説明

電気二重層キャパシタ用導電性シート

【課題】電解液に対する濡れ性が高い導電性シートを提供し、また、電気二重層キャパシタ等のコンデンサに使用したときに内部抵抗を充分に抑制し得る導電性シートを提供する。
【解決手段】水銀圧入法で測定したときに、全細孔容積に対して孔径350nm以上の細孔の全容積の占める割合が45容量%以下であることを特徴とする、導電性シートであり、好ましくは、電極活材料、導電性材料およびバインダーを含む導電性シートである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気二重層キャパシタ用電極シート等の導電性シートに関する。
【背景技術】
【0002】
電気二重層キャパシタは、陽極・陰極の両電極と電解質とを有し、各電極と電解質との間に形成される電気二重層を利用したコンデンサである。
すなわち、電気二重層キャパシタは、外部から電圧が加えられると、電解質中の陽イオンおよび陰イオンが、それぞれ陰極および陽極との接触界面において極めて短い距離を隔てて正・負の電荷が対向するように配列して電気二重層を形成し、この電気二重層によって電荷を蓄積し充電することができるものであり、電極表面に電気的に陽イオンまたは陰イオンを吸脱着するサイクルが充放電サイクルである点で、物質移動を伴う酸化還元反応のサイクルが充放電サイクルである電池とは相違するものである。
【0003】
電気二重層キャパシタは、電池と比較して、瞬間充放電特性に優れ、充放電サイクルが化学反応を伴わないものであるため、充放電を繰り返しても上記瞬間充放電特性は殆ど劣化しない。また、電気二重層キャパシタは、充放電時に充放電過電圧を生じないため、簡単でかつ安価な電気回路で足り、更に、残存容量が分かり易く、−30〜90℃の広範囲な温度下に亘って耐久温度特性を有し、無公害性である等、電池に比較して優れた点が多い。
このため、電気二重層キャパシタは、電気自動車、燃料電池車やハイブリッド電気自動車のエネルギー回生時やエンジン始動時に使用される電源としても脚光を浴びるようになっている。
【0004】
電気二重層キャパシタにおいて、電解質は、電気二重層を形成するためのイオン源としての役割を担い、電極と同様に、コンデンサ特性を左右する重要な物質である。
上記電解質としては、従来より、水系電解液や非水電解液等の電解液が知られており、電気二重層キャパシタのエネルギー密度を向上させる観点から、高い作動電圧を発揮することができる非水電解液が注目されている。上記非水電解液としては、例えば、炭酸カーボネート(炭酸エチレン、炭酸プロピレン等)、γ−ブチロラクトン等の高誘電率の有機溶媒に、(CP・BFや、(CN・BF等の溶質(支持塩)を溶解させたものが実用化されている。
【0005】
しかしながら、電気二重層キャパシタにおいては、電極等のキャパシタ部材に対する電解液の浸透性が低いために、電気二重層キャパシタの作製に際し、キャパシタ用容器に電極等のキャパシタ部材を詰めた後、真空引きしながら電解液を注入してキャパシタ部材に浸透させるときに長時間を要し、製造工程が複雑で生産性が低いという技術課題が存在していた。
【0006】
また、電極に対する非水電解液等の電解液の浸透性が低いことにより、電気二重層キャパシタの内部抵抗が大きくなるという技術課題も存在していた。
ここで、電気二重層キャパシタの内部抵抗値をRとし、キャパシタから取り出せる電流値をIとし、電圧降下の値をEとすると、オームの法則に従ってE=IRに相当する分、電圧が低下する。すなわち、電気二重層キャパシタの内部抵抗を抑えることによって、電気二重層キャパシタの電圧降下を抑制することができ、その結果、電気二重層キャパシタから取り出し得る容量(放電容量)を増大させてキャパシタの効率を改善し、パルス放電特性や大電流放電特性を向上させることができる。
【0007】
このため、特許文献1(特開2004−186275号)においては、キャパシタの内部抵抗を減少させるために、電極シート形成材料中のバインダー量を調整したり電極シート形成材料調製時の混練時間を調整することによって、電極シート表面の接触角を所定範囲に制御し、電極シートの濡れ性を向上する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−186275号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、本発明者等が鋭意検討したところ、特許文献1記載の電極シートであっても必ずしも十分な濡れ性を示さず、同電極シートを用いて作製された電気二重層キャパシタは、内部抵抗を充分に抑制し得ないものであることが判明した。
このような状況下、本発明は、電解液に対する濡れ性が高い導電性シートを提供することを目的とするものであり、また、電気二重層キャパシタ等のコンデンサに使用したときに内部抵抗を充分に抑制し得る導電性シートを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記技術課題を解決すべく、本発明者が鋭意検討を行ったところ、水銀圧入法で測定したときに、全細孔容積に対して孔径350nm以上の細孔の全容積の占める割合が45容量%以下である導電性シートにより、上記目的を達成し得ることを見出し、本知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、
(1)水銀圧入法で測定したときに、全細孔容積に対して孔径350nm以上の細孔の全容積の占める割合が45容量%以下であることを特徴とする導電性シート、
(2)電極活材料、導電性材料およびバインダーを含む上記(1)に記載の導電性シート、
(3)前記電極活材料を70〜90質量%、前記導電性材料を5〜15質量%、前記バインダーを5〜15質量%含む上記(2)に記載の導電性シート、
(4)前記電極活材料の体積基準積算粒度分布における積算粒度で50%の粒径が15μm以下である上記(3)に記載の導電性シート、
(5)前記電極活材料が、体積基準積算粒度分布において、積算粒度で10%の粒径が4.0μm未満、積算粒度で50%の粒径が4.0〜7.5μm、積算粒度で90%の粒径が7.5μm超であるとともに、積算粒度で10%の粒径/積算粒度で90%の粒径で表わされる比が0.18以上である上記(2)〜(4)のいずれかに記載の導電性シート、
