説明

電極板製造装置および電池の製造方法

【課題】 電極板の表裏面について同様の乾燥プロファイルで乾燥させることのできる電極板製造装置および電池の製造方法を提供すること。
【解決手段】 電極板製造装置1000は,塗工部1200と,乾燥炉1300とを有している。乾燥炉1300の内部には,第1面乾燥経路1700と,第2面乾燥経路1800と,第2面塗工前搬送経路1900,1901とが設けられている。そして,電極芯材の第1面のペースト層を乾燥させる第1面乾燥経路1700と,電極芯材の第2面のペースト層を乾燥させる第2面乾燥経路1800とは,並列に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,電極板製造装置および電池の製造方法に関する。さらに詳細には,両面を塗工して乾燥させることにより電極板を作成する電極板製造装置および電池の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電池は,携帯電話やパーソナルコンピュータ等の電子機器,ハイブリッド車両や電気自動車等の車両など,多岐にわたる分野で利用されている。このような電池は,正極板と負極板と電解質とを備えるものである。また,正極板と負極板とを絶縁するために,これらの間にセパレータを設けることが一般的である。
【0003】
一般に,電池は種々の製造工程を経て製造される。例えば,リチウムイオン二次電池の製造工程には,電極反応を起こす電極合材層(正極合材層および負極合材層)となる塗工液を混練する塗工液混練工程と,電極芯材(正極芯材および負極芯材)に塗工液を塗工して電極板(正極板および負極板)を作成する電極板作成工程と,正極板および負極板を,これらの間にセパレータを介在させて積層して積層電極体とする電極体作成工程と,電池容器の内部に積層電極体を挿入するとともに電解液を注入して電池を組み立てる電池組立工程とを有するものがある。
【0004】
そして,両面塗工をする場合には,特許文献1に記載の技術のように,電極芯材の第1面に塗工をした後に乾燥炉内でその第1面に塗工されたペースト層を乾燥させ,第2面に塗工をした後に乾燥炉内でその第2面に塗工されたペースト層を乾燥させる(特許文献1の段落[0027]−[0028]および図1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−96800号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで,リチウムイオン二次電池の電極板の製造工程では,電極芯材に塗工したペーストを乾燥させる乾燥プロファイルによって,電池の性能に差異が生ずる。例えば,乾燥速度を速くするとペースト層で対流等が生じ,ペーストに含まれるバインダが移動する。また,ペーストから揮発する溶媒の蒸気がバインダをペースト層の上部へ押し上げることもある。これにより,バインダが偏析するバインダマイグレーションが生じ,電極板の剥離強度が低いものとなるおそれがある。電極板の剥離強度が低いと,電極反応が生じる合材層が電極芯材から剥離することがある。剥離した合材層の箇所では有効な電極反応が起こらない。すなわち,電池の性能は低いものとなる。逆に,ペースト層の乾燥速度を遅くすると,電極板の生産性は低下する。
【0007】
また,品質のばらつきのない電池を製造するためには,両面塗工した第1面と第2面の乾燥プロファイルは同じであることが好ましい。しかし,特許文献1に記載の技術では,電極芯材の第1面と第2面に形成される塗工層の乾燥プロファイルは同様のものとはならない。第1面のペースト層の乾燥と第2面のペースト層の乾燥とを,別個に設けた乾燥炉内で行っているからである。
【0008】
本発明は,前述した従来の技術が有する問題点を解決するためになされたものである。すなわちその課題とするところは,電極板の表裏面について同様の乾燥プロファイルで乾燥させることのできる電極板製造装置および電池の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題の解決を目的としてなされた本発明の一態様における電極板製造装置は,電極芯材の第1面にペースト層を塗工するための第1面用塗工装置と電極芯材の第2面にペースト層を塗工するための第2面用塗工装置とを備える塗工部と,ペースト層を形成された電極芯材をその内部に搬送するとともにそのペースト層を乾燥させる乾燥炉とを有するものである。そして,搬送される電極芯材の第1面と第2面とを反転させる表裏反転部とを有し,乾燥炉の内部では,電極芯材の第1面のペースト層を乾燥させる第1面乾燥経路と,電極芯材の第2面のペースト層を乾燥させる第2面乾燥経路とが並列に配置されており,表裏反転部は,電極芯材の搬送経路における第1面乾燥経路より下流であって第2面用塗工装置より上流の位置に配置されているものである。かかる電極板製造装置は,電極芯材の第1面のペースト層を第1面乾燥経路で,電極芯材の第2面のペースト層を第2面乾燥経路で乾燥させることができる。第1面乾燥経路と第2面乾燥経路とは,同じ乾燥炉内で並列に配置されているので,電極芯材の第1面のペースト層の乾燥プロファイルと電極芯材の第2面のペースト層の乾燥プロファイルとはほとんど同じである。
【0010】
上記に記載の電極板製造装置において,第1面乾燥経路の終端から第2面用塗工装置まで電極芯材を搬送する第2面塗工前搬送経路を有し,第2面塗工前搬送経路は,乾燥炉の内部に設けられており,表裏反転部は,第2面塗工前搬送経路の途中に設けられているものであるとよい。電極芯材の第1面のペースト層の乾燥プロファイルと電極芯材の第2面のペースト層の乾燥プロファイルとはほとんど同じであることに変わりないからである。第1面の塗工層の乾燥後も電極芯材は乾燥炉の内部を搬送されるため,塗工層に溶媒が再付着しにくい。
