説明

電子透かし埋め込み方法及び装置

【課題】電子透かしの埋め込み処理が高速化する。
【解決手段】本発明の電子透かし埋め込み方法及び装置は、映像をキャプチャーし、画像フレームとして入力し、入力画像フレームに電子透かしを埋め込んだ画像フレームを出力するビデオ入出力ボードと、電子透かしのパターンを透かしパターンとして格納するメモリとを備え、逐次的にかつ規則的に変化する変化情報に対応して、透かしパターンを生成し、生成した透かしパターンをメモリに格納し、ビデオ入出力ボードからの入力画像フレームに対応する変化情報をキーとして、透かしパターンを検索し、検索した透かしパターンを入力画像フレームに電子透かしとして埋め込んだ画像フレームを前記ビデオ入出力ボードに出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタルコンテンツに情報を埋め込む電子透かし技術に関し、その電子透かし埋め込み方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
不正に利用されうるコンテンツの著作権保護や身元確認が可能な技術の一つとして、電子透かし技術がある。電子透かし技術は、コンテンツを微少に変更することによって、見た目に分からないように識別情報などの任意の情報をコンテンツの中に埋め込み、検出する技術である。埋め込んだ情報は、フォーマット変換などの処理を経た後でも、検出できるため、コンテンツの著作権主張、流通経路追跡、真正性証明などに応用できる。例えば、電子透かしを用いて映像の再生時刻の異変を検知する方法が、特許文献1、非特許文献1に開示されている。このように、電子透かしを真正性証明に用いるためには、コンテンツにタイムコードなどの真正性情報を埋め込んでおき、これを検出して整合性を確認することによって、改ざんの有無が検知可能となる。
【0003】
しかし、電子透かし技術の対象となるコンテンツには、動画、静止画、音などがある。これらのデータはデータサイズが大きいため、電子透かし埋め込み処理には、多くの処理時間が必要であった。
【0004】
電子透かしの埋め込み速度の高速化に係わる技術として、例えば、特許文献2、特許文献3、特許文献4がある。
【0005】
特許文献2は、「コンテンツデータへの電子透かし情報の埋め込み処理を、予備処理と本処理との2つに分ける。予備処理では、コンテンツに対して埋め込み可能性分析処理を行い、許容変化レベルを示す埋め込み強度マップを作成、保持する。本処理では、埋め込み強度マップに示されている当該部位での特徴値の許容変化レベルと当該ビットのビット値とに応じて定まる変化量分、変化させることで、当該電子透かし情報をコンテンツへ埋め込む手段」(段落0015〜0018)を提供する。
【0006】
特許文献3は、「電子透かしの埋め込み情報を生成するステップと、当該コンテンツから一定時間長毎に所定長のコンテンツ要素を抽出し、当該コンテンツ要素1つに対して、m種類(mは1以上の整数)の電子透かしを埋め込み、m種類のコンテンツ要素を生成するステップと、前記電子透かしの埋め込み情報に基づいて、当該コンテンツと電子透かしを埋め込んだコンテンツ要素を組み合わせて、1つのコンテンツを生成するステップを有する」(段落0023)手段を提供する。さらに、特許文献2は、「コンテンツに依存しないm種類の電子透かしパターンを電子透かし埋め込みに先立って予め生成」(段落0051)する手段を提供する。
【0007】
特許文献4は、「透かし情報の埋め込み対象となるコンテンツ情報が備える動画とし
ての性質を考慮して変更個所と変更強度を最適化するために必要な動きベクトルと変動量を検出する処理をMPEG等の圧縮処理と共用することで、一連の処理の負荷を減らす技術」(段落0010)を提供する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−259314号公報
【特許文献2】特開2002−027225号公報
【特許文献3】特開2007−207051号公報
【特許文献4】特開2004−048219号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Takaaki Yamada, Yoshiyasu Takahashi, Yasuhiro Fujii, Ryu Ebisawa, Hiroshi Yoshiura and Isao Echizen: “Evaluation of Integrity Verification System for Video Content Using Digital Watermarking”, in book chapter of George A.Tsihrintzis, Maria Virvou, Robert J.Howlett, Lakhmi C.Jain(Eds.) New Directions in Intelligent Interactive Multimedia, Studies in Computational Intelligence Vol.142, Springer, pp.363−372(2008)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献2、特許文献3は、1個のコンテンツに繰り返してn種類の識別情報を埋め込むことにより、n個の異なる透かし埋め込みコンテンツを得る場合に有効な方式である。特許文献4は、1個のコンテンツに、1種類の識別情報を埋め込んで、1個の透かし埋め込みコンテンツを得る場合に有効な方式である。しかし、1個のコンテンツに、n種類の識別情報を埋め込んで、1個の透かし埋め込みコンテンツを得る場合の対応方法については触れられていない。
【0011】
従来の電子透かし埋め込み高速化方法は、埋め込む情報が固定的であることを前提として、電子透かし埋め込み処理の一部を前処理としてあらかじめ実行しておき、以後の処理で前処理の演算結果だけを利用することにより、システム全体としての高速化を実現している。その前処理の例としては、特許文献2では埋め込み可能性分析処理、特許文献3では透かしパターン生成処理、特許文献4では動きベクトルと変動量の検出処理、である。しかし、映像ストリームに埋め込む情報を一定であると、電子透かしの強度が弱いので、埋め込む情報を変化させることが望ましい。電子透かしとして埋め込む情報を変化させると、これらの従来技術の前提が成立しなくなるため、従来技術では電子透かしの埋め込み処理を高速化できない。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、逐次的にかつ規則的に変化する変化情報を電子透かしとして映像、音などのコンテンツに埋め込む、電子透かし埋め込み方法及び装置を提供する。
【0013】
