説明

電極合材の製造方法及び電極合材

【課題】内部抵抗、特に界面抵抗の低い電極合材を提供する。
【解決手段】電極活物質と固体電解質とを含む、電極合材の製造方法であって、電極活物質及び固体電解質を含有する混合体を準備する準備工程と、前記混合体を熱処理し、前記電極活物質及び前記固体電解質の融解及び再晶出を行う熱処理工程と、を備える製造方法、並びに、電極活物質及び固体電解質を含有する電極合材であって、空隙率が5%以下である電極合材

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極合材の製造方法及び電極合材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パソコン、ビデオカメラ、携帯電話等の情報関連機器や通信機器等の急速な普及に伴い、その電源として利用される電池の開発が重要視されている。また、自動車産業界においても、電気自動車やハイブリッド自動車用の高出力且つ高容量の電池の開発が進められている。各種電池の中でも、エネルギー密度と出力が高いことから、リチウム電池が注目されている。
【0003】
リチウム電池は、一般的に、正極活物質を含む正極活物質層と、負極活物質を含む負極活物質と、これら電極活物質層の間に介在する電解質層とを有し、さらに、必要に応じて、正極活物質層の集電を行う正極集電体や負極活物質層の集電を行う負極集電体とを有する。
正極活物質層と負極活物質層との間に配置される電解質層として、可燃性の有機電解液を用いるリチウム電池は、液漏れの他、短絡や過充電などを想定した安全対策が欠かせない。特に、高出力、高容量の電池は、さらなる安全性の向上が求められる。そこで、電解質として、硫化物系固体電解質や酸化物系固体電解質等の固体電解質を用いた全固体リチウム二次電池等、全固体電池の研究開発も進められている。
【0004】
固体電解質を用いた全固体電池では、正極活物質層や負極活物質層におけるイオン伝導性を向上させるべく、これら電極活物質層を電極活物質及び固体電解質を含む電極合材で形成することが提案されている。電極活物質層を電極合材で形成する方法として、例えば、特許文献1〜4に記載された方法が挙げられる。
具体的には、特許文献1には、電極活物質を含む複数の第1粒子と固体電解質を含む複数の第2粒子とが混合されてなる電極合材層を有するリチウム電池用電極体が開示されている。特許文献1において、電極合材層は、電極活物質(例えば、LiMn、LiTi12など)を含む複数の第1粒子と固体電解質(例えば、Li0.35La0.55TiOなど)を含む複数の第2粒子とを混合し、混合物を、一般的なペレット成型と同様にして加熱加圧することによって、形成されている(段落0037)。
また、特許文献2には、負極層の形成方法として、まず、Li0.35La0.55TiOの前駆体溶液とLiTi12の粉末とを混合した負極用ペーストを、固体電解質層上に塗布した後、800℃で焼成し、多孔質性の負極層を形成した後、上記前駆体溶液を多孔質の負極層に含浸させて800℃で焼成する処理を2回繰り返す方法が記載されている。
また、特許文献3には、Li0.35La0.55TiO等の固体電解質多孔体に、LiTi12等のゾル状の活物質前駆体を充填し、焼成することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−65982号公報
【特許文献2】特開2003−346895号公報
【特許文献3】特開2008−226666号公報
【特許文献4】特開2010−244727号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の方法や、その他従来の製造方法により製造された電極活物質層は、固体電解質と電極活物質との接触形態が点接触であるために、界面抵抗が大きく、その結果内部抵抗も大きいという問題がある。
【0007】
本発明は上記実情を鑑みて成し遂げられたものであり、本発明の目的は、内部抵抗、特に界面抵抗の低い電極合材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の電極合材の製造方法は、電極活物質と固体電解質とを含む、電極合材の製造方法であって、
電極活物質及び固体電解質を含有する混合体を準備する準備工程と、
前記混合体を熱処理し、前記電極活物質及び前記固体電解質の融解及び再晶出を行う熱処理工程と、
