説明

電極の製造方法

【課題】 電極合材ペーストを乾燥させて形成する電極合材層にひび割れが生じるのを抑制することができる電極の製造方法を提供する。
【解決手段】 第1面11b及び第2面11cを有する電極集電部材11の第1面11bに、電極合材ペースト12を塗工する第1塗工工程(ステップS1)と、第1面11bに塗工した電極合材ペースト12を乾燥させる第1乾燥工程(ステップS2)とを備える。第1乾燥工程(ステップS2)では、乾燥初期段階において、電極集電部材11の第1面11bに電極合材ペースト12が塗工された第1ペースト塗工部材10Bに対し、第1面11b側から加える熱量よりも第2面11c側から加える熱量を大きくして、電極合材ペースト12を乾燥させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電池用電極の製造方法として、様々な方法が提案されている。例えば、特許文献1には、二次電池用電極板の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−106175号公報
【0004】
特許文献1には、次のような製造方法が記載されている。具体的には、まず、電極集電部材(アルミニウム箔)の表面(第1面)に、塗着液(電極合材ペースト)を塗着する。次いで、電極集電部材(アルミニウム箔)の両面側(第1面側及び第2面側)に配置されたヒータファンによって、電極集電部材の第1面に塗工した電極合材ペーストを乾燥させる。具体的には、電極集電部材の第1面に電極合材ペーストを塗工したもの(これを第1ペースト塗工部材という)に対し、第1面側に配置された第1ヒータファンから熱風を当てると共に、第2面側に配置された第2ヒータファンからも熱風を当てることによって、電極合材ペーストを乾燥させる。但し、第1ヒータファンと第2ヒータファンとにおいて、送出される熱風の温度及び風量を等しい値としている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、特許文献1のように、第1ヒータファンと第2ヒータファンとについて、送出される熱風の温度及び風量を等しい値として、電極集電部材の第1面に電極合材ペーストを塗工した第1ペースト塗工部材に対し、第1面側に配置された第1ヒータファンから熱風を当てると共に、第2面側に配置された第2ヒータファンからも熱風を当てることによって、電極合材ペーストを乾燥させると、電極合材層(電極合材ペーストが乾燥して形成される電極合材層)にひび割れが生じることがあった。
【0006】
本発明者が検討したところ、上述のようにして電極合材ペーストを乾燥させた場合、電極合材ペーストの内部(電極集電部材側)に多量の溶媒が残っている状態で、電極合材ペーストの表面が早期に乾燥する傾向にあった。このため、表面の薄い膜(電極合材ペーストの表面が乾燥して膜になったもの)に収縮応力がかかり、この収縮応力が表面の薄い膜の強度を上回ることにより、ひび割れが発生すると推測される。
【0007】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであって、電極合材ペーストを乾燥させて形成する電極合材層にひび割れが生じるのを抑制することができる電極の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、第1面及び第2面を有する電極集電部材の上記第1面に、電極合材ペーストを塗工する第1塗工工程と、上記第1面に塗工した上記電極合材ペーストを乾燥させる第1乾燥工程と、を備える電極の製造方法において、上記第1乾燥工程は、乾燥初期段階において、上記電極集電部材の上記第1面に上記電極合材ペーストが塗工された第1ペースト塗工部材に対し、上記第1面側から加える熱量よりも上記第2面側から加える熱量を大きくして、上記電極合材ペーストを乾燥させる電極の製造方法である。
【0009】
上述の製造方法では、第1乾燥工程の乾燥初期段階において、電極集電部材の第1面に電極合材ペーストが塗工された第1ペースト塗工部材に対し、第1面側から加える熱量よりも第2面側から加える熱量を大きくして、電極合材ペーストを乾燥させる。すなわち、第1面に塗工した電極合材ペーストの乾燥初期段階では、電極合材ペーストを塗工した第1面側よりも、電極合材ペーストを塗工していない第2面側から加える熱量を大きくして、電極合材ペーストを乾燥させる。これにより、電極合材ペーストの内部(電極集電部材側)の乾燥を早めることができ、その結果、電極合材ペーストが乾燥して形成される電極合材層にひび割れが生じるのを抑制することができる。
【0010】
なお、ひび割れが生じている電極合材層を有する電極を電池に用いた場合、当該電極において反応が不均一となり、電池特性が低下する虞がある。従って、電極合材ペーストを乾燥させて形成した電極合材層にひび割れが生じていることは好ましくない。
また、電極合材ペーストは、溶媒を含む電極合材であり、例えば、活物質とバインダと溶媒を混合させたものである。
【0011】
さらに、上記の電極の製造方法であって、前記第1乾燥工程は、前記乾燥初期段階において、前記第1ペースト塗工部材に対し、前記第2面側から熱風を当てる電極の製造方法とすると良い。
【0012】
乾燥初期段階において、第1ペースト塗工部材(電極集電部材の第1面に電極合材ペーストが塗工されたもの)に対し、(第1面側からは熱風を当てることなく)第2面側から熱風を当てることで、第1面側から加える熱量よりも第2面側から加える熱量を大きくして、電極合材ペーストを乾燥させることができる。これにより、電極合材層にひび割れが生じるのを抑制することができる。
【0013】