【0011】
上記に記載の電極板製造装置において,第1面乾燥経路の終端から第2面用塗工装置まで電極芯材を搬送する第2面塗工前搬送経路を有し,第2面塗工前搬送経路は,乾燥炉の外部に設けられており,表裏反転部は,第2面塗工前搬送経路の途中に設けられているものであるとよい。電極芯材の第1面のペースト層の乾燥プロファイルと電極芯材の第2面のペースト層の乾燥プロファイルとはほとんど同じであることに変わりないからである。また,第2面塗工前搬送経路を乾燥炉の外部に設けるため,乾燥炉の小型化を図ることができる。
【0012】
上記に記載の電極板製造装置において,第1面用塗工装置から第1面乾燥経路の始端までの距離と,第2面用塗工装置から第2面乾燥経路の始端までの距離との差が50cm以内であるとよい。第1面を塗工する場合と第2面を塗工する場合とで,ペーストを塗工した後乾燥を開始するまでの時間をほぼ同じ時間とすることができるからである。
【0013】
上記に記載の電極板製造装置において,第1面用塗工装置と第2面用塗工装置との少なくとも一方は,塗工ダイであるとよい。電極芯材の第1面と第2面との塗工を好適に行うことができるからである。
【0014】
上記に記載の電極板製造装置において,第1面用塗工装置と第2面用塗工装置との少なくとも一方は,グラビアロールであってもよい。電極芯材の第1面と第2面との塗工を好適に行うことができることに変わりないからである。
【0015】
また,本発明の別の態様における電池の製造方法は,電極芯材に塗工液を塗工してペースト層とするとともに乾燥炉内を搬送してそのペースト層を乾燥させて正極板または負極板とする電極板作成工程と,正極板と負極板とをこれらの間にセパレータを介在させて積層して積層電極体とする電極体作成工程と,積層電極体を電池容器の内部に配置するとともに電池容器の内部に電解液を注入して封止する電池組立工程とを有する方法である。また,電極板作成工程では,乾燥炉の内部に,電極芯材の第1面のペースト層を乾燥させる第1面乾燥経路と,電極芯材の第2面のペースト層を乾燥させる第2面乾燥経路とが並列に配置されている電極板製造装置を用いる。そして,電極芯材の第1面に塗工液を塗工して第1のペースト層とし,第1のペースト層を第1面乾燥経路で乾燥させ,電極芯材の第1面と第2面とを反転させた後に,電極芯材の第2面に塗工液を塗工して第2のペースト層とし,第2のペースト層を第2面乾燥経路で乾燥させる。かかる電池の製造方法では,電極板作成工程において,第1面のペースト層の乾燥プロファイルと第2面のペースト層の乾燥プロファイルとをほとんど同じものとすることができるからである。したがって,製造される電池の性能にはほとんどばらつきがない。
【0016】
上記に記載の電池の製造方法において,電極板作成工程では,第1面を塗工した電極芯材を乾燥炉内に搬送する向きと,第2面を塗工した電極芯材を乾燥炉内に搬送する向きとが同じであるとよい。電極板作成工程において,第1面のペースト層の乾燥プロファイルと第2面のペースト層の乾燥プロファイルとをほとんど同じものとすることができることに変わりないからである。
【0017】
上記に記載の電池の製造方法において,電極板作成工程では,電極芯材の第1面と第2面との少なくとも一方を,塗工ダイを用いて塗工するとよい。電極芯材の第1面と第2面との塗工を好適に行うことができるからである。
【0018】
上記に記載の電池の製造方法において,電極板作成工程では,電極芯材の第1面と第2面との少なくとも一方を,グラビアロールを用いて塗工することとしてもよい。電極芯材の第1面と第2面との塗工を好適に行うことができることに変わりないからである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば,電極板の表裏面について同様の乾燥プロファイルで乾燥させることのできる電極板製造装置および電池の製造方法が提供されている。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施形態に係る電池の構造を説明するための断面図である。
【図2】実施形態に係る電池の捲回電極体を説明するための斜視図である。
【図3】実施形態に係る電池における捲回電極体の捲回構造を説明するための展開図である。
【図4】実施形態に係る電池の正極板(負極板)の構造を示す斜視断面図である。
【図5】実施形態に係る電極板製造装置により製造される正極板(負極板)の構造を示す斜視断面図である。
【図6】実施形態に係る電極板製造装置の概略構成を示す正面図である。
【図7】実施形態に係る電極板製造装置の概略構成を示す平面図である。
【図8】実施形態に係る電極板製造装置の表裏反転装置を説明するための斜視図である。
【図9】実施形態に係る電極板製造装置における電極芯材の搬送経路を説明するための図である。
【図10】実施形態に係る電池の製造方法に用いられる捲回装置を説明するための概略構成図である。
【図11】実施形態に係る別の電極板製造装置の概略構成を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下,本発明を具体化した実施の形態について,添付図面を参照しつつ詳細に説明する。本形態は,リチウムイオン二次電池の電極板を製造する電極板製造装置および電池の製造方法について,本発明を具体化したものである。
【0022】
1.電池
本実施の形態に係るバッテリは,円筒型のリチウムイオン二次電池である。図1に,本形態のバッテリ10の断面図を示す。バッテリ10は,図1に示すように,電池容器11および蓋12からなる電池ケースにより密閉された電池セルである。バッテリ10には,捲回電極体100と,正極集電板110と,負極集電板120とが内蔵されている。また,電池容器11の内部には電解液が注入されている。
