説明

電極型注入装置

【課題】簡単且つコンパクトな構造とすることで、狭小な作業空間での採用が可能となり、作業手間と作業時間の低減を図ることができる。
【解決手段】電極型注入装置1は、導電性を有するとともに、先端部11bに注入穴11aを設けた一対の注入針11A、11Bと、それら注入針11A、11Bどうしが通電したときに点灯あるいは点滅する発光ランプ12と、吹付け材2に注入針11A、11Bを挿入した状態で、それぞれの注入穴11aに連通する液送管路14を通じて注入穴11aから吹付け材2へ酸性液Tを注入するための注入手段13とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼材の表面に被覆されているアスベスト含有材を除去するための電極型注入装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、吹付けアスベスト材やアスベスト含有吹付けロックウールなどのアスベスト含有吹付け材の除去方法として、ケレン棒等の工具による粗落し後、例えばブラシ等を用いてセメント成分を主体とした残留付着物を削ぎ落として磨き上げる作業が行われている。また、人力の場合に比べて作業効率を高めた除去方法として、除去装置等を使用するものが例えば特許文献1、2に開示されている。
【0003】
特許文献1は、マニピュレータの先端に設けたバケット内に適宜駆動するブラシやスクレーパが備えられており、バケットの開口をアスベスト表面に押し付けた状態で、その内部でブラシやスクレーパを作動し、剥離したアスベストをそのままバケット内に落下させて、バケットから処理容器等に移すことで処理する装置について記載したものである。
特許文献2には、アスベスト含有物を剥離するカットブラシ(剥離手段)と、剥離手段を包囲する内側フードと、さらに内側フードを取り囲む外側フードと、剥離したアスベスト含有物を内側フード内から処理タンクへ吸引する吸引手段とを備えたアスベスト除去装置について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−199832号公報
【特許文献2】特開2008−253857号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のアスベスト除去方法では以下のような問題があった。
すなわち、特許文献1、2に示すようなアスベスト除去装置は、除去面に対して施すためのブラシやスクレーパ等を備えた大型な装置であるため、このような装置を設置することができないような狭小な作業スペースにあっては、装置の適用が困難であり、人力による除去方法に頼らざるを得ない現状があり、手間と作業時間がかかるという問題があった。そのため、作業領域のスペースにかかわらず、有効で適切なアスベスト除去手段が求められていた。
【0006】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、簡単且つコンパクトな構造とすることで、狭小な作業空間での採用が可能となり、作業手間と作業時間の低減を図ることができる電極型注入装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係る電極型注入装置では、鋼材の表面に被覆されているアスベスト含有材の内部に酸性液を注入してアスベスト含有材を溶解するための電極型注入装置であって、導電性を有するとともに、先端部に注入穴を設けた複数の注入針と、複数の注入針のうち少なくとも2本が通電したときに信号を発する発信部と、アスベスト含有材に注入針を挿入した状態で、注入穴に連通する液送管路を通じて注入穴からアスベスト含有材へ酸性液を注入するための注入手段とを備えていることを特徴としている。
【0008】
本発明では、複数の注入針をアスベスト含有材に挿入し、それら注入針のうち少なくとも2本の先端部が鋼材に到達して接触することで互いに通電し、その通電状態を検出して発信部から信号が発信される。つまり、前記信号が発せられたとき、鋼材に接触した前記注入針の注入穴の位置が鋼材のアスベスト含有材との接触面近傍に位置することになる。そして、発信部による信号の確認後に、注入手段により液送管路を通じて酸性液を各注入針に送り、注入穴から酸性液をアスベスト含有材へ向けて注入することで、鋼材との接触面付近のアスベスト含有材に対して確実に酸性液を注入することができる。これにより、鋼材の接触面付近のアスベスト含有材を酸により分解させて溶解させることができ、アスベスト含有材を鋼材に対して剥離させて自然に落下させることができる。
【0009】
