説明

電子銃、電子顕微鏡、及び電子発生方法

【課題】
簡便に電子ビームの高品質化を図ることができる電子銃、電子顕微鏡、及び電子発生方法を提供する。
【解決手段】
本発明の一態様にかかる電子銃100は、レーザ光が入射してきた方向に向けて電子を放出する電子銃であって、レーザ光源と、前記レーザ光源からのレーザ光が入射し、入射光が全反射を繰り返しながら内部を伝播する中空の導光部材と、前記導光部材から出射した光を屈折する中空のレンズと、前記レンズによって屈折されたレーザ光が入射するフォトカソードと、を備えるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子銃、電子顕微鏡、及び電子発生方法に関し、特に詳しくはフォトカソードを用いた電子銃、電子顕微鏡、及び電子発生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子顕微鏡、X線自由電子レーザ(XFEL)、逆コンプトン散乱によるフェムト秒X線パルス光源、高繰り返しフェムト秒時間分解電子顕微鏡、超短パルス電子線描画装置、エネルギー回収型ライナック(ERL)などの電子源として、電子銃が用いられている。例えば、電子顕微鏡の性能は、電子銃に応じて変化する。例えば、電子顕微鏡の空間分解能は、電子銃で発生する電子ビームのエミッタンス等によって変化する。また、電子顕微鏡の繰り返し周波数は、電子ビームの繰り返し周波数に応じて変化する。従って、電子顕微鏡の性能を向上するためには、電子銃から放出される電子ビームを高品質化することが必要となる。
【0003】
電子銃を電子放出の観点から分類すると、熱カソード電子銃、フォトカソード電子銃、及び電界放出型電子銃の3種類に分かれる。熱カソード電子銃は熱エネルギーにより電子放出を行う。フォトカソード電子銃は光電効果によって電子放出を行う。電界放出型電子銃は、高電界(1GV/m以上)をカソードに印加することで電子を放出する。また、電子銃を電子加速方式から分類すると、RF電子銃と、DC電子銃の2つに分かれる。RF電子銃は、共振器空胴の助けを借りてマイクロ波(RF)により電子を加速する。DC電子銃は、対向する電極間に電圧を印加してDC的(場合によりインパルス的)に電子を加速する。ビーム電流が大きい場合、フォトカソードとRF加速方式の組み合わせ、並びに、熱カソードとDC加速方式の組み合わせが一般的である。これは、両者の性質を合わせられるので相性がよいためである。また、電子ビームの重要な特性として、エミッタンスや輝度等が挙げられる。従って、低エミッタンスで高輝度な高品質電子ビームを安定して発生させることができる電子銃の開発が望まれている。
【0004】
フォトカソードRF電子銃は、熱カソードDC電子銃、及び電界放出型電子銃に比べて、(1)低エミッタンス化が可能であること、(2)光源の強度を制御することで容易に電子ビームの輝度を調整することができるため、制御性に優れていること、などの利点を有している。現在、世界最高輝度のパルス電子ビームは、フォトカソード電子銃により得られている。フォトカソード電子銃では、フォトカソードにレーザ光を照射して、電子を発生させている。
【0005】
フォトカソード電子銃を用いる場合、レーザ光のパルスを整形することによって、電子バンチを所望の形状にすることができる。すなわち、パルス形状を整形することで、電子ビームの高品質化を図ることができる。このため、レーザ光のパルスを所望の形状に整形することが望まれている。例えば、パルススタッカーを用いてレーザ光を円筒形状に整形する技術が開示されている(非特許文献1)。ここで、パルススタッカーは、波長板と偏光ビームスプリッタで構成されている(非特許文献2)。そして、偏光ビームスプリッタキューブにより、各偏光成分(S偏光とP偏光)に分岐する。そして、分岐されたパルス光に光路長差を与えて、合成用の偏光ビームスプリッタで合成する。上記の文献では、3段分のスタックを用いているため、8つの分岐パルス光が重ね合わされている。このようなパルススタッカーでは、例えば、縦方向(光軸と平行方向)に関するパルス整形が可能になる。すなわち、分岐されたパルスレーザ光に与える光路長を調整することによって、縦方向に関してパルスを整形することができる。さらに、特許文献1に示すようなパルスレーザ光を用いた加工方法において、加工形状を制御するため、パルス光を所望の形状に整形することが望まれている。
【0006】
パルスを整形する場合、実際に測定されたパルス形状に基づいて調整が行われる。レーザ光のパルス形状を測定する場合には、横方向(光軸と垂直な方向)のパルス形状は、例えば、ビームプロファイラーやCCDカメラなどで測定することができる。また、縦方向のパルス形状は、例えば、ストリークカメラなどで測定することができる。
【0007】
高調波で作る短パルス紫外レーザ光は、一般的に空間的に不均一である。すなわち、光の進行方向と垂直な面における分布が不均一になっている。また、レーザ光には、干渉性があるため、細かいノイズが電子ビームのプロファイルに表れてしまう。非特許文献1では、空間分布を均一にするため、補償ミラーが利用されている。
【0008】
補償ミラーは、可変形ミラー(DM:Deformable Mirror)であり、例えば、ミラーの表面(反射面)形状を変更するために複数の電極(チャンネル)を有している。そして、それぞれの電極に印加する電圧を調整することにより、波面の形状が変化する。ミラーの表面形状を遺伝的アルゴリズム等の援用により最適化制御することにより、光学系の波面の補正や、反射ビームの方向、形状を制御できる。
【0009】
【非特許文献1】冨澤宏光「加速器の要求に堪えるレーザ光源を目指して〜フォトカソードRF電子銃用レーザ光源開発〜」加速器Vol3,No3,2006(251−262)
【非特許文献2】株式会社ルミネックスホームページ[平成20年6月16日検索]、インターネット〈http://www.luminex.co.jp/〉パルススタッカーキット
【特許文献1】特開2002−205179号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
非特許文献1の方法では、制御が煩雑になってしまうおそれがある。例えば、最適化アルゴリズムなどを用いて、補償ミラーの各電極に印加する電圧を求めている。すなわち、補償ミラーを制御するために、自動最適化プログラムを作成する。さらに、自動最適化プログラムで最適化した電圧を、例えば、遺伝的アルゴリズムなどの最適化アルゴリズムに基づいて、各電極に供給するための構成が必要になってしまう。また、厳密な意味での再現性が難しい。よって、電子ビームを高品質化するための制御が煩雑になってしまうおそれがある。
【0011】
本発明は、このような事情を背景としてなされたものであって、本発明の目的は、簡便に電子ビームの高品質化を図ることができる電子銃、電子顕微鏡、及び電子発生方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1の態様にかかる電子銃は、レーザ光が入射してきた方向に向けて電子を放出する電子銃であって、レーザ光源と、前記レーザ光源からのレーザ光が入射し、入射光が全反射を繰り返しながら内部を伝播する中空の導光部材と、前記導光部材から出射した光を屈折する中空のレンズと、前記レンズによって屈折されたレーザ光が入射するフォトカソードと、を備えるものである。これにより、フォトカソード上での光の空間分布を均一化することができる。よって、低エミッタンスの電子ビームを得ることができる。
【0013】
本発明の第2の態様にかかる電子銃は、上記の電子銃であって、前記導光部材が、光の偏波面を保ちながら伝播する偏波面保存ファイバが束ねられた偏波面保存ファイバーバンドルを有し、前記導光部材の出射端面における前記偏光保存軸の方向が、出射位置に応じて異なっていることを特徴とするものである。これにより、フォトカソードに入射するレーザ光を所望の偏光状態とすることができる。よって、量子効率を向上することができ、電子ビームの輝度を向上することができる。
【0014】
本発明の第3の態様にかかる電子銃は、上記の電子銃であって、前記偏光保存軸の方向が、出射端面の中心に対して対称になっていることを特徴とするものである。これにより、フォトカソードに入射するレーザ光を所望の偏光状態とすることができる。よって、量子効率を向上することができ、電子ビームの輝度を向上することができる。
【0015】
本発明の第4の態様にかかる電子銃は、上記の電子銃であって、前記偏光保存軸の方向が、放射状になっていることを特徴とするものである。これにより、カソード表面において、Z方向の電場が与えられる。このため、仕事関数が低下して、電子ビームの輝度を向上することができる。
【0016】
本発明の第5の態様にかかる電子銃は、上記の電子銃であって、前記導光部材を出射するレーザ光が全体としてラジアル方向に偏光するように、前記偏波面保存軸が配置されていることを特徴とするものである。これにより、カソード表面において、Z方向の電場が与えられる。このため、仕事関数が低下して、電子ビームの輝度を向上することができる。
【0017】
