説明

電極表面に対するDNA結合を分子酸素の存在下で測定するための電気化学的方法

本開示は、核酸ハイブリダイゼーションを酸素の存在下で検出するためのアッセイを行うための方法および組成物を提供する。具体的には、分子酸素の還元電位と一致しない還元電位を有するルテニウム錯体が開示され、その使用のためのアンペロメトリー技術が記載される。好ましい実施形態において、ルテニウム錯体はルテニウム(III)ペンタアミンピリジンであり、検出される核酸ハイブリダイゼーション事象はDNAハイブリダイゼーションである。さらに、ハイブリダイゼーションした核酸と、ハイブリダイゼーションしていない核酸との間での検出可能なコントラストを増強するための技術が開示される。具体的には、伸長された標的鎖の使用、ならびに非荷電プローブ鎖の使用が議論される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は米国特許出願第60/424,656号(発明の名称:ユニバーサルタグアッセイ、2002年11月6日出願)の優先権を主張する。本出願はまた、米国特許出願第10/424,542号(発明の名称:ユニバーサルタグアッセイ、2003年4月24日出願)の優先権を主張し、その一部継続出願である。上記特許出願の主題は、引用により、その全体が本明細書に組込まれる。
【0002】
本発明は、核酸ハイブリダイゼーションを電気化学的アッセイにおいて検出する方法に関連する。より具体的には、本発明は、核酸ハイブリダイゼーションを分子酸素の存在下で検出するそのような方法に関連する。好ましい実施形態では、検出器、好ましくは、金電極または炭素電極を有する万能チップに固定化された検出プローブに対するDNA分子またはRNA分子のハイブリダイゼーションを検出するためのルテニウムアンペロメトリーの使用が含まれる。
【背景技術】
【0003】
核酸ハイブリダイゼーションを検出するための1つの方法は、その核酸を取り囲む対イオンの量を検出することである。それによれば、ハイブリダイゼーションした核酸は、一本鎖核酸が取り囲まれるよりも多くの対イオンによって取り囲まれる傾向がある。そのような対イオンが、典型的には、電気化学的反応によって、例えば、三価イオンから二価イオンへの還元によって検出される。この方法では、対イオンは電子移動化学種として機能する。
【0004】
電気化学的な定量が、A.B. Steel他、「金に固定化されたDNAの電気化学的定量」、Anal. Chem.、70:4670〜77 (1998)に記載されており、引用によりその全体が本明細書に明確に組み込まれる。この刊行物において、Steel他は、表面に固定化されたDNAと相互作用する化学種としてのコバルト(III)トリスビピリジルおよびルテニウム(III)ヘキサアミンの使用を記載する。
【0005】
錯体Ru(NH3)63+は、金電極において、Ag/AgCl参照電極に対して約-250mVの還元電位を有する。この電位は、二原子酸素(O2)が中性pHにおいて金電極上で還元される電位範囲と重なる。酸素が、Ru(NH3)63+を使用するアッセイのときに存在する場合、酸素の還元は、Ru(NH3)63+の還元に伴う電流の解釈を妨害するバックグラウンドシグナルを生じさせる。
【0006】
酸素の影響を低下させるために使用される1つの技術は、通常の実験室条件で存在する電気化学的セルの近傍での酸素を除去することである。これは、別のガス、例えば、窒素またはアルゴンなどによる脱気によって達成することができる。このような不活性ガスは典型的には、存在する酸素の量を最小限に抑えるためにアッセイ前およびアッセイ中にタンクから電気化学的セルに与えられる。しかしながら、さらなる工程および設備が伴うため、脱気処置は一般に不便であり、時間および費用がかかる。
【0007】
従って、アッセイ環境における分子酸素の存在にもかかわらず、DNAハイブリダイゼーションを正確に検出する方法に対するこの分野での要求は満たされていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の1つの局面は、電極に固定化されたプローブポリヌクレオチドを準備すること;前記プローブを、前記プローブとハイブリダイゼーションすることができる標的ポリヌクレオチドを含有する可能性のあるサンプルと接触させること;前記プローブ、および、前記プローブにハイブリダイゼーションした何れかの標的を、二原子酸素の還元電位とは実質的に異なる還元電位を有する成分と接触させること;および、標的が前記プローブにハイブリダイゼーションしているかどうかを電気化学的に決定することを含む、ポリヌクレオチドのハイブリダイゼーションを検出する方法である。
【0009】
本発明の別の局面は、電極に固定化されたプローブポリヌクレオチドを準備すること;前記プローブを、前記プローブとハイブリダイゼーションすることができる標的ポリヌクレオチドを含有する可能性のあるサンプルと接触させること;前記プローブ、および、前記プローブにハイブリダイゼーションした何れかの標的を、下記式を有するルテニウム錯体:
【化5】

(式中、Rは電子吸引性配位子であり、nは整数である)
と接触させること;および、標的が前記プローブにハイブリダイゼーションしているかどうかを電気化学的に決定することを含む、ポリヌクレオチドのハイブリダイゼーションを検出する方法である。
【0010】
本発明の別の局面は、標的ポリヌクレオチドを電極に固定化すること;前記標的ポリヌクレオチドを、下記式のルテニウム錯体:
【化6】

(式中、Rは電子吸引性配位子であり、nは整数である)
と接触させること;および、固定化された標的ポリヌクレオチドの存在の指標として前記ルテニウム錯体を電気化学的に検出することを含む、ポリヌクレオチドを検出するための方法である。
【0011】
本発明の別の局面は、ポリヌクレオチドを電極に結合すること;前記ポリヌクレオチドを、下記式のルテニウム錯体:
【化7】

(式中、Rは電子吸引性配位子であり、nは整数である)
と接触させること;および、前記ポリヌクレオチドと会合したルテニウム錯体の量を電気化学的に検出することを含む、ポリヌクレオチドを定量するための方法である。
【0012】