【0023】
捲回電極体100は,電解液中で充放電を繰り返し,発電に直接寄与するものである。正極集電板110は,後述する捲回電極体100の正極芯材と接続された正極集電体である。その材質は,アルミニウムである。負極集電板120は,後述する捲回電極体100の負極芯材と接続された負極集電体である。その材質は,銅である。
【0024】
本形態に係る捲回電極体電池の捲回電極体100を図2に示す。捲回電極体100は,図2に示すように,軸芯101の回りに正極板と負極板とを,これらの間にセパレータS,Tを介在させて捲回された積層電極体である。軸芯101は,捲回電極体100を捲回する際に中心となる部材である。その形状は円筒形状である。軸芯101の外径は,3〜20mm程度である。ただし,これ以外の外径のものを用いてもよい。その材質として,ポリフェニレンサルファイド(PPS)等が挙げられる。なお,図2には,後述する正極非塗工部P2および負極非塗工部N2が表れている。
【0025】
セパレータS,Tは,ポリエチレンやポリプロピレン等の多孔性フィルムである。セパレータS,Tの厚みは,10〜50μm程度である。ここで,セパレータSとセパレータTとは同じ材質のものである。上記の捲回順の理解のために符号をS,Tとして区別しただけである。
【0026】
電池容器11の内部に注入された電解液は,有機溶媒に電解質を溶解させたものである。有機溶媒として例えば,プロピレンカーボネート(PC)やエチレンカーボネート(EC),ジメチルカーボネート(DMC),エチルメチルカーボネート(EMC)等のエステル系溶媒や,エステル系溶媒にγ−ブチラクトン(γ−BL),ジエトキシエタン(DEE)等のエーテル系溶媒等を配合した有機溶媒が挙げられる。また,電解質である塩として,過塩素酸リチウム(LiClO4)やホウフッ化リチウム(LiBF4),六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)などのリチウム塩を用いることができる。
【0027】
図3は,捲回電極体100の捲回構造を示す展開図である。捲回電極体100は,図3に示すように,内側から正極板P,セパレータS,負極板N,セパレータTの順に積み重ねた状態で捲回されたものである。
【0028】
正極板Pは,正極芯材であるアルミ箔にリチウムイオンを吸蔵・放出可能な正極活物質を含む合材を塗布したものである。正極活物質として,ニッケル酸リチウム(LiNiO2),マンガン酸リチウム(LiMnO2),コバルト酸リチウム(LiCoO2)等のリチウム複合酸化物などが用いられる。負極板Nは,負極芯材である銅箔にリチウムイオンを吸蔵・放出可能な負極活物質を含む合材を塗布したものである。負極活物質として,非晶質炭素,難黒鉛化炭素,易黒鉛化炭素,黒鉛等の炭素系物質が用いられる。
【0029】
図3に示すように正極板Pには,正極塗工部P1と,正極非塗工部P2とがある。正極塗工部P1は,正極芯材に正極活物質等を含む正極合材層を形成した箇所である。正極非塗工部P2は,正極芯材に正極合材層を形成していない箇所である。負極板Nには,負極塗工部N1と,負極非塗工部N2とがある。負極塗工部N1は,負極芯材に負極活物質等を含む負極合材層を形成した箇所である。負極非塗工部N2は,負極芯材に負極合材層を形成していない箇所である。
【0030】
図3中の矢印Aは,正極板P,負極板N,セパレータS,Tの幅方向(図2でいえば縦方向)を示している。図3中の矢印Bは,正極板P,負極板N,セパレータS,Tの長手方向(図2の捲回電極体100の周方向)を示している。
【0031】
図4は,正極板P(もしくは負極板N)の斜視断面図である。図4中の括弧外の各符号は,正極の場合の各部を,括弧内の各符号は,負極の場合の各部を示している。図4中の矢印Aが示す方向は,図3中の矢印Aが示す方向と同じである。すなわち,正極板Pの幅方向である。図4中の矢印Bが示す方向は,図3中の矢印Bが示す方向と同じである。すなわち,正極板Pの長手方向である。
【0032】
図4に示すように,正極板Pは,帯状の正極芯材PBの両面の一部に正極合材層PAが形成されたものである。図4中左側には,正極板Pの正極非塗工部P2が幅方向に突出している。正極非塗工部P2は,帯状に形成されている。正極非塗工部P2は,正極芯材PBの両面ともに正極活物質が塗布されていない領域である。したがって正極非塗工部P2では,正極芯材PBがむき出したままの状態にある。一方,図4中右側には,正極非塗工部P2に対応するような突出部はない。正極塗工部P1では,正極芯材PBの両面に一様の厚みで正極合材層PAが形成されている。
【0033】
負極板Nは,図4の括弧内の符号で示したように,帯状の負極芯材NBの両面の一部に負極合材層NAが形成されたものである。また,正極と同様に,負極塗工部N1および負極非塗工部N2がある。ただし,図3に示したように,捲回時には,正極非塗工部P2と負極非塗工部N2とは,反対側に突出した状態で捲回されることとなる。
【0034】
2.電極板製造装置
本形態の電極板製造装置について説明する。本形態の電極板製造装置1000は,図5に示す正極板PXまたは負極板NXを製造するためのものである。正極板PX,負極板NXを線Lに沿ってスリットすることで,図4等に示した正極板P,負極板Nが得られる。
【0035】
