説明

電気二重層キャパシタの製造方法およびその製造装置。

【課題】槽など耐圧チャンバを用いることなく、電解液の充填含浸を短時間に効率よく処理しえる、電気二重層キャパシタの製造方法およびその製造装置を提供する。
【解決手段】容器10の開口部からその内部に注液ノズル21および給排気ノズル22を挿入してこれらの一部が容器10の開口部から外部へ突出する状態に容器10の開口部を密閉すべく装着される封止治具20と、注液ノズル21に貯留タンク60の電解液を供給するための設備(図3に配管61が示される)と、給排気ノズル22に対して真空ポンプ66と高度に乾燥した常圧の不活性ガスの供給源とを選択的に接続するための設備(図3に配管69が示される)と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電気二重層キャパシタの製造方法およびその製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、各種の蓄電装置として、急速充電が可能で充放電サイクル寿命の長い、電気二重層キャパシタの適用技術が注目される。
【0003】
電気二重層キャパシタは、正極体および負極体とセパレータとから積層体(キャパシタ本体)を組成する工程と、積層体を容器に収容する工程と、容器に電解液を充填して積層体に電解液を含浸させる工程(電解液充填含浸工程)と、容器の開口部を密封する工程と、等から製造される(特許文献1)。
【0004】
従来の場合、電解液充填含浸工程においては、図8のように密閉可能な槽1が用いられる。密閉可能な槽1の内部において、容器2(積層体を収容する)は、その開口部が上向きの起立状態に支持される。3は電解液の貯留タンクであり、高度に乾燥した不活性ガス(アルゴンガス)により液面が加圧される。タンク3の下部に配管の一端が開口され、配管の他端にノズル(図示せず)が接続される。ノズルは、電解液の出口(注入口)を開閉する弁機構が収装され、これを開弁すると、電解液が注入口から容器2の内部に充填される。
【0005】
積層体への含浸を促進するため、真空ポンプ4および高度に乾燥した常圧の不活性ガスの供給源(図示せず)が備えられる。槽1に配管の一端が接続され、配管の他端側は分岐され、その一方に真空ポンプ4が接続され、もう一方が常圧の不活性ガスの供給源(常圧供給源)に接続される。配管の分岐部に通路切換弁(図示せず)が設けられる。通路切換弁は、槽1側を真空ポンプ4側に接続するAポジションと、槽1側を供給源側に接続するBポジションと、槽1側と真空ポンプ4側との接続および槽1側と常圧供給源側との接続を遮断するCポジションと、の3位置に切り替え可能となっている。
【0006】
通路切換弁がAポジションに切り替えられると、真空ポンプ4の駆動により、密閉した槽1の内部が減圧される。槽1の内部が所定の真空度に達すると、真空ポンプ4が停止される。その後、通路切換弁がBポジションに切り替えられると、密閉した槽1の内部に常圧の不活性ガスが供給され、槽1の内部が相対的に加圧される。このような処理の繰り返しにより、電解液が積層体の隅々に行き渡るようになり、電解液の含浸を効率よく処理しえるのである。5はグローブボックスであり、その内部は高度に乾燥した不活性ガス(アルゴンガス)の雰囲気に管理される。槽1は、グローブボックスの内部に設備される。
【0007】
特許文献2および特許文献3においては、電極群を収容するケースの開口部を気密室に閉塞し、気密室を減圧してケース内を減圧した後、電解液をケース内に圧入する、という充填方法が開示される。
【特許文献1】特開2003−297689
【特許文献2】特開平09−286418
【特許文献3】特開平10−055808
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このような従来例(特許文献1〜特許文献3)においては、耐圧チャンバ(容器を納める密閉可能な槽やケースの開口部を閉塞する気密室)が用いられるので、これらの体積が大きくなると、密閉した槽や気密室を減圧する処理に時間を長く掛かる。
【0009】
特許文献2および特許文献3の充填方法は、1つの装置により1つのケースに対して気密室を減圧してケース内を減圧した後に電解液をケース内に圧入するので、ケースの処理数を増やそうとすると、電解液の充填を処理する装置の数を増やさなければならない。
【0010】
特許文献1の場合、密閉可能な槽は、ブローブボックス(高度に乾燥した不活性ガス雰囲気に管理される)の内部に設備されるため、電気二重層キャパシタの大量生産に大きな設備投資が要求される。
【0011】
この発明は、このような課題に着目してなされたものであり、槽など耐圧チャンバを用いることなく、電解液の充填含浸を短時間に効率よく処理しえる、電気二重層キャパシタの製造方法およびその製造装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第1の発明は、正極体および負極体とセパレータとから積層体を組成する工程と、積層体をラミネートフィルムから形成される容器に収容する工程と、容器の開口部からその内部に電解液を充填して積層体に含浸させる工程と、容器の開口部を密封する工程と、を備える電気二重層キャパシタの製造方法において、前記容器の開口部からその内部に電解液を充填して積層体に含浸させる工程は、容器の開口部からその内部に注液ノズルおよび給排気ノズルを挿入してこれらの一部が容器の開口部から外部へ突出する状態に容器の開口部を密閉すべく封止治具を装着する工程と、給排気ノズルを通して容器の内部を減圧する工程と、給排気ノズルを通して容器の内部を減圧状態から相対的に加圧する工程と、注液ノズルを通して容器の内部に電解液を充填する工程と、を備えることを特徴する。
【0013】
第2の発明は、第1の発明に係る電気二重層キャパシタの製造方法において、前記注液ノズルを通して容器の内部に電解液を充填する工程は、電解液の貯留タンクから注液ノズルへ電解液を圧送することを特徴とする。
【0014】
第3の発明は、第2の発明に係る電気二重層キャパシタの製造方法において、前記注液ノズルを通して容器の内部に電解液を充填する工程は、電解液の貯留タンクから注液ノズルへ電解液を圧送する処理と、給排気ノズルを通して容器の内部を減圧する処理と、を交互に繰り返すことを特徴とする。
【0015】
第4の発明は、第2の発明または第3の発明に係る電気二重層キャパシタの製造方法において、前記容器の開口部からその内部に電解液を充填して積層体に含浸させる工程は、電解液の貯留タンクの内部を真空引きにより減圧する工程と、電解液の貯留タンクの内部を減圧状態から相対的に加圧する工程と、を備えることを特徴とする。
【0016】
第5の発明は、第1の発明〜第4の発明の何れか1つに係る電気二重層キャパシタの製造方法において、前記注入ノズルは、前記容器の内部に電解液を充填する工程を処理する設備側の配管と分離可能に接続されるコネクタ部と、その接続口を前記配管との接続時にのみ開く常閉の弁機構と、を備え、また、前記給排気ノズルは、前記容器の内部を減圧する工程および前記容器の内部を減圧状態から相対的に加圧する工程を処理する設備側の配管と分離可能に接続されるコネクタ部と、その接続口を前記配管との接続時にのみ開く常閉の弁機構と、を備えることを特徴とする。
【0017】
第6の発明は、正極体および負極体とセパレータとから積層体を組成する工程と、積層体をラミネートフィルムから形成される容器に収容する工程と、容器の開口部からその内部に電解液を充填して積層体に含浸させる工程と、容器の開口部を密封する工程と、の各処理手段を備える電気二重層キャパシタの製造装置において、前記容器の開口部からその内部に電解液を充填して積層体に含浸させる工程の処理手段は、容器の開口部からその内部に注液ノズルおよび給排気ノズルを挿入してこれらの一部が容器の開口部から外部へ突出する状態に容器の開口部を密閉すべく装着される封止治具と、前記注液ノズルに貯留タンクの電解液を供給するための設備と、給排気ノズルに対して真空ポンプと高度に乾燥した常圧の不活性ガスの供給源とを選択的に接続するための設備と、を備えることを特徴とする。
【0018】
第7の発明は、第6の発明に係る電気二重層キャパシタの製造装置において、前記電解液の貯留タンクに対して真空ポンプと高度に乾燥した常圧の不活性ガスの供給源とを選択的に接続するための設備と、を備えることを特徴とする。
【0019】
第8の発明は、第6の発明または第7の発明に係る電気二重層キャパシタの製造方法において、前記注入ノズルは、前記貯留タンクの電解液を供給するための設備側の配管と分離可能に接続されるコネクタ部と、その接続口を前記配管との接続時にのみ開く常閉の弁機構と、を備え、また、前記給排気ノズルは、前記真空ポンプと前記不活性ガスの供給源とを選択的に接続するための設備側の配管と分離可能に接続されるコネクタ部と、その接続口を前記配管との接続時にのみ開く常閉の弁機構と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
第1の発明においては、容器の開口部は、封止治具により、注液ノズルおよび給排気ノズルを挿入してこれらの一部が容器の開口部から外部へ突出する状態に密閉(封止)される。この状態において、給排気ノズルを通して容器の内部を減圧する工程、給排気ノズルを通して容器の内部を減圧状態から相対的に加圧する工程、注液ノズルを通して容器の内部に電解液を充填する工程、が所定の手順に従って処理される。つまり、容器は、封止治具により密閉され、注液ノズルおよび給排気ノズルを通して電解液の充填および積層体への含浸が促進されるのであり、減圧も容器の内部に限られるため、電解液充填含浸の処理時間を短縮することができる。
【0021】
容器の内部を減圧する工程、容器の内部を減圧状態から相対的に加圧する工程、容器の内部に電解液を充填する工程、については、封止治具により密閉される複数の容器に対し、各注液ノズルを合流させると共に各給排気ノズルを合流させると、同時に処理することができるほか、容器が封止治具により密閉状態に保持されるので、グローボックスの外部において、電解液の充填含浸処理を行うことも可能となる。これらの結果、設備投資を最小限に抑えつつ、電気二重層キャパシタを効率よく大量生産することができる。
【0022】
第2の発明においては、電解液は注液ノズルへ圧送されるので、容器への充填および積層体への含浸を促進することができる。
【0023】
第3の発明においては、電解液は数回に分けて供給されるのであり、電解液の1回量を容器の内部へ圧送する処理と、容器の内部を減圧する処理と、が交互に繰り返されるため、電解液の充填および積層体への含浸を促進することができる。
【0024】
第4の発明においては、貯留タンクの内部を真空引きにより減圧する処理と、貯留タンクの内部を相対的に加圧する処理と、の繰り返しにより、貯留タンク中の気相に含まれる水分や電解液(液相)に含まれる気泡を除去することができる。
【0025】
第5の発明においては、注液ノズルおよび給排気ノズルは、常閉の弁機構を備えるので、封止治具の装着後、容器は、グローボックスの外部に持ち出すことが可能となる。つまり、グローブボックスの外部において、容器の内部を減圧する工程、容器の内部を減圧状態から相対的に加圧する工程、容器の内部に電解液を充填する工程、が行えるため、これら工程の処理手段については、グローブボックスの内部に設備する必要がなくなるのである。
【0026】
第6の発明においては、容器の開口部は、封止治具により、注液ノズルおよび給排気ノズルを挿入してこれらの一部が容器の開口部から外部へ突出する状態に密閉(封止)される。この状態において、注液ノズルに貯留タンクの電解液を供給するための設備と、給排気ノズルに対して真空ポンプと高度に乾燥した常圧の不活性ガスの供給源とを選択的に接続するための設備と、により、電解液の充填および積層体への含浸が促進される。減圧が容器の内部に限られるため、電解液充填含浸の処理時間を短縮することができる。また、封止治具により密閉される複数の容器に対し、各注液ノズルを合流させると共に各給排気ノズルを合流させると、電解液の供給、真空ポンプによる減圧、常圧の不活性ガスの供給、を同時に処理することが可能となるほか、容器が封止治具により密閉状態に保持されるので、グローボックスの外部において、電解液の充填含浸処理を行うことも可能となる。
【0027】
第7の発明においては、貯留タンクの内部を真空ポンプにより減圧する処理と、貯留タンクの内部に常圧の不活性ガスを供給する処理と、の繰り返しにより、貯留タンク中の気相に含まれる水分や液相(電解液)に含まれる気泡を除去することができる。
【0028】
第8の発明においては、注液ノズルおよび給排気ノズルは、常閉の弁機構を備えるので、封止治具の装着後、容器は、グローボックスの外部に持ち出すことが可能となる。つまり、グローブボックスの外部において、注液ノズルに貯留タンクの電解液を供給するための設備と、給排気ノズルに対して真空ポンプと高度に乾燥した常圧の不活性ガスの供給源とを選択的に接続するための設備と、により、電解液の充填および積層体への含浸を促進させることができる。その結果、これらの設備については、グローブボックスの内部に配置する必要がなくなるのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