本発明の態様は、映像をキャプチャーし、画像フレームとして入力し、入力画像フレームに電子透かしを埋め込んだ画像フレームを出力するビデオ入出力ボードと、電子透かしのパターンを透かしパターンとして格納するメモリとを備えた電子透かし埋め込み装置及びその電子透かし埋め込み方法であって、逐次的にかつ規則的に変化する変化情報に対応して、透かしパターンを生成し、生成した透かしパターンをメモリに格納し、ビデオ入出力ボードからの入力画像フレームに対応する変化情報をキーとして、透かしパターンを検索し、検索した透かしパターンを入力画像フレームに電子透かしとして埋め込んだ画像フレームを前記ビデオ入出力ボードに出力する。
【0014】
本発明の他の態様は、逐次的にかつ規則的に変化する変化情報は時刻情報であり、透かしパターンを検索するキーは、ビデオ入出力ボードから入力した入力画像フレームを処理する現在時刻情報を含む。
【0015】
本発明のさらに他の態様は、変化情報が位置情報である。
【0016】
本発明のさらに他の態様は、透かしパターンを格納するメモリはオンメモリDBである。
【0017】
本発明のさらに他の態様は、映像をキャプチャーし、画像フレームとして入力し、入力画像フレームに電子透かしを埋め込んだ画像フレームを出力するビデオ入出力ボードと、電子透かしのパターンを透かしパターンとして格納するバッファメモリと、第1および第2のCPUを備え、第1のCPUは、逐次的にかつ規則的に変化する変化情報に対応して、透かしパターンをに生成し、生成した透かしパターンをバッファメモリに格納し、第2のCPUは、ビデオ入出力ボードからの入力画像フレームの入力に対応して、バッファメモリから透かしパターンを入力し、入力した透かしパターンを入力画像フレームに電子透かしとして埋め込んだ画像フレームをビデオ入出力ボードに出力する。
【0018】
本発明のさらに、コンテンツの例は映像コンテンツであり、その具体的な態様は次のとおりである。
【0019】
[システム準備]
埋め込む情報が変化する場合においても、タイムコードのように変化の仕方が規則的であり予測可能な場合には、事前に算出可能である。そこで、すべてのタイムコード(例えば100年分など)を事前に予測し、これに対応する透かしパターンを事前に計算しておくことにより、計算した透かしパターンをデータベース(DB)に安全に格納しておく。これを透かしパターンDBと呼ぶ。透かしパターンDBは、システムインストール時など事前に生成あるいは安全に配布する。
【0020】
[電子透かし埋め込みの前処理]
電子透かし埋め込みシステム起動時に、透かしパターンDBを安全にメモリに読み込む。
【0021】
[電子透かし埋め込みの後処理]
ユーザ指示によって、映像が入力され始めると、タイムコードの埋め込み処理を、映像フレームごとの逐次処理として行う。ここで、埋め込み時には、現在時刻に対応するタイムコードの値をキーとしてDB検索し、これに対応する透かしパターンを得る。タイムコードの埋め込み処理は、入力画像と透かしパターンの重畳処理として行う。
【0022】
[システム運用]
透かしが埋め込まれた映像を録画機や配信設備などに出力する。録画された映像、あるいは、別の媒体上にフォーマット変換された映像の中から、埋め込まれた情報を検出することにより、連続するタイムコードの整合性を検証する。すなわち、映像に改ざんがあったかどうかを判定する。
【0023】
この態様によれば、タイムコードの埋め込み処理は、高速に実行可能となる。
【0024】
さらに、映像入力に対して、リアルタイム処理でタイムコード埋め込みができるため、映像出力を録画機などに接続することにより、映像記録システムや映像配信システムを容易に構成できる。
【0025】
さらに、タイムコード以外にも、車載カメラにおけるGPS情報など、変化情報を逐次映像に埋め込むことができる。
【0026】
さらに、映像以外にも、会議録音における音声データを対象としても、変化情報を逐次映像に埋め込むことができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、タイムコードなどの逐次的にかつ規則的に変化する変化情報を映像、音などのコンテンツに電子透かしとして埋め込むので、電子透かしの埋め込み処理が高速化する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】第1の実施例における、電子透かし埋め込み装置の構成図である。
【図2】電子透かし埋め込み、検出処理の概要と透かしパターンの概念を説明する図である。
【図3】電子透かし埋め込み装置を含めたシステムの運用例である。
【図4】改ざん検知の概要を示す説明図である。
【図5】電子透かしとしてのタイムコードの埋め込みの概要を示す説明図である。
【図6】埋め込み情報と録画機の同期についての説明図である。
【図7】電子透かしとしてタイムコード情報を埋め込む重畳処理部のPADである。
【図8】Nフレーム埋め込み処理のPADである。
【図9】映像コンテンツの改ざん検知処理のPADである。
【図10】改ざん行為の種類を特定する検出結果診断処理のPADである。
【図11】透かしパターンDBのフィールド構造の説明図である。
【図12】透かしパターンDBを生成する処理のPADである。
【図13】第2の実施例における電子透かし埋め込み装置の構成図である。
【図14】第3の実施例における電子透かし埋め込み装置の構成図である。
【図15】第3の実施例における電子透かし埋め込みにおけるタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0030】
本実施形態に係わる装置は、図示していない、インターネットなどのネットワークで接続されていて、互いにデータを送受信できる。また、各装置は、可搬媒体を用いて、データをやり取りしてもよい。以下に説明する各装置における処理は、メモリ、CPU、ディスク、入出力装置を備えた、パソコンなど一般的な情報処理装置上で、入出力や画像処理などを制御するプログラムを実行することにより具現化される各処理部が実行する。プログラムは予め、各装置の記憶装置に格納されていても良いし、必要なときに、入出力装置と各装置が利用可能な媒体を介して、他の装置から上記記憶装置に導入されてもよい。媒体とは、たとえば、入出力装置に着脱可能な記憶媒体、または通信媒体(すなわち、インターネットなどのネットワークまたはネットワークを伝搬する搬送波やディジタル信号)を指す。また、以下に説明する電子透かし埋め込み装置と録画機、再生機、電子透かし検出装置が同一の情報処理装置上に構成されてもよい。
【0031】
実施例1〜3は、動画像(映像)をコンテンツとし、タイムコードを埋め込み、検出する電子透かし埋め込み検出システムについて説明する。
【0032】
なお、これらの実施形態で対象とするコンテンツも動画に限らず、音など別種のデータを対象としてもよい。
【実施例1】
【0033】
図1に、第1の実施例における電子透かし埋め込みを実現する電子透かし埋め込み装置の構成図を示す。
【0034】
