説明

電子部品及びその製造方法

【課題】接合部材を有効に加熱して信頼性の高い実装を行うことができ、しかも電子素子の損傷がない電子部品及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】素子実装領域11a及び加熱用開口11bを有する絶縁性基体11を準備する。絶縁性基体11に、素子実装領域11a及び加熱用開口11bにそれぞれ表面が露出するように導電部材13を取り付ける。素子実装領域11aに露出する導電部材13上に接合部材としてクリーム半田を供給する。クリーム半田上に電極12bが位置するようにチップLED12を搭載する。加熱用開口11bで露出している導電部材13にレーザ15を照射することにより、導電部材13を介してクリーム半田を加熱して溶融させる。これにより、チップLED12の電極12bと導電部材13とを半田付けして、チップLED12を導電部材13に実装する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子部品及びその製造方法に関し、特に絶縁性基体上に電子素子を実装してなる電子部品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
絶縁性基体上に電子素子、例えばチップLEDなどを実装してなる電子部品を製造する場合、例えば、図4に示すように、素子実装領域21aを有し、その素子実装領域21aに導電部材23を取り付けた絶縁性基体21に、電極22aが導電部材23に接触するようにチップLED22を搭載し、電極22a及び導電部材23近傍に半田ごて25で糸半田24を溶融しながら供給して電極22aと導電部材23とを半田24aにより電気的に接続する。
【0003】
あるいは、図5に示すように、素子実装領域21aを有し、その素子実装領域21aに導電部材23を取り付けた絶縁性基体21に、電極22aが導電部材23に接触するようにチップLED22を搭載し、電極22a及び導電部材23近傍にクリーム半田を供給し、レーザ26を照射してクリーム半田を溶融させて、電極22aと導電部材23とを半田24aにより電気的に接続する。
【0004】
あるいは、絶縁性基体の素子実装領域上にクリーム半田を供給し、そのクリーム半田上に電子素子を搭載し、絶縁性基体の裏面側から電熱ヒータ内蔵こてによりクリーム半田を溶融させて電子素子を実装する(特許文献1参照)。
【特許文献1】特願2001−111207号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、図4及び図5に示す方法においては、電子素子までも溶融させたり、焦がしたりする恐れがある。先端を極細にした半田ごてやレーザスポットを小さく絞っても、素子実装領域が凹部に存在している場合には、半田ごてやレーザが有効に半田に届かないことがあり、上記のような不具合が現れる。また、絶縁性基体の裏面側から電熱ヒータ内蔵こてにより半田を溶融させて電子素子を実装する方法では、絶縁性基体を介して半田に対して加熱が行われるので、加熱効率が悪く、十分に半田を加熱することができない恐れがある。
【0006】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、接合部材を有効に加熱して信頼性の高い実装を行うことができ、しかも電子素子の損傷がない電子部品及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の電子部品は、互いに対向する主面を有し、一方の主面に素子実装領域が設けられ、他方の主面に加熱用開口が設けられた絶縁性基体と、前記素子実装領域及び前記加熱用開口にそれぞれ表面が露出するように前記絶縁性基体に取り付けられた導電部材と、前記素子実装領域において前記導電部材と接合部材により電気的に接続された電子素子と、を具備することを特徴とする。
【0008】
本発明の電子部品は、互いに対向する主面を有し、一方の主面に素子実装領域が設けられ、他方の主面に加熱用開口が設けられており、前記素子実装領域及び前記加熱用開口にそれぞれ表面が露出するように導電部材が取り付けられた絶縁性基体を準備する工程と、前記素子実装領域に接合部材を与えて電子素子を搭載する工程と、前記加熱用開口に露出している前記導電部材の表面を加熱して、加熱した接合部材により前記電子素子を前記導電部材に実装する工程と、により得られることを特徴とする。
【0009】
これらの構成によれば、電子素子自体を直接加熱することがないので、電子素子の損傷を防止することができる。また、導電部材は熱伝導性が良いので、裏面側から、すなわち加熱用開口側から加熱しても十分に接合部材に熱を供給することができ、接合部材を溶融させることができる。したがって、信頼性の高い状態で実装を行うことが可能となる。
【0010】
本発明の電子部品においては、前記絶縁性基体の前記素子実装領域は、前記一方の主面に設けられた凹部内に設けられていることが好ましい。また、この構成によれば、電子素子と導電部材との間の接合部が凹部内に位置することから、接合部が保護されるという効果を奏する。
【0011】
本発明の電子部品の製造方法は、互いに対向する主面を有し、一方の主面に素子実装領域が設けられ、他方の主面に加熱用開口が設けられており、前記素子実装領域及び前記加熱用開口にそれぞれ表面が露出するように導電部材が取り付けられた絶縁性基体を準備する工程と、前記素子実装領域に接合部材を与えて電子素子を搭載する工程と、前記加熱用開口に露出している前記導電部材の表面を加熱して、加熱した接合部材により前記電子素子を前記導電部材に実装する工程と、を含むことを特徴とする。
【0012】