本発明の第6の態様にかかる電子銃は、上記の電子銃であって、前記導光部材の内側に金属パイプが設けられていることを特徴とするものである。これにより、電子ビームなどの放射線によって、導光部材が着色するのを防ぐことができる。よって、効率よくレーザ光を伝播させることができる。
【0018】
本発明の第7の態様にかかる電子銃は、上記の電子銃であって、前記金属パイプが電子をその阻止能で止められる厚さになっていることを特徴とするものである。これにより、電子ビームなどの放射線によって、導光部材が着色するのを防ぐことができる。よって、効率よくレーザ光を伝播させることができる。
【0019】
本発明の第8の態様にかかる電子銃は、上記の電子銃であって、前記金属パイプが厚さ5mm以上の銅によって形成されることを特徴とするものである。これにより、電子ビームなどの放射線によって、導光部材が着色するのを防ぐことができる。よって、効率よくレーザ光を伝播させることができる。
【0020】
本発明の第9の態様にかかる電子銃は、上記の電子銃であって、前記レンズが、中空のアキシコンレンズであることを特徴とするものである。これにより、焦点深度を深くすることができ、空間分布をより均一にすることができる。
【0021】
本発明の第10の態様にかかる電子銃は、上記の電子銃であって、前記レーザ光源と前記導光部材との間に、前記レーザ光源からのレーザ光を円環ビームにする円環ビーム生成手段が設けられていることを特徴とするものである。これにより、効率よくレーザ光を伝播させることができる。
【0022】
本発明の第11の態様にかかる電子銃は、上記の電子銃であって、前記レンズの中空部分に、金属パイプが設けられているものである。これにより、レンズが着色するのを防ぐことができる。よって、効率よくレーザ光を伝播させることができる。
【0023】
本発明の第12の態様にかかる電子銃は、上記の電子銃であって、前記レーザ光を前記導光部材の方向に反射する中空ミラーを備え、前記中空ミラーが、金属で全面が覆われたガラス基板によって構成されているものである。これにより、安定して電子ビームを輸送することができる。
【0024】
本発明の第13の態様にかかる電子顕微鏡は、上記の電子銃を備え、前記電子銃で発生した電子ビームが前記レンズ、及び導光部材の中空部分を通過して、試料に入射するものである。これにより、電子ビームを効率よく搬送することができ、空間分解能を向上することができる。
【0025】
本発明の第14の態様にかかる電子銃は、フォトカソードから放出された電子ビームを試料に入射する電子顕微鏡であって、レーザ光源と、前記レーザ光源からのレーザ光に入射位置に応じた位相差を与える偏光変換素子と、前記レーザ光源から前記偏光変換素子を介して入射したレーザ光を屈折するレンズと、前記レンズによって屈折されたレーザ光が入射するフォトカソードと、を備えるものである。これにより、フォトカソードに入射するレーザ光を所望の偏光状態とすることができる。よって、量子効率を向上することができ、電子ビームの輝度を向上することができる。
【0026】
本発明の第15の態様にかかる電子顕微鏡は、上記の電子顕微鏡であって、前記偏光変換素子が、レーザ光を断面全体でほぼ半径方向に直線偏光し、光軸に対して対向する領域において、電気ベクトルの振動方向が反対方向となるように変換するものである。これにより、カソード表面において、Z方向の電場が与えられる。このため、仕事関数が低下して、電子ビームの輝度を向上することができる。
【0027】
本発明の第16の態様にかかる電子発生方法は、フォトカソードに光を照射して、電子を発生させる電子発生方法であって、入射光が全反射を繰り返しながら内部を伝播する中空の導光部材に光を入射させるステップと、前記導光部材から出射した光を中空のレンズによって屈折させるステップと、前記レンズで屈折した光を、フォトカソードに入射させるステップと、を備えるものである。これにより、フォトカソード上での光の空間分布を均一化することができる。よって、低エミッタンスの電子ビームを得ることができる。
【0028】
本発明の第17の態様にかかる電子発生方法は、上述の電子発生方法であって、前記導光部材が、光の偏波面を保ちながら伝播する偏波面保存ファイバが束ねられた偏波面保存ファイバーバンドルを有し、前記導光部材の出射端面における前記偏光保存軸の方向が、出射位置に応じて異なっていることを特徴とするものである。これにより、フォトカソードに入射するレーザ光を所望の偏光状態とすることができる。よって、量子効率を向上することができ、電子ビームの輝度を向上することができる。
【0029】
本発明の第18の態様にかかる電子発生方法は、上述の電子発生方法であって、前記偏光保存軸の方向が、出射端面の中心に対して対称になっていることを特徴とするものである。これにより、フォトカソードに入射するレーザ光を所望の偏光状態とすることができる。よって、量子効率を向上することができ、電子ビームの輝度を向上することができる。
【0030】
本発明の第19の態様にかかる電子発生方法は、上述の電子発生方法であって、前記偏光保存軸の方向が、放射状になっていることを特徴とするものである。これにより、カソード表面において、Z方向の電場が与えられる。このため、仕事関数が低下して、電子ビームの輝度を向上することができる。
【0031】
本発明の第20の態様にかかる電子発生方法は、上述の電子発生方法であって、前記導光部材を出射するレーザ光が全体としてラジアル方向に偏光するように、前記偏波面保存軸が配置されていることを特徴とするものである。これにより、カソード表面において、Z方向の電場が与えられる。このため、仕事関数が低下して、電子ビームの輝度を向上することができる。
【0032】
本発明の第21の態様にかかる電子発生方法は、上述の電子発生方法であって、前記導光部材の内側に金属パイプが設けられていることを特徴とするものである。これにより、導光部材が着色するのを防ぐことができる。よって、効率よくレーザ光を伝播させることができる。
【0033】
本発明の第22の態様にかかる電子発生方法は、上述の電子発生方法であって、前記金属パイプが電子をその阻止能で止められる厚さになっていることを特徴とするものである。これにより、導光部材が着色するのを防ぐことができる。よって、効率よくレーザ光を伝播させることができる。
【0034】
本発明の第23の態様にかかる電子発生方法は、上述の電子発生方法であって、前記金属パイプが厚さ5mm以上の銅によって形成されることを特徴とするものである。これにより、導光部材が着色するのを防ぐことができる。よって、効率よくレーザ光を伝播させることができる。
【0035】
本発明の第24の態様にかかる電子発生方法は、上述の電子発生方法であって、前記レンズが、中空のアキシコンレンズであることを特徴とするものである。これにより、焦点深度を深くすることができ、空間分布をより均一にすることができる。
【0036】
本発明の第25の態様にかかる電子発生方法は、上述の電子発生方法であって、前記導光部材に入射する光が、円環状の光ビームになっていることを特徴とするものである。これにより、電子ビームを効率よく搬送することができる。
【0037】
本発明の第26の態様にかかる電子発生方法は、上述の電子発生方法であって、前記レンズの中空部分に、金属パイプが設けられているものである。これにより、レンズが着色するのを防ぐことができる。よって、効率よくレーザ光を伝播させることができる。
前記レーザ光を中空ミラーによって、前記導光部材の方向に反射し、
【0038】
本発明の第27の態様にかかる電子発生方法は、上述の電子発生方法であって、前記中空ミラーが、金属で全面が覆われたガラス基板によって構成されているものである。これにより、安定して電子ビームを輸送することができる。
【0039】
本発明の第28の態様にかかる中空ミラーの製造方法は、ガラス基板の一面を除いた全面を金属粘土で覆うステップと、前記金属粘土中のつなぎ材を取り除くステップと、を備えるものである。これにより、電子ビームの経路中に配置することができる中空ミラーを簡便に製造することができる。
本発明の第29の態様にかかる中空ミラーの製造方法は、ガラス基板に貫通穴を設けるステップと、前記貫通穴が設けられたガラス基板の全面に金属薄膜を形成するステップと、を備えるものである。これにより、電子ビームの経路中に配置することができる中空ミラーを簡便に製造することができる。
【発明の効果】
【0040】
本発明によれば、簡便に電子ビームの高品質化を図ることができる電子銃、電子顕微鏡、及び電子発生方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
以下に、本発明を適用可能な実施の形態が説明される。以下の説明は、本発明の実施形態を説明するものであり、本発明が以下の実施形態に限定されるものではない。説明の明確化のため、以下の記載は、適宜、省略及び簡略化がなされている。又、当業者であれば、以下の実施形態の各要素を、本発明の範囲において容易に変更、追加、変換することが可能であろう。尚、各図において同一の符号を付されたものは同様の要素を示しており、適宜、説明が省略される。
【0042】
発明の実施の形態1.