を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明の電極合材の製造方法では、電極活物質及び固体電解質を含む混合体を加熱し、一旦、電極活物質及び固体電解質を融解させた後、電極活物質及び固体電解質を再晶出させることによって、電極活物質と固体電解質とが面接触し、空隙の非常に少ない電極合材を得ることができる。
【0010】
前記熱処理工程の具体的な態様としては、前記混合体を前記電極活物質の融点以上且つ前記固体電解質の融点以上の温度まで加熱して液体化させる態様が挙げられる。
また、前記熱処理工程の具体的な態様として、前記混合体を液体化させた後、100℃/sec未満の降温速度で、前記電極活物質の融点未満且つ前記固体電解質の融点未満の温度まで冷却する態様が挙げられる。
【0011】
本発明の電極合材は、電極活物質及び固体電解質を含有する電極合材であって、空隙率が5%以下であることを特徴とする。
本発明の電極合材は、上記のように非常に空隙率が低く、電極活物質と固体電解質とが面接触しているため、従来の電極合材と比較して低い界面抵抗を示す。
【発明の効果】
【0012】
本発明により提供される電極合材は、固体電解質と電極活物質との接触形態が面接触であるため、従来と比較して界面抵抗が非常に低く、その結果、低い内部抵抗を示す。また、本発明により提供される電極合材は、空隙率も低い。従って、本発明の電極合材を用いることによって、電池の出力及び体積エネルギー密度の向上が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】全固体電池の一形態例を示す断面模式図である。
【図2】本発明の電極合材の製造方法例を示す模式図である。
【図3】実施例1における混合体の熱処理条件を示す図である。
【図4】実施例1の電極合材のXRD回折である。
【図5】比較例1の電極合材のXRD回折である。
【図6】実施例1の電極合材のFE−SEMによる反射電子像である。
【図7】比較例1の電極合材のFE−SEMによる反射電子像である。
【図8】実施例1及び比較例1の電極合材の直流抵抗率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[電極合材の製造方法]
以下、本発明の電極合材の製造方法について説明する。
本発明の電極合材の製造方法は、電極活物質と固体電解質とを含む、電極合材の製造方法であって、
電極活物質及び固体電解質を含有する混合体を準備する準備工程と、
前記混合体を熱処理し、前記電極活物質及び前記固体電解質の融解及び再晶出を行う熱処理工程と、
を備えることを特徴とする。
【0015】
図1は、全固体電池の一形態例を示す断面模式図である。図1に示す全固体電池8において、正極1と固体電解質層3と負極2とがこの順序に積層されており、固体電解質が正極1と負極2との間に介在している。正極1は、固体電解質層3側から順に、正極活物質及び固体電解質を含有する正極活物質層4と、該正極活物質層4の集電を行う正極集電体5とを備える。負極2は、固体電解質層3側から順に、負極活物質及び固体電解質を含有する負極活物質層6と、負極活物質層6の集電を行う負極集電体7とを備える。
【0016】
電極活物質(負極活物質又は正極活物質)及び固体電解質を含み、正極活物質層や負極活物質層を形成する電極合材は、従来、一般的には、電極活物質及び固体電解質を混合し、さらに焼結させることで調製されてきた。焼結とは、融点よりも低い温度で加熱された粉体が、表面自由エネルギーを駆動力とする物質移動により結合し、緻密化し焼き固まる現象である。焼結法で調製された、従来の電極合材は、電極活物質と固体電解質との接触形態が点接触であり、それゆえ界面抵抗が高かった。また、焼結法では、電極合材内部に空隙が形成されてしまうため、電極の体積エネルギー密度の低下を招いていた。
【0017】
本発明の電極合材の製造方法では、固体電解質と電極活物質とを含有する混合体を熱処理することによって、固体電解質及び電極活物質を融点以上の温度に加熱し、一旦、融解させて液体化した後、再晶出させる。固体電解質及び電極活物質が混在する状態で、これら固体電解質及び電極活物質を融解、再晶出させることで、固体電解質と電極活物質とが面接触、典型的には全面接触した電極合材を調製することができる。固体電解質と電極活物質とが面接触することで、固体電解質と電極活物質との間のイオン伝導パスが増えるため、本発明により提供される電極合材は、界面抵抗が低く、低内部抵抗を示す。しかも、上記のような融解及び再晶出により面接触した固体電解質と電極活物質とは、界面の接合性が高いため、固体電解質と電極活物質との間のイオン伝導の活性化エネルギーが小さい。このようにイオン伝導の活性化エネルギーが小さいことも、本発明の電極合材の内部抵抗が低くなる理由の一つである。
