説明

電子部品の固定構造

【課題】電子部品内の半導体素子へのダメージを抑えることが可能な電子部品の固定構造を提供することを目的とする。
【解決手段】半導体素子48がパッケージ樹脂41によりパッケージされる電子部品40と、その電子部品40が固定されるケース45と、一方端がケース45に固定される板ばね2と、電子部品40に設けられる貫通孔44に挿入される挿入部分3と、板ばね2の他方端に押さえられ貫通孔44よりも大きく、かつ、板ばね2から受ける押力の方向において半導体素子48と重ならないような大きさに形成される押え部分4とを有するブッシュ5とを備えて電子部品40の固定構造を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被固定部材に固定される電子部品の固定構造に関する。
【背景技術】
【0002】
図4(a)は、電子部品の一例を示す図である。
図4(a)に示す電子部品40は、トランジスタなどの半導体素子がパッケージ樹脂41によりパッケージされる電子部品であり、半導体素子の各種端子にそれぞれ電気的に接続されるリード42と、半導体素子から発する熱を放出するための放熱板43と、ねじ止め用の貫通孔44とを備える。
【0003】
図4(b)は、電子部品40の固定構造の一例を示す図であり、上記被固定部材としてのケース45に固定される電子部品40の固定構造を示している。
図4(b)に示す電子部品40の固定構造では、貫通孔44に金属のねじ46を通し、そのねじ46をケース45に設けられるねじ穴47に螺合することにより、電子部品40をケース45に固定している。
【0004】
また、上述のような電子部品40では、電子部品40内に備えられる半導体素子48がハンダなどを介して放熱板43に実装されていることが多いため、電子部品40をケース45に固定する際、放熱板43とケース45とが電気的に接続されて放熱板43がケース45と同電位にならないように、図4(b)に示すように、電子部品40とケース45との間に絶縁シート49を設けて、放熱板43とケース45とを絶縁させる。
【0005】
また、上述のような電子部品40では、放熱板43がパッケージ樹脂41から露出しているため、電子部品40がケース45に固定されると、半導体素子48から発する熱が絶縁シート49及びケース45を介して放出される。
【0006】
また、上述の電子部品40の固定構造では、通常、放熱板43とねじ46との絶縁性が確保されるために、放熱板43とねじ46との間のパッケージ樹脂41の距離xが所定の規格に合うように予め決められた距離に設定されているが、半導体素子48に高電位が印加されると、使用環境によってはその高電位に対して距離xが不足し、放熱板43とねじ46との絶縁性が確保されなくなるおそれがある。
【0007】
そこで、例えば、特許文献1のように、板ばねで電子部品をケース側に押さえることにより電子部品をケースに固定することが考えられる。
【特許文献1】特開2005−191320号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1では、板ばねが半導体素子上のパッケージ樹脂を押える構成であるため、板ばねからの押力による半導体素子へのダメージが懸念される。また、そのダメージによっては半導体素子の電気特性や信頼性に悪影響がでてしまうおそれがある。
【0009】
そこで、本発明では、電子部品内の半導体素子へのダメージを抑えることが可能な電子部品の固定構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために本発明では、以下のような構成を採用した。
すなわち、本発明の電子部品の固定構造では、半導体素子が絶縁体によりパッケージされる電子部品と、前記電子部品が固定される被固定部材と、一方端が前記被固定部材に固定される板ばねと、絶縁体により形成され前記電子部品に設けられる貫通孔に挿入される挿入部分と、前記板ばねの他方端に押さえられ前記貫通孔よりも大きく、かつ、前記板ばねから受ける押力の方向において前記半導体素子と重ならないような大きさに形成される押え部分とを有するブッシュとを備える。
【0011】
これにより、従来のねじによる固定のときと同様に、電子部品を被固定部材に固定することができる。また、電子部品内の半導体素子上の絶縁体への板ばねの押力を回避することができるため、半導体素子へのダメージを抑えることができる。
【0012】
また、上記挿入部分を絶縁体により形成してもよい。
これにより、半導体素子に高電位が印加されるときに電子部品内の絶縁性が確保されなくなる懸念が解消される。
【0013】
また、上記挿入部分を前記貫通孔に挿入されたときに前記貫通孔からハミ出るような大きさに形成してもよい。
これにより、そのハミ出る部分を被固定部材に設けられる所定の穴に挿入することができるので、電子部品の固定時の位置決めを容易にすることができる。
【0014】
また、上記押え部分において少なくとも前記板ばねと接する部分を金属で形成してもよい。
これにより、板ばねからの押力によるブッシュへのダメージを抑えることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ケースに固定される電子部品の固定構造において、電子部品内の半導体素子へのダメージを抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を用いて本発明の実施形態を説明する。