本発明の実施の形態にかかる電子銃について図1を用いて説明する。図1は、実施の形態1にかかる電子銃100の構成を模式的に示す図である。本実施の形態にかかる電子銃100は、レーザ光50がカソードに入射することによって、電子を発生するフォトカソード電子銃である。そして、電子銃100で発生した電子ビーム60は、マイクロ波源31からのマイクロ波によって加速される。なお、本実施の形態にかかる電子銃100は、反射型のフォトカソードを有している。すなわち、電子ビーム出射側からレーザ光を照射している。従って、フォトカソード25からは、レーザ光50が入射してきた方向に向けて電子が放出する。
【0043】
電子銃100は、レーザ光源11、アキシコンレンズ13、アキシコンレンズ14、ミラー21、導光部材22、レンズ23、共振器24、フォトカソード25、マイクロ波源31を有している。なお、ミラー21、導光部材22、レンズ23、共振器24、フォトカソード25が真空チャンバー20内に配設されている。従って、ミラー21、導光部材22、レンズ23、共振器24、フォトカソード25は超高真空中に配置されている。
【0044】
レーザ光源11は、直線偏光のレーザ光50を出射する。レーザ光源11としては、例えば、再生増幅器付きのTi:SapphireレーザやYAGレーザを用いることができる。たとえば、YAGレーザの第4高調波やチタンサファイアレーザの第3高調波を用いることができる。もちろん、使用するレーザ光源11、及びレーザ波長は特に限定されるものではなく、フォトカソード25の仕事関数等に応じて選択することができる。レーザ光源11からはパルス光が出射する。なお、パルススタッカーを用いて、レーザ光源11からのパルス光のパルス幅を伸長してもよい。
【0045】
レーザ光源11からの光ビームは、平行光束となって、1対のアキシコンレンズ13、14に入射する。アキシコンレンズ13、14は、円錐形状になっている。レーザ光50は、1対のアキシコンレンズ13、14によって屈折され、輪状のビームに変換される。すなわち、アキシコンレンズ14から出射したレーザ光50の断面は、中空のリング状になっている。このように、1対のアキシコンレンズ13、14は、レーザ光50から円環ビームを生成する。アキシコンレンズ14からは、平行な光束が出射する。なお、1対のアキシコンレンズ13、14以外の構成で円環ビームを生成してもよい。例えば、1つのアキシコンレンズと1つの球面レンズとによって、円環ビームを生成することができる。このように、1枚以上のアキシコンレンズを用いることで、レーザ光強度の低下を防ぐことができる。あるいは、リング状のスリット(輪帯)を用いてもよい。このように、レーザ光源11からのレーザ光を円環状の光ビームに変換する円環ビーム変換手段を設けることによって、レーザ光50を効率よく利用することができる。また、円環ビーム変換手段は、大気中に設けることが好ましい。
【0046】
アキシコンレンズ14からのレーザ光50は、ミラー21に入射する。ミラー21は、レーザ光50の光軸に対して45°傾斜している。従って、ミラー21は、レーザ光50を、フォトカソード25の方向に反射する。ミラー21からのレーザ光50は、導光部材22に入射する。ミラー21は、電子ビーム60を通過するため、中空になっている。
【0047】
導光部材22は、屈折率の高い透明部材である。従って、導光部材22に入射したレーザ光は、導光部材22の内部で全反射を繰り返して伝播していく。これにより、光の空間分布を均一化することができ、例えば、電子ビームをフラットトップ形状にすることができる。また、導光部材22は、電子ビーム60を通過するため、中空になっている。すなわち、導光部材22の断面は、リング状になっている。導光部材22としては、円環カレイドスコープや、複数のファイバを束ねたファイバーバンドルを用いることができる。導光部材22をビームホモジナイザーとして用いることで、プロファイルを均一化することができる。なお、導光部材22の構成については、後述する。
【0048】
導光部材22から出射したレーザ光50は、レンズ23に入射する。レンズ23は、中空のアキシコンレンズである。アキシコンレンズを用いることで、ベッセルビーム整形することができる。よって、焦点深度が深くなり、フォトカソード25上での空間プロファイルを均一化することができる。レーザ光50は、レンズ23によって屈折され、フォトカソード25に入射する。すなわち、レンズ23は、レーザ光50を集光して、フォトカソード25に照射する。レンズ23は、光軸上にレーザ光50を集光する。フォトカソード25は、レンズ23によるレーザ光のクロッシングポイントに配置されている。すなわち、円環状の光ビームが光ビームの光軸上に集束する。この集束位置で、光ビームのスポットが最小となる。そして、この集束位置に、フォトカソード25が配置されている。
【0049】
ミラー21、導光部材22、及びレンズ23は、中心部分がくり抜かれた中空形状になっている。すなわち、電子ビームの経路に沿った貫通穴が開けられることで、ミラー21、導光部材22、及びレンズ23が中空になっている。そして、ミラー21、導光部材22、及びレンズ23の中空部分となる貫通穴を電子ビームが通過する。ここでは、中空部分の断面が円形になっている。そして、中空部分の中心が、レーザ光50の光軸、及び電子ビーム60の光軸と一致している。また、アキシコンレンズ13、14によって、レーザ光50が輪状になっている。このため、中空のミラー21、導光部材22、及びレンズ23を用いた場合でも、レーザ光のほとんどがフォトカソード25に入射する。換言すると、ミラー21、及びレンズ23は、輪状のレーザ光50に対応する中空部分を有している。よって、輪状のレーザ光50は、ミラー21、及びレンズ23の中空部分には、入射しない。これにより、レーザ光50のほとんどがフォトカソード25に入射する。従って、レーザ光50の利用効率の低下を防ぐことができる。なお、中空部分の断面形状は、円形に限られるものではなく。すなわち、電子ビーム60を通過できるものであればよい。例えば、中空部分の断面形状を矩形状にしてもよい。
【0050】
レンズ23を通過したレーザ光50は、共振器24の開口部に入射する。レーザ光50を共振器24の空胴部分を通過して、フォトカソード25に入射する。レーザ光50は、レンズ23によって、フォトカソード25の表面に集光されている。すなわち、レンズ23の焦点位置にフォトカソード25の表面が配置されている。従って、レーザ光50の集光点は、フォトカソード25の表面となる。フォトカソード25にレーザ光50が入射すると、光電効果によって、電子が発生する。なお、レーザ光50の光軸は、フォトカソード25の表面と垂直になっている。すなわち、ミラー21はフォトカソード25に対して45°傾斜している。
【0051】
フォトカソード25としては、金や銅やマグネシウムなどの金属カソードを用いることができる。また、フォトカソード25の材料として、ダイアモンドなどを用いてもよい。さらには、CSTeやNaKSb等をフォトカソード25として用いてもよい。もちろん、フォトカソード25の材料は特に限定されるものではない。
【0052】
共振器24には、マイクロ波源31で発生したマイクロ波が入射されている。共振器24は、空胴共振器であり、入力されたマイクロ波に応じた定在波を発生する。すなわち、RF共振器である共振器24には、フォトカソード25で発生した電子を加速するための電場が発生している。フォトカソード25で発生した電子は、共振器24内の電場で加速される。すなわち、所定の速度の電子ビーム60となって共振器24から出射する。ここでは、共振器24で発生する定在波に応じて、レーザ光パルスのタイミングを調整する。すなわち、マイクロ波源31からのマイクロ波とレーザ光のパルスを同期させる。これにより、共振器24内に加速電場が生じているタイミングで、フォトカソード25から電子が発生する。従って、電子ビーム60が効率よく加速される。そして、加速された電子ビーム60は、ミラー21、導光部材22、及びレンズ23の中空部分を通過する。これにより、電子ビーム60に対して外乱が生じるのを防ぐことができる。すなわち、電子ビーム60がミラー21や導光部材22やレンズ23などの構造物を通過しなくなる。ミラー21、導光部材22、及びレンズ23が電子ビーム60と干渉しない。このため、電子ビーム60の品質の劣化を防ぐことができる。
【0053】
次に、導光部材22の構成について、図2を用いて説明する。図2は、導光部材22の構成を示す図であり、図2(a)が導光部材22の正面図を示し、図2(b)が導光部材22の側面断面図を示している。なお、図2において、Z方向がレーザ光50の伝播方向を示し、X方向及びY方向がZ方向と垂直な方向になっている。すなわち、Z方向がレーザ光50の光軸と平行になっており、XY平面が光軸と垂直な平面になっている。X方向、及びY方向は互いに直交する方向である。
【0054】
図2(a)に示すように、導光部材22は中空のロッド形状になっており、その中空部分を電子ビーム60が通過する。導光部材22は、円筒形状をしているため、導光部材22のXY断面はリング状になっている。XY平面における導光部材22の外周面、及び内周面は、円形になっている。そして、円形の外周面、及び内周面の中心が、レーザ光50、及び電子ビーム60の光軸と一致している。すなわち、円筒状の導光部材22がレーザ光50の光軸に沿って配置されている。導光部材22は、真空よりも屈折率の高い透明部材である。例えば、導光部材22の材料としては、石英、ガラス、樹脂などを用いることができる。真空中での取り扱いを考慮して、石英の円管パイプを用いることが好ましい。例えば、合成石英パイプを用いることで、波長190nm〜1100nmまで使用範囲を広くすることができ、将来的には、150nm以上での応用が可能となる。
【0055】
導光部材22は、入射端面22aが斜めになっている。すなわち、入射端面22aがXY面から傾斜するように、導光部材22の一端がカットされている。これにより、Z方向と平行に伝播する光が、入射端面22aにおいて屈折される。導光部材22内で伝播方向が変わり、導光部材22の外周面、又は内周面に入射する。そして、導光部材22の側面(外周面及び内周面)において全反射される。入射光は導光部材22の内部で全反射を繰り返して、伝播する。そして、導光部材22の出射端面22bから出射する。従って、導光部材22の出射端面22bでは光の空間強度分布が均一されている。導光部材22が光の空間分布を均一化する均一化部になっている。すなわち、導光部材22の出射端面22bにおける光強度の空間分布は均一になっている。出射端面22bから光は広がって出射される。出射端面22bの形状を屈曲させて、レンズとして機能させてもよい。これにより、導光部材22の出射端面22bから出射される光の拡がりを低減することができる。入射端面22aの傾斜角度は、側面への入射角などに基づいて設定すればよい。これにより、効率よく伝播させることができる。なお、レーザ光が広がって、入射端面22aに入射する場合は、入射端面22aを傾斜させなくてもよい。
【0056】