【0018】
さらに、本発明の電極合材の製造方法では、固体電解質及び電極活物質を、一旦融解させて液体化した後、再晶出させることによって、電極合材内部に空隙が形成されるのを抑制することができ、空隙率を5%以下とすることも可能である。このように空隙率が極めて低い電極合材を用いることによって、電極中の電極活物質が占める割合が高くなるため、電極の体積エネルギーを増加させることができる。空隙率が5%以下の電極合材は、上記焼結処理を行う従来の方法では実現することが極めて困難である。
【0019】
本発明において、電極合材とは、少なくとも電極活物質及び固体電解質とを含むものであり、電極活物質としては、目的とする電池の種類や用途、電極に応じて、適宜選択することができ、正極活物質であっても負極活物質であってもよい。また、固体電解質も、目的とする電池の種類や用途、電極に応じて適宜選択することができる。
また、本発明の電極合材は、全固体電池の電極活物質層を形成するものとして好適であるが、全固体電池以外の電池、例えば、液系電池等においても使用可能である。
【0020】
以下、図2及び図3を用いて、本発明の電極合材の製造方法の各工程について詳しく説明する。
【0021】
(準備工程)
準備工程は、電極活物質及び固体電解質を含有する混合体を準備する工程である。
混合体中に配合される電極活物質及び固体電解質は特に限定されず、電池の種類、用途等に応じて、適宜選択することができる。また、混合体に配合される電極活物質及び固体電解質は、それぞれ、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0022】
電極活物質及び固体電解質の具体例として、以下、リチウム二次電池用の電極活物質及び固体電解質を例に説明する。
【0023】
リチウム二次電池の正極活物質としては、マンガンオリビン(LiMnPO)、ニッケルコバルトマンガン酸リチウム(LiNiCo1−y−xMn)、コバルト酸リチウム(LiCoO)、ニッケル酸リチウム(LiNiO)、マンガン酸リチウム(LiMnO、LiMn)、鉄オリビン(LiFePO)、コバルトオリビン(LiCoPO)、リン酸バナジウムリチウム(Li(PO)等のリチウム遷移金属化合物、銅シュブレル(CuMo)、硫化鉄(FeS)、硫化コバルト(CoS)、硫化ニッケル(NiS)等のカルコゲン化合物等を挙げることができる。
【0024】
リチウム二次電池の負極活物質としては、チタン酸リチウム(LiTi12)等のリチウム遷移金属酸化物、TiSi、LaNiSn等の金属合金、ハードカーボン、ソフトカーボン、グラファイト等の炭素材料等を挙げることができる。
【0025】
リチウム二次電池の固体電解質としては、例えば、ペロブスカイト型酸化物、NASICON型酸化物、LISICON型酸化物、ガーネット型酸化物等の酸化物系固体電解質、及び、硫化物系固体電解質等を挙げることができる。
【0026】
ペロブスカイト型酸化物としては、例えば、以下に示す各材料及び各元素の組成比が異なる類似の材料が挙げられる。すなわち、Li0.35La0.55TiO等のLiLa1−xTiO等で表される酸化物(Li−La−Ti−O系ペロブスカイト型酸化物)等を挙げることができる。
【0027】
NASICON型酸化物としては、例えば、以下に示す各材料及び各元素の組成比が異なる類似の材料が挙げられる。すなわち、Li(XはB、Al、Ga、In、C、Si、Ge、Sn、Sb及びSeよりなる群から選択される少なくとも1種であり、YはTi、Zr、Ge、In、Ga、Sn及びAlよりなる群から選択される少なくとも1種であり、a〜eは、0.5<a<5.0、0≦b<2.98、0.5≦c<3.0、0.02<d≦3.0、2.0<b+d<4.0、3.0<e≦12.0の関係を満たす)で表される酸化物を挙げることができる。特に、上記式において、X=Al、Y=Tiである酸化物(Li−Al−Ti−P−O系NASICON型酸化物)、及び、X=Al、Y=Ge若しくはX=Ge、Y=Alである酸化物(Li−Al−Ge−P−O系NASICON型酸化物)が好ましい。
【0028】