本発明の別の局面は、電極に固定化されたプローブポリヌクレオチドを準備すること;前記プローブポリヌクレオチドよりも実質的に長く、かつ、前記プローブポリヌクレオチドと潜在的にハイブリダイゼーションすることができる標的ポリヌクレオチドを準備すること;前記プローブを前記標的ポリヌクレオチドと接触させること;前記プローブ、および、前記プローブにハイブリダイゼーションした何れかの標的を、遷移金属錯体と接触させること;および、前記標的が前記プローブにハイブリダイゼーションしているかどうかを電気化学的に決定することを含む、ポリヌクレオチドのハイブリダイゼーションを検出する方法である。
【0013】
本発明の別の局面は、電極に固定化されたプローブポリヌクレオチドを準備すること;前記プローブポリヌクレオチドと潜在的にハイブリダイゼーションすることができる標的ポリヌクレオチドを準備すること;前記プローブを前記標的ポリヌクレオチドと接触させること;前記プローブにハイブリダイゼーションしている何れかの標的ポリヌクレオチドを伸長させること;何れかのハイブリダイゼーションした標的ポリヌクレオチドを遷移金属錯体と接触させること;および、前記標的が前記プローブにハイブリダイゼーションしているかどうかを電気化学的に決定することを含む、ポリヌクレオチドのハイブリダイゼーションを検出する方法である。
【0014】
本発明の別の局面は、電極に固定化された核酸アナログプローブを準備すること;前記プローブと潜在的にハイブリダイゼーションすることができる標的ポリヌクレオチドを準備すること;前記プローブを前記標的ポリヌクレオチドと接触させること;何れかのハイブリダイゼーションした標的ポリヌクレオチドを遷移金属錯体と接触させること;および、前記標的が前記プローブにハイブリダイゼーションしているかどうかを電気化学的に決定することを含む、ポリヌクレオチドのハイブリダイゼーションを検出する方法である。
【0015】
本発明の別の局面は、標的ポリヌクレオチドと結合することができる結合性部分を有するアッセイデバイス;および、前記標的ポリヌクレオチドと会合することができ、かつ、二原子酸素の還元電位とは実質的に異なる還元電位を有する対イオン試薬を含む、標的ポリヌクレオチドを検出するためのキットである。
【0016】
本発明のさらなる局面は、非金電極に固定化されたプローブポリヌクレオチドを準備すること;前記プローブを、前記プローブとハイブリダイゼーションすることができる標的ポリヌクレオチドを含有する可能性のあるサンプルと接触させること;何れかのハイブリダイゼーションした標的を、二原子酸素の還元電位とは実質的に異なる還元電位を有する成分と前記電極において接触させること;および、標的が前記プローブにハイブリダイゼーションしているかどうかを電気化学的に決定することを含む、ポリヌクレオチドのハイブリダイゼーションを検出する方法である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明は、核酸を分析する方法に関する。好ましい実施形態において、核酸はDNAを含む。従って、「DNA」についての言及は、請求項においてそのように要求されるような場合を除き、他の核酸または核酸アナログ(例えば、RNA、PNA)は、本発明を実施する際に使用され得ないことを意図しない。
【0018】
ルテニウムに基づく対イオンは、ハイブリダイゼーションを検出するという目的のためにポリヌクレオチドを定量することにおいて特に好都合である。この目的のためのルテニウムアンペロメトリー、ならびに、錯体Ru(NH3)63+およびRu(NH3)5ピリジン3+の使用が、同時係属中の米国特許出願第60/424656号(2002年11月6日出願)、米国特許出願第10/424,542号(発明の名称:「ユニバーサルタグアッセイ」、2003年4月24日出願)に開示されており、これらはともにその全体が引用により本明細書に組み込まれる。
【0019】
様々なルテニウム錯体においてルテニウム原子を取り囲む配位子が錯体の還元電位を決定することが発見されている。ルテニウムヘキサアミンの6個のアミン基の1つまたは2つ以上がピリジンなどの電子吸引性配位子で置換される場合、錯体の還元電位が正の方向にシフトし、酸素還元範囲から外れ得ることがさらに発見されている。そのような錯体の使用は、反応を酸素の存在下で行うことを可能にし、費用がかかり、かつ、時間を消費する脱気処置の必要性を排除するので、この方法によるハイブリダイゼーションの測定を大きく改善する。従って、本発明のいくつかの実施形態では、分子酸素の還元電位と重ならない還元電位を有する対イオンの使用が含まれる。
【0020】
また金電極以外の電極の使用がいくつかのアッセイについては好都合であり得ることも発見されている。金から実質的には作製されていない電極は、本明細書中では「非金」電極として記載される。特に好ましい非金電極には、炭素電極が含まれる。例えば、炭素電極を金電極の代わりに使用するとき、Ru(NH3)63+は、二原子酸素の還元電位と重ならない還元電位を有する。従って、Ru(NH3)63+が対イオンであるアッセイについては炭素電極の使用により、アッセイ環境を脱気する必要性を補うことができる。しかしながら、金電極が他の電極、例えば、炭素電極などよりも好ましい場合、Ru(NH3)63+以外の化学種を対イオンとして使用することが一般には好都合である。
【0021】
ピリジンなどの置換された配位子を特徴とするルテニウム錯体は他の目的のために以前から研究されている。例えば、自己組織化単分子膜(self assembled monolayer)における電子移動速度論の研究のためのアルカンチオールに対するルテニウムペンタアミンピリジンの結合が、H.O. Finklea他、「結合したペンタアンミン(ピリジン)ルテニウムレドックス中心を有する組織化されたチオール単分子膜における電子移動速度論」、J. Am. Chem. Soc.、114:3173〜3181 (1992)に、また、H.O. Finklea他、電極における自己組織化単分子膜、Encyclopedia of Analytical Chemistry、John Wiley & Sons Ltd. (2000)に記載される。電気化学的アッセイにおけるRu(NH3)5py3+錯体、Ru(NH3)5py2+錯体の使用もまた、Hill他(米国特許第4,840,893号)に記載されている。これらの参考文献は全て、その全体が引用により本明細書に組み込まれる。
