説明

電気ストーブ

【課題】 部品の管理作業や組立工程の作業効率を向上した電気ストーブの構造に関する。
【解決手段】 前面に開口部1aを有する枠体1内に縦長のヒータ2と、ヒータ2の前方を開口しながらヒータ2の側部と背部に位置する湾曲状の反射板3と、反射板3の上部と下部に位置して前縁が前記開口部1aに届く上・底反射板3a・3bとを設け、枠体1の下部に備えたベース4によって枠体1を床面から立たせて枠体1の前面開口部1aからヒータ2の熱線を放射する。前記ヒータ2と反射板3と上・底反射板3a・3bを取り付けて一体の発熱体ユニットAを構成する固定プレート5を設け、その固定プレート5の上部と下部に一対の係止片6を設け、前記枠体1内には固定プレート5の係止片6に対応する係止部7を設け、固定プレート5の係止片6と枠体1内の係止部7との係合によって発熱体ユニットAを枠体1内に取り付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ヒータの輻射熱によって暖房を行う電気ストーブの構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
反射式の電気ストーブは、ベースの上部に枠体を設置し、枠体内に縦長のヒータを設け、そのヒータの背部と側部に位置して前方が開口する湾曲した反射板を備えており、ヒータに通電すると、ヒータから前方に放射される熱線と、反射板によって反射した熱線が枠体前面の開口部から前方に放射され、熱線の輻射熱によって暖房を行うものである。
【0003】
また、ヒータの熱線を枠体前方の広範囲に放射するため、枠体下部とベース上部との間に回転軸を設けて枠体を回動可能に設置し、回転軸を駆動する駆動装置を設け、駆動装置によって枠体を左右に駆動する首振り機構を備えており、熱線が枠体前方の広範囲に放射できるようにしている。
【特許文献1】特開昭63−57895号 公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、ユーザーの要望に合わせて暖房能力やデザインの多様化が進み、機種が増加する傾向にある。暖房能力や枠体にあわせてヒータや反射板を複数種類用意する必要があるが、ヒータや反射板はそれぞれ管理されており、生産される機種毎に正しく用意しなければならず、部品管理が大変面倒になっている。また、生産ラインにおいて組み立てる部品や組立工程数が多くなり、作業効率が悪いものとなっていた。
【0005】
また、首振り機構を備えたときは、枠体を回転軸によって支える構造となるが、電気ストーブの枠体内にはヒータや反射板、電装部品などほとんどの部品が配置され、回転軸の上部に重量のある枠体が配置された構造となるため、枠体の上部がふらついて安定性の悪い構造となっている。このため、駆動装置や回転軸は重量のある枠体を支えながら回動させる必要があり、また、枠体全体を駆動するため駆動力の大きいモータが必要であり、回転軸や駆動装置、それらを収納するベースの形状が大きくなって、電気ストーブを使用する際の設置スペースや、騒音や振動が大きくなる課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は上記課題を解決するもので、前面に開口部1aを有する枠体1内に、縦長のヒータ2と、該ヒータ2の前方を開口しながらヒータ2の側部と背部に位置する湾曲状の反射板3と、該反射板3の上部に位置して前縁が前記開口部1aに届く上反射板3aと、反射板3の下部に位置して前縁が前記開口部1aに届く底反射板3bとを設け、前記枠体1の下部にはベース4を備え、このベース4によって枠体1を床面から立たせて枠体1の前面開口部1aからヒータ2の熱線を放射する電気ストーブにおいて、前記ヒータ2と反射板3と上・底反射板3a・3bを取り付けて一体の発熱体ユニットAを構成する固定プレート5を設け、その固定プレート5の上部と下部に一対の係止片6を設け、かつ、前記枠体1内には固定プレート5の係止片6に対応する係止部7を設け、固定プレート5の係止片6と枠体1内の係止部7との係合によって発熱体ユニットAを枠体1内に取り付けることを特徴とするものである。
【0007】
また、前記固定プレート5の係止片6には一対の回転軸6aを設け、前記枠体1内の係止部7には回転軸6aに対応する軸孔7aを形成し、前記発熱体ユニットAは前記固定プレート5の回転軸6aが枠体1内の軸孔7aに嵌合して、回転軸6aによって枠体1内に回動可能に取り付けられ、発熱体ユニットAが回動軸6aを中心に回動し、枠体1内のヒータ2と反射板3の開口の向く方向が可変することにより、枠体1が正面を向いたまま枠体1の斜め前方の広範囲にヒータ2の熱線が放射できるものとなった。
