説明

電気システムおよび電流制御シャントレギュレータ

【課題】電界効果トランジスタを用いたシャントレギュレータを使用することによって、システム効率を低下させることなく、交流電力から直流電力への変換を行う。
【解決手段】永久磁石交流発電機100の各位相は、シャントFET110のドレインノード112と、直流整流器120と、に接続されている。シャントFET110のソースノード114は、ニュートラルラインに接続されている。シャントFET制御入力ノード116は、論理ORゲート118の出力に接続されている。この論理ORゲート118は、PWM制御器122がシャントFET110をオンにすることを指示したとき、あるいは、対応する相電圧が負であることを比較器124が示したとき、シャントFET110をオンにすることを指示する制御信号を出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力整流の分野に関し、詳しくは、永久磁石交流発電機(PMA)とともに使用される電界効果トランジスタ(FET)シャントレギュレータに関する。
【背景技術】
【0002】
複数の位相の交流(AC)電力を発生させる機械は、当技術分野において周知のものであり、また、直流電力を要求する用途で使用するために、この交流電力を直流(DC)電力に変換する方法もよく知られている。交流から直流に変換するときに、直流負荷で対処できる電圧よりも高い直流電圧が発生することがある。この場合に、直流負荷にかかる電力を低減するために、シャントレギュレータが使用される。
【0003】
シャントレギュレータは、交流電流の一部をニュートラルライン(neutral line)に「分岐する(shunting)」ことによって、短絡の動作を行う。この短絡によって、交流電流の周期の一部の期間だけ、整流器へ電流が流れないようにする。シャントレギュレータは、一般に、直流整流器の応答時間により所望のレベルのほぼ一定の直流電力が出力されるように、十分に高い周波数で、分岐と非分岐とを交互に繰り返す。
【0004】
当技術分野で利用される標準的なシャントレギュレータの設計の一つとしては、シャントFETがある。シャントFETは、電界効果トランジスタ(FET)を使用して、FETのソースノードに接続された相電圧ラインからFETのドレインノードに接続されたニュートラルラインへの短絡を形成する。この短絡は、制御信号によってFETがオンにされているときに形成され、このときに、ソースノードとドレインノードとの間が実質的に妨げられることなく接続される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のようなシャントFETを永久磁石交流発電機とともに用いる場合、完全な回路を形成するためには、永久磁石交流発電機に戻されるリターン電流(return current)が流れる必要がある。シャントFETがオンである(分岐している)ときは、ソース−ドレイン接続があることによって、ニュートラルラインからのリターン電流が、妨げられることなくFETを通って流れることができる。しかし、シャントFETがオフであるときは、ソース−ドレイン接続がないので、電流は、異なる経路を通って戻らなければならない。当技術分野における典型的な設計では、電流は、FET内のボディ(body)−ドレイン接続を通って戻る。この接続は、ボディ−ドレインダイオードと呼ばれる。このボディ−ドレインダイオード接続は、ダイオードと同様に動作し、この接続の間で、一般に、約1.4Vの電圧降下が生じる。この電圧降下によって、FET内で電力が消失され、シャントレギュレータの効率が低下してしまい、さらには、FET自体の寿命が短くなってしまう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、複数の位相の永久磁石交流発電機(PMA)に用いるシャントレギュレータを開示する。本発明のシャントレギュレータは、整流器を備え、この整流器は、複数の位相の永久磁石交流発電機からの交流電力を直流電力に変換することができる。本発明のシャントレギュレータは、また、複数の位相の永久磁石交流発電機の各位相に対応するシャントFETを備えている。
【0007】
