説明

電子銃および量子細線の製造方法

【目的】 再現性よく均一な形状の電子銃を製造することができる電子銃の製造方法を提供する。
【構成】 面方位(100)の単結晶シリコン基板1表面に、異方性エッチングによりウエッジ形状10の二つの面の(111)面を別々に形成し、このウエッジ形状の先端直上部分に成膜された金属膜11を、レジスト8を塗布し、レジストエッチバックを行い突出させ、この突出した部分の金属膜を除去して、ゲート電極11を形成する電子銃の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、電子銃および量子細線の製造方法に関し、特に、真空マイクロデバイス、ブラウン管または電子顕微鏡などの電子放出源として利用されるシリコン製電子銃および発光素子や高速素子に利用できるシリコン製量子細線の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、半導体超微細加工技術の発展はめざましく、数nm程度の構造物を形成するに至っている。シリコン製の電子銃や量子細線は、この超微細加工技術によって形成される構造物で、電子銃は、分子レベルの尖鋭さをもつ先端を形成して、この電子銃先端から電界放射により電子を放射する冷陰極型電子銃の一つである。また、量子細線は、電子の単一モード化(または1次元化、0次元化)を図ることによって、発光素子などの光デバイスや高速素子等の電子デバイスの大幅な性能向上、新たな概念の新デバイスの創成の可能性などから注目されている。シリコンを用いた電子銃の一つに、ウエッジ状の形状をした電子放出部をもつものがあり、従来のウエッジ型電子銃の製造方法としては、例えば、H.G.Grayらが開示した方法(Technical Direst of IVMC91,Nagahama 1991, 34 〜35頁)がある。
【0003】この製造方法は、まず、図8に示すように、シリコン基板101上にSiO2を成膜し、これを図示するように方形上に残し、マスク材102とし、シリコン基板101を異方性エッチング液によりエッチングする。このとき、マスク材102の下は、アンダーエッチングされるので、その断面が図9aに示すように、シリコン基板101のマスク材102と接する部分が台形の上辺で、ほぼ線状になるように制御しながらエッチングを行う。
【0004】次に、このシリコン基板101を熱酸化してSiO2 膜103を形成することにより、図9bに示すように、断面が酸化によるシリコンのくわれによって、その頂点が尖鋭な三角形となるようにして、ウエッジ型の電子銃電子放出部を形成する。
【0005】次に、図9cに示すように、ゲート絶縁膜104およびゲート電極105となる金属膜を成膜する。そして、マスク材102(SiO2 )と熱酸化により形成されたSiO2 を除去することにより、図9dに示すように、マスク材102によってセルフアラインに形成されたゲート電極105が形成されて、電子銃が製造される。
【0006】また、従来の量子細線としては、例えば、JJAP(JAPANESE JOURNAL OF PHYSICS Vol.30, No.9A, (1991) PP.L1606 〜L1607) に開示された方法があり、SOI基板を用いて、SOI基板の下部シリコン層からSOI基板のSiO2 層により電気的に絶縁された量子細線を形成している。
【0007】この量子細線の製造方法は、図10にその完成形状を示すが、前述した電子銃の製造方法とほぼ同様な工程で、基本的には図8および図9に示した工程図において、その基板がSOI基板を用いていること、および電極の形成(図9cおよびd)を行っていない点が異なる。
【0008】図10aの場合には、SOI上部シリコン層の面方位が(100)のSOI基板200を用いて、上部シリコン層表面に、方形上に残したマスク材202を形成し、異方性エッチング液により、マスク材202の下をアンダーエッチングして、マスク材202と接する部分が台形の上辺でほぼ線状になった断面三角形の量子細線210を形成しており、また、図10bの場合には、基板としてSOI上部シリコン層の面方位が(110)のSOI基板200を用いて同様の工程により断面が四角形の量子細線210を形成している。