あるいは、前記の電極の製造方法であって、前記第1乾燥工程は、前記乾燥初期段階において、前記第1ペースト塗工部材に対し、前記第2面側から赤外線を照射する電極の製造方法とすると良い。
【0014】
乾燥初期段階において、第1ペースト塗工部材(電極集電部材の第1面に電極合材ペーストが塗工されたもの)に対し、(第1面側からは赤外線を照射することなく)第2面側から赤外線を照射することで、第1面側から加える熱量よりも第2面側から加える熱量を大きくして、電極合材ペーストを乾燥させることができる。これにより、電極合材層にひび割れが生じるのを抑制することができる。
【0015】
さらに、上記いずれかの電極の製造方法であって、前記第1塗工工程では、前記第1面に塗工する前記電極合材ペーストの目付量を10mg/cm2 以上とし、前記第1乾燥工程では、上記電極合材ペーストの乾燥時間を、[目付量(mg/cm2 )/乾燥時間(秒)]≧0.3を満たす時間に設定する電極の製造方法とすると良い。
【0016】
電気自動車やハイブリッド自動車の駆動用電源として用いる電池では、高容量化が求められている。これに対し、上述の製造方法では、第1塗工工程において、第1面に塗工する電極合材ペーストの目付量を10mg/cm2 以上としている。電極合材ペーストの目付量を10mg/cm2 以上と大きくすることで、電池を高容量にすることができる。
【0017】
また、上述の製造方法では、第1乾燥工程において、電極合材ペーストの乾燥時間を、[目付量(mg/cm2 )/乾燥時間(秒)]≧0.3を満たす時間に設定する。例えば、目付量を20mg/cm2 として電極集電部材に塗工した電極合材ペーストを、66.7秒以内に乾燥させる(乾燥時間を66.7秒以内とする)。このように、乾燥時
間を短くすることで、電極合材ペーストの目付量を大きくしつつも、電極の生産効率を高くすることができる。なお、電極合材ペーストの乾燥時間を、[目付量(mg/cm2 )/乾燥時間(秒)]≧0.3を満たす時間に設定して、電極合材ペーストを適切に乾燥させるためには、乾燥温度を高くする(例えば、150℃以上にする)必要がある。
【0018】
ところで、電極合材ペーストの目付量を10mg/cm2 以上と大きくした場合において、特許文献1のように、第1ヒータファンと第2ヒータファンとについて、送出される熱風の温度及び風量を等しい値として、第1ペースト塗工部材(電極集電部材の第1面に電極合材ペーストを塗工したもの)に対し、第1面側に配置された第1ヒータファンから熱風を当てると共に、第2面側に配置された第2ヒータファンからも熱風を当てることによって、電極合材ペーストを乾燥させた場合には、特にひび割れが生じ易かった。その上、高温で短時間で乾燥させた場合、具体的には、例えば、電極合材ペーストの乾燥時間を、[目付量(mg/cm2 )/乾燥時間(秒)]≧0.3を満たす時間に設定し、乾燥温度を150℃程度に設定して、電極合材ペーストを乾燥させた場合には、更にひび割れが生じやすくなる傾向にあった。
【0019】
これに対し、上述の製造方法では、前述のように、第1乾燥工程の乾燥初期段階において、第1ペースト塗工部材に対し、第1面側から加える熱量よりも第2面側から加える熱量を大きくして、電極合材ペーストを乾燥させる。これにより、上述のような目付量及び乾燥時間に設定しても、電極合材層にひび割れが生じるのを抑制することができる。
【0020】
さらに、上記いずれかの電極の製造方法であって、前記第1乾燥工程の後、前記電極集電部材の前記第2面に電極合材ペーストを塗工する第2塗工工程と、上記第2面に塗工した上記電極合材ペーストを乾燥させる第2乾燥工程と、を備え、上記第2乾燥工程は、乾燥初期段階において、上記電極集電部材の上記第2面に上記電極合材ペーストが塗工された第2ペースト塗工部材に対し、上記第2面側から加える熱量よりも前記第1面側から加える熱量を大きくして、上記電極合材ペーストを乾燥させる電極の製造方法とすると良い。
【0021】
上述の製造方法では、電極集電部材の第1面のみならず、第2面にも、電極合材ペーストを塗工して乾燥させる。具体的には、第1乾燥工程後の第2塗工工程において、電極集電部材の第2面に電極合材ペーストを塗工する。その後、第2乾燥工程において、第2面に塗工した電極合材ペーストを乾燥させる。
【0022】
しかも、上述の製造方法では、第2乾燥工程の乾燥初期段階において、第2ペースト塗工部材(電極集電部材の第2面に電極合材ペーストが塗工されたもの)に対し、第2面側から加える熱量よりも第1面側から加える熱量を大きくして、電極合材ペーストを乾燥させる。すなわち、第2面に塗工した電極合材ペーストの乾燥初期段階では、電極合材ペーストを塗工した第2面側よりも、既に電極合材ペーストを乾燥させて電極合材層とした第1面側から加える熱量を大きくして、電極合材ペーストを乾燥させる。これにより、第2面に塗工した電極合材ペーストの内部(電極集電部材側)の乾燥を早めることができ、その結果、電極合材層にひび割れが生じるのを抑制することができる。従って、上述の製造方法では、第1面及び第2面に塗工した両電極合材ペーストを乾燥させて形成される電極合材層について、ひび割れを抑制することができる。
【0023】
さらに、上記の電極の製造方法であって、前記第2乾燥工程は、前記乾燥初期段階において、前記第2ペースト塗工部材に対し、前記第1面側から熱風を当てる電極の製造方法とすると良い。
【0024】
乾燥初期段階において、第2ペースト塗工部材(電極集電部材の第2面に電極合材ペーストが塗工されたもの)に対し、(第2面側からは熱風を当てることなく)第1面側から熱風を当てることで、第2面側から加える熱量よりも第1面側から加える熱量を大きくして、電極合材ペーストを乾燥させることができる。これにより、第2面に塗工した電極合材ペーストを乾燥させて形成される電極合材層についても、ひび割れを抑制することができる。
