングを有するガラス基体をプラズマ洗浄し、次に緩衝層および正孔輸送層をスピンコーティングした。次に活性層を溶媒からスピンコーティングした。次に基体を真空チャンバーに入れ、そこでシャドーマスクを介して電子輸送二重層を堆積し、続いて、別のマスクを介して電子注入層および電極を堆積して、デバイスを完成した。
【0066】
実施例1〜2および比較例A
これらの実施例では、赤色発光EL材料を有するOLEDデバイスの性能を示す。
【0067】
比較例A
この比較例では、ZrQでできた1つの電子輸送層を使用して、前述のように赤色デバイスを作製した。
【0068】
実施例1
この実施例では、電子輸送二重層を使用して赤色デバイスを作製した。第1の層はZrQであった。第2の層は、5nmの厚さを有するC60フラーレンであった。
【0069】
実施例2
この実施例では、電子輸送二重層を使用して赤色デバイスを作製した。第1の層はZrQであった。第2の層は、20nmの厚さを有するC60フラーレンであった。
【0070】
比較例A(0nmのC60)、実施例1(5nmのC60)、および実施例2(20nmのC60)のデバイスについて、一般手順に記載されるように試験を行った。図2中に示されるように、電子輸送二重層を有するデバイスでは、必要な電圧が低くなった。
【0071】
実施例3〜4および比較例B
これらの実施例では、緑色発光EL材料を有するOLEDデバイスの性能を示す。
【0072】
比較例B
この比較例では、ZrQでできた1つの電子輸送層を使用して、前述のように緑色デバイスを作製した。
【0073】
実施例3
この実施例では、電子輸送二重層を使用して緑色デバイスを作製した。第1の層はZrQであった。第2の層は、5nmの厚さを有するC60フラーレンであった。
【0074】
実施例4
この実施例では、電子輸送二重層を使用して緑色デバイスを作製した。第1の層はZrQであった。第2の層は、20nmの厚さを有するC60フラーレンであった。
【0075】
比較例B(0nmのC60)、実施例3(5nmのC60)、および実施例4(20nmのC60)のデバイスについて、一般手順に記載されるように試験を行った。図3中に示されるように、電子輸送二重層を有するデバイスでは、必要な電圧が低くなった。
【0076】
実施例5〜6および比較例C
これらの実施例では、青色EL材料を有するOLEDデバイスの性能を示す。
【0077】
比較例C
この比較例では、ZrQでできた1つの電子輸送層を使用して、前述のように青色デバイスを作製した。
【0078】
実施例5
この実施例では、電子輸送二重層を使用して青色デバイスを作製した。第1の層はZrQであった。第2の層は、5nmの厚さを有するC60フラーレンであった。
【0079】
実施例6
この実施例では、電子輸送二重層を使用してbkueデバイスを作製した。第1の層はZrQであった。第2の層は、20nmの厚さを有するC60フラーレンであった.
【0080】
比較例C(0nmのC60)、実施例5(5nmのC60)、および実施例6(20nmのC60)のデバイスについて、一般手順に記載されるように試験を行った。図4中に示されるように、電子輸送二重層を有するデバイスでは必要な電圧が低くなった。
【0081】
概要または実施例において前述したすべての行為が必要なわけではなく、特定の行為の一部は不要である場合があり、1つまたは複数のさらに別の行為が、前述の行為に加えて実施される場合があることに留意されたい。さらに、行為が列挙されている順序は、必ずしもそれらが実施される順序ではない。
【0082】
以上の明細書において、具体的な実施形態を参照しながら本発明の概念を説明してきた。しかし、当業者であれば、特許請求の範囲に記載される本発明の範囲から逸脱せずに種々の修正および変更を行えることが理解できよう。したがって、本明細書および図面は、限定的な意味ではなく説明的なものであると見なすべきであり、すべてのこのような修正は本発明の範囲内に含まれることを意図している。
【0083】
特定の実施形態に関して、利益、その他の利点、および問題に対する解決法を以上に記載してきた。しかし、これらの利益、利点、問題の解決法、ならびに、なんらかの利益、利点、または解決法を発生させたり、より顕著にしたりすることがある、あらゆる特徴が、特許請求の範囲のいずれかまたはすべての重要、必要、または本質的な特徴であるとして解釈すべきではない。
【0084】