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】これら従来の電子銃や量子細線の製造方法では、マスク材102や202の下をアンダーエッチングする際に、マスク材102や202との接点ができるだけ細い線状となったときに、エッチングを終了させることが必要であるが、この終了点を正確に判別することは非常に難しく、具体的には、エッチング時間(エッチング液に浸漬している時間)を調節することにより行うのであるが、わずかな液温の変化によりエッチングレートが異なり、エッチング液から引き出す時間の誤差によってもシリコンの先端がエッチングされ過ぎてマスク材102や202が剥がれてしまったり、また、逆にエッチングが足りず先端が幅広く残り、電子銃では以降の工程である先端部を尖鋭にするための熱酸化工程が非常に長くなり、量子細線では量子細線としての効果が得られないなど、その再現性が難しく、常に均一な形状の電子銃を得られないという問題がある。
【0010】また、マスク材の形成の際には、マスク材形状として大きなものを形成してしまうと、マスク材下の異方性エッチングの際に、(111)面が露出した時点で、ほぼ(111)面のエッチングは停止してしまうので、電子銃や量子細線となる微細構造が形成できない。このため、マスク材形成の際のリソグラフィーには高精度なリソグラフィー技術や装置が必要となり、設備投資や生産性などの点から量産化が困難であるといった問題もある。
【0011】そこで、本発明の目的は、再現性よく均一な形状の電子銃および量子細線を製造することができる電子銃および量子細線の製造方法を提供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】上記諸目的を解決するための本発明は、面方位(100)の単結晶シリコン基板表面に、マスク材を形成する工程と、前記シリコン基板を異方性エッチングして第1の(111)面を露出する工程と、該第1の(111)面を含む露出しているシリコン面に第1の絶縁膜を形成する工程と、前記マスク材を除去する工程と、前記マスク材を除去することにより露出したシリコン面をエッチングする工程と、前記シリコン基板を異方性エッチングして第2の(111)面を露出する工程と、該第2の(111)面を含む露出しているシリコン面に第2の絶縁膜を形成する工程と、前記第1の絶縁膜および第2の絶縁膜上に金属膜を形成する工程と、該金属膜上にレジストを塗布し、レジストエッチバックする工程と、該エッチバック工程により、レジスト面より突き出した部分の金属膜を除去する工程と、前記第1の(111)面と第2の(111)面により構成される角の頂点部分を覆っている前記第1の絶縁膜および第2の絶縁膜を除去する工程と、前記レジストを除去する工程とを有することを特徴とする電子銃の製造方法である。
【0013】また上記諸目的を解決するための本発明は、面方位(100)の上部シリコン層を有するSOI基板の上部シリコン層表面に、マスク材を形成する工程と、前記SOI基板を異方性エッチングして、上部シリコン層に第1の(111)面を露出する工程と、該第1の(111)面に絶縁膜を形成する工程と、前記マスク材を除去する工程と、前記マスク材を除去することにより露出したシリコン面を異方性エッチングして、上部シリコン層に第2の(111)面を露出する工程とを有することを特徴とする量子細線の製造方法である。
【0014】さらに上記諸目的を解決するための本発明は、面方位(100)の上部シリコン層を有するSOI基板の上部シリコン層表面に、マスク材を形成する工程と、前記SOI基板をエッチングして、上部シリコン層に垂直なシリコン面を形成する工程と、該垂直なシリコン面に絶縁膜を形成する工程と、前記マスク材を除去する工程と、前記マスク材を除去することにより露出したシリコン面を異方性エッチングして、上部シリコン層に(111)面を露出する工程とを有することを特徴とする量子細線の製造方法である。
【0015】
【作用】本発明の電子銃の製造方法は、まず、マスク材の開口部からシリコン基板を異方性エッチングすることにより、マスク材の端部から(111)面が徐々に異方性エッチングによりシリコンがエッチングされるに従って露出し、第1の(111)面が露出される。この異方性エッチングは(111)面のエッチング速度が極めて遅いため、マスク材端部より露出した(111)面のエッチングは進行しない。これによりウエッジ型電子銃の電子放出部の一面が形成される。
【0016】露出させた第1の(111)面は第1の絶縁膜を形成することにより保護し、前記マスク材を除去して、除去した部分のシリコン面をエッチングにより掘り下げてから、第2の(111)面を第1の(111)面と同様に異方性エッチングにより露出させる。この第2の(111)面も(111)面が露出することにより(111)面のエッチングは進行しないため、第1の(111)面と第2の(111)面とが接触した時点でエッチングは停止し、ウエッジ型電子銃の電子放出部の他の一面が形成される。