このように、注入針を備えた電極型注入装置がコンパクトで簡単な構造であるので、持ち運びが容易であり、さらに従来のような大型の除去装置や除去ロボットが不要となる。また、アスベスト含有材を溶解させて鋼材から剥離させることができるので、その鋼材の剥離面におけるアスベスト含有材の付着残しが少なくなり、ケレン棒で粗落としを行った後に磨き上げを行うといった手間のかかる作業も不要となる。
しかも、注入針をアスベスト含有材に挿入して酸性液を注入する方法であるので、これらの作業時において、アスベスト含有材中のアスベストの飛散も防止できる利点がある。
【0010】
また、本発明に係る電極型注入装置では、注入穴は、注入針の先端部近傍で注入針の中心軸線に対して略直交する方向に開口していることが好ましい。
本発明では、注入針の挿入時に注入針の先端部を鋼材に到達させて接触させても、注入穴が鋼材によって塞がれることがないので、注入穴からアスベスト含有材への酸性液の注入が妨げられることがなく、確実な注入を行うことができる。また、アスベスト含有材に注入針を挿入する際、アスベスト含有材が注入穴に入り込んで目詰まりを起こし、酸性液の注入が妨げられるといった不具合も抑制できる利点がある。
【0011】
また、本発明に係る電極型注入装置では、注入針は、それぞれの先端部が同一平面上に位置していることが好ましい。
本発明では、平面状の鋼材の接触面に対して、複数の注入針をより確実に接触させることができる。
【0012】
また、本発明に係る電極型注入装置では、発信部は、発光ランプであってもよい。
本発明では、注入針のうち少なくとも2本の先端部が鋼材に到達して接触することで通電され、その通電状態を検出して発光ランプが点灯或いは点滅するので、その発光ランプを目視により確認することができる。つまり、発光ランプの点灯或いは点滅するときには、鋼材に接触した前記注入針の注入穴の位置が鋼材のアスベスト含有材との接触面近傍に位置するので、前記接触面付近のアスベスト含有材に対して確実に酸性液を注入することができる。
【0013】
また、本発明に係る電極型注入装置では、液送管路にはその流路を開閉する弁体が設けられ、弁体を操作するための注入操作部が設けられていることが好ましい。
本発明では、注入操作部を操作することで弁体を作動させ、液送管路の流路を開閉することで、注入針の注入穴からアスベスト含有材へ向けて注入される酸性液の注入量を適宜変更することができる。
【0014】
また、本発明に係る電極型注入装置では、液送管路には、開閉弁により切替え可能なドレイン管が接続されていることが好ましい。
本発明では、酸性液の注入後に、酸性液の注入経路の途中に設けた開閉弁によってドレイン管側への通路を開くことで、注入経路内に残留する酸性液が排出されるため、その注入経路内に残ることがない。このため、注入経路内の酸性液により注入針どうしが導通し、発信部が信号を発信し続けるといった誤動作を防止することができる。
【0015】
また、本発明に係る電極型注入装置では、2本の前記注入針で、そのうちの1本には酸性液が流れないように構成されていることが好ましい。
本発明では、注入経路内に残留する酸性液を介して2本の注入針どうしが導通状態となることがないので、発信部が信号を発信し続けるといった誤動作を防止することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の電極型注入装置によれば、注入針の注入穴の位置を確認することが可能となるので、鋼材との接触面付近のアスベスト含有材に対して確実に酸性液を注入して溶解させ、アスベスト含有材のみを鋼材から剥離させて除去することができる。そして、複数の注入針を備えるコンパクトで簡単な構造であり、大型の除去装置等を用いることがないので、狭小な作業空間であっても除去作業を行うことができ、作業手間と作業時間の低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1の実施の形態による電極型注入装置の構成を示す模式図である。
【図2】第2の実施の形態による電極型注入装置の構成を示す模式図である。
【図3】第3の実施の形態による電極型注入装置の構成を示す模式図である。
【図4】変形例による注入針の構成を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の第1の実施の形態による電極型注入装置について、図面に基づいて説明する。
図1に示すように、本第1の実施の形態による電極型注入装置1は、例えば建物などの鉄筋コンクリート造のスラブを下方から支持する鋼材3の表面に被覆されているアスベスト含有材を除去する装置であって、アスベスト含有材の鋼材3との接触面3aの近傍に酸性水溶液(以下、酸性液Tという)を注入して、アスベスト含有材を溶解させて剥離させるものである。なお、本実施の形態のアスベスト含有材として、アスベスト含有吹付け材(以下、吹付け材2という)を対象としている。