図1は、本発明の実施形態の電子部品の固定構造を示す図である。なお、図4(b)に示す構成と同じ構成には同じ符号を付している。
【0017】
図1に示す電子部品40の固定構造は、トランジスタなどの半導体素子48が貫通孔44を有するパッケージ樹脂41(絶縁体)(例えば、TO3PやTO220など)によりパッケージされる電子部品40と、その電子部品40が固定されるケース45(被固定部材)と、絶縁シート49と、一方端がケース45にねじ1で固定される板ばね2と、貫通孔44に挿入される挿入部分3と、板ばね2の他方端によりケース45側に押さえられる押え部分4とを有するキノコ形状のブッシュ5とを備える。なお、半導体素子48は、トランジスタに限らない。また、板ばね2とケース45との固定方法は、ねじ1による固定に限らない。
【0018】
上記ブッシュ5は、全体が樹脂により形成され、上記押え部分4は、貫通孔44よりも大きく、かつ、板ばね2から受ける押力の方向において半導体素子48と重ならないような大きさに形成されているものとする。
【0019】
図1に示す本実施形態の電子部品40の固定構造によれば、板ばね2及びブッシュ5により、図4(b)に示すねじ46による固定のときと同様の辺り面積を確保して電子部品40をケース45に固定することができる。
【0020】
また、半導体素子48上のパッケージ樹脂41への板ばね2の押力を回避することができるため、半導体素子48へのダメージを抑えることができる。
また、ブッシュ5全体を絶縁体である樹脂で形成しているため、半導体素子48に高電位が印加されるときに電子部品40内の絶縁性が確保されなくなる懸念が解消される。
【0021】
図2は、ブッシュ5の変形例(その1)を示す図である。
図2に示すブッシュ5の挿入部分3は、貫通孔44に挿入されたとき貫通孔44からハミ出るような大きさに形成されている。
【0022】
これにより、図2に示すように、そのハミ出る部分をケース45に設けられる所定の穴6に挿入することができるので、電子部品40の固定時の位置決めを容易にすることができる。
【0023】
図3(a)は、ブッシュ5の変形例(その2)を示す図である。
図3(a)に示すブッシュ5は、押え部分4が金属で形成され、挿入部分3が樹脂で形成されている。
【0024】
これにより、板ばね2の押力によるブッシュ5へのダメージを抑えることができる。また、ブッシュ5へのダメージを抑えられる分、板ばね2の押力をより強くすることができるので、電子部品40とケース45との固定の信頼性を向上させることができる。
【0025】
図3(b)は、ブッシュ5の変形例(その3)を示す図である。
図3(b)に示すブッシュ5は、押え部分4において板ばね2と接する部分が金属で形成され、それ以外の部分(挿入部分3も含む)が樹脂で形成されている。
【0026】
このようにブッシュ5を形成しても、板ばね2の応力によるブッシュ5へのダメージを抑えることができる。また、ブッシュ5へのダメージを抑えられる分、板ばね2の押力をより強くすることができるので、電子部品40とケース45との固定の信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施形態の電子部品の固定構造を示す図である。
【図2】ブッシュの変形例(その1)を示す図である。
【図3】(a)は、ブッシュの変形例(その2)を示す図である。(b)は、ブッシュの変形例(その3)を示す図である。
【図4】(a)は、電子部品の一例を示す図である。(b)は、従来の電子部品の固定構造を示す図である。
【符号の説明】
【0028】
1 ねじ
2 板ばね
3 挿入部分
4 押え部分
5 ブッシュ
6 穴
40 電子部品
41 パッケージ樹脂
42 リード
43 放熱板
44 貫通孔
45 ケース
46 ねじ
47 ねじ穴
48 半導体素子
49 絶縁シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体素子が絶縁体によりパッケージされる電子部品と、
前記電子部品が固定される被固定部材と、
一方端が前記被固定部材に固定される板ばねと、
前記電子部品に設けられる貫通孔に挿入される挿入部分と、前記板ばねの他方端に押えられ前記貫通孔よりも大きく、かつ、前記板ばねから受ける押力の方向において前記半導体素子と重ならないような大きさに形成される押え部分とを有するブッシュと、
を備えることを特徴とする電子部品の固定構造。
【請求項2】
請求項1に記載の電子部品の固定構造であって、
前記挿入部分は、絶縁体により形成されている、
ことを特徴とする電子部品の固定構造。
【請求項3】
請求項1に記載の電子部品の固定構造であって、
前記挿入部分は、前記貫通孔に挿入されたときに前記貫通孔からハミ出るような大きさに形成されている、
ことを特徴とする電子部品の固定構造。
【請求項4】
請求項1に記載の電子部品の固定構造であって、
前記押え部分において少なくとも前記板ばねと接する部分は、金属で形成されている、
ことを特徴とする電子部品の固定構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−159716(P2008−159716A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−344992(P2006−344992)
【出願日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】