説明

電極触媒

【課題】比較的安価で資源量も比較的多い材料を用いて得ることができ、また、酸性電解質中で高電位下にて使用しうる高活性な電極触媒を提供する。
【解決手段】長周期型周期表における第4族元素および第5族元素からなる群より選択される1種以上の金属元素および酸素原子を含む金属化合物と、該金属化合物の少なくとも一部を被覆する炭素材料と、から構成され、金属元素のEXAFS測定によるEXAFS振動をフーリエ変換することで求められる動径分布関数における、第一位近接元素のピーク値の逆数として示される酸素欠陥指数が0.125以上0.170以下であり、動径分布関数における第二位近接元素のピーク値として示される結晶性指数が4.5以上8.0以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極触媒に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電極触媒は、電極、特に電極の表面部位に担持される固体触媒であって、例えば水の電解、有機物の電解の他、燃料電池などの電気化学システムに用いられている。酸性電解質中で用いられる電極触媒としては、貴金属、特に白金は、酸性電解質中、高電位でも安定であるため、広く用いられている。
【0003】
しかし白金は、コストが高い、埋蔵量が限られているため将来的に資源が枯渇する可能性がある、という課題が指摘されている。そのため、近年では、白金に代替可能な物性を有し、かつ比較的安価で資源量が多い材料を形成材料とした電極触媒の開発が進められている。
【0004】
例えば、比較的安価で酸性電解質中で用いうる電極触媒としては、炭化タングステンが知られており(非特許文献1参照)、また、高電位での使用時に溶解し難い電極触媒としては、酸化ジルコニウムからなる電極触媒が知られている(非特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】米山宏ら、「電気化学」第41巻、第719頁(1973年)
【非特許文献2】Yan Liuら、「Electrochemical and Solid−State Letters」8(8)、2005、A400〜402
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の炭化タングステンは高電位において溶解してしまうという問題があり、また、酸化ジルコニウムからなる電極触媒は、その使用時に取り出せる電流値が少なく、これら電極触媒は、電極触媒として十分に使用に耐えうるものではない。
【0007】
本発明の目的は、従来用いられてきた、白金を形成材料とする電極触媒と代替可能な電極触媒を供することを目的とし、詳しくは、比較的安価で資源量も比較的多い材料を用いて得ることができ、また、酸性電解質中で高電位下にて使用しうる高活性な電極触媒を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明の電極触媒は、長周期型周期表における第4族元素および第5族元素からなる群より選択される1種以上の金属元素および酸素原子を含む金属化合物と、該金属化合物の少なくとも一部を被覆する炭素材料と、から構成され、前記金属元素のEXAFS測定によるEXAFS振動をフーリエ変換することで求められる動径分布関数における、第一位近接元素のピーク値の逆数として示される酸素欠陥指数が0.125以上0.170以下であり、前記動径分布関数における第二位近接元素のピーク値として示される結晶性指数が4.5以上8.0以下であることを特徴とする。
【0009】
本発明においては、BET比表面積が15m/g以上500m/g以下であり、以下の式(1)により求めた炭素被覆率が0.05以上0.5以下であることが望ましい。
[数1]
炭素被覆率=炭素量(質量%)/BET比表面積(m/g) …(1)
【0010】
本発明においては、前記金属元素がジルコニウムであることが望ましい。
【0011】
本発明においては、前記金属化合物が酸化ジルコニウムであることが望ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、酸性電解質中、高電位でも溶解することなく、比較的高い活性をしめす電極触媒を提供することができる。しかも、比較的安価で資源量も比較的多い材料を用いて電極触媒を得ることができ、本発明は工業的に極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】連続的に水熱反応を行うための流通式反応装置の概要を示す模式図である。
【図2】流通式反応装置における反応器の概要を示す模式図である。
【図3】連続的に水熱反応を行うための流通式反応装置の概要を示す模式図である。
【図4】流通式反応装置における反応器の概要を示す模式図である。
【図5】実施例の結果を示すグラフである。
【図6】実施例の結果を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態に係る電極触媒について説明する。
【0015】
(電極触媒)
