説明

電柱支持具及び電柱支持方法

【課題】電柱の周囲の環境や地面の性状によらず設置可能で、しかも設置作業が容易であり、安定して電柱を支持することができる電柱支持具及び電柱支持方法を提供する。
【解決手段】地面Gから立設する電柱50を支持する電柱支持具である。電柱50の所定高さ位置から斜め下方へ放射状に延びて、剛性を有する複数本の主支持棒1と、電柱50の下端部から斜め上方へ放射状に延びて、剛性を有する複数本の副支持棒2とを備える。主支持棒1に、軸方向中間部において副支持棒2と交差して連結する交差部31を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電柱支持具及び電柱支持方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地面から立設する電柱において、特に地際が腐朽している木柱や発錆により腐食した鋼管柱は、高圧線、引込線を外すことによる張力バランスの崩れ等の影響で、傾いたり倒れたりする可能性がある。従って、作業者が、前記したような電柱上で作業を行う際には、例えば特許文献1に示すように、電柱の傾きや倒れを防止するための対策が必要となる。
【0003】
特許文献1に記載されたものは、電柱の上方側端部と地面との間に張設される複数の支え線にて構成されている。支え線の取り付けは、まず、地面に設置すべき支え線の本数と同数の杭を打ち込む。この場合、杭は、電柱を中心とした同心円上に設けられるとともに、夫々の杭は、周方向に沿って等間隔で配置される。そして、支え線の一方の端部が電柱の上方側端部に固定されるとともに、他方の端部が、地面に打ち込まれた杭に固定されることにより、支え線が張設されて緊張状態となって、電柱の上方側端部に外周側から引張力が付与される。このようにして、全ての杭と、電柱の上方側端部との間で支え線を張設すると、電柱の上方側端部には複数の方向から引張力が付与されて、夫々の引張力のバランスが保たれて電柱の立設状態を維持させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭63−98943号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献1に記載された方法で電柱の安定性を向上させるためには、支え線の上方側端部を、可能な限り電柱の上方側に取付ける必要がある。この場合、支え線を電柱の上方側まで繰り上げる際に、電柱上の機器やアームが干渉する等して、地上からの取付け作業が容易ではなく、手間がかかるものとなる。
【0006】
電柱の安定性をさらに向上させるためには、支え線を固定するための杭を、電柱を中心とした大きな円上に配設する必要がある。つまり、電柱から遠い位置に杭を配設する。しかしながら、電柱の周囲に建物や障害物がある場合や、例えば川や建物の存在により電柱周囲の地面の面積が小さい場合は、十分な設置スペースが確保できず、電柱周囲の環境によっては設置することができない。また、地面がコンクリート等である場合は、杭の設置が不可能であり、地面の性状によっては設置することができない。さらに、夫々の支え線から均等に引張力を付与する必要があるため、周方向に沿って厳密に等間隔で杭を配置しなければならず、杭の配置及び打ち込み作業に手間及び時間がかかる。
【0007】
特許文献1の支え線は、電柱に引張力を付与するために線状体にて構成されており、緩みやすい。従って、支え線のいずれか1本でも緩んで引張力が付与できなくなると、引張力のバランスが保てなくなり、電柱を支持することができず、安定性に欠けるという問題もある。
【0008】
そこで、本発明は、上記事情に鑑み、電柱の周囲の環境や地面の性状によらず設置可能で、しかも設置作業が容易であり、安定して電柱を支持することができる電柱支持具及び電柱支持方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の電柱支持具は、地面から立設する電柱を支持する電柱支持具であって、電柱の所定高さ位置から斜め下方へ放射状に延びて、剛性を有する複数本の主支持棒と、電柱の下端部から斜め上方へ放射状に延びて、剛性を有する複数本の副支持棒とを備え、前記主支持棒に、その軸方向中間部において前記副支持棒と交差して連結する交差部を設けたものである。
【0010】