【0019】
ここで、適用対象となる鋼材3としては、例えばフランジ面を下側に向けたH型鋼材などであり、例えば吹付け厚25〜60mm程度の吹付け材2によって吹付け施工された状態となっている。
また、アスベストを含有する吹付け材2として、吹付けアスベスト材やアスベスト含有吹付けロックウール等が挙げられ、その強度は、通常、後述する注入針11が挿入可能な程度の材料強度である。
【0020】
鋼材3の接触面3a付近の吹付け材2に注入される酸性液Tとして、塩酸等の鉱物酸、酢酸、クエン酸等の有機酸水溶液が挙げられる。この酸性液Tは、吹付け材2に反応させて溶解させる作用を有しており、前記接触面3a付近に注入することで鋼材3に対して剥離を生じさせて分離させるためのものであり、吹付け材2の材質、その吹付け厚さ寸法、鋼材3の材質などの条件に応じて例えばPH値を1〜4程度に調整して使用される。
【0021】
電極型注入装置1は、導電性を有していて先端部11b近傍に注入穴11aを設けた一対の注入針11(11A、11B)と、一対の注入針11A、11Bが通電したときに信号を発する発光ランプ12(発信部)と、吹付け材2に注入針11を挿入した状態で、注入穴11aに連通する液送管路14を通じて注入穴11aから吹付け材2へ酸性液Tを注入するための注入手段13とを備えて概略構成されている。
【0022】
ここで、注入針11と発光ランプ12は、手持ち可能な冶具本体15に設けられている。冶具本体15は、縦材151と横材152とから略T字型をなし、縦材151が把持部となっている。
【0023】
一対の注入針11A、11Bは、基端部11dを冶具本体15に固定させ、互いに間隔をもって配置され、それぞれの先端部11b、11bどうしが同一平面上に位置するように前記冶具本体15に取り付けられている。注入穴11aは、注入針11の先端部11b近傍で注入針11の中心軸線に対して略直交する方向に開口している。
各注入針11A、11Bには、注入穴11aに連通するとともに、軸線方向に延び液送管路14に連通する流路11cが形成されている。
【0024】
発光ランプ12は、例えばLED(発光ダイオード)などが用いられ、冶具本体15に露出した状態で装備されている。この発光ランプ12は、各注入針11A、11Bのそれぞれに対して電線12a、12bで接続され、一方の端子12aが一方の注入針11Aに接続され、他方の端子12bが電池16を介して他方の注入針11Bに接続されている。つまり、導電性を有する一対の注入針11A、11Bは電極の機能をなし、これら注入針11A、11Bどうしの間が通電することで、電池16を備えた発光ランプ12が点灯、あるいは点滅し、作業員が目視により確認可能な構成となっている。
【0025】
注入手段13は、酸性液Tを貯留させる薬品槽17と、薬品槽17と注入針11の流路11cとを連結する前記液送管路14と、薬品槽17内の酸性液Tを液送管路14へ圧送する圧送ポンプ18と、液送管路14を開閉する電磁弁19(弁体)と、電磁弁19を作動させるための注入操作スイッチ20(注入操作部)とを備えている。
つまり、注入操作スイッチ20を操作することで電磁弁19を作動させ、液送管路14の流路を開閉することで、注入針11の注入穴11aから吹付け材2へ向けて注入される酸性液Tの注入量を適宜変更することができるようになっている。
【0026】
次に、電極型注入装置1を用いた吹付け材2の除去方法について、図1に基づいて説明する。
先ず、除去する吹付け材2の表面2aには、例えばアステクターS(登録商標)などの飛散抑制剤を散布しておく。
そして、電極型注入装置1の注入針11A、11Bのそれぞれの先端部11bが鋼材3の接触面3aに到達するまで吹付け材2に突き刺すようにして挿入する。そして、一対の注入針11A、11Bのそれぞれの先端部11bが同時に鋼材3に到達して接触すると、発光ランプ12と電池16とからなる電気回路が通電し、発光ランプ12が点灯、あるいは点滅する。
【0027】
つまり、発光ランプ12が点灯、あるいは点滅したとき、鋼材3に接触した注入針11の注入穴11aの位置が鋼材3の吹付け材2との接触面3a近傍に位置することになる。
そして、発光ランプ12の点灯、あるいは点滅を目視により確認した後に、冶具本体15の注入操作スイッチ20を操作し、電磁弁19を開放し、酸性液Tを液送管路14から各注入針11の流路11c内に送り、注入穴11aから酸性液Tを吹付け材2へ向けて注入することで、鋼材3との接触面3a付近の吹付け材2に対して確実に酸性液Tを注入することができる。
これにより、鋼材3の接触面3a付近の吹付け材2を酸により分解させて溶解させることができ、吹付け材2を鋼材3に対して剥離させて自然に落下させることができる。
【0028】
