説明

電気二重層キャパシター

【課題】「セパレーターが劣化し易くなるとともにキャパシターの特性が劣化し易くなるという問題」が改善された高信頼性の電気二重層キャパシターを、特許文献1に記載された電気二重層キャパシターの場合よりも容易な方法で製造可能な構造を有する電気二重層キャパシターを提供する。
【解決手段】陰極側タブ部材128aに対向する位置に位置するセパレーター130aと、陰極側タブ部材128aにセパレーター130aを介して対向する位置に位置する陽極側電極体120bとの間の第1間隙のみに、電解液及びイオンを通過させない性質を有する保護フィルム140が配設されてなる電気二重層キャパシター100。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気二重層キャパシターに関する。
【背景技術】
【0002】
電気二重層キャパシターは、電極と電解液との界面に生じる「電気二重層」を誘電体として電荷を蓄えるキャパシターであり、蓄電に化学反応を伴わないため急速充放電が可能で、サイクル寿命が長いといった特徴を有する。このため、瞬時に大電流が必要な機器のパワーアシストやエネルギー回生の用途に好適に用いることができる。また、充電式機器の主電源として使用することで機器のメンテナンスフリー化を実現することができる(例えば、非特許文献1参照。)。
【0003】
電気二重層キャパシターは、「金属箔からなる集電体の少なくとも片面に炭素含有多孔質材料からなる分極性電極層が形成され、さらには集電体から分極性電極層が部分的に除去されて集電体が露出した露出部分にタブ部材が接合された2枚の電極体」の間にセパレーターを介在させて巻回することにより構成されたキャパシター素子と、キャパシター素子を電解液とともに収容する有底筒状の金属ケースと、金属ケースの開口部を封止する弾性封口体とを備える。
【0004】
集電体としては、例えば、アルミニウム薄板を用いる。また、分極性電極層としては、例えば、活性炭粉末及びカーボンブラックをバインダー(例えば、ポリテトラフルオロエチレン。)と混練してペーストを作製し、このペーストを集電体の表裏両面に塗工及び乾燥することにより形成したものを用いる。タブ部材としては、例えば、アルミニウム薄板を用いる。
【0005】
ところで、このように構成された電気二重層キャパシターにおいては、タブ部材が接合された部位において、陰極側電極体と陽極側電極体との間の容量バランス(電圧バランス)が他の部位よりも悪くなることに起因して、陽極側電極体の表面で電解質アニオン(例えば、BF4イオン、PF6イオン。)が酸化され、望ましくない酸化生成物(例えばフッ酸)が生成され易くなる。その結果、上記のように構成された電気二重層キャパシターにおいては、陽極側電極体の表面で生成された酸化生成物の存在により、セパレーターが劣化し易くなるとともにキャパシターの特性が劣化し易くなるという問題がある。
【0006】
そこで、このような問題を解決することができる電気二重層キャパシターが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
図16は、特許文献1に記載された電気二重層キャパシターを説明するために示す図である。図16においては、特許文献1に記載された電気二重層キャパシターを構成するキャパシター素子910を引き延ばした状態としたときの当該キャパシター素子910の部分断面図を示してある。なお、図16においては、電極体920の曲率を無視した状態で図示している。以下、同様の図面においても、電極体の曲率を無視した状態で図示することとする。
【0007】
特許文献1に記載された電気二重層キャパシターにおいては、図16に示すように、電極体920のうち陰極側電極体920aに接合されたタブ部材(以下、陰極側タブ部材という。)928aにセパレーター930aを介して対向する位置に位置する陽極側電極体920bから分極性電極層926を除去して露出部分Eを設けている。
【0008】
特許文献1に記載された電気二重層キャパシターによれば、陰極側タブ部材928aが接合された部位においても、陰極側電極体920aと陽極側電極体920bとの間の容量バランス(電圧バランス)が改善されているため、陽極側電極体920bの表面で電解質アニオン(例えば、BF4イオン、PF6イオン。)が酸化されて望ましくない酸化生成物(例えばフッ酸)が生成され難くなる。その結果、「セパレーター930aが劣化し易くなるとともにキャパシターの特性が劣化し易くなるという問題」が改善された高信頼性の電気二重層キャパシターを提供することが可能となる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】“電気二重層キャパシター”、[online]、ルビコン、[2008年7月16日検索]、インターネット<URL:http://www.rubycon.co.jp/catalog/j_pdfs/edlc/Outline_Jpn.pdf>
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2007−157812号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1に記載された電気二重層キャパシターにおいては、陰極側電極体920aとは別部材である陽極側電極体920bに対して、陰極側タブ部材928aに対向する位置に露出部分Eを予め正確に形成しておくのは実際上容易ではないという問題がある。
【0012】
そこで、本発明は、上記した問題を解決するためになされたもので、「セパレーターが劣化し易くなるとともにキャパシターの特性が劣化し易くなるという問題」が改善された高信頼性の電気二重層キャパシターを、特許文献1に記載された電気二重層キャパシターの場合よりも容易な方法で製造可能な構造を有する電気二重層キャパシターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
[1]本発明の電気二重層キャパシターは、「金属箔からなる集電体の少なくとも片面に炭素含有多孔質材料からなる分極性電極層が形成され、さらには前記集電体から前記分極性電極層が部分的に除去されて前記集電体が露出した露出部分に陰極側タブ部材が接合された陰極側電極体」と、「金属箔からなる集電体の少なくとも片面に炭素含有多孔質材料からなる分極性電極層が形成され、さらには前記集電体から前記分極性電極層が部分的に除去されて前記集電体が露出した露出部分に陽極側タブ部材が接合された陽極側電極体」との間にセパレーターを介在させて巻回することにより構成されたキャパシター素子と、前記キャパシター素子を電解液とともに収容する有底筒状の金属ケースと、前記金属ケースの開口部を封止する弾性封口体とを備える電気二重層キャパシターであって、「前記陰極側タブ部材に対向する位置に位置する前記セパレーターと、前記陰極側タブ部材に前記セパレーターを介して対向する位置に位置する陽極側電極体との間の第1間隙」及び「前記陰極側タブ部材に対向する位置に位置する前記セパレーターと、前記陰極側タブ部材との間の第2間隙」のうち前記第1間隙のみに、電解液及びイオンを通過させない性質を有する保護フィルムが配設されていることを特徴とする。