【0022】
本発明のいくつかの実施形態では、下記に示されるような置換ルテニウムペンタアミン錯体が使用される。
【化8】

【0023】
この構造において、Rは電子吸引性配位子である。いくつかの実施形態において、電子吸引性配位子は複素環成分であり、好ましくは窒素含有複素環であり、例えば、置換または非置換のピリジン、ピリミジン、ピリダジンまたはピラジンなどである。本発明における使用のために好適である他の配位子には、ホスファイト誘導体およびイソニトリル誘導体が含まれる。
【0024】
上記構造において、nは錯体の電気的荷電を表す。本発明による錯体は、典型的には、正の電荷を有する。いくつかの好ましい実施形態において、電荷は3+である。
【0025】
さらに、いくつかの有用な対イオンには、1つまたは複数のモノマーサブユニットが1つまたは複数の電子吸引性配位子を含有するダイマーまたはポリマーが含まれる。
【0026】
表1には、本発明とともに使用するために好適である数タイプのルテニウム対イオンが示される。これらの対イオンのいくつかに現れるR基置換基について、表1は、好ましい成分の一部を示している。しかし、置換または非置換の他のアルキル成分、アリール成分および/またはヘテロ原子成分もまた使用され得ることが当業者によって理解される。
【表1】

【0027】
いくつかの実施形態において、対イオンは2以上の電子吸引性配位子を含有することができる。そのようなさらなる配位子は、上記に示された配位子と同じまたは類似し得る。さらに、対イオンはルテニウムを含有する必要はない。例えば、他の遷移金属原子を、電子移動が可能である錯体を作製するために使用することができる。電気的電荷を、好ましくはレドックス反応によって移動することができる他の化学的成分もまた、対イオンとして使用することができる。しかしながら、二原子酸素の還元電位と重ならない還元電位を有することは、対イオンにとって依然として好都合である。
【0028】
金電極上における二原子酸素の還元に伴う電流の流れは、Ag/AgCl参照電極に対して約-250mVにおいてアッセイを妨害し始める。本発明に関連して使用される対イオンの還元電位はその値の正側であることが好ましい。Ag/AgCl参照電極に対して-200mVの、正である還元電位を有する対イオンが好ましい。Ag/AgCl参照電極に対して-100mVの、正である還元電位を有する対イオンがより好ましく、Ag/AgCl参照電極に対して約0mVであるか、または0mVの正である還元電位を有する対イオンが最も好ましい。
【0029】
しかしながら、正側にありすぎる還元電位を有する対イオンを使用しないことが好都合であることもある。例えば、水を酸化する対イオンは、一般に、水性媒体における使用には好ましくない。従って、水性アッセイ媒体における使用のための好ましい対イオンは、Ag/AgCl参照電極に対して+1.0Vの、負である還元電位を有する。より好ましくは、還元電位は負であり、Ag/AgCl参照電極に対して+500mVである。例えば、錯体ルテニウム(III)ペンタアミンピリジンは、Ag/AgCl参照電極に対して約0mVである還元電位を有しており、特に好ましい対イオンである。
【0030】
いくつかの実施形態において、本発明は、DNAハイブリダイゼーションを電極表面において検出するために、金属錯体のルテニウム(III)ペンタアミンピリジン(下記に示されるRu(NH3)5py3+)を使用する。
【化9】

【0031】
その三価性のために、この分子はDNA骨格の負荷電のホスホジエステルに対して強く会合することができる。好ましい実施形態において、DNAは、電気化学的アッセイを行うために電極に結合される。還元電位を電極に加えることにより、ルテニウムの還元が引き起こされる。Ru(NH3)5py3+の還元の場合、典型的には三価イオンから二価イオンになる。Ru(NH3)5py3+のこの還元は、Ru(NH3)63+を使用するときには多くの場合、問題であるような酸素の還元を伴わない。
【0032】
DNAに結合した対イオンの量を、還元中に移動した電子の数から計算することができる。下記式を、ルテニウム化学種の電気化学的検出などにおけるレドックスマーカーの測定量に基づいて、存在するDNA量を計算するために使用することができる。
【数1】

【0033】
この式において、ΓDNAは分子/cm2でのDNAの表面密度であり、Γ0は、吸着されたレドックスマーカーの表面密度(mol/cm2)であり、mはDNAプローブにおける塩基の数であり、zはレドックス化学種の荷電であり、NAはアボガドロ定数である。
【0034】
図1に、酸素の存在下における、金電極上のDNA薄膜に結合したRu(NH3)5py3+およびRu(NH3)63+についてのそれぞれの電気化学的応答を図示する。示されるように、Ru(NH3)5py3+の還元電位は約0mVであり、一方、Ru(NH3)63+の還元電位は約-250mV〜-300mVである。
【0035】
従って、Ru(NH3)5py3+などの化学種を使用することの利点の1つは、Ag/AgClに対して約0mVであるその還元電位が、二原子酸素が金電極において還元される場合の約300mV正側にあるということである。Ru(NH3)5py3+を対イオンとして使用することにより、測定された電流に基づくルテニウム量のより正確な計算(および核酸量のより正確な計算)が可能になる。従って、電極表面における核酸ハイブリダイゼーションの測定を、溶けている分子酸素を最初に除去することなく、空気を含む溶液において行うことができる。
【0036】
上記で示されたように、本発明の好ましい実施形態は、電気化学的アッセイを行う際のルテニウム錯体の使用を特徴とする。好ましくは、そのようなアッセイでは、核酸ハイブリダイゼーションが、Steele他(1998、Anal. Chem. 70:4670〜4677)(これは引用により本明細書中に組み込まれる)の一般的な技術を使用して検出される。
【0037】
典型的には、この技術を行う際には、目的とする配列に対して相補的である多数の核酸プローブが使用される。好ましくは、これらのプローブ鎖は、液体媒体と接触している電極などの表面に固定化される。好ましくは、表面は、電極に対する核酸プローブ鎖の結合を容易にするためにアビジンなどのタンパク質層で被覆される金電極である。このタンパク質層は、イオンが液体媒体から電極に、また、その逆方向に通過することを可能にするように、多孔性でなければならない。あるいは、プローブ鎖を、例えば、核酸を金電極に共有結合的に結合するためにチオール結合を使用することによって、表面に直接、結合することができる。