なお、冶具本体15の向きは自在であり、注入針11の挿入方向も自在である。すなわち、注入針11A、11Bを吹付け材2に挿入しても、発光ランプ12が点灯しない場合には、点灯するまで繰り返し挿入しなおせばよい。
【0029】
このように、注入針11を備えた電極型注入装置1がコンパクトで簡単な構造であるので、持ち運びが容易であり、さらに従来のような大型の除去装置や除去ロボットが不要となる。
また、吹付け材2を溶解させて鋼材3から剥離させることができるので、その鋼材3の剥離面(接触面3a)における吹付け材2の付着残しが少なくなり、ケレン棒で粗落としを行った後に磨き上げを行うといった手間のかかる作業も不要となる。
しかも、注入針11を吹付け材2に挿入して酸性液Tを注入する方法であるので、これらの作業時において、吹付け材2のアスベストの飛散も防止できる利点がある。
ここで、本実施の形態では、予め吹付け材2の表面2aに飛散抑制剤を散布しておくため、吹付け材2が剥離落下する際に生じるアスベストの飛散を抑制することができる。
【0030】
しかも、注入穴11aが注入針11の先端部11b近傍で注入針11の中心軸線に対して略直交する方向に開口しているので、注入針11の挿入時に注入針11の先端部11bを鋼材3に到達させて接触させても、注入穴11aが鋼材3によって塞がれることがないので、注入穴11aから吹付け材2への酸性液Tの注入が妨げられることがなく、確実な注入を行うことができる。
また、吹付け材2に注入針11を挿入する際、吹付け材2が注入穴11aに入り込んで目詰まりを起こし、酸性液Tの注入が妨げられるといった不具合も抑制することができる。
【0031】
上述のように本第1の実施の形態による電極型注入装置では、注入針11の注入穴11aの位置を確認することが可能となるので、鋼材3との接触面3a付近の吹付け材2に対して確実に酸性液Tを注入して溶解させ、吹付け材2のみを鋼材3から剥離させて除去することができる。
そして、一対の注入針11A、11Bを備えるコンパクトで簡単な構造であり、大型の除去装置等を用いることがないので、狭小な作業空間であっても除去作業を行うことができ、作業手間と作業時間の低減を図ることができる。
【0032】
次に、本発明の他の実施の形態による電極型注入装置について、図面に基づいて説明するが、上述の第1の実施の形態と同一又は同様な部材、部分には同一の符号を用いて説明を省略し、第1の実施の形態と異なる構成について説明する。
【0033】
図2に示すように、第2の実施の形態の電極型注入装置1Aは、圧送ポンプ18や電磁弁19の二次側の所定位置(ここでは、冶具本体15内の液送管路14)に三方弁21(開閉弁)を介装させ、注入操作スイッチ20における電磁弁19の開閉操作に連動させ、注入操作スイッチ20をOFFにしたときに注入経路、すなわち液送管路14や注入針11の流路11c内の酸性液Tを逃がす構成となっている。
【0034】
この三方弁21は、ドレイン管22への切替えが可能であり、このドレイン管22から逃がした酸性液Tを薬液槽17、或いは圧送ポンプ18へ戻すようになっている。
なお、注入針11(11A、11B)、発光ランプ12、注入手段13、注入操作スイッチ20等の構成は、上述した第1の実施の形態と同様であるので、ここでは詳細な説明は省略する。
【0035】
このように第2の実施の形態では、酸性液Tの注入後に、酸性液Tの注入経路の途中に設けた三方弁21によってドレイン管22側への通路を開くことで、注入経路内に残留する酸性液Tが排出されるため、その注入経路内に残ることがない。このため、注入経路内の酸性液Tにより一対の注入針11A、11Bどうしが導通し、発光ランプ12が点灯し続けるといった誤動作を防止することができ、注入針11の注入穴11aの位置を確実に確認することができる利点がある。
【0036】
次に、図3に示すように、第3の実施の形態の電極型注入装置1Bは、上述した第1の実施の形態で電極として機能する一対の注入針11A、11B(図1参照)のうち一方(ここでは符号11B)を酸性液Tを通さない導電針11Cとしたものである。つまり、注入針11Aのみに流路11cが設けられ、酸性液Tが通り、その注入穴11aから吹付け材2内に向けて酸性液Tを注入するようになっている。
これにより、注入操作スイッチ20をOFFにしたときに、注入経路内に残留する酸性液Tを介して注入針11Aと導電針11Cとが導通状態となることがないので、発光ランプ12が点灯し続けるといった誤動作を防止することができ、注入針11の注入穴11aの位置を確実に確認することができる利点がある。
【0037】
以上、本発明による電極型注入装置の実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、本実施の形態では電極側注入装置1に備えられる注入針11A、11Bを2本としているが、3本以上の注入針11を備えた構成であってもかまわない。