本発明のシャントレギュレータは、これらのシャントFETを制御することができる制御器を備えている。シャントFETの各々は、制御入力を受けたとき、そのときの電力をニュートラルラインに向けて導く(redirct)ことができる。また、各シャントFETは、該シャントFETの制御入力ノードに接続された論理ORゲートを備え、この論理ORゲートは、制御器からの制御信号がシャントFETをオンにすることを指示したとき、あるいはシャントFETに接続された相電圧が負であるときに、対応するシャントFETをオンにする。各論理ORゲートは、制御器からの入力と比較器からの入力を受ける。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】三相交流電源および直流負荷に接続されたシャントレギュレータを示す回路図。
【図2】シャントレギュレータにおける1つの位相に対応する1つのシャントFETを示す回路図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、例示的な電界効果トランジスタ(FET)シャントレギュレータを示す。このシャントレギュレータにおける各シャントFET110は、FETのボディ−ドレインダイオードモードにおいて、該シャントFET110にリターン電流が流れることがないように制御され、それによって、電力の消失が抑制される。図1の例は、位相A、位相B、位相Cからなる三相電源100(永久磁石交流発電機(PMA)など)を示す。永久磁石交流発電機100の各位相は、シャントFET110のドレインノード112と、直流整流器120と、に接続されており、この直流整流器120は、交流電力を整流して、直流負荷130に直流電力を出力することができる。各シャントFET110は、シャントFET制御入力ノード116を有する。各シャントFET110のソースノード114は、ニュートラルラインに接続されている。
【0010】
シャントFET制御入力ノード116は、論理ORゲート118の出力に接続されている。論理ORゲート118は、2つの制御信号入力を受け、これらの制御信号入力のいずれかがシャントFET110をオンにすることを指示したときは常に、対応するシャントFET110をオンにすることを指示する制御信号を出力する。論理ORゲート118は、パルス幅変調(PWM)制御器122からPWM制御信号入力を受ける。PWM制御器122は、各位相について、論理ORゲート118の第1の入力126に接続されており、これによって、各シャントFET110に同一の信号が出力される。この同一の信号によって、PWM制御器122が各シャントFET110をオンにすることを指示したときは常に、各シャントFET110が同時にオンになる。
【0011】
各論理ORゲート118の第2の入力には、比較器124の出力が接続されている。各比較器124は、交流電源100の対応する位相に接続された入力を有し、対応する位相の相電圧の正負に基づいて出力が変化する。
【0012】
図1のPWM制御器122は、フィードバック入力128を受ける。このフィードバック入力128には、直流整流器120の出力電圧132の測定値が入力され、PWM制御器122は、この出力電圧132の大きさに基づいて、シャントFET110による分岐が必要であるか否かを判断する。
【0013】
図2は、1つの位相に対応する単一のFET200からなる例示的なシャントFET110を示している。図1および図2の例においては、各比較器124は、交流の各位相の入力を調べ、交流の相電圧の正負を判断することができる。相電圧が負であった場合、対応する比較器124は、対応するシャントFET110をオンにすることを指示する制御信号を出力する。このように、交流の相電圧が負であるとき、あるいはシャントFET110をオンにすることを指示するPWM信号があるときは常に、対応するシャントFET110がオンにされる。
【0014】
図2の例において、FET200におけるボディ−ドレインダイオードに逆電流が流れると、FET200の具体的な種類や設計に依存して、ある量の電力が消失する。標準的なFETでは、一般に、電流が流れるときに、ボディ−ドレインダイオード間で、(例えば)約1.4Vの電圧降下が生じる。これに対して、(FET200がオンである場合に生じる)ソース−ドレイン間の電圧降下の大きさは、1.4Vよりもかなり小さく、従って、消失する電力もかなり小さくなる。本発明のシステムは、逆電流が流れるときに、FET200をオンにすることによって、FET200におけるボディ−ドレインダイオード接続を介することなく、ソース−ドレイン接続を介して、交流電源100に電力を戻す。これによって、システムの効率が著しく向上するとともに、FET200の寿命が長くなる。
【0015】