カメラ101、PC102、録画機103を映像信号線によって接続し、時刻情報源104とネットワーク接続する。カメラ101の代わりに、映像信号を送り出す再生機、録画再生機、放送受信機、映像配信設備などを用いてもよい。録画機103の代わりに、映像再生機、映像モニタ、放送送信機、映像配信設備などを用いてもよい。時刻情報源104は更に上位の認証機関などと接続して、信頼性の高い時刻情報を送受信してもよい。送信された時刻情報と同送されたタイムスタンプ証明書を用いて、時刻の正当性、真正性の検証をしてもよい。時刻情報源104にGPS機能、GPSアンテナを備え、GPS受信波に含まれる時刻情報を用いてもよい。時刻情報源104の代わりにPC102内のタイマ108を用いてもよいし、時刻情報源104を参照して、PC102内のタイマ103の調整を行っても良い。
【0035】
PC102には、ビデオ入出力ボード111、タイマ108を備え、さらに、メモリ上に搭載した、(1)透かしパターン構築処理部114、(2)電子透かし埋め込み処理部112、(3)ディスク管理処理部113の3つの処理部を備える。ディスク管理処理部113は全体または一部をディスク装置上に搭載してもよい。さらに、鍵106と証明書107を耐タンパ領域に安全に格納した、着脱可能な可搬媒体105を備える。
【0036】
ビデオ入出力ボード111は、カメラ101から入力された映像信号を入力映像109として、連続的にキャプチャし、電子透かし埋め込み処理部112にキャプチャーした映像フレーム123を送出する。さらに、ビデオ入出力ボード111は、電子透かし埋め込み処理部112で処理した映像フレーム124を受け取り、出力映像110として録画機103に出力する。入力映像109と出力映像110は同期し、カメラ101から入力された入力映像109に電子透かしが埋め込まれた後に、録画機103に出力される。画像に伴い音も同様に処理される。
【0037】
(1)透かしパターン構築処理部114は、さらに鍵設定処理115、時刻設定処理116、透かしパターン生成処理116の3つの処理部を備える。鍵設定処理部115は、可搬媒体105に格納された鍵106と証明書107を読み込み、可搬媒体105が正規の媒体であり、利用者が正規の利用者であり、電子透かし埋め込み装置のコアとなるPC102が正規の装置であることの相互認証、すなわち、プロダクト認証(媒体の認証)、ユーザ認証(利用者の認証)、機器認証(PC102の認証)を実行する。それぞれの証明書を用意してもよいし、単一の証明書で一括認証してもよい。証明書の検証のために、ネットワークを介して外部の検証装置に照会してもよい。時刻設定処理部116は、時刻情報源104あるいはタイマ108からの時刻情報を用いて時刻を設定する。透かしパターン生成処理部116は、現在の時刻情報、あるいはユーザによって指定された時刻情報に応じたタイムコード情報に対応する透かしパターンを生成する。時刻情報(タイムコード)を含むタイムコード情報については後述する。鍵設定処理部115が読み込んだ鍵106を用いて、生成した透かしパターンを暗号化してもよい。透かしパターンの暗号化鍵を、可搬媒体上の鍵106を用いて暗号化してDB格納してもよいし、鍵106を直接用いてもよい。暗号化方式は、共通鍵暗号、置換、IDベース暗号などによる。透かしパターン生成処理部116が生成した透かしパターン、あるいは暗号化された透かしパターンは、ディスク管理処理部113に出力する。
【0038】
(2)ディスク管理処理部113は、現在時刻あるいはユーザによって指定された未来の時刻に応じて生成された透かしパターン、あるいは、暗号化された透かしパターンを受け取り、透かしパターンDB117に登録する。透かしパターンDB117は、タイムコード情報に対応して透かしパターンを格納する。アクセス制御部118は、鍵設定処理部115が読み込んだ証明書107を検証処理119を経て、透かしパターンDB117へアクセスする。
【0039】
(3)電子透かし埋め込み処理部112は、入力された映像フレーム123に電子透かしを埋め込み、埋め込み後の画像を映像フレーム124として出力する。電子透かし埋め込み処理部112は、初期化処理部120と映像フレーム毎の後処理部126とを含む。初期化処理部120は、鍵設定処理部115が読み込んだ可搬媒体105上の鍵106と証明書107を用いて、機器認証、プロダクト認証、ユーザ認証を行い、透かしパターンDB117がディスク装置上にある場合には、アクセス制御部118を用いて、高速アクセスが可能なメモリ上の透かしパターンDB121(オンメモリDB)として読み込む。透かしパターンDB121へのアクセスにおいては、証明書107を検証し、アクセス制御を行う。映像フレーム毎の後処理部127は、さらに透かしパターン呼び出し処理部125と重畳処理部126とを含む。映像フレーム毎の後処理127では、まずビデオ入出力ボード111から映像フレーム123を読み込む。次に、透かしパターン呼び出し処理部125が、現在の時刻に対応するタイムコード情報を生成して、タイムコード情報をキーとして透かしパターンDB121を検索し、対応する透かしパターンを得る。重畳処理126は、映像フレーム123に検索した透かしパターンを重畳し、電子透かしが埋め込まれた映像フレーム124として、ビデオ入出力ボード111に出力する。映像フレーム毎の後処理部127では、これらの一連の処理をリアルタイムに映像フレームごとに実行する。
【0040】
なお、ディスク管理処理部113を設けて、生成した透かしパターンを透かしパターンDB117に格納した後に、メモリ上の透かしパターンDB121に読み込むように説明したが、生成した透かしパターンを透かしパターンDB121に直接(ディスクを介さずに)格納しても良い。
【0041】
図2は、電子透かし埋め込み、検出処理の概要と透かしパターンの概念を説明する図である。動画コンテンツは複数の映像フレーム(以下、フレームと呼ぶ)から構成される。1枚あるいは複数のフレーム集合に、タイムコード情報200を含む電子透かしを埋め込むには、タイムコード情報200に対応する透かしパターン201を生成し、入力画像のフレームに生成した透かしパターン201を重畳することによって、透かしパターンをフレームへ埋め込む。電子透かし埋め込みコンテンツ202は、連続的に全てのフレームに電子透かし埋め込みを施したものである。電子透かし埋め込みコンテンツ202に対して、フォーマット変換や圧縮符号化などの画像処理203が加わったものが検査対象コンテンツ204である。検査対象コンテンツ204から透かしパターン205を検出し、検出した透かしパターン205に対応するタイムコード情報206を得る。
【0042】