本実施形態の電極触媒は、長周期型周期表における第4族元素および第5族元素からなる群より選択される1種以上の金属元素、および酸素原子を含む金属化合物と、該金属化合物の少なくとも一部を被覆する炭素材料とから構成され、酸素欠陥指数が0.125以上0.170以下、かつ結晶性指数が4.5以上8.0以下であることを特徴としている。
【0016】
ここで、本発明において酸素欠陥指数とは、前記金属化合物に含まれる金属元素のEXAFS測定によるEXAFS振動をフーリエ変換することで求められる動径分布関数における、第一位近接元素のピーク値の逆数で表される値である。
【0017】
また、本発明において結晶性指数とは、前記金属化合物に含まれる金属元素のEXAFS測定によるEXAFS振動をフーリエ変換することで求められる動径分布関数における、第二位近接元素のピーク値で表される値である。
【0018】
上記発明によれば、比較的安価で資源量も比較的多い材料を用いて電極触媒を得ることができ、また、酸性電解質中、例えば、0.4V以上という比較的高い電位で、比較的高い活性をしめす電極触媒が得られる。以下、順に説明する。
【0019】
なお、以下の説明において「第4族元素」とは、特に断りがない限り「長周期型周期表における第4族元素」を指し、同じく「第5族元素」とは、特に断りがない限り「長周期型周期表における第5族元素」を指すものとする。
【0020】
(金属化合物)
まず、本実施形態の電極触媒を構成する金属化合物について説明する。電極触媒を構成する金属化合物は、第4族元素および第5族元素からなる群より選択される1種以上の金属元素および酸素原子を含む金属化合物で構成されている。金属化合物を構成する金属元素は、Zr、Ti、TaまたはNbであることがより好ましく、ZrまたはTiであることがさらにより好ましい。
【0021】
(金属化合物の性質:酸素欠陥指数)
金属化合物は、粒子状の形態を有している。金属化合物は、粒子表面の酸素原子が欠損している方が好ましい。このような酸素原子の欠損部分が、触媒反応における酸化還元反応を促進する効果が期待できるからである。このような酸素原子の欠損の度合は、上述した酸素欠陥指数で表すことができる。
【0022】
酸素欠陥指数は、例えば金属化合物として酸化ジルコニウムを用いた場合には、ZrのK吸収端を用いたEXAFS測定によるEXAFS振動をフーリエ変換して求める動径分布関数における、第一位近接元素のピーク値の逆数として表される値である。同様に、金属化合物に含まれる金属元素がNb,Tiの場合には、酸素欠陥指数はK吸収端を用いたEXAFS測定によるEXAFS振動に基づいて求める。また、金属化合物に含まれる金属元素がTaの場合には、酸素欠陥指数はL3吸収端を用いたEXAFS測定によるEXAFS振動に基づいて求める。
【0023】
まず、求められる動径分布関数は、Zrを中心原子として、Zrから所定の距離だけ離れた位置に存在する原子の確率数密度分布を表すものである。酸化ジルコニウムを測定する場合、Zr原子に隣接する元素(第一位近接元素)は酸素である。すなわち、第一位近接元素のピーク値が大きいと、酸化ジルコニウム結晶中のZr−O結合長に対応する距離だけZrから離れた位置に酸素が多く存在することを示している。
【0024】
そして、本発明では、上述のような測定により求められる動径分布関数の第一位近接元素のピーク値の逆数を算出することで、当該逆数を酸素の欠損の度合を示す酸素欠陥指数として用いている。
【0025】
酸素欠陥指数が大きいということは、第一位近接元素のピーク値が小さいということであり、本来あるべき位置に酸素原子がないことを示している。すなわち、酸素欠陥指数が大きいと、測定部位において酸素欠損の度合が大きく、酸素欠陥指数が小さいと、測定部位において酸素欠損の度合が小さいことを示している。
【0026】
目的とする電極触媒の必要物性のためには、金属化合物の酸素欠陥指数は、好ましくは0.125以上0.170以下であり、より好ましくは0.125以上0.140以下である。
【0027】
(金属化合物の性質:結晶性指数)
また金属化合物は、高い触媒活性の実現のために、より整った結晶構造を有している方が好ましい。このような結晶構造が整ったものであると、触媒反応における酸化還元反応時に金属化合物との電子の授受を阻害せず、そのことにより触媒反応を阻害しない効果が期待できるからである。このような結晶状態の度合は、上述した結晶性指数で表すことができる。
【0028】
以下の説明では、整った結晶構造を有していることを「結晶性が高い」と表し、崩れた結晶構造を有していることを「結晶性が低い」と表して、「結晶性」の高低で結晶の状態を示すことがある。
【0029】
結晶性指数は、例えば金属化合物として酸化ジルコニウムを用いた場合には、ZrのK吸収端を用いたEXAFS測定によるEXAFS振動をフーリエ変換して求める動径分布関数における、第二位近接元素のピーク値として表される値である。同様に、金属化合物に含まれる金属元素がNb,Tiの場合には、K吸収端を用いたEXAFS測定によるEXAFS振動に基づいて結晶性指数を求め、金属元素がTaの場合には、L3吸収端を用いたEXAFS測定によるEXAFS振動に基づいて結晶性指数を求める。
