説明

電極ホルダ

【課題】電極クリーニング、成形および交換時等における電極のメンテナンスの効率化を実現する電極ホルダを提供する。
【解決手段】電極ホルダ21は、電極5を保持する電極ホルダであって、筒状の本体10と、ノック部1と、チャック8と、締めリング9と、弾性部材7と、電極収納部6と、動作部3とを備える。ノック部1は、本体10の上側に設けられ、本体10に対して軸方向に相対移動可能である。チャック8と締めリング9と弾性部材7とは、本体10の下側に設けられ、電極5の繰り出しを行う。電極収納部6は、チャック8と連結され、電極5をチャック8に供給する。動作部3は、電極収納部6の上側に固定されるとともに、ノック部1が上側に着脱可能に取り付けられる。ノック部1が下側に押下されると、動作部3と電極収納部6とチャック8と締めリング9と弾性部材7とが下側に押動されるとともにチャック8が電極5を適量繰り出す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極ホルダ、特に、発光分光分析装置に用いられる電極ホルダに関する。
【背景技術】
【0002】
発光分光分析装置には電極ホルダに保持された電極と試料との間で放電発光させる発光スタンドを備えたものがある。発光スタンドには、電極ホルダを長さ方向に出し入れ自在に挿入固定する装着孔が形成されているとともに、この装着孔の内側に向かって弾力的に突出する複数の係止ピンが設けられている。電極ホルダの外周面には、係止ピンと係合する周溝が形成されているとともに、装着孔の内周面に密着するOリングが設けられている。
発光分光分析を上記の発光分光分析装置で行うと、放電発光によって電極が消耗し、変形する。そのため分析を行う度、あるいは数十回分析を行う度に電極のクリーニングおよび電極の先端の成形を行う必要がある。
電極のクリーニング、成形および交換時には、電極ホルダの外端部を手で持ち発光スタンドの装着孔から電極ホルダを取り外し、電極ホルダから電極を取り外し、電極のクリーニング、成形および交換を行い、電極ホルダに電極を取り付け、電極ホルダを装着孔に取り付ける、といった工程が必要となる。
【特許文献1】特開平9−325117
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の構成では、発光スタンドと電極ホルダとの間、電極ホルダと電極との間において、2段階の挿脱手順が必要となり、電極のメンテナンスに時間がかかるという課題を有している。
そこで本発明は、かかる従来技術の問題点を解決するべくなされたものであり、電極クリーニング、成形および交換時等における電極のメンテナンスの効率化を実現する電極ホルダを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
第1の発明としての電極ホルダは、電極を保持する電極ホルダであって、筒状の電極ホルダ本体と、ノック部と、電極繰り出し部と、電極収納部と、動作部とを備える。ノック部は、電極ホルダ本体の軸方向一端側に設けられ、電極ホルダ本体に対して軸方向に相対移動可能である。電極繰り出し部は、電極ホルダ本体の軸方向他端側に設けられ、電極の繰り出しを行う。電極収納部は、電極繰り出し部と連結され、電極を電極繰り出し部に供給する。動作部は、電極収納部の軸方向一端側に固定されるとともに、ノック部が軸方向一端側に着脱可能に取り付けられる。ノック部が軸方向他端側に押下されると、動作部と電極収納部と電極繰り出し部とが軸方向他端側に押動されるとともに電極繰り出し部が電極を適量繰り出す。軸方向他端側への押下が解除されると、動作部と電極収納部と電極繰り出し部とが初期状態に変位する。
第2の発明としての電極ホルダは、第1の発明であって、電極繰り出し部は、チャック部と、締めリングと、弾性部材とを有する。チャック部は、周方向複数箇所において軸方向に延びるスリットを有し、ノック部が押下されると拡径し、押下が解除されると縮径する。締めリングは、チャック部を外嵌する。弾性部材は、電極収納部の軸方向他端側の端部に当接し、電極収納部およびチャック部を軸方向一端側に弾性支持する。
【0005】
第3の発明としての電極ホルダは、第2の発明であって、電極ホルダ本体の軸方向他端側には、軸方向一端側に向けて段階的に大径となる3つの孔が形成されている。最も軸方向他端側に位置する第1孔は、電極の径よりも大径かつチャック部の径よりも小径である。第1孔に隣接する第2孔は、チャック部の径よりも大径かつ締めリングの径よりも小径である。第2孔に隣接する第3孔は、締めリングの径よりも大径である。
第4の発明としての電極ホルダは、第1〜第3の発明であって、電極ホルダ本体の軸方向一端側において、軸方向相対位置が調節可能に固定され、動作部の動作量を調節する動作支持部をさらに備える。
第5の発明としての電極ホルダは、第1〜第4の発明であって、電極ホルダ本体の内周側面に形成された当接部に当接し、動作部を軸方向一端側に向けて弾性支持する弾性部材をさらに備える。
第6の発明としての電極ホルダは、第4または第5の発明であって、電極ホルダ本体に取り付けられた不活性ガス供給用ノズルと、動作部と動作支持部との間をシールするシール部材とをさらに備える。
【発明の効果】
【0006】