さらに、導光部材22には、中空の金属パイプ27が設けられている。金属パイプ27は、円筒状であり、その外径が導光部材22の内径と略等しくなっている。そして、金属パイプ27は、導光部材22の中空部分に配設される。すなわち、金属パイプ27と導光部材22とが同軸上に配置される。金属パイプ27は、例えば、銅等の金属によって形成されている。そして、金属パイプ27の内側を通過している電子が導光部材22に入射しないように、金属パイプ27の厚さを厚くする。例えば、6MeVの電子の場合、金属パイプ27となる銅の厚さは5mm以上とすることが好ましい。これにより、金属の阻止能で、電子を止めることができる。すなわち、金属パイプはその阻止能で電子を止められる厚さにする。従って、金属パイプ27の肉厚は、電子の阻止能に応じて選択すればよい。
【0057】
導光部材22の内周面が金属パイプ27によって保護されるため、散乱した電子が導光部材22に入射するのを防ぐことができる。これにより、石英にカラーセンターができるのを防ぐことができる。すなわち、導光部材22が着色することによって光が吸収されるのを防ぐことができる。よって、効率よく、フォトカソード25に光を入射させることができる。また、通常の高周波電子銃では、電子のエネルギーが最大6MeV程度なので、厚さ5mm以上の銅を用いれば、電子の入射による導光部材22の着色を確実に防ぐことができる。よって、レーザ光を効率よく伝播させることができる。これにより、電子ビームの輝度を向上することができる。
【0058】
また、レンズ23やミラー21についても、電子ビームから保護することが好ましい。さらには、暗電流(ダークカレント)がレンズ23、ミラー21、導光部材22に入射するのを防ぐ必要がある。従って、電子ビームの軌道、暗電流の軌道が当たらない領域に透明な光学部材が来るように中空部分を大きくする。特にレンズ23は、カソード25に最も近い。このため、電子ビームや暗電流がレンズ23に当たらないようにすることが重要になる。例えば、レンズ23についても中空部分に金属パイプを設けることで、保護することができる。すなわち、保護パイプを用いることで、電子ビームや暗電流の電子がレンズ23に入射するのを防ぐことができる。レンズ23の保護パイプについても厚さ5mm以上の銅で形成することが好ましい。このように、金属パイプを設けて、電子を金属パイプの中空部分を通過させる。こうすることで、透明材質からなる透過型光学系を用いた場合でも、カラーセンターの発生を低減することができる。
【0059】
また、ミラー21の表面全体を金属で形成するとともに、ミラー21の中空部分を電子ビームの光軸から9mm以上離すことが好ましい。これにより、ウェークフィールドの影響を低減することができる。電子ビームが力を受けて品質が悪化するのを防ぐことができる。例えば、金属壁があるところを電子ビームが通過すると、電子と反対向きに鏡像電荷が金属壁を走る。このために、それらから電子ビームが影響を受けてしまう。電子ビーム進行方向に完全に軸対象の金属パイプで途中に全く段差のない境界条件にすることで、この影響を低減することができるが、こうすることは困難である。従って、本実施の形態では、この影響を避けるためには金属壁を十分に離すようにする。すなわち、金属で覆われたミラー21を、電子ビームの光軸から離すように配置している。電子ビームバンチの電荷密度やβ関数にもよるが、ここでは、電子ビームから見込んだ中空部分の直径を20mmとしてる。これにより、安定して電子ビームを輸送することができる。
【0060】
なお、ミラー21として、金属ミラーでなく誘電多層膜ミラーを用いることによって、ウェークフィールドの影響を低減することができる。しかしながら、カラーセンターが発生してしまうため、誘電多層膜ミラーを用いることが困難である。すなわち、電子ビームの指向性が高い場合でも、暗電流が誘電多層膜ミラーに入射するとチャージアップしてしまう。それにより電子ビームがクーロン力を受けて曲げられてしまうおそれもある。さらに、ミラー23上にチャージアップした電荷によって放電が起きてしまうおそれがある。放電が起きることで電子ビームの軌道が撥ねるように変わってしまう。電子ビームの位置が飛び跳ねるように変化してしまうため、高分解能を要求される電子顕微鏡などへの応用へは適していない。
【0061】
これらを防ぐためには、ミラー23を構成するガラス基板を金属ですべて覆うか、全て金属で基板を作る必要がある。研磨精度を上げた全金属性のミラーが本来は理想的である。しかし、金属を研磨してミラーを作った場合には面精度が良いものを得る事が困難である。そこで、本実施の形態では、ガラス基板を金属ですべて覆う方法を採用している。これは金箔などを接着剤を用いて貼るとその有機溶剤が真空中で脱ガスしてしまい、さらには空気だまりができた状態で真空中に入れると空気だまりが破裂して脱ガスの原因になってしまい、真空悪化を引き起こしてしまうおそれがるためである。
【0062】
全面を金属で覆う中空ミラーの作り方について説明する。例えば、金属粘土(http://www.silver-clay.com/)を用いることができる。そして、金属粘土のつなぎ材(バインダー)を飛ばすことで、99.9%の純度の銀や金を作る事ができる。具体的な工程は、中空の透明なガラス基板に金属を蒸着などして、光学金属ミラー面を形成する。金属粘土で光学金属ミラー面以外全ての面を粘土でカバーする。ここでは、ガラス基板の内側と外側の側面を粘土で覆う。すなわち、中空部分の内周面まで金属粘土を塗布する。これにより、銀や金などの金属でガラス基板全面が覆われる。そして、オーブンを用いて、例えば、銀の場合、600℃で焼いて、金属粘土中のつなぎ材を取り除く。その後に紫外レーザ用ミラーにはアルミミラーの光学コーティングを、可視〜赤外用ミラーには金コートを施す。これにより、全面オールメタルの中空ミラーを作成することができる。この中空ミラーをミラー21として用いる。このように、中空ミラーは、金属で全面が覆われたガラス基板によって構成する。なお、保護コートなしのアルミ蒸着したミラーを先に作り、金箔をミラー基板のミラー出ない部分に貼り付けて、金属カバーするようにしてもよい。これにより、ミラー21のチャージアップを防ぐことができ、安定したビーム輸送が可能となる。
【0063】
このように、中空のミラー23を作成する場合、中空状のガラス基板を用意する。すなわち、円形にくり抜かれたガラス基板を用意する。そして、ガラス基板の反射面となる一面を除いた全面を金属粘土で覆う。金属粘土中のつなぎ材を取り除く。そして、反射面となる面に金属膜を蒸着する。こうすることで、簡便に中空ミラーを作成することができる。
なお、ガラス基板の全面を金属薄膜で覆うようにしてもよい。この場合、ガラス基板に貫通穴を設ける。そして、貫通穴を有するガラス基板の全面に金属薄膜を蒸着などによって形成する。これにより、電子ビームの経路中に配置することができる中空ミラーを簡便に製造することができる。
【0064】
なお、導光部材22は、空間分布を均一化できる長さとする。また、導光部材22の外径、及び内径は、レーザ光50のスポット径に応じて設定する。すなわち、リング状のレーザ光が導光部材22からはみ出さないようにする。導光部材22、及び金属パイプ27の内径は、電子ビーム60が通過できる大きさとする。すなわち、金属パイプ27の内径を、電子ビーム60のスポット径よりも十分大きくする。
【0065】
導光部材22を光路中に設けることで、レーザ光の空間分布を均一化することができる。スペックルなどの影響を低減することができ、XY平面におけるレーザ光の強度分布が均一になる。そして、均一化された光を集光して、フォトカソードに入射させる。これにより、電子ビームのエミッタンスを小さくすることができる。すなわち、フォトカソード25に均一な光が入射するため、フォトカソード25から放出される電子の空間分布を均一化することができる。これにより、空間電荷効果を抑制することができ、エミッタンスを低減することができる。
【0066】
さらに、導光部材22の波長分散によって、パルス幅を伸長することができる。例えば、導光部材22が非線形分散効果を有する石英ロッドの場合、石英の非線形分散効果により広帯域化し、ロッドの長さに比例してパルス幅が長くする。導光部材22の分散と光路差を利用して、パルス光を必要なパルス幅に伸長することができる。最適なパルス幅になるように、導光部材22の長さを選択する。
【0067】
導光部材22を中空にすることで、電子ビーム60の径路中に、導光部材22を配置することができる。すなわち、真空チャンバー20内に導光部材22を配置することができる。これにより、真空中に、導光部材22を配置することができるため、導光部材22をフォトカソード25の近くに配置することができる。導光部材22からフォトカソード25までの距離を短くすることができ、装置構成を簡素化することができる。導光部材22から広がって出射する光を、フォトカソード25上に効率よく集光することができる。すなわち、導光部材22を真空中に配置することで、導光部材22から光が広がって出射する場合でも、導光部材22からレンズ23までの距離を短くすることができる。還元すると、レンズ23からフォトカソード25までの距離を長くすることができる。これにより、作動距離の長いレンズ23を用いることができる。よって、簡便に高品質の電子ビーム60を得ることができる。
【0068】
なお、電子ビーム60の経路中に存在するミラー21、導光部材22、及びレンズ23は、真空中に配置される。すなわち、ミラー21、導光部材22、及びレンズ23は真空チャンバー20内に配設される。従って、アキシコンレンズ14からのレーザ光50は、真空チャンバー20の側壁に設けられたウィンドウ(図示せず)を介して、ミラー21に入射する。
【0069】
このようにして得られた電子ビーム60は、所定の経路を通過して、X線自由電子レーザ(XFEL)、逆コンプトン散乱によるフェムト秒X線パルス光源、フェムト秒時間分解電子顕微鏡、超短パルス電子線描画装置、エネルギー回収型ライナック(ERL)などに利用される。さらに、上記の電子銃100を、レーザ加工装置やレーザエッチング装置に用いてもよい。例えば、電子銃100を電子顕微鏡に用いることで、空間分解能を向上することができる。この場合、電子ビーム60をプローブビームとして、試料に照射する。電子ビーム60のエミッタンスが小さければ、スポットサイズを小さくすることができる。従って、試料上における電子ビーム60のスポットサイズを小さくできるため、より空間分解能を向上することができる。
【0070】
また、本実施の形態にかかる電子銃は、特に、シングルショットの時間分解電子顕微鏡に好適である。シングルショットの時間分解電子顕微鏡では、空間電荷効果の影響が大きい。そのため、空間的に均一な光を照射することで、空間電荷効果を低減することができる。よって、プロファイルがフラットトップの電子ビームを発生させることができる。
【0071】
円環状のアキシコンレンズを用いて、導光部材22からのレーザ光をベッセルビーム整形している。このため、空間的に均一なフラットトップ化を図ることができる。よって、空間プロファイルの均一化のための最適化アルゴリズムが不要となる。可変形ミラー及びその最適化アルゴリズムが不要となるため、装置構成を簡素化することができる。すなわち、複雑な制御なしで、空間分布を均一化することができる。このように、上記の電子発生方法により、高品質の電子ビームを得ることができる。
【0072】
発明の実施形態2.