【0038】
次に、標的鎖(プローブに対して問い合せる核酸サンプル)を、当業者に知られている任意の好適な様式でプローブと接触させることができる。例えば、多数の標的鎖を液体媒体に導入し、固定化されているプローブと混ぜ合わせることができる。好ましくは、標的鎖の数は、標的鎖と相互作用し、かつハイブリダイゼーションに関与する各プローブ鎖の機会を最大限にするために、プローブ鎖の数を上回る。標的鎖がプローブ鎖に対して相補的であるならば、ハイブリダイゼーションが生じ得る。ハイブリダイゼーションが生じ得るか否かは、温度、pH、または、様々なハイブリダイゼーションした鎖を変性させることができる化学種の存在などの様々な「ストリンジェンシー」要因によって影響され得る。従って、多くの場合、アッセイ条件を調節して、好適なレベルのストリンジェンシーを達成することが望ましい。最大のストリンジェンシーは、完全に相補的な鎖がハイブリダイゼーションすることができ、その一方で、すべての他の鎖がハイブリダイゼーションしない条件である。理想的な条件は一般には、非相補的な鎖との間でのハイブリダイゼーション(偽陽性)の数を最小限に抑えることと、望ましい相補的な標的鎖の存在にもかかわらずハイブリダイゼーションしないままであるプローブの数(偽陰性)を最小限に抑えることとをうまく両立させる条件である。標的鎖の量および/またはサイズを増大することは、偽陰性を最小限に抑える際に有用であり得る技術の例である。
【0039】
Ru(NH3)5py3+などの対イオンは液体媒体に導入することができ、これらは、様々な核酸鎖の負荷電骨格の周りを雲のように包む傾向がある。一般に、対イオンは、核酸が一本鎖または二本鎖のいずれであっても、核酸のリン酸基の周りに静電的に集まる。しかしながら、プローブおよび標的は一緒になって、プローブ単独よりも多い量のDNAを物理的に構成するので、二本鎖DNAは、より多くの対イオンがその周りを取り囲んでいる。Ru(NH3)5py3+は好ましい対イオンであるが、核酸と静電的に会合し、その還元または酸化が適切な電圧状況において電気化学的に検出可能である他の好適な遷移金属錯体または他の対イオンはどれも使用することができる。
【0040】
対イオンの量を測定するための様々な技術を使用することができる。好ましい実施形態において、アンペロメトリーが、電極での電気化学的反応を検出するために使用される。一般に、所定の電気的電位が電極に加えられる。対イオンは電気化学的反応、例えば、三価イオンから二価イオンへの還元を電極表面において受けるので、測定可能な電流が生じる。電流の量は、存在する対イオンの量に対応し、この存在する対イオンの量は核酸上の負荷電リン酸基の量に対応する。従って、電流を測定することにより、リン酸基の定量が可能になり、また、操作者が、ハイブリダイゼーションした核酸をハイブリダイゼーションしていない核酸から区別し、調べられている標的がプローブに対して相補的である(また、目的とする配列を含有する)かどうかを決定することが可能になる。
【0041】
あるいは、一本鎖オリゴヌクレオチドと二本鎖オリゴヌクレオチドとの間での測定可能な区別をより完全に行うことができる。1つの方法は、プローブ鎖よりも実質的に長い標的鎖を使用することである。それによれば、より長い標的鎖は、標的がプローブにハイブリダイゼーションするならば、検出可能である対イオンを実質的により多く集めることになる。標的鎖を伸長させるための好ましい技術はローリングサークル増幅(RCA)である。より長い標的鎖を作製し、それをプローブを取り囲む液体媒体に導入することができる。あるいは、鎖がプローブ鎖にハイブリダイゼーションした後で標的鎖の長さを大きくすることが可能である。この第2の技術は「オンチップ」増幅と呼ばれることが多い。オンチップ増幅の好ましい方法は頭尾型重合(head-to-tail polymerization)およびRCAである。オンチップ増幅が同時係属中の米国特許出願第10/429,293号(発明の名称:「体細胞変異の電気化学的検出方法」、2003年5月2日出願;これは引用により本明細書に明確に組み込まれる)においてより詳細に議論されている。
【0042】
一本鎖DNAと二本鎖DNAとの間でのシグナルコントラストを増大させるための別の技術は、プローブ鎖に由来する電気シグナルを制限することである。具体的には、これは、電子移動に関係するプローブ鎖および対イオンの間における電気的な引き寄せを制限することによって行うことができる。例えば、プローブ鎖が、負荷電骨格を含有しないように構築されるならば、プローブ鎖は対イオンを引き寄せない。従って、検出可能なシグナルのより多くが、標的鎖と会合した対イオンに起因することになる。ハイブリダイゼーションが生じていない場合、検出可能なシグナルは測定可能な程度に小さくなる。これは、標的鎖が、対イオンの引き寄せに関与するために存在しないからである。
【0043】
負荷電骨格を有しないプローブ鎖は、ペプチド核酸(PNA)、ホスホトリエステル、メチルホスホネートを含むことができる。これらの核酸アナログはこの分野では知られている。
【0044】
具体的には、PNAは、Nielsen、「非ホスホジエステル骨格を有するDNAアナログ」、Annu Rev Biophys Biomol Struct、1995、24:167〜83;Nielsen他、「ペプチド核酸の導入」、Curr Issues Mol Biol、1999、1(1-2):89〜104;およびRay他、「ペプチド核酸(PNA):将来のためのその医学的および生物工学的な応用および有望性」、FASEB J.、2000 Jun、14(9):1041〜60において議論されている(これらはすべて、その全体が引用により本明細書に明確に組み込まれる)。
【0045】