【0025】
あるいは、前記の電極の製造方法であって、前記第2乾燥工程は、前記乾燥初期段階において、前記第2ペースト塗工部材に対し、前記第1面側から赤外線を照射する電極の製造方法とすると良い。
【0026】
乾燥初期段階において、第2ペースト塗工部材(電極集電部材の第2面に電極合材ペーストが塗工されたもの)に対し、(第2面側からは赤外線を照射することなく)第1面側から赤外線を照射することで、第2面側から加える熱量よりも第1面側から加える熱量を大きくして、電極合材ペーストを乾燥させることができる。これにより、第2面に塗工した電極合材ペーストを乾燥させて形成される電極合材層についても、ひび割れが生じるのを抑制することができる。
【0027】
さらに、上記いずれかの電極の製造方法であって、前記第2塗工工程では、前記第2面に塗工する前記電極合材ペーストの目付量を10mg/cm2 以上とし、前記第2乾燥工程では、上記電極合材ペーストの乾燥時間を、[目付量(mg/cm2 )/乾燥時間(秒)]≧0.3を満たす時間に設定する電極の製造方法とすると良い。
【0028】
第2面に塗工する電極合材ペーストの目付量を10mg/cm2 以上と大きくすることで、電池を高容量にすることができる。また、第2乾燥工程において、電極合材ペーストの乾燥時間を、[目付量(mg/cm2 )/乾燥時間(秒)]≧0.3を満たす時間に設定することで、電極の生産効率を高くすることができる。
【0029】
しかも、上述の製造方法では、前述のように、第2乾燥工程の乾燥初期段階において、第2面に電極合材ペーストが塗工された電極集電部材に対し、第2面側から加える熱量よりも第1面側から加える熱量を大きくして、電極合材ペーストを乾燥させる。これにより、上述のような目付量及び乾燥時間に設定しても、電極合材ペーストを乾燥させて形成される電極合材層にひび割れが生じるのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】実施形態にかかる乾燥装置の概略図である。
【図2】同乾燥装置の各ファンの風速を示す図である。
【図3】実施形態にかかる電極の製造方法を説明する図であり、正極を製造する工程のフローチャートである。
【図4】第1塗工工程の説明図である。
【図5】第1乾燥工程の説明図である。
【図6】第2塗工工程の説明図である。
【図7】第2乾燥工程の説明図である。
【図8】圧縮成形工程の説明図である。
【図9】変形形態にかかる乾燥装置の概略図である。
【図10】比較形態にかかる乾燥装置の概略図である。
【図11】比較形態にかかる乾燥試験の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
次に、本発明の実施形態について説明する。
図1は、実施形態にかかる乾燥装置1の概略図である。乾燥装置1は、正極集電部材11の第1面11b(第2面11c)に塗工された正極合材ペースト12を乾燥させる装置である。具体的には、乾燥装置1は、図1に示すように、乾燥炉7と、乾燥炉7内の上部に配置された複数の上部ファン2と、乾燥炉7内の下部に配置された複数の下部ファン3と、乾燥炉7内の中央部に配置された複数のローラ5とを備えている。
【0032】
ローラ5は、乾燥炉7の長手方向(図1において左右方向)にわたって間隔を空けて複数配置されており、正極集電部材11の第1面11bに正極合材ペースト12が塗工されたもの(これを第1ペースト塗工部材10Bとする)を、乾燥炉7の入口7bから出口7cに向けて送る。さらに、正極集電部材11の第2面11cに正極合材ペースト12が塗工されたもの(これを第2ペースト塗工部材10Cとする)を、乾燥炉7の入口7bから出口7cに向けて送る。
【0033】
なお、本実施形態では、第1乾燥工程において、第1ペースト塗工部材10Bが、正極合材ペースト12が塗工された第1面11bを上側に向けて(第2面11cを下側に向けて)、乾燥炉7の入口7bから出口7cに向かって乾燥炉7内を移動する。また、第2乾燥工程において、第2ペースト塗工部材10Cが、正極合材ペースト12が塗工された第2面11cを上側に向けて(第1面11bを下側に向けて)、乾燥炉7の入口7bから出口7cに向かって乾燥炉7内を移動する。
【0034】
上部ファン2は、乾燥炉7内において上方から下方に向けて熱風を送出する装置である。この上部ファン2は、第1乾燥工程において、乾燥炉7内を移動する第1ペースト塗工部材10Bに対し、第1面11b側(図1において上側)から熱風を当てる。また、第2乾燥工程において、乾燥炉7内を移動する第2ペースト塗工部材10Cに対し、第2面11c側(図1において上側)から熱風を当てる。
【0035】
下部ファン3は、乾燥炉7内において下方から上方に向けて熱風を送出する装置である。この下部ファン3は、第1乾燥工程において、乾燥炉7内を移動する第1ペースト塗工部材10Bに対し、第2面11c側(図1において下側)から熱風を当てる。また、第2乾燥工程において、乾燥炉7内を移動する第2ペースト塗工部材10Cに対し、第1面11b側(図1において下側)から熱風を当てる。
【0036】
なお、本実施形態の乾燥装置1では、下部ファン3を、乾燥炉7の入口7bから出口7cにわたって、合計6個配置している。詳細には、乾燥炉7内を、入口7bから出口7cに向かって3つのゾーン(第1ゾーン7f、第2ゾーン7g、第3ゾーン7h)に分けたとき、下部ファン3は、各ゾーンに2個ずつ、間隔を空けて配置されている。
【0037】