本形態の電極板製造装置1000は,前述のとおり正極板PX,負極板NXを製造するためのものである。負極板NXの作成方法は,用いる芯材や塗工液が異なる以外は正極板PXと共通している。したがって,以下,代表して正極板PXを製造することとして説明する。本形態の電極板製造装置1000の概略構成を図6の正面図および図7の平面図に示す。電極板製造装置1000は,巻き出し部1100と,塗工部1200と,乾燥炉1300と,折り返し部1400と,巻取り部1500とを有するものである。
【0036】
巻き出し部1100は,巻き出しリール1101を有している。巻き出しリール1101は,未塗工の箔,すなわち正極芯材PBを巻き出すためのものである。
【0037】
2−1.塗工部
塗工部1200は,図7に示すように,2箇所で正極芯材PBに塗工することができるようになっている。塗工部1200は,第1面塗工用ダイ1211と,第2面塗工用ダイ1221と,バックアップローラ1212,1222とを有している。第1面塗工用ダイ1211は,正極芯材PBの第1面にペースト層を塗工するための第1面用塗工装置である。バックアップローラ1212は,正極芯材PBを搬送するとともに,第1面塗工用ダイ1211が正極芯材PBの第1面を塗工する際に正極芯材PBを支持するためのものである。第2面塗工用ダイ1221は,正極芯材PBの第2面にペースト層を塗工するための第2面用塗工装置である。バックアップローラ1222は,正極芯材PBを搬送するとともに,第2面塗工用ダイ1221が正極芯材PBの第2面を塗工する際に正極芯材PBを支持するためのものである。
【0038】
2−2.乾燥炉
乾燥炉1300は,ペースト層を形成された正極芯材PBをその内部に搬送するとともにそのペースト層を乾燥させるためのものである。乾燥炉1300は,正極芯材PBの搬送方向に3個の炉を直列に接続された三段乾燥炉である。つまり,乾燥炉1300は,第1乾燥炉1310と,第2乾燥炉1320と,第3乾燥炉1330とを有している。また,乾燥炉1300の内部には,第1面乾燥経路1700と,第2面乾燥経路1800と,第2面塗工前搬送経路1900,1901とが設けられている。
【0039】
第1面乾燥経路1700は,正極芯材PBの第1面に塗工されたペースト層を乾燥させるための経路である。第1面乾燥経路1700は,第1乾燥炉1310から第3乾燥炉1330までにわたって設けられている。すなわち,第1面乾燥経路1700の始端1701は,正極芯材PBを塗工部1200から乾燥炉1300に搬送する際の乾燥炉1300の入り口である。第1面乾燥経路1700の終端1702は,正極芯材PBを乾燥炉1300から折り返し部1400に搬送する出口である。
【0040】
第2面乾燥経路1800は,正極芯材PBの第2面に塗工されたペースト層を乾燥させるための経路である。第2面乾燥経路1800は,第1乾燥炉1310から第3乾燥炉1330までにわたって設けられている。すなわち,第2面乾燥経路1800の始端1801は,正極芯材PBを塗工部1200から乾燥炉1300に搬送する際の乾燥炉1300の入り口である。第2面乾燥経路1800の終端1802は,正極芯材PBを乾燥炉1300から折り返し部1400に搬送する出口である。
【0041】
第2面塗工前搬送経路1900,1901は,第1面を乾燥済みの正極芯材PBを,第1面乾燥経路1700の終端1702から第2面塗工用ダイ1221の箇所まで搬送するための経路である。第2面塗工前搬送経路1900は,正極芯材PBを折り返し部1400から塗工部1200まで搬送するための経路である。第2面塗工前搬送経路1901は,折り返し部1400で正極芯材PBの搬送方向を変えるための経路である。
【0042】
第1乾燥炉1310,第2乾燥炉1320,第3乾燥炉1330はそれぞれ,図6に示すように,エアノズル1301と,ローラ1302とを有している。エアノズル1301は,未乾燥のペースト層に熱風を吹き付けるためのノズルである。正極芯材PBに塗工された未乾燥のペースト層は,エアノズル1301から吹き付けられる熱風により乾燥される。エアノズル1301から吹き付けられる熱風の温度や風速,風量は,第1乾燥炉1310,第2乾燥炉1320,第3乾燥炉1330のそれぞれの内部で共通である。ローラ1302は,正極芯材PBを搬送するためのフリーローラである。なお,図7では,エアノズル1301,ローラ1302は省略してある。
【0043】
第1乾燥炉1310,第2乾燥炉1320,第3乾燥炉1330の炉内温度(雰囲気温度)は,それぞれ異なる温度であってよい。ゾーン乾燥により,正極用のペーストの乾燥に適した乾燥プロファイルに基づいて正極用のペーストを乾燥させるためである。これらのうち,第1乾燥炉1310の炉内温度が最も低い。そして,第3乾燥炉1330の炉内温度が最も高い。塗工されたペーストを徐々に乾燥させるためである。
【0044】
ここで,第1面乾燥経路1700,第2面乾燥経路1800,第2面塗工前搬送経路1900はいずれも,第1乾燥炉1310,第2乾燥炉1320,第3乾燥炉1330にわたって設けられている。そして,第1面乾燥経路1700と,第2面乾燥経路1800とは,並列に配置されている。また,第2面乾燥経路1800における正極芯材PBの搬送方向および搬送速度は,第1面乾燥経路1700と同じである。
【0045】
そして,第1面のペースト層は,第1乾燥炉1310,第2乾燥炉1320,第3乾燥炉1330の内部をこの順に搬送される。第2面のペースト層は,第1乾燥炉1310,第2乾燥炉1320,第3乾燥炉1330の内部をこの順に搬送される。したがって,第1面のペースト層および第2面のペースト層は,同じ乾燥プロファイルで乾燥されることとなる。
【0046】
ここで,乾燥プロファイルとは,未乾燥のペースト層が乾燥されるまでの間にたどるペーストの温度の時間変化である。本形態では,乾燥炉1300の内部の雰囲気温度,風速,風量,熱風の温度等は,正極芯材PBの第1面および第2面のペースト層を乾燥させる場合において共通している。