本発明の電柱支持具によれば、主支持棒の上方側端部と、副支持棒の下方側端部と、交差部とで三角形を構成するとともに、交差部と、主支持棒の下方側端部と、副支持棒の下方側端部とで三角形を構成し、電柱の外周側にいわゆるトラス構造(三角形を基本として組んだ構造)を形成することができる。このトラス構造は、曲げモーメントを受けにくいため、容易に変形せず、引張及び圧縮のいずれにも耐え得る。また、主支持棒及び副支持棒は、剛性を有するものであるため、容易に変形しないものとなる。従って、トラス構造と、支持棒の剛性とが相俟って、本発明の電柱支持具は強固であり、電柱を安定して支持することができる。
【0011】
本発明の電柱支持具は強固であるため、主支持棒を長くする必要はない。このため、主支持棒の上方側端部は、電柱の上方側端部に取り付ける必要がなくなり、高所作業が不要となる。また、主支持棒の下方側端部は、電柱から遠く離れた位置に取り付ける必要がなくなり、電柱の周囲の設置スペースが十分に確保できなくても設置することができる。さらには、電柱の周囲に形成されたトラス構造により電柱を支持するものであるため、従来のように、電柱の外周側からの引張力のバランスを保つ必要はない。このため、各主支持棒の配置は、周方向に厳密に等間隔とする必要はなく、電柱周囲の地面がコンクリートである等、杭の設置が不可能な地面であっても設置することができる。
【0012】
前記構成において、前記電柱の外周面に巻回される環状部と、この環状部の周方向に沿って所定ピッチで配設されて前記支持棒を保持する保持部とからなる保持手段を備えることができる。これにより、複数の主支持棒の上方側端部を、保持手段にて周方向に保持することができるため、複数の主支持棒の上方側端部を同一の高さに保持することができる。また、複数の副支持棒の下方側端部を、保持手段によって周方向に保持することができるため、複数の副支持棒の下方側端部を、保持手段にて周方向に保持することができる。
【0013】
この場合、前記保持部は、前記支持棒を揺動可能に枢支する枢支部を備えることができる。これにより、支持棒は枢支部を支点として揺動することができるため、支持棒と電柱とのなす角を容易に調節することができる。これにより、支持棒の電柱への取付け作業の容易化及び迅速化を図ることができる。
【0014】
前記構成において、前記主支持棒の下方側端部に、主支持棒を軸方向に移動させて前記保持部を電柱に密着させる密着機構を付設することができる。これにより、地上にて主支持棒の上方側端部を電柱に密着させることができるため、高所作業が不要となって取付け作業は一層容易となり、しかも安全なものとなる。
【0015】
本発明の電柱支持方法は、前記本発明の電柱支持具を用いて、地面から立設する電柱を支持するものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の電柱支持具及び電柱支持方法は、電柱の周囲の環境や地面の性状によらず設置可能で、しかも設置作業が容易であり、安定して電柱を支持することができる電柱支持具及び電柱支持方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の電柱支持具を電柱に取り付けた状態を示す斜視図である。
【図2】本発明の電柱支持具を電柱に取り付けた状態を示す平面図である。
【図3】本発明の電柱支持具を電柱に取り付けた状態で、その上方側を示す要部拡大正面図である。
【図4】本発明の電柱支持具の上方の保持手段を構成する固定片を示し、(a)は側面図、(b)は平面図である。
【図5】本発明の電柱支持具を構成する密着機構の正面図である。
【図6】本発明の電柱支持具を電柱に取り付けた状態で、その下方側を示す要部拡大正面図である。
【図7】本発明の電柱支持具の下方の保持手段を構成する固定片を示し、(a)は側面図、(b)は平面図である。
【図8】本発明の電柱支持具を電柱に取り付けた状態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
【0019】
本発明の電柱支持具は、図1に示すように地面Gから立設する電柱50を支持して、電柱50の傾きや倒れを防止するものであり、例えば作業者が昇柱する際等に電柱50に取り付けられる。本発明の電柱支持具は、図1に示すように、複数本(本実施形態では4本)の主支持棒(第1主支持棒1a、第2主支持棒1b、第3主支持棒1c、第4主支持棒1d)と、主支持棒1と同数、すなわち4本の副支持棒(第1副支持棒2a、第2副支持棒2b、第3副支持棒2c、第4副支持棒2d)と、4本の主支持棒1a〜1dを保持する保持手段3aと、4本の副支持棒2a〜2dを保持する保持手段3bと、夫々の主支持棒1a〜1dの下方側端部に取付けられた密着機構4a〜4dを備えている。