三相永久磁石交流発電機100を使用するとともに、PWM制御信号が直接的にシャントFET110の入力ノード116に接続されてなる、図1に類似した設計においては、通常の動作中に、接続点132において適切な大きさの直流出力電力を維持するように、分岐(シャント動作)が行われる。一例としては、仮に永久磁石交流発電機100からの交流電力のすべてが変換されると直流整流器120が3アンペアの直流電流を出力するものとし、かつ、直流負荷が2アンペアの直流電流にしか対処することができない場合には、残りの1アンペアの電流を別の方向へ導く必要がある。PWM制御器122は、直流整流器が安定した2アンペアの直流電流を出力するように、十分に高い周波数で、各シャントFET110を、周期の3分の1の期間はオンにし、周期の3分の2の期間はオフにすることによって、この問題を解決する。
【0016】
シャントFETのオンとオフのスイッチングによって、2つの電流経路が形成される。シャントFET110がオフであるとき(すなわち、FET200のソース−ドレイン間に電流が流れないとき)、複数の位相のうちの少なくとも1つの位相から整流器120に電流が流れるとともに、整流器120から残りの位相に電流が流れる。整流器120から残りの位相に流れた電流は、さらに、永久磁石交流発電機100に戻される。このことが、シャントFET110がオフであるときに生じる場合、電流は、ボディ−ドレインダイオードとして動作しているFET200のボディ−ドレイン領域を通って流れなければならない。ボディ−ドレインダイオードモードで動作しているFETに電流が流れると、この電流は、電圧降下を受け、永久磁石交流発電機に戻るべき電力の一部を消失してしまう。
【0017】
PWM制御器122によってシャントFET110がオンにされている間にも、電流は、PWM100への戻りの経路を必要とするが、FET200がオンになっているので、電流は、FET200のソース−ドレイン接続を通って流れることができる。FET200のソース−ドレイン接続によって、リターン電流が実質的に妨げられることなく流れることができ、この結果、シャントFET110がオンであるときのシステムの効率が著しく向上する。
【0018】
シャントFET110がオフであるときにも同じ効率の利得を実現するために、論理ORゲート118が追加されている。論理ORゲート118は、PWM制御器122から信号を受けたときは、シャントFET110をオンにする。さらに、論理ORゲート118は、入力126,134のうちのいずれか一方または両方が、シャントFET110をオンにすることを指示する信号を有するときは常に出力を発するので、比較器124がシャントFET制御信号を出力したときは、対応するシャントFET110がオンにされる。
【0019】
比較器124は、相電圧が負であるときは信号を出力し、相電圧が正であるときは信号を出力しない種々のストック比較器(stock comparator)とすることができる。相電圧が負であるときは、その位相にリターン電流が流れるので、比較器は、対応する位相にリターン電流が流れる場合に、対応するシャントFETをオンにする。本発明のシャントレギュレータは、性能の犠牲を伴うことなく、分岐されている期間と同様のシステムの効率を、分岐されない期間のリターン電流経路についても実現することができる。
【0020】
上記に開示したシステムは、種々の数の位相を扱うように変更することができるが、その場合にも、本発明の範囲内にあることを理解されたい。
【0021】
実施例を開示したが、当業者であれば、本発明の範囲を逸脱することなく、いくつかの変更がなされ得ることを理解されるであろう。
【符号の説明】
【0022】
100…三相電源
110…シャントFET
112…ドレインノード
114…ソースノード
118…ORゲート
120…整流器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の位相の永久磁石交流発電機(PMA)と、
整流器と、
制御器と、
上記永久磁石交流発電機の電気の位相の数に等しい複数のシャント電界効果トランジスタ(FET)と、
複数の論理ORゲートと、
複数の比較器と、
を備え、
上記シャントFETの各々は、上記永久磁石交流発電機の1つの位相に対応し、該シャントFETがオフであるときに上記永久磁石交流発電機と上記整流器との間で妨げられることなく電力が伝わるとともに、該シャントFETがオンであるときに上記永久磁石交流発電機からの電流をニュートラルラインへ導くように、接続されており、
このシャントFETの各々は、対応する論理ORゲートから制御信号を受け、
上記論理ORゲートの各々は、上記制御器からの入力と、対応する比較器からの入力と、を有し、
