説明

電子部品搬送用トレー

【課題】円柱状の本体と本体外周面の外側まで伸延する引出端子とを有する電子部品の搬送に使用され、収納された電子部品がその軸周りに回転するのを防止できる電子部品搬送用トレーを提供する。
【解決手段】略円柱状の本体12と、その一方側の端面12aから引き出され、折り曲げられて外周面12bの延長面12b’を越えて伸延する複数の引出端子13とからなる電子部品11を横置きにして収納し搬送するための電子部品搬送用トレー1であって、本体12を収納する凹部からなる本体収納部2と、引出端子13を収納する凹部であって本体収納部2の一方側から略垂直下方に伸延する凹部からなる端子収納部3とを備え、端子収納部3が、収納された引出端子13,13間に位置する突起部31により、引出端子13の揺動を防止する電子部品搬送用トレー1とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解コンデンサ等の円柱状の本体と引出端子とを有する電子部品を搬送するための電子部品搬送用トレーに関する。
【背景技術】
【0002】
電解コンデンサ等、円柱状、直方体状等の本体と引出端子とを有する電子部品を搬送するための電子部品搬送用トレーは、従来、図3に示すように構成されている。
すなわち、従来の電子部品搬送用トレー1’は、電子部品11の本体12が横置き状態で収納される本体収納部2’と、本体12から伸延する引出端子13を収納する端子収納部3’とからなる電子部品収納部4’を、マトリクス状に複数配置して構成されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような電子部品搬送用トレーは、多数個の電子部品を収納できると共に、搬送中の振動や衝撃によって電子部品同士が接触して打痕が生じることがないため、広く利用されてきた。
【特許文献1】特開2003−20095号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の電子部品搬送用トレー1’では、搬送中に振動や衝撃が加わると、円柱状の本体12を有する電子部品11がその軸周りに大きく回転し、引出端子13と端子収納部3’の底面3a’とが強く接触することで、端子曲がりが発生する場合があった。
【0005】
また、少しの振動や衝撃でも電子部品11が回転してしまうため、引出端子13が折り曲げられて本体外周面12bの外側まで伸延するような電子部品11を収納した場合、その回転によって引出端子13が上を向いてしまう場合があった(図3Cの電子部品11a参照)。
その結果、電子部品搬送用トレー1’を複数重ねて使用する際、作業者が引出端子13の向きを手作業で修正する必要があり、作業効率の低下を招いていた。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、円柱状の本体と本体外周面の延長面を越えて伸延する引出端子とを有する電子部品の搬送に使用され、収納された電子部品がその軸周りに回転するのを防止することができる電子部品搬送用トレーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、(1)略円柱状の本体と、該本体の一方側の端面から引き出され、折り曲げられて外周面の延長面を越えて伸延する複数の引出端子とからなる電子部品を横置きにして収納し、搬送するための電子部品搬送用トレーにおいて、前記本体を収納する凹部からなる本体収納部と、前記引出端子を収納する凹部であって前記本体収納部の一方側から略垂直下方に伸延する凹部からなる端子収納部とを備え、前記端子収納部は、前記引出端子間に位置する突起部を有しており、前記引出端子が収納された際、前記突起部により、前記引出端子の揺動を防止することを特徴とする電子部品搬送用トレーを提供するものである。
ここで、「外周面の延長面」とは、電子部品本体の外周面を引出端子側に延長したときに形成される仮想面(図3Aの12b’参照)を意味する。
【0008】
また、本発明は、上記構成において、(2)前記電子部品搬送用トレーを上下に重ねて使用する際、下側トレーに収納された前記電子部品の本体上側に当接する当接面が、上側トレーの下面側に設けられ、下方に開放した凹部を形成していることを特徴とする電子部品搬送用トレーを提供するものである。
【0009】
