説明

電気二重層キャパシタ

【課題】耐過充電特性に優れた電気二重層キャパシタを提供すること。
【解決手段】本発明の電気二重層キャパシタ11は、容器17内に正極21、負極22、セパレータ23及び非水電解液を収容した構造を備える。正極21及び負極22のうちの少なくとも一方が、活性炭と炭素導電剤とを含む混合物からなる。非水電解液が、有機溶媒としてのプロピレンカーボネートと、プロピレンカーボネートよりも体積比で少量の第4級アンモニウム塩とを含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気二重層キャパシタに係り、特には容器内に正極、負極、セパレータ及び非水電解液を収容した電気二重層キャパシタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、各種の電気化学デバイスが実用化されている。なかでもコイン型の電気二重層キャパシタ(EDLC)は、比較的エネルギー密度が高く、小型かつ軽量であるという特徴を備えていることから、小型の電気機器のバックアップ用電源として広く採用されている。そして、このようなコイン型の電気二重層キャパシタは、例えばプリント配線板上にリフローはんだ付けにより表面実装した状態で使用される(例えば、特許文献1,2を参照)。
【0003】
一般的にコイン型の電気二重層キャパシタは、容器内にセパレータを介して正極及び負極を配置するとともに、これらを非水電解液とともに収容して密封封止した構造を備えている。そしてこのようなコイン型の電気二重層キャパシタは、非水系の電解液として有機溶媒系の電解液をよく用いているが、近年では有機溶媒とイオン液体との混合物である非水電解液を用いることも提案されている。具体的には、イオン液体の一種である第4級アンモニウム塩と有機溶媒とを混合したものを非水電解液として使用した例などがある(例えば、特許文献3を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−64435号公報
【特許文献2】特開2007−207942号公報
【特許文献3】特開2007−112811号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記従来のコイン型の電気二重層キャパシタにおいて有機溶媒とイオン液体との混合物である非水電解液を使用し、例えば3Vを超える電圧差で充放電を連続して行った場合、非水電解液中の有機溶媒が分解し、キャパシタ内にガスが発生しやすくなる。よって、容器が膨れて外観が悪化するばかりでなく、放電容量の急激な低下等といった品質劣化を来してしまう。これに加え、有機溶媒とイオン液体との組み合わせ如何によっては、これらの混合物の粘度が高くなる等の不具合が生じ、そもそも非水電解液としての使用に適さないものとなることが多い。このように、従来においては耐過充電特性に関して問題があり、改善の余地が少なからずあった。
【0006】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、耐過充電特性に優れた電気二重層キャパシタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本願発明者らは、有機溶媒とイオン液体の一種である第4級アンモニウム塩とを含む非水電解液を使用するという前提でその適正条件を見出すべく鋭意研究を行った。その結果、特定の有機溶媒(PC:プロピレンカーボネート)と第4級アンモニウム塩とを組み合わせるとともに、第4級アンモニウム塩をPCよりも体積比で少量用いれば、意外にも過充電時におけるPCの分解が効果的に抑制されることを新規に知見した。そして、本発明者らはこの知見に基づき下記の課題解決手段[1]〜[4]を想到することができたのである。以下にそれらを列挙する。
【0008】
[1]容器内に正極、負極、セパレータ及び非水電解液を収容した電気二重層キャパシタにおいて、前記正極及び前記負極のうちの少なくとも一方が活性炭と炭素導電剤とを含む混合物からなり、前記非水電解液が、有機溶媒としてのプロピレンカーボネートと、前記プロピレンカーボネートよりも体積比で少量の第4級アンモニウム塩とを含むことを特徴とする電気二重層キャパシタ。
【0009】
従って、手段1に記載の発明によると、過充電時においても上述したようにPCの分解が効果的に抑制されるので、キャパシタ内のガス発生が抑制される。よって、容器の膨れが防止されるとともに、放電容量の急激な低下等も防止されるため、耐過充電特性を向上することができる。また、PCと当該PCよりも体積比で少量の第4級アンモニウム塩とを含む非水電解液は、粘度がそれほど高くならないため、非水電解液としての使用に好適な性状を有するものとすることができる。また、正極及び負極のうちの少なくとも一方が活性炭と炭素導電剤とを含む混合物からなるものとしており、これらが上記組成の非水電解液の下で機能することも、耐過充電特性の向上を図るうえで貢献していると考えられる。
【0010】
[2]前記非水電解液が、前記プロピレンカーボネート及び前記第4級アンモニウム塩を70:30〜90:10の体積比で含むことを特徴とする上記手段1に記載の電気二重層キャパシタ。
【0011】
従って、手段2に記載の発明によると、PC及び第4級アンモニウム塩の体積比を上記範囲内にて設定することにより、非水電解液としての好適な性状を保持しつつ耐過充電特性を確実に向上することができる。PCが70体積%未満(第4級アンモニウム塩が30体積%超)であると、粘度が高くなり非水電解液としての使用に適さなくなる可能性がある。逆に、PCが90体積%超(第4級アンモニウム塩が10体積%未満)であると、第4級アンモニウム塩の使用によるPCの分解抑制効果を十分に得ることができなくなる可能性がある。
【0012】
[3]前記炭素導電剤がアセチレンブラック(AB)であることを特徴とする上記手段1または2に記載の電気二重層キャパシタ。
【0013】
従って、手段3に記載の発明によると、炭素導電剤として具体的にABを選択することで、耐過充電特性をより確実に向上することができるとともに、正極や負極の導電性向上に伴って大電流放電が期待できるようになる。
【0014】
[4]前記活性炭が椰子殻活性炭であることを特徴とする上記手段1乃至3のいずれか1項に記載の電気二重層キャパシタ。
【0015】
従って、手段4に記載の発明によると、活性炭として具体的に椰子殻活性炭を選択することで、耐過充電特性をより確実に向上することができる。
【発明の効果】
【0016】
以上詳述したように、手段1〜4に記載の発明によると、耐過充電特性に優れた電気二重層キャパシタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明を具体化した一実施形態のコイン型の電気二重層キャパシタを示す概略断面図。
【図2】実施例で行った評価試験の結果(放電容量維持率と保存日数との関係)を示すグラフ。
【図3】実施例で行った評価試験の結果(内部抵抗の相対値と保存日数との関係)を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明をコイン型の電気二重層キャパシタに具体化した実施の形態を図1に基づき詳細に説明する。
【0019】
図1に示されるように、本実施形態の電気二重層キャパシタ11は、非水電解液電気化学素子の一種であって、電気二重層という物理現象を利用して電荷を蓄えるタイプのデバイスである。この電気二重層キャパシタ11は、正極端子を兼ねる有底円筒状の正極缶(第1外装金属)12と、負極端子を兼ねる有底円筒状の負極缶(第2外装金属)13とを備えている。正極缶12及び負極缶13はともにステンレス製であり、これら部材により1つの容器17が構成されている。正極缶12の外縁部と負極缶13の外縁部との間には、隙間を密封封止するための合成樹脂製のガスケット15が挟み込まれて、かしめ付けられている。なお、本実施形態ではPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)樹脂製のガスケット15が使用されている。正極缶12及び負極缶13により形成される収容空間14内には、円盤状をした正極21(即ち、一方の分極性電極)、同じく円盤状をした負極22(即ち、他方の分極性電極)、セパレータ23が配置されている。正極21は正極導電塗料26上に支持されており、その正極導電塗料26を介して正極缶12の内面に接触するように設けられている。負極22は負極導電塗料27上に支持されており、その負極導電塗料27を介して負極缶13の内面に接触するように設けられている。セパレータ23は正極21と負極22とを隔離すべくそれらの間に介在されている。
【0020】
この電気二重層キャパシタ11における正極21及び負極22は、活物質としての活性炭と、炭素導電剤と、結着剤とを含む混合物となっている。ここで、活性炭としては、例えば、おが屑、椰子殻、ピッチ等に賦活処理を施して得られる粉末状活性炭を用いることができる。また、フェノール系、レーヨン系、アクリル系、ピッチ系等の繊維に不融化及び炭化賦活処理を施した活性炭を用いることもできる。これらのなかでも、椰子殻活性炭を選択することが特に好適である。
【0021】
炭素導電剤としては、例えば、鱗片状黒鉛や土状黒鉛等の天然黒鉛、人工黒鉛、カーボンブラック、炭素繊維等を用いることができる。なかでも、導電性カーボンブラック類を使用することが好ましい。その具体例としては、チャンネルブラック、オイルファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等があるが、加電圧時に溶出するような不純物が少ないという点でアセチレンブラック(AB)を選択することが特に好ましい。その他、カーボンナノチューブ等の炭素材料を炭素導電剤として用いることも可能である。
【0022】
結着剤(バインダ)としては、電気二重層キャパシタ11において一般に使用されている公知の樹脂材料であって、非水電解液に不溶のものを広く用いることができる。具体的には、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリフッ化ビニル(PVF)、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体(FEP)、ポリビニルピロリドン、ポリビニルクロリド、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリイミド(PI)、ポリアミド(PA)、ポリフルオロエチレンプロピレン、スチレンブタジエンゴム(SBR)、カルボキシメチルセルロース、フッ素ゴム等を用いることができる。