【0030】
酸化ジルコニウムを測定する場合、Zr原子からみて第一近接元素である酸素の次に配置される元素はZrである。すなわち、第二位近接元素のピーク値が大きいと、酸化ジルコニウム結晶中のZr−O−Zr結合長に対応する距離だけZrから離れた位置にZrが多く存在することを示している。逆に、第二位近接元素のピーク値が小さいということは、所定の位置にあるべきZr原子が存在しないということである。
【0031】
この「所定の位置にZr原子が存在しない」という現象の原因を、結晶構造が崩れているためであると捉え、本発明では、上述のような測定により求められる動径分布関数の第二位近接元素のピーク値を、金属化合物の結晶構造の状態を示す結晶性指数として用いている。すなわち、結晶性指数が大きいと、測定部位において結晶構造の崩れが小さく(結晶性が高い)、結晶性指数が小さいと、測定部位において結晶構造の崩れが大きい(結晶性が低い)ことを示している。
【0032】
目的とする電極触媒の必要物性のためには、金属化合物の結晶性指数は高いほうが好ましく、好ましくは4.5以上8.0以下で、より好ましくは5.0以上7.5以下で、特に好ましくは5.8以上6.8以下である。
【0033】
(炭素材料)
次に、本実施形態の電極触媒を構成する炭素材料について説明する。本実施形態において「炭素材料」とは、金属化合物と有機物との混合物を焼成し、有機物を炭化させることで得られる、炭素を主成分とする材料を含むものである。「炭素を主成分とする」とは、炭素材料が、例えば全体の95mol%以上が炭素原子であるような材料であることを意味している。
【0034】
本実施形態の電極触媒では、炭素材料が上述した粒子状の金属化合物の表面の少なくとも一部を被覆している。電極触媒の炭素量としては、0.1質量%以上50質量%以下、より好ましくは0.5質量%以上45質量%以下、さらにより好ましくは3質量%以上40質量%以下、特に好ましくは15質量%以上35質量%以下である。
【0035】
なお、本実施形態において、炭素量としては下記式により算出される重量減少率(Ignition Loss:イグロス値)を採用した。具体的には、本実施形態の電極触媒をアルミナ坩堝にいれ、大気雰囲気下において1000℃で3時間焼成を行ったときに、下記式により算出される炭素量の値を用いる。
[数1]
炭素量(質量%)=重量減少率(質量%)=(W−W)/W×100 …(1)
(ここで、Wは焼成前の電極触媒質量、Wは焼成後の質量である。)
【0036】
(電極触媒の性質:表面積)
本実施形態の電極触媒は、触媒活性を高めるために表面積が広いものが良い。電極触媒の表面積は、一般的なBET法により求めた比表面積を採用することができる。本実施形態の電極触媒は、BET比表面積が、15m/g以上500m/g以下であることが好ましく、より好ましくは、50m/g以上300m/g以下である。BET比表面積をこのように設定することで、触媒活性をより高めることができる。
【0037】
(電極触媒の性質:炭素被覆率)
本実施形態の電極触媒は、上述するように電極触媒を構成する金属化合物の少なくとも一部を炭素材料が被覆しているものである。発明者は、本発明の電極触媒は、金属化合物の表面(界面)で生じる触媒反応で必要な電子の流れを、金属化合物の表面を覆う炭素材料が形成することにより、全体として電極触媒として機能するものと考えている。
【0038】
そのため、炭素材料の被覆率が一定範囲を外れても、電極触媒として機能はするものの、炭素材料の被覆率が一定範囲内であることが好ましい。これは、一定範囲の値よりも被覆率が低いと、金属化合物を被覆している炭素材料が少ないために電極触媒として導電性が低くなり、良好な触媒活性を得ることができないと考えられるからである。また、一定範囲の値よりも被覆率が高いと、触媒反応の反応点として機能しうる金属化合物の表面の露出面積が狭くなるため、やはり良好な触媒活性が得られないと考えられるからである。
【0039】
炭素被覆率は、以下の式(2)により求めることができる。本実施形態の電極触媒では、炭素被覆率が0.05以上0.5以下であることが好ましく、より好ましくは0.1以上0.3以下である。炭素被覆率をこのように設定することで、電極触媒の触媒活性をより高めることができる。
[数2]
炭素被覆率(g/m)=炭素量(質量%)/BET比表面積(m/g) …(2)
【0040】
(電極触媒の形成材料)
次に、本実施形態の電極触媒の製造方法について説明する。本実施形態の電極触媒は、以下の第一材料および第二材料を形成材料として製造することができる。
【0041】
まず、本実施形態の電極触媒の製造に使用される第一材料は、上述の金属化合物の前駆体である。具体的には、第一材料は、第4族元素および第5族元素からなる群より選択される1種以上の金属元素と、水素原子、窒素原子、塩素原子、炭素原子、硼素原子、硫黄原子および酸素原子から選択される1種以上の非金属元素とで構成される化合物である。
【0042】