【0014】
本発明の電気二重層キャパシターによれば、後述する試験例1〜14からも分かるように、特許文献1に記載の電気二重層キャパシターの場合と同様に、「セパレーターが劣化し易くなるとともにキャパシターの特性が劣化し易くなるという問題」が改善された高信頼性の電気二重層キャパシターを提供することが可能となる。
【0015】
また、本発明の電気二重層キャパシターは、電解液及びイオンを通過させない性質を有する保護フィルムを上記した第1間隔に配設するだけの簡単な方法により製造可能であるため、上記したように「セパレーターが劣化し易くなるとともにキャパシターの特性が劣化し易くなるという問題」が改善された高信頼性の電気二重層キャパシターを、特許文献1に記載された電気二重層キャパシターの場合よりも容易な方法で製造可能な構造を有する電気二重層キャパシターを提供することが可能となる。
【0016】
なお、本発明の電気二重層キャパシターにおいて、上記した第1間隙のみに上記した保護フィルムを配設したときに何故「セパレーターが劣化し易くなるとともにキャパシターの特性が劣化し易くなるという問題」が改善されるのかについての詳細なメカニズムは明らかではないが、そのメカニズムの1つとして、以下のメカニズムが考えられる。すなわち、本発明の電気二重層キャパシターにおいては、陽極側電極体が、電解液及びイオンを通過させない性質を有する保護フィルムに覆われるようになることから、そのマスキング効果により、陽極側電極体の表面で電解質アニオン(例えば、BF4イオン、PF6イオン。)が酸化され難くなり、その結果、望ましくない酸化生成物(例えばフッ酸)が生成され難くなるというものである。
【0017】
但し、後述する試験例7及び14に係る電気二重層キャパシター110f,210f(第1間隙及び第2間隙の両方に上記した保護フィルムを配設している。)においては、陽極側電極体が保護フィルムに覆われているにもかかわらず「セパレーターが劣化し易くなるとともにキャパシターの特性が劣化し易くなるという問題」が改善されていない。従って、上記した第1間隙のみに上記した保護フィルムを配設したときに何故「セパレーターが劣化し易くなるとともにキャパシターの特性が劣化し易くなるという問題」が改善されるのかについてのメカニズムとして、上記のメカニズムとは別のメカニズムが存在するものと思われる。
【0018】
しかしながら、いずれにしても、本発明の電気二重層キャパシターによれば、後述する試験例からも分かるように、上記した第1間隙のみに上記した保護フィルムを配設したときに「セパレーターが劣化し易くなるとともにキャパシターの特性が劣化し易くなるという問題」が改善された高信頼性の電気二重層キャパシターを提供することが可能となる。
【0019】
本発明の電気二重層キャパシターにおいて、「電解液及びイオンを通過させない性質を有する保護フィルム」としては、電解液やイオンが通過できるサイズの孔を有しない無孔性のフィルムを好ましく用いることができる。
【0020】
[2]本発明の電気二重層キャパシターにおいては、前記保護フィルムが絶縁性を有することが好ましい。
【0021】
このような構成とすることにより、万一陰極側タブ部材に起因してセパレーターが破れた場合であっても、上記した保護フィルムの存在により電気二重層キャパシターがショートしてしまうのを防止することが可能となる。
【0022】
[3]本発明の電気二重層キャパシターにおいては、前記保護フィルムが、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリイミド(PI)、アラミド(全芳香族ポリアミド)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエチレンテレフタレート (PET)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリプロピレン(PP)又はポリエチレン(PE)からなることが好ましい。
【0023】
上記した材料は、電解液及びイオンを通過させない性質を有し、かつ、絶縁性に優れた材料であるため、本発明における保護フィルムの材料として好適に用いることができる。
【0024】
[4]本発明の電気二重層キャパシターにおいては、前記陰極側タブ部材と、前記陽極側タブ部材とが互いに、前記キャパシター素子の中心から外側に向かって径方向に重ならない位置に位置することが好ましい。
【0025】
このような構成とすることにより、陰極側電極体と陽極側電極体との間にセパレーターを介在させた状態で高密度かつ円滑に巻回してキャパシター素子を構成することが可能となり、高容量かつ高信頼性の電気二重層キャパシターとすることが可能となる。
【0026】
[5]本発明の電気二重層キャパシターにおいては、前記セパレーターがセルロースからなることが好ましい。
【0027】
セルロースは、劣化し易い材料であるため、セパレーターがセルロースである場合に本発明の効果が顕著に表れる。
【0028】
[6]本発明の電気二重層キャパシターにおいては、前記保護フィルムが前記セパレーターに貼り付けられていることが好ましい。
【0029】
このような構成とすることにより、上記した第1間隙のみに保護フィルムを容易に配設することが可能となる。
【0030】
[7]本発明の電気二重層キャパシターにおいて、前記保護フィルムが前記陽極側電極体に貼り付けられていることが好ましい。
【0031】
このような構成とすることによっても、上記した第1間隙のみに保護フィルムを容易に配設することが可能となる。
【0032】
[8]本発明の電気二重層キャパシターにおいて、前記保護フィルムが前記セパレーターと前記陽極側電極体との間に挟み込まれていることが好ましい。
【0033】
このような構成とすることによっても、上記した第1間隙のみに保護フィルムを容易に配設することが可能となる。
【0034】