ホスホトリエステルは、Sung他、「ヒトインスリン遺伝子の合成。第II報。改変されたホスホトリエステル法におけるさらなる改善、ならびに、ヒトインスリンB鎖およびミニCDNAを構成する17個のデオキシリボオリゴヌクレオチドフラグメントの合成」、Nucleic Acids Res、1979 Dec 20、7(8):2199〜212;van Boom他、「大腸菌の16SリボソームRNAの3’末端と同一または類似する配列を有するオリゴヌクレオチドの合成:ホスホトリエステル中間体を介するm-6-2-A-C-C-U-C-CおよびA-C-C-U-C-m-4-2Cの調製」、Nucleic Acids Res、1977 Mar、4(3):747〜59;およびMarcus-Sekura他、「アルキルホスホトリエステル連結、メチルホスホネート連結およびホスホロチオアート連結を有するアンチセンスオリゴヌクレオチドアナログによるクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ遺伝子発現の比較阻害」、Nucleic Acids Res、1987 Jul 24、15(14):5749〜63において議論されている(これらはすべて、その全体が引用により本明細書に明確に組み込まれる)。
【0046】
メチルホスホネートは、米国特許第4,469,863号(Ts’o他);Lin他、「オリゴデオキシリボヌクレオシドメチルホスホネートおよび核酸の相互作用を特徴づけるためのEDTA誘導化の使用」、Biochemistry、1989、Feb 7、28(3):1054〜61;Vyazovkina他、「DNAメチルホスホネートヘプタマーd(CpCpApApApCpA)の特異的なジアステレオマーの合成、および通常型DNAオクタマーd(TPGPTPTPTPGPGPC)との塩基対形成の安定性」、Nucleic Acids Res、1994 Jun 25、22(12):2409〜9;Le Bec他、「DNAメチルホスホネートダイマーの立体特異的なグリニヤール活性化固相合成」、J Org Chem、1996 Jan 26、61(2):510〜513;Vyazovkina他、「DNAメチルホスホネートヘプタマーd(CpCpApApApCpA)の特異的なジアステレオマーの合成、および通常型DNAオクタマーd(TPGPTPTPTPGPGPC)との塩基対形成の安定性」、Nucleic Acids Res、1994 Jun 25、22(12):2409〜9;Kibler-Herzog他、「2つのDNA 14-mer体のホスホロチオエートアナログ、メチルホスホネートアナログおよびRNAアナログの二重鎖安定性」、Nucleic Acids Res、1991 Jun 11、19(11):2979〜86;Disney他、「メチルホスホネートオリゴヌクレオチドによるニューモシスチス・カリニ(Pneumocystis carinii)のグループIイントロンの標的化:骨格の荷電は結合または反応性のために要求されない」、Biochemistry、2000 Jun 13、39(23):6991〜7000;Ferguson他、「R型およびS型のオリゴデオキシリボヌクレオチドメチルホスホネートの相対的安定性を決定するための無エネルギー分解の適用」、Antisense Res Dev、1991 Fall、1(3):243〜54;Thiviyanathan他、「ハイブリッド骨格のメチルホスホネートDNAヘテロ二重鎖の構造:RおよびSの立体化学の影響」、Biochemistry、2002 Jan 22、41(3):827〜38;Reynolds他、「キラル的に純粋なR(P)メチルホスホネート連結を含有するオリゴヌクレオチドの合成および熱力学」、Nucleic Acids Res、1996 Nov 15、24(22):4584〜91;Hardwidge他、「大腸菌代謝物の活性化因子タンパク質による電荷中和およびDNA屈曲」、Nucleic Acids Res、2002 May 1、30(9):1879〜85;およびOkonogi他、「リン酸骨格の中和は二重鎖DNAの柔軟性を増大させる:タンパク質結合に対するモデル」、PNAS U.S.A.、2002 Apr 2、99(7):4156〜60において議論されている(これらはすべて引用により本明細書に組み込まれる)。
【0047】
一般に、適切な核酸アナログプローブは、天然型DNAから作製されたプローブと比較して、対イオンの引き寄せに寄与しないか、または、対イオンの引き寄せにそれほど実質的には寄与しない。一方、標的鎖は通常、陽イオンを引き寄せ、鎖を検出可能にする負荷電基を有する天然型リン酸骨格を特徴とする。
【0048】
あるいは、荷電した核酸と非荷電の核酸アナログとの両方を含有するプローブを構築することができる。同様に、純粋なDNAプローブを、アッセイにおいて、非荷電アナログを含有するプローブと同時に使用することができる。しかしながら、一本鎖と二本鎖とを識別する際の精密さは一般に、プローブ鎖および標的鎖の間での電気的な電荷のコントラストに従って増大する。従って、全体が非荷電の核酸アナログから作製されたプローブのみを使用することにより、一般に、チップ上のハイブリダイゼーションした分子およびハイブリダイゼーションしていない分子の間における最大のシグナルコントラストが可能になる。一般に、メチルホスホネートを含有するプローブ鎖が好ましい。ホスホトリエステルを含有する鎖は、一般に水性媒体において可溶性でないので、それほど好ましくない。
【0049】
一本鎖オリゴヌクレオチドと二本鎖オリゴヌクレオチドとの間での測定可能な識別を高めるための様々な技術(例えば、上記の技術など)を、酸素還元域の外側の電位において反応が可能である対イオンを用いるレドックス型アッセイと一緒に都合よく使用することができるが、これらの技術はまた、他のタイプのアッセイおよび他のタイプのレドックス化学種と一緒に使用することができる。
【0050】
本発明のいくつかの実施形態は、正確性および精密さが改善された核酸変異の検出を可能にする。いくつかの実施形態において、例えば、変異を、102において約1つ(これは、サンプル中の遺伝子の合計で100個の変化体について、サンプル中の遺伝子の1つの変異型変化体を意味する)またはそれ以下のレベルで、または、103において約1つ以下のレベルで、または、104において約1つ以下のレベルで、または、105において約1つ以下のレベルで、または、106において約1つのレベルで検出することができる。
【0051】