第1の発明によれば、ノック部を押圧する操作により、電極の突出量の変更、電極の抜脱が容易に行うことができる。
第2の発明によれば、チャック部により電極の確かな把持が可能となり、弾性部材によりノック部の押圧を解除するとともに、チャック部、電極収納部をノック部押圧前の状態にすることができる。
第3の発明によれば、ノック部操作時の電極の繰り出し、抜き取りを円滑に行うことができる。
第4の発明によれば、動作支持部の位置を調節することで、動作部の動作量を調節し、ひいては1回のノック部の押圧による電極の繰り出し量の調整を容易に行うことができる。
請求項5の発明によれば、弾性部材によりノック部の操作による繰り出し量を一定にすることができる。
請求項6の発明によれば、不活性ガス供給用ノズルより不活性ガスを供給して発光分光分析を行う場合などに、ガス漏れを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の発光分光分析装置の構成を示す構成図である。発光分光分析装置30は、電極ホルダ21と、発光部22と、集光部24と、分光部25と、演算部26とを備えている。電極ホルダ21は、試料23に対向配置される電極5(図2参照)を保持する。発光部22は、試料23と電極5との間に高い電圧を加えて放電させ、試料23の原子を励起して発光させる。集光部24は、試料23から発光した光を集光する。分光部25は、集光部24により集光された光を、例えば回折格子などにより輝線スペクトルに分解する。演算部26は、発光部22や分光部25などを制御するとともに、分光部25により得られた輝線スペクトルの強度を測定し、試料23中の元素の量を推定する。
図2は本発明の電極ホルダ21の使用開始時(初期状態)における側面図である。
本発明の電極ホルダ21は、図1に示すようにノック部1と筒状の本体10とを有する。なお、以下の説明では、本体10の長手方向に沿った方向を軸方向と呼び、ノック部1が取り付けられている側を上側、その反対側を下側と呼ぶが、これは電極ホルダ21の取り付け姿勢を限定するものではない。
本体10には、動作支持部2と、動作部3と、弾性部材4と、電極収納部6と、チャック8と、締めリング9と、弾性部材7と、電極5とが主に設けられている。動作支持部2と動作部3と弾性部材4とにより、ノック部1の動きを受ける動作部分が構成される。チャック8と締めリング9と弾性部材7とにより、電極5の繰り出し機能が発揮される。具体的には、チャック8は、略円筒状部材の周方向複数箇所(例えば3箇所)を軸方向に延びるスリットで分割したような断面略扇状の部材をそれぞれ組み合わせることにより構成されている。チャック8は、締めリング9により下側外周が覆われている場合に電極5を把持し、締めリング9が上側に相対移動し、チャック8の下側外周が開放されている場合には、電極5の把持を開放する。
【0008】
動作支持部2の外周面は、本体10の内周面に対して螺合されている。本体10の内周面には、環状の突出部が形成されている。さらに、動作部3の外周面には、環状の係止部13が形成されている。この環状の突出部と係止部13とは、ノック部1の動作方向(軸方向)に対向配置されており、それぞれの間には、バネなどで構成された弾性部材4が取り付けられている。
締めリング9は、チャック8の下側にあって、通常はチャック8の先端を覆うように取り付けられている。電極収納部6は、チャック8と螺合されており、電極収納部6の下端の係止部14と締めリング9の外周に位置する締めリング押さえ12の上端の係止部15との間には、バネなどで構成された弾性部材7が取り付けられている。
ノック部1を押下すると、ノック部1に嵌合してある動作部3が連動して押下され、動作部3に嵌合されている電極収納部6もさらに押下される。電極収納部6が押下されると、電極収納部6は、螺合したチャック8およびチャック8を緊締する締めリング9を押し下げ、さらにチャック8により把持されていた電極5も押し下げる。
本体10の先端には、先端側から第1孔16、第2孔17、第3孔18が同心状に形成されている。第1孔16は、第2孔17よりも小径であり、第2孔17は第3孔18よりも小径である。これにより、本体10の先端には、上側に向く第1係止面19と、第2係止面20とが形成されている。
【0009】
チャック8の先端側(下端側)の外径は第2孔17よりも小径であり、締めリング9の先端側(下端側)の外径は、第2孔17よりも大径である。このため、チャック8と締めリング9とが第3孔18から第2孔17に向かって押し下げられると、締めリング9は、第2係止面20に当接し、停止する。その一方、チャック8は、第2孔17に侵入する。このため、結果的に締めリング9からチャック8の先端が突出し、縮径されていたチャック8の先端が開き、把持していた電極5を開放する。チャック8の先端側の外径は第1孔16よりも大径である。このため、チャック8は第2孔17に侵入後、第1係止面19に当接し、停止する。
ノック部1の押下をやめ開放すると、電極収納部6の係止部14と締めリング押さえ12の係止部15との間に設けられた弾性部材7のために、チャック8、締めリング9、電極収納部6、動作部3、ノック部1が初期状態に戻る。すなわち、チャック8の先端は締めリング9により再び緊締され、電極5を把持する。