【0017】この異方性エッチングによるエッチングは、前述したように、(111)面が露出したところで(111)方向のエッチングは進行せず、ほぼ停止するため、エッチング液への浸漬時間の制御や温度によるエッチングレートの変化に左右されることなく再現性よく第1の(111)面と第2の(111)によって形成されるウエッジ形状の電子放出部が形成できる。
【0018】本発明の電子銃の製造方法によるゲート電極の形成は、第1の絶縁膜形成後、第2の(111)面形成の際には、シリコン面を掘り下げた後に第2の(111)面を形成しているので、この第2の(111)面は第1の絶縁膜より下に形成されることになり、その後第2の絶縁膜が第1の絶縁膜の下方に形成されることになる。そして、ゲート電極となる金属膜を第1および第2の絶縁膜上に形成するが、このとき金属膜は、第1の絶縁膜と第2の絶縁膜によって、第1および第2の(111)面により形成された電子放出部直上に突出している。このため、電子放出部先端を隠すように突出している部分だけが、以後の工程であるレジストエッチバックによりレジスト面から突き出すことになる。この突出している金属膜を除去し、さらに電子放出部先端の酸化膜(SiO2 )およびレジストを除去することにより、電子放出部先端と、この電子放出部先端の周囲にゲート電極が再現性よく形成される。
【0019】次に、本発明の量子細線の製造方法は、マスク材の開口部からSOI基板の上部シリコン層を異方性エッチングすることにより、マスク材の端部から(111)面が徐々に異方性エッチングによりシリコンがエッチングされるに従って露出し、第1の(111)面が露出される。この異方性エッチングは(111)面のエッチング速度が極めて遅いため、マスク材端部より露出した(111)面のエッチングは進行しないため、これにより断面三角形状の量子細線の一面が形成される。
【0020】また、本発明の他の量子細線の製造方法においては、この工程で、異方性エッチングにより第1の(111)面を形成するの代わりに、RIEエッチングなどのエッチングによって、垂直なシリコン面を露出させて断面三角形状の量子細線の一面を形成する。
【0021】露出させた第1の(111)面または垂直なシリコン面は、絶縁膜を形成することにより保護し、前記マスク材を除去して、除去した部分のシリコン面を異方性エッチングにより第2の(111)面を露出させる。この第2の(111)面も(111)面が露出することにより(111)面のエッチングは進行しないため、第1の(111)面または垂直なシリコン面と第2の(111)面とが接触した時点でエッチングは停止し、断面三角形状の量子細線の他の一面が形成される。
【0022】この異方性エッチングによるエッチングは、前述したように、(111)面が露出したところで(111)方向のエッチングは進行せず、ほぼ停止するため、エッチング液への浸漬時間の制御や温度によるエッチングレートの変化に左右されることなく再現性よく第1の(111)面または垂直なシリコン面と第2の(111)によって形成され、SOI基板のSiO2 層によってSOI基板下部シリコン層から電気的に絶縁された断面三角形状の量子細線が再現性よく形成できる。
【0023】
【実施例】以下、添付した図面を参照して本発明を説明する。なお、同一部材に付いては同一の付号を付した。
【0024】実施例1(電子銃の製造方法)
図1および図2は本発明の電子銃の製造方法を工程順に示すものである。
【0025】本発明の電子銃の製造方法は、まず、図1aに示すように、面方位(100)の単結晶シリコン基板1の表面に、窒化シリコン膜(SiN)を成膜し、これをレジスト塗布、フォトリソグラフィーおよびRIEまたはCDEなどのドライエッチングによりパターニングしてマスク2を形成する。
【0026】次に、図1bに示すように、マスク2を形成したシリコン基板1を異方性エッチング液、例えばKOH水溶液、ヒドラジン水溶液およびエチレンジアミンピロカテコール液等の(111)面のみがエッチングされない異方性エッチング液を用いてエッチングし、ウエッジ型電子銃の電子放出部の一面となる第1の(111)面3を露出する。このとき、異方性エッチングによるシリコンのエッチングは、マスク2の端部から序々にシリコン基板1深さ方向に(111)面が露出しながら進行して行くが、(111)面は、マスク2によってシリコン基板表面が覆われていて、エッチングの異方性によりマスク2端部により止められているため、(111)面方向へは進行しない。