図1に基づいて、電気二重層キャパシタの一例を説明する。図1において、10はキャパシタ本体を電解液と共に収容する容器、は容器10の外部に引き出される1対の端子板11a,11b(セル電極)であり、各端子板11a,11bは軽量かつ抵抗の小さいアルミニウムから短尺状に形成される。12は容器10の内部に発生するガス(CO2など)を容器10の外部へ除去するためのガス抜きバルブであり、容器10の上部において、1対の端子板11a,11bの間に組み付けられる。
【0030】
キャパシタ本体については、正極体と負極体とセパレータとから所定の積層体に構成される。正極体および負極体は、集電極とその両面の分極性電極(活性炭電極)とから組成される。これらの集電極は、矩形状の金属箔(たとえば、アルミニウム箔)からなり、その矩形平面の一辺に片側へ寄せて帯状のリード部が一体に成形される。各リード部の同極どうしは束ねられ、この結束部に極性の対応する端子板11a,11bが接合される。正極体と負極体との間に介装されるセパレータは、紙製や樹脂製の多孔質膜から形成される。
【0031】
容器10は、複数の樹脂層に金属の中間層を含む柔軟な積層フィルム(たとえば、アルミラミネートフィルム)から冷間プレス加工により成形される2つの容器部材(底側部分と蓋側部分と)からなり、これらを組み合わせると、互いに向き合う凹部により、底側部分と蓋側部分との間にキャパシタ本体(積層体)の収容部が形成される。
【0032】
底側部分の内側に積層体は納められ、その上に蓋側部分が被せられる。容器10の周縁において、1対の端子板11a,11b(その一部)が引き出される一辺を除く三辺が熱溶着(ヒートシール)される。容器10は、1対の端子板11a,11bが突き出る一辺が開口可能となり、その開口部から注液ノズル21(図3〜図5、参照)および給排気ノズル22(図3〜図5、参照)が挿入され、これらの一部が容器の外部に突き出る状態において、容器の開口部を一時的に密閉すべく封止治具20(図3〜図5、参照)が装着され、電解液充填含浸処理および電解精製処理が終わると、封止治具20が外されて注液ノズルおよび給排気ノズルが抜き取られ、容器10の開口可能な一辺が1対の端子板11a,11bおよびガス抜きバルブ12を挟みつつ密閉状態に熱溶着されるのである。
【0033】
1対の端子板11a,11b(アルミニウム板)と容器10を形成する積層フィルムの金属層との絶縁性を確保するため、これら端子板11a,11bに予め熱溶着性樹脂53(図3、参照)が付着される。熱溶着性樹脂53としては、PP(ポリプロピレン)を主材とするものが用いられる。容器10の開口可能な一辺において、熱溶着(ヒートシール)処理により、熱溶着性樹脂53が溶融し、容器10の内面(積層フィルムの樹脂層)に1対の端子板11a,11bを溶着させるのである。溶融する熱溶着性樹脂53は、各端子板11a,11bを包み込むようになり、これら端子板11a,11bが積層フィルムの金属層に接触する(リーク電流を生じる)のを防止する。
【0034】
ガス抜きバルブ12は、そのボディに熱溶着部54(図3、参照)が備えられる。容器10の開口可能な一辺において、ヒートシール処理により、容器1の上部(端子板11a,11b間)にボディの熱溶着部12を介して組み付けられる。熱溶着部の溶融により、容器10を形成する積層フィルムの樹脂層に溶着するのである。
【0035】
図3〜図5は、封止治具20の装着状態を表すものであり、治具20は、断面略コ字形の基部25と、1対の押圧板26と、これら押圧板26の間隔を拡縮するクランプ機構27と、を備える。1対の押圧板26は、基部25の断面略コ字形の内側に配置され、基部25の断面略コ字形の両端部にそれぞれ複数のガイドピン28を介して互いに向き合う方向(基部25の断面略コ字形の両端部に対する直交方向)へ移動可能に支持される。
【0036】
クランプ機構27は、基部25の断面略コ字形の両端部をこれに対する直交方向へ進退可能なロッド30が備えられる。ロッド30の先端に押圧板26が結合され、ロッド30の後端は、レバー32にトグル機構31を介して連結され、レバー32が旋回すると、これに伴って1対の押圧板26の間隔を拡縮させるのである。33は容器10の開口部に対する圧接具であり、シリコンスポンジなどの弾性体から形成され、各押圧板26の対向面に取り付けられる。