この方法によれば、電子素子の損傷を防止することができる。また、導電部材は熱伝導性が良いので、裏面側から、すなわち加熱用開口側から加熱しても十分に接合部材に熱を供給することができ、接合部材を溶融させることができる。したがって、信頼性の高い状態で実装を行うことが可能となる。
【0013】
本発明の電子部品及び電子部品の製造方法においては、前記加熱がレーザ加熱であることが好ましい。これにより、電子素子への熱的衝撃を最小限にすることが可能となる。また、レーザ加熱の場合、スポット径を小さくすることができるので加熱用開口のサイズを小さくすることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の電子部品は、互いに対向する主面を有し、一方の主面に素子実装領域が設けられ、他方の主面に加熱用開口が設けられ絶縁性基体と、前記素子実装領域及び前記加熱用開口にそれぞれ表面が露出するように前記絶縁性基体に取り付けられた導電部材と、前記素子実装領域において前記導電部材と接合部材により電気的に接続された電子素子と、を具備するので、接合部材を有効に加熱して信頼性の高い接合を行うことができ、しかも電子素子の損傷がない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る電子部品を示す平面図であり、図2は、本発明の実施の形態に係る電子部品を示す底面図であり、図3は、本発明の実施の形態に係る電子部品を示す側面図である。
【0016】
図1から図3に示す電子部品は、素子実装領域11a及び加熱用開口11bを有する絶縁性基体11と、素子実装領域11a及び加熱用開口11bにそれぞれ表面が露出するように絶縁性基体11に取り付けられた導電部材13と、素子実装領域11aにおいて導電部材13と接合部材である半田14により電気的に接続された電子素子であるチップLED12とから主に構成されている。なお、図1から図3は、電子部品の構成を示す模式図であり、素子実装領域11a及び電子素子であるチップLED12をそれぞれ一つ示しているが、本発明は、絶縁性基体11に複数の素子実装領域11aが設けられ、複数の電子素子がそれぞれの素子実装領域11aに、一つ又は複数個接続される構成を含む。
【0017】
絶縁性基体11は、互いに対向する主面を備えており、一方の主面に素子実装領域11aが設けられ、他方の主面に加熱用開口11bが設けられている。絶縁性基体11の素子実装領域11aは、一方の主面に凹部11cが形成され、その凹部11c内に設けられている。すなわち、絶縁性基体11において、素子実装領域11aの素子接合部位が主面よりも下方(深い場所)に位置している。また、凹部11cは、電子素子であるチップLED12の平面サイズよりも僅かに大きい開口部分を有し、LED12の概略の位置決めに寄与している。加熱用開口11bは、少なくともスポット的に加熱する加熱手段(ここではレーザ)のスポット径よりも大きいサイズに設定する。なお、絶縁性基体11は、絶縁性材料である、例えば樹脂材料の成形体により構成されている。また、素子実装領域11aや加熱用開口11bの平面的な形状は特に制限はない。
【0018】
導電部材13は、ここでは一対の板状体で構成されており、絶縁性基体11に取り付けられている。また、導電部材13は、それぞれの主面が絶縁性基体11の素子実装領域11a及び加熱用開口11bで露出している。この素子実装領域11aで露出した表面上には半田14によりチップLED12が実装され、加熱用開口11bで露出した表面においてはレーザ15による加熱が行われる。導電部材13は、例えばインサート成形により絶縁性基体11と一体的に作製することができる。なお、導電部材13の材料としては、熱伝導性が良好で、接合部材との相性が良い、ここでは半田付け性が良い材料であることが好ましい。
【0019】
チップLED12は、頂部にキャップ12aが装着されており、底部及び側部には、断面略L字形状の電極12bが設けられている。ここでは、電極12bは、側部に位置する電極面が対向するように2つの電極板で構成されている。チップLED12は、底面の電極12bが導電部材13の素子実装領域側の表面に当接するように搭載される。なお、電極12bの材料としては、接合部材との相性が良い、ここでは半田付け性が良い材料であることが好ましい。
【0020】
次に、上記構成を有する電子部品の製造方法について説明する。
この電子部品を製造する場合、まず、素子実装領域11a及び加熱用開口11bを有する絶縁性基体11を準備する。この絶縁性基体11は、樹脂材料の射出成形などにより作製することができる。この絶縁性基体11に、素子実装領域11a及び加熱用開口11bにそれぞれ表面が露出するように導電部材13を取り付ける。導電部材13を絶縁性基体11に取り付ける場合、それぞれを別体に作製し、導電部材13を絶縁性基体11に取り付けても良く、導電部材13をインサート部材としたインサート成形により絶縁性基体11及び導電部材13を一体に作製しても良い。インサート成形により絶縁性基体11及び導電部材13を一体に作製することにより、導電部材13を絶縁性基体11に確実に保持させることができ、導電部材13の支持強度を向上させることができ、チップLED12の実装をより良好に行うことができる。
【0021】
次いで、素子実装領域11aに露出する導電部材13上に接合部材としてクリーム半田を供給する。その後、クリーム半田上に電極12bが位置するようにチップLED12を搭載する。なお、クリーム半田は、例えばディスペンサなどの吐出装置などを用いて導電部材13の所定の位置に供給される。なお、クリーム半田の供給量については、信頼性が高い状態で半田付けが可能となる量に適宜設定する。
【0022】
次いで、加熱用開口11bで露出している導電部材13の表面をレーザ加熱してクリーム半田を導電部材13の裏面側から溶融する。すなわち、加熱用開口11bで露出している導電部材13にレーザ15を照射することにより、導電部材13を介してクリーム半田を加熱して溶融させる。これにより、チップLED12の電極12bと導電部材13とを半田付けして、チップLED12を導電部材13に実装する。
