説明

電気コネクタ

【課題】FPC(平型配線部材)の接続が容易で、かつ薄型構造でありながら接続信頼性の高い電気コネクタを提供する。
【解決手段】プラグ部材1は、挿嵌状態において上方向を開口方向と成す開口部11を設けたプラグボディ40を有するとともに略平板状でかつ開口部に開口方向より介入し得る縦辺部31とこの縦辺部に対して略直角方向に繋がる略平板状の横辺部32とを有した加圧手段30を具備しており、さらにプラグコンタクト20は、その一部が開口部内の内側壁12より突出するよう位置決めされており、開口部にFPCの端部71が挿入されさらに縦辺部が介入した状態において、FPCの端部が縦辺部とプラグコンタクトの一部24との間で挟持されるとともに、横辺部がFPCの端部より延長するFPCの延長部72を部分的に覆うように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端部に複数の導体パターンが配設されているフレキシブルプリント配線板やフレキシブルフラットケーブル等の可撓性を有した平型配線部材をプリント回路基板やフレキシブルプリント配線板等の回路基板に接続するのに好適な電気コネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
小型化や薄型化が進展する電子機器において、薄型で可撓性(柔軟性)を有し導体が狭 ピッチで配設可能な平型配線部材(以下これをFPCと称す)が、その電子機器内の配線部材として多用されている。このFPCをプリント回路基板(プリント配線基板)等の回路基板に接続する方法として、回路基板上にソケット部材を搭載し、このソケット部材に挿着して電気的に導通接続せしめるプラグ部材にFPCの端子部を半田付けする形態がある。しかし、この形態におけるFPCの半田付け作業は手間と時間がかかり容易とは言えないとされ、これを解決する目的で、FPCとプラグ部材との接続を半田付け作業によらずに行える電気コネクタが特開平07−22127号公報(特許文献1)で提案されている。
【0003】
この特許文献1記載の従来例によれば、略倒立L字状またはT字状の断面外形を有しその横辺部下面および縦辺部側面に沿うようにプラグコンタクトピンが配されたプラグ部材と、そのプラグ部材の横辺部に対向配置されるプラグカバーと、を備え、ソケット部材にプラグ部材の縦辺部が挿入されるとともに、プラグカバーとプラグ部材の横辺部との間でFPCの端子部を挟むように(プラグ部材の横辺部がプラグコンタクトピンの横辺部の略く字状接点部を付勢するように)されている。この構成によってFPCの端子部にプラグコンタクトピンの横辺部が圧接され電気的接続が可能となるため、プラグコンタクトピンとFPCの端子部との接続作業を半田付け等の面倒な作業を要せずに容易に行えるとされている。
【特許文献1】特開平07−22127号 公報
【0004】
また、FPCの端子部を半田付けせずに電気的接続する従来例として、特開平08−195256号公報(特許文献2)および特開平09−283237号公報(特許文献3)などが提案されている。これらの従来例にあっても、コンタクトピンに略U字状や略コ字状の開口部を設け、この開口部にFPCの端子部を挿入した状態で、開口部の一方側を支点として揺動できるように設けた加圧部材の操作により、端子部が開口部の他方側の内側面に偏寄されて強く当接されるように構成されている。これにより、加圧部材の操作で容易にFPCの端子部をコンタクトピンに電気的接続させることができる。
【特許文献2】特開平08−195256号公報
【特許文献3】特開平09−283237号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
小型化、高密度化が進む電子機器においては、その内部におけるプリント回路基板等の回路基板とFPCとの接続構造においても薄型(低背)化、多極化の要求が高まっており、その接続が容易であることはもちろんのこと、多極であっても薄型化要求に対応可能で、かつ接続の信頼性を高められる形態であることが望ましい。
【0006】