第一材料を構成する金属元素は、第4族元素または第5族元素の金属元素を含んでいる。当該金属元素は、Zr、Ti、TaまたはNbであることがより好ましく、ZrまたはTiであることがさらにより好ましい。
【0043】
また、第一材料を構成する好ましい非金属元素は、水素元素、塩素元素および酸素原子から選択される1種以上の非金属元素である。
【0044】
金属元素がZrである場合の第一材料としては、たとえば水酸化ジルコニウムおよびオキシ塩化ジルコニウムなどがあげられる。また、金属元素がTiである場合の第一材料としては、たとえば水酸化チタン、四塩化チタン、メタチタン酸、オルソチタン酸、硫酸チタン、チタンアルコキシドなどがあげられる。このような第一材料は、水を分散媒とするスラリー状態で用いることができる。
【0045】
次に、本実施形態の電極触媒の製造に使用される第二材料は、上述の炭素材料の前駆体(炭素材料前駆体)である。本発明において、炭素材料前駆体は、高温での熱処理(焼成)により炭素材料に導かれるものである。
【0046】
炭素材料前駆体としては、例えばグルコース、フルクトース、スクロース、セルロース、ハイドロプロピルセルロースなどの糖類、ポリビニルアルコールなどのアルコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのグリコール類、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル類、アクリルニトリル、ポリアクリルニトリルなどのニトリル類、コラーゲン、ケラチン、フェリチン、ホルモン、ヘモグロビン、アルビミンなどの各種タンパク質、グリシン、アラニン、メチオニンなどのアミノ酸等の生体物質、アスコルビン酸、クエン酸、ステアリン酸などがあげられる。
第二材料は、上記の材料の中でも、酸素を有する材料であることが好ましい。
【0047】
(電極触媒の製造方法)
本実施形態の電極触媒は、上述の第一材料および第二材料を用い、以下の製造方法によって製造することができる。
【0048】
すなわち、上記第一材料および上記第二材料を含む混合材料を予備加熱し、予備加熱した混合材料を超臨界状態または亜臨界状態の水の存在下において連続的に水熱反応させることで、混合材料の水熱反応による反応生成物である混合前駆体とし、得られた混合前駆体を焼成することにより電極触媒を製造することができる。
【0049】
(水熱反応)
まず、電極触媒の製造方法に用いられる水熱反応について説明する。
【0050】
なお、水の臨界点は374℃(臨界温度)、22MPa(臨界圧力)である。本発明において超臨界状態の水とは、温度374℃以上且つ圧力22MPa以上の水を意味する。また、本発明において亜臨界状態の水とは、臨界点よりは温度、圧力が低いものの高温高圧条件下で液体状態を保つ水である。このような亜臨界状態の水として、具体的には温度250℃以上且つ圧力20MPa以上であり、且つ水の臨界点より低温、低圧力の水であることが好ましい。
【0051】
(反応装置)
また、本実施形態において、水熱反応を行うための反応装置としては、連続式(流通式)の反応装置を用いることができる。
以下、図1、2を参照しながら、本実施形態において用いる連続的に水熱反応を行うための反応装置について説明する。なお、以下の全ての図面においては、図面を見やすくするため、各構成要素の寸法や比率などは適宜異ならせてある。
【0052】
図1は、連続的に水熱反応を行うための流通式反応装置の概要を示す図である。図に示すように、流通式反応装置は、原料タンク22から供給される原料を、高温高圧環境下の装置内で流動させながら、主として反応器40内で生じさせる水熱反応により反応させることにより、回収容器60にて反応物を回収するものである。
【0053】
水タンク11,21は、水を供給するためのタンクである。原料タンク22は、原料スラリーを供給するためのタンクである。原料スラリーは、第一材料および第二材料を含む混合材料のスラリーまたは水溶液である。
【0054】
これら水タンク11,21および原料タンク22からは、それぞれ弁110,210,220を開けることにより、貯留されている液が装置内に供給される。弁110の下流側に設けられた送液ポンプ13は、水タンク11から加熱器14に水を送る。
【0055】
一方、弁210,220の下流側では、水タンク21および原料タンク22から延在する配管が合流している。合流部分の下流側には送液ポンプ23が設けられ、水タンク21から供給される水、または原料タンク22から供給される原料スラリーのいずれか一方または両方を加熱器24に送る。
【0056】
加熱器24では、原料スラリーを予備的に加熱する。予備加熱の温度範囲は、好ましくは100℃〜330℃であり、より好ましくは150℃〜300℃である。この混合物の予備加熱により、混合物の水熱反応が部分的に行われても良い。送られたそれぞれの液は、混合部30で混合され、主に反応器40内で水熱反応による反応を生じる。
【0057】
図2は、反応器40の概要を示す図である。反応器40内には、内部配管41とその配管を加熱する加熱器44があり、内部配管41は外部の配管に接続されている。
【0058】
反応器40内の内部配管41は、長さを調節することで反応時間を調節することができる。内部配管41の長さの調節にあたっては、内部配管41の形状として、ジグザグ状、らせん状など、種々の形状を選択使用すればよい。
【0059】
配管、内部配管の材質は、原料スラリーの種類や、水熱反応の温度、圧力などの条件に基づき、適切なものを選択すればよいが、例えばSUS316などのステンレス鋼や、ハステロイ、インコネルなどのニッケル合金、あるいはチタン合金をあげることができる。また、通過する液の特性に応じて、金などの耐食性の高い材料で配管の一部または全部の内面をライニングしてもよい。
【0060】
図1に戻って、水熱反応後の反応生成物を含むスラリー(生成スラリー)は、反応器40の下流側に設けられた冷却器51で冷却され、フィルター52および背圧弁53を通過して、回収容器60で回収される。
【0061】
このような装置においては、弁110と弁210または弁220とを開け、送液ポンプ13,23を動かし、さらに、背圧弁53の開閉により、これら送液ポンプ13,23から背圧弁53までの配管内の圧力を調節して、また加熱器14,24および反応器40内の加熱器44の温度を調節して、装置内を流動する水を超臨界状態または亜臨界状態とすることができる。
【0062】
より具体的には、送液ポンプ13,23を起動し、背圧弁53を用いて配管内の圧力を適宜調節して、加熱器14,24および反応器40内の加熱器44の温度を適宜調節して、反応器内の水が超臨界状態または亜臨界状態になるように昇温する。原料タンク22から原料スラリーを送ると、混合部30以降の配管内で水熱反応が行われ、生成スラリーを回収容器60で回収することができる。生成スラリーとして、第一材料および第二材料の混合物の水熱反応により生じた混合前駆体が得られる。
【0063】
また、原料スラリーを原料タンク22から送る前後に、水タンク21から水を送り、配管の予備加熱、配管の洗浄などを行うことも可能である。また、水熱反応後の生成スラリーについて、フィルター52を用いて、粗大粒子の除去を行うなどして粒度を調整してもよい。
【0064】
回収容器60で回収された生成スラリーについては、後段の混合や焼成などの製造工程において固液分離、洗浄、乾燥して、粉末状態で用いてもよいし、スラリー状態で用いてもよい。
【0065】
(焼成)
次に、電極触媒の製造方法に用いられる焼成工程について説明する。
【0066】
本実施形態においては、上述の混合前駆体を、第二材料が炭素材料に遷移しうる条件にて焼成することで、目的とする電極触媒が得られる。焼成時の雰囲気としては、電極触媒を効率的に合成するために無酸素の雰囲気下で焼成することが好ましく、コストの観点から無酸素の雰囲気は、窒素雰囲気であることが好ましい。
【0067】
焼成の際に用いられる炉は、雰囲気を制御することができる炉であればよく、例えば、管状電気炉、トンネル炉、遠赤外線炉、マイクロ波加熱炉、ローラーハース炉、ロータリー炉などがあげられる。回分式で行われてもよいし、連続式で行われてもよい。また混合前駆体を静置した状態で焼成する静止式で焼成してもよいし、混合前駆体を流動状態として焼成する流動式で焼成してもよい。
【0068】
焼成は、第二材料(炭素材料前駆体)および焼成雰囲気の種類にもより適宜設定すればよいが、第二材料が炭素材料に遷移しうる温度、すなわち第二材料が分解し炭化する温度で行えばよい。具体的には、焼成温度は、例えば400℃〜1100℃、好ましくは、500℃〜1000℃、より好ましくは500℃〜900℃、さらにより好ましくは700℃〜900℃である。電極触媒のBET比表面積は、焼成温度を制御することにより、制御することができる。なお、本発明において、第二材料が炭素材料に遷移しうる条件とは、第二材料が分解し炭化して炭素材料になりうる条件のことを意味する。
【0069】
焼成の際の昇温速度は、実用的な範囲であれば特に限定されるものではなく、通常10℃/時間〜600℃/時間、好ましくは50℃/時間〜500℃/時間であり、このような昇温速度において、前記焼成温度まで昇温して、0.1時間〜24時間、好ましくは1時間〜12時間程度、保持して焼成を行えばよい。
【0070】
以上のようにすることで、本実施形態の電極触媒を製造することができる。
【0071】
(電極触媒組成物)
上述の電極触媒を用いて、電極触媒を有する電極触媒組成物とすることもできる。電極触媒組成物は、通常、分散媒を有する。電極触媒組成物は、電極触媒を分散媒に分散させて得ることができる。分散媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ノルマルプロパールなどのアルコール類やイオン交換水などの水等があげられる。
【0072】
分散の際には、分散剤を用いてもよい。分散剤としては、例えば硝酸、塩酸、硫酸などの無機酸、シュウ酸、クエン酸、酢酸、リンゴ酸、乳酸などの有機酸、オキシ塩化ジルコニウムなどの水溶性ジルコニウム塩、ポリカルボン酸アンモニウム、ポリカルボン酸ナトリウムなどの界面活性剤、エピカテキン、エピガロカテキン、エピガロカテキンガレードなどのカテキン類があげられる。