これにより、第1乾燥工程では、第1面11bに塗工された正極合材ペースト12の乾燥初期段階から乾燥終期にわたって、下部ファン3によって、第1ペースト塗工部材10Bに対し、第2面11c側(図1において下側)から熱風を当てることができる。
同様に、第2乾燥工程では、第2面11cに塗工された正極合材ペースト12の乾燥初期段階から乾燥終期にわたって、下部ファン3によって、第2ペースト塗工部材10Cに対し、第1面11b側(図1において下側)から熱風を当てることができる。
【0038】
なお、本実施形態の乾燥装置1では、下部ファン3から送出する熱風の温度を、150℃に設定している。また、下部ファン3から送出する熱風の風速は、図2に示す通りである。具体的には、第1ゾーン7fに配置している下部ファン3では、熱風の風速を、7m/secとしている。また、第2ゾーン7gに配置している下部ファン3では、熱風の風速を、5m/secとしている。また、第3ゾーン7hに配置している下部ファン3では、熱風の風速を、3m/secとしている。なお、図2では、ファンの位置を、乾燥炉7の全長を100として示している。すなわち、乾燥炉7の入口7bの位置を0、
出口の位置を100として、ファンの位置を示している。
【0039】
一方、上部ファン2については、合計4個配置しているが、第1ゾーン7fには配置しておらず、第2ゾーン7gの出口7c寄りの位置に1個、第3ゾーン7hに間隔をあけて3個配置している。これにより、本実施形態の第1乾燥工程では、第1面11bに塗工された正極合材ペースト12の乾燥初期段階において、上部ファン2によって、第1ペースト塗工部材10Bに対し、第1面11b側(図1において上側)から熱風を当てないようにしている。
【0040】
具体的には、第1乾燥工程では、第1面11bに塗工された正極合材ペースト12の乾燥中期以降だけ、上部ファン2によって、第1ペースト塗工部材10Bに対し、第1面11b側(図1において上側)から熱風を当るようにしている。同様に、第2乾燥工程において、第2ペースト塗工部材10Cに対して、第2面11cに塗工された正極合材ペースト12の乾燥初期段階では、第2面11c側(図1において上側)から熱風を当てないようにし、乾燥中期以降だけ、第2面11c側(図1において上側)からも熱風を当るようにしている。
【0041】
このようにして、本実施形態では、第1乾燥工程の乾燥初期段階において、正極集電部材11の第1面11bに正極合材ペースト12が塗工された第1ペースト塗工部材10Bに対し、第1面11b側からは熱風を当てることなく、第2面11c側から熱風を当てるようにした。さらに、第2乾燥工程の乾燥初期段階において、正極集電部材11の第2面11cに正極合材ペースト12が塗工された第2ペースト塗工部材10Cに対し、第2面11c側からは熱風を当てることなく、第1面11b側から熱風を当てるようにした。
【0042】
これにより、本実施形態では、第1乾燥工程の乾燥初期段階において、正極集電部材11の第1面11bに正極合材ペースト12が塗工された第1ペースト塗工部材10Bに対し、第1面11b側から加える熱量よりも第2面11c側から加える熱量を大きくして、正極合材ペースト12を乾燥させることができる。すなわち、第1面11bに塗工した正極合材ペースト12の乾燥初期段階では、正極合材ペースト12を塗工した第1面11b側よりも、正極合材ペースト12を塗工していない第2面11c側から加える熱量を大きくして、正極合材ペースト12を乾燥させることができる。これにより、第1乾燥工程において、第1面11bに塗工された正極合材ペースト12の内部(正極集電部材11側)の乾燥を早めることができ、その結果、正極合材ペースト12が乾燥して形成される電極合材層13にひび割れが生じるのを抑制することができる。
【0043】
また、第2乾燥工程の乾燥初期段階において、正極集電部材11の第2面11cに正極合材ペースト12が塗工された第2ペースト塗工部材10Cに対し、第2面11c側から加える熱量よりも第1面11b側から加える熱量を大きくして、正極合材ペースト12を乾燥させることができる。すなわち、第2面11cに塗工した正極合材ペースト12の乾燥初期段階では、正極合材ペースト12を塗工した第2面11c側よりも、正極合材ペースト12を塗工していない(既に電極合材層13が形成されている)第1面11b側から加える熱量を大きくして、正極合材ペースト12を乾燥させることができる。これにより、第2乾燥工程においても、第2面11cに塗工された正極合材ペースト12の内部(正極集電部材11側)の乾燥を早めることができ、その結果、正極合材ペースト12を乾燥させて形成される電極合材層13にひび割れが生じるのを抑制することができる。
【0044】
なお、本実施形態の乾燥装置1では、上部ファン2から送出する熱風の温度を、150℃に設定している。また、上部ファン2から送出する熱風の風速は、図2に示す通りである。具体的には、第2ゾーン7gに配置している上部ファン2では、熱風の風速を、5m/secとしている。また、第3ゾーン7hに配置している上部ファン2では、
熱風の風速を、3m/secとしている。
【0045】
次に、実施形態にかかる電極の製造方法について説明する。図3は、実施形態にかかる電極の製造方法を説明する図であり、正極10を製造する工程のフローチャートである。
まず、ステップS1(第1塗工工程)において、第1面11b及び第2面11cを有する正極集電部材11の第1面11bに、正極合材ペースト12を塗工する(図4参照)。具体的には、図示しない塗工装置を用いて、一定速度で送られてくる正極集電部材11の第1面11bに、正極合材ペースト12を塗工して、第1ペースト塗工部材10Bを作製する(図4参照)。
【0046】