LISICON型酸化物としては、例えば、以下に示す各材料及び各元素の組成比が異なる類似の材料が挙げられる。すなわち、LiXO−LiYO(XはSi、Ge、及びTiから選ばれる少なくとも1種であり、YはP、As及びVから選ばれる少なくとも1種である)、LiXO−LiAO(XはSi、Ge、及びTiから選ばれる少なくとも1種であり、AはMo及びSから選ばれる少なくとも1種である)、LiXO−LiZO(XはSi、Ge、及びTiから選ばれる少なくとも1種であり、ZはAl、Ga及びCrから選ばれる少なくとも1種である)、並びに、LiXO−LiBXO(XはSi、Ge、及びTiから選ばれる少なくとも1種であり、BはCa及びZnから選ばれる少なくとも1種である)、LiDO−LiYO(DはB、YはP、As及びVから選ばれる少なくとも1種である)等が挙げられる。特に、LiSiO−LiPO、LiBO−LiPO等が好ましい。
【0029】
ガーネット型酸化物としては、例えば、Li3+x2−v12で表される酸化物及び各元素の組成比が異なる類似の材料を挙げることができる。ここで、A、G、MおよびBは金属カチオンである。Aは、Ca、Sr、Ba及びMg等のアルカリ土類金属カチオン、又は、Zn等の遷移金属カチオンであることが好ましい。また、Gは、La、Y、Pr、Nd、Sm、Lu、Eu等の遷移金属カチオンであることが好ましい。また、Mとしては、Zr、Nb、Ta、Bi、Te、Sb等の遷移金属カチオンを挙げることができ、中でもZrが好ましい。また、Bは、例えばInであることが好ましい。xは、0≦x≦5を満たすことが好ましく、4≦x≦5を満たすことがより好ましい。yは、0≦y≦3を満たすことが好ましく、0≦y≦2を満たすことがより好ましい。zは、0≦z≦3を満たすことが好ましく、1≦z≦3を満たすことがより好ましい。vは、0≦v≦2を満たすことが好ましく、0≦v≦1を満たすことがより好ましい。なお、Oは部分的に、または、完全に二価アニオン及び/又は三価のアニオン、例えばN3−と交換されていてもよい。ガーネット型酸化物としては、LiLaZr12等のLi−La−Zr−O系酸化物が好ましい。
【0030】
硫化物系固体電解質としては、特に限定されず、例えば、以下に示す各材料及び各元素の組成比が異なる類似の材料が挙げられる。すなわち、LiS−P、LiS−SiS、Li3.250.25Ge0.76、Li4−xGe1−x、Li11、LiS−SiS−LiPO等のガラス体及び結晶体が挙げられる。
【0031】
混合体において、固体電解質及び電極活物質の配合量は、電極合材における電極活物質と固体電解質の比率に応じて適宜調整すればよい。
【0032】
混合体の調製方法は特に限定されず、各成分を任意の方法で混合すればよい。得られる電極合材中の電極活物質と固体電解質の分散性等の観点から、混合体中における各成分は高分散状態であることが好ましい。各成分の分散性に優れた混合体を形成可能な混合方法として、例えば、自動乳鉢、ボールミル、ビーズミル等による混粉方法が挙げられる。混粉条件や混合体の量等にもよるが、これら混粉方法による混粉は、1〜10時間程度行うことが好ましい。
本発明において、混合体には、上記成分以外にも、電極合材を構成する成分が含有されていてもよい。
【0033】
(熱処理工程)
熱処理工程は、上記混合体を熱処理し、混合体中の電極活物質及び固体電解質の融解及び再晶出を行う工程である。
熱処理工程における混合体の熱処理方法は、混合体中に含まれる固体状態の電極活物質及び固体状態の固体電解質の両方を、一旦、加熱により融解させた後、再度、冷却により晶出させることができれば、特に限定されない。
【0034】
電極活物質及び固体電解質を融解させるためには、混合体を、電極活物質の融点以上且つ固体電解質の融点以上の温度まで加熱すればよく、典型的には、電極活物質の融点以上且つ固体電解質の融点以上の温度で、混合体が液体化するまで加熱することが好ましい。
具体的な加熱温度は、電極活物質の融点及び固体電解質の融点に応じて、適宜設定すればよい。ただし、加熱温度は、固体電解質の気化や電極活物質の気化が生じない温度の範囲内であることが重要である。加熱の際の昇温速度は特に限定されない。
固体電解質と電極活物質とが全面接触した、空隙の非常に少ない電極合材を得るためには、混合体を構成する電極活物質及び固体電解質を充分に融解させ、混合体を完全に液体化することが重要である。このような観点から、混合体は、電極活物質の融点以上且つ固体電解質の融点以上の温度を、所定時間以上保持することで加熱することが好ましい(図3参照)。温度保持時間は、混合体の大きさや形状、固体電解質及び電極活物質の種類等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、1〜10時間程度とすることができる。