本実施の形態にかかる電子銃100について、図3を用いて説明する。図3は、本実施形態にかかる電子銃100の構成を示す図である。本実施の形態では、アキシコンレンズ14とミラー21の間に、偏光変換素子15、及び偏光調整素子16が設けられている。偏光変換素子15、及び偏光調整素子16は大気中に設けられている。また、本実施の形態では、導光部材22が設けられていない。なお、これら以外の基本的構成は、実施の形態1と同様であるため、重複する部分については説明を省略する。
【0073】
レーザ光源11からは直線偏光のレーザ光50が出射する。レーザ光源11を出射したレーザ光50は、実施の形態1と同様にアキシコンレンズ13、14で屈折して、円環ビームとなる。アキシコンレンズ14から出射したレーザ光50は、偏光変換素子15に入射する。偏光変換素子15は、レーザ光50に入射位置に応じた位相差を与える。すなわち、偏光変換素子15は、入射位置に応じて異なる位相だけ光を遅延する。偏光変換素子15から出射したレーザ光50は、偏光変換素子15における入射位置に応じて、異なる偏光方向になっている。偏光変換素子15としては、例えば、ナノフォトン社製のZpolを用いることができる。この偏光変換素子15は、直線偏光を偏光軸が放射状になるラジアル偏光に変換する。正確には、偏光変換素子15に直線偏光のレーザ光50を入射させることで、ラジアル偏光に近い偏光状態となる。すなわち、直線偏光をラジアル偏光に近似する擬似ラジアル偏光にすることができる。この偏光変換素子15を、レンズ23と組み合わせることで、Z方向(光軸方向)に大きな電場成分を持つZ偏光を生成することができる。Z偏光に変換されたレーザ光50は、光の進行方向に振動する。この偏光変換素子15、及びZ偏光については、後述する。
【0074】
偏光変換素子15からのレーザ光50は、偏光調整素子16に入射する。偏光調整素子16は、偏光変換素子15によって変換されたレーザ光の偏光状態を調整する。偏光調整素子16は、上記のZ方向に大きな電場を持つZ偏光が生成される位置を調整する。これにより、例えば、フォトカソード表面においてZ偏光が生成されるように調整することができる。偏光調整素子16は、偏光調整用電源19に接続されている。そして、偏光調整用電源19の電圧を制御することによって、偏光を電気的に調整することができる。なお、偏光調整素子16については、後述する。
【0075】
偏光調整素子16を通過したレーザ光50は、ミラー21に入射する。そして、ミラー21で反射されたレーザ光は、実施の形態1と同様に、レンズ23に入射する。なお、本実施の形態では、レンズ23として、アキシコンレンズではなく、中空の球面レンズ、又は非球面レンズを用いている。レンズ23で集光されたレーザ光は、フォトカソード25に入射する。
【0076】
本実施の形態では、偏光変換素子15を用いてZ偏光を発生させている。レーザ光50によるZ方向の電場を利用して、電子を発生させている。すなわち、Z偏光をフォトカソード25の表面に入射している。これにより、ニードル化したフォトカソードに比べて、エミッタンスを向上することができる。さらに、量子効率を向上することができるため、高輝度の電子ビーム60を得ることができる。よって、簡便な構成で、高品質の電子ビーム60を発生させることができる。また、実効的な仕事関数を低くすることができる。このため、金属やダイアモンドなどの大気中で安定なフォトカソード材料を用いることができる。これにより、低ランニングコストでメンテナンス性の高い電子銃100を実現することができる。
【0077】
次に、直線偏光をZ偏光に変換するための偏光変換素子15について、図4〜図6を用いて説明する。図4(a)は、偏光変換素子15の構成を模式的に示す平面図である。図4(b)は、偏光変換素子15を通過したレーザ光50の偏光状態を説明するための図である。図4(c)は、偏光変換素子15を通過したレーザ光50の別の偏光状態を説明するための図である。図5は、偏光変換素子15、及びレンズ23によって変化する偏光状態を説明するための斜視図である。図6は、偏光変換素子15、及びレンズ23によって変化する偏光状態を説明するための側面図である。なお、図5、及び図6では、説明の簡略化のため、偏光変換素子15、及びレンズ23のみを示し、その他の構成部品(例えば、ミラー21、偏光調整素子16等)については省略している。また、図4〜図6では、レーザ光50の進行方向をZ方向とし、Z方向に垂直な平面をXY平面としている。X方向、及びY方向は互いに直交する方向である。
【0078】
まず、図4を用いて偏光変換素子15の構成について説明する。偏光変換素子15は、例えば、ガラス等からなる透明基板の上に波長板を設けることによって形成される。偏光変換素子15は、放射状に分割された4つの領域を有している。図4(a)に示すように、この4つの領域を分割領域15a〜分割領域15dとする。すなわち、偏光変換素子15は、4つの分割領域15a〜15dを備えている。ここでは、上側に分割領域15aが配置され、下側に分割領域15bが配置され、左側に分割領域15cが配置され、右側に分割領域15dが配置されている。分割領域15a〜15dは、中心点に対して対称に分割されている。従って、4つの分割領域15a〜15dは、放射状に配置されている。このように、放射状に分割された4つの領域が分割領域15a〜15dとなる。それぞれの分割領域の大きさは等しくなっている。分割領域15a〜15dは周方向の全体にわたって設けられている。従って、分割領域15a〜15dのそれぞれは、中心点に対応する内角が90°の扇形となる。
【0079】
分割領域15a〜15dにはそれぞれ異なる方向の光学軸を有する1/2波長板が設けられている。すなわち、分割領域15a〜15d毎に、光の振動方向が異なっている。図4(a)には、分割領域15a〜15dにおける光学軸が矢印で示されている。ここで、それぞれの分割領域の光学軸は、隣の分割領域の光学軸から45°ずれている。すなわち、Y軸の方向を基準とすると、図4に示すように、分割領域15aにおける波長板の光学軸の角度は0°となり、分割領域15bの光学軸は90°となり、分割領域15cの光学軸は−45°となり、分割領域15dの光学軸は45°となっている。
【0080】
従って、中心点に対して互いに対向する分割領域に設けられている1対の波長板は、光学軸が直交する。例えば、分割領域15aの光学軸は0°であり、分割領域15aに対向する分割領域15bの光学軸は90°となっている。また、分割領域15cの光学軸と、分割領域15dの光学軸は、互いに直交している。換言すると、互いに対向する分割領域に設けられている一対の波長板において、光学軸の角度の差が90°となっている。このように、分割領域15a〜15dの中心点を挟んで対角に配置された一対の分割領域には、光学軸が90°異なる波長板が設けられる。
【0081】
1/2波長板は、入射光に1/2波長の位相差を与えて出射する。従って、直線偏光の方位が1/2波長板における光学軸に対して成す角度をθとすると、1/2波長板を通過した光は、元の直線偏光から2θだけ回転した直線偏光の光となる。例えば、1/2波長板の光学軸と、直線偏光の偏光軸とが45°ずれている場合、1/2波長板は、偏光軸が90°ずれた直線偏光を出射する。
【0082】
図4(b)では、偏光軸がY方向に沿った方向である直線偏光が入射した場合を示している。すなわち、Y方向と平行な方向の偏光面を有するレーザ光50が入射すると、図4(b)に示す偏光状態となる。従って、入射偏光方位が0°の直線偏光が入射した時に出射される出射光の偏光方位について説明する。すなわち、分割領域15aの光学軸と、入射光の偏光軸が一致している場合について説明する。図4(b)には、各分割領域から出射される出射光の偏光軸が矢印でそれぞれ示されている。分割領域15a〜分割領域15dから出射される直線偏光の偏光軸は放射状になっている。
【0083】
具体的には、中心点に対して対向する一対の分割領域から出射される直線偏光の偏光軸が平行になっている。そして、対向する一対の分割領域では振動方向が反対になっている。また、隣接する分割領域から出射される光の偏光軸は90°ずれている。例えば、分割領域15a及び分割領域15bから出射する光の偏光軸は、0°である。また、分割領域15c及び分割領域15dから出射される光の偏光軸は、90°である。従って、入射位置に応じて偏光軸の角度が変化して、出射偏光変位が放射状となる。このように、偏光変換素子15は、入射位置に応じて入射光の偏光状態を変化させ、所望の偏光状態になるよう制御する。
【0084】
上記の偏光変換素子15に直線偏光を入射させることで、ラジアル偏光に近い偏光状態となるよう制御することができる。具体的には、レーザ光50の光軸と、偏光変換素子15の中心点を一致させる。そして、分割領域15aの光学軸と直線偏光の偏光軸を一致させる。このようにすることで、直線偏光をラジアル偏光に近似する擬似ラジアル偏光にすることができる。また、上記の偏光変換素子15に対して偏光軸がX方向の直線偏光を入射することによって、偏光軸が円形に近い形状となる。従って、アジマス偏光に近い偏光状態とすることができる。すなわち、アジマス偏光に近似する擬似アジマス偏光にすることができる。このときのXY平面における偏光軸の分布は図4(c)に示すようになる。なお、上記の説明では、4分割の偏光変換素子15について説明したが、分割数はこれに限られるものではない。例えば、2分割や8分割の偏光変換素子15を用いることもできる。
【0085】
偏光変換素子15の分割数を増加させることによって、よりラジアル偏光又はアジマス偏光に近い偏光状態とすることができる。すなわち、分割領域の数を増やすこと偏光軸がよりなめらかに変化する。換言すると、分割数を無限大にすると、理想的なラジアル偏光状態又は理想的なアジマス偏光状態を生成することができる。さらに、電場ベクトルのZ成分を高くするためには、分割数を8以上とすることが好ましく、16以上とすることがより好ましい。
【0086】
具体的には、例えば、分割数が16の場合、波長板の光学軸を隣の分割領域から11.25°ずらす。これにより、対向する分割領域で、光学軸が直交する。そして、この偏光変換素子15に一定角度の偏光軸を入射させると、直線偏光が擬似ラジアル偏光又は擬似アジマス偏光となって出射される。