なお、本実施形態では、第1面11bに塗工する正極合材ペースト12の目付量を10mg/cm2 以上(例えば、20mg/cm2 )としている。正極合材ペースト12の目付量を10mg/cm2 以上と大きくすることで、正極10を高容量とし、ひいては電池を高容量にすることができる。
【0047】
また、正極集電部材11として、厚さ15μmのアルミニウム箔を用いている。また、正極合材ペースト12として、正極活物質(LiNi1/3Co1/3Mn1/32)と導電材(アセチレンブラック)とバインダ(PVDF)とを、正極溶媒(NMP)中に分散させてペースト状にした正極合材ペーストを用いている。正極合材ペースト12の固形分率は、60wt%である。また、正極活物質と導電材とバインダとの混合比は、91:6:3(重量比)としている。
【0048】
次いで、ステップS2(第1乾燥工程)に進み、正極集電部材11の第1面11bに塗工した正極合材ペースト12を乾燥させる。具体的には、正極集電部材11の第1面11bに正極合材ペースト12を塗工した第1ペースト塗工部材10Bを、一定速度で送りつつ、前述した乾燥装置1の乾燥炉7内を通過させることにより、正極合材ペースト12を乾燥させる。これにより、正極合材ペースト12から正極溶媒(NMP)を取り除いて(蒸発させて)、正極集電部材11の第1面11bに正極合材層13を形成する(図5参照)。
【0049】
前述のように、ステップS2(第1乾燥工程)の乾燥初期段階では、第1ペースト塗工部材10Bに対し、第1面11b側から加える熱量よりも第2面11c側から加える熱量を大きくして、正極合材ペースト12を乾燥させる。すなわち、乾燥初期段階では、正極合材ペースト12を塗工した第1面11b側よりも、正極合材ペースト12を塗工していない第2面11c側から加える熱量を大きくして、正極合材ペースト12を乾燥させる。これにより、第1乾燥工程において、第1面11bに塗工された正極合材ペースト12の内部(正極集電部材11側)の乾燥を早めることができ、その結果、正極合材ペースト12を乾燥させて形成される電極合材層13にひび割れが生じるのを抑制することができる。
【0050】
また、本実施形態では、第1乾燥工程において、正極合材ペースト12の乾燥時間を、[目付量(mg/cm2 )/乾燥時間(秒)]≧0.3を満たす時間に設定する。例えば、正極集電部材11の第1面11bに塗工した正極合材ペースト12の目付量を20mg/cm2 とした場合、正極合材ペースト12の乾燥時間を66.7秒以内とする。具体的には、正極合材ペースト12の目付量を20mg/cm2 とした場合、第1ペースト塗工部材10Bが、乾燥装置1の乾燥炉7の入口7bを通過してから、出口7cに到達するまでの時間が66.7秒以内となるように、第1ペースト塗工部材10Bの送り速度を設定する。
【0051】
このように、乾燥時間を短くすることで、正極合材ペースト12の目付量を大きくしつつも、正極10の生産効率を高くすることができる。なお、正極合材ペースト12の乾燥時間を、[目付量(mg/cm2 )/乾燥時間(秒)]≧0.3を満たす時間に短くするにも拘わらず、正極合材ペースト12を適切に乾燥させるために、本実施形態では、乾燥温度(熱風の温度)を150℃と高くしている。
【0052】
ところで、正極合材ペーストの目付量を10mg/cm2 以上と大きくした場合において、特許文献1のように、第1ヒータファン(上部ファン)と第2ヒータファン(下部ファン)とについて、送出される熱風の温度及び風量を等しい値として、第1ペースト塗工部材に対し、第1面側に配置された第1ヒータファン(上部ファン)から熱風を当てると共に、第2面側に配置された第2ヒータファン(下部ファン)からも熱風を当てることによって、正極合材ペーストを乾燥させた場合には、電極合材層にひび割れが生じ易かった。その上、高温で短時間で乾燥させた場合、具体的には、例えば、[目付量(mg/cm2 )/乾燥時間(秒)]≧0.3を満たす乾燥時間で、乾燥温度を150℃程度に設定して、正極合材ペーストを乾燥させた場合には、特にひび割れが生じやすくなる傾向にあった。
【0053】
これに対し、本実施形態では、前述のように、第1乾燥工程の乾燥初期段階において、第1ペースト塗工部材10Bに対し、正極集電部材11の第1面11b側から加える熱量よりも第2面11c側から加える熱量を大きくして、正極合材ペースト12を乾燥させる。すなわち、乾燥初期段階では、正極合材ペースト12を塗工した第1面11b側よりも、正極合材ペースト12を塗工していない第2面11c側から加える熱量を大きくして、正極合材ペースト12を乾燥させる。これにより、上述のような目付量及び乾燥時間に設定しても、正極合材ペースト12を乾燥させて形成される電極合材層13にひび割れが生じるのを抑制することができる。
【0054】
次に、ステップS3(第2塗工工程)に進み、正極合材ペースト12を、正極集電部材11の第2面11cにも塗工する。具体的には、図示しない塗工装置を用いて、ステップS1,S2を経て第1面11bに正極合材層13が形成された正極集電部材11の第2面11cに、正極合材ペースト12を塗工して、第2ペースト塗工部材10Cを作製する(図6参照)。
【0055】
なお、本実施形態では、第2面11cに塗工する正極合材ペースト12の目付量を10mg/cm2 以上(例えば、20mg/cm2 )としている。正極合材ペースト12の目付量を10mg/cm2 以上と大きくすることで、正極10を高容量とし、ひいては電池を高容量にすることができる。
【0056】
次いで、ステップS4(第2乾燥工程)に進み、正極集電部材11の第2面11cに塗工した正極合材ペースト12を乾燥させる。具体的には、正極集電部材11の第2面11cに正極合材ペースト12を塗工した第2ペースト塗工部材10Cを、一定速度で送りつつ、前述した乾燥装置1の乾燥炉7内を通過させることにより、正極合材ペースト12を乾燥させる。これにより、正極合材ペースト12から正極溶媒(NMP)を取り除いて(蒸発させて)、正極集電部材11の第2面11cにも正極合材層13を形成する(図7参照)。