タイムコードは、例えば、2000年1月1日午前0時0分0秒などの絶対時刻からの経過時間としての相対値を用いる。タイムコード情報には、セグメント位置、セグメント番号、タイムコード、コンテンツID、ユーザID、カメラ番号、装置番号、録画機番号などを含める。映像を所定の時間(例えば1分)単位で、複数のセグメントに分割する。タイムコード情報に含まれるセグメント位置は、映像の真正性証明を行う開始位置、終了位置などのマークを示す。セグメント番号は、映像の真正性証明対象となるセグメント内の通し番号であり、時刻順にインクリメントする。映像が30fpsのフレームレートの場合、タイムコードの分解能は1/30秒でよい。。例えば、分解能が1/30秒で1000年分のタイムコードを表現するためには、40bitあれば十分である(30フレーム×60秒×60分×24時間×365日×1000年 = 946、080、000、000 < 240)。さらに効率よく少ないビット数で表現するためには可逆圧縮符号化する。タイムコードのデータ量に他のIDを含めたタイムコード情報としては、さらに20〜30ビットを加えたデータ量を用いる。
【0043】
図3は、電子透かし埋め込み装置301を含めたシステムの運用例である。カメラ101から入力された映像は、電子透かし埋め込み装置301によって、電子透かしが埋め込まれる。電子透かし埋め込み装置301は、図1のPC102に可搬媒体105を装着し、時刻情報源104と接続したものと技術的に等価である。さらに、録画機103によって、電子透かし入りの映像が録画され、映像記録媒体304に記録される。映像記録媒体304に何らかの改ざんの疑惑が生じた場合には、再生機302によって、映像記録媒体304を再生し、電子透かし検出装置303によって、改ざんの有無を検証し、検証結果を出力する。電子透かし検出装置303は、図9、図10を用いて後に説明するように、改ざんを検知する。
【0044】
図4は、改ざん検知の概要を示す説明図である。映像の改ざんには、削除、挿入、差し替え、複写などがある。挿入や差し替えは、映像に埋め込まれたタイムコードを含む電子透かしの未検出状態により検知する。また、タイムコードを検出しても、再生時刻と照合することにより、タイムコードの整合性を検証できるため、削除や複写を検知する。このようにして、映像に加えられた改ざんを検知する。
【0045】
図5は、電子透かしとしてのタイムコードの埋め込みの概要を示す説明図である。電子透かしはd秒間(N枚)のフレーム集合に対して、同一のタイムコードtを埋め込む。1フレームごとでもよい。図5において、時刻0のタイムコードt1は、時刻0からのNフレームに対して埋め込み、時刻dのタイムコードt2は、時刻dからのNフレームに対して埋め込む。
【0046】
図6は、埋め込み情報と録画機の同期についての説明図である。すでに説明したように、映像を構成する複数のフレームには、時間経過に従って、適切なタイムコード情報が電子透かしとして埋め込まれる。カメラ101、電子透かし埋め込み装置301、録画機103が接続されているとき、これらの機器に同時に電源を投入しても、機器ごとの起動時間の相違によって、適切に同期が取れない。
【0047】
図6は、分かり易くするために、1フレームに1つのタイムコードに対応するタイムコード情報を電子透かしとして埋め込む場合を例に、電子透かし埋め込み装置301の出力映像のフレームの流れを示している。複数フレームに1つのタイムコードを埋め込む場合もある。電子透かし埋め込み装置301において、出力映像の先頭の埋め込み情報(タイムコード情報)は、セグメント位置としてのOpenと日時時刻である。その後、所定時間ごとの映像セグメントが並ぶ。各映像セグメントには、セグメント位置はStartで開始し、セグメント内の通し番号となるセグメント番号TC1、TC2、・・・、TCm(ここでは、タイムコードを用いている)をセグメント位置として付与し、最後のセグメント位置ではEndで、一つのセグメントの終了を示す。続けて次の映像セグメントが開始される。電子透かし埋め込み装置301の停止時には、出力映像の最後の埋め込み情報が、セグメント位置Closeと日時時刻である。
【0048】
図6では、録画機103の起動が電子透かし埋め込み装置301より遅れた場合を図示している。録画開始時の先頭のフレームに埋め込まれたセグメント番号としてのタイムコードはTC3である。このとき、録画された映像として、時刻TC3以前の映像が存在しないことが正常なのか、削除されたのかを区別できない。後述するように、セグメント位置StartとEndとの両方が含まれているセグメント単位で改ざんを検知する。StartとEndの一方が含まれていない、リードアウト、リードイン領域及びそれらの外側のフレームの改ざんは検知できない。そこで、電子透かし埋め込み装置301と録画機103との相互通信により、この問題を解消する。録画機103は、録画開始可能となる時刻を電子透かし埋め込み装置301に連絡する。電子透かし埋め込み装置301は、録画開始可能なTC3時点のセグメント番号をセグメント位置Openに変更して、出力する。具体的には、セグメント位置がOpenであり、日時時刻がタイムコードTC3のタイムコード情報に対応する電子透かしパターンを選択して、TC3時点の映像に埋め込む。これにより、リードイン領域が生じない。録画終了時のリードアウト領域についても同様に処理する。
【0049】
リードイン領域、リードアウト領域は、カメラ101と電子透かし埋め込み装置301との間にも存在する。リードイン領域、リードアウト領域に適切に対応するように、カメラ101と電子透かし埋め込み装置301が相互通信してもよい。
【0050】
図7は、電子透かしとしてタイムコード情報を埋め込む重畳処理部126のPAD(Problem Analysis Diagram)である。なお、電子透かしとしてタイムコード情報を埋め込むとは、タイムコード情報に対応した透かしパターンを透かしパターンDB121から検索し、検索した透かしパターンを電子透かしとして対応する映像フレームに重畳することである。ステップ701において、システムを初期化する。ステップ702において、キャプチャした映像フレームをバッファに格納する。カメラ電源を切る際に、映像信号の終わりが事前連絡無しに突然来る場合があり、映像信号終了後にも、バッファ内の画像を処理することによって、適切に真正性証明を可能とすることができる。
【0051】
ステップ703において、映像開始時刻情報をタイムコード情報に設定する。映像開始時刻情報として現在時刻を取得し、セグメント位置としてOpenを設定する。具体的には、現在時刻をタイムコードとし、Openをセグメント位置としたタイムコード情報とする。
【0052】
ステップ704において、新たな映像フレームをバッファに取り込むと共に、ステップ703で設定したタイムコード情報をキーとして透かしパターンDB121を検索し、検索した透かしパターンを電子透かしとしてバッファに格納されている映像フレームに重畳し、出力する。この処理をN回繰り返す。ステップ704のNフレーム埋め込み処理の詳細は、図8を用いて後述する。なお、Nフレーム埋め込み処理を実行する際に、Nの値とステップ703で設定したタイムコード情報とをパラメータとして渡す。
【0053】