【0047】
2−3.表裏反転装置
また,第2乾燥炉1320の内部には,表裏反転装置1600が設けられている。また,表裏反転装置1600の設けられている位置は,第2面塗工前搬送経路1900の途中である。すなわち,表裏反転装置1600は,正極芯材PBの搬送経路における第1面乾燥経路1700より下流であって第2面塗工用ダイ1221より上流の位置に配置されている。表裏反転装置1600は,搬送される正極芯材PBに接触しないでその第1面と第2面とを反転させる表裏反転部である。表裏反転装置1600は,図8に示すように,第1の反転部材1610と,第2の反転部材1620と,第3の反転部材1630とを有している。図8では,正極芯材PBの第1面をスラッシュで,第2面をドットでハッチングしてある。
【0048】
第1の反転部材1610は,半円または半楕円の断面形状を有する部材である。そして,その半円形状または半楕円形状の個所からエアが噴出すようになっている。そのため,搬送される正極芯材PBは,第1の反転部材1610に接触しない。第2の反転部材1620は,円柱形状の部材である。第2の反転部材1620の円柱形状部分からはエアが噴出すようになっている。そのため,搬送される正極芯材PBは,第2の反転部材1620に接触しない。第3の反転部材1630は,半円または半楕円の断面形状を有する部材である。そして,その半円形状または半楕円形状の個所からエアが噴出すようになっている。そのため,搬送される正極芯材は,第3の反転部材1630に接触しない。
【0049】
折り返し部1400では,第1面を塗工して乾燥された正極芯材PBを第2面塗工用ダイ1221に向けて搬送する。すなわち,正極芯材PBを,第1面乾燥経路1700から第2面塗工前搬送経路1900に搬送する。また,第2面を塗工して乾燥された正極芯材PBを巻取り部1500に搬送する。折り返し部1400は,折り返し用ローラ1401,1402を有している。折り返し用ローラ1401は,第1面のペースト層を乾燥された正極芯材PBの進行方向を図6中の矢印I3の向きに変えるためのものである。折り返し用ローラ1402は,その正極芯材PBをさらに図6中の矢印I4の向きに変えるためのものである。
【0050】
巻取り部1500は,巻き取り用リール1501を有している。巻き取り用リール1501は,正極板PXを巻き取るためのものである。
【0051】
以上,正極で代表して説明したが,負極であっても同様である。このように,本形態の電極板製造装置1000では,電極芯材の第1面と第2面とについて同様の乾燥プロファイルで乾燥させることができる。同一の乾燥炉の内部を同じ速度で搬送されるからである。また,第1面を乾燥させる乾燥炉と第2面を乾燥させる乾燥炉とが共通であるため,第1面を乾燥させる乾燥炉と第2面を乾燥させる乾燥炉とを別個に設ける必要がない。すなわち,乾燥炉の小型化を図ることができる。
【0052】
3.電極芯材の搬送経路
続いて,電極芯材が乾燥炉の内部でどのように搬送されるかについて説明する。電極芯材の搬送経路について,図6,図7および図9により説明する。図9では,正極芯材PBの第1面をスラッシュで,第2面をドットでハッチングして描いてある。また,正極芯材PBを例にとり説明する。
【0053】
巻き出し部1100の電極箔リール1101から正極芯材PBを巻き出す。巻き出された正極芯材PBは,図6の矢印I1の向きに第1面塗工用ダイ1211の向きに搬送される。続いて,正極芯材PBは第1面塗工用ダイ1211で第1面を塗工される。その後,正極芯材PBは図6中の矢印I2の向きに乾燥炉1300の内部に搬送される。このとき,正極芯材PBは図7中の矢印J1の向きに搬送される。
【0054】
そして,第1面を乾燥された正極芯材PBは,折り返し用ローラ1401で向きを変えられる。折り返し用ローラ1401により,正極芯材PBは図6中の矢印I3の向きに搬送される。続いて,正極芯材PBは折り返し用ローラ1402で向きを変えられる。そして,正極芯材PBは図6中の矢印I4の向きに搬送される。そしてその向きは,図7中の矢印J2の向きである。
【0055】
そして,正極芯材PBは,表裏反転装置1600で第1面と第2面の向きを入れ替えられる。そのため,正極芯材PBが表裏反転装置1600に到達する前では第2面が上を向いた状態であるが,正極芯材PBが表裏反転装置1600を通過した後には,第1面が上を向いた状態である。そして,正極芯材PBは図6中の矢印I5の向き,すなわち図7中の矢印J3の向きに搬送される。
【0056】
そして,正極芯材PBは,図6中の矢印I6の向きに第2面塗工用ダイ1221の個所に搬送される。第2面を塗工された正極芯材PBは,図6中の矢印I2の向き,すなわち図7中の矢印J4の向きに搬送される。ここで,図7中の矢印J4の向きは,図7中の矢印J1の向きと同じである。すなわち,第1面のペースト層を乾燥する際に乾燥炉1300に正極芯材PBを搬送する向きと,第2面のペースト層を乾燥する際に乾燥炉1300に正極芯材PBを搬送する向きとは同じである。正極芯材PBは乾燥炉1300の内部を図7中の矢印J4の向きに搬送されるので,正極芯材PBの第2面は乾燥される。そして,正極芯材PBは巻き取られる。
【0057】
4.電池の製造方法
続いて,本形態の電池の製造方法について説明する。本形態に係る電池の製造方法では,正極板PX,負極板NXの製造に電極板製造装置1000を用いることに特徴がある。
【0058】
4−1.塗工液混練工程
まず,正極合材層PAを形成するための正極用ペーストを作成する混練工程について説明する。ここで用いる正極活物質,導電材,増粘材,結着材,溶媒として,上記のものを用いればよい。そして,混練機内で溶媒中に正極活物質,導電材,結着材,増粘材を混入するとともに,混練羽根で攪拌する。これにより,正極用ペーストが作成される。負極用ペーストについても同様に作成することができる。