(6)嵩密度が0.3〜1.0g/cmである上記(1)〜(5)のいずれかに記載の導電性シート、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、電解液に対する濡れ性が高い導電性シートを提供することができ、また、電気二重層キャパシタ等のコンデンサに使用したときに内部抵抗を充分に抑制し得る導電性シートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】接触角の測定方法を説明する図である。
【図2】導電性シートの製造方法の一例を説明するための図である。
【図3】導電性シートの製造方法の一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の導電性シートは、水銀圧入法で測定したときに、全細孔容積に対して孔径350nm以上の細孔の全容積の占める割合((孔径350nm以上の細孔の全容積/全細孔容積)×100)が45容量%以下であることを特徴とするものである。
【0015】
本発明の導電性シートは、水銀圧入法で測定したときの全細孔容積に対する孔径350nm以上の細孔の全容積の占める割合が35容量%以下であることが好ましく、25容量%以下であることがさらに好ましい。
また、本発明の導電性シートにおいて、水銀圧入法で測定したときの全細孔容積に対する孔径350nm以上の細孔の全容積の占める割合は、その下限が低いほどよいが、通常0.5容量%以上である。
【0016】
本発明の導電性シートにおいて、水銀圧入法で測定したときの全細孔容積に対する孔径350nm以上の細孔の全容積の占める割合は、水銀圧入法による測定値から算出される。
本出願書類において、導電性シートの細孔容積および細孔径は、JIS Z8831−2に規定される水銀圧入法により測定された値を意味する。
なお、水銀圧入法により測定される孔径の範囲が3.4〜400,000nmであることから、本出願書類において、孔径350nm以上の細孔の全容積とは、水銀圧入法により測定される孔径350〜400,0000nmの細孔の全容積を意味するものとし、導電性シートの全細孔容積とは、水銀圧入法により測定される孔径3.4〜400,000nmの細孔の総容積を意味するものとする。
本発明において、水銀圧入法により測定される孔径3.4〜400,000nmの範囲を外れる細孔は、本発明の効果に実質的に影響を及ぼさない。
【0017】
本発明の導電性シートは、水銀圧入法で測定したときの全細孔容積に対する孔径350nm未満の細孔の全容積の占める割合が45容量%超であると表すこともできる。本発明の導電性シートは、水銀圧入法で測定したときの全細孔に対する孔径350nm未満の細孔の占める割合が65容量%超であることが好ましく、75容量%超であることがより好ましい。
また、本発明の導電性シートにおいて、水銀圧入法で測定したときの全細孔容積に対する孔径350nm未満の細孔の全容積の占める割合は、その上限が高いほどよいが、通常99.5容量%未満である。
【0018】
本発明者等が鋭意検討したところ、驚くべきことに、水銀圧入法で測定したときの全細孔容積に対する孔径350nm以上の細孔の全容積の占める割合が45容量%超である導電性シートは、濡れ性が低いのに対し、上記割合を45容量%以下に制御した導電性シートは、濡れ性が高くなることを見出すとともに、上記濡れ性が高くなると電気二重層キャパシタ等のコンデンサに使用したときに内部抵抗を充分に抑制し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
全細孔容積に対する孔径350nm以上の細孔の占める割合が45容量%超である導電性シートは、径の大きな細孔の存在割合が高いことから濡れ性が低下し易いのに対し、上記割合を45容量%以下に制御した導電性シートは、径の小さな細孔の存在割合が高くなり、毛細管現象によって電解液が細孔内に染み込み易くなって濡れ性が向上するため、電気二重層キャパシタ等のコンデンサに使用したときに内部抵抗を充分に抑制し得ると考えられる。
【0019】
本発明の導電性シートは、電極活材料、導電性材料およびバインダーを含むものであることが好ましい。
【0020】
本発明の導電性シートにおいて、電極活材料としては、BET比表面積が500m/g以上であるものが好ましく、650m/g以上であるものがより好ましく、800m/g以上であるものがさらに好ましい。電極活材料のBET比表面積は高い程よいが、BET比表面積は、通常、3000m/g以下である。
なお、本出願書類において、電極活物質のBET比表面積は、JIS Z 8830に規定される方法に従い、日本ベル(株)製BELSORP−miniにより測定し、解析ソフトBEL MASTERを用いて得られる値を意味する。
【0021】
本発明の導電性シートにおいては、電極活物質の体積基準積算粒度分布における積算粒度で50%の粒径(D50)が15μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましく、7.5μm以下であることがさらに好ましく、6.5μm以下であることが一層好ましく、6μm以下であることがより一層好ましい。電極活物質のD50の下限値は特に制限されないが、0.5μm以上であることが好ましく、2.0μm以上であることがより好ましく、4.0μm以上であることがさらに好ましく、5.5μm以上であることが一層好ましい。
本発明の導電性シートにおいて、電極活物質のD50が15μm以下であることにより、導電性シートに形成される細孔径を所望範囲に制御して、濡れ性を容易に向上させることができる。
【0022】
なお、本出願書類において、電極活物質のD50は、レーザー回折式粒度分布測定装置((株)島津製作所製SALD−2100)を用いて測定した、体積基準積算粒度分布における積算粒度で50%の粒径を意味する。
【0023】
本発明の導電性シートにおいて、電極活物質の粒度分布は、体積基準積算粒度分布において、積算粒度で10%の粒径(D10)が4.0μm未満、積算粒度で50%の粒径(D50)が4.0〜7.5μm、積算粒度で90%の粒径(D90)が7.5μm超であるとともに、積算粒度で10%の粒径/積算粒度で90%の粒径(D10/D90)で表わされる比が0.18以上であることが好ましい。
【0024】