【0087】
次に、偏光変換素子15とレンズ23とを組み合わせてZ偏光を生成する点について、説明する。図5、及び図6に示すように、偏光変換素子15によって擬似ラジアル偏光を生成する。すなわち、図4(b)に示したように、対向する分割領域では、振動方向が180°反対向きになっている。すなわち、偏光変換素子15を通過することによって、偏光軸が放射状になっている。このような偏光状態のレーザ光50をレンズ23で集光する。
【0088】
偏光変換素子15を光路上に配置すると、上側の分割領域15aを透過した光と下側の分割領域15bを透過した光とで位相にずれが生じる。すなわち、上下に対向した配置された分割領域15aと分割領域15bとで光の位相が180°ずれる。レーザ光50から直線偏光が出力されているとすると、電気ベクトルの直交する成分の位相は一致している。直線偏光が偏光変換素子15を通過した場合、分割領域15aと分割領域15bとでは、電気ベクトルの位相が180°ずれることになる。すなわち上の分割領域15aと下の分割領域15bとで電気ベクトルの振動方向が反対方向になる。上の分割領域15aと下の分割領域15bとでは、偏光方向が反対方向となる。すなわち、上の分割領域15aを透過した光と下の分割領域15bを透過した光とは同じ直線上の直線偏光であるが、その振動の向きが反対となる。偏光方向が、出射端面の中心に対して対称になっている。
【0089】
次に、図5、及び図6を用いて、Z偏光を生成する方法について説明する。図5、及び図6の矢印はその位置における電気ベクトルの振動方向を模式的に示したものである。上述のように偏光変換素子15を透過する前のレーザ光は直線偏光であるので全て同じ方向(Y方向)に電気ベクトルが振動している。そして、偏光変換素子15を通過することによって、その位置に応じて電気ベクトルの振動方向が変化する。図6に示すように、上の分割領域15aを透過した光の電気ベクトルは上方向に振動している。一方、下の分割領域15bを透過した光の電気ベクトルは下方向に振動している。なお、図6において、レンズ23が中空となっていないが、実際には中空となっている。
【0090】
次に偏光変換素子15を透過した光がレンズ23によりフォトカソード上に集光された状態について、図6を用いて詳細に説明する。ここでは光の電気ベクトルの振動方向を光の進行方向に対して垂直な方向の成分(Y方向)と平行な方向の成分(Z成分)に分けて考える。なお、図6において、光の進行方向に対して垂直な方向(Y方向)を上下方向とし、光の進行方向に対して平行な方向(Z方向)を左右方向として説明する。
【0091】
上の分割領域15aを透過した光はレンズ23により下方向に傾くよう屈折される。従って、光の電気ベクトルの振動方向は図6に示すように右斜め上となる。中心を透過した光はレンズ23により屈折されないので、振動方向はそのまま上方向のままである。下の分割領域15bを透過した光はレンズ23により上方向に傾くよう屈折される。従って、光の電気ベクトルの振動方向は右斜め下となる。このように位置に応じて異なる振動方向を持つ光がフォトカソード上に集光される。
【0092】
レンズ23を透過した後において、電気ベクトルの振動方向は上の分割領域15aでは右斜め上で、下の分割領域15bでは右斜め下であるため、上下方向の成分がそれぞれ反対である。これにより、フォトカソード25上に集光された状態において、電気ベクトルの振動方向における上下方向の成分は、打ち消し合う。従って、光の進行方向と垂直方向の電気ベクトルの成分はほぼ0となる。すなわち、フォトカソード上において、光の電気ベクトルは進行方向と垂直な方向に振動しなくなる。
【0093】
一方、電気ベクトルの振動方向は上の分割領域15aでは右斜め上で、下の分割領域15bでは右斜め下であるため、左右方向の成分が同じ右方向である。これにより、電気ベクトルの左右方向の成分については、上の分割領域15aと下の分割領域15bとで強め合う。従って、光の進行方向と平行方向の電気ベクトルの成分は右方向に強調される。すなわち、光の電気ベクトルは進行方向と平行な方向に振動していることになる。このように偏光変換素子15によって位相がずれたレーザ光をレンズ23で集光することによって、電気ベクトルが進行方向と平行な方向に振動した状態で、レーザ光50をフォトカソード25に照射することができる。なお、Z方向の電場強度成分は、レンズ23の焦点距離やNA(開口数)によって変化する。例えば、Z方向の電場強度成分は開口数のほぼ4乗に比例する。すなわち、焦点距離が短く、NAが大きいレンズ23を用いることによって、Z方向の電場強度成分を増加させることができる。従って、アキシコンレンズよりも球面レンズや非球面レンズを用いることが好ましい。
【0094】
本実施の形態では、偏光変換素子15を用いてZ偏光を発生させている。レーザ光50によるZ方向の電場を利用して、電子を発生させている。すなわち、Z偏光をフォトカソード25の表面に入射している。これにより、ニードル化したフォトカソードに比べて、エミッタンスを向上することができる。さらに、量子効率を向上することができるため、高輝度の電子ビーム60を得ることができる。よって、簡便な構成で、高品質の電子ビーム60を発生させることができる。また、実効的な仕事関数を低くすることができる。このため、金属やダイアモンドなどの大気中で安定なフォトカソード材料を用いることができる。これにより、低ランニングコストでメンテナンス性の高い電子銃100を実現することができる。
【0095】
このように、Z偏光のレーザ光50がフォトカソード25に入射する。よって、フォトカソード表面には、Z方向に強い電場が発生する。これにより、フォトカソード25の実効的な仕事関数を低下させることができる。例えば、フォトカソード表面において1GV/m程度の電場を発生させると、実効的な仕事関数をeV単位で下げることができる。よって、銅等の安定な金属材料をカソード材料に用いた場合でも、長波長のレーザ光で電子が発生する。量子効率を向上することができる。
【0096】
次に、偏光調整素子16について説明する。偏光調整素子16は、電気光学素子であり、偏光調整用電源19から印加された電圧に基づいて、偏光変換素子15で生成された偏光状態を調整する。偏光調整素子16は、例えば、BBOなどの透明な電気光学結晶を有している。そして、電気光学結晶を図4(a)で示した分割領域毎に配置して、領域毎に独立して電圧を印加する。具体的には、電場の強さに比例して屈折率が変化するポッケルスセルが設けられている。あるいは、偏光調整素子16として、液晶光学素子などを用いてもよい。そして、偏光調整用電源19によって印加する電圧を制御することで、偏光状態を調整することができる。これにより、偏光方向のずれを低減し、よりラジアル偏光に近づけることができる。すなわち、各分割領域における偏光方向を、図4(b)に示す偏光方向に近づけることができる。なお、偏光変換素子15のみで、フォトカソード25上におけるZ方向の電場を大きくすることができる場合、偏光調整素子16を用いなくてもよい。
【0097】
本実施の形態にかかる電子銃100では、実効的な仕事関数を低下させることができる。これにより、低パワーのレーザ光を用いることができ、フォトカソード25に与えるダメージを低減することができる。すなわち、1バンチに含まれる電子数が高い場合でも、高パワーのレーザ光を用いる必要がなくなる。フォトカソード25に与えられるダメージを低減することができる。これにより、繰り返し周波数を高くすることができる。フォトカソード25に損傷が生じるのを防ぐことができる。よって、フォトカソード25の寿命を長くすることができる。本実施の形態では、反射型フォトカソードでなく、透過型フォトカソードを用いてもよい。なお、レンズ23に入射する光はラジアル偏光になっていなくてもよい。すなわち、偏光変換素子15によって、ラジアル偏光に近づいていればよい。
【0098】
発明の実施の形態3.
本実施の形態に係る電子銃について、図7を用いて説明する。図7は、電子銃100の全体構成を示す図である。本実施の形態にかかる電子銃100は、導光部材22として、偏波面保存ファイバが束ねられた偏波面保存ファイバーバンドルが用いられている。そして、偏光変換素子15ではなく、偏波面保存ファイバーバンドルを用いてZ偏光を生成している。すなわち、導光部材22が偏光変換素子15の機能を果たしている。なお、導光部材22以外の構成は、実施の形態1で示した電子銃100と同じである。従って、実施の形態1、2で説明した内容と重複する部分については、説明を省略する。
【0099】
実施の形態1と同様に、直線偏光のレーザ光50がミラー21で反射されて、導光部材22に入射する。そして、導光部材22によって、直線偏光を、ラジアル偏光に変換している。そして、導光部材22によってラジアル偏光になったレーザ光が、レンズ23に入射する。そして、レンズ23で集光されて、フォトカソード25に入射する。フォトカソード25上では、レーザ光50が、Z偏光になっている。なお、レンズ23は、Z方向の電場を強くするため、アキシコンレンズではなく、球面レンズ、GRADIUM(登録商標)等の屈折率分布型レンズ、または非球面レンズ等になっている、
【0100】
次に、導光部材22である偏波面保存ファイバーバンドルについて、図8、及び図9を用いて説明する。図8は、導光部材22を示す斜視図であり、通過するレーザ光50の偏光状態を模式的に示している。図9は、導光部材22の入射端面22a、及び出射端面22bを示す平面図であり、導光部材22の各端面での偏波面の方向を模式的に示している。すなわち、入射端面22a、及び出射端面22bにおける偏光保存軸の方向が矢印で示されている。この偏光軸の方向の直線偏光が偏波面保存ファイバーの内部を伝搬していく。
【0101】
図8に示すように、円筒状の偏波面保存ファイバーバンドルが導光部材22となっている。すなわち、複数の偏波面保存ファイバーが束ねられることによって、偏波面保存ファイバーバンドルが構成される。そして、導光部材22は、実施の形態1と同様に中空になっている。従って、レーザ光50の光軸51上には、偏波面保存ファイバーが設けられていない。偏波面保存ファイバーに入射した光は、偏波面が保存された状態で伝搬していく。すなわち、偏波面保存ファイバーの偏光保存軸と平行な偏波面のレーザ光が伝搬していく。
