説明

電柱

【課題】倒壊したような場合でも、電柱が活用できるようにする。
【解決手段】管内が密閉可能な鋼管101から構成されている。鋼管101は、円筒状の容器であり、例えば、一端(上端)に開口部を備え、この開口部が蓋101aにより密閉可能とされている。また、鋼管101の管内には、鋼管101と絶縁分離して配置されて鋼とは酸化還元電位が異なる金属から構成された電極102を備える。また、電極102には、引き出し配線103が接続されている。引き出し配線103は、鋼管101の外部に取り出されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼管から構成された電柱に関するものである。
【背景技術】
【0002】
架空構造物の1つである電柱は,地上に存在し,通信線および送電線などを支持する設備である。電柱には金属製(鋼管)のものと鉄筋コンクリート製のものがある。電柱や、送電や通信サービスを提供するための基盤となる重要な産業基盤の設備である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】http://www.ntt-east.co.jp/release/detail/pdf/20110330_01_03.pdf
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、大地震などにより電柱が支える通信線,送電線が切断し、また、電柱が倒壊したりした場合、電柱は産業基盤としての機能を果たさない状態となる。電柱の地震による倒壊としては、非特許文献1に示すような例がある。また、このように倒壊し、あるいは破損した電柱は、瓦礫として処分しなければならず、様々な問題を抱えている。
【0005】
本発明は、以上のような問題点を解消するためになされたものであり、倒壊したような場合でも、電柱が活用できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る電柱は、管内が密閉可能な鋼管と、鋼管の管内に鋼管と絶縁分離して配置されて鋼とは酸化還元電位が異なる金属から構成された電極と、電極に接続されて鋼管の外部に取り出されている引き出し配線とを備える。なお、鋼管の内部に、電解質が配置されているようにしてもよい。また、鋼管に接続された配線を備えるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0007】
以上説明したことにより、本発明によれば、倒壊したような場合でも、電柱が電池として活用できるようになるという優れた効果が得られるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、本発明の実施の形態における電柱の構成を示す断面図である。
【図2】図2は、鋼管101に電解質が溶解した水溶液201を注入して電池とした電柱の一部構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。図1は、本発明の実施の形態における電柱の一部構成を示す断面図である。この電柱は、管内が密閉可能な鋼管101から構成されている。鋼管101は、円筒状の容器であり、例えば、一端(上端)に開口部を備え、この開口部が蓋101aにより密閉可能とされている。また、鋼管101の管内には、鋼管101と絶縁分離して配置されて鋼とは酸化還元電位が異なる金属から構成された電極102を備える。また、電極102には、引き出し配線103が接続されている。引き出し配線103は、鋼管101の外部に取り出されている。
【0010】
電極102は、例えば、絶縁材料から構成された支持部104により、鋼管101の他端(下端)の上に支持されている。また、引き出し配線103は、蓋101aを貫通して外部に取り出されている。引き出し配線103が貫通する箇所には、絶縁封止部105が設けられている。また、鋼管101にも、配線106が接続されている。引き出し配線103および配線106は、例えば、リード線を用いればよい。
【0011】
電極102は、鉄鋼に対して水中での自然電位が高い銅などの金属から構成されていればよい。例えば、電極102は、銅から構成すればよい。また、電極102は、作製が容易であり、鋼管101の内部に納まる形状であり、なおかつある程度表面積が大きいほうが望ましいため、棒状あるいは板状が好ましい。また、電極102は、らせん状や蛇腹状などどのような形状であってもよい。なお、他方の電極として用いられる鋼管には、鋼の表面に亜鉛めっきが形成されているものもあるが、亜鉛の水中での自然電位は鉄鋼の自然電位よりも卑である。従って、鋼管101は、亜鉛がめっきされていてもよい。
【0012】
蓋101aは、本実施の形態における電柱を通常使用している時に、鋼管101に雨水などが浸入し、鋼管101と電極102とが短絡しないように設けるものである。このため、蓋101aは、水などの液体を通さない(遮断する)材料から構成されていればよく、例えば、亜鉛めっき鋼などを用いて適宜設計すればよい。また、蓋101aは、鋼管101に、容易に脱着可能とするために、ねじ止めできる構造とすればよい。また、蓋101aは、鋼管101に差し込み可能な構造としてもよい。
【0013】
上述した本実施の形態における電柱によれば、電柱が本来の機能を失うなどの場合を含め、必要に応じ、図2に示すように、鋼管101の内部に電解質が溶解した水溶液201を注入することで、電池として利用することが可能となる。蓋101aを外して水溶液201を注入し、この後蓋101aを封止すればよい。例えば、海水のように多量の塩を含む水溶液201が好ましい。また、純水でなければ、河川水のように少量の塩を含む水でも用いることができる。また、鋼管101の内部に、塩などの水に溶解する電解質の粉末やペレットを予め配置しておいてもかまわない。ここで、当然ではあるが、上述したように鋼管101の内部に注入した水溶液に、少なくとも一部の電極102が接触可能となっている必要がある。
【0014】
例えば、河川水を注入した場合、鋼管101と電極102との間の電圧は、初期には鋼管101と銅からなる電極102の水中での電位差である−0.6V(vsSHE)と0.3V(vsSHE)の合成で、約0.9Vの起電力が得られると期待される。鋼管101に亜鉛めっきが施されている場合には、亜鉛についての−1V(vsSHE)が混成するので、約1.3Vの起電力が期待できる。また、電池として放電すると鋼は溶け出してしまうので電柱が瓦礫として残ることもないという副次的な効果も有する。
【0015】
なお、本発明は以上に説明した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で、当分野において通常の知識を有する者により、多くの変形が実施可能であることは明白である。例えば、上述した実施の形態では、鋼管内を1つの部屋とし、1組の電極対が構成されるものとしたが、これに限るものではない。鋼管内を複数の部屋とし、各々の部屋に電極を設け、直列または並列に接続される複数の電池が構成されるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0016】
101…鋼管、102…電極、103…電極、104…支持部、105…絶縁封止部、106…配線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管内が密閉可能な鋼管と、
前記鋼管の管内に前記鋼管と絶縁分離して配置されて鋼とは酸化還元電位が異なる金属から構成された電極と、
前記電極に接続されて前記鋼管の外部に取り出されている引き出し配線と
を備えることを特徴とする電柱。
【請求項2】
請求項1記載の電柱において、
前記鋼管の内に配置された電解質を備えることを特徴とする電柱。
【請求項3】
請求項1または2記載の電柱において、
前記鋼管に接続された配線を備えることを特徴とする電柱。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−97945(P2013−97945A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−238294(P2011−238294)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】