【0037】
基部25の断面略コ字形の中間部に注液ノズル21と給排気ノズル22が貫通状態に固定される。また、基部25の中間部に容器10の開口可能な一辺から突き出る端子板11a,11bを挿通するスリット状の貫通穴34が形成され、これらの中央部に端子板11a,11bの先端を係止する端子押え部35(端子板11a,11bの高さを位置決めする)がボルト36により取り付けられる。ボルト36の先端部にガス抜きバルブ12のセットガイド38の一端が装着され、セットガイド38の他端にガス抜きバルブ12のボディ(出口側の端部)が嵌め付けられる。セットガイド38は、ボルト36との装着部とガス抜きバルブ12との嵌合部との中間部が扁平に形成され、封止治具20の圧接具33により、容器10の開口部を密閉しやすくなっている。注液ノズル21および給排気ノズル22についても、封止治具20の圧接具33により、容器10の開口部を密閉しやすく、封止領域を貫通する部分が最小径部に設定される。
【0038】
注液ノズル21および給排気ノズル22は、後述する設備側の配管61,69と分離可能に接続されるコネクタ部42,43と、その接続口を配管61,69との接続時にのみ開く常閉の弁機構(図示せず)と、を備える。また、設備側のコネクタ部44,45についても、その接続口をノズル側のコネクタ部42,43との接続時にのみ開く常閉の弁機構(図示せず)が備えられる。
【0039】
図3,図4において、46は容器10のセット治具であり、1対の板部材47、48と、これらの間を一定の間隔に締め付ける手段と、から構成される。1対の板部材の一方47に枠状の台座部49が設けられ、これに容器10の凹部(積層体の収容部)の表側の膨出部を係止しつつ、もう一方の板部材48を重ね合わせ、これらの間を一定の間隔に締め付けることにより、容器10は、開口可能な一辺が上向きの起立状態に支持される。
【0040】
1対の板部材47,48の間を一定の間隔に締め付ける手段は、締結具50(ボルト等)と、鍔部を持つロッド51と、から構成される。鍔部を持つロッド51は、1対の板部材の一方47に立設され、もう一方の板部材48にロッド51の鍔部に係止する穴が配置される。このセット治具46により、容器10の厚みが規制されるため、製品の均質化が得られる。
【0041】
容器10の開口可能な一辺に封止治具20を装着する際は、レバーを開側に倒して1対の圧接具33の間を拡げ、図6のように上方から容器10の開口可能な一辺に被せることにより、容器10の開口可能な一辺を基部25の断面コ字形の内側に進入させる。これに伴って、容器10の開口可能な一辺から突き出る端子板11a,11bがスリット状の貫通穴34を突き抜け、基部25の断面コ字形の内側に突出するガス抜きバルブ12およびそのセットガイド38に続いて注液ノズル21および給排気ノズル22が容器10の開口部からその内部に挿入する。なお、容器10の開口可能な一辺は、ガス抜きバルブ12およびセットガイド38や注液ノズル21および給排気ノズル22の挿入を受け入れやすく上方へ口が開く受口部を付けておくと良い。
【0042】
ガス抜きバルブ12およびセットガイド38や注液ノズル21および給排気ノズル22の挿入後、レバー32を閉側に倒すと、1対の押圧板26がこれらの間隔を縮める方向へ動き、圧接具33が容器10の開口可能な一辺を挟圧する(図7,参照)。圧接具33は、シリコンスポンジなどの弾性体から形成され、容器10の開口可能な一辺を端子板11a,11bおよびガス抜きバルブ12のセットガイド38や注液ノズル21および給排気ノズル22の挟む状態に密着(密閉)させることができる。
【0043】
図3において、55a,55bは電解精製を処理する装置の接続端子であり、封止治具20から突出する1対の端子板11a,11bにそれぞれ接続される。
【0044】
図2は、電解液充填含浸処理および電解精製処理を行う装置の構成を説明するものであり、積層体(キャパシタ本体)を収容する容器10は、封止治具20により開口可能な一辺が密閉される。
【0045】
60は電解液の貯留タンクであり、配管61の一端がタンク60内の底部に開口され、配管61の他端がコネクタ部45を介して注液ノズル21のコネクタ部43に接続される。配管61の途中に開閉弁62、63が配置され、これらの間に加圧ポンプ64および積算流量計65が介装される。