別々の実施形態の状況において、明確にするために本明細書に記載されている特定の複数の特徴は、1つの実施形態の中で組み合わせても提供できることを理解されたい。逆に、簡潔にするため1つの実施形態の状況において説明した種々の特徴も、別々に提供したり、あらゆる副次的な組み合わせで提供したりすることができる。本明細書において明記される種々の範囲内の数値が使用される場合、記載の範囲内の最小値および最大値の両方の前に単語「約」が付けられているかのように近似値として記載されている。この方法では、記載の範囲よりもわずかに上およびわずかに下のばらつきを使用して、その範囲内の値の場合と実質的に同じ結果を得ることができる。また、これらの範囲の開示は、ある値の一部の成分を異なる値の一部の成分と混合した場合に生じうる分数値を含めて、最小平均値と最大平均値との間のすべての値を含む連続した範囲であることを意図している。さらに、より広い範囲およびより狭い範囲が開示される場合、ある範囲の最小値を別の範囲の最大値と一致させること、およびその逆のことが本発明の意図の範囲内となる。
【0085】
別々の実施形態の状況において、明確にするために本明細書に記載されている特定の複数の特徴は、1つの実施形態の中で組み合わせても提供できることを理解されたい。逆に、簡潔にするため1つの実施形態の状況において説明した種々の特徴も、別々に提供したり、あらゆる副次的な組み合わせで提供したりすることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子輸送材料を含む第1の層と;
フラーレンを含む第2の層と
を含む、電子輸送二重層。
【請求項2】
前記電子輸送材料が、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(p−フェニル−フェノラト)アルミニウム(III)、トリス(8−ヒドロキシキノラト)アルミニウム、テトラキス(8−ヒドロキシキノラト)−アルミニウム、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の電子輸送二重層。
【請求項3】
前記フラーレンが、C60、C61−PCBM、C70、C71−PCBM、およびC84、ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の電子輸送二重層。
【請求項4】
前記第1の層が、同じまたは異なる組成を有する2つ以上の層から構成される請求項1に記載の電子輸送二重層。
【請求項5】
前記二重層の全体の厚さが5nm〜200nmの範囲内である、請求項1に記載の電子輸送二重層。
【請求項6】
アノード、電気活性層、電子輸送二重層、およびカソードをこの順序で含む有機電子デバイスであって、前記二重層が:
電子輸送材料を含む第1の層と;
フラーレンを含む第2の層と
を含み;
前記第2の層が前記カソードに隣接している、有機電子デバイス。
【請求項7】
前記電子輸送材料が、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(p−フェニル−フェノラト)アルミニウム(III)、トリス(8−ヒドロキシキノラト)アルミニウム、テトラキス(8−ヒドロキシキノラト)−アルミニウム、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項6に記載のデバイス。
【請求項8】
前記フラーレンが、C60、C61−PCBM、C70、C71−PCBM、およびC84、ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項8に記載のデバイス。
【請求項9】
前記アノードと前記電気活性層との間に緩衝層をさらに含み、前記緩衝層が導電性ポリマーおよびコロイド形成性ポリマー酸を含む、請求項6に記載のデバイス。
【請求項10】
前記コロイド形成性ポリマー酸がフッ素化されている、請求項9に記載のデバイス。
【請求項11】
前記コロイド形成性ポリマー酸がフッ素化スルホン酸である、請求項10に記載のデバイス。
【請求項12】
前記コロイド形成性ポリマー酸が過フッ素化されている、請求項10または11に記載のデバイス。
【請求項13】
前記第1の層が、同じまたは異なる組成を有する2つ以上の層で構成される、請求項6に記載のデバイス。
【請求項14】
前記二重層の全体の厚さが5nm〜200nmの範囲内である、請求項6に記載のデバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2011−501470(P2011−501470A)
【公表日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−531171(P2010−531171)
【出願日】平成20年10月22日(2008.10.22)
【国際出願番号】PCT/US2008/080664
【国際公開番号】WO2009/055399
【国際公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】