本発明のいくつかの実施形態には、アッセイを行うためのキットが含まれる。好ましくは、そのようなキットは、1つまたは複数の電極と、電極の1つに結合するか、もしくは結合させることができるプローブ配列と、適切な対イオン試薬とを含む。好ましくは、対イオン試薬はルテニウム錯体を含む。より好ましくは、対イオン試薬はRu(NH3)5py3+を液体溶液に含む。また、本発明によるキットは、本明細書中に記載されるか、またはこの分野で既に知られている様々な技術のために、任意の生物学的サンプル、電極、プローブ配列、標的配列、液体媒体、対イオンまたは検出装置を調製し、または使用することにおいて有用である他の試薬および/またはデバイスを含むことができる。
【実施例】
【0052】
実施例1:Ru(NH3)5ピリジン3+の合成
ルテニウムペンタアミンピリジンを下記のように合成した:
1.0.2gのクロロペンタアミンルテニウム(III)二塩化物(6.8x10-4M)をトリフルオロ酢酸銀の4mlの溶液で分解した。得られたクロロ-ペンタアミンルテニウムトリフルオロ酢酸塩の溶液をろ過後に集めた。
2.その後、このルテニウム(III)錯体を30倍過剰(約1g)のピリジンの存在下で亜鉛アマルガムによって還元した。
3.20分の反応時間の後、飽和ヘキサフルオロリン酸アンモニウムを鮮やかな黄色の反応混合物に加えて、黄色固体のペンタアミンピリジンルテニウム(II)ヘキサフルオロリン酸塩[(NH3)5Ru(py)](PF6)3を沈殿させた。
4.その後、このルテニウム錯体を、収量の少しの喪失を伴って、メタノール-水の混合物から再結晶した。
5.Ag2Oの0.030gサンプル(0.00013M)を最少量のトリフルオロ酢酸とともに1mlの水に溶解した。この溶液において、0.00025Mのペンタアミンピリジンルテニウム(II)ヘキサフルオロリン酸塩の一部が分解した。その後、溶液をろ過して、得られた金属銀を除いた。その後、数ミリリットルの飽和ヘキサフルオロリン酸アンモニウムを加えて、固体のルテニウム(III)ペンタアミンピリジンを得た。これをろ過によって集め、冷エタノールで洗浄した。
【0053】
実施例2:Ru(NH3)5py3+を使用するハイブリダイゼーションアッセイの実施
Ru(NH3)5py3+が対イオンとして使用されるDNAハイブリダイゼーションアッセイを下記のように行うことができる。
1.DNA鎖を、目的とする配列を含有するとして同定する。このDNA鎖から一本鎖オリゴヌクレオチドを単離する。このオリゴヌクレオチドは、長さが約20bpのユニットであり、目的とする配列に対して相補的である配列を含有する。その後、このオリゴヌクレオチドをPCRによって増幅して、プローブ鎖を作製する。
2.アビジンの多孔性層をその表面に含有する金電極を準備する。各プローブ鎖をビオチン複合体に一方の末端において共有結合的にカップリングする。その後、ビオチン複合体を電極上のアビジンと相互作用させ、これにより、多数のプローブ鎖を電極表面に効果的に固定化する。その後、電極上のアビジン層に付着しなかった過剰なプローブ鎖を、液体の洗浄溶液を使用して洗い流す。
3.目的とする配列を問合せるDNAを患者由来の組織サンプルから単離する。PCRを使用して、目的とする配列を含有する疑いのあるDNA領域から多数の標的鎖を作製する。
4.その後、多数の標的鎖を、固定化されているプローブ鎖と接触している液体媒体に導入する。標的鎖の量は、固定化されているプローブ鎖の量を実質的に上回る。液体媒体の温度、pHおよび内容物を調節して、プローブの配列に対して完全に相補的である配列を標的鎖が含有する場合にだけ、標的鎖が、固定化されているプローブ鎖にハイブリダイゼーションすることが可能になるようにする。
5.標的鎖が、固定化されているプローブと相互作用した後、結合していない過剰な標的鎖を、液体の洗浄溶液を使用して洗い流す。
6.Ru(NH3)5py3+イオンを含有する液体溶液を、固定化されている核酸鎖を含有する電極表面に導入する。
7.電気的電位を電極に加える。三価のルテニウム錯体の二価への還元に対応する電流を電極表面において測定する。
8.測定された電流の量を、一本鎖核酸または二本鎖核酸に対応すると考えられるかどうかを決定するために評価する。この決定は、問合せるDNAが目的の配列を含有するかどうかを判断するために使用される。
【0054】
実施例3:オンチップ増幅を使用する電気的シグナルの増強
下記の手順を、電気的シグナルを増強するためのオンチップ増幅の有効性を明らかにするために行った。結果を図2を参照して議論する。
【0055】
核酸薄膜を電極の表面において調製するために、ビオチン化された捕捉プローブと、NeutrAvidinとからなる溶液の1.5mlを炭素電極の表面に置き、空気乾燥させた。
【0056】
炭素電極を、10mM Tris+10mM NaClに5mMのRu(NH3)6Cl3を含有する溶液に移した。電気化学的応答を、オスターヤング矩形波ボルタンメトリー(OSWV)を使用して検出し、記録した。この測定値は、RCAが行われる前の電極に固定化されている核酸の量に対応する。得られた電流は、図2に示されるように、より小さい曲線(約0.100mAにピークを有する)によって表される。
【0057】
その後、固定化されている捕捉プローブを環化DNAと下記のようにハイブリダイゼーションさせた。電極をTris緩衝溶液で洗浄した。その後、環化DNAを10mM Hepes+1M LiClに含有する溶液の10mlを炭素電極の表面に加えた。電極を60℃で5分間維持し、その後、室温に冷却し、室温で30分間維持した。
【0058】
その後、RCAを下記のように行った。電極をTris緩衝液で洗浄した。phi29ポリメラーゼおよび各dNTPをtris緩衝液に含有するRCA作業溶液の混合物を加えた。RCAを37℃で1時間行わせた。
【0059】
電極をtris緩衝液で洗浄して、10mM Tris+10mM NaClに5mMのRu(NH3)6Cl3を含有する溶液に移した。電気化学的応答を、OSWVを使用して再び検出し、記録した。得られた電流は、図2に示されるように、より大きい曲線(約1.8000mAにピークを有する)によって表される。
【0060】