[9]本発明の電気二重層キャパシターにおいては、前記陰極側電極体が、金属箔からなる集電体の両面に炭素含有多孔質材料からなる分極性電極層が形成され、さらには前記集電体から前記分極性電極層が部分的に除去されて前記集電体が露出した露出部分に陰極側タブ部材が接合された陰極側電極体であり、前記陽極側電極体が、金属箔からなる集電体の両面に炭素含有多孔質材料からなる分極性電極層が形成され、さらには前記集電体から前記分極性電極層が部分的に除去されて前記集電体が露出した露出部分に陽極側タブ部材が接合された陽極側電極体であることが好ましい。
【0035】
本発明の電気二重層キャパシターによれば、後述する試験例1〜7からも分かるように「セパレーターが劣化し易くなるとともにキャパシターの特性が劣化し易くなるという問題」が改善された高信頼性の電気二重層キャパシターを、特許文献1に記載された電気二重層キャパシターの場合よりも容易な方法で製造可能な構造を有する電気二重層キャパシターを提供することが可能となる。
【0036】
[10]本発明の電気二重層キャパシターにおいては、前記陰極側電極体が、金属箔からなる集電体の片面に炭素含有多孔質材料からなる分極性電極層が形成され、さらには前記集電体から前記分極性電極層が部分的に除去されて前記集電体が露出した露出部分に陰極側タブ部材が接合された陰極側電極体であり、前記陽極側電極体が、金属箔からなる集電体の片面に炭素含有多孔質材料からなる分極性電極層が形成され、さらには前記集電体から前記分極性電極層が部分的に除去されて前記集電体が露出した露出部分に陽極側タブ部材が接合された陽極側電極体であることが好ましい。
【0037】
本発明の電気二重層キャパシターによれば、後述する試験例8〜14からも分かるように「セパレーターが劣化し易くなるとともにキャパシターの特性が劣化し易くなるという問題」が改善された高信頼性の電気二重層キャパシターを、特許文献1に記載された電気二重層キャパシターの場合よりも容易な方法で製造可能な構造を有する電気二重層キャパシターを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】実施形態1に係る電気二重層キャパシター100を説明するために示す図。
【図2】実施形態1に係る電気二重層キャパシター100を説明するために示す図。
【図3】実施形態1に係る電気二重層キャパシター100を製造する工程を説明するために示すフローチャート。
【図4】実施形態2に係る電気二重層キャパシター200を説明するために示す図。
【図5】試験例2〜4に係る電気二重層キャパシターを説明するために示す図。
【図6】試験例5〜7に係る電気二重層キャパシターを説明するために示す図。
【図7】試験例1〜7における評価結果を示す図表。
【図8】試験例9〜11に係る電気二重層キャパシターを説明するために示す図。
【図9】試験例12〜14に係る電気二重層キャパシターを説明するために示す図。
【図10】試験例8〜14における評価結果を示す図表。
【図11】変形例1に係る電気二重層キャパシターを説明するために示す図。
【図12】変形例2に係る電気二重層キャパシターを説明するために示す図。
【図13】変形例3に係る電気二重層キャパシターを説明するために示す図。
【図14】変形例4に係る電気二重層キャパシターを説明するために示す図。
【図15】変形例5に係る電気二重層キャパシターを説明するために示す図。
【図16】特許文献1に記載された電気二重層キャパシターを説明するために示す図。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明の電気二重層キャパシターについて、図に示す実施の形態に基づいて詳細に説明する。
【0040】
[実施形態1]
A.電気二重層キャパシターの構成
図1及び図2は、実施形態1に係る電気二重層キャパシター100(図示せず)を説明するために示す図である。図1(a)は電気二重層キャパシター100を構成する陰極側電極体120aを引き延ばした状態としたときの当該陰極側電極体120aの斜視図であり、図1(b)は電気二重層キャパシター100を構成するキャパシター素子110の部分断面図であり、図1(c)は図1(b)のA−A断面図である。図2(a)は電気二重層キャパシター100を構成するキャパシター素子110の一部展開斜視図であり、図2(b)は電気二重層キャパシター100の分解斜視図である。なお、図1(b)においては、陰極側電極体120a又は陽極側電極体120bが図の左右端で終端しているように示されているが、陰極側電極体120a又は陽極側電極体120bは、図の左右端で終端していないことは言うまでもない。他の対応する図においても同様である。
【0041】
実施形態1に係る電気二重層キャパシター100は、図1及び図2に示すように、「金属箔からなる集電体122の両面に炭素含有多孔質材料からなる分極性電極層124,126が形成され、さらには集電体122から分極性電極層124が部分的に除去されて集電体122が露出した露出部分に陰極側タブ部材128が接合された陰極側電極体120a」と、「金属箔からなる集電体122の両面に炭素含有多孔質材料からなる分極性電極層124,126が形成され、さらには集電体122から分極性電極層124が部分的に除去されて集電体122が露出した露出部分に陽極側タブ部材128が接合された陽極側電極体120b」との間にセパレーター130を介在させて巻回することにより構成されたキャパシター素子110と、キャパシター素子110を電解液とともに収容する有底筒状の金属ケース150と、金属ケース150の開口部を封止する弾性封口体152とを備える。
【0042】
実施形態1に係る電気二重層キャパシター100は、図2(b)に示すように、キャパシター素子110の一対のタブ部材128(128a,128b(図14参照。))を、弾性封口体152を貫通して取り付けられた一対の接続端子154(154a,154b)に接合することにより、キャパシター素子110と弾性封口体152とを一体化させ、その後、当該キャパシター素子110を、電解液を含浸させた状態で有底筒状の金属ケース150内に挿入し、さらにその後、弾性封口体152の周囲の部分で金属ケース150を巻き締めることによって金属ケース150の開口部を弾性封口体152で封止した構造を有する。
【0043】
そして、実施形態1に係る電気二重層キャパシター100においては、「陰極側タブ部材128aに対向する位置に位置するセパレーター130aと、陰極側タブ部材128aにセパレーター130aを介して対向する位置に位置する陽極側電極体120bとの間の第1間隙」及び「陰極側タブ部材128aに対向する位置に位置するセパレーター130aと、陰極側タブ部材128aとの間の第2間隙」のうち第1間隙のみに、電解液及びイオンを通過させない性質を有する保護フィルム140が配設されている。
