説明

電気デバイス及びガス除去方法

【課題】電解液中に溶存したガスをも除去することができる電気デバイス及びガス除去方法を提供する。
【解決手段】外装材(20)と、電極(110,120)を含み、外装材(20)に収納される発電要素(10)と、発電要素(10)と一緒に外装材(20)に収納されるとともに、両端が外装材(20)の外に出る中空糸(13)と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、一次電池、二次電池、キャパシターなどの電気デバイス及び電気デバイスの内部に発生したガスを除去する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一次電池、二次電池、キャパシターなどの電気デバイスでは、充放電や通常使用によってガスが発生することがある。そこで特許文献1では、発生したガスを所望の時期に確実に外部に放出できるガス排出部を、簡易な構造で実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−86753号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1では、内部に充満したガスがガス排出部から外部に排出されるものの、電解液中に溶存したガスは除去できない。すると、このガスによって電流の流れが阻害されるとともに、その周囲では電流が大きくなり、電流密度の高い領域が局部的に発生する。電流密度が局部的に高くなってしまうと、リチウムイオンが電析して析出する可能性がある。すると局部的に劣化する。そして劣化が周囲に拡がるといった悪循環に陥るおそれがあった。
【0005】
本発明は、このような従来の問題点に着目してなされたものであり、本発明の目的は、電解液中に溶存したガスをも除去することができる電気デバイス及びガス除去方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は以下のような解決手段によって前記課題を解決する。
【0007】
本発明は、外装材と、電極を含むとともに前記外装材に収納される発電要素と、を有する。そして前記発電要素と一緒に前記外装材に収納されるとともに、両端が外装材の外に出る中空糸をさらに有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、発電要素と一緒に外装材に収納される中空糸の両端が外装材の外に出ているので、電解質中に溶存したガスが中空糸の内側に取り込むことができ、電解質中からガスを除去できる。
【0009】
本発明の実施形態、本発明の利点については、添付された図面を参照しながら以下に詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明による電気デバイスの第1実施形態を示す図である。
【図2】図2は、中空糸の特性について説明する図である。
【図3】図3は、本発明による電気デバイスの第2実施形態を示す図である。
【図4】図4は、本発明による電気デバイスの第3実施形態を示す図である。
【図5】図5は、本発明による電気デバイスの第4実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1実施形態)
図1は、本発明による電気デバイスの第1実施形態を示す図であり、図1(A)は電気デバイスの内部の平面図、図1(B)は電気デバイスの側断面図、図1(C)は電気デバイスの正面断面図である。
【0012】
以下の説明では、電気デバイスとして非水電解質電池であるリチウムイオン二次電池を例示して説明する。リチウムイオン二次電池1は、発電要素10が外装材20に収納される。
【0013】
発電要素10は、セパレーター100と、正極110と、負極120と、中空糸束130と、を含む。
【0014】
セパレーター100は、流動性のある電解質(電解液)を保持する電解質層である。なお電解質(電解液)については後述する。セパレーター100は、ポリアミド不織布,ポリエチレン不織布,ポリプロピレン不織布,ポリイミド不織布,ポリエステル不織布,アラミド不織布などの不織布である。また、セパレーター100は、フィルムが延伸されて細孔が形成された微多孔膜フィルムでもよい。このようなフィルムは、既存のリチウムイオン電池用セパレーターとして使用される。またポリエチレン,ポリプロピレン,ポリイミドフィルムやあるいはこれらを積層したものであってもよい。セパレーター100の厚さは、特には限定されない。しかしながら、薄いほうが電池がコンパクトになる。そこでセパレーター100は、性能を確保できる範囲で、できるだけ薄いことが望ましい。一般的にはセパレーター100の厚さは10〜100μm程度である。ただし一定厚でなくてもよい。
【0015】
正極110は、薄板の正極集電体111と、その片面に形成された正極層112と、を有する電極である。
【0016】
正極集電体111は、主成分である金属粉末に、バインダー(樹脂)及び溶剤を混ぜた金属ペーストが加熱されて成形される。金属粉末は、たとえば、アルミニウム、銅、チタン、ニッケル、ステンレス鋼(SUS)、これらの合金などである。これらの金属粉末は、1種が単独で用いられてもよいし、2種以上が混合されて用いられてもよい。また異なる金属粉末が多層に積層されてもよい。バインダーは、たとえば、エポキシ樹脂などの従来公知の樹脂バインダー材料である。またバインダーは、導電性高分子材料であってもよい。また正極集電体111は、アルミニウム、銅、チタン、ニッケル、ステンレス鋼(SUS)、これらの合金などによる金属箔でもよい。正極集電体111の厚さは、特に限定されないが、通常は1〜100μm程度である。
【0017】
正極層112は、正極活物質を含む。正極活物質は、特にリチウム−遷移金属複合酸化物が好ましい。具体的には、たとえば、スピネルLiMn24などのLi・Mn系複合酸化物,LiCoO2などのLi・Co系複合酸化物,LiNiO2などのLi・Ni系複合酸化物,LiFeO2などのLi・Fe系複合酸化物などである。また、LiFePO4などの遷移金属とリチウムのリン酸化合物や硫酸化合物でもよい。さらに、V25,MnO2,TiS2,MoS2,MoO3などの遷移金属酸化物や硫化物でもよい。また、PbO2,AgO,NiOOHなどでもよい。このような正極活物質は、電池容量、出力特性に優れた電池を構成できる。
【0018】
正極活物質の粒径は、正極材料をペースト化してスプレーコートなどによって製膜できる程度であればよいが、小さいほうが電極抵抗を低減できる。具体的には、正極活物質の平均粒径が0.1〜10μmであるとよい。
【0019】
正極活物質は、この他にもイオン伝導性を高めるために、電解質,リチウム塩,導電助剤などを含んでもよい。導電助剤は、一例を挙げれば、アセチレンブラック,カーボンブラック,グラファイトなどである。
【0020】
正極活物質,電解質(好ましくは固体高分子電解質),リチウム塩,導電助剤の配合量は、電池の使用目的(出力重視,エネルギー重視など)、イオン伝導性が考慮されて設定される。たとえば、電解質、特に固体高分子電解質の配合量が過少であると、活物質層内でのイオン伝導抵抗やイオン拡散抵抗が大きくなり、電池性能が低下する。一方、電解質、特に固体高分子電解質の配合量が過多であると、電池のエネルギー密度が低下する。したがって、これらが考慮されて、具体的な配合量が設定される。
【0021】
正極層112の厚さは、特には限定されない。電池の使用目的(出力重視,エネルギー重視など)、イオン伝導性などが考慮されて設定される。一般的な正極の厚さは1〜500μm程度である。
【0022】
負極120は、薄板の負極集電体121と、その片面に形成された負極層122と、を有する電極である。なお負極集電体121は、正極に用いるものと同じものを使用しても、別のものを使用してもよい。
【0023】
負極層122は、負極活物質を含む。負極層122は、具体的には、金属酸化物,リチウム−金属複合酸化物金属,カーボン,チタン酸化物,リチウム−チタン複合酸化物などである。特に、カーボン,遷移金属酸化物,リチウム−遷移金属複合酸化物が好ましい。なかでもカーボン又はリチウム−遷移金属複合酸化物は、電池を高電池容量化、高出力化できる。これらが1種単独で用いられてもよいし、2種以上併用されて用いられてもよい。
【0024】
中空糸束130は、中空糸13の束である。ここで中空糸13は、たとえば、膜壁に微細孔が形成されたポリプロピレン製の中空糸が好適である。本実施形態では、図1(A)に示されているように、中空糸束130は、電極(正極110,負極120)の周囲を通るように配索される。なお電極の周囲とは、電極の厚さを規定する壁の周りとなる部分である。中空糸13の束(中空糸束130)の両端には、外部装置に接続するためのパイプ131が設けられており、キャップ132によって塞栓されている。なお中空糸13の特性については後述する。
【0025】
外装材20は、アルミニウム等の金属をポリプロピレンフィルム等の絶縁体で被覆した高分子−金属複合ラミネートフィルムのシート材で形成される。外装材20は、周囲が熱融着されている。外装材20は、電力を外部に取り出すための正極タブ21及び負極タブ22を備える。
【0026】
正極タブ21は、一端が外装材20の内部で正極集電体111に接続され、他端が外装材20の外に出る。
【0027】
負極タブ22は、一端が外装材20の内部で負極集電体121に接続され、他端が外装材20の外に出る。
【0028】
また中空糸束130の両端も外装材20の外に出る。
【0029】
なお図1(B)では、図面の理解を容易にするためにデフォルメして、正極タブ21及び負極タブ22の高さを変更している。また中空糸束130の両端も高さを変更している。実際の電池においては、このように高さを変更しても、高さを一致させてもよい。
【0030】
電解質としては、液体電解質、ゲルポリマー電解質、および真性ポリマー電解質を特に制限なく用いることができる。これらの電解質は1種単独であってもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、後述する電解質層に用いた電解質と異なる電解質を用いてもよいし、同一の電解質を用いてもよい。
【0031】
液体電解質は、可塑剤である有機溶媒に支持塩であるリチウム塩が溶解した電解質である。有機溶媒は、たとえば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)等のカーボネート類である。また、支持塩(リチウム塩)は、たとえば、Li(CF3SO2)2N、Li(C2F5SO2)2N、LiPF6、LiBF4、LiAsF6、LiTaF6、LiClO4、LiCF3SO3等の電極の合剤層に添加されうる化合物である。
【0032】
ポリマー電解質は、電解液を含むゲルポリマー電解質(ゲル電解質)と、電解液を含まない真性ポリマー電解質と、がある。
【0033】
ゲルポリマー電解質は、イオン伝導性ポリマーからなるマトリックスポリマー(ホストポリマー)に、上記の液体電解質が注入されたものである。電解質としてゲルポリマー電解質を用いれば、電解質の流動性がなくなり、各層間のイオン伝導性を容易に遮断できる。マトリックスポリマー(ホストポリマー)として用いられるイオン伝導性ポリマーは、たとえば、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド(PPO)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンの共重合体(PVDF−HFP)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)およびこれらの共重合体等である。ただしこれらだけに限定されることはない。ここで、上記のイオン伝導性ポリマーは、活物質層において電解質として用いられるイオン伝導性ポリマーと同じであってもよく、異なっていてもよい。ただし、同じであることが好ましい。電解液(電解質塩および可塑剤)の種類は特に制限されず、上記で例示したリチウム塩などの電解質塩およびカーボネート類などの可塑剤が用いられうる。
【0034】
真性ポリマー電解質は、上記のマトリックスポリマーに支持塩(リチウム塩)が溶解した構成であり、可塑剤である有機溶媒を含まない。従って、電解質として真性ポリマー電解質を用いることで電池からの液漏れの心配がなく、電池の信頼性が向上しうる。
【0035】
ゲルポリマー電解質や真性ポリマー電解質のマトリックスポリマーは、架橋構造を形成することによって、優れた機械的強度を発現しうる。架橋構造を形成させるには、適当な重合開始剤を用いて、高分子電解質形成用の重合性ポリマー(例えば、PEOやPPO)に対して熱重合、紫外線重合、放射線重合、電子線重合等の重合処理を施せばよい。
【0036】
これらの電解質層に含まれる非水電解質は、1種単独であってもよいし、2種以上であってもよい。
【0037】
図2は、中空糸の特性について説明する図である。
【0038】
本実施形態では、中空糸13として、上述のように、膜壁に微細孔13aが形成されたポリプロピレン製の中空糸を使用する。
【0039】
図2に示すように、このような中空糸13を液体に接触させて、中空糸13の内側にスウィープガスを流すか、中空糸13の内側を真空引きすれば、液体に溶存するガスが微細孔13aから膜壁を透過する。ポリプロピレンは疎水性であり、液体は微細孔13aを透過できない。このように、中空糸13は、液体から溶存ガスを除去できるという特性がある。
【0040】
(作用効果)
まず最初に本発明の理解を容易にするために電池の化学反応について説明する。なおここでは、コバルト系の正極材料を使用する場合で説明する。
【0041】
通常運転電圧範囲では、次式(1)の化学反応が生じる。
【0042】
【化1】

【0043】
また過充電電圧域では、次式(2-1)〜(2-4)の反応が生じる。
【0044】
【化2】

【0045】
さらに過放電電圧域では、次式(3-1)又は(3-2)の反応が生じる。
【0046】
【化3】

【0047】
このように、通常運転、過充電中、過放電中に、ガスが発生する。電池内にガスが残留していなければ、全面的に一様に電流が流れる。しかしながら、上記反応式のように発生したガスが電池内にとどまっていると、電流の流れが阻害されるとともに、その周囲では電流が大きくなる。すると電流密度の高い領域が局部的に発生する。電流密度が局部的に高くなってしまうと、リチウムイオンが電析して析出する可能性がある。すると局部的に劣化する。そして劣化が周囲に拡がるといった悪循環に陥るおそれがある。またガスによって副反応が引き起こされる可能性もある。
【0048】
そこで本実施形態では、上述のように、電気デバイス1に中空糸束130を収納するとともに、中空糸束130の両端が電気デバイス1の外に出る構成とした。中空糸の膜壁には、気体を透過させるが液体を透過させない微細孔が形成されているので、電気デバイス1の内部でガスが発生し、大気圧(中空糸の内側の圧力)よりも大きな圧力になると、電解液中に溶存したガスが中空糸の内側に移動することとなり、電解液中からガスが除去される。