より小さい曲線から、より大きい曲線への変化は、より多くの量のDNAにおけるより多数のPO3-成分と会合するルテニウム錯体の数が増大したことに対応する。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】Ru(NH3)5ピリジン3+とRu(NH3)63+との還元電位を比較するボルタンモグラム(voltammagram)を示す。
【図2】オンチップ増幅のシグナル増強効果を図示するボルタンモグラム(voltammagram)を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極に固定化されたプローブポリヌクレオチドを準備すること;
前記プローブを、前記プローブとハイブリダイゼーションすることができる標的ポリヌクレオチドを含有する可能性のあるサンプルと接触させること;
前記プローブ、および、前記プローブにハイブリダイゼーションした何れかの標的を、二原子酸素の還元電位とは実質的に異なる還元電位を有する成分と接触させること;および
標的が前記プローブにハイブリダイゼーションしているかどうかを電気化学的に決定すること;
を含む、ポリヌクレオチドのハイブリダイゼーションを検出する方法。
【請求項2】
前記成分が遷移金属を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記成分がルテニウムを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記成分がルテニウムおよび電子吸引性配位子を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記電子吸引性配位子が、ピリジン、ピリジン誘導体、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、ホスファイト誘導体、イソニトリル誘導体、ルテニウムペンタアミンピラジンおよびポリビニルピリジンからなる群から選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記成分が、Ag/AgCl参照電極に対して-200mVの、正である還元電位を前記電極において有する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記成分が、Ag/AgCl参照電極に対して-100mVの、正である還元電位を前記電極において有する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記成分が、Ag/AgCl参照電極に対して0mVの、正である還元電位を前記電極において有する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記成分が、Ag/AgCl参照電極に対して-100mV〜+200mVの間にある還元電位を前記電極において有する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記プローブポリヌクレオチドがDNAを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記プローブポリヌクレオチドがPNAを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記プローブポリヌクレオチドがメチルホスホネートを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記プローブポリヌクレオチドがホスホトリエステルを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記プローブポリヌクレオチドがRNAを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記標的ポリヌクレオチドがDNAを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記標的ポリヌクレオチドがRNAを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
電極に固定化されたプローブポリヌクレオチドを準備すること;
前記プローブを、前記プローブとハイブリダイゼーションすることができる標的ポリヌクレオチドを含有する可能性のあるサンプルと接触させること;
前記プローブ、および、前記プローブにハイブリダイゼーションした何れかの標的を、下記式を有するルテニウム錯体:
【化1】

(式中、Rは電子吸引性配位子であり、nは整数である)
と接触させること;および
標的が前記プローブにハイブリダイゼーションしているかどうかを電気化学的に決定すること;
を含む、ポリヌクレオチドのハイブリダイゼーションを検出する方法。
【請求項18】
Rがピリジンまたはピリジン誘導体であり、nが3+または2+である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
対イオンがルテニウム(III)ペンタアミンピリジンである、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記標的が前記プローブにハイブリダイゼーションしているかどうかを電気化学的に決定することが、アンペロメトリーを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記標的が前記プローブにハイブリダイゼーションしているかどうかを電気化学的に決定する工程が、周囲の条件と実質的に等しい濃度の分子酸素の存在下で行われる、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
脱気工程が、前記標的が前記プローブにハイブリダイゼーションしているかどうかを電気化学的に決定する前には行われない、請求項17に記載の方法。
【請求項23】
標的ポリヌクレオチドを電極に固定化する工程;
前記標的ポリヌクレオチドを、下記式のルテニウム錯体:
【化2】

(式中、Rは電子吸引性配位子であり、nは整数である)
と接触させる工程;および
固定化された標的ポリヌクレオチドの存在の指標として前記ルテニウム錯体を電気化学的に検出する工程;
を含む、ポリヌクレオチドを検出するための方法。
【請求項24】