ステップ705において、入力映像がとぎれ、キャプチャーした映像フレームが無くなるまで、ステップ706〜ステップ712の処理を繰り返す。
【0054】
ステップ706において、入力映像は所定の時間ごとにセグメントとして分割し、セグメント単位でステップ707〜ステップ712の処理を繰り返す。
【0055】
ステップ707において、あるセグメントを示すi(i=0、・・・、m+1)番目の埋め込み窓を設定する。ここで、一つのセグメントは、N枚の映像フレームを持つとする。
【0056】
埋め込み窓とは、1または複数の連続したフレームに対して電子透かしを用いて繰り返し同じ情報を埋め込むときに、そのフレームに対して設定される埋め込み操作の単位をいう。埋め込み窓ごとに、電子透かし埋め込み情報を1つ設定する。
【0057】
本実施例では、1セグメントと埋め込み窓1つは技術的に等価である。埋め込み窓を構成するN枚の連続したフレーム群の単位に対して埋め込み窓を設定する。このときの埋め込み窓の大きさはNである。1セグメント内でフレームごとの埋め込み操作は、N回行われる。
【0058】
ステップ708において、i=0(最初の埋め込み窓)のとき、ステップ709において、その埋め込み窓のセグメント位置としてStartを設定する。ステップ708において、i=m+1(最後の埋め込み窓)のとき、ステップ710において、その埋め込み窓のセグメント位置としてEndを設定する。ステップ709及びステップ710のいずれの場合も現在時刻timeを取得する。ステップ709及びステップ710は、具体的には、現在時刻をタイムコードとし、Start又はEndをセグメント位置としたタイムコード情報とする。ステップ708において、その他の場合には、ステップ711において、その埋め込み窓のセグメント番号として、i×Nを設定する。具体的には、i×Nをセグメント番号としたタイムコード情報とする。
【0059】
ステップ712において、Nフレーム分、映像フレーム123を逐次取り込みながら、バッファに格納された映像フレームにタイムコード情報を埋め込み、タイムコード情報を埋め込んだ映像フレーム124として出力する。ステップ712は、具体的には、ステップ709〜ステップ711のいずれかで設定したタイムコード情報をキーとして透かしパターンDB121を検索し、検索した透かしパターンを電子透かしとしてバッファに格納されている映像フレームに重畳し、出力する。このNフレーム埋め込み処理をN回繰り返す。Nフレーム埋め込み処理へのパラメータに関しては前述の通りである。ただし、ユーザ指示、あるいは、入力映像109の終了に伴って、割り込み処理が発生すると、処理を中断して、ステップ713に進む。
【0060】
ステップ713において、映像終了時刻情報をタイムコード情報に設定する。映像終了時刻情報として現在時刻を取得し、セグメント位置としてCloseを設定する。具体的には、現在時刻をタイムコードとし、Closeをセグメント位置としたタイムコード情報とする。
【0061】
ステップ714において、Nフレーム分、バッファに蓄積された映像フレームにタイムコード情報を埋め込み、出力映像フレームに書き出す処理を行う。具体的には、設定したタイムコード情報をキーとして透かしパターンDB121を検索し、検索した透かしパターンを電子透かしとしてバッファに格納されている映像フレームに重畳し、出力する。このNフレーム埋め込み処理をN回繰り返す。ただし、入力映像フレームの取り込みは止める。必要に応じて、カメラ、録画機と同期のための通信を行っても良い。
【0062】
図8は、タイムコード埋め込み方法の中心的な処理部分であるNフレーム埋め込み処理のPADである。ステップ801において、鍵設定処理部115が読み込んだ鍵106、証明書107に基づいてDBアクセスに対する認証処理を行う。
【0063】
ステップ802において、設定され、パラメータとして渡されたタイムコード情報をキーにして、透かしパターンDB121を検索し、透かしパターンあるいは暗号化透かしパターンを得る。ステップ803において、透かしパターンが暗号化されていれば、鍵106を用いて復号化する。
【0064】
ステップ804において、パラメータとして渡されたNの値に応じて、Nフレーム分の繰り返し処理を行う。繰り返し数確認のための変数kを設定し、処理が一巡するたびに、kを1からNに順次インクリメントする。
【0065】
ステップ805において、入力映像の有無をチェックを行い、入力映像が終了していれば、ステップ806において、終了フラグを設定し、現在の処理を抜け出す。ステップ805において、映像信号が継続していれば、ステップ807において、キャプチャーした映像フレームをバッファに格納する。
【0066】
ステップ808において、バッファから(i×N+k)番目の画像フレームを読み出す。ステップ809において、透かしパターンDB121の検索で得た透かしパターンと、画像フレームとの整合性を確認する。例えば、両者のサイズが異なる場合には、透かしパターンを繰り返して書き込む処理を行う。ステップ810において、バッファから読み込んだ画像フレームの分析を行い、埋め込み強度を決定する。この分析には、例えば、特許文献2の埋め込み可能性分析処理を用いてもよい。
【0067】
ステップ811において、透かしパターンの画像フレームへの重畳を行うことにより、透かし埋め込み画像を生成する。
【0068】
ステップ812において、透かし埋め込み画像を出力の映像フレームのバッファに格納する。ステップ804に従って、Nフレームを処理していれば、終了する。
【0069】
本実施例では、ステップ702において、映像フレームを十分にバッファリングする。ステップ807及びステップ808では、バッファに対してキュー操作、すなわちファーストインファーストアウトの操作を行い、得られたフレームデータに対して以降の処理を行う。このため、入力映像がとぎれた後にも、いくつかのフレームがバッファに残っている状態を保つ。バッファサイズを大きく設定(最小値2N)すれば、ステップ714の実行時点で、映像がとぎれた時点からさかのぼったNフレーム以上のフレームがバッファに存在する。
【0070】
なお、ステップ707の処理をNフレーム単位で完結させるために、ステップ806で設定された終了フラグが立っているときに、ステップ707の繰り返し処理を抜け出し、ステップ713の処理に進む。
【0071】
図9は、電子透かしとして埋め込まれたタイムコード情報を用いて、映像コンテンツの改ざん検知処理のPADである。
【0072】
ステップ901において、本処理で用いるメモリ上の変数を初期化する。
TCcur = TCpre = nD = 0
AttackType[0] = “No Attack”、i = 0
ステップ902において、冒頭の映像フレームの電子透かしの検出を行い、タイムコード情報のセグメント位置がOpenであることを確認する。
【0073】
ステップ903において、映像フレームの入力が続く間、繰り返し処理の制御を行う。ただし、映像は、所定の長さで区切られた複数のセグメントから構成する。