【0020】
主支持棒1a〜1dは、例えば内部が中空の金属製パイプ部材にて構成されている。本実施形態では、各主支持棒1a〜1dは、同一の長さ寸法を有している。主支持棒1a〜1dの両端部には夫々、後述するボルト部材を挿通するための貫通孔(図示省略)が設けられている。また、副支持棒2a〜2dは、主支持棒1a〜1dと同様に、内部が中空の金属製パイプ部材にて構成されており、両端部には夫々図示省略の貫通孔が設けられている。各副支持棒2a〜2dは、同一の長さ寸法を有している。
【0021】
保持手段3aは、図2や図3に示すように、環状部6と、環状部6に設けられる4つの保持部(第1保持部7a、第2保持部7b、第3保持部7c、第4保持部7d)とから構成されている。この保持手段3aは、電柱50の所定高さ位置に取り付けられるものであり、本実施形態では地面Gから例えば約1.4m上方位置に取り付けられている。
【0022】
環状部6は、電柱50に巻回可能なチェーン部材8と、このチェーン部材8の両端部に設けられて、チェーン部材8の両端部を保持部7に連結する連結部材9a、9bにて構成されている。この連結部材9a、9bは、4つの保持部7a〜7dのうちの1つに着脱可能となっており、連結部材9a、9bを保持部7に装着することにより、環状部6を閉状態とし、連結部材9a、9bを保持部7から離脱させることにより、環状部6を開状態とすることができる。図2及び図3の図示例では、連結部材9a、9bは第4保持部7dに装着されて、環状部6が閉状態、すなわち電柱50に巻回された状態を示す。
【0023】
保持部7a〜7dは、図2及び図3に示すように、電柱50の曲率とほぼ同じ曲率を有する薄肉の固定片10a〜10dと、この固定片10a〜10dから突出する一対の支持片11a〜11dにて構成されている。
【0024】
固定片10の電柱当接面には、図4(a)(b)に示すように、鉄板を加工した楔のような突起16を設けている。この突起16は、縦に4列、横に3列の12個が整列して設けられている。これにより、電柱50が木柱である場合に、電柱50に突起16が食い込み、保持部7のずれを防止して、より強固に固定することができる。
【0025】
図3に示すように、4つの支持片11a〜11dのうち第4保持部7dを構成する支持片11dは、他の支持片11a〜11cの半分の大きさとなっている。第1〜第3保持部7a〜7cを構成する3つの支持片11a〜11cには、チェーン部材挿入用の貫通孔13a〜13cが設けられている(図3では貫通孔13a、13bのみ図示)。この貫通孔13a〜13cにチェーン部材8が挿入されるとともに、第4保持部7dに連結部材9a、9bが連結される。これにより、環状部6に、周方向に沿って4つの保持部7a〜7dを設けることができる。この場合、各保持部7a〜7dが周方向に沿って等間隔、つまり90°間隔で保持されている。
【0026】
各支持片11a〜11dには、図3に示すように、支持棒保持用の貫通孔12a〜12dが設けられている(図3では貫通孔12a、12b、12dのみ図示)。固定片10a〜10dと、一対の支持片11a〜11dとでコの字状部が形成され、ここに主支持棒1a〜1dの端部を対応させる。そして、支持片11a〜11dの貫通孔12a〜12dと、主支持棒1a〜1dの端部に設けられた貫通孔(図示省略)にボルト部材14a〜14dを挿入する。このようにして、支持片11a〜11dは、図2に示すように、主支持棒1a〜1dの上方側端部を周方向に沿って90°間隔で保持するとともに、電柱50の上下方向中間部に取付けることができる。これにより、主支持棒1a〜1dは、電柱50の上下方向中間部から斜め下方へ放射状に延びる。各主支持棒1a〜1dと電柱50とのなす角、及び各主支持棒1a〜1dと地面Gとのなす角は、図8に示すようにいずれも45°となっている。
【0027】
保持部7a〜7dは主支持棒1a〜1dを、図3の矢印のように揺動可能に枢支する。すなわち、ボルト部材14a〜14dが枢支部15a〜15dとなって、主支持棒1a〜1dは、枢支部15a〜15dを支点として揺動することができる。
【0028】