【0035】
一旦融解した電極活物質及び固体電解質を、再晶出させるためには、電極活物質の融点未満且つ固体電解質の融点未満の温度まで、冷却すればよい。冷却時の降温速度は特に限定されないが、急激に冷却すると、電極活物質及び固体電解質以外の成分が生成するおそれがあることから、100℃/sec未満の降温速度で冷却することが好ましい。
【0036】
熱処理工程において、混合体は液体化するため、電極活物質及び固体電解質の再晶出後、所望の形状の電極合材が得られるように、混合体は容器内に収容した状態で熱処理することが好ましい。
容器の形状は特に限定されず、容器の内郭形状が電極合材の外郭形状となるため、適宜決定すればよい。
また、容器を構成する材料は、熱処理工程における加熱温度でも軟化せず、また、熱処理工程における条件下、固体電解質及び電極活物質と反応しないものであればよく、例えば、白金、インジウム等が挙げられる。
【0037】
容器内に収容する混合体は、予め、加圧成形等により成形した状態であってもよいし、粉末状の混合体を容器内に収容し、容器内で加圧成形等により成形してもよいし、或いは、成形せずに粉末状のままでもよい。生産性の観点からは、混合体は加圧成形体であることが好ましい。混合体の加圧成形方法は、特に限定されず、任意の方法を採用することができ、例えば、5〜200MPa程度で加圧することができる。
【0038】
[電極合材]
本発明の電極合材は、電極活物質及び固体電解質を含有する電極合材であって、空隙率が5%以下であることを特徴とする。
【0039】
ここで、電極合材の空隙率は、電極合材の真密度に対する電極合材の見かけ上の密度の割合、すなわち、空隙率=(見かけ上の密度/真密度)×100%である。例えば、電極活物質と固体電解質の2成分系からなる電極合材の場合、下記式(1)により空隙率εを算出することができる。
【0040】
【数1】

【0041】
電極合材の見かけ上の密度は、公知の方法により測定することができ、例えば、ノギス法やアルキメデス法により測定することができる。
【0042】
電極の体積エネルギー密度を向上できることから、電極合材の空隙率は低ければ低いほどよく、3%以下であることが好ましい。
【0043】
本発明の電極合材は、上記したように、内部抵抗が低く、また、空隙率も非常に小さいため、電池の出力や体積エネルギー密度を向上させることが可能である。また、本発明の電極合材は、全固体電池やその他の電池において、電極を構成する材料として用いることができる。
本発明の電極合材を用いて電極を形成する方法は特に限定されず、公知の電極合材と同様に扱うことができる。すなわち、例えば、図1に示す全固体電池の正極活物質層4及び負極活物質層6の少なくとも一方の構成する材料として、一般的な形態で用いることができる。
【0044】
本発明の電極合材は、典型的には、熱処理工程において用いた上記ケースの内郭形状により規定された外郭形状を有する電極活物質層として、用いることが可能である。すなわち、熱処理工程における冷却後、ケースから取り出した電極合材を、電極活物質層として使用することができる。
電極活物質層には、必要に応じて、集電体や出力端子を設けてもよい。対極の電極活物質層との間に、固体電解質等の電解質が介在するように、対極の電解質層及び電解質層と積層することで、正極活物質層と電解質層と負極活物質層とが積層した電極体を形成することができる。
【実施例】
【0045】
[電極合材の作製]
(実施例1)
LiTi(電極活物質、融点1300℃)とLi0.35La0.55TiO(固体電解質、融点1275℃)とを、モル比が1:1となるように秤量して混合し、自動乳鉢で3時間混粉して混合体を得た。
次に、得られた混合体を10MPaでペレット状に成形した。
続いて、上記ペレットを、ペレットの外郭形状とほぼ同じ内郭形状を有するPt容器内に収容した状態で、大気中、熱処理し、LiTiとLi0.35La0.55TiOを融解及び再晶出させた。ペレットの上記熱処理は、図3に示すように、まず、25℃から1500℃まで昇温速度10℃/分で加熱し、ペレット中のLiTiとLi0.35La0.55TiOの全てが液体化するように1500℃を3時間保持した後、1500℃から25℃まで降温速度3℃/分で冷却して行った。
上記熱処理後のペレットについて、X線回折装置(リガク製 UltimaIV)を用いて、組成を確認した。結果を図4に示す。尚、図4において、上段がペレットのXRD回折、中段がLiTi標準試料のXRD回折、下段がLi0.35La0.55TiO標準試料のXRD回折である。図4より、上記熱処理後のペレットが、熱処理前と同様、LiTiとLi0.35La0.55TiOとを含むことが確認された。