【0008】
また、前記固定プレート5は上下に分割し、ヒータ2の上部と反射板3の上部と上反射板3aを取り付ける上部固定プレート5aと、ヒータ2の下部と反射板3の下部と底反射板3bを取り付ける下部固定プレート5bとで構成したことにより、ヒータ2や反射板3の大きさや形状に関係なく上部固定プレート5aと下部固定プレート5bは共通化が可能となる。
【0009】
さらに、前記発熱体ユニットAを上下対称な形状で構成したことにより、組み立てラインにおいて発熱体ユニットAの上下方向の確認作業が不要となり、作業効率が向上できる。
【発明の効果】
【0010】
この発明は、ヒータ2と反射板3と上反射板3aと底反射板3bをあらかじめ固定プレート5に取り付けて一体の発熱体ユニットAを構成し、固定プレート5に設けた係止片6と枠体1内の係止部7との係合によって、発熱体ユニットAを枠体1内に取り付けるものである。
この構成では、ヒータ2や反射板3を発熱体ユニットAの状態で一体に管理できるので管理作業が簡略でき、組み立てラインでは発熱体ユニットAを枠体1内に取り付ける作業だけとなり、組立工程が減少できた。また、固定プレート5の係止片6と枠体1内の係止部7は共通の構造にできる、機種変更が行われた場合でも発熱体ユニットAを枠体1内に取り付ける作業手順は同じであるから、作業効率が向上できる可能性がある。
【0011】
また、固定プレート5の係止片6に回転軸6aを設け、枠体1内の係止部7に軸孔7aを設け、回転軸6aが軸孔7aに嵌合することによって、固定プレート5が回転軸6aを中心に回動可能に取り付けられるので、固定プレート5によって一体に構成した発熱体ユニットAが回転軸6aを中心に回動して、枠体1内のヒータ2と反射板3の開口の向く方向が可変し、枠体1の斜め前方の広範囲にヒータ2の熱線が放射できる構造が実現できるものとなった。
この構成では、枠体1の前面開口部1aが正面を向いたまま枠体1前方の広範囲を暖房することができるから、枠体1全体を回転させる必要がなくなり、枠体1をベース4に固定することができ、枠体1のふらつきがない安定した構造の製品が実現できるものとなった。
【0012】
また、固定プレート5を上部固定プレート5aと下部固定プレート5bに分割し、ヒータ2の上部と反射板3の上部と上反射板3aを上部固定プレート5aに取り付け、ヒータ2の上部と反射板3の下部と底反射板3bを下部固定プレート5bに取り付けることで、発熱体ユニットAを構成している。機種毎にヒータ2や反射板3を複数種類用意する場合でも、上部固定プレート5aと下部固定プレート5bを取り付ける上部と下部は同じ形状にすることができるから、上部固定プレート5aと下部固定プレート5bは構造変更の必要がなく共通部品として複数の機種に対応できるから、部品の管理作業が容易となり、生産コストの低減が実現できるものとなった。
【0013】
また、発熱体ユニットAは上下対称な形状で構成して、上下の方向性のない構造としたから、発熱体ユニットAを枠体1内に取り付けるときに上下の方向の確認作業は不要となり、作業効率の向上が可能となる。そして、上反射板3aと底反射板3b、及び、上部固定プレート5aと下部固定プレート5bは、それぞれ同一形状の部品で構成でき部品の共通化が可能となるから、部品数が減少でき、部品の管理作業が容易となり、生産コストの低減が実現できるものとなった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図に示す実施例によってこの発明を説明すると、1は電気ストーブの枠体、1aは枠体1の前面に設けた開口部、2は枠体1内に取り付けたヒータ、3はヒータ2の前方を開口しながらヒータ2の背部と側部を湾曲状に囲むように配置した反射板、3aは反射板3の上部に取り付けた上反射板、3bは反射板3の下部に取り付けた底反射板、4は枠体1の底面に取り付けたベースであり、ベース4によって枠体1を床面から立たせている。
【0015】
16は枠体1の上部に設けた運転スイッチであり、運転スイッチ16によって運転開始信号が入力されるとヒータ2に通電を開始し、ヒータ2が加熱されて全体が高温になり、枠体1前面の開口部1aから前方に向かって熱線が放射される。
【0016】
5はヒータ2と反射板3と上反射板3aと底反射板3bを取り付ける固定プレート、8は固定プレート5の上部と下部に設けた反射板3の固定部、9は反射板3の固定部8の上部と下部に形成した折り曲げ片で構成する上反射板3aと底反射板3bの固定部、10は固定部8・9に装着する固定ネジであり、反射板3と上反射板3aと底反射板3bは固定ネジ10によって固定プレート5に取り付けられている。