【0059】
4−2.電極板作成工程
正極板PXを,図6および図7に示した電極板製造装置1000を用いて作成する。巻き出し部1100の巻き出しリール1101から正極芯材PBを巻き出す。次に,第1面塗工用ダイ1211で正極芯材PBの第1面に正極用のペーストを塗工する。続いて,塗工された正極芯材PBは第1面乾燥経路1700に搬送される。そこで,第1面のペースト層は乾燥される。
【0060】
次に,第1面のペースト層を乾燥された正極芯材PBは,第2面塗工前搬送経路1900に搬送される。そして,表裏反転装置1600により,正極芯材PBの第1面と第2面とは反転される。この後,第2面塗工用ダイ1221により正極芯材PBの第2面に塗工液が塗工される。次に,第2面にペースト層を塗工された正極芯材PBは第2面乾燥経路1800に搬送される。そして,正極芯材PBの第2面のペースト層は乾燥される。第2面のペースト層が乾燥された正極芯材PBは,巻取り部1500の巻取りリール1501に巻き取られる。
【0061】
このようにして作成された正極板PXを,図5の線Lに沿って切断する。これにより,図4に示した正極板Pが得られる。
【0062】
負極板NXについても同様に作成することができる。第1乾燥炉1310,第2乾燥炉1320,第3乾燥炉1330のそれぞれの炉内温度は,負極用の乾燥プロファイルに基づいて設定することが好ましい。
【0063】
4−3.電極体作成工程
続いて,図10に示す捲回装置2000を用いて,正極板Pおよび負極板Nに,セパレータS,Tを介在させて積層して捲回する。捲回装置2000は,正極板供給部2001と,負極板供給部2002と,セパレータ供給部2003,2004と,捲回軸2005とを有している。ここで,図3に示したように,内側から正極板P,セパレータS,負極板N,セパレータTの順番に積層されるように積み重ねて捲回する。捲回軸2005が図10の矢印Fの向きに回転することにより,捲回電極体100が作成される。
【0064】
4−4.電池組立工程
続いて,電池容器11に捲回電極体100を配置する。そして電池容器11の内部に電解液を注入する。そして蓋12をして封止する。これにより,本形態のバッテリ10が組み立てられる。この後,コンディショニングやエージングなどの処理や,各種の検査工程を行うとよい。以上の工程を経ることにより,本形態のバッテリ10が製造される。
【0065】
5.変形例
5−1.乾燥炉内の搬送方法
本形態では,図6に示すように,乾燥炉1300内での電極芯材の搬送にローラ1302を用いることとした。しかし,乾燥炉1300の内部における電極芯材の搬送を,ローラ1302を用いたローラ搬送でなく,エアフローティング方式により行うこととしてもよい。
【0066】
5−2.エアノズル
本形態では,第1乾燥炉1310の内部では,エアノズル1301のそれぞれから噴出す熱風の温度,風速,風量を等しいものとした。しかし,エアノズル1301ごとに熱風の温度,風速,風量を変えるとよい。より詳細な乾燥プロファイルに基づいて,塗工されたペースト層を乾燥させることができるからである。
【0067】
5−3.加熱方法
本形態では,エアノズル1301から電極芯材のペースト層に向かって熱風を吹き付けることでそのペーストを乾燥させることとした。しかし,ペーストを乾燥させるものであれば,その他の加熱方法を用いることとしてもよい。例えば,赤外線加熱(IR)や誘導加熱(IH)を用いることができる。
【0068】
5−4.表裏反転装置の配置
図6に示すように,本形態では表裏反転装置1600を第2乾燥炉1320の中心付近に配置することとした。しかし,表裏反転装置1600を配置する位置として,これ以外の位置に配置することとしてもよい。第1面の乾燥経路の下流の位置から第2面塗工用ダイ1221の上流までの位置であれば,どの位置に配置することとしてもよい。すなわち,第2面塗工前搬送経路1900,1901の途中であれば,いずれの位置であってもよい。ただし,第2面を塗工する際の影響を小さくするために,第2面塗工用ダイ1221から離れた位置に設けることが好ましい。
【0069】
5−5.乾燥炉の連結数
本形態の乾燥炉1300では,第1乾燥炉1310,第2乾燥炉1320,第3乾燥炉1330の三段の乾燥炉を設けることとした。しかし,この乾燥炉の炉数は任意に変えてよい。その場合であっても,第1面乾燥経路1700と第2面乾燥経路1800とを並んで配置することに変わりはない。これにより,電極芯材の第1面と第2面とで同じ乾燥プロファイルで乾燥させることができることに変わりない。また,全体の炉数は少ないものとなることに変わりない。
【0070】
5−6.塗工用ダイの向き
本形態では,図6に示すように,第1面塗工用ダイ1211および第2面塗工用ダイ1221は,バックアップローラ1212,1222のそれぞれの横側で,横向きに配置されていることとした。しかし,バックアップローラの下側から塗工するように塗工用ダイを配置することとしてもよい。電極芯材に塗工液を塗工できることに変わりないからである。
【0071】
5−7.第1面塗工用ダイと第2面塗工用ダイとの位置
図6および図7では,第1面塗工用ダイ1211と第2面塗工用ダイ1221とは隣り合う位置に並んで配置されている。しかし,設備の設計上の都合等により,第2面塗工用ダイ1221の位置を,第1面塗工用ダイ1211と隣り合う位置からずれた位置としても構わない。例えば,第2面塗工用ダイ1221の位置を第1面塗工用ダイ1211の位置より高い位置とすることができる。
【0072】