【0044】
集電体122としては、例えば、厚さ20μm〜50μmのアルミニウム薄板を用いる。また、分極性電極層124,126としては、例えば、活性炭粉末及びカーボンブラックをバインダーと混練して炭素微粒子含有ペーストを作製し、当該ペーストを10μm〜200μmの厚さで集電体122の表裏両面に塗工及び乾燥することにより形成したものを用いる。
【0045】
タブ部材128(陰極側タブ部材128a,陽極側タブ部材128b)としては、例えば、厚さ100μm〜300μmのアルミニウム薄板を用いる。
【0046】
陰極側電極体タブ部材128aと、陽極側タブ部材128bとは互いに、キャパシター素子110の中心から外側に向かって径方向に重ならない位置に位置する。
【0047】
セパレーター130(130a,130b)としては、例えば、厚さ20μm〜100μmのセルロース不織布を用いる。
【0048】
保護フィルム140としては、例えば、厚さ1μm〜200μm(好ましくは5μm〜50μm)のポリフェニレンスルフィド(PPS)を用いる。従って、保護フォルム140は、電解液及びイオンを通過させない性質を有し、かつ、優れた絶縁性を有する。
【0049】
保護フィルム140は、糊によってセパレーター130aに貼り付けられている。
【0050】
B.電気二重層キャパシターの製造方法
図3は、実施形態1に係る電気二重層キャパシター100を製造する工程を説明するために示すフローチャートである。
【0051】
実施形態1に係る電気二重層キャパシターの製造方法は、図3に示すように、電極体準備工程S110、分極性電極層除去工程S120、タブ部材接合工程S130、保護フィルム貼り付け工程S140及び巻回工程S150をこの順序で含む。以下、これらの各工程を詳細に説明する。
【0052】
1.電極体準備工程S110
まず、アルミニウム薄板からなる集電体122の両面に炭素含有多孔質材料からなる分極性電極層124,126が形成された広幅の電極体シートを用意し、当該広幅の電極体シートを細幅に裁断して複数の電極体120(120a,120b)を形成する。
【0053】
2.分極性電極層除去工程S120
次に、電極体120(120a,120b)の表面から部分的に分極性電極層124を除去することにより電極体120(120a,120b)の所定部分に露出部分を形成する。分極性電極層除去工程S120は、例えばブラシを用いて実施する。
【0054】
3.タブ部材接合工程S130
次に、露出部分に、タブ部材128(128a,128b)を配置した状態で、冷間圧接法を用いて、電極体120(120a,120b)にタブ部材128(128a,128b)を接合する。これにより、陰極側電極体120a及び陽極側電極体120bが完成する。
【0055】
4.保護フィルム貼り付け工程S140
次に、陰極側タブ部材128aに対向する位置に位置するセパレーター130aと、陰極側タブ部材128aにセパレーター130aを介して対向する位置に位置する陽極側電極体120bとの間の第1間隙に、ポリフェニレンスルフィド(PPS)からなる保護フィルム140を配設する。具体的には、保護フィルム140を陽極側電極体120bの側からセパレーター130aに貼り付ける。
【0056】
5.巻回工程S140
次に、陰極側電極体120aと陽極側電極体120bとの間にセパレーター130a,130bを介在させて巻回することによりキャパシター素子110を形成する(図2(a)参照。)。
【0057】
次に、キャパシター素子110の一対のタブ部材128(128a,128b)を、弾性封口体152を貫通して取り付けられた一対の接続端子154(154a,154b)に接合することにより、キャパシター素子110と弾性封口体152とを一体化させ、その後、当該キャパシター素子110を、電解液を含浸させた状態で有底筒状の金属ケース150内に挿入し、さらにその後、弾性封口体152の周囲の部分で金属ケース150を巻き締めることによって金属ケース150の開口部を弾性封口体152で封止した構造を有する電気二重層キャパシター100を形成する(図2(b)参照。)。
【0058】
C.電気二重層キャパシターの効果
【0059】
実施形態1に係る電気二重層キャパシター100によれば、後述する試験例1〜14からも分かるように、特許文献1に記載の電気二重層キャパシターの場合と同様に、「セパレーターが劣化し易くなるとともにキャパシターの特性が劣化し易くなるという問題」が改善された高信頼性の電気二重層キャパシターを提供することが可能となる。
【0060】
また、実施形態1に係る電気二重層キャパシター100は、電解液及びイオンを通過させない性質を有する保護フィルムを上記した第1間隙に配設するだけの簡単な方法により製造可能であるため、上記したように「セパレーターが劣化し易くなるとともにキャパシターの特性が劣化し易くなるという問題」が改善された高信頼性の電気二重層キャパシターを、特許文献1に記載された電気二重層キャパシターの場合よりも容易な方法で製造可能な構造を有する電気二重層キャパシターを提供することが可能となる。
【0061】
また、実施形態1に係る電気二重層キャパシター100によれば、保護フィルム140がポリフェニレンスルフィド(PPS)からなり、絶縁性を有するため、万一陰極側タブ部材に起因してセパレーターが破れた場合であっても、上記した保護フィルムの存在により電気二重層キャパシターがショートしてしまうのを防止することが可能となる。
【0062】
また、実施形態1に係る電気二重層キャパシター100によれば、陰極側タブ部材128aと陽極側タブ部材128bとが互いに、キャパシター素子の中心から外側に向かって径方向に重ならない位置に位置するため、陰極側電極体120aと陽極側電極体120bとの間にセパレーター130a,130bを介在させた状態で高密度かつ円滑に巻回してキャパシター素子を構成することが可能となり、高容量かつ高信頼性の電気二重層キャパシターとすることが可能となる。
【0063】
また、実施形態1に係る電気二重層キャパシター100によれば、セパレーター130a,130bがセルロースからなり、劣化し易い材料であるため、本発明の効果が顕著に表れる。
【0064】
また、実施形態1に係る電気二重層キャパシター100によれば、保護フィルム140をセパレーター130aに貼り付ければよいため、上記した第1間隙のみに保護フィルムを容易に配設することが可能となる。
【0065】
[実施形態2]
図4は、実施形態2に係る電気二重層キャパシター200(図示せず)を説明するために示す図である。図4(a)は電気二重層キャパシター200を構成する陰極側電極体220aを引き延ばした状態としたときの当該陰極側電極体220aの斜視図であり、図4(b)は電気二重層キャパシター200を構成するキャパシター素子210の部分断面図であり、図4(c)は図4(b)のA−A断面図である。
【0066】
実施形態2に係る電気二重層キャパシター200は、基本的には実施形態1に係る電気二重層キャパシター100と同様の構成を有するが、陰極側電極体及び陰極側電極体の構成が実施形態1に係る電気二重層キャパシター100の場合と異なる。
すなわち、実施形態2に係る電気二重層キャパシター200においては、陰極側電極体220aは、金属箔からなる集電体222の「片面」に炭素含有多孔質材料からなる分極性電極層224が形成され、さらには集電体222から分極性電極層224が部分的に除去されて集電体222が露出した露出部分に陰極側タブ部材228aが接合された陰極側電極体であり、陽極側電極体220bは、金属箔からなる集電体222の「片面」に炭素含有多孔質材料からなる分極性電極層226が形成され、さらには集電体222から分極性電極層226が部分的に除去されて集電体222が露出した露出部分に陽極側タブ部材228b(図示せず。)が接合された陽極側電極体である。
【0067】
このように、実施形態2に係る電気二重層キャパシター200は、陰極側電極体及び陰極側電極体の構成が実施形態1に係る電気二重層キャパシター100の場合と異なるが、「陰極側タブ部材228aに対向する位置に位置するセパレーター230aと、陰極側タブ部材228aにセパレーター230aを介して対向する位置に位置する陽極側電極体220bとの間の第1間隙」及び「陰極側タブ部材228aに対向する位置に位置するセパレーター230aと、陰極側タブ部材228aとの間の第2間隙」のうち第1間隙のみに、電解液及びイオンを通過させない性質を有する保護フィルム240が配設されているため、実施形態1に係る電気二重層キャパシター100の場合と同様に、「セパレーターが劣化し易くなるとともにキャパシターの特性が劣化し易くなるという問題」が改善された高信頼性の電気二重層キャパシターを、特許文献1に記載された電気二重層キャパシターの場合よりも容易な方法で製造可能な構造を有する電気二重層キャパシターを提供することが可能となる。
【0068】
なお、実施形態2に係る電気二重層キャパシター200は、陰極側電極体及び陰極側電極体以外の構成は実施形態1に係る電気二重層キャパシター100の場合と同様であるため、実施形態1に係る電気二重層キャパシター100が有する効果のうち該当する効果を有する。
【0069】
[試験例1〜7]
以下、試験例1〜7により本発明をさらに具体的に説明する。
試験例1〜7は、本発明の電気二重層キャパシターが「セパレーターが劣化し易くなるとともにキャパシターの特性が劣化し易くなるという問題」が改善された高信頼性の電気二重層キャパシターであることを示す試験例である。
【0070】
1.試験例1〜7に係る各電気二重層キャパシターの説明
図5は、試験例2〜4に係る電気二重層キャパシターに用いるキャパシター素子110a,110b,110cを説明するために示す図である。図5(a)はキャパシター素子110aの断面図であり、図5(b)はキャパシター素子110bの断面図であり、図5(c)はキャパシター素子110cの断面図である。図6は、試験例5〜7に係る電気二重層キャパシターに用いるキャパシター素子110d,110e,110fを説明するために示す図である。図6(a)はキャパシター素子110dの断面図であり、図6(b)はキャパシター素子110eの断面図であり、図6(c)はキャパシター素子110fの断面図である。図7は、試験例1〜7における評価結果を示す図表である。
【0071】
試験例1〜3に係る電気二重層キャパシターはいずれも、本発明の実施例である。このうち、試験例1に係る電気二重層キャパシターは、実施形態1に係る電気二重層キャパシター100と同様の構成を有する。一方、試験例2に係る電気二重層キャパシター及び試験例3に係る電気二重層キャパシターはともに、実施形態1に係る電気二重層キャパシター100とほぼ同様の構成を有するが、保護フィルム140の配設のされ方が実施形態1に係る電気二重層キャパシターに100の場合とは異なる。すなわち、試験例2に係る電気二重層キャパシターにおいては、図5(a)に示すように、保護フィルム140が陽極側電極体120bに貼り付けられている。また、試験例3に係る電気二重層キャパシターにおいては、図5(b)に示すように、保護フィルム140がセパレーター130aと陽極側電極体120bとの間に挟み込まれている。
【0072】
試験例4〜7に係る電気二重層キャパシターはいずれも、本発明の比較例である。試験例4〜7に係る電気二重層キャパシターはいずれも、実施形態1に係る電気二重層キャパシター100とほぼ同様の構成を有するが、保護フィルムの構成又は保護フィルムの配設位置が実施形態1に係る電気二重層キャパシター100の場合とは異なる。すなわち、試験例4に係る電気二重層キャパシターにおいては、図5(c)に示すように、保護フィルムとして、セルロース紙からなる保護フィルム142を用いている。また、試験例5に係る電気二重層キャパシターにおいては、図6(a)に示すように、保護フィルムがどこにも配設されていない。また、試験例6に係る電気二重層キャパシターにおいては、図6(b)に示すように、保護フィルム140とは別の保護フィルム144が「陰極側タブ部材128aに対向する位置に位置するセパレーター130aと、陰極側タブ部材128aとの間の第2間隙」のみに配設されている。また、試験例7に係る電気二重層キャパシターにおいては、図6(c)に示すように、保護フィルム140が「陰極側タブ部材128aに対向する位置に位置するセパレーター130aと、陰極側タブ部材128aにセパレーター130aを介して対向する位置に位置する陽極側電極体120bとの間の第1間隙」に配設され、保護フィルム140とは別の保護フィルム144が「陰極側タブ部材128aに対向する位置に位置するセパレーター130aと、陰極側タブ部材128aとの間の第2間隙」に配設されている。
【0073】
2.評価方法
試験例1〜7に係る電気二重層キャパシターをそれぞれ5個準備して、これらに所定の劣化試験を施したものを、以下の評価方法1〜4により評価した。劣化試験は、各電気二重層キャパシターを、温度80℃の恒温槽に入れ、陰極側外部引出端子154aと陽極側外部引出端子154bとの間に2.5Vの電圧を印加した状態で500時間静置することにより行った。
【0074】
2−1.評価方法1(変色状態に関する評価方法)