【0049】
さらに、スウィープガスを中空糸束130の一端(供給端)から供給して他端(排出端)から排出するようにすれば、または真空引きすれば、中空糸の内側の圧力が下がる。この結果、電気デバイス1の内部で発生したガスの圧力が低い状態でも、すなわちガスが発生した初期でも、ガスが中空糸の内側に移動することとなり、電解液中からガスが除去されることとなる。
【0050】
なお上記においては、電解質としては、液体電解質を用いる場合で説明した。しかしな
ゲルポリマー電解質や真性ポリマー電解質であってもよい。ゲルポリマー電解質には液体電解質が含まれるので、上述と同様の作用効果が得られる。また真性ポリマー電解質には液体電解質が含まれないが、通常運転、過充電中、過放電中に、ガスが発生することがある。このようなガスは、外装材20の内部に溜まる。本実施形態によれば、このようなガスを外装材20の外部に除去できる。
【0051】
排出端の近傍は、溶存ガスの濃度が最も低くなるので、ガス発生量が多い場所から排出することが望ましい。
【0052】
正極側を排出口とすれば、正極側で多く発生する可能性のある酸化性のガス(二酸化炭層等)の除去に適している。
【0053】
また負極側に排出口を設けたら、負極側で多く発生する可能性のある還元のガス(エタン、エチレン、一酸化炭素)の除去に適している。
【0054】
なお初回の充電時には負極でガスが発生しやすいので、負極側に排出口を設けることで、初期に発生するガスを効率的に除去できる。
【0055】
したがって、ガスの流れ方向を一方向に限定してもいいが、限定せずにタイミングによって流れ方向を反転してもよい。
【0056】
また本実施形態では、中空糸束130は、図1(A)に示されているように、電極(正極110,負極120)の周囲を通るように配索される。このように構成することで、積層方向へ厚くなることを防止でき薄くできる。また電極の周辺部分は余剰電解液が溜まっている部分であり、余剰電解液中の気体を除去するのに好適である。
【0057】
(第2実施形態)
図3は、本発明による電気デバイスの第2実施形態を示す図であり、図3(A)は電気デバイスの内部の平面図、図3(B)は電気デバイスの側断面図、図3(C)は電気デバイスの正面断面図である。
【0058】
なお以下では前述と同様の機能を果たす部分には同一の符号を付して重複する説明を適宜省略する。
【0059】
本実施形態では、中空糸束130が、第1実施形態のセパレーター100としての機能を果たす。正極110及び負極120は、中空糸束130の表裏にそれぞれ配置される。また中空糸束130は、正極110及び負極120の全面に当接する。なお図3(A)では、図面の理解を容易にするために、隣接する中空糸束130において隙間があるが、正極110及び負極120の短絡を防止すべく、隙間なく配置することが望ましい。
【0060】
また本実施形態では中空糸束130は、横方向よりも縦方向が多くなるように形成されている。
【0061】
本実施形態によれば、セパレーターが不用であるので、製造コストが安価である。
【0062】
また第1実施形態に比較して、電極表面近傍のガスを除去するのに好適である。
【0063】
特に本実施形態では、中空糸束130が、正極110及び負極120の全面に当接するので、正極110及び負極120におけるガスを除去しやすい。
【0064】
(第3実施形態)
図4は、本発明による電気デバイスの第3実施形態を示す図であり、図4(A)は電気デバイスの内部の平面図、図4(B)は電気デバイスの側断面図、図4(C)は電気デバイスの正面断面図である。
【0065】
本実施形態では、中空糸束130は、正極側中空糸束130−1と、負極側中空糸束130−2と、からなる。
【0066】
図4(A)に示されているように、正極側中空糸束130−1は、正極110の一辺(図4(A)の上側の辺)及びその対向辺(図4(B)の下側の辺)に接して、正極110の位置を固定する。また図4(B)に示されているように、正極側中空糸束130−1は、正極110の表面及び裏面を通過するように配置されている。また負極側中空糸束130−2も同様に、負極120の一辺及びその対向辺に接して、負極120の位置を固定するとともに、負極120の表面及び裏面を通過するように配置されている。
【0067】
また正極110及び負極120の間では、正極側中空糸束130−1及び負極側中空糸束130−2が隙間なく配置されることで、正極110及び負極120の短絡が防止されている。すなわち正極側中空糸束130−1及び負極側中空糸束130−2によって、第1実施形態のセパレーター100としての機能が果たされている。
【0068】
本実施形態によっても、セパレーターが不用であるので、製造コストが安価である。
【0069】
また第1実施形態に比較して、電極表面近傍のガスを除去するのに好適である。
【0070】
さらに正極110の対向する辺に正極側中空糸束130−1が通るように配索される。また同様に負極120の対向する辺に負極側中空糸束130−2が通るように配索されるこのようにすることで、図4(A)の上下方向の積層ズレが防止されるので、図4(A)の上下方向に振動するような条件で使用するのに好適である。