5−8.乾燥炉の入り口までの距離
または,第2面塗工用ダイ1221の位置を第1面塗工用ダイ1211の位置より乾燥炉1300の入り口からやや遠い位置もしくは近い位置に配置することもできる。その場合であっても,第1面塗工用ダイ1211から第1面乾燥経路1700の始端1701までの距離と,第2面塗工用ダイ1221から第2面乾燥経路1800の始端1801までの距離との差は,50cm以内であるとよい。この距離の差があまりに大きいと,第1面と第2面とで塗工した後乾燥炉1300に入るまでの時間に差が生じるからである。この差は,ペースト層の乾燥プロファイルのずれの原因となりうる。したがって,この差は小さいほうが好ましい。
【0073】
5−9.グラビアロール
本形態では,塗工用ダイを用いて電極芯材の第1面および第2面を塗工した。しかし,この塗工にグラビアロールを用いることもできる。すなわち,第1面塗工用ダイ1211の代わりに第1面用グラビアロールを,第2面塗工用ダイ1221の代わりに第2面用グラビアロールを用いればよい。このようにしても,電極芯材に合材層を形成することができることに変わりないからである。
【0074】
5−10.折り返し搬送
本形態では,第2面塗工前搬送経路1900を乾燥炉1300の内部に設けることとした。しかし,第2面塗工前搬送経路1900を乾燥炉1300の外部に設けることとしてもよい。その場合,表裏反転装置1600は,乾燥炉1300の外部に設けられることとなる。そして,図6中の矢印I4,I5で示す搬送を,乾燥炉1300の外部で行うのである。このようにしても,電極芯材の第1面および第2面のペースト層を同じ乾燥プロファイルで乾燥させることができることに変わりない。
【0075】
もしくは,図11に示すように,第1乾燥炉1310,第2乾燥炉1320,第3乾燥炉1330の内部に仕切り3100を設けてもよい。その場合,第2面塗工前搬送経路1900は,第1面乾燥経路1700および第2面乾燥経路1800とは区画された室内にある。第2面塗工前搬送経路1900の占める室の室内温度は,第1乾燥炉1310,第2乾燥炉1320,第3乾燥炉1330の温度より低い温度を設定することができる。
【0076】
5−11.折り返し部
本形態では,第1面を塗工した電極芯材の搬送方向を折り返し部1400で変更することとした。折り返し部1400は,乾燥炉1300の外側にある。しかし,折り返し部1400を乾燥炉1300の内部に設けてもよい。すなわち,折り返し用ローラ1401,1402を第3乾燥炉1330の内部に設けるのである。その場合,第1面乾燥経路の終端は,折り返し用ローラ1401の設けられている箇所である。
【0077】
5−12.塗工部のローラ
また,第1面塗工用ダイ1211が電極芯材に塗工液を塗工する前に電極芯材に触れるローラの温度を調整するとよい。例えば,第1面塗工用ダイ1211の直前に電極芯材が触れるローラの温度を40℃とする。同様に,第2面塗工用ダイ1221が電極芯材に塗工液を塗工する前に電極芯材に触れるローラの温度を調整するとよい。ここで設定する温度は,もちろん第1面用のローラに設定した温度と同じ温度である。これにより,電極芯材における実際に塗工される箇所を第1面と第2面とで同じ温度にすることができるからである。
【0078】
6.まとめ
以上,詳細に説明したように,本実施の形態に係る電極板製造装置1000は,第1面塗工用ダイ1211と第2面塗工用ダイ1221とを有するものである。また,電極芯材の第1面を乾燥させる第1面乾燥経路1700と,電極芯材の第2面を乾燥させる第2面乾燥経路1800と,第1面を乾燥させた電極芯材を第2面塗工用ダイ1221の個所まで搬送する第2面塗工前搬送経路1900とを有している。そして,第2面塗工前搬送経路1900の途中の位置に表裏反転装置1600を有している。これにより,電極芯材の第1面および第2面のペースト層を同じ乾燥プロファイルで乾燥させた電極板を製造することのできる電極板製造装置1000が実現されている。
【0079】
また,本形態の電池の製造方法では,第1面のペースト層の乾燥に用いる第1面乾燥経路1700と,第2面のペースト層の乾燥に用いる第2面乾燥経路1800とが共通の炉の内部に配置されている。したがって,電極芯材の第1面および第2面のペースト層を同じ乾燥プロファイルで乾燥させた電極板を製造することができる。
【0080】
なお,本実施の形態は単なる例示にすぎず,本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に,その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良,変形が可能である。例えば,円筒型電池に限らない。捲回電極体を用いる電池であれば,同様に適用することができる。例えば,捲回電極体を扁平プレスして作成される扁平形状の捲回電極体を有する角型電池にも適用することができる。また,捲回しないで正極板と負極板とを積層する積層電極体を用いる電池にも適用することができる。また,リチウムイオン二次電池に限らない。ニッケル水素電池やその他の二次電池にも適用することができる。また,電池であれば,二次電池に限らず,一次電池にも適用することができる。
【符号の説明】
【0081】
10…バッテリ
11…電池容器
12…蓋
100…捲回電極体
110…正極集電板
120…負極集電板
1000,3000…電極板製造装置
1100…巻き出し部
1101…巻き出しリール
1200…塗工部
1211…第1面塗工用ダイ
1212…バックアップローラ
1221…第2面塗工用ダイ
1222…バックアップローラ
1300…乾燥炉
1301…エアノズル
1302…ローラ
1310…第1乾燥炉