【0023】
そして、正極21及び負極22は、活性炭、導電剤、結着剤を混合したものを乾燥及びプレスして圧着作製することができる。
【0024】
この電気二重層キャパシタ11におけるセパレータ23は、非水電解液が通過しやすいこと、絶縁体であること、化学的に安定であること、という要件を満たす材料であれば特に制限されず、自由に選択することができる。その好適例としては、例えば、レーヨン系抄紙、ポリオレフィン系多孔質フィルム、ポリエチレン不織布、ポリプロピレン不織布、ガラス繊維不織布、セルロース等を挙げることができる。セパレータ23の厚みは限定されないが、例えば10μm〜250μm程度であることがよい。
【0025】
この電気二重層キャパシタ11における電解液としては、有機溶媒としてのPCと、当該PCよりも体積比で少量の第4級アンモニウム塩とを含む非水系の電解液を使用する必要がある。
【0026】
PCは、環状炭酸エステルの一種であって、耐高電圧タイプの有機溶媒としてよく用いられている。非水電解液における有機溶媒としては、PC1種類のみを用いることが好ましいが、他の有機溶媒との併用を完全に妨げるものではない。即ち、PCに比べて体積比でかなり少量(例えば数分の1以下)であれば、エチレンカーボネート(EC)、ブチレンカーボネート(BC)、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、γ−ブチロラクトン、2メチル−γ−ブチロラクトン、アセチル−γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−エトキシエタン、ジエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジアルキルエーテル、ジエチレングリコールジアルキルエーテル、トリエチレングリコールジアルキルエーテル、テトラエチレングリコールジアルキルエーテル、ジプロピルカーボネート、メチルエチルカーボネート、メチルブチルカーボネート、エチルプロピルカーボネート、ブチルプロピルカーボネート、プロピオン酸アルキルエステル、マロン酸ジアルキルエステル、酢酸アルキルエステル、テトラヒドロフラン(THF)、アルキルテトラヒドロフラン、ジアルキルテトラヒドロフラン、アルコキシテトラヒドロフラン、ジアルコキシテトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、アルキル−1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキソラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジメチルスルフォキシド、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ジオキソラン、アセトニトリル、ニトロメタン、蟻酸メチル、酢酸メチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、リン酸トリエステル、無水マレイン酸、スルホラン、3−メチルスルホラン等と、組み合わせて用いることが許容される。
【0027】
第4級アンモニウム塩は、イオン液体としての性質を有する塩の一種である。「イオン液体」とは、一般に室温でも液体で存在する有機塩のことを指し、常温溶融塩(あるいは室温溶融塩)とも呼称されている。一般的にイオン液体は、優れた耐熱性を有する、不燃性を有する、粘度が比較的低い、支持電解質を加えなくても通電可能である、電位窓が広い、イオン伝導性が高い、というように電気化学素子材料として好ましい諸特性を有している。
【0028】
第4級アンモニウム塩としては、例えば、ピラゾリウム塩、ピリジニウム塩、トリアゾリウム塩、ピリダジニウム塩、テトラアルキルアンモニウム塩、イミダゾリウム塩、などがある。なお、以下に挙げる第4級アンモニウム塩は1種類のみを使用してもよいほか、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0029】
ピラゾリウム塩としては1,2−ジメチルピラゾリウムテトラフルオロボレート、1−メチル−2−エチルピラゾリウムテトラフルオロボレート、1−プロピル−2−メチルピラゾリウムテトラフルオロボレート、1−メチル−2−ブチルピラゾリウムテトラフルオロボレートなどを例示することができる。
【0030】
ピリジニウム塩としては、N−メチルピリジニウムテトラフルオロボレート、N−エチルピリジニウムテトラフルオロボレート、N−プロピルピリジニウムテトラフルオロボレート、N−ブチルピリジニウムテトラフルオロボレートなどを例示することができる。トリアゾリウム塩としては、1−メチルトリアゾリウムテトラフルオロボレート、1−エチルトリアゾリウムテトラフルオロボレート、1−プロピルトリアゾリウムテトラフルオロボレート、1−ブチルトリアゾリウムテトラフルオロボレートなどを例示することができる。
【0031】
ピリダジニウム塩としては、1−メチルピリダジニウムテトラフルオロボレート、1−エチルピリダジニウムテトラフルオロボレート、1−プロピルピリダジニウムテトラフルオロボレート、1−ブチルピリダジニウムテトラフルオロボレートなどを例示することができる。