上記電極活物質の粒度分布において、D10は1.0μm以上4.0μm未満であることがより好ましく、2.0μm以上4.0μm未満であることがさらに好ましい。
また、上記電極活物質の粒度分布において、D50は5.0〜7.0μmであることがより好ましく、5.5〜6.5μmであることがさらに好ましい。
上記電極活物質の粒度分布において、D90は、7.5μm超15μm以下であることがより好ましく、7.5μm超12μm以下であることがさらに好ましい。
上記電極活物質の粒度分布において、D10/D90で表わされる比は0.20以上であることがより好ましく、0.24以上であることがさらに好ましい。
【0025】
本出願書類において、上記D10、D50、D90は、レーザー回折式粒度分布測定装置((株)島津製作所製SALD−2100)を用いて測定した、体積基準積算粒度分布における積算粒度でそれぞれ10%、50%、90%の粒径を意味する。
【0026】
本出願書類において、電極活物質の粒度分布がD10、D50、D90およびD10/D90が上記規定を満たすことにより、導電性シートに形成される細孔径を所望範囲に制御して、濡れ性を容易に向上させることができる。
【0027】
本発明の導電性シートにおいて、電極活物質としては、活性炭や黒鉛等から選ばれる一種以上を挙げることができ、活性炭としては、フェノール系、レーヨン系、アクリル系、ピッチ系またはヤシガラ系等を挙げることができる。
これ等の電極活物質のうち、上記BET比表面積や、D50や、粒度分布を有するものを適宜選択することが好ましい。
【0028】
本発明の導電性シートは、電極活物質を70〜90質量%含むものが好ましく、75〜90質量%含むものがより好ましく、77〜88質量%含むものがさらに好ましい。
本発明の導電性シートにおいて、電極活物質の含有割合が上記範囲にあることにより、導電性シートに形成される細孔径を所望範囲に制御して、濡れ性を容易に向上させることができる。
なお、本発明の導電性シートは、導電性シート作製時に使用した加工助剤を含む場合もあるが、上記電極活物質の含有割合は、加工助剤の含有量を除いて算出した値を意味する。
【0029】
本発明の導電性シートは、導電性材料を含む。
導電性材料としては、カーボンブラック、カーボンナノチューブ等を挙げることができる。
【0030】
本発明の導電性シートにおいて、導電性材料は、D50が0.01〜100nmであることが好ましく、0.1〜50nmであることがより好ましく、1〜50nmであることがさらに好ましい。
なお、本出願書類において、導電性材料のD50は、レーザー回折式粒度分布測定装置((株)島津製作所製SALD−2100)を用いて測定した、体積基準積算粒度分布における積算粒度で50%の粒径を意味する。
【0031】
本発明の導電性シートにおいて、導電性材料は、BET比表面積が200〜2000m/gであるものが好ましく、500〜1500m/gであるものがより好ましい。
なお、本出願書類において、導電性材料のBET比表面積は、JIS Z 8830に規定される方法に従い、日本ベル(株)製BELSORP−miniにより測定し、解析ソフトBEL MASTERを用いて得られる値を意味する。
【0032】
本発明の導電性シートは、導電性材料を5〜15質量%含むものが好ましく、7〜13質量%含むものがより好ましく、8〜12質量%含むものがさらに好ましい。
本発明の導電性シートにおいて、導電性材料の含有割合が上記範囲にあることにより、内部抵抗を抑制しつつ導電性シートに形成される細孔径を所望範囲に制御して、濡れ性を容易に向上させることができる。
なお、本発明の導電性シートは、導電性シート作製時に使用した加工助剤を含む場合もあるが、上記導電性材料の含有割合は、加工助剤の含有量を除いて算出した値を意味する。
【0033】
本発明の導電性シートは、バインダーを含む。
本発明の導電性シートにおいて、バインダーとしては有機バインダーを挙げることができ、具体的には、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)等を挙げることができる。
【0034】
本発明の導電性シートにおいて、PTFEには、テトラフルオロエチレンの単独重合体の他、テトラフルオロエチレンに対してテトラフルオロエチレン以外の単量体を0.5モル%以下加えて共重合させてなる共重合体も含まれるものとする。
テトラフルオロエチレン以外の単量体としては、ヘキサフルオロプロピレン、クロロトリフルオロエチレン、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)、トリフルオロエチレン、(パーフルオロアルキル)エチレン等から選ばれる一種以上が例示される。
【0035】
PTFEは、低分子量であると液状又はゲル状となり繊維化しにくいため、標準比重から計算される分子量が1×10以上の重合体を50質量%以上含んでいることが好ましい。また、PTFEは、乳化重合により得られるものが繊維化し易いため好ましい。
【0036】
本発明の導電性シートは、バインダーを5〜15質量%含むものが好ましく、6〜13質量%含むものがより好ましく、7〜11質量%含むものがさらに好ましい。
本発明の導電性シートにおいて、バインダーの含有割合が上記範囲にあることにより、所望強度を有する導電性シートを容易に得ることができる。
なお、本発明の導電性シートは、導電性シート作製時に使用した加工助剤を含む場合もあるが、上記バインダーの含有割合は、加工助剤の含有量を除いて算出した値を意味する。
【0037】
本発明の導電性シートは、嵩密度が、0.3〜1.0g/cmであることが好ましく、0.4〜0.8g/cmであることがより好ましく、0.5〜0.7g/cmであることがさらに好ましく、0.6〜0.64g/cmであることが特に好ましい。
導電性シートの嵩密度は、導電性シート形成時におけるシート形成材料の押圧力等を調整することにより制御することができる。
本発明の導電性シートの嵩密度が上記範囲内にあることにより、導電性シートに形成される細孔径を所望範囲に制御して、濡れ性を容易に向上させることができる。
なお、本出願書類において、嵩密度(g/cm)は、導電性シートを直径2.5cmのパンチで打ち抜いて得た測定試料において、さらにTECLOCK社製厚み計(マイクロゲージ)PF−02で厚みを測定して体積(cm)を求めるとともに、電子天秤で質量(g)を測定することにより算出することができる。