【0027】従ってエッチングの制御には、ウエッジ形状の面としての制御を厳密に制御する必要はなく、単に、シリコン基板1の深さ方向をどの程度にするかを適宜選択して、それによりエッチング時間やエッチング条件を設定すればよい。そして、この深さ方向へのエッチング量は0.1〜2μm程度、もしくはこれ以上であっても電子銃完成後の特性に大きな影響を与えることがないので、特別厳密な制御は必要としない。例えば基板深さ方法へのエッチング量を1μmに設定した場合には、エッチング液温度を60℃とし、このエッチング温度も、周囲の状況の変化により多少変化してもさしつかえなく、エッチング時間を1〜5分程度と多少幅のある時間制御でよい。
【0028】次に、図1cに示すように、露出させた第1の(111)面3を含むシリコン面を、熱酸化してSiO2 膜を成膜して、第1の絶縁膜4を形成する。
【0029】次に、図1dに示すように、マスク2を除去する。
【0030】次に、図1eに示すように、マスク2を除去して露出したシリコン面を、例えばCDEによりシリコンのみを選択的にエッチングして掘り下げる。このとき、第1の絶縁膜として第1の(111)面3に成膜したSiO2 膜がマスクとなり第1の(111)面3が保護されている。掘り下げる深さは、電子銃の電子放出部が完成したときの電子放出部の大きさを決めることになるので、0.1〜1μm程度とするのが好ましい。
【0031】このシリコン面を掘り下げる工程により、以後の工程の電子放出部先端の直上に形成されることになる金属膜を、レジストエッチバックによって、レジスト面より突き出させることになる。ここで、シリコン面を掘り下げるためにCDEを用いたのは、第1の(111)面3を保護しているSiO2 とシリコンとのエッチング選択比がよく、SiO2 をエッチングせずにシリコンのみをエッチングすることができ、SiO2 部分をマスクとしてセルフアラインにシリコン面をエッチングすることができるため好ましい。また、CDEの他に、選択性のあるRIEなどでもよい。
【0032】次に、図1fに示すように、掘り下げた後のシリコン面を異方性エッチングして第2の(111)面5を露出させる。この工程は、前述した第1の(111)面3を露出させたときと同じである。この第2の(111)面5は、前述した第1の(111)面とちょうど接するように第2の(111)面5が現れることにより(111)面方向のエッチングが停止する。第1の(111)面3とこの第2の(111)面5が接する部分が、図示するように、断面が三角形の頂点となり、ウェッジ型電子銃の電子放出部10が形成される。
【0033】次に、図1gに示すように、第2の(111)面5を含む露出しているシリコン面に、熱酸化によりSiO2 膜を成膜して第2の絶縁膜6を形成する。
【0034】次に、図2hに示すように、第1の絶縁膜4および第2の絶縁膜6上にゲート電極となる金属膜7を成膜する。金属膜7の成膜は、真空蒸着法により、例えばタングステン、モリブデンなどを成膜する。
【0035】次に、図2iに示すように、全面にレジスト8を塗布し、図2jに示すように、レジストエッチバックを行い、電子放出部10直上の金属膜7をレジスト8面より突出させる。この電子放出部10直上の金属膜7は、第1の絶縁膜4が第2の絶縁膜6より突き出た形で形成されていることにより、その上に成膜されている金属膜7は、レジストエッチバックにより容易にレジスト8面より突出させることができる。
【0036】次に、図2hに示すように、レジスト8面より突き出した金属膜7をCDE等により除去する。
【0037】次に、図2lに示すように、金属膜7を除去した部分の第1および第2絶縁膜4および6であるSiO2 を除去して電子放出部10先端を露出させ、図2mに示すように、レジスト8を除去することにより、電子放出部10の両脇周辺にゲート電極11が形成された電子銃が完成する。
【0038】実施例2(量子細線の製造方法1)
本発明の第1の量子細線の製造方法は、まず、図3および図4aに示すように、面方位(100)の厚さ10オングストローム〜1μm程度の上部単結晶シリコン層23を有するSOI基板20の表面に、厚さ0.05〜0.5μmの窒化シリコン膜(SiN)を成膜し、これをレジスト塗布、フォトリソグラフィーおよびRIEまたはCDEなどのドライエッチングによりパターニングしてマスク2を形成する。なお、マスク2の端部は、図3R>3に示したように、(110)方向となるようにする。