【0023】
このように本実施の形態に係る電子部品は、素子実装領域11a及び加熱用開口11bにそれぞれ表面が露出するように絶縁性基体11に取り付けられた導電部材13の素子実装領域11aにクリーム半田を供給し、その上にチップLED12を搭載し、加熱用開口11bから導電部材13を加熱して導電部材13を介してクリーム半田を溶融させて導電部材13にチップLED12を実装してなる。したがって、チップLED12自体を直接加熱することがないので、チップLED12の損傷を防止することができる。また、導電部材13は熱伝導性が良いので、裏面側から、すなわち加熱用開口11b側から加熱しても十分にクリーム半田に熱を供給することができ、クリーム半田を溶融させることができる。したがって、信頼性の高い状態で半田付けを行うことが可能となる。
【0024】
特に、図3に示すように、素子実装領域11a側からの半田付けが難しい場合、すなわち、素子実装領域11aが凹部11c内に設けられて導電部材13と電極12bとの接合部分が絶縁性基体11の主面よりも下方に位置している場合、さらに凹部11cの壁面とチップLED12との間隔が狭い場合などには、本構成及び本方法が有効である。また、加熱としてレーザ加熱を用いているので、チップLED12への熱的衝撃を最小限にすることが可能となる。また、レーザ加熱の場合、スポット径を小さくすることができるので加熱用開口11bのサイズを小さくすることができる。
【0025】
本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。上記実施の形態においては、電子素子がチップLEDである場合について説明しているが、本発明は電子素子がチップLED以外の素子である場合にも適用することができる。また、上記実施の形態においては、加熱がレーザ加熱である場合について説明しているが、本発明においては、レーザ加熱以外のスポット的に加熱を行う方法にも適用することができる。また、上記実施の形態においては、接合部材が半田である場合について説明しているが、本発明においては、接合部材が半田以外の加熱により接合が可能な、例えば導電性樹脂であっても良い。また、上記実施の形態においては、チップLEDにキャップが装着されている場合について説明しているが、本発明は電子素子にキャップが装着されていない場合にも適用することができる。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施の形態に係る電子部品を示す平面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る電子部品を示す底面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る電子部品を示す側面図である。
【図4】従来の電子部品を示す側面図である。
【図5】従来の電子部品を示す側面図である。
【符号の説明】
【0027】
11 絶縁性基体
11a 素子実装領域
11b 加熱用開口
11c 凹部
12 チップLED(電子素子)
12a キャップ
12b 電極
13 導電部材
14 半田(接合部材)
15 レーザ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向する主面を有し、一方の主面に素子実装領域が設けられ、他方の主面に加熱用開口が設けられた絶縁性基体と、前記素子実装領域及び前記加熱用開口にそれぞれ表面が露出するように前記絶縁性基体に取り付けられた導電部材と、前記素子実装領域において前記導電部材と接合部材により電気的に接続された電子素子と、を具備することを特徴とする電子部品。
【請求項2】
互いに対向する主面を有し、一方の主面に素子実装領域が設けられ、他方の主面に加熱用開口が設けられており、前記素子実装領域及び前記加熱用開口にそれぞれ表面が露出するように導電部材が取り付けられた絶縁性基体を準備する工程と、前記素子実装領域に接合部材を与えて電子素子を搭載する工程と、前記加熱用開口に露出している前記導電部材の表面を加熱して、加熱した接合部材により前記電子素子を前記導電部材に実装する工程と、により得られることを特徴とする電子部品。
【請求項3】
前記絶縁性基体の前記素子実装領域は、前記一方の主面に設けられた凹部内に設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の電子部品。
【請求項4】
前記加熱がレーザ加熱であることを特徴とする請求項2記載の電子部品。
【請求項5】
互いに対向する主面を有し、一方の主面に素子実装領域が設けられ、他方の主面に加熱用開口が設けられており、前記素子実装領域及び前記加熱用開口にそれぞれ表面が露出するように導電部材が取り付けられた絶縁性基体を準備する工程と、前記素子実装領域に接合部材を与えて電子素子を搭載する工程と、前記加熱用開口に露出している前記導電部材の表面を加熱して、加熱した接合部材により前記電子素子を前記導電部材に実装する工程と、を含むことを特徴とする電子部品の製造方法。
【請求項6】
前記加熱がレーザ加熱であることを特徴とする請求項5記載の電子部品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−278385(P2006−278385A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−90701(P2005−90701)
【出願日】平成17年3月28日(2005.3.28)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】