【0073】
上述の電極触媒組成物は、イオン交換樹脂を含有していてもよい。イオン交換樹脂を含有する場合は、燃料電池用として特に好適である。イオン交換樹脂としては、ナフィオン(デュポン社の登録商標)などのフッ素系イオン交換樹脂や、スルホン酸化されたフェノールホルムアルデヒド樹脂などの炭化水素系イオン交換樹脂などがあげられる。
【0074】
また、上述の電極触媒組成物は、導電材を含有してもよい。導電材としてはカーボンファイバー、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、導電性酸化物、導電性酸化物繊維または導電性樹脂などがあげられる。また、電極触媒組成物は、Pt、Ru等の貴金属や、Ni、Fe、Co等の遷移金属を含有することもできる。これらの貴金属、遷移金属を含有する場合には、その含有割合は、微量(例えば、電極触媒100質量部に対して、0.1質量部〜10質量部程度)であることが好ましい。
【0075】
本実施形態の電極触媒は、電気化学システムに用いることができ、好ましくは燃料電池用の電極触媒として、より好ましくは固体高分子形燃料電池用の電極触媒として、よりさらに好ましくは固体高分子形燃料電池のカソード部の電極触媒として用いることができる。
【0076】
本実施形態の電極触媒は、酸性電解質中において可逆水素電極電位に対して0.4V以上の電位で好適に使用することができ、かつ比較的高活性であるために、例えば電気化学システムにおいて、電極に担持され、酸素を還元するために用いられる酸素還元触媒として有用である。
【0077】
なお、酸素還元触媒として用いる場合の電位の好適な上限は、電極触媒の安定性にもよるが、酸素発生する電位である1.6V程度まで使用可能である。1.6Vを越えると、酸素発生と同時に電極触媒が表面から除々に酸化されて、電極触媒が完全に酸化物になって、失活してしまうこともある。電位が0.4V未満では、電極触媒の安定性という観点では好適とはいえるものの、酸素還元触媒という観点からは有用性に乏しいこともある。
【0078】
電極触媒組成物は、カーボンクロス、カーボンペーパー等の電極に担持させて、酸性電解質中での水の電気分解、有機物の電気分解などに用いることもできる。また、固体高分子形燃料電池やリン酸形燃料電池等の燃料電池を構成する電極に担持させて用いることもできる。
【0079】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施の形態例について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した装置構成や材料の組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【実施例】
【0080】
以下、実施例によって本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。
【0081】
なお、各実施例における評価方法は以下の通りである。
(1)BET比表面積(m/g)は、窒素吸着法(JIS-Z8830「気体吸着による粉体(固体)の比表面積測定方法」に準拠)により求めた。
(2)結晶構造は、粉末X線回折装置(X'Pert Pro MPD、PANalytical社製)を用いて行った。
(3)炭素量は、得られた電極触媒をアルミナ坩堝にいれ、箱型炉にて大気雰囲気で1000℃で3時間焼成し、次の式(3)により算出される重量減少率(Ignition Loss:イグロス値)を採用した。
[数3]
炭素量(質量%)=(W−W)/W×100 …(3)
(ここで、Wは焼成前の電極触媒質量、Wは焼成後の質量である。)
(4)炭素被覆率は、次の式(4)にて算出した。
[数4]
炭素被覆率(g/m)=炭素量(質量%)/BET比表面積(m/g) …(4)
(5)酸素欠陥指数として、Zr−K吸収端を用いた透過法XAFS(X-ray Absorption Fine Structure)測定のEXAFS(Extended X-Ray Absorption Fine Structure)結果において、1.6Å〜1.7Åに見られる第一位近接元素(酸素)のピーク値の逆数を採用して求めた。
(6)結晶性指数として、Zr−K吸収端を用いた透過法XAFS測定のEXAFS結果において、3.0Å〜4.0Åに見られる第二位近接元素(ジルコニウム)のピーク値を採用して求めた。
【0082】
(製造例1:第一材料(Zr含有化合物)のスラリーの調製)
オキシ塩化ジルコニウム(和光純薬製)を純水に溶解して得た水溶液(オキシ塩化ジルコニウム8質量%)と、NH水溶液(関東化学(株)製、4質量%に希釈)とを用いて、中和を行い、得られた沈殿物をろ過・洗浄して回収した。粉末X線回折測定の結果、この沈殿物は、水酸化ジルコニウムであることを確かめた。
得られた水酸化ジルコニウムを、pHが10.5に調整されたNH水溶液に、1質量%となる濃度で分散させ、水酸化ジルコニウムのスラリーを得た。
【0083】
(製造例2:第一材料(Zr含有化合物)スラリーの調製)