試験例1〜7に係る電気二重層キャパシターのそれぞれについて、電気二重層キャパシターを分解して、陰極側タブ部材128aに対向する位置に位置するセパレーター130aを陽極側電極体120b側から肉眼で観察することにより、セパレーター130aの変色状態に関する評価を行った。変色が全く見られないか変色があっても極く薄い色である場合には「○」の評価を与え、全体が茶色〜黒茶色に濃く変色している場合には「×」の評価を与え、その中間である場合には「△」の評価を与えた。図7の該当欄には、当該評価をそのまま記入した。
【0075】
2−2.評価方法2(製品膨れに関する評価方法)
試験例1〜7に係る電気二重層キャパシターのそれぞれについて、電気二重層キャパシターの金属ケースの高さ寸法を測定することにより、製品膨れに関する評価を行った。図7の該当欄には、測定された高さ寸法をそのまま記入した。
【0076】
2−3.評価方法3(容量低下率に関する評価方法)
試験例1〜7に係る電気二重層キャパシターのそれぞれについて、「JIS C5160−2」に準拠した方法で各電気二重層キャパシターの容量(C)を測定することにより、容量低下率に関する評価を行った。図7には、「初期の容量」から「測定された容量」を減じて得られる値を「初期の容量」で除して得られる値(ΔC(%))を「容量低下率」としてそのまま記入した。
【0077】
2−4.評価方法4(直流抵抗増加率に関する評価方法)
試験例1〜7に係る電気二重層キャパシターのそれぞれについて、「JIS C5160−2」に準拠した方法で各電気二重層キャパシターの直流抵抗(DCR)を測定することにより、直流抵抗増加率に関する評価を行った。図7には、「測定された直流抵抗」から「初期の直流抵抗」を減じて得られる値を「初期の直流抵抗」で除して得られる値(ΔDCR(%))をそのまま記入した。
【0078】
2−5.総合評価
基本的には、変色の程度の場合の評価をそのまま総合評価とした。すなわち、変色の程度が「○」の場合に「○」の総合評価を与え、変色の程度が「△」の場合に「△」の総合評価を与え、変色の程度が「×」の場合に「×」の総合評価を与えた。但し、変色の程度が「○」の場合であっても、製品の脹れが「0.8mm以上」であるか、容量低下率が「8%以上」であるか、直流抵抗増加率が「70%以上」である場合には「△」の総合評価を与えた。また、変色の程度が「△」の場合であっても、製品の脹れが「0.8mm以上」であるか、容量低下率が「8%以上」であるか、直流抵抗増加率が「70%以上」である場合には「×」の総合評価を与えた。図7の該当欄には、当該総合評価をそのまま記入した。
【0079】
3.評価結果
図7からも明らかなように、試験例1〜3に係る電気二重層キャパシターにおいてはいずれも、「○」という総合評価が得られた。一方、試験例4〜7に係る電気二重層キャパシターにおいてはいずれも、「×」という総合評価が得られた。従って、上記の結果から、本発明の電気二重層キャパシターは、「セパレーターが劣化し易くなるとともにキャパシターの特性が劣化し易くなるという問題」が改善された高信頼性の電気二重層キャパシターであることが明らかとなった。
【0080】
[試験例8〜14]
以下、試験例8〜14により本発明をさらに具体的に説明する。
試験例8〜14は、陰極側電極体及び陽極側電極体がともに、金属箔からなる集電体の片面に炭素含有多孔質材料からなる分極性電極層が形成され、さらには集電体から分極性電極層が部分的に除去されて集電体が露出した露出部分にタブ部材が接合された電極体である場合にも、本発明の効果が得られることを示す試験例である。
【0081】
1.試験例8〜14に係る各電気二重層キャパシターの説明
図8は、試験例9〜11に係る電気二重層キャパシターに用いるキャパシター素子210a,210b,210cを説明するために示す図である。図8(a)はキャパシター素子210aの断面図であり、図8(b)はキャパシター素子210bの断面図であり、図8(c)はキャパシター素子210cの断面図である。図9は、試験例12〜14に係る電気二重層キャパシターに用いるキャパシター素子210d,210e,210fを説明するために示す図である。図9(a)はキャパシター素子210dの断面図であり、図9(b)はキャパシター素子210eの断面図であり、図9(c)はキャパシター素子210fの断面図である。図10は、試験例8〜14における評価結果を示す図表である。
【0082】
試験例8〜10に係る電気二重層キャパシターはいずれも、本発明の実施例である。このうち、試験例8に係る電気二重層キャパシターは、実施形態2に係る電気二重層キャパシター200と同様の構成を有する。一方、試験例9に係る電気二重層キャパシター及び試験例10に係る電気二重層キャパシターはともに、実施形態2に係る電気二重層キャパシター200とほぼ同様の構成を有するが、保護フィルム240の配設のされ方が実施形態2に係る電気二重層キャパシターに200の場合とは異なる。すなわち、試験例8に係る電気二重層キャパシターにおいては、図8(a)に示すように、保護フィルム240が陽極側電極体220bに貼り付けられている。また、試験例10に係る電気二重層キャパシターにおいては、図8(b)に示すように、保護フィルム240がセパレーター230aと陽極側電極体220bとの間に挟み込まれている。
【0083】
試験例11〜14に係る電気二重層キャパシターはいずれも、本発明の比較例である。試験例11〜14に係る電気二重層キャパシターはいずれも、実施形態2に係る電気二重層キャパシター200とほぼ同様の構成を有するが、保護フィルムの構成又は保護フィルムの配設位置が実施形態2に係る電気二重層キャパシター200の場合とは異なる。すなわち、試験例11に係る電気二重層キャパシターにおいては、図8(c)に示すように、保護フィルムとして、セルロース紙からなる保護フィルム242を用いている。また、試験例12に係る電気二重層キャパシターにおいては、図9(a)に示すように、保護フィルムがどこにも配設されていない。また、試験例13に係る電気二重層キャパシターにおいては、図9(b)に示すように、保護フィルム240とは別の保護フィルム244が「陰極側タブ部材228aに対向する位置に位置するセパレーター230aと、陰極側タブ部材228aとの間の第2間隙」のみに配設されている。また、試験例14に係る電気二重層キャパシターにおいては、図9(c)に示すように、保護フィルム240が「陰極側タブ部材228aに対向する位置に位置するセパレーター230aと、陰極側タブ部材228aにセパレーター230aを介して対向する位置に位置する陽極側電極体220bとの間の第1間隙」に配設され、保護フィルム240とは別の保護フィルム244が「陰極側タブ部材228aに対向する位置に位置するセパレーター230aと、陰極側タブ部材228aとの間の第2間隙」に配設されている。