特許文献1記載の従来例において、FPCとプラグ部材との接続(電気的導通)性能を確保させるため、その接続部に対して任意(プラグコンタクトピンの横辺部の略く字状接点部が弾性変位することにより発生させる一定以上)の圧接力(挟持力)を付加させる必要がある。そして、ソケットコンタクトピン数およびこれに対応するプラグコンタクトピン数を増大(多極化)させる場合、コネクタとしての(一定間隔で配設固定される全プラグコンタクトピンから発生させる)総合的な圧接力は(プラグコンタクトピンの数にほぼ比例して)必然的に増大させる必要がある。しかし、この多極形態における総合圧接力の増加は、その総合圧接力の反力を受けるプラグ部材の(多極化によってプラグコンタクトピンの配設方向に伸長する形態となる)横辺部における応力増加を招き、その横辺部が(特にプラグカバーの係止部とプラグ部材のフック部との掛止箇所から離れたプラグ部材の横辺部の中間部分が浮き上がるように)反ってしまうことが起こり得る。そのため、プラグ部材の横辺部によるプラグコンタクトピンの横辺部への付勢力が弱まり、圧接による電気的接続が不安定となる可能性が生じる。この不具合を防ぐ方策としては、(プラグ部材の横辺部を強固なものにするため)プラグ部材の横辺部の肉厚(横辺部の上下面間の厚み)を増大させる方策が容易とされようが、この肉厚の増大化は、プラグ部材外形の上下方向の大型化に繋がり、前述の薄型化要求への対応を困難とさせる。
【0007】
また、特許文献1記載の従来例の形態において、プラグカバーとプラグ部材の横辺部との間で挟持されるFPCの(FPCに横方向からの引き抜き力が加わった場合、FPCの抜けを妨げるための)保持能力は、その挟持部分の(前述の圧接力に一定の摩擦係数を乗じた)摩擦力に相関している。一方、この従来例の形態において、前述の薄型化ニーズに対応するための策としては、プラグ部材の横辺部の上下方向の肉厚を薄くする方策が有効である。しかしながら、プラグ部材の横辺部を薄厚構造とすることは、その横辺部の剛性を低下させることになり、(FPCの端子部を圧接する)プラグコンタクトピンの接点部を押さえ込むために必要な付勢力およびこれに関わる摩擦力を低下させることとなる。そして、この摩擦力の低下は、FPCの保持機能の低下を来たし、接続位置のズレやFPCの不用意な抜けなどの接続信頼性の悪化に繋がる。よって、前述の従来例の形態では、薄型で接続信頼性の高い多極のFPC接続用電気コネクタの実現が困難とされる。
【0008】
そして、特許文献2または3記載の従来例にあっては、各コンタクトピン毎に開口部の一方側を支点とする加圧部材でFPCの端子部を他方側の内側面に当接させる力を作用させるので、FPCが多極化されても、特許文献1記載の従来例のごとく配設位置によって端子部をコンタクトピンに当接させる力が異なるようなことがない。しかるに、特許文献2および3記載の従来例にあっても、特許文献1記載の従来例と同様に、FPCの保持能力はFPCの端子部を挟持する力の大きさに応じた摩擦力のみによるものであり、必ずしも充分なものでなかった。
【0009】
よって、本発明の目的とするところは、上記のごとき従来技術の有する問題点を解決するものであって、FPCの接続が容易で、かつ薄型構造でありながら接続信頼性の高い電気コネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の電気コネクタは、回路基板上に搭載され、ソケットコンタクトが配されたソケット部材と、前記回路基板上に搭載されたソケット部材に対して前記搭載面の上方向より挿嵌(挿入嵌合)し、その挿嵌状態において前記ソケットコンタクトと電気的に接続せしめるプラグコンタクトが配されたプラグ部材と、を備えており、前記プラグ部材は前記挿嵌状態において前記上方向を開口方向と成す開口部を設けたプラグボディを有するとともに略平板状でかつ前記開口部に前記開口方向より介入し得る縦辺部とこの縦辺部に対して略直角方向に繋がる略平板状の横辺部とを有した加圧手段を具備しており、さらに前記プラグコンタクトはその一部が前記開口部内の内側壁より突出するよう位置決めされており、前記開口部に前記開口方向よりFPCの端部が挿入されさらに前記開口部に前記開口方向より前記縦辺部が介入した状態において、前記FPCの端部が前記縦辺部と前記プラグコンタクトの一部との間で挟持されるとともに前記横辺部が前記FPCの端部より略直角方向に折り曲げて延長される前記FPCの延長部を部分的に覆うようにされている。