【0038】
本発明の導電性シートは、接触角が100〜160°であることが好ましく、125〜160°であることがより好ましい。
本発明の導電性シートは濡れ性に優れるものであることから、上記接触角を有するものを容易に提供することができる。
なお、本出願書類において、接触角α(°)は、図1に示すように、導電性シートSに対し、プロピレンカーボネート中に分散した1.5mol/lのスピロ型第四級アンモニウム塩の溶液を、マイクロシリンジにより2μl滴下し30秒間保持して得られた液滴Lにおいて、分度器により角度θ(°)を目視測定した上で、式α=180°−2θにより算出した値を意味する。
【0039】
本発明の導電性シートは、気孔率が30〜50%であるものが好ましい。
【0040】
なお、本出願書類において、気孔率(%)は、(1−見かけ密度/真密度)×100により測定された値を意味する。
【0041】
本発明の導電性シートは、厚さが25〜400μmであることが好ましく、50〜300μmであることがより好ましい。
導電性シートの厚さが400μm以下であることにより、電気二重層キャパシタ等を作製した際に容量密度を高めることができ、25μm以上であることにより、導電性シートをセパレータを介して積層したり巻回して電気二重層キャパシタを作製する際に、十分な強度を付与することができる。
【0042】
なお、本出願書類において、導電性シートの厚さは、TECLOCK社製厚み計(マイクロゲージ)PF−02により測定された値を意味する。
【0043】
本発明の導電性シートは、少なくとも1方向の引張強さが0.3MPa以上であり、特に0.5MPa以上であることが好ましい。本発明の導電性シートを以下に記述する製造方法により作製した場合、上記1方向の引張強さは、導電性シート作製時における、成形用混合物を押圧または圧延等して成形物を作製する際の成形方向の引張強さに相当する。
【0044】
なお、本出願書類において、導電性シートの引張強さは、導電性シートを250℃で1時間乾燥した後、JIS K 6301に規定される1号形のダンベル状試験片の形状に打ち抜き、雰囲気温度25±2℃にて引張速度20mm/minで引張試験を行ったときの最大荷重を断面積(導電性シートの厚さ×平行部の幅)で割った値をいう。
【0045】
本発明の導電性シートとして、具体的には、電気二重層キャパシタ用電極シート等を挙げることができる。
【0046】
本発明によれば、電解液に対する濡れ性が高い導電性シートを提供することができ、また、電気二重層キャパシタ等のコンデンサに使用したときに内部抵抗を充分に抑制し得る導電性シートを提供することができる。
【0047】
次に、本発明の導電性シートを製造する方法について説明する。
本発明の導電性シートは、電極活材料、導電性材料、バインダーおよび必要に応じて加工助剤を混合してなる成形用混合物を成形し、得られた成形物を圧延ロールで圧延し、さらに所望により延伸して、シート状に成形することにより製造することができる。
【0048】
電極活材料、導電性材料およびバインダーの具体例は上述したとおりである。
【0049】
また、加工助剤の具体例としては、エタノール、メタノール、2−プロパノール、灯油、ソルベントナフサ、ホワイトナフサ、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、PTFE水性ディスパージョン等から選ばれる一種以上を挙げることができる。
本発明の導電性シートが加工助剤を含むことにより、導電性シートの作製時において、PTFE等のバインダーを適度に繊維化し、塑性変形することができるとともに、同バインダーを容易に湿潤化することができる。
【0050】
上記製造方法において、上記混合物は、該混合物中における電極活材料、導電性材料およびバインダーの合計量を100質量%とした場合に、電極活物質を、70〜90質量%含むものが好ましく、75〜90質量%含むものがより好ましく、77〜88質量%含むものがさらに好ましい。
【0051】
上記製造方法において、上記成形用混合物は、該混合物中における電極活材料、導電性材料およびバインダーの合計量を100質量%とした場合に、導電性材料を、5〜15質量%含むものが好ましく、7〜13質量%含むものがより好ましく、8〜12質量%含むものがさらに好ましい。
【0052】
上記製造方法において、上記成形用混合物は、該混合物中における電極活材料、導電性材料およびバインダーの合計量を100質量%とした場合に、バインダーを、5〜15質量%含むものが好ましく、6〜13質量%含むものがより好ましく、7〜11質量%含むものがさらに好ましい。
【0053】
加工助剤は、電極活材料および導電性材料の合計量を100質量部とした場合に、20〜200質量部加えることが好ましく、30〜80質量部加えることがさらに好ましい。
加工助剤の混合量が上記範囲内にあることにより、混合物に好適な流動性を付与することができる。
【0054】
上記製造方法において、加工助剤は、電極活材料、導電性材料およびバインダーを混合した後に混合して成形用混合物としてもよいし、電極活材料、導電性材料およびバインダーとともに混合して混合物としてもよい。
【0055】
<成形工程>
上記製造方法において、上記混合物の成形方法は特に制限されず、例えば、圧縮成形法や、ラム押出法、ペースト押出法、スクリュー押出法といった押出成形法や、圧延(カレンダリング)成形法が挙げられるが、生産効率の観点から、長尺ものが連続的に製造できる押出成形法や圧延(カレンダリング)成形法が好ましい。
【0056】
上記押出成形法において、電極活材料、導電性材料、バインダーおよび必要に応じて加工助剤を混合してなる成形用混合物は、所望により予め予備成形した上で、押出成形機に供給して押出成形し、ロッド状、シート状、チューブ状等の形状を有する押出成形物とする。
【0057】
上記押出成形法に用いられる押出成形機は、一軸押出成形機であることが好ましく、一軸押出成形機としては、スクリュー押出成形機やペースト押出成形機を挙げることができ、スクリュー押出成形機であることが好ましい。
【0058】
図2に示すように、スクリュー押出成形機1は、バレル(シリンダー)2内に配置したスクリュー3により、成形用混合物を押出成形し得るものである。