市販の水酸化ジルコニウム(製品名:R水酸化ジルコニウム、第一稀元素製)をpHが10.5に調整されたNH水溶液に1質量%となる濃度で分散させ、水酸化ジルコニウムのスラリーを得た。
【0084】
(実施例1)
〔電極触媒の調製〕
製造例1により得られた水酸化ジルコニウムのスラリー600mLに、第二材料としてグルコース(和光純薬製)6gを添加したものを、流通式反応装置(アイテック(株)社製)の原料タンク22に仕込んだ。水タンク11,21に水を仕込み、送液ポンプ13,23を起動して、弁110、210を開けて、これらの水の送液を開始した。
ここで、送液ポンプ13における流量を16.7mL/分に、送液ポンプ23における流量を6.66mL/分に、それぞれ調節した。背圧弁53を用いて、配管内圧力を30MPaに調節した。加熱器14を400℃に、加熱器24を250℃に、反応器40内の加熱器44の温度を350℃に、それぞれ調節した。定常状態における混合部30の液温を測定したところ380℃であり、超臨界状態の水であることを確認した。
その後、弁210を閉め、弁220を開けることにより、水タンク21から原料タンク22に切り替えて、原料タンク22から原料スラリーを供給して、水熱反応を行い、回収容器60にて、生成スラリーを回収した。回収した生成スラリーをろ過により固液分離し、60℃、3時間の条件で乾燥して、混合前駆体を得た。
得られた混合前駆体を、アルミナ製ボートに入れ、内容積13.4Lの管状型電気炉((株)モトヤマ製)中で、窒素ガスを1.5L/分の流量で流通させながら、昇温速度300℃/時間で室温(約25℃)から800℃まで昇温し、800℃で1時間保持することにより焼成して、電極触媒1を得た。
【0085】
得られた電極触媒1は、EF−TEMを用いて炭素のマッピングをすることにより、炭素で被覆された酸化ジルコニウムであることを確かめた。電極触媒のBET比表面積は116m/g、炭素量は12.3質量%、炭素被覆率は0.11、結晶形は正方晶系と斜方晶系の混相であった。
【0086】
(実施例2)
〔電極触媒の調製〕
流通式反応装置として、図3,4に示す市販の超臨界水ナノ粒子合成試験機(アイテック社製、MOMI超ミニ)を用いた。図3,4は、上述の図1,2に対応する図である。
製造例2により得られた水酸化ジルコニウムのスラリー175gに、第二材料としてグルコース2.6gを添加した混合物を、原料タンク1022に入れ流路内に投入した。この際、図2の送液ポンプ13に対応するポンプ1013の流量を8mL/分に、図2の送液ポンプ23に対応するポンプ1023の流量を3.4mL/分に、それぞれ調節した。また、反応圧力20MPaに設定し、装置の流路内を亜臨界条件とした。
図2の加熱器24に対応する原料ラインヒータ1024の設定温度を180℃、図2の加熱器14に対応する純水ラインヒータ1014の設定温度を400℃、図2の反応器40に対応する反応ラインヒータ1040の設定温度を350℃とした。反応ラインヒータ1040は、図4に示すように、内部配管1041と加熱器1044とを有しており、加熱器1044の設定温度を350℃とすることで、反応ラインヒータ1040全体として設定温度での加熱を行うものである。また、原料ラインヒータ1024出口の液温は、180℃であった。
得られた生成スラリーは、図2の冷却器51およびフィルター52と同様の機能を有する回収ユニット1070を通過させたのち、図2の回収容器60に対応する回収容器1060で採取した。
得られた生成スラリーを遠心分離装置(株式会社久保田製作所製、型番Model 9912)を用いて、3000rpmで10分間処理し、上澄液を除去し、沈殿物を60℃で乾燥することで電極触媒の混合前駆体を得た。
得られた混合前駆体を、アルミナ製ボートに入れ、内容積13.4Lの管状型電気炉((株)モトヤマ製)中で、窒素ガスを1.5L/分の流量で流通させながら、昇温速度300℃/時間で室温(約25℃)から800℃まで昇温し、800℃で1時間保持することにより焼成して、電極触媒2を得た。
【0087】
得られた電極触媒2は、実施例1と同様の方法にて炭素で被覆された酸化ジルコニウムであることを確認した。電極触媒のBET比表面積は153m/g、炭素量は12.8質量%、炭素被覆率は0.08、結晶形は正方晶系と斜方晶系の混相であった。
【0088】
(比較例1)
〔電極触媒の調製〕
第一材料として、製造例2により得られたZr含有化合物スラリーを用い、実施例1で用いた流通式反応装置における各ヒータの温度設定を、加熱部24のヒータをオフの状態にした以外は実施例1と同様に行い、得られた「混合前駆体」を実施例1と同様に熱処理することで電極触媒3を得た。
なお、定常状態における混合部30の液温を、実施例1と同様に測定したところ367℃であり、亜臨界状態の水であることを確認した。
【0089】
得られた電極触媒3は、実施例1と同様の方法にて炭素で被覆された酸化ジルコニウムであることを確認した。電極触媒のBET比表面積は69m/g、炭素量は4.5質量%、炭素被覆率は0.06、結晶形は正方晶系と斜方晶系の混相であった。
【0090】