【0011】
開口部に対しその開口方向よりFPCの端部を挿入しさらに加圧手段の縦辺部をその方向より(実質的には、縦辺部が、FPCの端部の片面と開口部のプラグコンタクトの一部が突出する側の内側壁に対向する内側壁との隙間を押し広げるように)介入させてFPCを挟持させる構成は、その開口部の内側壁に突出させたプラグコンタクトの一部に対してFPCの端部を縦辺部の肉厚方向に圧接(加圧)させて電気的に接続させることを(例えば縦辺部の肉厚を任意に設定するなどして)容易とさせるものである。さらに、縦辺部と直角方向(縦辺部と横辺部とにより略倒立L字状断面外形を形成するよう)に繋がる加圧手段の横辺部は、加圧手段の剛性を大とするとともに、加圧手段を介入させる操作を容易にさせる手段(例えば押し込み治具の押し当て部)と成り得る。そして、その横辺部をFPCの延長部の折り曲げ部の近辺を部分的に覆うようにさせることにより、挟持されたFPCの端部より延長する延長部を端部に対して直交する方向に(好適には、端部が加圧手段の略倒立L字状断面外形の内壁面における垂直面に、延長部が前記内壁面の水平面にほぼ沿うように)曲げ込むことができ、さらにその折り曲げ状態を保持することができる。この折り曲げ形態は、プラグ部材に対してFPCの引掛かり機能を果たすことが可能な形態であり、FPCの保持(プラグ部材からの抜け防止)機能を高めさせるものである。
【0012】
請求項2によれば、前記プラグコンタクトは、上記構成に加えて、対向する二片のうち一方の片が前記プラグコンタクトの一部と成す略U字状のビーム部を有しており、前記開口部に前記FPCが前記挿入されつつ前記縦辺部が前記介入した状態において前記略U字状のビーム部の前記対向する二片の間に前記FPCの端部および前記縦辺部を介在せしめる設定で前記プラグボディに位置決めされているとともに前記対向する二片のうち他方の片の少なくともその一部が前記プラグボディの外側面側に露出するように設定されている。その(好適には、バネ用銅合金などの導電性弾性部材から成形される)略U字状のビーム部のその二片の剛性を利用したU字形弾性ばね構造は、その二片の間に介在する加圧手段を付勢し(FPCの端部を挟持するための加圧手段の)その加圧機能を高められるものである。また、ビーム部の一部をプラグボディの外側面側に露出させる構成は、この露出部をソケットコンタクトとの当接部として機能させることができ、(例えば、前記挿嵌状態においてプラグ部材をソケット部材にほぼ埋没させる形態など)薄型化を容易にさせるものである。
【0013】
また、請求項3によれば、前記加圧手段は、金属製であるとともに前記横辺部の側端部より屈曲して延出する延出片を有しており、前記ソケット部材は、前記ソケットコンタクトを配する合成樹脂製のソケットボディとそのソケットボディに装着された金属製の(回路基板上に搭載されるソケット部材の固定強化のために半田付けなどが施されるための)ソケット固定手段とを有しており、そのソケット固定手段は前記挿嵌状態において前記延出片と係合するように配されている。(好適には導電性の優れた表面処理が施された)金属製の加圧手段は、FPCの端部表面に導電層が配されている場合、前記挟持状態において(縦辺部がFPCの端部を挟持する構成であるため)その導電層との電気的導通を可能とし、前記挿嵌状態において延出片と係合するソケット固定手段に対しても(加圧手段を中継して)その導電層と電気的導通を可能する。また、(合成樹脂と比べて)剛性に優れた金属製であるため、(前述の薄型化対応のために)その横辺部の肉厚を(合成樹脂で成形した場合と比較して)低減させた場合でも、(開口部への介入操作やFPCの曲げ込み保持における負荷への耐性に優れるため変形や破損などの)物理的支障が起こり難い。
【0014】