【0074】
ステップ904において、セグメントの開始条件の検証を行う。すなわち、電子透かしの検出を行い、タイムコード情報のセグメント位置がStartであることを確認する。
【0075】
ステップ905において、セグメント内部の検証の繰り返し処理の制御を行う。ただし、1つのセグメントと検出窓は1対1対応しない。
【0076】
検出窓とは、1または複数の連続したフレームを用いて電子透かし検出を行う操作の単位をいう。検出に成功すれば、検出窓ごとに、電子透かし埋め込み情報が1つ検出される。
【0077】
本実施例では、埋め込み窓の大きさがNのとき,検出窓の大きさはN/2とする。
【0078】
圧縮符号化などの画像処理を経ると、埋め込み窓と検出窓の同期がずれることがある。このため、検出時に用いる映像データの中で、あるセグメント(あるいは埋め込み窓)の先頭フレームがどこにあるかは、検出者に明示的に伝えられない場合がある。検査者がその情報を入手し、埋め込み窓と検出窓の同期が完全に取れれば、1つのセグメントに対して、検出窓が2つ含まれる。同期が取れない場合においても、1つのセグメントに対して、少なくとも1つの検出窓が含まれる。
【0079】
ステップ906において、i番目の検出窓を設定し、検出窓の範囲にある(N/2)枚の映像フレームに対する繰り返し処理の制御を行う。
【0080】
ステップ907において、映像フレームの入力がなくなれば、ステップ908において、終了フラグを設定して、処理を抜け出す。ステップ907において、映像フレームの入力があれば、ステップ909において、続きの画像をキャプチャする。 ステップ910において、キャプチャされた画像の重畳処理を行う。
【0081】
ステップ911において、i番目の検出窓にある、(N/2)枚の映像フレームの重畳データから電子透かしの検出を行う。
【0082】
ステップ912において、検出結果を用いて、映像改ざんの有無について、診断を行う。この診断については、図10を用いて後述する。
【0083】
ステップ913において、セグメントの終了条件の検証を行う。すなわち、電子透かしの検出を行い、タイムコード情報のセグメント位置がEndであることを確認する。
【0084】
ステップ914において、映像終了箇所の映像フレームの電子透かしの検出を行い、タイムコード情報のセグメント位置がCloseであることを確認する。電子透かし埋め込み装置301よりも先に録画機103を停止していた場合には、EndやCloseの判定ができない場合がある。この場合、前述したリードアウトタイムについての考え方を適用すればよい。
【0085】
図10は、映像の改ざん検知を行う処理の中で、改ざん行為の種類を特定する検出結果診断処理のPADである。図9におけるi番目の検出窓に対する処理である。
【0086】
ステップ1001において、電子透かしの検出ができるかどうかの判定を行い、検出できなければ、ステップ1002に進む。ステップ1001において、検出できれば、ステップ1006に進む。
【0087】
ステップ1002において、電子透かし連続未検出回数の値nDをインクリメントする。
【0088】
ステップ1003において、ΔTC=TCcur−TCpreを計算し、ΔTCがゼロあるいは1の場合であって、かつ、nDが1の場合には、ステップ1004に進む。ステップ1004において、現在の検出窓に対する攻撃内容AttackType[i]を”No Attack”に設定する。ステップ1003において、上記条件が未成立の場合には、ステップ1005に進む。ステップ1005において、現在の検出窓に対する攻撃内容AttackType[i]を”Unconfirmed”に設定する。すなわち、判断保留とする。
【0089】
ステップ1006において、TCpreにTCcurを格納し、TCcurには、電子透かしとして検出したタイムコードのセグメント番号を格納する。なお、ステップ1006は、ステップ1001における電子透かしの検出ができたという判定に続く処理である。
【0090】
ステップ1007において、一つ前の検出窓の判定結果AttackType[i−1]が”Unconfirmed”であった場合には、ステップ1008に進む。その他の場合には、ステップ1009に進む。
【0091】
ステップ1008において、i番目の検出窓の検出結果に基づき、以前の検出窓での診断結果AttackType[1]〜AttackType[i−1]のうち、”Unconfirmed”と暫定判定されていた箇所は、削除、挿入などの改ざんであったと判断して、”Attacked”に置き換える。
【0092】
ステップ1009において、ΔTC=TCcur−TCpreを計算する。さらに、ΔTCがゼロあるいは1の場合であって、かつ、nDが0または1の場合には、現在の検出窓に対する攻撃内容AttackType[i]を”No Attack”に設定する。あるいは、この条件を満たさない場合には、AttackType[i]を”Attacked”に設置する。
【0093】
ステップ1010において、電子透かし連続未検出回数の値nDをゼロに戻す。
【0094】
図11は、透かしパターンDB117のフィールド構造の説明図である。
【0095】
透かしパターンDB117は3つのテーブルから構成し、セグメント番号テーブル1101、セグメント位置テーブル1102、日付時刻情報テーブル1103を備える。セグメント番号テーブル1101は、セグメント番号1104をキーとして、透かしパターンデータ1105を登録検索する。セグメント位置テーブル1102は、セグメント位置1106をキーとして、透かしパターンデータ1107を登録検索する。日付時刻情報テーブル1103は、日付時刻情報(日付1108、時刻1109、フレーム1110)をキーとして、透かしパターンデータ1111を登録検索する。タイムコード情報は、これら3つのキーを備えたものである。さらに、カメラID、ユーザIDや機器IDなどを組み合わせて、DB管理してもよい。テーブルを分割するのではなく、統合されたタイムコード情報をキーとして、統合された透かしパターンデータを保持してもよい。
【0096】
透かしパターンは、キーとなっている情報を一意に可逆符号化したものであり、例えば、特許文献2に記述のある「電子透かしパターン」を用いてもよい。
【0097】
図12は、透かしパターンDB117を生成する処理のPADである。
【0098】
ステップ1201において、鍵106、証明書107を用いた認証を行う。この認証は、機器認証、プロダクト認証、ユーザ認証を含む。
【0099】
ステップ1202において、ユーザによって予め設定される、映像フレームが入力が完了すると想定される時刻までのタイムコード情報について繰り返し制御を行う。
【0100】
ステップ1203において、タイムコード情報を符号化する。ステップ1204において、符号化情報を2次元形状として、透かしパターンの基本形に変換する。透かしパターンの基本形は、映像フレームの幅×高さの大きさに比べて普通は小さい。大きい場合は、複数フレームに分けて分割格納すればよい。