また、本実施の形態では注入針11の注入穴11aの位置はとくに制限されるものではなく、注入針11の先端部11b(軸線方向の突端部)に注入穴を設けるものであってもかまわない。
【0038】
さらに、本実施の形態では導通性を有する金属部材から注入針11を採用しているが、このような注入針であることに限定されることはなく、例えば図4に示すような非導通材からなる樹脂製の注入針を採用することも可能である。この図4に示す注入針11Dは、全体が樹脂製の材料から形成されており、鋼材3に接触させるための先端部11bと、その先端部11bから基端部11dに設けられる金属部23(図1に示す冶具本体15内の電線12bに繋がる金属部23)までを連通する導通部11eとが金属コーティング等によって施されている。この注入針11Dにおいても、全体が導通性を有する部材からなる注入針11と同様に導通の機能を有している。
【0039】
また、酸性液Tの、種類、注入量、注入位置、注入間隔(注入針11どうしの間隔)等は、上述したようにアスベスト含有材の材質、その被覆厚さ寸法、鋼材3の材質、形状等の条件に応じて適宜設定することができる。
【0040】
さらに、本実施の形態では発信部として発光ランプ12を採用しているが、他の発信部であってもよく、例えばスピーカや振動を発信するものであってもよい。
その他、パネル1の構成は、上述した実施の形態に制限されることはない。
【0041】
さらにまた、第3の実施の形態において、流路を設けない導通針11Cである構成に制限されることはなく、注入針11A、11Bと同様に流路11cや注入穴11aを有した注入針で、その流路11cに酸性液Tを流さないようにした構成であってもよい。
【符号の説明】
【0042】
1、1A、1B 電極型注入装置
2 吹付け材(アスベスト含有材)
3 鋼材
3a 接触面
11 注入針
11a 注入穴
11b 先端部
12 発光ランプ(発信部)
13 注入手段
14 液送管路
15 冶具本体
16 電池
17 薬品槽
19 電磁弁(弁体)
20 注入操作スイッチ(注入操作部)
21 三方弁(開閉弁)
22 ドレイン管
T 酸性液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼材の表面に被覆されているアスベスト含有材の内部に酸性液を注入して前記アスベスト含有材を溶解するための電極型注入装置であって、
導電性を有するとともに、先端部に注入穴を設けた複数の注入針と、
前記複数の注入針のうち少なくとも2本が通電したときに信号を発する発信部と、
前記アスベスト含有材に前記注入針を挿入した状態で、前記注入穴に連通する液送管路を通じて前記注入穴から前記アスベスト含有材へ前記酸性液を注入するための注入手段と、
を備えていることを特徴とする電極型注入装置。
【請求項2】
前記注入穴は、前記注入針の先端部近傍で前記注入針の中心軸線に対して略直交する方向に開口していることを特徴とする請求項1に記載の電極型注入装置。
【請求項3】
前記注入針は、それぞれの先端部が同一平面上に位置していることを特徴とする請求項1又は2に記載の電極型注入装置。
【請求項4】
前記発信部は、発光ランプであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の電極型注入装置。
【請求項5】
前記液送管路にはその流路を開閉する弁体が設けられ、該弁体を操作するための注入操作部が設けられていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の電極型注入装置。
【請求項6】
前記液送管路には、開閉弁により切替え可能なドレイン管が接続されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の電極型注入装置。
【請求項7】
2本の前記注入針で、そのうちの1本には前記酸性液が流れないように構成されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の電極型注入装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−161432(P2011−161432A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−56268(P2010−56268)
【出願日】平成22年3月12日(2010.3.12)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【Fターム(参考)】