さらに、請求項4は、本発明の電気コネクタに接続されるのに好適なFPCであって、一方の片面側には前記開口部に前記端部が挿入されつつ前記開口部に前記縦辺部が介入した状態において前記プラグコンタクトの一部に当接せしめる配置で導体パターンが形成されており、他方の片面側には前記端部から前記延長部にわたり導電層が形成されているとともに前記端部と前記延長部の間に前記導電層の形成密度を前記端部と比較して粗くした領域が略線状に設けられている。これらの構成により、プラグコンタクトの一部に当接可能な導体パターンを信号伝送路とした場合、導電層をシールド層として機能させて伝送特性を向上させることができ、さらに端部と延長部の間に導電層が粗とされた領域が設けられたことでその領域でFPCの屈曲性(柔軟性)が高められ、その端部と延長部との間に限定して意図的にその間を屈曲(FPCの抜け防止のため、プラグ部材に対してFPCの端部を引掛ける形態に折り曲げ施工)させることが容易となる。
【発明の効果】
【0015】
上述したように、本発明の電気コネクタは、薄型構造化に関係する加圧手段の横辺部の肉厚を必要以上に増大させなくともFPCを無半田で容易に接続することが可能であり、また接続されるFPCの保持機能が高められるため、薄型構造でありながら接続信頼性を向上させられるものである。また、FPCは、本発明の電気コネクタとの接続において、その接続特性を向上させられるとともに接続信頼性の向上をより容易にさせられるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、添付図面に基づき本発明の実施の形態を説明する。図1は本発明の電気コネクタの一実施例を構成するプラグ部材にFPCを接続した状態の斜視図、図2は本発明の電気コネクタの一実施例を構成するソケット部材の斜視図である。また、図3から図5は図1に示すプラグ部材を構成するプラグボディ、プラグコンタクト、加圧部材を示しており、さらに、図6から図8は図2に示すソケット部材を構成するソケットボディ、ソケットコンタクト、ソケット固定手段を示しており、さらにまた、図9は図1に示すFPCの一例を示しており、図10は図9のFPCを略直角方向に折り曲げた状態の断面を示している。
【0017】
図1に示すように、FPC7が接続されたプラグ部材1は、細長い略方形のプラグボディ10と、その長手方向に沿って一定のピッチで配列された複数のプラグコンタクト20と、両遠端側の側端部33より延出する延出片34を有しプラグボディ10の上面側にFPC7を部分的に覆うように装着された加圧手段30とで構成されている。また、図2に示すように、ソケット部材4は、細長い略薄方形のソケットボディ40と、その長手方向に沿ってプラグ部材1のプラグコンタクト20の配列に対応して一定のピッチで配列された複数のソケットコンタクト50と、加圧手段30の延出片34の配置に対応して両遠端側に装着されたソケット固定手段60とで構成されている。
【0018】
図3において、(3−a)図は、プラグボディ10の斜視図であり、(3−b)図は、(3−a)図におけるA−A線に沿った断面図である。合成樹脂製のプラグボディ10には、上方から底部15が臨めるように上方向(図3における上方向)を開口方向としてプラグボディ10の長手方向の両端近くまでに亘って長溝状に開口した開口部11が設けられており、また、プラグボディ10の外側面13および開口部11の内側壁12には、プラグコンタクト20を一定のピッチで配列せしめる位置決め溝14が設けられている。図4は、プラグコンタクト20の斜視図であり、導電性とバネ性の良い薄金属板から打ち抜き成形されたプラグコンタクト20は、略U字状のビーム部21を有しており、その対向する一方の片22と他方の片23との先端部に形成された突部24,25の対向間隔を押し広げる作用が加わった場合、一方の片22と他方の片23はその対向間隔が広がる方向に弾性変位し、互いにその対向する方向に向けて弾性反発力を発生させることを可能としている。
【0019】
図5において、(5−a)図は、加圧手段30の斜視図であり、(5−b)図は、(5−a)図における加圧手段30のその長手方向の中央部分35を断面視した断面図である。導電性を有する薄金属板から打ち抜き曲げ成形された加圧手段30は、平板状の横辺部32に対して直角方向に(内壁面37の垂直面38と水平面39とが直角に向き合うように)繋がる平板状の縦辺部31とを有しており、その縦辺部31の長手方向の幅寸法はプラグボディ10の(長溝状の)開口部11の長手方向の幅寸法より僅かに小さく設定されている。また、横辺部32の両側の側端部33からは、略角状の窓部36を有した延出片34が下方(図5における下方向)に延出されている。