上記押出成形機としてスクリュー押出成形機1を用いる場合、上記バレル2内に収容されるスクリュー3は、スクリューの長さL(mm)/スクリューの断面直径D(mm)で表わされる比L(mm)/D(mm)が12以上であるものが好ましく、18以上であるものがより好ましい。
上記L(mm)/D(mm)で表わされる比の上限は特に制限されないが、例えば24以下であればよい。
【0059】
図2に示すように、スクリュー押出成形機1としては、上記バレル2の押出側端部において、押出方向Aに対する垂直断面直径が漸次増加する円錐状拡大部21を有する円筒状ノズル22が接続され、該円錐状拡大部21を有する円筒状ノズル22の内壁に一定間隔で相対するように配置された雄型4により、上記成形用混合物を放射状に(円錐状に)拡大した後、円筒状に押し出して円筒状環状物を作製し得るものが好ましい。
上記円筒状ノズル22の出口(押出成形物の出口)において、円筒状ノズル22の内径と雄型4の外径により、押出成形物の厚さが規定される。
【0060】
円筒状ノズル22から押し出された押出成形物(円筒状環状物)は、適宜カッター等で切り開くことによりシート状押出成形物とすることができる。
上記シート状押出成形物の厚さは、2〜6mmであることが好ましい。
【0061】
また、上記押出成形機がペースト押出成形機である場合、ペースト押出成形を行う際の押出絞り比(押出成形機において、予備成形体を装入するシリンダ金型の断面積を、成形物を押出すノズルの断面積で割った値)は、5〜500が好ましく、10〜100がより好ましく、20〜60がさらに好ましい。押出絞り比が5未満では押出物が柔らか過ぎて形状を保持し難く、500超では押出しが困難となり、得られた押出成形物が脆くなり易い。
【0062】
上記押出成形加工は、適宜加熱しつつ行うことが好ましく、押出成形時における加工温度は、50〜150℃であることが好ましい。
【0063】
上記製造方法においては、押出成形を終了させた後、押出成形物がノズルに残っている状態で、上記混合物の予備成形体を間欠的に順次押出成形用のシリンダー金型に供給し、連続的に押出成形を行うことにより、長尺状の押出成形物を得ることもできる。長尺状の押出成形物を用いて引き続く圧延処理を行った場合には、長尺状の導電性シートを得ることができる。
【0064】
また、上記成形用混合物を圧延(カレンダリング)成形法により成形する場合、上記電極活材料、導電性材料、バインダーおよび必要に応じて加工助剤を混合してなる成形用混合物は、所望により予備成形した上で、圧延ロールに供給して圧延(カレンダリング)成形し、シート状圧延成形物とする。
【0065】
例えば、図3(a)に斜視図で示すように、予備成形した成形用混合物5を、圧延ロール6、6間に導入し、圧延処理することにより、図3(b)に断面図で示すように、所望厚さのシート状圧延成形物7を得ることができる。
【0066】
上記圧延(カレンダリング)成形は、所望厚みに達するまで一回のみ行ってもよいし複数回行ってもよい。
圧延(カレンダリング)成形を複数回行う場合、圧延方向(カレンダリング成形方向)は、全て同一方向(一軸方向)であることが好ましい。
上記圧延(カレンダリング)成形により得られるシート状圧延成形物の厚さは、2〜6mmであることが好ましい。
【0067】
上記圧延(カレンダリング)成形は、適宜加熱しつつ行うことが好ましく、成形温度は、20〜350℃であることが好ましく、60〜120℃であることがより好ましい。
【0068】
<ロール圧延工程>
上記押出成形法または圧延(カレンダリング)成形法等の成形法によって成形された成形物は、次いで圧延ロールで圧延(以下、ロール圧延という)する。
ロール圧延方向は、上記成形物形成時における成形方向(一軸方向)であることが好ましい。
ロール圧延時における圧延ロールの温度は20〜350℃であることが好ましく、60〜120℃であることがより好ましい。圧延ロールの温度が20℃未満ではバインダーが充分に繊維化されず脆いシートとなり易く、圧延ロールの温度が350℃超では加工助剤の蒸発が激しいため、シート表面にヒビ割れや剥離等を生じやすい。
上記ロール圧延により、押出成形法または圧延(カレンダリング)成形法等の成形法によって成形された成形物を0.2〜0.5mmの厚みになるまで圧延することが好ましく、0.25〜0.5mmの厚みになるまで圧延することがより好ましく、0.25〜0.4mmの厚みになるまで圧延することがさらに好ましい。また、上述した厚みにかかわらず、上記ロール圧延により、押出成形法または圧延(カレンダリング)成形法等によって成形された成形物を、もとの厚さを100%として、圧縮率3.3〜25%になるまで圧延してもよい。
ロール圧延処理は1回のみ行ってもよいし、複数回行ってもよい。
【0069】
成形用混合物の成形を圧延(カレンダリング)成形法により行う場合、
ロール間隙の異なる複数の圧延ロール間に順次導入することにより、圧延(カレンダリング)成形とロール圧延処理を連続して行ってもよい。
【0070】
<乾燥工程>
ロール圧延して得られた圧延シートは、乾燥により加工助剤を除去することが好ましい。上記乾燥はロール圧延後に行ってもよいし、また、上記ロール圧延の際に同時に乾燥して加工助剤の一部又は全部を除去してもよい。
乾燥温度は加工助剤の沸点以上で、バインダーの融点以下の温度が好ましく、例えば100〜300℃で0.5分間〜8時間乾燥処理することが好ましい。
乾燥処理は、上記圧延シートに張力を加えながら行うことが好ましく、上記張力を加えることにより、圧延シートを平坦化することができる。
【0071】
<延伸工程>
上記加工助剤の一部または全部を除去した乾燥処理物には、必要に応じてさらに延伸処理が施される。延伸処理は、圧延ロールにより圧延することにより行うことが好ましい。
延伸処理を行う場合、延伸倍率は1.15〜1.4倍が好ましい。また、延伸後のシート状物の厚みが、25〜400μmになるように行うことが好ましく、50〜300μmになるように行うことがより好ましい。また、上述した厚みにかかわらず、延伸前のシート状物を100%として、圧縮率10〜60%になるまで延伸処理を行ってもよい。
延伸処理は一軸方向(上述した成形用混合物の成形方向)に行うことが好ましく、延伸処理は1回のみ行ってもよいし、複数回行ってもよい。
また、延伸処理は上記圧延シートの乾燥工程前に行ってもよい。
延伸処理することによりバインダーの繊維化が促進され、高強度、低抵抗の薄膜シートを得ることができる。延伸処理する際の温度は35〜140℃が好ましく、60〜120℃がより好ましい。