11は反射板3の固定部8の上部と下部に形成したL字状の折り曲げ片で構成するヒータ固定部、12はヒータ固定部11に装着する固定片であり、ヒータ2の上部と下部がヒータ固定部11と固定片12によって挟着されて固定プレート5に固定されている。
ヒータ2と反射板3と上反射板3aと底反射板3bを固定プレート5に取り付けることであらかじめ発熱体ユニットAを構成している。
【0017】
6は固定プレート5のヒータ固定部11の上部と下部に形成された係止片、7は枠体1内の上部と下部に設けた係止部、13は係止片6と係止部7に装着する固定ネジであり、固定プレート5の係止片6を枠体1内の係止部7に係合し、固定ネジ13を装着することによって固定プレート5が枠体1内に固定され、発熱体ユニットAを枠体1内に取り付けることができる。
【0018】
従来は機種毎に複数種類用意されたヒータ2や反射板3を別々に管理しており、生産する機種毎に対応するヒータ2や反射板3を選択して、組み立てラインで取り付け作業を行っているため、管理作業が大変面倒であり、組み立てラインでの部品数や組立工程数が多くなるという課題があった。
この発明では、ヒータ2や反射板3をあらかじめ固定プレート5に一体に取り付けて発熱体ユニットAの状態で管理でき、生産する機種毎に対応する発熱体ユニットAを選択するので、管理作業が簡略できるものとなった。
また、組み立てラインでは固定プレート5の係止片6と枠体1内の係止部7と係合作業だけで発熱体ユニットAを枠体1内に取り付けることができ、この固定プレート5の係止片6と枠体1内の係止部7はヒータ2や反射板3の形状に関係なく構造の共通化が可能であるから、生産機種の変更があったときでも、発熱体ユニットAを取り付けるときの作業手順には変更がないから、作業効率が向上できる可能性がある。
【0019】
また、この発明の他の実施例において、6aは係止片6に設けた上下一対の回転軸、7aは枠体1内の係止部7に設けた軸孔であり、固定プレート5の回転軸6aと枠体1内の軸孔7aとが嵌合することによって、固定プレート5を枠体1内に回動可能に取り付けるものである。
図2において、7bは上部側の係止部7を構成する軸孔7aを設けた係止板であり、固定プレート5は下部の回転軸6aを枠体1内下部の軸孔7aに嵌合し、一方、上部側の回転軸6aを係止板7bの軸孔7aに嵌合し、係止板7bを固定ネジ13によって枠体1内に固定することで固定プレート5を枠体1内に取り付けている。
【0020】
この構成では、固定プレート5によって一体に構成された発熱体ユニットAが回転軸6aを中心に回動することで、枠体1内のヒータ2と反射板3の向く方向が可変するものであり、枠体1の前面開口部1aが正面を向いたまま、枠体1の前面開口部1aから放射される熱線の方向を変えて、枠体1の斜め前方にも熱線が届くものとなり、広範囲を暖房することができるものとなる。
【0021】
14は枠体1内に回動可能に取り付けられた発熱体ユニットAを駆動する駆動手段、14aは駆動手段14のモータ、14bはモータ14aによって駆動する偏心カム、15は固定プレート5の係止片7に設けた長孔で構成する連結部であり、固定プレート5の回転軸6aを枠体1内の軸孔7aに嵌合したときに連結部15の長孔が偏心カム14bのピンと嵌合する。
そして、モータ14aによって偏心カム14bが回動すると、偏心カム14bが連結部15を介して固定プレート5を駆動し、固定プレート5に取り付けられたヒータ2と反射板3が回転軸6aを中心に左右に揺動するものである。
【0022】
発熱体ユニットAを回動可能な構造にすることによって、枠体1は確実にベース4に固定されて枠体1のふらつきはなくなり、発熱体ユニットAが回動するときも安定した状態で使用できるものとなった。
また、ヒータ2や反射板3を駆動するときに駆動力の大きいモータは不要となり、モータの駆動による騒音や振動が低減できると共に、回転軸部や駆動手段の小型化が可能となり、枠体のコンパクト化や軽量化が可能となる。
【0023】
図4は固定プレート5を上下に分割した構造を示す実施例であり、5aは発熱体ユニットAの上部に配置される上部固定プレート、5bは発熱体ユニットAの下部に配置される下部固定プレートであり、上部固定プレート5aと下部固定プレート5bは同じ形状の部品で構成されている。
【0024】
図4の実施例では、上部固定プレート5aと下部固定プレート5bはL字状の部品によってヒータ固定部11を構成し、このL字状のヒータ固定部11の端部に形成した折り曲げ片によって反射板3の固定部8を構成し、この反射板3の固定部8と反対側に形成した折り曲げ片によって上反射板3aもしくは底反射板3bの固定部9を構成している。