【0039】次に、図4bに示すように、マスク2を形成したSOI基板20を実施例1同様に、異方性エッチング液、例えばKOH水溶液、ヒドラジン水溶液およびエチレンジアミンピロカテコール液等の(111)面のみがエッチングされない異方性エッチング液を用いてエッチングし、断面三角形状の量子細線の一面となる第1の(111)面3を露出する。このとき、異方性エッチングによるシリコンのエッチングは、マスク2の端部から序々にSOI基板20深さ方向に(111)面が露出しながら進行して行くが、(111)面は、マスク2によってシリコン基板表面が覆われていて、エッチングの異方性によりマスク2端部により止められているため、(111)面方向へは進行しない。また、深さ方向へのエッチングは上部シリコン層21がエッチングされてSOI基板のSiO2 層22が露出するまでエッチングする。
【0040】従ってエッチングの制御には、面としての制御を厳密に制御する必要はなく、SiO2 層22が露出するようにエッチング時間やエッチング条件を設定すればよい。例えばエッチング液温度を60℃とし、このエッチング温度も、周囲の状況の変化により多少変化してもさしつかえなく、エッチング時間を1〜5分程度と多少幅のある時間制御でよい。
【0041】次に、図4cに示すように、露出させた第1の(111)面3を含むシリコン面を、熱酸化してSiO2 膜を成膜し、0.01〜0.1μm程度の絶縁膜4を形成する。
【0042】次に、図4dに示すように、マスク2を除去する。
【0043】次に、図4eに示すように、マスク2を除去して露出したシリコン面を、異方性エッチングして第2の(111)面5を露出させる。この工程は、前述した第1の(111)面3を露出させたときと同じであり、厳密なエッチングの制御をようしない。この第2の(111)面5は、前述した第1の(111)面3とちょうど接するように第2の(111)面5が現れることにより(111)面方向のエッチングが停止する。また、深さ方向は、上部シリコン層21がエッチングされてSOI基板のSiO2 層22が露出する。
【0044】第1の(111)面3とこの第2の(111)面5が接する部分が、図示するように、断面三角形の頂点となり、断面三角形状の量子細線30が形成される。このあと必要により、熱酸化を行うことでより微細な量子細線とすることも可能である。
【0045】これにより、図5aに示す断面図および図5R>5bに示す斜視図のように、SOI基板のSiO2 層22によって電気的に絶縁され、その高さdはSOI基板の上部シリコン層の厚みにより決定され、頂点の角度αが70.6゜の尖鋭な細線を形成することができる。
【0046】実施例3(量子細線の製造方法2)
本発明の第2の量子細線の製造方法は、実施例2同様に、まず、図6aに示すように、面方位(100)の厚さ10オングストローム〜1μm程度の上部単結晶シリコン層を有するSOI基板20の表面に、窒化シリコン膜(SiN)によりマスク2を形成する。なお、マスクの端部は、実施例2同様に、(110)方向となるようにする(図3参照)。
【0047】次に、図6bに示すように、マスク2を形成したSOI基板20のマスクによって覆われていない部分の上部シリコン層23をRIEによって、SOI基板のSiO2 層22が露出するまでエッチングして、垂直なシリコン面を露出させる。
【0048】その後は、実施例2と同様に、露出させた垂直なシリコン面に熱酸化によって絶縁膜4を形成し、マスク2を除去し、異方性エッチングにより(111)面を露出させる工程を行うことにより、図6cに示すように、垂直なシリコン面と異方性エッチングにより形成した(111)面との接する部分が断面三角形状の頂点となり。SOI基板のSiO2 層22によって電気的に絶縁された断面三角形状の量子細線30が形成される。このあと必要により、熱酸化を行うことでより微細な量子細線とすることも可能である。
【0049】この第2の製造方法による量子細線は、図7R>7aに示す断面図および図7bに示す斜視図のように、その高さdは実施例2同様にSOI基板の上部シリコン層の厚みにより決定されるが、その頂点の角度αは35.3゜と実施例2よりも極めて尖鋭な細線を形成することができる。