主支持棒1a〜1dの下方側端部には、夫々密着機構4a〜4dが設けられている。この密着機構4は、図5に示すようなジャッキ機構にて構成されている。すなわち、密着機構4は、外周側にねじ部を有する軸部材21と、ジャッキハンドル部となる第1ナット部材22と、第1ナット部材22を固定する第2ナット部材23と、地面Gに載置される支え板24とから構成されている。軸部材21の最大外径は、主支持棒1の内径よりも僅かに小さい寸法となっており、軸部材21が主支持棒1a〜1dに嵌入可能となっている。また、第1ナット部材22及び第2ナット部材23は、外径側に突出する棒状のハンドル部25、26を有している。軸部材21の先端部には、支点27を介して揺動可能に支え板24が取り付けられており、軸部材21の地面Gに対する角度を自由に調節することが可能となっている。支え板24a〜24dは、本実施形態では図2に示すように電柱50を中心とする同心円上に配置される。
【0029】
主支持棒1に軸部材21を嵌入させるとともに、支え板24を地面Gに載置した状態で、第1ナット部材22を図5の矢印のように螺進退させると、主支持棒1を軸方向に移動させることができる。これにより、主支持棒1の上方側端部を電柱側へ前進させたり後退させたりすることができる。主支持棒1の上方側端部が電柱側へ前進すると、支持片11が起き上がり、固定片10を電柱50に密着させることができる。逆に、主支持棒1の上方側端部が電柱側から後退すると、支持片11の電柱50への密着状態を解除することができる。
【0030】
副支持棒2a〜2dを保持する保持手段3bは、電柱50の下端部に取り付けられており、本実施形態では地面Gから約5〜10cm上方位置に保持手段3bが取り付けられている。保持手段3bは、図6に示すように、主支持棒1a〜1dを保持する保持手段3aとほぼ同様の構成を採用しており、保持手段3aの上下が反転した状態で電柱50に取り付けられている。すなわち、主支持棒1を保持する保持手段3aは、支持棒保持用の貫通孔12a〜12dが上方側、チェーン部材挿入用の貫通孔13a〜13cが下方側となるように電柱50に取付けられているが、副支持棒2を保持する保持手段3bは、チェーン部材挿入用の貫通孔13a〜13cが上方側、支持棒保持用の貫通孔12a〜12dが下方側となるように電柱50に取付けられている。これにより、副支持棒2a〜2dは、電柱50の下端部から斜め上方に放射状に延びる。
【0031】
下方の保持手段3bと上方の保持手段3aとは、固定片10の電柱当接面が相違する。下方の保持手段3bを構成する固定片10の電柱当接面には、図7(a)(b)に示すようにゴムシート17を設けている。このゴムシート17を設けることによって、例えば、電柱50が木柱であって表面に補強板が取り付けられている場合や、電柱50が鋼管柱である場合等、保持部7のずれを防止してより強固に固定することができる。なお、図6及び図7に示す保持手段3bにおいて、図3及び図4の保持手段3aと同様の構成については同一符号を付して、その説明を省略する。
【0032】
主支持棒1a〜1dの電柱50への4つの取付位置と、副支持棒2の電柱50への4つの取付位置とは、電柱50の軸方向(上下方向)に離間したものであって、周方向位置が一致している。すなわち、第1主支持棒1aが電柱50へ取り付けられる位置の真下に、第1副支持棒2aが電柱50へ取り付けられている。同様に、第2〜第4主支持棒1b〜1dも、これらが電柱50へ取り付けられる位置の真下に、夫々第2〜第4副支持棒2b〜2dが電柱50へ取り付けられている。
【0033】
主支持棒1a〜1dと、その真下の位置で電柱50に取り付けられている副支持棒2a〜2dとは、夫々図1及び図8に示すように連結部材30a〜30dにて連結されることにより、主支持棒1a〜1dと副支持棒2a〜2dとの交差部31a〜31dが形成されている。本実施形態では、連結部材30a〜30dは、逆向きに開放する一対のクランプ(パイプクランプ)としている。また、図8に示すように、主支持棒1a〜1dと副支持棒2a〜2dとの交差角は90°となっている。
【0034】
このように、電柱50の周囲には、4つの交差部31a、31b、31c、31dが形成される。これにより、主支持棒1の上方側端部と、副支持棒2の下方側端部と、交差部31とで三角形を構成するとともに、交差部31と、主支持棒1の下方側端部と、副支持棒2の下方側端部とで三角形を構成し、電柱50の外周側にいわゆるトラス構造(三角形を基本として組んだ構造)を形成することができる。このトラス構造は、曲げモーメントを受けにくいため、容易に変形せず、引張及び圧縮のいずれにも耐え得る。
【0035】
次に、本発明の電柱支持具を電柱50に取付ける方法、及び本発明の電柱支持具を用いて電柱50を支持する方法について説明する。本実施形態では、地面Gから垂直に立設する電柱50に電柱支持具を取り付けて、電柱50を支持する場合について説明する。
