説明

電子銃

【課題】 フィラメント端子間の短絡を防ぐ。
【解決手段】フィラメント1、カソード2、グリッド3、アノード4を備え、フィラメント1から発生された電子の衝撃に基づいてカソード2から発生した熱電子をグリッド3の電子通過孔3Hを介してアノード4方向に加速する様に成し、フィラメント端子部を碍子80で支持する様に成し、碍子のアノード側表面に、フィラメント端子部を取り囲む円筒状の壁11を形成し、筒状壁内の空間部Sを、壁内の碍子表面とで挟む有底円筒状のカバー12を壁11に取り付け、カバー12の底部にフィラメント端子部が通る孔H1,H2を穿つと共に、空間部Sにガスを導入する管13を碍子80に設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は傍熱型の電子銃に関する。
【背景技術】
【0002】
図1は傍熱型電子銃の一概略例を示したものである。
【0003】
図中1はフィラメント、2はカソード、3はグリッド、4はアノード、5はフィラメント加熱電源、6はボンバード電源、7は加速電源である。尚、8は前記フィラメント1を支持している碍子である。
【0004】
この様な構成の電子銃において、前記フィラメント加熱電源5からの電流供給により前記フィラメント1が加熱されて高温になると、該フィラメントの先端部(熱電子放出部)から熱電子が発生する。
【0005】
この時、前記カソード2と該フィラメントの間には前記ボンバード電源6から正のボンバード電圧が印加されているので、該フイラメントからの熱電子は前記カソード2を衝撃する。
【0006】
この衝撃により、該カソードが高温になると、該カソードから熱電子が発生する。
【0007】
この時、前記アノード4と該カソードの間には前記加速電源7から正の加速電圧が印加されているので、該カソードからの熱電子は前記グリッド3の電子通過孔3Hを通って前記アノード4方向に向かう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−006520号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
さて、前記フィラメント1からの熱電子による衝撃により前記カソード2が高温になると、熱電子を発生すると共に、該カソード表面が蒸発し始める。そして、この様な熱電子による衝撃が持続されると、前記カソード2の近傍に存在する前記グリッド3も高温になり、該グリッド表面からも蒸発が発生する。
【0010】
すると、図2に示す様に、前記カソード2とグリッド3からの蒸発物9が前記碍子8の表面に堆積する。図2において、10は該碍子表面上の堆積物を示す。
【0011】
しかし、この様な堆積が進んで、該堆積物が前記フィラメント1の端子の周囲を覆うまでになると、該フィラメントの端子間が短絡してしまい、前記フィラメント加熱電源5からの電流が前記フィラメント1の先端部(熱電子放出部E)に充分行かなくなってしまう。
【0012】
本発明は、このような問題を解決するためになされたもので、新規な電子銃を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の電子銃は、フィラメント、カソード、アノードを備え、前記フィラメントから発生された電子の衝撃に基づいて前記カソードから発生した電子を前記アノード方向に加速する様に成した電子銃であって、前記フィラメント端子部を絶縁体で支持する様に成した電子銃において、前記絶縁体のアノード側表面に、前記フィラメント端子部を取り囲む筒状の壁を形成し、該筒状壁内の空間部を、該壁内の絶縁体表面とで挟む有底筒状のカバーを前記壁に取り付け、該カバーの底部に前記フィラメント端子部が通る孔を穿つと共に、前記空間部にガスが導入出来る様に成したことを特徴とする。
【0014】
本発明の電子銃は、フィラメント、カソード、グリッド、アノードを備え、前記フィラメントから発生された電子の衝撃に基づいて前記カソードから発生した電子を前記グリッドの電子通過孔を介して前記アノード方向に加速する様に成した電子銃であって、前記フィラメント端子部を絶縁体で支持する様に成した電子銃において、前記絶縁体のアノード側表面に、前記フィラメント端子部を取り囲む筒状の壁を形成し、該筒状壁内の空間部を、該壁内の絶縁体表面とで挟む有底筒状のカバーを前記壁に取り付け、該カバーの底部に前記フィラメント端子部が通る孔を穿つと共に、前記空間部にガスが導入出来る様に成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、フィラメントの端子間の短絡が防止される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】従来の電子銃の一概略例を示したものである。
【図2】図1に示す電子銃の問題点を説明するために用いたものである。
【図3】本発明の電子銃の一概略例を示したものである。
【図4】図3に示す電子銃の動作を説明するために用いたものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を使用して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0018】