【0050】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の電子銃の製造方法によれば、従来の方法のように、マスク下を厳密な制御を行いながらアンダーエッチングして電子銃電子放出部を形成する必要はなく、電子銃の電子放出部およびゲート電極を極めて再現性よく、また均一に形成することができるので、大量生産が可能となる。
【0051】また、本発明による量子細線の製造方法によれば、高精度のリソグラフィー技術や装置を用いることなく先端部分が尖鋭な細線を異方性エッチングによって、容易に再現性よく、また均一に形成することができるので、大量生産が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明による電子銃の製造方法の一実施例を工程順に説明するための断面図である。
【図2】 図1に続く電子銃の製造方法を工程順に説明するための断面図である。
【図3】 本発明による量子細線の製造方法の実施例を説明するための斜視図である。
【図4】 本発明による第1の量子細線の製造方法の一実施例を工程順に説明するための断面図である。
【図5】 本発明による第1の量子細線の製造方法の一実施例の完成形状を説明するための断面図(図5a)および斜視図(図5b)である。
【図6】 本発明による第2の量子細線の製造方法の他の実施例を工程順に説明するための断面図である。
【図7】 本発明による第2の量子細線の製造方法の他の実施例の完成形状を説明するための断面図(図7a)および斜視図(図7b)である。
【図8】 従来の電子銃の製造方法を説明するための斜視図である。
【図9】 従来の電子銃の製造方法を説明するための断面図である。
【図10】 従来の量子細線の製造方法を説明するための斜視図である。
【符号の説明】
1…シリコン基板、 2…マスク、3、5…(111)面、 4、6…絶縁膜、7…金属膜、 8…レジスト、10…電子放出部、 11…ゲート電極、20…SOI基板。 21…下部シリコン層、22…SOI基板のSiO2 層、 23…上部シリコン層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 面方位(100)の単結晶シリコン基板表面に、マスク材を形成する工程と、前記シリコン基板を異方性エッチングして、第1の(111)面を露出する工程と、該第1の(111)面を含む露出しているシリコン面に第1の絶縁膜を形成する工程と、前記マスク材を除去する工程と、前記マスク材を除去することにより露出したシリコン面をエッチングする工程と、前記シリコン基板を異方性エッチングして第2の(111)面を露出する工程と、該第2の(111)面を含む露出しているシリコン面に第2の絶縁膜を形成する工程と、前記第1の絶縁膜および第2の絶縁膜上に金属膜を形成する工程と、該金属膜上にレジストを塗布し、レジストエッチバックする工程と、該エッチバック工程により、レジスト面より突き出した部分の金属膜を除去する工程と、前記第1の(111)面と第2の(111)面により構成される角の頂点部分を覆っている前記第1の絶縁膜および第2の絶縁膜を除去する工程と、前記レジストを除去する工程とを有することを特徴とする電子銃の製造方法。
【請求項2】 面方位(100)の上部シリコン層を有するSOI基板の上部シリコン層表面に、マスク材を形成する工程と、前記SOI基板を異方性エッチングして、上部シリコン層に第1の(111)面を露出する工程と、該第1の(111)面に絶縁膜を形成する工程と、前記マスク材を除去する工程と、前記マスク材を除去することにより露出したシリコン面を異方性エッチングして、上部シリコン層に第2の(111)面を露出する工程とを有することを特徴とする量子細線の製造方法。
【請求項3】 面方位(100)の上部シリコン層を有するSOI基板の上部シリコン層表面に、マスク材を形成する工程と、前記SOI基板をエッチングして、上部シリコン層に垂直なシリコン面を形成する工程と、該垂直なシリコン面に絶縁膜を形成する工程と、前記マスク材を除去する工程と、前記マスク材を除去することにより露出したシリコン面を異方性エッチングして、上部シリコン層に(111)面を露出する工程とを有することを特徴とする量子細線の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図8】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【図10】
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