そして、反射板3の上部と下部に上部固定プレート5aと下部固定プレート5bをそれぞれ取り付け、反射板3と上部固定プレート5aと下部固定プレート5bを一体に構成し、ヒータ2の上部と下部を上部固定プレート5a・下部固定プレート5bのヒータ固定部11に取り付けて固定片12で固定し、上反射板3aを上部固定プレート5aの固定部9に、底反射板3bを下部固定プレート5bの固定部9に取り付けると、発熱体ユニットAが完成する。
【0025】
ヒータ2や反射板3は機種毎に形状や大きさが異なるが、上部固定プレート5aと下部固定プレート5bの取り付け位置となる上部と下部の構造は形状や大きさに関係なく共通化が可能であるから、上部固定プレート5aと下部固定プレート5bは機種毎に形状を変更する必要がなく、共通部品として複数の機種に対応が可能であるから、部品数が減少でき管理作業が簡略できコストの低下に寄与できるものとなった。
【0026】
また、ヒータ2が上下の方向に関係なく通電できる仕様となっているときは、発熱体ユニットAを上下対称の形状で構成することで、発熱体ユニットAを枠体1内へ取り付けるときに発熱体ユニットAの上下の方向の確認作業は不要となり、作業効率が向上できるものとなった。
この構成では、上反射板3aと底反射板3bを同一形状の部品で構成できると共に、上部固定プレート5aと下部固定プレート5bを同一形状の部品で構成でき、上部固定プレート5aと下部固定プレート5bの共通部品化、及び、上反射板3a・底反射板3bの共通部品化が可能となるから、部品数を大幅に減少でき、管理作業が簡略でき、生産コストの低減が実現できるものとなった。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】この発明の実施例を示す電気ストーブの縦断面図である。
【図2】この発明の他の実施例を示す電気ストーブの縦断面図である。
【図3】図2に示す実施例の電気ストーブの要部断面図である。
【図4】この発明の実施例で使用される発熱体ユニットの分解斜視図である。
【符号の説明】
【0028】
1 枠体
2 ヒータ
3 反射板
3a 上反射板
3b 底反射板
4 ベース
5 固定プレート
5a 上部固定プレート
5b 下部固定プレート
6 係止片
6a 回転軸
7 係止部
7a 軸孔
A 発熱体ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面に開口部(1a)を有する枠体(1)内に、縦長のヒータ(2)と、該ヒータ(2)の前方を開口しながらヒータ(2)の側部と背部に位置する湾曲状の反射板(3)と、該反射板(3)の上部に位置して前縁が前記開口部(1a)に届く上反射板(3a)と、反射板(3)の下部に位置して前縁が前記開口部(1a)に届く底反射板(3b)とを設け、
前記枠体(1)の下部にはベース(4)を備え、このベース(4)によって枠体(1)を床面から立たせて枠体(1)の前面開口部(1a)からヒータ(2)の熱線を放射する電気ストーブにおいて、
前記ヒータ(2)と反射板(3)と上・底反射板(3a)・(3b)を取り付けて一体の発熱体ユニット(A)を構成する固定プレート(5)を設け、その固定プレート(5)の上部と下部に一対の係止片(6)を設け、
かつ、前記枠体(1)内には固定プレート(5)の係止片(6)に対応する係止部(7)を設け、
固定プレート(5)の係止片(6)と枠体(1)内の係止部(7)との係合によって発熱体ユニット(A)を枠体(1)内に取り付けることを特徴とする電気ストーブ。
【請求項2】
前記固定プレート(5)の係止片(6)には一対の回転軸(6a)を設け、
前記枠体(1)内の係止部(7)には回転軸(6a)に対応する軸孔(7a)を形成し、
前記発熱体ユニット(A)は前記固定プレート(5)の回転軸(6a)が枠体(1)内の軸孔(7a)に嵌合して、回転軸(6a)によって枠体(1)内に回動可能に取り付けられ、
発熱体ユニット(A)が回動軸(6a)を中心に回動し、枠体(1)内のヒータ(2)と反射板(3)の開口の向く方向が可変することを特徴とする請求項1記載の電気ストーブ。
【請求項3】
前記固定プレート(5)は上下に分割し、ヒータ(2)の上部と反射板(3)の上部と上反射板(3a)を取り付ける上部固定プレート(5a)と、ヒータ(2)の下部と反射板(3)の下部と底反射板(3b)を取り付ける下部固定プレート(5b)とで構成したことを特徴とする請求項1または2に記載した電気ストーブ。
【請求項4】
前記発熱体ユニット(A)を上下対称な形状で構成したことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の電気ストーブ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate