説明

電極部材、アンテナ回路及びICインレット

【課題】回路パターンの内側の端部と外側の端部とを導通するジャンパの切断を抑制可能な電極部材を提供する。
【解決手段】回路基材3と、回路基材3の少なくとも一面に設けられた互いに導通してない第1端子41及び第2端子42とを備え、前記第1端子41と前記第2端子42とをジャンパ45で導通するための電極部材であって、前記第1端子41及び前記第2端子42のうち少なくとも一方の外周縁における前記ジャンパ45と重なる位置に、前記回路基材3の一面側から見たときの形状が非直線状の非直線部412及び非直線部413が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極部材、アンテナ回路及びICインレットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、本等の物品に貼り付けられたICタグを用いて、物品を識別したり管理したりする非接触式RFID(Radio Frequency Identification)が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この特許文献1には、図11に示すように、回路基材3と、この回路基材3の一面に設けられたアンテナ回路9及び図示しないICチップとを備えた構成が開示されている。アンテナ回路9は、回路パターン40と、第1端子91と、第2端子92と、図示しない第3端子と、絶縁膜44と、ジャンパ45とを備える。
【0004】
回路パターン40は、図11では図示しないが、四角板状の回路基材3の周縁に沿うコイル状に設けられる。
第1端子91は、回路パターン40の内側の端部と導通するように設けられる。第2端子92は、回路パターン40を挟んで第1端子91と対向する位置に設けられる。第1端子91の回路パターン40と対向する側縁911、及び、第2端子92の回路パターン40と対向する側縁921は、それぞれ回路基材3の一面側から見たときの形状が直線状となるように設けられる。
第3端子は、回路パターン40の外側の端部と導通するように設けられる。
また、第2端子92と第3端子との間には、ICチップが設けられる。このICチップは、2本のリード線により、第2端子92と第3端子とにそれぞれ導通する。
【0005】
絶縁膜44は、回路パターン40における第1端子91と第2端子92とに挟まれた部分を覆うように設けられる。
ジャンパ45は、第1端子91上に位置する第1接続部451と、第2端子92上に位置する第2接続部452と、絶縁膜44上に設けられ第1接続部451及び第2接続部452を連結する連結部453とを備える。すなわち、ジャンパ45は、第1端子91と第2端子92とを導通し、且つ、絶縁膜44により回路パターン40と導通しない状態で設けられる。このジャンパ45は、コストやプロセスの観点から、導電性ペーストを印刷することにより設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−20472号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1に記載のようなICタグは、本に貼付されたり、財布の中にしまわれたりするので、耐屈曲性が求められる。しかしながら、特許文献1に記載のような構成では、回路基材3が、側縁911とほぼ重なる直線状の折曲線Lを中心に、且つ、過度な屈曲力を加えて当該折曲線Lが頂点となるような山型に折り曲げられると、以下のような問題が発生するおそれがある。
【0008】
すなわち、図12に示すように、ジャンパ45における折曲線Lに沿って折り曲げられる部分954(以下、ジャンパ折曲部分954という(2点鎖線で示す))には、折り曲げ状態に応じて亀裂を発生させる力が作用する。特に、ジャンパ折曲部分954のうち側縁911と重なる部分(以下、重複部分という)には、側縁911が存在するため、当該重複部分を境界とした段差が生じる。このため、重複部分が側縁911により山型の頂点方向に押され、この押される力がジャンパ折曲部分954に亀裂を発生させる力(以下、亀裂発生力という)として作用するおそれがある。
図12に示す構成では、ジャンパ折曲部分954全体が直線状の側縁911と重なるため、ジャンパ折曲部分954は、重複部分のみで構成されることになる。このため、ジャンパ折曲部分954全体において段差による亀裂発生力が作用し、回路基材3が折曲線Lを中心に繰り返し折り曲げられると、図13に示すように、ジャンパ45が完全に切断されてしまい、第1端子91と第2端子92との間の導通がとれなくなるおそれがある。
【0009】
本発明の目的は、第1端子と第2端子とを導通する導電材の切断を抑制可能な電極部材、アンテナ回路及びICインレットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、以下の構成を要旨とするものである。
(1)回路基材と、回路基材の少なくとも一面に設けられた互いに導通していない第1端子及び第2端子とを備え、前記第1端子と前記第2端子とを導電材で導通するための電極部材であって、前記第1端子及び前記第2端子のうち少なくとも一方の外周縁における前記導電材と重なる位置に、前記回路基材の一面側から見たときの形状が非直線状の非直線部が設けられていることを特徴とする電極部材。
(2)前記非直線部は、鋭角又は鈍角の屈曲部、波型形状の屈曲部、略コ字状の屈曲部のうちの少なくとも一つを有することを特徴とする(1)に記載の電極部材。
【0011】
(3)(1)又は(2)に記載の電極部材と、前記回路基材の前記第1端子及び前記第2端子を設けた面に設けられたコイル状の回路パターンと、前記電極部材の前記第1端子と前記第2端子とを導通する導電材とを備えることを特徴とするアンテナ回路。
(4)(3)に記載のアンテナ回路と、ICチップとを備え、前記ICチップを設けることで、前記電極部材と前記回路パターンと前記導電材とが導通し、一つの閉回路となることを特徴とするICインレット。
【発明の効果】
【0012】
本発明の電極部材、アンテナ回路及びICインレットによれば、第1端子と第2端子とを導通する導電材の切断を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係るICタグの断面図。
【図2】前記実施形態及び実施例1におけるICタグを構成するICインレットの平面図。
【図3】前記実施形態におけるICタグの要部の平面図。
【図4】前記実施形態におけるICタグの作用の説明図であり、亀裂発生前の状態を示す。
【図5】前記実施形態におけるICタグの作用の説明図であり、亀裂発生後の状態を示す。
【図6】本発明の実施例2におけるICタグの要部の平面図。
【図7】本発明の実施例3におけるICタグの要部の平面図。
【図8】本発明の実施例4におけるICタグの要部の平面図。
【図9】本発明の実施例におけるテスト用長尺シートの平面図。
【図10】前記実施例における曲げ試験の説明図。
【図11】従来技術及び本発明の比較例1に係るICタグの要部の平面図。
【図12】前記従来技術におけるICタグの作用の説明図であり、亀裂発生前の状態を示す。
【図13】前記従来技術におけるICタグの作用の説明図であり、亀裂発生後の状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の電極部材及びアンテナ回路によれば、例えば、第1端子の外周縁を構成する側縁における導電材としてのジャンパと重なる位置に、回路基材の一面側から見たときの形状が非直線状の非直線部を設けている。
このため、回路基材が、側縁と一部が重なる直線状の折曲線を中心に、且つ、当該折曲線が頂点となるような山型に折り曲げられた場合、ジャンパ折曲部分(ジャンパにおける折り曲げられる部分)は、側縁の非直線部と重なる重複部分と、当該非直線部と重ならない非重複部分とから構成されることになる。
ここで、ジャンパ折曲部分の非重複部分では、側縁が存在しないため、当該非重複部分を境界とした段差が生じない。このために、非重複部分が側縁により折り曲げの頂点方向に押されることが無く、亀裂発生力が作用することがないと考えられる。
従って、回路基材が繰り返し折り曲げられても、ジャンパ折曲部分の重複部分では、どちらかと言えば亀裂発生力の作用により亀裂が発生し易いが、非重複部分では、亀裂が発生することを抑制でき、結果として、ジャンパ折曲部分の全体が切断されることを抑制することができる。
また、本発明の電極部材では、前記非直線部は、鋭角又は鈍角の屈曲部を有することが好ましい。
さらに、本発明の電極部材では、前記非直線部は、サインカーブのような波型状の屈曲部を有することが好ましい。
そして、本発明の電極部材では、前記非直線部は、略コ字状の屈曲部を有することが好ましい。
【0015】
本発明のICインレットは、上述のアンテナ回路と、ICチップとを備え、前記ICチップを設けることで、前記電極部材と前記回路パターンと前記導電材とが導通し、一つの閉回路となることを特徴とする。
この発明によれば、導電材としてのジャンパの切断を抑制できるので、柔軟性があり耐折強度の高いICインレットを得ることが出来る。
【0016】
[実施形態]
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。尚、図11〜図13に基づき説明した従来技術と同一の構成については、同一名称及び同一符号を付して、説明を省略あるいは簡略にする。
【0017】
(ICタグの概略構成)
まず、ICタグの概略構成について説明する。