【0072】
上記製造方法により得られるシート状物(導電性シート)は、そのまま電極シートとして使用してもよいし、必要に応じてさらに焼成処理してもよい。焼成処理は、バインダーの融点以上の温度における完全焼成であってもよいし、バインダーの融点未満の温度における不完全焼成であってもよい。
【0073】
上記製造方法によれば、成形工程でバインダーが成形方向に繊維状に伸び、さらにロール圧延工程で圧延されることにより網目構造となる。そして、電極活材料および導電性材料はバインダーの網目構造により保持されているため、形状保持性に優れた導電性シートを得ることができる。
【0074】
また、上記製造方法によれば、ロール圧延工程で成形物をロール圧延することによってバインダーの繊維化が促進されるため、バインダーが少量である場合でも、得られる導電性シートを薄膜化したときに亀裂や破壊を生じることなく、優れた形状保持性や強度を発揮する。
【0075】
また、バインダーが繊維化して三次元的網目構造を形成するため、得られる導電性シートにおいて、バインダーが配合されることによる抵抗の増大を抑制することができる。
さらに、延伸工程でシート状物を延伸処理することにより、バインダーの繊維化が促進され三次元的網目構造の形成も促進されるため、抵抗を一層低減することができる。
加えて、導電性材料としてカーボンブラックを用い、成形法として、押出法や圧延(カレンダリング)成形法を採用する場合には、成形工程、ロール圧延工程の両工程においてカーボンブラックが強く加圧されるので、少量のカーボンブラックでも電気的に接続して得られる導電性シートの抵抗を低減することができる。
【0076】
本発明の導電性シートは、電気二重層キャパシタの電極シートとして好適に使用することができる。本発明の導電性シートを用いて作製された電気二重層キャパシタは、内部抵抗を充分に抑制して高い放電容量を得ることができる。
【実施例】
【0077】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明は以下の例により何ら限定されるものではない。
【0078】
(実施例1)
電極活材料として、体積基準積算粒度分布において、積算粒度で10%の粒径(D10)が2.5μm、積算粒度で50%の粒径(D50)が5.6μm、積算粒度で90%の粒径(D90)が9.8μm、D10/D90が0.26であり、BET比表面積が1500〜1600m/gである粉末状の活性炭1を80質量%、導電性材料として、D50が10μmでBET比表面積が1300m/gであるカーボンブラック粉末を10質量%、PTFE粉末を10質量%混合して原料混合物を得た。上記原料混合物中の活性炭粉末およびカーボンブラック粉末の合計量を100質量部とした場合に、さらに加工助剤としてプロピレングリコールを180質量部加えて成形用混合物を得た。
【0079】
<成形工程>
(i)上記成形用混合物を厚さ20〜30mmの板状に加工したものを作製した後、図3に示すような圧延ローラー6、6を備えた圧延装置を用いて、ローラー間隙を所定幅に調整し、90℃の温度条件下で圧延して、厚さ6mmの圧延物を作製した。
(ii)次いで、ローラー間隙を所定幅に調整した圧延ローラー6、6間に、上記(i)で得た圧延物を導入し、90℃の温度条件下、上記(i)と同一方向に(一軸方向に)圧延して、厚さ3mmの圧延物を作製した。
(iii)上記(ii)で得た圧延物を2つ折りにした後(厚さ3mmの圧延物を2つ折りにして厚さ6mmの折曲げ物とした後)、90℃の温度条件下、上記(i)と同一方向に(一軸方向に)圧延した。
(iv)上記(iii)の操作を5回以上繰り返すことによってPTFE粉末の繊維化を促進し、厚さ3mmの圧延物を作製した。
(v)上記(iv)で得た圧延物をもう一つ作製し、圧延方向が同一になるように重ね合わせた状態で(厚さ3mmの圧延物を圧延方向が同一になるように2つ重ねて厚さ6mmの積層物とした状態で)、ローラー間隙を所定幅に調整した圧延ローラー6、6間に導入し、上記(i)と同一方向に(一軸方向に)圧延して、厚さ3mmの圧延物を作製し、シート状圧延成形物とした。
【0080】
<ロール圧延工程>
(vi)ローラー間隙を所定幅に調整した圧延ローラー6、6間に、上記(v)で得たシート状押圧成形物を導入し、90℃の温度条件下、上記(i)と同一方向に(一軸方向に)複数回圧延して、厚さ2mmの圧延物を作製した。
(vii)ローラー間隙を所定幅に調整した圧延ローラー6、6間に、上記(vi)で得た圧延物を導入し、90℃の温度条件下、上記(i)と同一方向に(一軸方向に)複数回圧延して、厚さ1mmの圧延物を作製した。
(viii)ローラー間隙を所定幅に調整した圧延ローラー6、6間に、上記(vi)で得た圧延物を導入し、90℃の温度条件下、上記(i)と同一方向に(一軸方向に)複数回圧延して、厚さ0.3mm(300μm)の圧延物を作製し、圧延シートとした。
【0081】
<乾燥工程>
(ix)次いで、上記(viii)で得た圧延シートに張力を与えて平坦化を行いながら、200℃で8時間乾燥して加工助剤であるプロピレングリコールを除去した。
【0082】
<延伸工程>
(x)上記(ix)で得たプロピレングリコールを除去したシート状物を、圧延ロール温度が90℃で厚さが200μmになるまで上記(i)と同一方向に(一軸方向に)2回圧延することにより、目的とする電気二重層キャパシタ用電極シートを得た。
【0083】
得られた電極シートは、水銀圧入法で測定したときに、全細孔容積に対して孔径350nm以上の細孔の全容積の占める割合((孔径350nm以上の細孔の全容積/全細孔容積)×100)が17.8%、水銀圧入法で測定したときの細孔径分布のピーク値が287nm、嵩密度が0.66g/cm、気孔率が42.0%、厚さが200μmであり、接触角が127°であるものであった。
【0084】
次いで、上記電極シートを用いて電気二重層キャパシタを作製した。
リード端子を有し幅4cm、高さ4cmの矩形で、厚さ50μmの純アルミニウム箔の片面に、上記電極シートを面積4cm×4cmに切り抜いたシート状物を導電性接着剤を介して接合し、加熱して接着剤を熱硬化させて電極体とした。