ここで、本体10より突出した電極5の長さの調整について説明する。ノック部1を押下した状態ではチャック8による電極5の把持が解除された状態となる。このため、ノック部1を押下した状態で、電極5の先端位置を調整することが可能となる。例えば、電極5の先端を上側に押し込んだり、下側に引っ張ったりすることにより、電極5の突出長さを変更したり、電極収納部6に収納することが可能である。
【0010】
動作支持部2は本体10に螺合されており、動作支持部2を本体10に対して回転させることにより、動作支持部2を本体10に対して軸方向に位置調節可能である。動作支持部2の位置調節を行うことにより、動作支持部2の下端が動作部3の上端に当接して、動作部3の初期位置を変化させる。これにより動作部3の可動範囲が変更され、1回のノック部1の押下による動作部3の移動量を任意に設定することが可能である。弾性部材4は、動作支持部2をノック部1側に弾性的に支持しており、動作支持部2の安易な移動を防ぎ、電極5の送出量を安定させる。
なお、本実施形態では不活性ガスを使用しない場合について説明したが、本発明の電極ホルダ21は、不活性ガスを使用する使用しないにかかわらず適用できる。不活性ガスを使用する場合には、シールリング11を必要とする。また、ガスホースは本体10に取り付けられる。
また、本発明の電極ホルダ21は、その取り付け姿勢を変更して用いることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0011】
本発明の電極ホルダでは、電極のメンテナンスを容易に行うことが求められる分野において利用可能であり、発光分光分析装置の電極ホルダとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の発光分光分析装置の構成を示す構成図
【図2】本発明の電極ホルダの使用開始時における側面図
【符号の説明】
【0013】
1 ノック部
2 動作支持部
3 動作部
4 弾性部材
5 電極
6 電極収納部
7 弾性部材
8 チャック
9 締めリング
10 本体
11 シールリング
12 締めリング押さえ
13 係止部
14 係止部
15 係止部
16 第1孔
17 第2孔
18 第3孔
19 第1係止面
20 第2係止面
21 電極ホルダ
22 発光部
23 試料
24 集光部
25 分光部
26 演算部



【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極を保持する電極ホルダであって、
筒状の電極ホルダ本体と、
前記電極ホルダ本体の軸方向一端側に設けられ、前記電極ホルダ本体に対して前記軸方向に相対移動可能なノック部と、
前記電極ホルダ本体の前記軸方向他端側に設けられ、前記電極の繰り出しを行う電極繰り出し部と、
前記電極繰り出し部と連結され、前記電極を前記電極繰り出し部に供給する電極収納部と、
前記電極収納部の前記軸方向一端側に固定されるとともに、前記ノック部が前記軸方向一端側に着脱可能に取り付けられる動作部と、
を備え、
前記ノック部が前記軸方向他端側に押下されると、前記動作部と前記電極収納部と前記電極繰り出し部とが前記軸方向他端側に押動されるとともに前記電極繰り出し部が前記電極を繰り出し、前記軸方向他端側への押下が解除されると、前記動作部と前記電極収納部と前記電極繰り出し部とが初期状態に変位する、
電極ホルダ。
【請求項2】
前記電極繰り出し部は、
周方向複数箇所において前記軸方向に延びるスリットを有し、前記ノック部が押下されると拡径し、押下が解除されると縮径するチャック部と、
前記チャック部を外嵌する締めリングと、
前記電極収納部の前記軸方向他端側の端部に当接し、前記電極収納部および前記チャック部を前記軸方向一端側に弾性支持する弾性部材と、
を有する、
請求項1に記載の電極ホルダ。
【請求項3】
前記電極ホルダ本体の前記軸方向他端側には、前記軸方向一端側に向けて段階的に大径となる3つの孔が形成されており、最も前記軸方向他端側に位置する第1孔は、前記電極の径よりも大径かつ前記チャック部の径よりも小径であり、前記第1孔に隣接する第2孔は、前記チャック部の径よりも大径かつ前記締めリングの径よりも小径であり、前記第2孔に隣接する第3孔は、前記締めリングの径よりも大径である、
請求項2に記載の電極ホルダ。
【請求項4】
前記電極ホルダ本体の前記軸方向一端側において、軸方向相対位置が調節可能に固定され、前記動作部の動作量を調節する動作支持部、
をさらに備える、
請求項1〜3のいずれか1項に記載の電極ホルダ。
【請求項5】
前記電極ホルダ本体の内周側面に形成された当接部に当接し、前記動作部を前記軸方向一端側に向けて弾性支持する弾性部材、
をさらに備える、
請求項1〜4のいずれか1項に記載の電極ホルダ。
【請求項6】
前記電極ホルダ本体に取り付けられた不活性ガス供給用ノズルと、
前記動作部と前記動作支持部との間をシールするシール部材と、
をさらに備える、
請求項4または5に記載の電極ホルダ。


【図1】
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【図2】
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