【0057】
前述のように、ステップS4(第2乾燥工程)の乾燥初期段階では、第2ペースト塗工部材10Cに対し、第2面11c側から加える熱量よりも第1面11b側から加える熱量を大きくして、正極合材ペースト12を乾燥させる。すなわち、乾燥初期段階では、正極合材ペースト12を塗工した第2面11c側よりも、正極合材ペースト12を塗工していない(既に、正極合材層13が形成されている)第1面11b側から加える熱量を大きくして、正極合材ペースト12を乾燥させる。これにより、第2乾燥工程においても、第2面11cに塗工された正極合材ペースト12の内部(正極集電部材11側)の乾燥を早めることができ、その結果、正極合材ペースト12を乾燥させて形成される電極合材層13にひび割れが生じるのを抑制することができる。
【0058】
また、本実施形態では、第1乾燥工程と同様に、第2乾燥工程においても、正極合材ペースト12の乾燥時間を、[目付量(mg/cm2 )/乾燥時間(秒)]≧0.3を満たす時間に設定する。例えば、正極集電部材11の第2面11cに塗工した正極合材ペースト12の目付量を20mg/cm2 とした場合、正極合材ペースト12の乾燥時間を66.7秒以内とする。具体的には、正極合材ペースト12の目付量を20mg/cm2 とした場合、第2ペースト塗工部材10Cが、乾燥装置1の乾燥炉7の入口7bを通過してから、出口7cに到達するまでの時間が66.7秒以内となるように、第2ペースト塗工部材10Cの送り速度を設定する。
【0059】
その後、ステップS5(圧縮成形工程)に進み、正極集電部材11の第1面11b及び第2面11cに形成した正極合材層13を圧縮成形することで、正極板10が完成する(図8参照)。このような製造方法によれば、電極合材層13にひび割れが生じるのを抑制することができる。
上述のようにして製造した正極10は、例えば、リチウムイオン二次電池の正極として用いることができる。
【0060】
(比較形態)
次に、比較形態について説明する。図10は、比較形態にかかる乾燥装置301の概略図である。乾燥装置301は、実施形態の乾燥装置1と比較して、上部ファン2を第1ゾーン7fにも設け、第2ゾーン7gにも増設している点が異なる。また、上部ファン2と下部ファン3から送出される熱風の風速を全て等しく(具体的には、全て3m/秒)している点も異なる。その他については実施形態の乾燥装置1と同様である。
【0061】
従って、比較形態の乾燥装置301では、第1乾燥工程において、第1面11bに塗工された正極合材ペースト12の乾燥初期段階から乾燥終期にわたって、第1ペースト塗工部材10Bに対し、下部ファン3によって第2面11c側(図10において下側)から熱風を当てると共に、上部ファン2によって第1面11b側(図10において上側)からも熱風を当てるようにしている。第2乾燥工程においても同様である。このような乾燥方法は、前述の特許文献1と同様である。
【0062】
(乾燥試験)
ここで、比較形態の乾燥装置301を用いて行った、乾燥試験の結果について説明する。この乾燥試験では、正極集電部材11の第1面11bに塗工する正極合材ペースト12の目付量W(mg/cm2)を、5.85、12.5、20、の3種類に異ならせた
サンプルを作製し、それぞれのサンプルについて、乾燥装置301による乾燥時間T(秒)を変動させて、正極合材ペースト12を乾燥させて形成される正極合材層のひび割れの有無を調査した。この結果を図11に示す。なお、図11では、ひび割れが生じたものを×、ひび割れが生じなかったものを○で示している。また、図11で破線で示す直線は、目付量W(mg/cm2)/乾燥時間T(秒)=0.3の関係を満たす直線である。
【0063】
図11に示すように、正極合材ペースト12の目付量Wを5.85mg/cm2 とした場合は、乾燥装置301による乾燥時間を18秒として正極合材ペースト12を乾燥させても、ひび割れは発生しなかった。すなわち、目付量W(mg/cm2)/乾燥時間T(秒)=5.85/18=0.325≧0.3としても、正極合材ペースト12を乾燥させた塗膜(正極合材層)にひび割れは発生しなかった。
【0064】
ところが、正極合材ペースト12の目付量Wを12.5mg/cm2 と増大させた場合は、乾燥装置301による乾燥時間を38.5秒として正極合材ペースト12を乾燥させたとき、ひび割れが発生した。すなわち、正極合材ペースト12の目付量Wを12.5mg/cm2 とした場合において、目付量W(mg/cm2)/乾燥時間T(秒)=12.5/38.5=0.325≧0.3に設定して、正極合材ペースト12を乾燥させたところ、正極合材ペースト12を乾燥させた塗膜(正極合材層)にひび割れが発生してしまった。さらに、乾燥時間を徐々に長くしてゆき、ひび割れが生じることなく正極合材ペースト12を乾燥させることができる乾燥時間を調査した。その結果、乾燥時間を180秒以上と長い時間をかけて乾燥させることで、ひび割れが生じることなく正極合材ペースト12を乾燥させることができることがわかった。
【0065】
さらに、正極合材ペースト12の目付量Wを20mg/cm2 と増大させた場合は、乾燥装置301による乾燥時間を61.5秒として正極合材ペースト12を乾燥させたとき、ひび割れが発生した。すなわち、正極合材ペースト12の目付量Wを20mg/cm2 とした場合において、目付量W(mg/cm2)/乾燥時間T(秒)=12.5/