【0046】
66は真空ポンプであり、モータ67により駆動される。68は真空ポンプ66の減圧計である。また、高度に乾燥した常圧のアルゴンガスの供給源(図示せず)が備えられる。配管69の一端がコネクタ部44を介して給排気ノズル22のコネクタ部42に接続される。配管69の他端側は、2系統に分岐され、その一方に真空ポンプ66が接続され、もう一方に常圧のアルゴンガスの供給源(常圧供給源)が接続される。
【0047】
貯留タンク60に給排気用の配管70が備えられる。配管70の一端は、タンク60内の上部に開口され、配管70の他端は、配管69の常圧供給源側に接続される。
【0048】
各配管69,70に開閉弁71〜75が配置される。開閉弁74,75を開くと、常圧供給源からアルゴンガスがタンク60内の上部(気相)に導入される。開閉弁62,63を開くと共に加圧ポンプ64を駆動すると、タンク60から注液ノズル21を通して容器10の内部へ電解液が供給される。開閉弁62,63、73を閉じて開閉弁71、72を開くと共に真空ポンプ66を駆動すると、給排気ノズル22を通して容器10の内部が減圧される。開閉弁71、62.63を閉じて開閉弁72〜74を開くと、給排気ノズル22を通して常圧供給源からアルゴンガスが容器10の内部に供給される。開閉弁72,74を閉じて開閉弁71,73,75を開くと共に真空ポンプ66を駆動すると、タンク60の内部が減圧されるのである。
【0049】
貯留タンク60と真空ポンプ66と常圧供給源と配管61,69,70と開閉弁62,63、71〜75と加圧ポンプ64とから、注液ノズル21に対して貯留タンク10の電解液を供給するための設備と、給排気ノズル22に対して真空ポンプ66と常圧供給源とを選択的に接続するための設備と、電解液の貯留タンク60に対して真空ポンプ66と常圧供給源とを選択的に接続するための設備と、が構成される。
【0050】
電解液充填含浸処理においては、下記の(1)〜(4)の工程が順次に行われる。
【0051】
(1)封止治具20を容器10の開口可能な一辺に装着する。容器10の開口可能な一辺は、封止治具20により、端子板11a,11bおよびガス抜きバルブ12のセットガイド38や注液ノズル21および給排気ノズル22の挟む状態に密閉される。また、注液ノズル21のコネクタ部43に配管61のコネクタ部45を接続すると共に給排気ノズル22のコネクタ部42に配管69のコネクタ部44を接続する。
【0052】
(2)容器10の内部を所定の真空度に減圧する。開閉弁62,63、73が閉かつ開閉弁71,72が開の状態にセットすると共に真空ポンプ66を駆動すると、真空引きにより、容器10の内部が減圧され、所定の真空度に達したら、開閉弁71を閉じて真空ポンプ66を停止する。これにより、容器10内の水分や不純物が排除される。
【0053】
(3)容器10の内部を減圧状態から相対的に加圧する。開閉弁62,63、71が閉かつ開閉弁72,73,74が開の状態にセットすると、常圧供給源からアルゴンガスが容器の内部へ供給され、容器10の内部を常圧に上昇させる。
【0054】
(4)容器10の内部に電解液を充填して積層体に含浸させる。開閉弁72が閉かつ開閉弁74,75、62,63が開の状態にセットすると共に加圧ポンプ64を駆動すると、貯留タンク10の電解液が容器10の内部に圧入される。電解液の圧送は、数回に分けて行われ、1回量の圧送が終わると、加圧ポンプ64を停止すると共に開閉弁62、63を閉じる。これと同時的に開閉弁73が閉かつ開閉弁71,72が開の状態にセットすると共に真空ポンプ66を駆動することにより、容器10の内部を所定の真空度に減圧する。容器10の内部が所定の真空度に達したら、開閉弁71,72を閉じて真空ポンプ66を停止する。これらの処理(電解液の圧送と容器内部の減圧と)は、交互に数回、繰り返されるのである。
【0055】
また、(4)の処理の前に貯留タンク60内の気相に含まれる水分や電解液(液相)に含まれる気泡を排除する。開閉弁62,63、74が閉かつ開閉弁71,73,75が開の状態にセットすると共に真空ポンプ66を駆動すると、真空引きにより、タンク60の内部が減圧される。その後、真空ポンプ66を停止すると共に開閉弁71,75が閉かつ開閉弁74,75が開の状態にセットすると、常圧供給源からアルゴンガスがタンク60の内部へ供給され、タンク60の内部を常圧に上昇させる。これらの処理(タンク内部の減圧と常圧の供給)は、(2)の処理と(3)の処理と同時に行うことも考えられる。