図3は、本発明の電子銃の一概略例を示したものである。図中、図1で使用した記号と同一記号を付したものは同一の構成要素を示す。
【0019】
図3で示す電子銃の構成が、図1で示す電子銃の構成と異なる点を以下に説明する。
【0020】
フィラメント1を支持する碍子80のアノード4側表面に、該フィラメント端子部を取り囲む円筒状の壁11を形成し、該円筒状壁内の空間部Sを、該壁内の碍子表面とで包む有底円筒状のカバー12を前記壁11に取り付ける。
【0021】
そして、該カバーの底部には前記フィラメント1の端子が通る孔H1,H2を穿つと共に、前記空間部Sを形成している碍子80の部分にはガス導入管13を通す孔H3が開けられる。
【0022】
この様な構成の電子銃において、前記フィラメント加熱電源5からの電流供給により前記フィラメント1が加熱されて高温になると、該フィラメントの先端部(熱電子放出部E)から熱電子が発生する。
【0023】
該熱電子は、前記カソード2と該フィラメントの間に印加されている前記ボンバード電源6からの正のボンバード電圧により、前記カソード2を衝撃する。
【0024】
この衝撃により、該カソードが高温になると、該カソードから熱電子が発生する。
【0025】
該熱電子は、前記アノード4と該カソードの間に印加されている前記加速電源7からの正の加速電圧により、前記グリッド3の電子通過孔3Hを通って前記アノード4方向に向かう。
【0026】
さて、前記フィラメント1からの熱電子による衝撃により前記カソード2が高温になると、熱電子を発生すると共に、該カソード表面が蒸発し始める。そして、この様な熱電子による衝撃が持続されると、前記カソード2の近傍に存在する前記グリッド3も高温になり、該グリッド表面からも蒸発が発生する。すると、図4に示す様に、前記カソード2とグリッド3からの蒸発物9が前記カバー12の表面に堆積する。図4において、100は該碍子表面上の堆積物を示す。
【0027】
しかし、この時、前記ガス導入管13から前記空間部S内に、ガス(例えば、窒素ガス或いはアルゴンガスの如き不活性ガス)が導入されており、前記空間部Sの圧力は、前記カバー12とカソード3の間の空間部の圧力より高くなっているので、前記蒸発物の、前記フィラメント1の端子を通しているカバー12の孔H1,H2から前記空間部Sへの侵入が防止される。
【0028】
従って、この様な堆積が進んでも、該堆積物が前記フィラメント1の端子の周囲を覆うことがなく、該フィラメントの端子間の短絡が避けられる。
【0029】
尚、前記ガス導入管13から空間部Sへのガス導入量は、該空間部S内の圧力が、前記カバー12とカソード3の間の空間部の圧力より僅かでも高くなる程度で良く、前者の空間部及び/若しくは後者の空間部で放電が発生しない程度に調整される。
【符号の説明】
【0030】
1・・・フィラメント、 2・・・カソード、 3・・・グリッド、 4・・・アノード、 5・・・フィラメント加熱電源、 6・・・ボンバード電源、 7・・・加速電源、 8,80・・・碍子、 9,90・・・蒸発物、10,100・・・堆積物、11・・・壁、12・・・カバー、13・・・ガス導入管、 S・・・空間部、H1,H2,H3・・・孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィラメント、カソード、アノードを備え、前記フィラメントから発生された電子の衝撃に基づいて前記カソードから発生した電子を前記アノード方向に加速する様に成した電子銃であって、前記フィラメント端子部を絶縁体で支持する様に成した電子銃において、前記絶縁体のアノード側表面に、前記フィラメント端子部を取り囲む筒状の壁を形成し、該筒状壁内の空間部を、該壁内の絶縁体表面とで挟む有底筒状のカバーを前記壁に取り付け、該カバーの底部に前記フィラメント端子部が通る孔を穿つと共に、前記空間部にガスが導入出来る様に成した電子銃。
【請求項2】
フィラメント、カソード、グリッド、アノードを備え、前記フィラメントから発生された電子の衝撃に基づいて前記カソードから発生した電子を前記グリッドの電子通過孔を介して前記アノード方向に加速する様に成した電子銃であって、前記フィラメント端子部を絶縁体で支持する様に成した電子銃において、前記絶縁体のアノード側表面に、前記フィラメント端子部を取り囲む筒状の壁を形成し、該筒状壁内の空間部を、該壁内の絶縁体表面とで挟む有底筒状のカバーを前記壁に取り付け、該カバーの底部に前記フィラメント端子部が通る孔を穿つと共に、前記空間部にガスが導入出来る様に成した電子銃。
【請求項3】
前記壁は円筒状である請求項1若しくは2に記載の電子銃。
【請求項4】
前記絶縁体は碍子である請求項1若しくは2記載の電子銃。
【請求項5】
前記カバーは有底円筒状である請求項1若しくは2に記載の電子銃。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−210401(P2011−210401A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−74473(P2010−74473)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(000004271)日本電子株式会社 (811)
【Fターム(参考)】