【0020】
図6は、ソケットボディ40の斜視図であり、合成樹脂製のソケットボディ40には、上方から底面42が臨めるように上方向(図6における上方向)を開口方向としてプラグ部材1の下方部分を受容せしめるように長溝状に開口した凹部41が設けられており、また、その凹部41の内側面43には、ソケットコンタクト50をプラグコンタクト20の配列ピッチに対応した一定のピッチで配列せしめる位置決め溝44が設けられている。さらに、両遠端側には装着されたソケット固定手段60を装着するための装着溝45が設けられている。図7は、ソケットコンタクト50の斜視図であり、導電性とバネ性の良い薄金属板から打ち抜き曲げ成形されたソケットコンタクト50は、略U字状の弾性バネ片51を有しており、さらに基端部側に(ソケット部材1が回路基板に搭載されたとき、その回路基板に半田付けなどの接続手段により接続固定せしめるための)水平方向に延びたテール部52を有している。図8において、(8−a)図は、ソケット固定手段60の斜視図であり、(8−b)図は、(8−a)図に示したソケット固定手段60をその斜視方向を(反対方向に)変えて示した斜視図である。導電性を有する薄金属板から打ち抜き曲げ成形されたソケット固定手段60は、対向する略倒立U字状断面の係合バネ片62を有するとともに(ソケット部材1が回路基板に搭載されたとき、その回路基板に半田付けなどの接続手段により接続固定せしめるとともに必要があれば電気的接続させるための)水平方向に延出した固定片61を有している。また、対向する係合バネ片62のその対向間隔は、前記挿嵌状態において加圧手段30の延出片34と係合可能となるように(好適には、対向する係合バネ片62間で延出片34が挟持されるように)設定されている。
【0021】
図9において、(9−a)図は、FPC7の端末部分における一方の片面を平面視した部分平面図、(9−b)図は、その他方の片面を平面視した部分平面図、(9−c)図は、(9−b)部におけるB−B線に沿った断面図である。FPC7は、(合成樹脂フィルムから成る)ベース層78および(絶縁材料から成る)カバー層79と(銅箔から成る)導電体層により構成されている。端部71の一方の片面73側には、プラグ部材1に配されるプラグコンタクト20の配列ピッチに対応して配列する接続端子として作用する導体パターン75が形成されており、他方の片面74側には、ほぼ全面に亘り積層される導電層76が形成されている。そして他方の片面74側における端部71と延長部72との間には、端部71の幅方向(9−b図における左右方向)に沿って略線状に亘る(多数の小孔を導電性に穿設することで、部分的に導電層を欠落させて導電層の配設密度を粗くさせた)粗密領域77が形成されている。この粗密領域77は、(銅箔の形成部分が少ないことから、その剛性による硬さの影響が少ないため)端部71および延長部72と比較して折り曲げることが容易な領域である。図10は、その粗密領域77において折り曲げた状態の断面図を示している。粗密領域77のほぼ中心を曲げ部82として端部71と延長部72とが略直角に折り曲げられたこの状態で、曲げ部82から基端部81までの長さはプラグボディ10の開口部11の深さとほぼ合致させている。このように粗密領域77を形成させる構成は、任意の(特定させたい)箇所に曲げ部82を形成させることを容易とするものであることがわかる。
【0022】
図11は、プラグボディ10にプラグコンタクト20が装着配置された状態を示した断面図である。プラグコンタクト20は、一方の片22の突部24が開口部11の内側壁12より突出するように、また、露出部28が外側面13より露出するように位置決め溝14に他方の片23が案内されて、かつ、他方の片23の突部25と第3の片26の突部27とによりプラグボディ10を挟持するようにプラグボディ10の下方(図11における下方向)より装着されている。この状態において、突部24と他方の内側壁17との対向間隔は、FPC7の端部71の材厚と加圧手段30の縦辺部31の肉厚との和より僅かに小さくなるように設定されている。また、一方の片22は、略U字状のビーム部21のそのバネ機能により横方向(図11における左方向)に弾性変位可能である。