【0056】
電解精製は、積層体(キャパシタ本体)の残存水分や官能基を電気分解してCO2などに変えて除去する処理であり、1対の端子板11a,11bの間に一定の電流を流して設定電圧まで充電し、その後に放電させる。この充放電サイクルは、何回か繰り返され、その際に発生するガス(CO2など)は、真空引きにより、容器10の内部から排気される。そのため、開閉弁62,63,73が閉かつ開閉弁71,72が開の状態にセットされ、真空ポンプ66が駆動される。この処理が終わると、真空ポンプ66が停止され、開閉弁71,72が閉じられるのである。
【0057】
電気二重層キャパシタの製造過程において、電気二重層キャパシタの各構成材料(正極体や負極体およびセパレータの材料,端子板11a,11b,容器10の底側部分および蓋側部分)は乾燥処理される。その後、グローブボックスの高度に乾燥した不活性ガス(アルゴンガス)の雰囲気中において、正極体や負極体の成形およびセパレータの成形、積層体への組成、端子板11a,11bの接合、積層体の容器10への収容、のほか、電解液充填含浸および電解精製から容器10の開口可能な一辺を密閉(ヒートシール)するまでの工程が順次に処理される。電解液充填含浸および電解精製を処理する装置において、真空ポンプ66の吐出側は、グローブボックスの外部へ配管され、CO2などの浄化装置を含む、不活性ガス(アルゴンガス)の再生装置に接続される。
【0058】
このような構成により、容器10の開口部は、封止治具20により密閉され、電解液充填処理において、減圧すべき体積が容器10の内部に限られるため、所定の真空度に減圧するのも短時間に済ませることができる。また、従来のように耐圧チャンバ(槽や気密室)を用いる必要がなく、その分、グローブボックスの内部(スペース)を有効活用することができる。
【0059】
注入ノズル21は、貯留タンク60の電解液を供給するための設備側の配管61と分離可能に接続されるコネクタ部43と、その接続口を配管との接続時にのみ開く常閉の弁機構(図示せず)と、を備え、また、給排気ノズル22は、真空ポンプ66と常圧供給源とを選択的に接続するための設備側の配管69と分離可能に接続されるコネクタ部42と、その接続口を配管との接続時にのみ開く常閉の弁機構(図示せず)と、を備えるため、封止治具20の装着(容器10の開口可能な一辺の密閉)後、容器10は、グローボックスの外部に持ち出すことが可能となる。つまり、注液ノズル21に対して貯留タンク60の電解液を供給するための設備と、給排気ノズル22に対して真空ポンプ66と常圧供給源とを選択的に接続するための設備と、電解液の貯留タンク60に対して真空ポンプ66と常圧供給源とを選択的に接続するための設備と、については、グローブボックスの内部に配置する必要がなくなるのである。
【0060】
また、封止治具20により密閉される多数の容器10に対し、各容器10の注液ノズル21を合流させる配管を設け、これを図2の配管61に接続する一方、給排気ノズル22を合流させる配管を設け、これを図2の配管69に接続することにより、電解液充填含浸処理および電解精製処理を同時に行うことも可能となる。
【0061】
これらの結果、設備投資を最小限に抑えつつ、電気二重層キャパシタを効率よく大量生産できるのである。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】この発明の実施形態を説明する電気二重層キャパシタの外観図である。
【図2】同じく電解液充填含浸処理およびその装置を説明する概要図である。
【図3】同じく封止治具の装着状態を説明する正面図である。
【図4】同じく一部を省略する側面図である。
【図5】同じく図3のX−X断面図である。
【図6】同じく封止治具の装着に係る説明図である。
【図7】同じく説明図である。
【図8】従来技術の説明図である。
【符号の説明】
【0063】
10 容器
11a,11b 端子板
12 ガス抜きバルブ
20 封止治具
21 注液ノズル
22 給排気ノズル
33 圧接具
38 ガス抜きバルブのセットガイド
42,43 コネクタ部
60 電解液の貯留タンク
64 加圧ポンプ
66 真空ポンプ