上記電極体を2枚作製し、2枚の電極体の電極面を対向させ、厚さ70μmのセルロース繊維製セパレータを挟んで厚さ2mm、幅5cm、高さ5cmの2枚のガラス製挟持板で挟持し、素子とした。2枚の電極体とセパレータとの合計の厚さは0.53mmであった。
【0085】
電解液としてはプロピレンカーボネートに1.5mol/lになるようにスピロ型第4級アンモニウム塩(5−アゾニアスピロ[4.4]ノナンテトラフルホロボラート)を溶解した溶液を用いた。上記素子を200℃で3時間真空加熱することにより素子の不純分を除去し、電解液を真空含浸させた後、ラミネートフィルムで包み、電気二重層キャパシタを作製した。
電流密度20mA/cmで直流抵抗と容量を測定し、単位体積あたりの静電容量(容量密度)と、単位体積あたりの内部抵抗を測定した。結果を表1に示す。
【0086】
(実施例2)
実施例1において、<成形工程>で得られたシート状圧延成形物を、
<ロール圧延工程>において厚さ300μmになるまで一軸方向に圧延する代わりに、厚さ275μmになるまで一軸方向に圧延して圧延シートを得た以外は、実施例1と同様にして目的とする厚さ200μmの電気二重層キャパシタ用電極シートを得た。
得られた電極シートにおける、水銀圧入法で測定したときの全細孔容積に対する孔径350nm以上の細孔の全容積の占める割合、細孔径分布のピーク値と、嵩密度、気孔率、厚さ、接触角を表1に示す。
【0087】
(実施例3)
実施例1において、<成形工程>で得られたシート状圧延成形物を、
<ロール圧延工程>において厚さ300μmになるまで一軸方向に圧延する代わりに、厚さ250μmになるまで一軸方向に圧延して圧延シートを得た以外は、実施例1と同様にして目的とする厚さ200μmの電気二重層キャパシタ用電極シートを得た。
得られた電極シートにおける、水銀圧入法で測定したときの全細孔容積に対する孔径350nm以上の細孔の全容積の占める割合、細孔径分布のピーク値と、嵩密度、気孔率、厚さ、接触角を表1に示す。
【0088】
(実施例4)
実施例1において、<乾燥工程>で得られたプロピレングリコールを除去したシート状物を、<延伸工程>において圧延ロール温度90℃で厚さが200μmになるまで一軸方向に2回圧延(延伸)することなく、そのまま厚さ300μmの電気二重層キャパシタ用電極シートとした以外は、実施例1と同様にして目的とする電気二重層キャパシタ用電極シートを得た。
得られた電極シートにおける、水銀圧入法で測定したときの全細孔容積に対する孔径350nm以上の細孔の全容積の占める割合、細孔径分布のピーク値と、嵩密度、気孔率、厚さ、接触角を表1に示す。
【0089】
(実施例5)
実施例1において、活性炭1の混合割合を80質量%から82質量%に変更するとともに、PTFEの混合割合を10質量%から8質量%に変更して原料混合物を作製した以外は、実施例1と同様にして目的とする厚さ200μmの電気二重層キャパシタ用電極シートを得た。
得られた電極シートにおける、水銀圧入り法で測定したときの全細孔容積に対する孔径350nm以上の細孔の全容積の占める割合、細孔径分布のピーク値と、嵩密度、厚さ、接触角を表1に示す。
【0090】
(実施例6)
実施例1において、活性炭1の混合割合を80質量%から75質量%に変更するとともに、PTFEの混合割合を10質量%から15質量%に変更して原料混合物を作製した以外は、実施例1と同様にして目的とする厚さ200μmの電気二重層キャパシタ用電極シートを得た。
得られた電極シートにおける、水銀圧入り法で測定したときの全細孔容積に対する孔径350nm以上の細孔の全容積の占める割合、細孔径分布のピーク値と、嵩密度、厚さ、接触角を表1に示す。
【0091】
【表1】

【0092】
(実施例7)
実施例1において、電極活材料として、活性炭1に代えて体積基準積算粒度分布において、積算粒度で10%の粒径(D10)が2.2μm、積算粒度で50%の粒径(D50)が5.6μm、積算粒度で90%の粒径(D90)が9.8μm、D10/D90が0.22であり、BET比表面積が1500〜1600m/gである粉末状の活性炭2を用いた以外は、実施例1と同様にして目的とする厚さ200μmの電気二重層キャパシタ用電極シートを得た。
得られた電極シートにおける、水銀圧入り法で測定したときの全細孔容積に対する孔径350nm以上の細孔の全容積の占める割合、細孔径分布のピーク値と、嵩密度、厚さ、接触角を表2に示す。
【0093】
(実施例8)
実施例1において、電極活材料として、活性炭1に代えて、体積基準積算粒度分布において、積算粒度で10%の粒径(D10)が0.6μm、積算粒度で50%の粒径(D50)が1.5μm、積算粒度で90%の粒径(D90)が3.4μm、D10/D90が0.18であり、BET比表面積が1500〜1600m/gである粉末状の活性炭3を用いた以外は、実施例1と同様にして目的とする厚さ200μmの電気二重層キャパシタ用電極シートを得た。
得られた電極シートにおける、水銀圧入り法で測定したときの全細孔容積に対する孔径350nm以上の細孔の全容積の占める割合、細孔径分布のピーク値と、嵩密度、厚さ、接触角を表2に示す。
【0094】
(実施例9)
実施例1において、電極活材料として、活性炭1に代えて、体積基準積算粒度分布において、積算粒度で10%の粒径(D10)が3.3μm、積算粒度で50%の粒径(D50)が7.0μm、積算粒度で90%の粒径(D90)が12.0μm、D10/D90が0.28であり、BET比表面積が2200〜2400m/gである粉末状の活性炭4を用いた以外は、実施例1と同様にして目的とする厚さ200μmの電気二重層キャパシタ用電極シートを得た。
得られた電極シートにおける、水銀圧入り法で測定したときの全細孔容積に対する孔径350nm以上の細孔の全容積の占める割合、細孔径分布のピーク値と、嵩密度、気孔率、厚さ、接触角を表3に示す。
また、得られた電極シートを用いて実施例1と同様にして電気二重層キャパシタを作製した。得られた電気二重層キャパシタの単位体積あたりの静電容量(容量密度)と、単位体積あたりの内部抵抗を実施例1と同様に測定した。結果を表2に示す。
【0095】
(実施例10)
実施例1において、電極活材料として、体積基準積算粒度分布において、積算粒度で10%の粒径(D10)が4.0μm、積算粒度で50%の粒径(D50)が12.1μm、積算粒度で90%の粒径(D90)が23.2μm、D10/D90が0.17であり、BET比表面積が1500〜1600m/gである粉末状の活性炭5を用いた以外は、実施例1と同様にして目的とする厚さ200μmの電気二重層キャパシタ用電極シートを得た。