【0036】
まず、保持手段3aの4つの保持部7a〜7dに、夫々主支持棒1a〜1dを保持させる。すなわち、保持部7を形成する固定片10と、一対の支持片11とで形成されたコの字状部に主支持棒1の端部を対応させる。そして、支持片11の貫通孔12と、主支持棒1の端部に設けられた貫通孔(図示省略)に、ボルト部材14を挿入する。このようにして、支持片11は、主支持棒1を揺動可能に保持することができる。同様にして、別の保持手段3bの4つの保持部7a〜7dに、夫々副支持棒2a〜2dを保持させる。
【0037】
主支持棒1a〜1dの他方の端部に、夫々密着機構4a〜4dを取付ける。すなわち、軸部材21を主支持棒1に挿入し、主支持棒1の端縁を、密着機構4の第1ナット部材22に当接させる。このとき、第1ナット部材22は、軸部材21において、支え板24が取付られる側の端部から10〜15cmの位置とすることが好ましい。
【0038】
次に、主支持棒1a〜1dを電柱50に取り付ける。すなわち、保持手段3aにおいて、第1〜第3保持部7a〜7cを構成する支持片11a〜11cに設けられた貫通孔13a〜13cに、チェーン部材8を挿入する。そして、支持片11a〜11cを、支持棒保持用の貫通孔12a〜12dが上方、チェーン部材挿入用の貫通孔13a〜13cが下方となる向きとして、チェーン部材8を電柱50の軸方向中間部(本実施形態では、地面より1.4m上方位置)に巻回するとともに、連結部材9a、9bを、第4保持部7dに連結して、環状部6を閉状態とする。
【0039】
このとき、4本の主支持棒1a〜1dの上方側端部が、周方向に沿って等間隔、すなわち90°間隔となるように連結部材9a、9bを締め付ける。また、各主支持棒1a〜1dと電柱50とのなす角、及び各主支持棒1a〜1dと地面Gとのなす角はいずれも45°となるようにする。このようにして、保持手段3aの環状部6を電柱50の上下方向中間部に巻回させることができ、主支持棒1a〜1dは、電柱50の上下方向中間部から斜め下方へ放射状に延びる。
【0040】
また、主支持棒1a〜1dの下方側端部に取り付けられた密着機構4a〜4dの支え板24a〜24dを、地面Gに載置状となるように角度調節して、主支持棒1a〜1dの下方側端部を安定させる。このとき、支え板24が横滑りする場合は、ペグ、釘等からなる打込部材(図示省略)を打ち込んで支え板24を地面Gに固定して、横滑りを防止するようにしてもよい。
【0041】
さらに、副支持棒2a〜2dを電柱50に取付ける。すなわち、保持手段3bにおいて、第1〜第3保持部7a〜7cを構成する支持片11a〜11cに設けられた貫通孔13a〜13cに、チェーン部材8を挿入する。そして、支持片11a〜11cを、チェーン部材挿入用の貫通孔13a〜13cが上方、支持棒保持用の貫通孔12a〜12dが下方となる向きとして、チェーン部材8を電柱50の下端部(本実施形態では、地面より5cm〜10cm上方位置)に巻回するとともに、連結部材9a、9bを第4保持部7dに連結して、環状部6を閉状態とする。
【0042】
このとき、4本の副支持棒2a〜2dの下方側端部が、周方向に沿って等間隔、すなわち90°間隔となるように連結部材9a、9bを締め付ける。また、各副支持棒2a〜2dの下方側端部の電柱50への4つの取付位置は、夫々主支持棒1a〜1dの4つの電柱50への取付位置の真下に設けられるようにする。このようにして、保持手段3bの環状部6を電柱50の下端部に巻回させることができ、副支持棒2a〜2dは、電柱50の下端部から斜め上方へ放射状に延びる。
【0043】
そして、第1主支持棒1aと、第1副支持棒2aとの交差角が90度となるように、連結部材(パイプクランプ)30にて連結し、第1の交差部31aを形成する。同様にして、第2の交差部31b、第3の交差部31c、第4の交差部31dを形成する。これにより、電柱50の外周側に、三角形を基本として組んだ、いわゆるトラス構造を形成することができる。
【0044】
第1主支持棒1aに取り付けられている密着機構4aの第1ナット部材22a及び第2ナット部材23aを回転させて、主支持棒1aと第1ナット部材22aとの間に遊びがなくなるまでジャッキアップしていく。これにより、主支持棒1aが軸方向に移動し、主支持棒1aの上方側端部が電柱側へ前進する。これにより、支持片11aが起き上がり、固定片10aを電柱50に密着させることができる。このとき、第1ナット部材22aと第2ナット部材23aとでダブルナット構造を構成しており、第1ナット部材22a及び第2ナット部材23aをその位置で固定することができる。この操作を第2主支持棒1b〜第4主支持棒1dについても同様に行う。これにより、主支持棒1a〜1dを安定して電柱50に固定することができる。