61.5=0.325≧0.3に設定して、正極合材ペースト12を乾燥させたところ、正極合材ペースト12を乾燥させた塗膜(正極合材層)にひび割れが発生してしまった。さらに、乾燥時間を徐々に長くしてゆき、ひび割れが生じることなく正極合材ペースト12を乾燥させることができる乾燥時間を調査した。その結果、乾燥時間を450秒以上と長い時間をかけて乾燥させることで、ひび割れが生じることなく正極合材ペースト12を乾燥させることができることがわかった。
【0066】
これに対し、実施形態の乾燥装置1を用いて、上述の乾燥試験を行ったところ、正極合材ペースト12の目付量Wを5.85mg/cm2 とした場合は、乾燥時間を18秒として正極合材ペースト12を乾燥させたとき、ひび割れは発生しなかった。すなわち、目付量W(mg/cm2)/乾燥時間T(秒)=5.85/18=0.325≧0.3としても、正極合材ペースト12の塗膜(正極合材層)にひび割れは発生しなかった。
【0067】
さらに、実施形態の乾燥装置1を用いて、正極合材ペースト12の目付量Wを12.5mg/cm2 と増大させたサンプルについて、乾燥時間を38.5秒として正極合材ペースト12を乾燥させたときも、ひび割れは発生しなかった。すなわち、正極合材ペースト12の目付量Wを12.5mg/cm2 とした場合において、目付量W(mg/cm2)/乾燥時間T(秒)=12.5/38.5=0.325≧0.3に設定して、正極合材ペースト12を乾燥させた場合でも、正極合材ペースト12を乾燥させた塗膜(正極合材層)にひび割れは発生しなかった。
【0068】
さらに、実施形態の乾燥装置1を用いて、正極合材ペースト12の目付量Wを20mg/cm2 と増大させたサンプルについて、乾燥時間を61.5秒として正極合材ペースト12を乾燥させたときも、ひび割れは発生しなかった。すなわち、正極合材ペースト12の目付量Wを20mg/cm2 とした場合において、目付量W(mg/cm2)/乾燥時間T(秒)=20/61.5=0.325≧0.3に設定して、正極合材ペースト12を乾燥させた場合でも、正極合材ペースト12を乾燥させた塗膜(正極合材層)にひび割れは発生しなかった。
【0069】
以上の結果より、正極集電部材の第1面に塗工する正極合材ペーストの目付量Wを10mg/cm2 以上とした場合において、上部ファンと下部ファンとについて、送出される熱風の温度及び風量を等しい値として、第1ペースト塗工部材(電極集電部材の第1面に電極合材ペーストを塗工したもの)に対し、第1面側に配置された上部ファンから熱風を当てると共に、第2面側に配置された下部ファンからも熱風を当てることによって、電極合材ペーストを乾燥させた場合には、電極合材ペーストを乾燥させた電極合材層にひび割れが生じ易くなるといえる。特に、電極合材ペーストの乾燥時間を、[目付量(mg/cm2 )/乾燥時間(秒)]≧0.3を満たす時間に設定して、電極合材ペーストを乾燥させた場合に、ひび割れが生じやすくなるといえる。
【0070】
これに対し、正極集電部材の第1面に塗工する正極合材ペーストの目付量Wを10mg/cm2 以上とした場合において、実施形態のように、乾燥初期段階において、第1ペースト塗工部材10Bに対し、正極集電部材11の第1面11b側から加える熱量よりも第2面11c側から加える熱量を大きくして、正極合材ペースト12を乾燥させることで、正極合材ペースト12を乾燥させて形成される電極合材層13にひび割れが生じるのを抑制することができるといえる。すなわち、乾燥初期段階では、正極合材ペースト12を塗工した第1面11b側よりも、正極合材ペースト12を塗工していない第2面11c側から加える熱量を大きくして、正極合材ペースト12を乾燥させることで、電極合材層13にひび割れが生じるのを抑制することができるといえる。この方法は、特に、電極合材ペーストの乾燥時間を、[目付量(mg/cm2 )/乾燥時間(秒)]≧0.3を満たす時間に設定して、電極合材ペーストを乾燥させた場合に有効であるといえる。
【0071】
なお、上述の乾燥試験を、第2乾燥工程に適用した場合も、同様な結果となった。すなわち、正極集電部材11の第1面11bに正極合材ペースト12を塗工し、乾燥させた後、正極集電部材11の第2面11cに正極合材ペースト12を塗工した各サンプルについて、上述の乾燥試験を行ったところ、同様な結果となった。
【0072】
(変形形態)
次に、本発明の変形形態について説明する。
本変形形態の乾燥装置101は、図9に示すように、実施形態の乾燥装置1について、第1ゾーン7fの2つの下部ファン3、及び、第2ゾーン7gの入口7b側の下部ファン3を、赤外線ヒータ103に代えたものである。従って、本変形形態の乾燥装置101を用いることで、第1乾燥工程の乾燥初期段階において、正極集電部材11の第1面11bに正極合材ペースト12が塗工された第1ペースト塗工部材10Bに対し、第2面11c側から赤外線を照射することができる。また、第2乾燥工程の乾燥初期段階においても、正極集電部材11の第2面11cに正極合材ペースト12が塗工された第2ペースト塗工部材10Cに対し、第1面11b側から赤外線を照射することができる。
【0073】
本変形形態では、第1乾燥工程の乾燥初期段階において、正極集電部材11の第1面11bに正極合材ペースト12が塗工された第1ペースト塗工部材10Bに対し、第1面11b側から赤外線を照射することなく(熱風を当てることもなく)、第2面11c側から赤外線を照射して加熱するようにした。さらに、第2乾燥工程の乾燥初期段階において、正極集電部材11の第2面11cに正極合材ペースト12が塗工された第2ペースト塗工部材10Cに対し、第2面11c側から赤外線を照射することなく(熱風を当てることもなく)、第1面11b側から赤外線を照射して加熱するようにした。