【0101】
ステップ1205において、入力映像の映像フレーム全体での繰り返し処理の制御を行う。
【0102】
ステップ1206において、透かしパターンの基本形を繰り返し配置して、画像の幅×高さの大きさに変換する。ここで変換しなくても、後で重畳するときに変換してもよい。
【0103】
ステップ1207において、透かしパターンを暗号化する。暗号化しなくてもよい。電子透かしはアルゴリズムを秘匿することによってセキュリティを担保する技術なので、暗号化によって、透かしパターン情報が攻撃者の目にさらされるリスクを除くことができる。
【0104】
ステップ1208において、タイムコード情報をキーとして、透かしパターン、あるいは、暗号化透かしパターンを透かしパターンDB117に登録する。ステップ1202に戻って、所定のタイムコード情報に対応して透かしパターンを生成し終えていえれば、処理を終了する。そうでなければ、以上の処理を繰り返し実行する。
【0105】
なお、ステップ1202において、タイムコード情報は、ユーザによって予め設定されなくても、未来の時刻として容易に予測可能である。埋め込む情報として、GPS情報の場合、位置の情報となる。現在のGPSによる測位制度は10m程度であり、地球上のすべての位置を事前に網羅的に算出しておくことも可能である。10m精度での緯経度表現であっても、54ビット程度で表現可能である。この程度の情報量は、電子透かしとして埋め込む情報量として問題とならない。
【実施例2】
【0106】
第2の実施例について説明する。図13は、第2の実施例における電子透かし埋め込みを実現する電子透かし埋め込み装置の構成図である。
【0107】
図1に示した第1の実施例同様に、カメラ101、PC102、録画機103を映像信号線によって接続し、時刻情報源104とネットワーク接続する。第1の実施例との主要な相違点は、鍵1307、証明書1309に加えて、透かしパターン構築処理114とディスク管理処理113に相当する処理(時刻設定処理1302、透かしパターン生成処理1303、タイマ1304、透かしパターンDB1305、アクセス制御1306、検証1308)を、ICカードのような演算装置を含む可搬媒体1301上に搭載し、PC102に対して、透かしパターンデータに対するアクセス制御をより安全に実装していることである。タイマ1304はPC102のタイマ108と異なり、可搬媒体1301上に搭載しているため、時刻改ざんなどの攻撃を受けにくい。さらに、PC102側にも鍵1311、証明書1310を搭載し、認証手段1312によって、不正な可搬媒体によるシステム制御を拒絶することができる。可搬媒体1301は、PC102に着脱可能としているが、PC102内メモリやディスクに固着させてもよい。
【実施例3】
【0108】
第3の実施例について説明する。図14は、第3の実施例における電子透かし埋め込みを実現する電子透かし埋め込み装置の構成図である。
【0109】
第1の実施例との主たる相違点は、パターンバッファ(I)1407、パターンバッファ(II)1408を介して、並列処理技術を導入していることである。並列処理として、プロセスAをCPU_A1401上で実行し、プロセスBをCPU_B1402上で実行している。
【0110】
プロセスAでは、次の3つの処理(1)(2)(3)を行い、全体を統括制御A1406が管理する。(1)埋め込み情報設定処理1403により、タイムコードなどの変化情報を設定する。(2)この埋め込み情報に対応する透かしパターンを、透かしパターン生成処理1404により作成する。(3)生成した透かしパターンは、パターンバッファ選択格納処理1405によって、パターンバッファ(I)1407、パターンバッファ(II)1408のいずれかに格納される。
【0111】
プロセスBでは、次の3つの処理(1)(2)(3)を行い、全体を統括制御B1409が管理する。(1)フレーム読み込み処理1409により、入力映像フレーム123を入力バッファに格納する。(2)埋め込み処理1410により、パターンバッファ(I)1407、パターンバッファ(II)1408のいずれかと、入力映像フレーム123の画像データを重畳し、出力映像フレーム124を生成する。(3)フレーム書き出し処理1411により、出力映像フレーム124を出力バッファに格納する。
【0112】
図15は、第3の実施例における電子透かし埋め込みにおけるタイミングチャートである。
【0113】
CPU_A1401上のプロセスAは、透かしパターンを作成し、パターンバッファ(I)1407、パターンバッファ(II)1408のいずれかに格納する。CPU_B1402上のプロセスBは、映像入出力と同期を取りながら、パターンバッファのデータと入力映像フレームの重畳処理を行う。
【0114】
図15では、パターンバッファ(I)1407上の透かしパターンは、第1フレーム、および、第2フレームの2枚に適用され、その間に生成された別の透かしパターンは、パターンバッファ(II)1408に格納される。次の埋め込み処理では、パターンバッファ(II)1408が読み出され、第3フレームに重畳される。
【0115】
透かしパターン生成処理1404の処理時間が長くて、プロセスA、プロセスBを単一のプロセスとして実行すると映像と同期が取れない場合に、このような並列処理が適する。
それぞれの処理時間を下記のように変数として書き表す。
透かしパターン生成処理1404の処理時間 P(ms)、
埋め込み処理1410(重畳処理)の処理時間 Q(ms)
フレーム読み込み処理1409の処理時間 R(ms)
フレーム書き出し処理1411の処理時間 S(ms)
映像フレームレートを30fpsとすると、R+Q+S≦30(ms)であることがリアルタイム処理の必要条件である。また、図15では、パターンバッファが2枚の場合の例を挙げたが、透かしパターン生成処理1404の処理時間が更に長い場合には、パターンバッファ枚数(T枚)が増えて、より多くのメモリ領域が必要となる。必要なパターンバッファの枚数には、T≧1+Quotient(P、(Q+S+R))の関係がある。Quotient(a、b)は、aをbで割った時の商を示す。
【0116】
映像フレーム1枚分を計算してみると、リアルタイム処理に必要となるパターンバッファの枚数が計算できる。統括制御B1409において、映像入出力との同期が取れなくなると、画像入出力ボードからの同期エラーシグナルが返る。統括制御B1409および、統括制御A1406は、上記処理時間PQRSを計測しており、必要パターンバッファ枚数Tを求めることにより、パターンバッファを増設する。この作用によって、映像入出力のリアルタイム処理と同期を取ることができる。パターンバッファは、透かしパターンを格納するバッファメモリであり、それが2枚(2面)のとき、交替バッファとして動作する。3枚以上のときはリングバッファとして動作する。