【0071】
(第4実施形態)
図5は、本発明による電気デバイスの第4実施形態を示す図であり、図5(A)は電気デバイスの内部の平面図、図5(B)は電気デバイスの側断面図、図5(C)は電気デバイスの正面断面図である。
【0072】
本実施形態では、図5に示されているように、正極側中空糸束130−1は、正極110の一辺(図5の左側の辺)及びその対向辺(図5の右側の辺)に接して、正極110の位置を固定する。また負極側中空糸束130−2も同様に、負極120の一辺及びその対向辺に接して、負極120の位置を固定する。
【0073】
そして正極110及び負極120の間では、正極側中空糸束130−1及び負極側中空糸束130−2が隙間なく配置されることで、正極110及び負極120の短絡が防止されている。すなわち正極側中空糸束130−1及び負極側中空糸束130−2によって、第1実施形態のセパレーター100としての機能が果たされている。
【0074】
本実施形態によっても、セパレーターが不用であるので、製造コストが安価である。
【0075】
また第1実施形態に比較して、電極表面近傍のガスを除去するのに好適である。
【0076】
さらに正極110及び負極120の対向する辺に正極側中空糸束130−1及び負極側中空糸束130−2が通るように配索されることで、図5の左右方向の積層ズレが防止されるので、図5の左右方向に振動するような条件で使用するのに好適である。
【0077】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0078】
たとえば、上記各実施形態では、電気デバイスとして、ラミネートフィルムを外装材にするリチウムイオン二次電池を例示したが、それには限られない。金属板を外装材にするものや、他のタイプの二次電池、さらには一次電池にも適用できる。また電池だけでなくキャパシターに適用することもできる。
【0079】
また上記実施形態は、適宜組み合わせ可能である。
【符号の説明】
【0080】
1 リチウムイオン二次電池(電気デバイス)
10 発電要素
100 セパレーター
110 正極(電極)
120 負極(電極)
130 中空糸束
13 中空糸
13a 微細孔
20 外装材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外装材と、
電極を含み、前記外装材に収納される発電要素と、
前記発電要素と一緒に前記外装材に収納されるとともに、両端が外装材の外に出る中空糸と、
を有する電気デバイス。
【請求項2】
請求項1に記載の電気デバイスにおいて、
前記発電要素は、セパレーターを含み、
前記電極は、前記セパレーターに配置され、
前記中空糸は、前記電極の厚さを規定する壁の周りに配索されて両端が前記外装材の外に出る、
電気デバイス。
【請求項3】
請求項1に記載の電気デバイスにおいて、
前記電極は、正極及び負極であり、前記中空糸の表裏両面に配置される、
電気デバイス。
【請求項4】
請求項3に記載の電気デバイスにおいて、
前記中空糸は、束状であって前記正極及び負極の全面に当接する、
電気デバイス。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の電気デバイスにおいて、
前記中空糸は、前記電極を巻くように配索されて電極の位置を固定する、
電気デバイス。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の電気デバイスにおいて、
前記中空糸は、スウィープガスが一端から供給されて他端から排出される、
電気デバイス。
【請求項7】
請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の電気デバイスにおいて、
前記中空糸は、内側の圧力が下がるように真空引きされる、
電気デバイス。
【請求項8】
請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の電気デバイスの内部に発生したガスを除去する方法であって、
スウィープガスを、前記中空糸の一端から供給して他端から排出する、
ガス除去方法。
【請求項9】
請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の電気デバイスの内部に発生したガスを除去する方法であって、
前記中空糸の内側の圧力が下がるように真空引きする、
ガス除去方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−84419(P2013−84419A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−223005(P2011−223005)
【出願日】平成23年10月7日(2011.10.7)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】