【0023】
図12は、(図11において説明した状態の)プラグコンタクト20が配されたプラグボディ10にFPC7を挿入し、さらに加圧手段30を介入させた状態を示しており、(12−a)図は、その平面図であり、(12−b)図は、(12−a)図におけるC−C線に沿った断面図である。開口部11にはその上方(12−b図における上方向)より底部15に向けてFPC7の端部71が挿入されており、さらに、開口部11にはその上方(12−b図における上方向)より底部15に向けて加圧手段30の縦辺部31が介入されている。そして、端部71の他方の片面74と開口部11の他方の内側壁17との隙間に介入した縦辺部31は、端部71ともどもビーム部21の一方の片22を横方向(12−b図における左方向)に加圧しており、この状態で端部71は、(ビーム部21の略U字状弾性バネ機能による他方の片23の付勢効果も加わって)縦辺部31と一方の片22との間で強固に挟持されている。また、この状態で、端部71に形成される導体パターン75(図9参照)とプラグコンタクト20とは(無半田でありながら)電気的に導通(接続)可能であり、端部71に形成される導電層76(図9参照)と加圧手段30とは(無半田でありながら)電気的に導通(接続)可能であることがわかる。
【0024】
さらに、縦辺部31の介入によって一方の片22に対してFPC7の端部71を横方向(12−b図における左方向)に加圧させる形態は、特許文献1記載の従来例のごとくの縦方向(12−b図における上下方向)の圧接形態ではないため、横辺部32の肉厚を(加圧力の増大に対処するために)増大させる必要がなく、プラグ部材1の厚み(12−b図におけるプラグ部材1の上下方向の外形寸法)の低減(薄型)化を可能とすることがわかる。またさらに、延長部72を部分的に覆うように位置する横片部32は、延長部72が上方(12−b図における上方向)に浮き上がることを防止していることがわかる。またさらに、(端部71と延長部72とが加圧手段30の内壁面37に沿うように粗密領域77において折り曲げられて開口部11に挿入された)FPC7に対して、(例えば、12−b図における左方向に引っ張るような不用意な)外力が加わった場合でも、端部71が開口部11の内側壁12および一方の片22の突部24に引掛かり、FPC7がプラグ部材1から容易に外れることが起こり難い構成であることがわかる。
【0025】
図13は、ソケット部材4を示した断面図である。ソケットボディ40には、ソケットコンタクト50が、略U字状の弾性バネ片51のその先端側の突部53を開口部11の内側面43より突出させ、さらにテール部52を外側面46より突出させた設定にて装着配置されている。この状態で弾性バネ片51の突部53は、(弾性バネ片51のそのU字バネの対向バネ間隔が広がる方向である)横方向(図13における右方向)に弾性変位可能であることがわかる。
【0026】
図14は、任意の回路配線(図示せず)が施工されている回路基板100上に搭載されたソケット部材4に対して、その上方(図14における上方向)より、FPC7が接続されたプラグ部材1を挿嵌(挿入嵌合)した状態を示した断面図である。ソケットボディ40の凹部41に底部15を下方(図14における下方向)に向けて挿入されたプラグ部材1は、プラグコンタクト20の他方の片23と第3の片26とを弾性バネ片51が挟持する位置付けでソケット部材4と嵌合している。この状態で横方向(図14における右方向)に弾性変位された弾性バネ片51の突部53は、その(弾性バネ片51の略U字状弾性バネ機能により発生する)弾性反発力により他方の片23を加圧しており、プラグコンタクト20とソケットコンタクト50とは電気的に導通(接続)可能であることがわかる。そして、このようなプラグ部材1をソケット部材4にほぼ埋没させるような嵌合形態は、嵌合状態での電気コネクタ搭載高さ(回路基板100の上面からプラグ部材1の最高部までの高さ)を低減させ易い形態であるがわかる。図15は、図14と同じ挿嵌状態における加圧手段30とソケット固定手段60との係合部分を示した断面図である。この挿嵌状態において、ソケット固定手段60の対向する係合バネ片62間には加圧手段30の延出片34が介入(係合)しており、この設定によりFPC7の導電層76とソケット固定手段60とは加圧手段30を介して電気的に導通(接続)可能とされていることがわかる。そして、導電層76をシールド層として機能させた場合、(例えば、ソケット固定手段60の固定片61を回路基板100の接地回路に接続することにより)このシールド機能を活かした(例えば、導体パターン75と導電層76とのインピーダンス特性が制御されるなどの)伝送特性の良い接続形態が容易に実現できる。