〔酸素欠陥指数および結晶性指数の評価〕
上記実施例1,2および比較例1で得られた電極触媒1〜3のそれぞれについて、透過法XAFS測定を行い、EXFAS結果から酸素欠陥指数および、結晶性指数を求めた。図5は、各電極触媒について求められる動径分布関数を示すグラフである。
評価の結果、電極触媒1は、酸素欠陥指数が0.138、結晶性指数が6.8であった。また電極触媒2は、酸素欠陥指数が0.128、結晶性指数が6.0であった。
対して電極触媒3は、酸素欠陥指数が0.122、結晶性指数が4.0であった。
【0091】
〔電気化学システムでの評価〕
上記実施例1,2および比較例1で得られた電極触媒1〜3のそれぞれについて、以下の方法により電気化学的特性を評価した。
【0092】
電極触媒を0.02g秤量し、純水5mLとイソプロピルアルコール5mLの混合溶媒に添加し、超音波を照射して懸濁液とした。この懸濁液20μLをグラッシーカーボン電極(6mm径、電極面積は28.3mm)に塗布、乾燥し、その上に「ナフィオン(登録商標)」(デュポン社製、固形分濃度5質量%の10倍希釈サンプル)を13μL塗布し、乾燥後、真空乾燥機にて1時間処理をすることで、電極触媒をグラッシーカーボン電極上に担持させた修飾電極を得た。
この修飾電極を濃度0.1mol/Lの硫酸水溶液中に浸漬し、室温、大気圧下、酸素雰囲気および窒素雰囲気において、銀塩化銀電極電位に対して−0.25V〜0.75V(可逆水素電極電位換算0.025V〜1.025V)の走査範囲で、50mV/sの走査速度で電位をサイクルした。サイクルごとの各電位における電流値を比較し、電極安定性を確認した。
あわせて、可逆水素電極電位に対して0.4Vの電位での酸素雰囲気と窒素雰囲気の電流値を比較し、酸素還元電流を求めた。
【0093】
以上の結果をまとめ、実施例1、2および比較例1の電極触媒における各測定値を図6に示す。
【0094】
まず、評価の結果、いずれの電極触媒1〜3も走査電位範囲内で電流値の変動はなく、安定していた。
図6に示すように、電極触媒1の酸素還元電流は、電極の単位面積当たりで2941μA/cmを示し、電極触媒2の酸素還元電流は、電極の単位面積当たりで1963μA/cmを示した。
対して、電極触媒3の酸素還元電流は、電極の単位面積当たりで518μA/cmを示し、電極触媒1,2と比べて低い値となった。
【0095】
以上の結果より、電極触媒の酸素欠陥指数および結晶性指数の値と触媒活性との間に相関が見られることが確認でき、本発明の有用性が確かめられた。
【符号の説明】
【0096】
11,21,…水タンク、22…原料タンク、13,23…送液ポンプ、14,24…加熱器、30…混合部、40…反応器、41…内部配管、44…加熱器、51…冷却器、52…フィルター、53…背圧弁、60…回収容器、110,210,220…弁、1013…ポンプ、1014…純水ラインヒータ、1022…原料タンク、1023…ポンプ、1024…原料ラインヒータ、1040…反応ラインヒータ、1060…回収容器、1070…回収ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長周期型周期表における第4族元素および第5族元素からなる群より選択される1種以上の金属元素および酸素原子を含む金属化合物と、該金属化合物の少なくとも一部を被覆する炭素材料と、から構成され、
前記金属元素のEXAFS測定によるEXAFS振動をフーリエ変換することで求められる動径分布関数における、第一位近接元素のピーク値の逆数として示される酸素欠陥指数が0.125以上0.170以下であり、
前記動径分布関数における第二位近接元素のピーク値として示される結晶性指数が4.5以上8.0以下であることを特徴とする電極触媒。
【請求項2】
BET比表面積が15m/g以上500m/g以下であり、以下の式(1)により求めた炭素被覆率が0.05以上0.5以下であることを特徴とする請求項1に記載の電極触媒。
[数1]
炭素被覆率=炭素量(質量%)/BET比表面積(m/g) …(1)
【請求項3】
前記金属元素が、ジルコニウムであることを特徴とする請求項1または2に記載の電極触媒。
【請求項4】
前記金属化合物が、酸化ジルコニウムであることを特徴とする請求項3に記載の電極触媒。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−17490(P2012−17490A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−154210(P2010−154210)
【出願日】平成22年7月6日(2010.7.6)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成21年度 独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「固体高分子形燃料電池実用化戦略的技術開発/要素技術開発/酸化物系非貴金属触媒の研究開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】