検出することが、前記標的ポリヌクレオチドを定量することを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記検出工程が分子酸素の存在下で行われる、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
ポリヌクレオチドを電極に結合すること;
前記ポリヌクレオチドを、下記式のルテニウム錯体:
【化3】

(式中、Rは電子吸引性配位子であり、nは整数である)
と接触させること;および
前記ポリヌクレオチドと会合したルテニウム錯体の量を電気化学的に検出すること;
を含む、ポリヌクレオチドを定量するための方法。
【請求項27】
前記検出工程が分子酸素の存在下で行われる、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
電極に固定化されたプローブポリヌクレオチドを準備すること;
前記プローブポリヌクレオチドよりも実質的に長く、かつ、前記プローブポリヌクレオチドと潜在的にハイブリダイゼーションすることができる標的ポリヌクレオチドを準備すること;
前記プローブを前記標的ポリヌクレオチドと接触させること;
前記プローブ、および、前記プローブにハイブリダイゼーションした何れかの標的を、遷移金属錯体と接触させること;および
前記標的が前記プローブにハイブリダイゼーションしているかどうかを電気化学的に決定すること;
を含む、ポリヌクレオチドのハイブリダイゼーションを検出する方法。
【請求項29】
前記遷移金属錯体がルテニウム(III)ペンタアミンピリジンである、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
電極に固定化されたプローブポリヌクレオチドを準備すること;
前記プローブポリヌクレオチドと潜在的にハイブリダイゼーションすることができる標的ポリヌクレオチドを準備すること;
前記プローブを前記標的ポリヌクレオチドと接触させること;
前記プローブにハイブリダイゼーションしている何れかの標的ポリヌクレオチドを伸長させること;
何れかのハイブリダイゼーションした標的ポリヌクレオチドを遷移金属錯体と接触させること;および
前記標的が前記プローブにハイブリダイゼーションしているかどうかを電気化学的に決定すること;
を含む、ポリヌクレオチドのハイブリダイゼーションを検出する方法。
【請求項31】
前記伸長が頭尾型重合を含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記伸長がRCAを含む、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
前記遷移金属錯体がルテニウム(III)ペンタアミンピリジンである、請求項30に記載の方法。
【請求項34】
電極に固定化された核酸アナログプローブを準備すること;
前記プローブと潜在的にハイブリダイゼーションすることができる標的ポリヌクレオチドを準備すること;
前記プローブを前記標的ポリヌクレオチドと接触させること;
何れかのハイブリダイゼーションした標的ポリヌクレオチドを遷移金属錯体と接触させること;および
前記標的が前記プローブにハイブリダイゼーションしているかどうかを電気化学的に決定すること;
を含む、ポリヌクレオチドのハイブリダイゼーションを検出する方法。
【請求項35】
前記核酸アナログプローブがPNAを含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記核酸アナログプローブがメチルホスホネートを含む、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
前記核酸アナログプローブがホスホトリエステルを含む、請求項34に記載の方法。
【請求項38】
前記遷移金属錯体がルテニウム(III)ペンタアミンピリジンである、請求項34に記載の方法。
【請求項39】
標的ポリヌクレオチドと結合することができる結合性部分を有するアッセイデバイス、および
前記標的ポリヌクレオチドと会合することができ、かつ、二原子酸素の還元電位とは実質的に異なる還元電位を有する対イオン試薬
を含む、標的ポリヌクレオチドを検出するためのキット。
【請求項40】
前記対イオン試薬が、下記式:
【化4】

(式中、Rは電子吸引性配位子であり、nは整数である)
を有する、請求項39に記載のキット。
【請求項41】
前記電子吸引性配位子が、ピリジン、ピリジン誘導体、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、ホスファイト誘導体、イソニトリル誘導体、ルテニウムペンタアミンピラジンおよびポリビニルピリジンからなる群から選択される、請求項40に記載のキット。
【請求項42】
Rがピリジンである、請求項40に記載のキット。
【請求項43】
非金電極に固定化されたプローブポリヌクレオチドを準備すること;
前記プローブを、前記プローブとハイブリダイゼーションすることができる標的ポリヌクレオチドを含有する可能性のあるサンプルと接触させること;
何れかのハイブリダイゼーションした標的を、二原子状酸素の還元電位とは実質的に異なる還元電位を有する成分と前記電極において接触させること;および
標的が前記プローブにハイブリダイゼーションしているかどうかを電気化学的に決定すること;
を含む、ポリヌクレオチドのハイブリダイゼーションを検出する方法。
【請求項44】
前記非金電極が炭素電極である、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記成分がRu(NH3)63+である、請求項43に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公表番号】特表2006−525522(P2006−525522A)
【公表日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−514196(P2006−514196)
【出願日】平成16年4月30日(2004.4.30)
【国際出願番号】PCT/US2004/013514
【国際公開番号】WO2004/099433
【国際公開日】平成16年11月18日(2004.11.18)
【出願人】(504377851)ジーンオーム サイエンシーズ、インク. (9)