【0027】
図16は、本発明の電気コネクタに用いて好適なFPCの他の例を示している。図16において、(16−a)図は、そのFPC9の端末部分における一方の片面を平面視した部分平面図、(16−b)図は、その他方の片面を平面視した部分平面図、(16−c)図は、(16−b)部におけるD−D線に沿った断面図である。FPC9には、図9に示したFPC7と同様に端部91と延長部92との間に導電層96の形成密度を粗くした粗密領域97がFPC7と同様に他方の片面94側に略線状に設けられている。そして、延長部92において、導電層96は、その途中から導電接着剤87を介して(例えば、金属蒸着などの手法によりカバー層99の下面に極薄状に形成された)第2の導電層86に繋がっている。このように延長部92において異種の導電層を繋げた形態は、(例えば、第2の導電層86の層厚を導電層96の層厚と比較して薄く設定したりして、プラグ部材1にFPC9を接続した場合において、端部91の剛性を高めてプラグ部材1との引掛け効果を維持させつつ)延長部92から(図16における左方向に)さらに延長する部分の(例えば、柔軟性などの)特性を端部91の特性と変えることができ、FPC9が内部配線される電子機器の(例えば、屈曲回数の多い箇所に配設されるため高柔軟性が要求されるなどの)多様な使用条件に対応することを容易とさせるものである。
【0028】
なお、上記実施例の説明において、加圧手段30は薄金属板で構成されているが、合成樹脂などで形成しても良く、またその断面形状は縦辺部31と横辺部32を略倒立L字状としたものに限られず、略T字状など縦辺部31が所望の剛性を得られる形状であればいかなるものであっても良い。そして、加圧手段30の横辺部32はFPC7の略直角方向に折り曲げられて連なる延長部72の折り曲げられた部分の近傍を少なくとも部分的に覆えば良いが、延長部72がほぼ全体的に覆われるような構造であっても良い。さらに、FPC7、9に設けられる粗密領域77、97は、導電層76、96に多数の小孔を穿設したものに限られず、導電層に長孔を多数設けたものや導電層を格子状や網状に構成するなど、導電層76、96がシールド層として作用ししかも折り曲げ易い構成であればいかなるものであっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の電気コネクタの一実施例を構成するプラグ部材に平型配線部材(FPC)を接続した状態で示した斜視図
【図2】本発明の電気コネクタの一実施例を構成するソケット部材を示した斜視図
【図3】図1で示したプラグ部材を構成するプラグボディを示した斜視図および断面図
【図4】図1で示したプラグ部材を構成するプラグコンタクトを示した斜視図
【図5】図1で示したプラグ部材を構成する加圧手段を示した斜視図および断面図
【図6】図2で示したソケット部材を構成するソケットボディを示した斜視図
【図7】図2で示したソケット部材を構成するソケットコンタクトを示した斜視図
【図8】図2で示したソケット部材を構成するソケット固定板を示した斜視図
【図9】本発明の電気コネクタに用いて好適な平型配線部材(FPC)の一例を示した平面図と底面図および部分断面図
【図10】図9のFPCを粗密領域で略直角方向に折り曲げた状態の断面図
【図11】図3で示したプラグボディに図4で示したプラグコンタクトを配した状態を示した断面図
【図12】図1で示したFPCが接続された状態のプラグ部材の平面図および部分断面図
【図13】図6で示したソケットボディに図7で示したソケットコンタクトを配した状態を示した断面図