【0045】
このように、本発明の電柱支持具は、電柱50の外周側にいわゆるトラス構造を形成することができて強固なものとなる。これにより、主支持棒1a〜1dを長くする必要はなくなるため、主支持棒1a〜1dの端部は、電柱50の上方側端部に取付ける必要がなくなり、高所作業が不要となる。また、主支持棒1a〜1dの他方の端部は、電柱50から遠く離れた位置に取付ける必要がなくなり、電柱50の周囲の状況により設置スペースが十分に確保できなくても設置することができる。さらには、各主支持棒1a〜1dの配置は、周方向に厳密に等間隔とする必要はなく、杭の設置が不可能な地面であっても設置することができる。従って、本発明の電柱支持具は、電柱の周囲の環境や地面の性状によらず設置可能で、しかも設置作業が容易であり、安定して電柱を支持することができる。
【0046】
以上、本発明の実施形態及び実施例について説明したが、本発明はこれらに限定されることなく種々の変形が可能である。例えば、電柱50は木製であっても金属製であってもよい。地面Gが斜面である場合や、電柱50が傾いている場合等、電柱50が地面Gから垂直に立設しない場合にも、本発明の電柱支持具を使用することができる。この場合、支持棒1、2の長さを全て同一とすることなく、夫々の長さを相違させてもよい。電柱50が地面Gから垂直に立設する場合は、保持手段3の保持部7は、周方向に沿って等間隔で配置するのが望ましいが、電柱50が地面Gに対して傾いている場合等、周方向に沿って不等間隔としてもよい。
【0047】
支持棒1、2は中実体であってもよく、金属、樹脂等、材質は問わない。主支持棒1の本数(保持手段3の保持部7の数)は、安定性と設置の作業性等より4本(4つ)が望ましいが、2本以上あれば本数は問わず、主支持棒1と電柱50とのなす角は45°に限らない。副支持棒2は、少なくとも交差部31が形成できる長さであればよい。さらに、交差部31は、主支持棒1と副支持棒2との交差角度が90°となる位置に設けるのが望ましいが、主支持棒1と副支持棒2とが交差していれば、交差角度は問わない。すなわち、交差部31を設ける位置は、主支持棒1の両端部を除き、主支持棒1のいずれの位置に設けてもよい。
【符号の説明】
【0048】
1 主支持棒
2 副支持棒
3 保持手段
4 密着機構
6 環状部
7 保持部
15 枢支部
31 交差部
50 電柱
G 地面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地面から立設する電柱を支持する電柱支持具であって、
電柱の所定高さ位置から斜め下方へ放射状に延びて、剛性を有する複数本の主支持棒と、
電柱の下端部から斜め上方へ放射状に延びて、剛性を有する複数本の副支持棒とを備え、
前記主支持棒に、その軸方向中間部において前記副支持棒と交差して連結する交差部を設けたことを特徴とする電柱支持具。
【請求項2】
前記電柱の外周面に巻回される環状部と、この環状部の周方向に沿って所定ピッチで配設されて前記支持棒を保持する保持部とからなる保持手段を備えたことを特徴とする請求項1の電柱支持具。
【請求項3】
前記保持部は、前記支持棒を揺動可能に枢支する枢支部を備えたことを特徴とする請求項2の電柱支持具。
【請求項4】
前記主支持棒の下方側端部に、主支持棒を軸方向に移動させて前記保持部を電柱に密着させる密着機構を付設したことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項の電柱支持具。
【請求項5】
前記請求項1〜請求項4のいずれか1項の電柱支持具を用いて、地面から立設する電柱を支持する電柱支持方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−70508(P2013−70508A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−207193(P2011−207193)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(000156938)関西電力株式会社 (1,442)
【出願人】(000227722)株式会社日本ネットワークサポート (19)
【Fターム(参考)】