図1に示すように、本実施形態のICタグ1は、パッシブ型のICタグであり、ICインレット2に対し、所定のタグ加工を施して得たタグ形状のものである。このICタグ1は、ICインレット2と、印字用表面シート11と、両面粘着シート12とを備える。
ICインレット2は、四角板状の回路基材3と、アンテナ回路4と、ICチップ5とを備える。
【0018】
印字用表面シート11は、回路基材3のアンテナ回路4が形成された面と反対側の面に設けられる。印字用表面シート11は、回路基材3のアンテナ回路4が形成された面に設けても良い。
両面粘着シート12は、回路基材3のアンテナ回路4が形成された面に設けられ、アンテナ回路4やICチップ5を保護する。両面粘着シート12は、シート状の保護層121と、この保護層121の一面に設けられた粘着剤層122と、保護層121の他面に設けられた粘着剤層123とを備える。粘着剤層122は、保護層121を回路基材3に貼り合わせるものであり、アンテナ回路4と実装されたICチップ5とをこれらの凹凸に追従して封止する。粘着剤層123は、ICタグ1と本等の物品とを貼り合わせるものである。両面粘着シート12は、回路基材3のアンテナ回路4が形成された面と反対の面に設けても良い。
【0019】
図2に示すように、アンテナ回路4は、回路基材3の周縁に沿うコイル状の回路パターン40と、この回路パターン40の内側の端部と導通する第1端子41と、回路パターン40を挟んで第1端子41と対向する位置に設けられた第2端子42と、回路パターン40の外側の端部に導通する第3端子43と、回路パターン40における第1端子41と第2端子42とに挟まれた部分を覆う絶縁膜44と、第1端子41と第2端子42とを導通する導電材としてのジャンパ45とを備える。
なお、回路基材3と、第1端子41及び第2端子42とは、本発明の電極部材を構成している。
回路パターン40は、主にアンテナ機能や電力供給機能を担う。回路パターン40の形成方法としては、例えば、金、銀、銅、ニッケル、アルミニウム等の金属線や被覆銅線などをコイル状に巻く方法、後述する導電性ペーストをコイル状に印刷する方法、回路基材3にラミネートされた銅、金、銀、ニッケル、アルミニウム等の導電性金属層をエッチングによりコイル状に形成する方法が挙げられる。
第1,第2,第3端子41,42,43は、回路パターン40と同様の方法により形成することができる。
【0020】
絶縁膜44としては、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、アクリルウレタン樹脂等を主成分とする絶縁性の樹脂を用いることができる。
ジャンパ45は、少なくとも一部が第1端子41上に位置する第1接続部451と、少なくとも一部が第2端子42上に位置する第2接続部452と、絶縁膜44上に設けられ第1接続部451及び第2接続部452を連結する連結部453とを備える。すなわち、ジャンパ45は、回路パターン40と導通しない状態で設けられる。このジャンパ45は、金、銀、銅、アルミニウム、ニッケル等の金属粒子を分散させた導電性ペースト又は導電性インクを印刷することで設けられる。
【0021】
ICチップ5は、2本のリード線51により、第2端子42及び第3端子43とそれぞれ導通するように設けられる。具体的に、ICチップ5は、フリップチップ方式により接合材52を使用して実装されている。接合材52は、ICチップ5の実装後、熱圧着されることで硬化体となり、ICチップ5と回路基材3との間、及び、ICチップ5の周縁に配置される。接合材52としては、例えば、ハンダ、異方導電性接着剤(ACA)、異方導電性ペースト(ACP)を適用できる。
尚、本実施形態では、回路パターン40の外側でICチップ5を実装したが、内側や複数の巻き線の途中において実装しても良い。その場合には、第1,第2,第3端子41,42,43の位置や個数を適宜変更する必要がある。
このようにアンテナ回路の接続されていない両端をICチップで導通し、接続が閉じていて電流が流れる状態の回路、つまりICインレットの状態の回路を閉回路という。
【0022】
(ICタグの要部の構成)
次に、ICタグ1の要部の構成について説明する。
図3に示すように、第1端子41の回路パターン40と対向する第1側縁411には、回路基材3の一面側から見たときの形状が非直線状の非直線部412が設けられる。この非直線部412は、鈍角の屈曲部413が複数並ぶ凸凹状に形成される。この屈曲部413は、二つの直線状の辺414から構成される。
ここで、屈曲部413の角度は、90度〜170度が好ましく、90度〜120度がさらに好ましい。角度が170度を超えると、180度に近似するため、後述するジャンパ45の切断抑制効果が少なくなる場合があるからである。
また、屈曲部413の高さ(凹みの深さ)は、0.01mm〜5mmが好ましく、0.1mm〜2mmがさらに好ましい。さらに、屈曲部413の1周期の長さ(隣り合う屈曲部413の頂点の間隔)も、0.01mm〜5mmが好ましく、0.1mm〜2mmがさらに好ましい。高さや1周期の長さが0.1mm未満であると、屈曲部413が細かすぎて精度を保てず、ジャンパ45の切断抑制効果が少なくなる場合があるからである。また、5mmを超えると、屈曲部413が大きすぎるため、ジャンパ45の切断抑制効果が少なくなる場合があるからである。
【0023】
また、非直線部412は、ジャンパ45の第1接続部451と重なるように設けられる。すなわち、第1端子41におけるジャンパ45と重なる部分は、直線状でなく凸凹状となる。
また、第2端子42の回路パターン40と対向する側縁421にも、非直線部412と同じ形状の非直線部422が設けられる。この非直線部422は、二つの直線状の辺424から構成された鈍角の屈曲部423を複数有する。そして、非直線部422は、ジャンパ45の第2接続部452と重なるように、第2端子42におけるジャンパ45と重なる部分は、直線状でなく凸凹状となるように設けられる。
【0024】
(ICタグの作用)
次に、上述の構成を有するICタグ1の作用を説明する。
図3及び図4に示すように、第1端子41の側縁411とほぼ重なる直線状の折曲線Lを中心とした山型に、ICタグ1が折り曲げられた場合、アンテナ回路4には以下のような力が作用する。
図4に示すように、ジャンパ折曲部分454(ジャンパ45における折り曲げられる部分(2点鎖線で示す))は、非直線部412と重なる重複部分455と、側縁411及び非直線部412と重ならない非重複部分456とから構成されることになる。
このような構成において、回路基材3が折り曲げられると、重複部分455には当該重複部分455を境界とした段差による亀裂発生力が作用し、非重複部分456には重複部分455のような段差による亀裂発生力が作用しない。このため、回路基材3が繰り返し折り曲げられても、図5に示すように、重複部分455に亀裂Cが発生し易い一方で、非重複部分456には亀裂Cが発生し難く、ジャンパ折曲部分454全体の切断が抑制される。
尚、第2端子42の側縁421とほぼ重なる直線状の折曲線を中心とした山型にICタグ1が折り曲げられた場合にも、非直線部422が存在するため、上述の作用によりジャンパ折曲部分全体の切断が抑制される。また、谷型にICタグ1が折り曲げられた場合も同様にジャンパ折曲部分全体の切断抑制効果を得ることができる。
【0025】
(実施形態の効果)
本実施形態に係るICタグ1によれば、第1,第2端子41,42の側縁411,421に非直線部412,422を設けているため、回路基材3が折り曲げられた場合に、ジャンパ折曲部分454を、亀裂発生力が作用する重複部分455と、亀裂発生力が作用しない非重複部分456とで構成することができる。従って、回路基材3が繰り返し折り曲げられても、ジャンパ折曲部分454全体の切断を抑制できる。
また、屈曲部413,423の角度を170度以下に設定したり、屈曲部413,423の高さや1周期の長さを0.01mm〜5mmに設定することで、ジャンパ45の切断抑制効果を高めることができる。
【0026】
(実施形態の変形)
尚、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、以下に示すような変形をも含むものである、
前記実施形態では、ICタグとして、非接触式のRFIDに使用可能なICタグを例示したが、RFIDモジュールとしても適用することができる。また非接触ICカードやICカードモジュールとしても同様に適用することができる。
また、本実施形態では、パッシブ型のICタグを用いたが、アクティブ型でも良い。
さらには、非直線部412及び非直線部422の必ずしも両方を設けなくても良く、どちらか一方でも良い。
また、非直線部412,422の形状としては、屈曲部413,423を複数有する形状に限らず、屈曲部413,423を一つのみ有する形状としてもよい。
【0027】
さらに、屈曲部は、鈍角ではなく、鋭角のものであってもよい。鋭角の角度としては、10度〜90度が好ましく、30度〜90度がさらに好ましい。角度が10度未満であると、隣り合う屈曲部の間隔が極端に狭くなり、0度に近似したかのようになるため、ジャンパ45の切断の抑制効果が少なくなる場合があるからである。
また、非直線部の形状としては、サインカーブ曲線などの波型形状、あるいは、略コ字状の屈曲部を、少なくとも一つ有する形状等、非直線状であればいかなる形状であっても良い。
上述のような鋭角、波型形状、略コ字状の屈曲部の高さや1周期の長さは、0.01mm〜5mmが好ましく、0.1mm〜2mmがさらに好ましい。このような形状とすることで、本実施形態の屈曲部413,423と同様の作用により、ジャンパ45の切断抑制効果を高めることができる。
【実施例】
【0028】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定されるものではない。
(実施例1)
実施例1のICタグを、アンテナ回路の作製工程と、ICインレットの作製工程と、ICタグの作製工程とにより作製した。
(アンテナ回路の作製工程)
図3に示すように、回路基材3としてのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに銅箔を貼りあわせた、ニカフレックス(ニッカン工業(株)製(銅/PET=35μm/50μm)、製品名:F−10T50C−1)に、スクリーン印刷法にてエッチングレジストパターンを印刷した。その後、エッチングにて不要な銅箔を除去し、PETフィルム上に回路パターン40、第1,第2,第3端子41,42,43を形成した。その後、第1端子41と第2端子42とを導通させるために、絶縁レジストインク(東洋紡績(株)製、製品名:RF−100G−35)を用いて第1端子41と第2端子42の間の回路パターン40上に図3のような矩形上かつ厚さ寸法25μmの絶縁膜44を形成し、銀ペースト材(東洋紡績(株)製、製品名:DW250L−1)を用いて図3に示すような、第1端子41と第2端子42を導通するように、第1接続部451、第2接続部452、連結部453を有するジャンパ45を形成した。ジャンパ45の形成には、スクリーン印刷法を用いた。これにより、アンテナ回路4を作製した。
尚、第1,第2端子41,42の側縁411,421は、図3に示すような、鈍角に屈曲する複数の屈曲部413,423からなる凸凹状の非直線部412,422を有している。また、屈曲部413,423の角度は、100°であり、屈曲部413,423を構成する辺414,424のそれぞれの長さは、0.64mmであった。
【0029】
(ICインレットの作製工程)
アンテナ回路4へRFID−ICチップ5(NXP(株)製、製品名:ICODESLI)をフリップチップ方式により実装することにより、ICインレットの作製を行った。実装には、フリップチップ実装機(九州松下(株)製、製品名:FB30T−M)を用いた。接合材52には、異方導電性ペースト(ACP、京セラケミカル(株)製、製品名:TAP0602F)を使用した。そして、ACPへの加熱温度がICチップ5において220℃、ICチップ5への荷重が2N(200gf)、加圧加熱時間が7秒間となるような条件で、実装を行った。
【0030】
(ICタグの作製工程)
ICインレットのICチップ5を実装している面に、両面粘着シート(リンテック株式会社製、製品名:PET25W PAT1 8KX 8EC)を貼り合わせ、反対面に印字用表面シートとしてポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡績株式会社製、製品名:クリスパーK2411)を貼り合わせることで、ICタグを作製した。
同様の方法により、ICタグを20枚作製した。ICタグの外形は、長辺方向の長さが65mmであり、短辺方向の長さが35mmであった。
【0031】
(実施例2)
図6に示すように、第1,第2端子61,62の側縁611,621に、鋭角に屈曲する複数の屈曲部613,623からなる凸凹状の非直線部612,622を設けたこと以外は、実施例1と同様の条件でICタグを20枚作製した。屈曲部613,623の角度は、65°であった。また、屈曲部613,623を構成する辺614,624の長さは、0.5mmであった。
【0032】
(実施例3)
図7に示すように、第1,第2端子63,64の側縁631,641に、サインカーブ状の波型状に屈曲する複数の屈曲部633,643からなる凸凹状の非直線部632,642を設けたこと以外は、実施例1と同様の条件でICタグを20枚作製した。屈曲部633,643の形状は、1周期の長さ1.2mm、高さ0.6mmのサインカーブ状の波型であった。
【0033】
(実施例4)
図8に示すように、第1,第2端子65,66の側縁651,661に、略コ字状(四角状)に屈曲する複数の屈曲部653,663からなる凸凹状の非直線部652,662を設けたこと以外は、実施例1と同様の条件でICタグを20枚作製した。屈曲部653,663の深さ方向の辺654,664の長さは、0.4mmであり、幅方向の辺655,665の長さは、0.25mmであった。
【0034】
(比較例1)
図11に示すように、第1,第2端子91,92の側縁911,921を直線状に形成した、すなわち側縁911,921に非直線部を設けなかったこと以外は、実施例1と同様の条件でICタグを20枚作製した。
【0035】
(評価方法)
実施例1のICタグ1を、以下の手順により評価した。実施例2〜4及び比較例1のICタグについても、同様に評価した。