【図14】図2で示したソケット部材に図1で示したFPCが接続された状態のプラグ部材が挿嵌された状態を示した断面図
【図15】図14で示した挿嵌状態における加圧手段とソケット固定手段との係合部分を示した断面図
【図16】本発明の電気コネクタに用いて好適な平型配線部材(FPC)の他の例を示した平面図と底面図および部分断面図
【符号の説明】
【0030】
1 プラグ部材
4 ソケット部材
7,9 平型配線部材(FPC)
10 プラグボディ
11 開口部
12 内側壁
13 外側面
20 プラグコンタクト
21 ビーム部
22 一方の片
23 他方の片
30 加圧手段
31 縦辺部
32 横辺部
33 側端部
34 延出片
40 ソケットボディ
50 ソケットコンタクト
60 ソケット固定手段
71,91 端部
72,92 延長部
73,93 一方の片面
74,94 他方の片面
75,95 導体パターン
76,96 導電層
77,97 粗密領域
100 回路基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路基板上に搭載され、ソケットコンタクトが配されたソケット部材と、前記回路基板上に搭載された前記ソケット部材に対して前記搭載面の上方向より挿嵌し、その挿嵌状態において前記ソケットコンタクトと電気的に接続せしめるプラグコンタクトが配されたプラグ部材と、を備えた電気コネクタであって、前記プラグ部材は前記挿嵌状態において前記上方向を開口方向と成す開口部を設けたプラグボディを有するとともに略平板状でかつ前記開口部に前記開口方向より介入し得る縦辺部とこの縦辺部に対して略直角方向に繋がる略平板状の横辺部とを有した加圧手段を具備しており、さらに前記プラグコンタクトはその一部が前記開口部内の内側壁より突出するよう位置決めされており、前記開口部に前記開口方向より平型配線部材の端部が挿入されさらに前記開口部に前記開口方向より前記縦辺部が介入した状態において、前記端部が前記縦辺部と前記プラグコンタクトの一部との間で挟持されるとともに前記横辺部が前記端部より略直角方向に折り曲げられて延長される延長部を部分的に覆うようにされていることを特徴とする電気コネクタ。
【請求項2】
前記プラグコンタクトは、対向する二片のうち一方の片が前記プラグコンタクトの一部と成す略U字状のビーム部を有しており、前記開口部に前記平型配線部材が前記挿入されつつ前記縦辺部が介入した状態において、前記略U字状のビーム部の前記対向する二片の間に前記端部および前記縦辺部を介在せしめる設定で前記プラグボディに位置決めされているとともに前記対向する二片のうち他方の片の少なくともその一部が前記プラグボディの外側面側に露出するように設定されていることを特徴とする請求項1に記載の電気コネクタ。
【請求項3】
前記加圧手段は金属製であるとともに前記横辺部の側端部より屈曲して延出する延出片を有しており、前記ソケット部材は前記ソケットコンタクトを配する合成樹脂製のソケットボディとそのソケットボディに装着された金属製のソケット固定手段とを有しており、前記ソケット部材に前記プラグ部材を挿嵌した状態で前記ソケット固定手段と前記延出片が係合するように構成されていることを特徴とする請求項1もしくは請求項2に記載の電気コネクタ。
【請求項4】
前記平型配線部材は、一方の片面側には前記開口部に前記端部が挿入されつつ前記開口部に前記縦辺部が介入した状態において前記プラグコンタクトの一部に当接せしめる配置で導体パターンが形成されており、他方の片面側には前記端部から前記延長部にわたり導電層が形成されているとともに前記端部と前記延長部の間に前記導電層の形成密度を前記端部と比較して粗くした領域が略線状に設けられていることを特徴とする請求項1ないし3記載のいずれかの電気コネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2006−40832(P2006−40832A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−222938(P2004−222938)
【出願日】平成16年7月30日(2004.7.30)
【出願人】(000006758)株式会社ヨコオ (158)
【Fターム(参考)】