また、本発明は、上記構成において、(3)前記突起部の幅が前記引出端子の間隔にほぼ等しく、かつ該突起部の表面に導電層が形成されていることを特徴とする電子部品搬送用トレーを提供するものである。
【0010】
また、本発明は、上記構成(3)において、(4)前記導電層が、導電性樹脂、導電性繊維、導電性弾性体のいずれかであることを特徴とする電子部品搬送用トレーを提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の電子部品搬送用トレーによれば、搬送中に加えられた振動や衝撃により、収納された電子部品が回転しようとしても、その回転に伴う引出端子の揺動が、端子引出面側に設けられた突起部によって防止されるため、電子部品の軸周りの回転を防ぐことができる。
【0012】
また、本発明の電子部品搬送用トレーによれば、電子部品の軸周りの回転が防止される結果、引出端子がトレーの表面に強く接触することがないため、引出端子の曲がりを防止することができる。
【0013】
さらに、本発明の電子部品搬送用トレーによれば、端子引出面側に設けられた突起部によって電子部品の回転が防止されるため、引出端子が上を向くことがなくなり、トレーを複数重ねて使用する際、作業者が端子の向きを手作業で修正する必要がなく、作業効率を向上させることができる。
【0014】
また、上記突起部の表面31aに導電層を設けた場合、電子部品の端子間を導通させ、再起電圧を放電することができ、基板実装時のショートを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照しつつ、本発明の好ましい実施形態について説明する。
図1Aは、本発明にかかる電子部品用搬送トレーの一部を示す平面図、図1Bは図1Aに示す電子部品搬送用トレーのX−X線に沿った断面図、図1Cは図1Aに示す電子部品搬送用トレーのY−Y線に沿った断面図である。
【0016】
本実施形態にかかる電子部品搬送用トレー1は、図1A〜図1Cに示すように、電子部品11の円柱状の本体12を収納する凹部からなる本体収納部2と、本体12の一方側の端面12aから外周面12bの延長面12b’を越えて伸延する引出端子13を収納するための凹部からなる端子収納部3とを備えている。
【0017】
ここで、本体収納部2は、図1Bおよび図1Cに示す如く、横置きにした状態の電子部品11の下部を収納し得る大きさおよび形状となっている。
【0018】
端子収納部3は、図1Bに示すように、本体収納部2の一方側から略垂直下方に伸延してなり、本体収納部2に収納された本体12から伸延する引出端子13を収納するのに十分な深さを有する凹部となっている。また、端子収納部3は、突起部31を有している。
【0019】
突起部31は、図1A〜図1Cに示す如く、平板状に形成されており、端子収納部3の底面3aから、収納された電子部品11の引出端子13,13間に至るまで伸延している。
【0020】
電子部品搬送用トレー1は、上記のように構成された本体収納部2および端子収納部3からなる電子部品収納部4を、マトリクス状に複数配置して構成されている。
【0021】
上記のように構成した電子部品搬送用トレー1によれば、搬送中に加えられた振動や衝撃により、収納された電子部品11が回転しようとしても、引出端子13が突起部31の表面31aに当接するため、電子部品11の軸周りの回転を防止することができる。
【0022】
また、電子部品搬送用トレー1によれば、電子部品11の軸周りの回転が防止される結果、引出端子13がトレー1の表面に強く接触することがなく、引出端子13が曲がってしまうことがない。
【0023】
さらに、電子部品搬送用トレー1によれば、電子部品11が回転して引出端子13が上を向くことがないため、トレー1を複数重ねて使用する際、作業者が端子の向きを手作業で修正する必要がない。
【0024】
以上、本発明の実施の形態について具体的に説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
また、収納する電子部品の本体の形状は、円柱状に限定されず、その軸周りに回転し易い形状であれば、本発明にかかる電子部品搬送用トレーの搬送対象となる。
【0025】
突起部31の形状は、特に平板状に限定されるものではなく、棒状等であってもよい。
【0026】
また、図2に示すように、本発明にかかる上側の電子部品搬送用トレー1uの下面側であって隣り合う本体収納部2,2間の下側に、下方に開口した凹部21を形成し、該トレー1を上下に重ねて使用する際、本発明にかかる下側のトレー1dに収納された電子部品11の本体12の上部が、凹部21によって包囲されると共に、凹部21の底面21aが、本体12に当接するように構成してもよい。