【0117】
以上の実施形態では、電子透かしの中に埋め込む、逐次的に変化する変化情報として、時刻情報(タイムコード)を用いて説明した。逐次的に変化する変化情報は、それを埋め込んだ透かしパターンを変化させるとともに、変化の規則性を利用することにより事前に透かしパターンを用意しておくことができる。したがって、逐次的にかつ規則的に変化する変化情報は時刻情報に限らず、変化に規則性がある情報であれば良い。その例として簡単に触れた位置情報であっても、変化に規則性を持たせればよい。極端には、上昇順または下降順の数値情報であっても、数値情報の差分が一定であるなどの規則性があればよい。変化情報として時刻情報を用いる場合は、入力映像フレームと現在時刻を対応させるように説明したが、入力映像フレームに対応させる変化情報は、ある時点で対応付けられていればよい。たとえば、映像入力開始時の先頭映像フレームに変化情報として0を対応付け、入力される映像フレームに順次上昇順の数値を対応付けても良い。
【0118】
以上、本発明の実施の形態を具体的に説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0119】
101:カメラ、102:PC、103:録画機、104:時刻情報源、105:可搬媒体、106:鍵、107:証明書、108:タイマ、111:ビデオ入出力ボード、112:電子透かし埋め込み処理部、113:ディスク管理処理部、114:透かしパターン構築処理部、117:透かしパターンDB、121:透かしパターンDB、301:電子透かし埋め込み装置、303:電子透かし検出装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
映像をキャプチャーし、画像フレームとして入力し、前記入力画像フレームに電子透かしを埋め込んだ画像フレームを出力するビデオ入出力ボードと、前記電子透かしのパターンを透かしパターンとして格納するメモリとを備えた電子透かし埋め込み装置における電子透かし埋め込み方法であって、
逐次的にかつ規則的に変化する変化情報に対応して、前記透かしパターンを生成し、前記生成した前記透かしパターンを前記メモリに格納し、
前記ビデオ入出力ボードからの前記入力画像フレームに対応する前記変化情報をキーとして、前記透かしパターンを検索し、
前記検索した透かしパターンを前記入力画像フレームに電子透かしとして埋め込んだ画像フレームを前記ビデオ入出力ボードに出力することを特徴とする電子透かし埋め込み方法。
【請求項2】
請求項1記載の電子透かし埋め込み方法であって、前記逐次的にかつ規則的に変化する変化情報は時刻情報であり、前記透かしパターンを検索するキーは、前記ビデオ入出力ボードから入力した前記入力画像フレームを処理する現在時刻情報を含むことを特徴とする電子透かし埋め込み方法。
【請求項3】
請求項1記載の電子透かし埋め込み方法であって、前記変化情報が位置情報であることを特徴とする電子透かし埋め込み方法。
【請求項4】
請求項1記載の電子透かし埋め込み方法であって、前記透かしパターンを格納する前記メモリはオンメモリDBであることを特徴とする電子透かし埋め込み方法。
【請求項5】
映像をキャプチャーし、画像フレームとして入力し、前記入力画像フレームに電子透かしを埋め込んだ画像フレームを出力するビデオ入出力ボードと、前記電子透かしのパターンを透かしパターンとして格納するバッファメモリと、第1および第2のCPUを備えた電子透かし埋め込み装置における電子透かし埋め込み方法であって、
前記第1のCPUは、逐次的にかつ規則的に変化する変化情報に対応して、前記透かしパターンをに生成し、前記生成した前記透かしパターンを前記バッファメモリに格納し、
前記第2のCPUは、前記ビデオ入出力ボードからの前記入力画像フレームの入力に対応して、前記バッファメモリから前記透かしパターンを入力し、
前記入力した透かしパターンを前記入力画像フレームに電子透かしとして埋め込んだ画像フレームを前記ビデオ入出力ボードに出力することを特徴とする電子透かし埋め込み方法。
【請求項6】
映像をキャプチャーし、画像フレームとして入力し、前記入力画像フレームに電子透かしを埋め込んだ画像フレームを出力するビデオ入出力ボード、
前記電子透かしのパターンを透かしパターンとして格納するメモリ、
逐次的にかつ規則的に変化する変化情報に対応して、前記透かしパターンを生成し、前記生成した前記透かしパターンを前記メモリに格納する透かしパターン構築処理部、
前記ビデオ入出力ボードからの前記入力画像フレームに対応する前記変化情報をキーとして、前記透かしパターンを検索する透かしパターン呼び出し処理部、及び
前記検索した透かしパターンを前記入力画像フレームに電子透かしとして埋め込み、前記検索した透かしパターンを電子透かしとして埋め込んだ画像フレームを前記ビデオ入出力ボードに出力する重畳処理部を有することを特徴とする電子透かし埋め込み装置。
【請求項7】
請求項3記載の電子透かし埋め込み装置であって、前記逐次的にかつ規則的に変化する変化情報は時刻情報であり、前記透かしパターンを検索するキーは、前記ビデオ入出力ボードから入力した前記入力画像フレームを処理する現在時刻情報を含むことを特徴とする電子透かし埋め込み装置。
【請求項8】
請求項1記載の電子透かし埋め込み装置であって、前記変化情報が位置情報であることを特徴とする電子透かし埋め込み装置。
【請求項9】
請求項1記載の電子透かし埋め込み装置であって、前記透かしパターンを格納する前記メモリはオンメモリDBであることを特徴とする電子透かし埋め込み装置。
【請求項10】
映像をキャプチャーし、画像フレームとして入力し、前記入力画像フレームに電子透かしを埋め込んだ画像フレームを出力するビデオ入出力ボード、
前記電子透かしのパターンを透かしパターンとして格納するバッファメモリ、
逐次的に変化する変化情報に対応して、前記透かしパターンをに生成し、前記生成した前記透かしパターンを前記バッファメモリに格納する第1のCPU、及び
前記ビデオ入出力ボードからの前記入力画像フレームの入力に対応して、前記バッファメモリから前記透かしパターンを入力し、前記入力した透かしパターンを前記入力画像フレームに電子透かしとして埋め込んだ画像フレームを前記ビデオ入出力ボードに出力する第2のCPUを有することを特徴とする電子透かし埋め込み装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−258645(P2010−258645A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−104871(P2009−104871)
【出願日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【出願人】(000153443)株式会社日立情報制御ソリューションズ (359)
【Fターム(参考)】