上記論理ORゲートの各々は、上記制御器および対応する比較器のいずれかが、対応するシャントFETをオンにすることを指示したときに、対応するシャントFETをオンにする制御信号を出力することを特徴とする電気システム。
【請求項2】
上記論理ORゲートの各々が、上記PMAの1つの位相に対応し、該論理ORゲートの各々に接続された比較器が、上記PMAの同じ位相に対応することを特徴とする請求項1に記載の電気システム。
【請求項3】
上記比較器の各々は、対応するシャントFETをオンにすることを指示する制御信号を出力することを特徴とする請求項1に記載の電気システム。
【請求項4】
上記複数のシャントFETの各々は、少なくとも1つの電界効果トランジスタを含むことを特徴とする請求項1に記載の電気システム。
【請求項5】
上記制御器は、上記整流器の直流出力電圧の大きさを示すフィードバック信号を受けることを特徴とする請求項1に記載の電気システム。
【請求項6】
上記制御器は、上記整流器からの上記直流出力電圧を制御することができることを特徴とする請求項5に記載の電気システム。
【請求項7】
上記論理ORゲートおよび上記比較器によって、対応するシャントFETがボディ−ドレインダイオードモードで動作することが妨げられることを特徴とする請求項1に記載の電気システム。
【請求項8】
整流器と、
制御器と、
電気システムの電気の位相の数に等しい数の複数のシャント電界効果トランジスタ(FET)と、
複数の論理ORゲートと、
複数の比較器と、
を備え、
上記シャントFETの各々は、電気システムの1つの位相に対応し、該シャントFETがオフであるときに上記電気システムの上記対応する位相と上記整流器との間で妨げられることなく電力が伝わるとともに、該シャントFETがオンであるときに上記電気システムの上記対応する位相からの電流をニュートラルラインへ導くように、接続されており、
このシャントFETの各々は、対応する論理ORゲートから制御信号を受け、
上記論理ORゲートの各々は、上記制御器からの入力と、対応する比較器からの入力と、を有し、
上記論理ORゲートの各々は、上記制御器および対応する比較器のいずれかが、対応するシャントFETをオンにすることを指示したときに、対応するシャントFETをオンにすることを特徴とする電流制御シャントレギュレータ。
【請求項9】
上記論理ORゲートの各々が、上記電気システムの1つの位相に対応し、該論理ORゲートの各々に接続された比較器が、上記電気システムの同じ位相に対応することを特徴とする請求項8に記載の電流制御シャントレギュレータ。
【請求項10】
上記比較器の各々は、対応するシャントFETをオンにすることを指示する制御信号を出力することを特徴とする請求項8に記載の電流制御シャントレギュレータ。
【請求項11】
上記電気システムは、複数の位相の交流電力を発生させることができる永久磁石交流発電機を備えることを特徴とする請求項8に記載の電流制御シャントレギュレータ。
【請求項12】
上記複数のシャントFETの各々は、少なくとも1つの電界効果トランジスタを含むことを特徴とする請求項8に記載の電流制御シャントレギュレータ。
【請求項13】
上記制御器は、上記整流器の直流出力電圧の大きさを示すフィードバック信号を受けることを特徴とする請求項8に記載の電流制御シャントレギュレータ。
【請求項14】
上記制御器は、上記整流器からの直流出力電圧を制御することができることを特徴とする請求項8に記載の電流制御シャントレギュレータ
【請求項15】
上記論理ORゲートおよび上記比較器によって、対応するシャントFETがボディ−ドレインダイオードモードで動作することが妨げられることを特徴とする請求項8に記載の電流制御シャントレギュレータ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−158158(P2010−158158A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−293602(P2009−293602)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(500107762)ハミルトン・サンドストランド・コーポレイション (165)
【氏名又は名称原語表記】HAMILTON SUNDSTRAND CORPORATION
【住所又は居所原語表記】One Hamilton Road, Windsor Locks, CT 06096−1010, U.S.A.
【Fターム(参考)】