【0084】
2.評価方法
試験例8〜14に係る電気二重層キャパシターをそれぞれ5個準備して、これらに所定の劣化試験を施したものを、試験例1〜7の場合と同様の評価方法1〜4及び試験例1〜7の場合と同様の総合評価により評価した。劣化試験及び評価基準は、試験例1〜7の場合と同様である。
【0085】
3.評価結果
図10からも明らかなように、試験例8〜10に係る電気二重層キャパシターにおいてはいずれも、「○」という総合評価が得られた。一方、試験例11〜14に係る電気二重層キャパシターにおいてはいずれも、「×」という総合評価が得られた。従って、上記の結果から、本発明の電気二重層キャパシターは、陰極側電極体及び陽極側電極体がともに、金属箔からなる集電体の片面に炭素含有多孔質材料からなる分極性電極層が形成され、さらには集電体から分極性電極層が部分的に除去されて集電体が露出した露出部分にタブ部材が接合された電極体である場合にも、本発明の効果が得られることが明らかとなった。
【0086】
以上、本発明の電気二重層キャパシターを上記の各実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記の各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0087】
(1)上記各実施形態においては、保護フィルム140,240として、ポリフェニレンスルフィド(PPS)からなる保護フィルムを用いたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、ポリイミド(PI)、アラミド(全芳香族ポリアミド)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエチレンテレフタレート (PET)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)からなる保護フィルムを用いることができる。
【0088】
(2)上記各実施形態においては、セパレーター130,230として、セルロースの不織布からなるセパレーターを用いたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、ポリイミド(PI)、アラミド(全芳香族ポリアミド)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエチレンテレフタレート (PET)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)の不織布からなるセパレーターを用いることもできる。
【0089】
(3)上記各実施形態においては、保護フィルム140,240として、陰極側タブ部材128a,228aよりも若干大きな面積を有する保護フィルムを用いたが、本発明はこれに限定されるものではない。図11は、変形例1に係る電気二重層キャパシターにおけるキャパシター素子112を説明するために示す図である。図11(a)はキャパシター素子112の部分断面図であり、図11(b)は図11(a)のA−A断面図である。図12は、変形例2に係る電気二重層キャパシターにおけるキャパシター素子114を説明するために示す図である。図12(a)はキャパシター素子114の部分断面図であり、図12(b)は図12(a)のA−A断面図である。図11に示すように、実施形態1における保護フィルム140よりも大きな面積を有する保護フィルム140を用いてもよいし、図12に示すように、陰極側電タブ部材128aと同じ面積を有する保護フィルム140を用いてもよいし、図示は省略するが、陰極側タブ部材128aよりも小さな面積を有する保護フィルム140を用いてもよい。
【0090】
(4)上記各実施形態においては、陰極側電極体120a,220aとして、幅方向の一部を残すように集電体122,222から分極性電極層124,224を除去して形成した露出部分に陰極側タブ部材128a,228aが接合された陰極側電極体を用いたが、本発明はこれに限定されるものではない。図13は、変形例3に係る電気二重層キャパシターにおけるキャパシター素子116を説明するために示す図である。図13(a)は電気二重層キャパシターを構成する陰極側電極体120aを引き延ばした状態としたときの当該陰極側電極体120aの斜視図であり、図13(b)はキャパシター素子116の部分断面図であり、図13(c)は図13(b)のA−A断面図である。図13に示すように、幅方向に沿って集電体122から分極性電極層124を全部除去して形成した露出部分に陰極側タブ部材128aが接合された陰極側電極体を用いてもよい。
【0091】
(5)上記各実施形態においては、「陰極側タブ部材128a,228aに対向する位置に位置するセパレーター130a,230と、陰極側タブ部材128a,228aにセパレーター130a,230aを介して対向する位置に位置する陽極側電極体120b,220bとの間の第1間隙」に保護フィルム140,240を配設しているが、本発明はこれに限定されるものではない。図14は、変形例4に係る電気二重層キャパシターにおけるキャパシター素子118を説明するために示す図である。図14に示すように、「陰極側タブ部材128aに対向する位置に位置するセパレーター130aと、陰極側タブ部材128aにセパレーター130を介して対向する位置に位置する陽極側電極体120bとの間の第1間隙」に保護フィルム140を配設するのに加えて、「陽極側タブ部材128bに対向する位置に位置するセパレーター130bと、陽極側タブ部材128bとの間の第3間隙」に保護フィルム148を配設してもよい。
【0092】
(6)上記実施形態2においては、「集電体222の片面に分極性電極層224が形成され、さらには集電体222から分極性電極層224が部分的に除去されて集電体222が露出した露出部分に陰極側タブ部材228aが接合された陰極側電極体220a」を備えるキャパシター素子218において、「陰極側タブ部材228aに対向する位置に位置するセパレーター230aと、陰極側タブ部材228aにセパレーター230aを介して対向する位置に位置する陽極側電極体220bとの間の第1間隙」に保護フィルム240を配設しているが、本発明はこれに限定されるものではない。図15は、変形例5に係る電気二重層キャパシターにおけるキャパシター素子310を説明するために示す図である。図15に示すように、「集電体322の片面に分極性電極層324が形成され、さらには集電体322から分極性電極層324が部分的に除去されて集電体322が露出した露出部分Eの裏面側に陰極側タブ部材328aが接合された陰極側電極体320a」を備えるキャパシター素子310に本発明を適用することもできる。この場合においては、「集電体322が露出した露出部分Eに対向する位置に位置するセパレーター330aと、集電体322が露出した露出部分Eにセパレーター330aを介して対向する位置に位置する陽極側電極体320bとの間の第1間隙」に保護フィルム340を配設することができる。