得られた電極シートにおける、水銀圧入り法で測定したときの全細孔容積に対する孔径350nm以上の細孔の全容積の占める割合、細孔径分布のピーク値と、嵩密度、気孔率、厚さ、接触角を表2に示す。
【0096】
(実施例11)
実施例10において、<成形工程>で得られたシート状圧延成形物を、<ロール圧延工程>において厚さ300μmになるまで一軸方向に圧延する代わりに、厚さ275μmになるまで一軸方向に圧延して圧延シートを得た以外は、実施例10と同様にして目的とする厚さ200μmの電気二重層キャパシタ用電極シートを得た。
得られた電極シートにおける、水銀圧入り法で測定したときの全細孔容積に対する孔径350nm以上の細孔の全容積の占める割合、細孔径分布のピーク値と、嵩密度、厚さ、接触角を表2に示す。
【0097】
(実施例12)
実施例10において、<成形工程>で得られたシート状圧延成形物を、<ロール圧延工程>において厚さ300μmになるまで一軸方向に圧延する代わりに、厚さ250μmになるまで一軸方向に圧延して圧延シートを得た以外は、実施例10と同様にして目的とする厚さ200μmの電気二重層キャパシタ用電極シートを得た。
得られた電極シートにおける、水銀圧入り法で測定したときの全細孔容積に対する孔径350nm以上の細孔の全容積の占める割合、細孔径分布のピーク値と、嵩密度、厚さ、接触角を表2に示す。
【0098】
【表2】

【0099】
(実施例13)
実施例1において、電極活材料として、活性炭1に代えて、体積基準積算粒度分布において、積算粒度で10%の粒径(D10)が6.4μm、積算粒度で50%の粒径(D50)が28.6μm、積算粒度で90%の粒径(D90)が71.8μm、D10/D90が0.089であり、BET比表面積が1500〜1600m/gである粉末状の活性炭6を用いた以外は、実施例1と同様にして目的とする厚さ200μmの電気二重層キャパシタ用電極シートを得た。
得られた電極シートにおける、水銀圧入り法で測定したときの全細孔容積に対する孔径350nm以上の細孔の全容積の占める割合、細孔径分布のピーク値と、嵩密度、気孔率、厚さ、接触角を表3に示す。
【0100】
(実施例14)
実施例13において、<成形工程>で得られたシート状圧延成形物を、<ロール圧延工程>において厚さ300μmになるまで一軸方向に圧延する代わりに、厚さ275μmになるまで一軸方向に圧延して圧延シートを得た以外は、実施例13と同様にして目的とする厚さ200μmの電気二重層キャパシタ用電極シートを得た。
得られた電極シートにおける、水銀圧入り法で測定したときの全細孔容積に対する孔径350nm以上の細孔の全容積の占める割合、細孔径分布のピーク値と、嵩密度、厚さ、接触角を表3に示す。
【0101】
(実施例15)
実施例13において、<成形工程>で得られたシート状圧延成形物を、<ロール圧延工程>において厚さ300μmになるまで一軸方向に圧延する代わりに、厚さ250μmになるまで一軸方向に圧延して圧延シートを得た以外は、実施例13と同様にして目的とする厚さ200μmの電気二重層キャパシタ用電極シートを得た。
得られた電極シートにおける、水銀圧入り法で測定したときの全細孔容積に対する孔径350nm以上の細孔の全容積の占める割合、細孔径分布のピーク値と、嵩密度、厚さ、接触角を表3に示す。
【0102】
【表3】

【0103】
表1〜表3より、実施例1〜実施例15においては、得られる導電性シートが、水銀圧入法で測定したときに、全細孔に対して孔径350nm以上の細孔の占める割合が45容量%以下であることにより、電解液に対する濡れ性が高く、電気二重層キャパシタ等のコンデンサに使用したときに、内部抵抗を充分に抑制し高い放電容量を示す導電性シートを得られることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明によれば、電解液に対する濡れ性が高い電極シートを提供することができ、また、電気二重層キャパシタ等のコンデンサに使用したときに内部抵抗を充分に抑制し得る導電性シートを提供することができる。
【符号の説明】
【0105】
α 接触角
S 導電性シート
L 液滴
θ 測定角度
A 押出方向
1 スクリュー押出成形機
2 バレル
21 円錐状拡大部
22 円筒状ノズル
3 スクリュー
4 雄型
5 成形用混合物
6 圧延ロール
7 シート状圧延成形物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水銀圧入法で測定したときに、全細孔容積に対して孔径350nm以上の細孔の全容積の占める割合が45容量%以下であることを特徴とする導電性シート。
【請求項2】
電極活材料、導電性材料およびバインダーを含む請求項1に記載の導電性シート。
【請求項3】
前記電極活材料を70〜90質量%、前記導電性材料を5〜15質量%、前記バインダーを5〜15質量%含む請求項2に記載の導電性シート。
【請求項4】
前記電極活材料の体積基準積算粒度分布における積算粒度で50%の粒径が15μm以下である請求項3に記載の導電性シート。
【請求項5】
前記電極活材料が、体積基準積算粒度分布において、積算粒度で10%の粒径が4.0μm未満、積算粒度で50%の粒径が4.0〜7.5μm、積算粒度で90%の粒径が7.5μm超であるとともに、積算粒度で10%の粒径/積算粒度で90%の粒径で表わされる比が0.18以上である請求項2〜請求項4のいずれかに記載の導電性シート。
【請求項6】
嵩密度が0.3〜1.0g/cmである請求項1〜請求項5のいずれかに記載の導電性シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−30694(P2013−30694A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−167300(P2011−167300)
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【特許番号】特許第5039843号(P5039843)
【特許公報発行日】平成24年10月3日(2012.10.3)
【出願人】(000110804)ニチアス株式会社 (432)
【Fターム(参考)】