【0046】
(比較例1)
実施例1と同様にしてペレットを準備し、該ペレットを大気中、1150℃で12時間加熱し、焼結した。
焼結後のペレットについて、X線回折装置(リガク製 UltimaIV)を用いて、組成を確認した。結果を図5に示す。尚、図5において、上段がペレットのXRD回折、中段がLiTi標準試料のXRD回折、下段がLi0.35La0.55TiO標準試料のXRD回折である。図5より、焼結後のペレットが、焼結前と同様、LiTiとLi0.35La0.55TiOとを含むことが確認された。
【0047】
[電極合材の評価]
(1)電極活物質と固体電解質の分布状態
実施例1及び比較例1の電極合材について、FE−SEM(電界放出型走査電子顕微鏡)装置(ZEISS社、ULTRA55)を用いて、電極合材中の電極活物質(LiTi)と固体電解質(Li0.35La0.55TiO)の分布状態を反射電子像により観察した。結果を図6(実施例1)及び図7(比較例1)に示す。
図6に示すように、実施例1の電極合材は、電極活物質と固体電解質との間に隙間がなく、電極活物質と固体電解質とが全面接触していた。これに対して、比較例1の電極合材は、電極活物質と固体電解質との間に多くの隙間が確認でき、電極活物質と固体電解質とが全面接触しておらず点接触していた。
【0048】
(2)空隙率
実施例1及び比較例1の電極合材について、それぞれ、見かけ上の密度をノギス法により測定し、上記式(1)から空隙率を算出した。結果を表1に示す。
【0049】
【表1】

【0050】
表1に示すように、比較例1の電極合材は、空隙率が11.9%であるのに対して、実施例1の電極合材は、空隙率2.1%と非常に低くかった。
【0051】
(3)直流抵抗率測定
実施例1及び比較例1の電極合材について、ポテンショ/ガルバノスタット装置(Bio−Logic社 VMP3)を用いて、直流抵抗率を測定した。結果を図8に示す。
図8に示すように、実施例1の電極合材の抵抗率は、比較例1の電極合材の抵抗率より、85%近く低かった。
このように、実施例1の電極合材が比較例1の電極合材に比べて、大幅に低い抵抗率を示したのは、上記「(1)電極活物質と固体電解質との分布状態」及び「(2)空隙率」に起因すると推測される。すなわち、比較例1の電極合材では、空隙率が高く、電極合体と固体電解質との間に多くの隙間があり、これらが点接触しているのに対して、実施例1の電極合材では、空隙率が低く、電極活物質と固体電解質とが全面接触しているため、界面抵抗が低下したと推測される。
【符号の説明】
【0052】
1…正極
2…負極
3…固体電解質
4…正極活物質層
5…正極集電体
6…負極活物質層
7…負極集電体
8…全固体電池

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極活物質と固体電解質とを含む、電極合材の製造方法であって、
電極活物質及び固体電解質を含有する混合体を準備する準備工程と、
前記混合体を熱処理し、前記電極活物質及び前記固体電解質の融解及び再晶出を行う熱処理工程と、
を備えることを特徴とする電極合材の製造方法。
【請求項2】
前記熱処理工程において、前記混合体を、前記電極活物質の融点以上且つ前記固体電解質の融点以上の温度まで加熱し、液体化させる、請求項1に記載の電極合材の製造方法。
【請求項3】
前記熱処理工程において、前記混合体を液体化させた後、100℃/sec未満の降温速度で、前記電極活物質の融点未満且つ前記固体電解質の融点未満の温度まで冷却する、請求項2に記載の電極合材の製造方法。
【請求項4】
電極活物質及び固体電解質を含有する電極合材であって、空隙率が5%以下であることを特徴とする電極合材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図8】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−93126(P2013−93126A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−232916(P2011−232916)
【出願日】平成23年10月24日(2011.10.24)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】