この場合、底面21aが本体12に当接することにより、収納された電子部品11の軸周りの回転をさらに確実に防止することができる。
なお、このように構成する場合、図2に示すように、トレーの向きを交互に逆向きにして重ねて、電子部品収納部4および凹部21を配置するのが好ましい。
【0027】
また、突起部31の幅を引出端子13,13の間隔にほぼ等しく形成し、かつ突起部の表面31aに導電性樹脂、導電性繊維または導電性弾性体からなる導電層を形成してもよい。この場合、電子部品11の引出端子13,13間を導通させて、再起電圧を放電させることができ、基板実装時のショートを防止することができる。
【0028】
次に、一例として、図1に示す電子部品搬送用トレー1について、電子部品搬送後における引出端子13の上向き現象の発生数と端子曲がり発生数を調査した(実施例1)。
また、比較のために、図3に示す従来の電子部品搬送用トレー1’についても、同様の調査を行った(従来例1)。
それぞれの調査結果を表1に示す。
【0029】
【表1】

【0030】
上記表1に示すとおり、従来例1にかかる電子部品搬送用トレーでは、全体の1/6に該当する数の電子部品につき端子の上向き現象が発生し、端子曲りも若干数発生した。
これに対し、本発明の実施例にかかる電子部品搬送用トレーによれば、搬送後の引出端子の上向き現象の発生数は皆無であり、かつ端子曲がりの発生数も皆無であった。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施形態にかかる電子部品用搬送トレーの一部を示す平面図および断面図である。
【図2】本発明の別の実施形態にかかる電子部品搬送用トレーの一部を示す断面図である。
【図3】従来の電子部品搬送用トレーの一部を示す平面図および断面図である。
【符号の説明】
【0032】
1 電子部品搬送用トレー
1u 上側の電子部品搬送用トレー
1d 下側の電子部品搬送用トレー
2 本体収納部
3 端子収納部
3a 端子収納部の底面
4 電子部品収納部
11 電子部品
12 電子部品の本体
12a 電子部品本体の一方側の面
12b 電子部品本体の外周面
12b’ 電子部品本体の外周面の延長面
13 引出端子
31 突起部
31a 突起部の表面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
略円柱状の本体と、該本体の一方側の端面から引き出され、折り曲げられて外周面の延長面を越えて伸延する複数の引出端子とからなる電子部品を横置きにして収納し、搬送するための電子部品搬送用トレーにおいて、
前記本体を収納する凹部からなる本体収納部と、
前記引出端子を収納する凹部であって前記本体収納部の一方側から略垂直下方に伸延する凹部からなる端子収納部とを備え、
前記端子収納部は、前記引出端子間に位置する突起部を有しており、前記引出端子が収納された際、前記突起部により、前記引出端子の揺動を防止することを特徴とする電子部品搬送用トレー。
【請求項2】
前記電子部品搬送用トレーを上下に重ねて使用する際、下側トレーに収納された前記電子部品の本体上側に当接する当接面が、上側トレーの下面側に設けられ、下方に開放した凹部を形成していることを特徴とする請求項1に記載の電子部品搬送用トレー。
【請求項3】
前記突起部の幅が前記引出端子の間隔にほぼ等しく、かつ該突起部の表面に導電層が形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の電子部品搬送用トレー。
【請求項4】
前記導電層が、導電性樹脂、導電性繊維、導電性弾性体のいずれかであることを特徴とする請求項3に記載の電子部品搬送用トレー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−258393(P2008−258393A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−99046(P2007−99046)
【出願日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【出願人】(000004606)ニチコン株式会社 (656)
【Fターム(参考)】