【符号の説明】
【0093】
110,110a,110b,110c,110d,110e,110f,112,114,116,118,210,210a,210b,210c,210d,210e,210f,218,310,910…キャパシター素子、120,220,320,920…電極体、120a,220a,320a,920a…陰極側電極体、120b,220b,320b,920b…陽極側電極体、122,222,322,922…集電体、124,126,224,226,324,326,924,926…分極性電極層、128,228,328…タブ部材、128a,228a,328a,928a…陰極側タブ部材、128b,228b、328b…陽極側タブ部材、130,130a,130b,230,230a,230b,330a,330b,930…セパレーター、140,142,144,148,240,242,244,340…保護フィルム、150…金属ケース、152…弾性封口体、154a…陰極側接続端子、154b…陽極側接続端子、E…露出部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
「金属箔からなる集電体の少なくとも片面に炭素含有多孔質材料からなる分極性電極層が形成され、さらには前記集電体から前記分極性電極層が部分的に除去されて前記集電体が露出した露出部分に陰極側タブ部材が接合された陰極側電極体」と、「金属箔からなる集電体の少なくとも片面に炭素含有多孔質材料からなる分極性電極層が形成され、さらには前記集電体から前記分極性電極層が部分的に除去されて前記集電体が露出した露出部分に陽極側タブ部材が接合された陽極側電極体」との間にセパレーターを介在させて巻回することにより構成されたキャパシター素子と、
前記キャパシター素子を電解液とともに収容する有底筒状の金属ケースと、
前記金属ケースの開口部を封止する弾性封口体とを備える電気二重層キャパシターであって、
「前記陰極側タブ部材に対向する位置に位置する前記セパレーターと、前記陰極側タブ部材に前記セパレーターを介して対向する位置に位置する陽極側電極体との間の第1間隙」及び「前記陰極側タブ部材に対向する位置に位置する前記セパレーターと、前記陰極側タブ部材との間の第2間隙」のうち前記第1間隙のみに、電解液及びイオンを通過させない性質を有する保護フィルムが配設されていることを特徴とする電気二重層キャパシター。
【請求項2】
前記保護フィルムが絶縁性を有することを特徴とする請求項1に記載の電気二重層キャパシター。
【請求項3】
前記保護フィルムが、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリイミド(PI)、アラミド(全芳香族ポリアミド)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエチレンテレフタレート (PET)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリプロピレン(PP)又はポリエチレン(PE)からなることを特徴とする請求項2に記載の電気二重層キャパシター。
【請求項4】
前記陰極側タブ部材と、前記陽極側タブ部材とが互いに、前記キャパシター素子の中心から外側に向かって径方向に重ならない位置に位置することを特徴とする請求項3に記載の電気二重層キャパシター。
【請求項5】
前記セパレーターがセルロースからなることを特徴とする請求項4に記載の電気二重層キャパシター。
【請求項6】
前記保護フィルムが前記セパレーターに貼り付けられていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の電気二重層キャパシター。
【請求項7】
前記保護フィルムが前記陽極側電極体に貼り付けられていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の電気二重層キャパシター。
【請求項8】
前記保護フィルムが前記セパレーターと前記陽極側電極体との間に挟み込まれていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の電気二重層キャパシター。
【請求項9】
前記陰極側電極体が、金属箔からなる集電体の両面に炭素含有多孔質材料からなる分極性電極層が形成され、さらには前記集電体から前記分極性電極層が部分的に除去されて前記集電体が露出した露出部分に陰極側タブ部材が接合された陰極側電極体であり、
前記陽極側電極体が、金属箔からなる集電体の両面に炭素含有多孔質材料からなる分極性電極層が形成され、さらには前記集電体から前記分極性電極層が部分的に除去されて前記集電体が露出した露出部分に陽極側タブ部材が接合された陽極側電極体であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の電気二重層キャパシター。
【請求項10】
前記陰極側電極体が、金属箔からなる集電体の片面に炭素含有多孔質材料からなる分極性電極層が形成され、さらには前記集電体から前記分極性電極層が部分的に除去されて前記集電体が露出した露出部分に陰極側タブ部材が接合された陰極側電極体であり、
前記陽極側電極体が、金属箔からなる集電体の片面に炭素含有多孔質材料からなる分極性電極層が形成され、さらには前記集電体から前記分極性電極層が部分的に除去されて前記集電体が露出した露出部分に陽極側タブ部材が接合された陽極側電極体であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の電気二重層キャパシター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−69828(P2012−69828A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−214544(P2010−214544)
【出願日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【出願人】(000190091)ルビコン株式会社 (38)
【Fターム(参考)】