【0102】
そして、偏波面保存ファイバーの偏光保存軸を徐々に変化させていくことによって、ラジアル偏光になる。すなわち、偏波面保存ファイバーをねじることで、偏光保存軸の方向を変えることができる。入射端面22aから出射端面22bに向かうにつれて偏波面保存ファイバーをよじっていくと、偏光保存軸の方向が回転する。従って、入射端面22aと出射端面22bとの間で、偏光保存軸の方向を変えることができる。ここでは、XY平面における位置に応じて、偏光保存軸の方向を調整している。すなわち、偏波面保存ファイバをねじる角度を、XY面における位置に応じて変えている。導光部材22の出射端面22bにおける偏波面の方向が、出射位置に応じて異なっている。これにより、ラジアル偏光となるように、光の偏光状態を制御することができる。
【0103】
ここで、偏波面保存ファイバーによって保存される偏波面の方向について、図9を用いて説明する。図9(a)に示すように、入射端面22aを4つの分割領域28a〜28dに分割して説明する。上側に分割領域28aが配置され、下側に分割領域28bが配置され、左側に分割領域28cが配置され、右側に分割領域28dが配置されている。分割領域28a〜28dは、中心点に対して対称に分割されている。従って、4つの分割領域28a〜28dは、放射状に配置されている。このように、放射状に分割された4つの領域が分割領域28a〜28dとなる。それぞれの分割領域の大きさは等しくなっている。分割領域28a〜28dは周方向の全体にわたって設けられている。従って、分割領域28a〜28dのそれぞれは、中心点に対応する内角が90°の扇形となる。
【0104】
同様に、出射端面22bを分割領域29a〜29dに分割して、説明する。すなわち、図9(b)に示すように、出射端面22bを4つに分割する。上側に分割領域29aが配置され、下側に分割領域29bが配置され、左側に分割領域28cが配置され、右側に分割領域28dが配置されている。従って、入射端面22aの分割領域28aが出射端面22bの分割領域29aに対応する。すなわち、分割領域28aに入射した光は、分割領域29aから出射する。同様に、入射端面22aの分割領域28bが出射端面22bの分割領域29bに対応し、入射端面22aの分割領域28cが出射端面22bの分割領域29cに対応し、入射端面22aの分割領域28dが出射端面22bの分割領域29dに対応する。分割領域28bに入射した光は分割領域29bから出射し、分割領域28cに入射した光は分割領域29cから出射し、分割領域28dに入射した光は、分割領域29dから出射する。
【0105】
入射端面22aでは、全ての分割領域28a〜28dで、偏光保存軸の方向が一致している。すなわち、入射端面22aでは、全ての偏波面保存ファイバーの偏光保存軸が同じ方向になっている。ここでは、偏光保存軸が上方向(+Y方向)になっている。この方向は、レーザ光50の偏光方向と一致している。すなわち、レーザ光50の偏波面と分割領域28a〜分割領域28dの偏光保存軸の方向が平行になっている。これにより、効率よく、光が伝搬していく。
【0106】
出射端面22bでは、各分割領域29a〜29dの偏光保存軸が異なっている。分割領域29aでは、偏光保存軸が上方向(+Y方向)になり、分割領域29bでは、偏光保存軸が下方向(−Y方向)になっている。また、分割領域29cでは、偏光保存軸が左方向(−X方向)になり、分割領域29dでは、偏光保存軸が右方向(+X方向)になっている。従って、偏光変換素子15と同様に、ラジアル偏光にすることができる。すなわち、光軸を挟んで対向する位置では、偏光方向が反対になる。偏光保存軸の方向が、出射端面の中心に対して対称になっている。
【0107】
たとえば、入射端面22aと出射端面22bとの間で、分割領域28b、29bに含まれる偏波面保存ファイバーを180°ねじり、分割領域28c、29cに含まれる偏波面保存ファイバーを−90°ねじり、分割領域28d、29dに含まれる偏波面保存ファイバーを+90°ねじることで、図9に示すような偏光保存軸を得ることができる。よって、容易にラジアル偏光を得ることができる。
【0108】
そして、ラジアル偏光のレーザ光がレンズ23で集光されると、実施の形態2で説明したように、フォトカソード25上でZ偏光となる。レーザ光50によるZ方向の電場を利用して、電子を発生させている。すなわち、Z偏光をフォトカソード25の表面に入射している。これにより、ニードル化したフォトカソードに比べて、エミッタンスを向上することができる。さらに、量子効率を向上することができるため、高輝度の電子ビーム60を得ることができる。よって、簡便な構成で、高品質の電子ビーム60を発生させることができる。また、実効的な仕事関数を低くすることができる。このため、金属やダイアモンドなどの大気中に開放しても安定なフォトカソード材料を用いることができる。これにより、低ランニングコストでメンテナンス性の高い電子銃100を実現することができる。また、繰り返し周波数を高くすることができる。このように、偏波面保存ファイバーバンドルを用いることで、実施の形態2と同様の効果を得ることができる。
【0109】
また、導光部材22に含まれる偏波面保存ファイバー内で、レーザ光が全反射を繰り返して伝搬する。これにより、出射端面22bにおける光の空間分布を均一化することができる。偏波面保存ファイバーバンドルを用いることで、実施の形態1と同様に、低エミッタンスの電子ビーム60を生成することができる。なお、レンズ23に入射する光はラジアル偏光になっていなくてもよい。すなわち、偏光変換素子15によって、ラジアル偏光に近づいていればよい。なお、本実施の形態では、入射端面22aが傾斜していなくてもよい。
【0110】
発明の実施の形態4.
本実施の形態にかかる電子顕微鏡について図10を用いて説明する。図10は、電子顕微鏡200の全体構成を示す図である。本実施の形態では、実施の形態1で示した電子銃100を用いている。すなわち、電子顕微鏡200は、実施の形態1に係る電子銃100を有している。ここでは、電子顕微鏡200が透過電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope:TEM)であるとして説明する。電子顕微鏡200は、試料43を観察するため、電子銃100に加えて、電子レンズ41、偏向器42、及び検出器44を有している。
【0111】
電子銃100のフォトカソード25で発生した電子は、共振器24で加速される。加速された電子ビーム60は、レンズ23、導光部材22、及びミラー21の中空部分を通過する。そして、この電子ビーム60は、電子顕微鏡200に設けられている電子レンズ41で集束される。電子レンズ41は、電子ビーム60の経路中に電場、又は磁場を発生させて、電子ビーム60を集束する。
【0112】
偏向器42は、電子ビーム60の経路中に電場、又は磁場を発生させて、電子ビーム60を偏向する。電子ビーム60は、偏向器42で偏向されて、観察対象となる試料43に入射する。すなわち、偏向器42は、X方向、及びY方向に電子ビーム60を偏向する。これにより、試料43の所望の位置に電子ビーム60を入射させることができる。すなわち、試料43の任意の箇所における観察が可能となる。
【0113】
試料43の構成成分や構造に応じて、電子の透過量が異なる。従って、電子ビーム60の透過像によって、試料43を観察することができる。試料43を通過した電子ビーム60が2つの電子レンズ41によって集束される。偏向器42は電子ビーム60を偏向する。そして、偏向器42で偏向された電子ビーム60は、電子レンズ41で集束される。試料43を透過した電子ビーム60は、3つの電子レンズ41によって拡大して投影される。電子レンズ41で集束された電子ビーム60が検出器44に入射する。検出器44は、発光体、及びカメラなどを有している。たとえば、電子ビーム60が蛍光板に入射すると、蛍光が発生する。その蛍光をCCDカメラなどで検出する。CCDアレイに、偏向器42で振り分けて、後にデータを再構成することで、時分割データを取得する。CCDカメラには、ゲート付きCCDを用いることが好ましい。これにより、試料43を拡大して観察することができる。なお、検出器44として裏面入射CCD、HPD(Hybrid Photon Detector)、MAPs(Monolithic Active Pixel sensor)等を用いてもよい。
【0114】
上記の電子顕微鏡200では、電子銃が低エミッタンスの電子ビーム60を放出する。よって、試料43上において、電子ビーム60のビームスポットを小さくすることができる。例えば、電子ビームのスポット直径を約10μm程度にすることができる。これにより、電子顕微鏡200の分解能を向上することができる。
【0115】
なお、電子顕微鏡200の構成は、上記のものに限られるものではない。例えば、図10では、4つの電子レンズ41が設けられているが、電子レンズ41の数は特に限定されるものではない。すなわち、1又は複数の電子レンズ41が、真空チャンバー20内に配置されていればよい。
【0116】
また、電子顕微鏡200を、シングルショットの時間分解TEMとしてもよい。すなわち、1パルスのレーザ光が入射したときに発生する電子を用いて観察を行う。シングルショットで時間分解能を向上するためには、1バンチ内の電子数を増加させる必要がある。このため空間電荷効果が問題となるが、本実施の形態にかかる電子顕微鏡200では均一な空間分布の光がフォトカソード25に入射しているため、空間電荷効果を低減することができる。たとえば、試料43表面において、10個/1μm角程度の電子密度を実現することができる。また、時間分解TEMとする場合、フォトカソード25として、高量子効率(QE)で波長300〜400nm動作のものを用いることが好ましい。また、空間電荷効果を抑制するために、導光部材22でパルス幅を伸長するようにしてもよい。シングルショットとして場合、例えば、msec〜μsec領域の時間分解能で観察することが可能になる。
【0117】
発明の実施の形態5.