(1)実施例1のICタグ1の動作確認を、リード/ライト試験(試験機:FEIG社製、製品名:ID ISC. MR101−USB)にて実施した。また、顕微鏡を用いて、ICタグのジャンパ切断の有無を目視検査で行った。
【0036】
(2)リード/ライト試験及び目視検査において問題が無かった20枚の実施例1のICタグ1を、図9に示すように、幅75mm、厚み25μmのPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム71に並べて貼り合わせることで、テスト用長尺シートを作製した。この際、ICタグ1を、PETフィルム71の長辺方向に沿って並べた。また、ICタグ1を、側縁411,421が延びる方向とPETフィルム71の短辺方向とが一致するように、且つ、回路基材3のアンテナ回路4が設けられている面とPETフィルム71とが対向するように貼り合わせた。このテスト用長尺シートを、図10に示すように、直径20mmの円柱ロール72の表面に回し掛け、テスト用長尺シートの一端に荷重7.5Nの錘73を吊るした。そして、テスト用長尺シートの他端を手で掴んで、引き上げ及び引き下げの動作を繰り返す曲げ試験を行った。
この曲げ試験の際、ICタグ1を上述したように貼り合わせているため、ICタグ1は、円柱ロール72により、側縁411,421とほぼ重なる直線状の折曲線Lを中心とした谷型に曲げられる。なお、実施例2〜実施例4及び比較例1のICタグについても、側縁611,621,631,641,651,661,911,921とほぼ重なる折曲線Lを中心とした谷型に曲げられる。
そして、曲げ試験の1往復を1回としてカウントし、50回、75回、100回の試験終了時点で、リード/ライト試験及び目視検査を行った。
表1に、評価結果を示す。尚、ジャンパ45が切断されることにより、リード/ライト試験おいて正常に動作しないICタグを、不良品とみなした。
【0037】
【表1】

【0038】
表1に示すように、側縁411,421,611,621,631,641,651,661に非直線部412,422,612,622,632,642,652,662を設けた実施例1〜4の不良率は、曲げ試験を100回行っても0%であったのに対し、側縁911,921に非直線部を設けない比較例1の不良率は、試験回数が増えるに従って高くなり、75回行った時点で8割程度が不良になってしまうことが分かった。なお、不良になったものを、蛍光灯照明付実体顕微鏡を用いて40倍の倍率で観察したところ、ジャンパの側縁の切断が確認された。このことから、第1,第2端子の側縁のジャンパと重なる位置に、回路基材の一面側から見たときの形状が非直線状の非直線部を設けることで、ジャンパの切断を抑制できることが確認できた。
【符号の説明】
【0039】
2 ICインレット
3 回路基材
4 アンテナ回路
5 ICチップ
40 回路パターン
41 第1端子
42 第2端子
45 導電材としてのジャンパ
412,422 非直線部
413,423 屈曲部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路基材と、
回路基材の少なくとも一面に設けられた互いに導通していない第1端子及び第2端子とを備え、
前記第1端子と前記第2端子とを導電材で導通するための電極部材であって、
前記第1端子及び前記第2端子のうち少なくとも一方の外周縁における前記導電材と重なる位置に、前記回路基材の一面側から見たときの形状が非直線状の非直線部が設けられていることを特徴とする電極部材。
【請求項2】
前記非直線部は、鋭角又は鈍角の屈曲部、波型形状の屈曲部、略コ字状の屈曲部のうちの少なくとも一つを有することを特徴とする請求項1に記載の電極部材。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の電極部材と、
前記回路基材の前記第1端子及び前記第2端子を設けた面に設けられたコイル状の回路パターンと、
前記電極部材の前記第1端子と前記第2端子とを導通する導電材とを備えることを特徴とするアンテナ回路。
【請求項4】
請求項3に記載のアンテナ回路と、
ICチップとを備え、
前記ICチップを設けることで、前記電極部材と前記回路パターンと前記導電材とが導通し、一つの閉回路となることを特徴とするICインレット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−198795(P2012−198795A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−63007(P2011−63007)
【出願日】平成23年3月22日(2011.3.22)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【Fターム(参考)】