62,63、71〜75 開閉弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極体および負極体とセパレータとから積層体を組成する工程と、積層体をラミネートフィルムから形成される容器に収容する工程と、容器の開口部からその内部に電解液を充填して積層体に含浸させる工程と、容器の開口部を密封する工程と、を備える電気二重層キャパシタの製造方法において、前記容器の開口部からその内部に電解液を充填して積層体に含浸させる工程は、容器の開口部からその内部に注液ノズルおよび給排気ノズルを挿入してこれらの一部が容器の開口部から外部へ突出する状態に容器の開口部を密閉すべく封止治具を装着する工程と、給排気ノズルを通して容器の内部を減圧する工程と、給排気ノズルを通して容器の内部を減圧状態から相対的に加圧する工程と、注液ノズルを通して容器の内部に電解液を充填する工程と、を備えることを特徴する電気二重層キャパシタの製造方法。
【請求項2】
前記注液ノズルを通して容器の内部に電解液を充填する工程は、電解液の貯留タンクから注液ノズルへ電解液を圧送することを特徴とする請求項1に係る電気二重層キャパシタの製造方法。
【請求項3】
前記注液ノズルを通して容器の内部に電解液を充填する工程は、電解液の貯留タンクから注液ノズルへ電解液を圧送する処理と、給排気ノズルを通して容器の内部を減圧する処理と、を交互に繰り返すことを特徴とする請求項2に係る電気二重層キャパシタの製造方法。
【請求項4】
前記容器の開口部からその内部に電解液を充填して積層体に含浸させる工程は、電解液の貯留タンクの内部を真空引きにより減圧する工程と、電解液の貯留タンクの内部を減圧状態から相対的に加圧する工程と、を備えることを特徴とする請求項2または請求項3に係る電気二重層キャパシタの製造方法。
【請求項5】
前記注入ノズルは、前記容器の内部に電解液を充填する工程を処理する設備側の配管と分離可能に接続されるコネクタ部と、その接続口を前記配管との接続時にのみ開く常閉の弁機構と、を備え、また、前記給排気ノズルは、前記容器の内部を減圧する工程および前記容器の内部を減圧状態から相対的に加圧する工程を処理する設備側の配管と分離可能に接続されるコネクタ部と、その接続口を前記配管との接続時にのみ開く常閉の弁機構と、を備えることを特徴とする請求項1〜請求項4の何れか1つに係る電気二重層キャパシタの製造方法。
【請求項6】
正極体および負極体とセパレータとから積層体を組成する工程と、積層体をラミネートフィルムから形成される容器に収容する工程と、容器の開口部からその内部に電解液を充填して積層体に含浸させる工程と、容器の開口部を密封する工程と、の各処理手段を備える電気二重層キャパシタの製造装置において、前記容器の開口部からその内部に電解液を充填して積層体に含浸させる工程の処理手段は、容器の開口部からその内部に注液ノズルおよび給排気ノズルを挿入してこれらの一部が容器の開口部から外部へ突出する状態に容器の開口部を密閉すべく装着される封止治具と、前記注液ノズルに貯留タンクの電解液を供給するための設備と、給排気ノズルに対して真空ポンプと高度に乾燥した常圧の不活性ガスの供給源とを選択的に接続するための設備と、を備えることを特徴とする電気二重層キャパシタの製造装置。
【請求項7】
前記電解液の貯留タンクに対して真空ポンプと高度に乾燥した常圧の不活性ガスの供給源とを選択的に接続するための設備と、を備えることを特徴とする請求項6に係る電気二重層キャパシタの製造装置。
【請求項8】
前記注入ノズルは、前記貯留タンクの電解液を供給するための設備側の配管と分離可能に接続されるコネクタ部と、その接続口を前記配管との接続時にのみ開く常閉の弁機構と、を備え、また、前記給排気ノズルは、前記真空ポンプと前記不活性ガスの供給源とを選択的に接続するための設備側の配管と分離可能に接続されるコネクタ部と、その接続口を前記配管との接続時にのみ開く常閉の弁機構と、を備えることを特徴とする請求項6または請求項7に係る電気二重層キャパシタの製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−135374(P2009−135374A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−312135(P2007−312135)
【出願日】平成19年12月3日(2007.12.3)
【出願人】(000003908)日産ディーゼル工業株式会社 (1,028)
【Fターム(参考)】