1320…第2乾燥炉
1330…第3乾燥炉
1400…折り返し部
1401,1402…折り返し用ローラ
1500…巻取り部
1501…巻取りリール
1600…表裏反転装置
1700…第1面乾燥経路
1701…始端
1702…終端
1800…第2面乾燥経路
1801…始端
1802…終端
1900…第2面塗工前搬送経路
2000…捲回装置
2001…正極板供給部
2002…負極板供給部
2003,2004…セパレータ供給部
2005…捲回軸
P,PX…正極板
PA…正極合材層
PB…正極芯材
P1…正極塗工部
P2…正極非塗工部
N,NX…負極板
NA…負極合材層
NB…負極芯材
N1…負極塗工部
N2…負極非塗工部
S,T…セパレータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極芯材の第1面にペースト層を塗工するための第1面用塗工装置と電極芯材の第2面にペースト層を塗工するための第2面用塗工装置とを備える塗工部と,
ペースト層を形成された電極芯材をその内部に搬送するとともにそのペースト層を乾燥させる乾燥炉とを有する電極板製造装置であって,
搬送される電極芯材の第1面と第2面とを反転させる表裏反転部とを有し,
前記乾燥炉の内部では,
電極芯材の第1面のペースト層を乾燥させる第1面乾燥経路と,
電極芯材の第2面のペースト層を乾燥させる第2面乾燥経路とが並列に配置されており,
前記表裏反転部は,
電極芯材の搬送経路における前記第1面乾燥経路より下流であって前記第2面用塗工装置より上流の位置に配置されているものであることを特徴とする電極板製造装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電極板製造装置であって,
前記第1面乾燥経路の終端から前記第2面用塗工装置まで電極芯材を搬送する第2面塗工前搬送経路を有し,
前記第2面塗工前搬送経路は,
前記乾燥炉の内部に設けられており,
前記表裏反転部は,
前記第2面塗工前搬送経路の途中に設けられているものであることを特徴とする電極板製造装置。
【請求項3】
請求項1に記載の電極板製造装置であって,
前記第1面乾燥経路の終端から前記第2面用塗工装置まで電極芯材を搬送する第2面塗工前搬送経路を有し,
前記第2面塗工前搬送経路は,
前記乾燥炉の外部に設けられており,
前記表裏反転部は,
前記第2面塗工前搬送経路の途中に設けられているものであることを特徴とする電極板製造装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれかに記載の電極板製造装置であって,
前記第1面用塗工装置から前記第1面乾燥経路の始端までの距離と,
前記第2面用塗工装置から前記第2面乾燥経路の始端までの距離との差が50cm以内であることを特徴とする電極板製造装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれかに記載の電極板製造装置であって,
前記第1面用塗工装置と前記第2面用塗工装置との少なくとも一方は,
塗工ダイであることを特徴とする電極板製造装置。
【請求項6】
請求項1から請求項4までのいずれかに記載の電極板製造装置であって,
前記第1面用塗工装置と前記第2面用塗工装置との少なくとも一方は,
グラビアロールであることを特徴とする電極板製造装置。
【請求項7】
電極芯材に塗工液を塗工してペースト層とするとともに乾燥炉内を搬送してそのペースト層を乾燥させて正極板または負極板とする電極板作成工程と,
前記正極板と前記負極板とをこれらの間にセパレータを介在させて積層して積層電極体とする電極体作成工程と,
前記積層電極体を電池容器の内部に配置するとともに前記電池容器の内部に電解液を注入して封止する電池組立工程とを有する電池の製造方法であって,
前記電極板作成工程では,
前記乾燥炉の内部に,
電極芯材の第1面のペースト層を乾燥させる第1面乾燥経路と,
電極芯材の第2面のペースト層を乾燥させる第2面乾燥経路とが並列に配置されている電極板製造装置を用い,
電極芯材の第1面に塗工液を塗工して第1のペースト層とし,
前記第1のペースト層を前記第1面乾燥経路で乾燥させ,
電極芯材の第1面と第2面とを反転させた後に,
電極芯材の第2面に塗工液を塗工して第2のペースト層とし,
前記第2のペースト層を前記第2面乾燥経路で乾燥させることを特徴とする電池の製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載の電池の製造方法であって,
前記電極板作成工程では,
第1面を塗工した電極芯材を前記乾燥炉内に搬送する向きと,
第2面を塗工した電極芯材を前記乾燥炉内に搬送する向きとが同じであることを特徴とする電池の製造方法。
【請求項9】
請求項7または請求項8に記載の電池の製造方法であって,
前記電極板作成工程では,
電極芯材の第1面と第2面との少なくとも一方を,
塗工ダイを用いて塗工することを特徴とする電池の製造方法。
【請求項10】
請求項7または請求項8に記載の電池の製造方法であって,
前記電極板作成工程では,
電極芯材の第1面と第2面との少なくとも一方を,
グラビアロールを用いて塗工することを特徴とする電池の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−84310(P2012−84310A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−228358(P2010−228358)
【出願日】平成22年10月8日(2010.10.8)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】