本実施の形態にかかる電子顕微鏡200について、図11を用いて説明する。図11は、電子顕微鏡200の全体構成を示す図である。本実施の形態では、実施の形態2にかかる電子銃を用いている。すなわち、電子顕微鏡200は、実施の形態2に係る電子銃100を有している。ここでは、電子顕微鏡200が透過電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope:TEM)であるとして説明する。電子ビーム60の経路は、実施の形態4にかかる電子顕微鏡200と同様であるため、重複する部分の説明を省略する。
【0118】
本実施の形態にかかる電子顕微鏡200において、高繰り返しを実現するための構成について説明する。ここでは、実施の形態2で説明したように、Z偏向を用いているため、レーザ光の繰り返し周波数を高くすることができる。従って、フォトカソード25から放出される電子の繰り返し周波数を高くすることができる。
【0119】
本実施の形態では、試料43を透過した電子ビーム60を偏向器42によって偏向している。これにより、検出器44における電子ビーム60の入射位置が変わる。偏向器42は、コントローラ45によって制御されている。コントローラ45は、レーザ光源11から出射するパルス光と同期するように、偏向器42を制御している。これにより、異なるバンチが、検出器44のCCDカメラ上で、異なる位置に入射する。試料43上の異なる箇所の拡大画像をカメラの1フレームで取得することができる。よって、時分割で観察することができ、繰り返し周波数を高くすることができる。このように、時分割の場合、最後段の偏向器42で検出器44の受光素子アレイの各部分に振り分けて撮像する。すなわち、各アドレスに時系列の番号が与え、後でデータを並べ替える。これにより、高繰り返しで撮像することができる。
【0120】
繰り返し周波数を高くするため、電子顕微鏡200を超電導電子顕微鏡としている。すなわち、共振器24を超伝導のRF空洞としている。超伝導のRF空胴では、これまでに技術が蓄積されているLバンド(1.3GHz)を選択する。この場合、最大1.3GHzの連続繰り返し運転が可能となる。そして、連続運転用空洞として、30〜40MV/mの加速性能がある単空胴か、20MV/mの多連空胴を用いる。高繰返し・大電流・高品質電子源を実現するため、Z偏光を用いる。電子をフォトカソード25から加速する電子銃の形式として、超伝導高周波(RF)フォトカソード電子源とフォトカソード直流(DC)電子源の2つが選択肢としてある。この電子源を実現するためには高効率かつ長寿命のフォトカソード25はこの両者に共通の技術開発課題であるが、高効率(高量子効率)はレーザZ偏光で誘導されるショットキー効果で実現し、長寿命は金属カソードを用いることで実現する。
【0121】
ここで注意することは、もし、レーザZ偏光で誘導されるショットキー効果を有効利用するには、照射するレーザは100フェムト秒以下のパルスとしなければならないことである。Z偏光を用いないで、3次元理想形状の10〜40ps(理想的なパルス幅は高周波フォトカソード電子源の場合、使用する周波数(SバンドやLバンド)などによる)のレーザパルスをカソードに照射しても良いが、現状では1.3GHzの高繰り返しレーザの個々のパルスエネルギーの強度が足りなくなる。この場合はショットキー効果も期待出来ないこともあり、1〜10%程度の量子効率の高量子効率(高QE)カソードが必要になる。
【0122】
1.3GHzの高繰り返しレーザ光源11は、ファイバーレーザベースになるが、CWのYb:ファイバーレーザの2倍高調波(SHG)をポンプ光として、フォトニッククリスタル結晶によるスーパーコンティニュウムまたはフェムト秒チタンサファイヤをシード光とするNOPAにより、広帯域増幅し圧縮してフェムト秒の1.3GHzの高繰返しレーザを生成する。このレーザについては、以下の文献に記載されている。(H. Tomizawa and Virtual laboratory LAAA (Laser−aided Accelerator Association),<Proposal of Fiber−laser−based photocathode light source for both ERL & ILC projectsc,Internal Report 2006−003, SPring8 Report Series, August 2006 (in Japanese)。
【0123】
エネルギー効率と波長が長いという点で、Yb:ファイバーレーザに劣るがEr:ファイバーレーザであれば、そのままフェムト秒で発振できる。なお、これらの対比は以下の文献にまとめられている。H. Tomizawa, S.Kawato, S. Matsubara, <Proposal of laser light source for Energy Recovery Linac (ERL)c, Internal Report 2006−002, SPring8 Report Series, May 2006 (in Japanese)。
【0124】
電子ビームパルス幅10〜40psec、電荷量200pC以下のパルスからなる大電流マイクロ電子バンチビーム列を、高品質(規格化エミッタンス〜0.2mm・mrad)に維持し、1.3GHzの整数分の一の高繰り返しで生成できる。そのような高繰返し・大電流・高品質電子源を用いたレーザ駆動・時分割電子顕微鏡を実現する。超伝導の高効率であるという特性を活かした連続運転は、高繰り返しで高品質ビームを得る上で本質的に重要である。超伝導高周波空胴の連続運転によって初めて実現される繰り返しの高い高輝度の光パルスを用いることで、極めて微細なものが非常に速く変化する様子をコマ送りのように詳しく連続的に観察することができる。」
【0125】
なお、電子顕微鏡200の構成は、実施の形態4、5で示したものに限られるものではない。すなわち、実施の形態1〜3で示した電子顕微鏡100を様々な種類の電子顕微鏡に適用することができる。さらに、各実施の形態を適宜、組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0126】
【図1】本発明の実施形態1にかかる電子銃の構成を模式的に示す図である。
【図2】実施形態1にかかる電子銃に用いられる導光部材の構成を模式的に示す図である。
【図3】本発明の実施形態1にかかる電子銃の構成を模式的に示す図である。
【図4】実施の形態2にかかる電子銃に用いられる偏光変換素子の構成を示す図である。
【図5】偏光変換素子を通過したレーザ光の偏光状態を示す斜視図である。
【図6】偏光変換素子を通過したレーザ光の偏光状態を示す側面図である。
【図7】本発明の実施形態3にかかる電子銃の構成を模式的に示す図である。
【図8】実施形態3にかかる電子銃に用いられる導光部材の構成を模式的に示す図である。
【図9】実施形態3にかかる電子銃に用いられる導光部材の偏波方向を模式的に示す図である。
【図10】本発明の実施形態4にかかる電子顕微鏡の構成を模式的に示す図である。
【図11】本発明の実施形態5にかかる電子顕微鏡の構成を模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0127】
11 レーザ光源
13 アキシコンレンズ
14 アキシコンレンズ
15 偏光変換素子
15a〜15h 分割領域
16 偏光調整素子
19 偏光調整用電源
20 真空チャンバー
21 ミラー
22 導光部材
22a 入射端面
22b 出射端面
23 レンズ
24 共振器
25 フォトカソード
27 金属パイプ
28a〜28h 分割領域
31 マイクロ波源
41 電子レンズ
42 偏向器
43 試料
44 検出部
45 コントローラ
50 レーザ光
60 電子ビーム
100 電子銃
200 電子顕微鏡

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光が入射してきた方向に向けて電子を放出する電子銃であって、
レーザ光源と、
前記レーザ光源からのレーザ光が入射し、入射光が全反射を繰り返しながら内部を伝播する中空の導光部材と、
前記導光部材から出射した光を屈折する中空のレンズと、
前記レンズによって屈折されたレーザ光が入射するフォトカソードと、を備える電子銃。
【請求項2】
前記導光部材が、光の偏波面を保ちながら伝播する偏波面保存ファイバが束ねられた偏波面保存ファイバーバンドルを有し、
前記導光部材の出射端面における前記偏光保存軸の方向が、出射位置に応じて異なっていることを特徴とする請求項1に記載の電子銃。
【請求項3】
前記偏光保存軸の方向が、出射端面の中心に対して対称になっていることを特徴とする請求項2に記載の電子銃。
【請求項4】
前記偏光保存軸の方向が、放射状になっていることを特徴とする請求項2、又は3に記載の電子銃。
【請求項5】
前記導光部材を出射するレーザ光が全体としてラジアル方向に偏光するように、前記偏波面保存軸が配置されていることを特徴とする請求項2乃至4のいずれか1項に記載の電子銃。
【請求項6】
前記導光部材の内側に金属パイプが設けられていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の電子銃。
【請求項7】
前記金属パイプが電子をその阻止能で止められる厚さになっていることを特徴とする請求項6に記載の電子銃。
【請求項8】
前記金属パイプが厚さ5mm以上の銅によって形成されることを特徴とする請求項6、又は7に記載の電子銃。
【請求項9】
前記レンズが、中空のアキシコンレンズであることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の電子銃。
【請求項10】
前記レーザ光源と前記導光部材との間に、前記レーザ光源からのレーザ光を円環ビームにする円環ビーム生成手段が設けられていることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の電子銃。
【請求項11】
前記レンズの中空部分に、金属パイプが設けられている請求項1乃至10のいずれか1項に記載の電子銃。
【請求項12】
前記レーザ光を前記導光部材の方向に反射する中空ミラーを備え、
前記中空ミラーが、金属で全面が覆われたガラス基板によって構成されている請求項1乃至11のいずれか1項に記載の電子銃。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれか1項に記載の電子銃を備え、
前記電子銃で発生した電子ビームが前記レンズ、及び導光部材の中空部分を通過して、試料に入射する電子顕微鏡。
【請求項14】
フォトカソードから放出された電子ビームを試料に入射する電子顕微鏡であって、
レーザ光源と、
前記レーザ光源からのレーザ光に入射位置に応じた位相差を与える偏光変換素子と、
前記レーザ光源から前記偏光変換素子を介して入射したレーザ光を屈折する中空のレンズと、
前記レンズによって屈折されたレーザ光が入射するフォトカソードと、を備える電子顕微鏡。
【請求項15】
前記偏光変換素子が、レーザ光を断面全体でほぼ半径方向に直線偏光し、光軸に対して対向する領域において、電気ベクトルの振動方向が反対方向となるように変換する請求項14に記載の電子顕微鏡。
【請求項16】
フォトカソードに光を照射して、電子を発生させる電子発生方法であって、
入射光が全反射を繰り返しながら内部を伝播する中空の導光部材に光を入射させるステップと、
前記導光部材から出射した光を中空のレンズによって屈折させるステップと、
前記レンズで屈折した光を、フォトカソードに入射させるステップと、を備える電子発生方法。
【請求項17】
前記導光部材が、光の偏波面を保ちながら伝播する偏波面保存ファイバが束ねられた偏波面保存ファイバーバンドルを有し、
前記導光部材の出射端面における前記偏光保存軸の方向が、出射位置に応じて異なっていることを特徴とする請求項16に記載の電子発生方法。
【請求項18】
前記偏光保存軸の方向が、出射端面の中心に対して対称になっていることを特徴とする請求項17に記載の電子発生方法。
【請求項19】
前記偏光保存軸の方向が、放射状になっていることを特徴とする請求項16、又は17に記載の電子発生方法。
【請求項20】
前記導光部材を出射するレーザ光が全体としてラジアル方向に偏光するように、前記偏波面保存軸が配置されていることを特徴とする請求項17乃至19のいずれか1項に記載の電子発生方法。
【請求項21】
前記導光部材の内側に金属パイプが設けられていることを特徴とする請求項16乃至20のいずれか1項に記載の電子発生方法。
【請求項22】
前記金属パイプが電子をその阻止能で止められる厚さになっていることを特徴とする請求項21に記載の電子発生方法。
【請求項23】
前記金属パイプが厚さ5mm以上の銅によって形成されることを特徴とする請求項21、又は22に記載の電子発生方法。
【請求項24】
前記レンズが、中空のアキシコンレンズであることを特徴とする請求項16乃至23のいずれか1項に記載の電子発生方法。
【請求項25】
前記導光部材に入射する光が、円環状の光ビームになっていることを特徴とする請求項16乃至24のいずれか1項に記載の電子発生方法。
【請求項26】
前記レンズの中空部分に、金属パイプが設けられている請求項16乃至25のいずれか1項に記載の電子発生方法。
【請求項27】
前記レーザ光を中空ミラーによって、前記導光部材の方向に反射し、
前記中空ミラーが、金属で全面が覆われたガラス基板によって構成されている請求項16乃至26のいずれか1項に記載の電子発生方法。
【請求項28】
ガラス基板の一面を除いた全面を金属粘土で覆うステップと、
前記金属粘土中のつなぎ材を取り除くステップと、を備える中空ミラーの製造方法。
【請求項29】
ガラス基板に貫通穴を設けるステップと、
前記貫通穴を有するガラス基板の全面に金属薄膜を形成するステップと、を備える中空ミラーの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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