【0074】
これにより、本変形形態でも、実施形態と同様に、第1乾燥工程の乾燥初期段階において、正極集電部材11の第1面11bに正極合材ペースト12が塗工された第1ペースト塗工部材10Bに対し、第1面11b側から加える熱量よりも第2面11c側から加える熱量を大きくして、正極合材ペースト12を乾燥させることができる。すなわち、第1面11bに塗工した正極合材ペースト12の乾燥初期段階では、正極合材ペースト12を塗工した第1面11b側よりも、正極合材ペースト12を塗工していない第2面11c側から加える熱量を大きくして、正極合材ペースト12を乾燥させることができる。これにより、第1乾燥工程において、第1面11bに塗工された正極合材ペースト12の内部(正極集電部材11側)の乾燥を早めることができ、その結果、正極合材ペースト12を乾燥させて形成される電極合材層13にひび割れが生じるのを抑制することができる。第2乾燥工程においても同様に、正極集電部材11の第2面11cに形成される電極合材層13にひび割れが生じるのを抑制することができる。
【0075】
以上において、本発明を実施形態及び変形形態に即して説明したが、本発明は上記実施形態等に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できることは言うまでもない。
【0076】
例えば、実施形態等では、本発明の電極の製造方法を、正極の製造方法に適用した例で説明した。しかしながら、本発明の電極の製造方法は、負極の製造方法にも適用することができる。
【符号の説明】
【0077】
1,101 乾燥装置
2 上部ファン
3 下部ファン
7 乾燥炉
10 正極(電極)
10B 第1ペースト塗工部材
10C 第2ペースト塗工部材
11 正極集電部材(電極集電部材)
11b 正極集電部材の第1面(電極集電部材の第1面)
11c 正極集電部材の第2面(電極集電部材の第2面)
12 正極合材ペースト(電極合材ペースト)
13 正極合材層(電極合材層)
103 赤外線ヒータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面及び第2面を有する電極集電部材の上記第1面に、電極合材ペーストを塗工する第1塗工工程と、
上記第1面に塗工した上記電極合材ペーストを乾燥させる第1乾燥工程と、を備える
電極の製造方法において、
上記第1乾燥工程は、
乾燥初期段階において、上記電極集電部材の上記第1面に上記電極合材ペーストが塗工された第1ペースト塗工部材に対し、上記第1面側から加える熱量よりも上記第2面側から加える熱量を大きくして、上記電極合材ペーストを乾燥させる
電極の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の電極の製造方法であって、
前記第1乾燥工程は、
前記乾燥初期段階において、前記第1ペースト塗工部材に対し、前記第2面側から熱風を当てる
電極の製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載の電極の製造方法であって、
前記第1乾燥工程は、
前記乾燥初期段階において、前記第1ペースト塗工部材に対し、前記第2面側から赤外線を照射する
電極の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の電極の製造方法であって、
前記第1塗工工程では、前記第1面に塗工する前記電極合材ペーストの目付量を10mg/cm2 以上とし、
前記第1乾燥工程では、上記電極合材ペーストの乾燥時間を、[目付量(mg/cm2 )/乾燥時間(秒)]≧0.3を満たす時間に設定する
電極の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の電極の製造方法であって、
前記第1乾燥工程の後、前記電極集電部材の前記第2面に電極合材ペーストを塗工する第2塗工工程と、
上記第2面に塗工した上記電極合材ペーストを乾燥させる第2乾燥工程と、を備え、
上記第2乾燥工程は、
乾燥初期段階において、上記電極集電部材の上記第2面に上記電極合材ペーストが塗工された第2ペースト塗工部材に対し、上記第2面側から加える熱量よりも前記第1面側から加える熱量を大きくして、上記電極合材ペーストを乾燥させる
電極の製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載の電極の製造方法であって、
前記第2乾燥工程は、
前記乾燥初期段階において、前記第2ペースト塗工部材に対し、前記第1面側から熱風を当てる
電極の製造方法。
【請求項7】
請求項5に記載の電極の製造方法であって、
前記第2乾燥工程は、
前記乾燥初期段階において、前記第2ペースト塗工部材に対し、前記第1面側から赤外線を照射する
電極の製造方法。
【請求項8】
請求項5〜請求項7のいずれか一項に記載の電極の製造方法であって、
前記第2塗工工程では、前記第2面に塗工する前記電極合材ペーストの目付量を10mg/cm2 以上とし、
前記第2乾燥工程では、上記電極合材ペーストの乾燥時間を、[目付量(mg/cm2 )/乾燥時間(秒)]≧0.3を満たす時間に設定する
電極の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−243473(P2012−243473A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−110744(P2011−110744)
【出願日】平成23年5月17日(2011.5.17)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】