【0032】
テトラアルキルアンモニウム塩としては、テトラエチルアンモニウムテトラフルオロボレート、テトラメチルアンモニウムテトラフルオロボレート、テトラプロピルアンモニウムテトラフルオロボレート、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレート、トリエチルメチルアンモニウムテトラフルオロボレート、トリメチルエチルアンモニウムテトラフルオロボレート、ジメチルジエチルアンモニウムテトラフルオロボレート、トリメチルプロピルアンモニウムテトラフルオロボレート、トリメチルブチルアンモニウムテトラフルオロボレート、ジメチルエチルプロピルアンモニウムテトラフルオロボレート、メチルエチルプロピルブチルアンモニウムテトラフルオロボレート、N,N−ジメチルピロリジニウムテトラフルオロボレート、N−エチル−N−メチルピロリジニウムテトラフルオロボレート、N−メチル−N−プロピルピロリジニウムテトラフルオロボレート、N−エチル−N−プロピルピロリジニウムテトラフルオロボレート、N,N−ジメチルピペリジニウムテトラフルオロボレート、N−メチル−N−エチルピペリジニウムテトラフルオロボレート、N−メチル−N−プロピルピペリジニウムテトラフルオロボレート、N−エチル− N−プロピルピペリジニウムテトラフルオロボレート、N,N−ジメチルモルホリニウムテトラフルオロボレート、N−メチル−N−エチルモルホリニウムテトラフルオロボレート、N−メチル−N−プロピルモルホリニウムテトラフルオロボレート、N−エチル−N−プロピルモルホリニウムテトラフルオロボレートなどを例示することができる。
【0033】
イミダゾリウム塩としては、1,3−ジメチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1,3−ジエチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1,2−ジメチル−3−エチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウムテトラフルオロボレートなどを例示することができる。
【0034】
カチオンとして第4級アンモニウムイオンを含むイオン液体におけるアニオンは、特に限定されず、上記のテトラフルオロホウ酸イオン以外のものから選択することもできる。上記アニオンの具体例としては、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、チオシアン酸イオン、有機ホウ酸イオンなどがある。
【0035】
非水電解液におけるPC及び第4級アンモニウム塩の比率(体積比)は、70:30〜90:10であることが好ましく、特には75:25〜85:15であることがより好ましい。その理由は、PCが70体積%未満(第4級アンモニウム塩が30体積%超)であると、粘度が高くなり非水電解液としての使用に適さなくなる可能性があるからである。逆に、PCが90体積%超(第4級アンモニウム塩が10体積%未満)であると、第4級アンモニウム塩の使用によるPCの分解抑制効果を十分に得ることができなくなる可能性があるからである。
【0036】
以下、本実施形態を具体化した実施例について説明する。
【実施例】
【0037】
ここでは、表1に示すように、下記の8種類の電気二重層キャパシタ11を実際に作製した。
【0038】
実施例1の電気二重層キャパシタ11は、基本的に図1に示す構造を有している。正極21及び負極22としては、椰子殻活性炭、炭素導電剤としてのAB、結着剤としてのFEPを90:5:5の体積比で混合したもの出発材料とした。これらを混合したものを乾燥及びプレスして正極21及び負極22をそれぞれ圧着作製した。これを、有機溶剤とともにペースト状にした正極導電塗料26、負極導電塗料27と接触するように容器17内に配置した。電気二重層キャパシタ11のセル外寸は、直径4.8mmφ×全高1.4mmとした。非水電解液としては、有機溶媒としてのPCと、イオン液体である第4級アンモニウム塩(アニオン:テトラフルオロホウ酸イオン、カチオン:イミダゾリウムイオン)との混合物を用い、その体積比を70:30とした。
【0039】
実施例2の電気二重層キャパシタ11では、非水電解液を構成するPCと上記第4級アンモニウム塩との体積比を80:20とし、それ以外の事項については実施例1と同様とした。
【0040】
実施例3の電気二重層キャパシタ11では、非水電解液を構成するPCと上記第4級アンモニウム塩との体積比を90:10とし、それ以外の事項については実施例1と同様とした。
【0041】
比較例1の電気二重層キャパシタ11では、非水電解液を構成するPCと上記第4級アンモニウム塩との体積比を20:80とし、それ以外の事項については実施例1と同様とした。
【0042】
比較例2の電気二重層キャパシタ11では、非水電解液を構成するPCと上記第4級アンモニウム塩との体積比を50:50とし、それ以外の事項については実施例1と同様とした。
【0043】
比較例3の電気二重層キャパシタ11では、非水電解液を構成する有機溶媒をECに変更し、ECと上記第4級アンモニウム塩との体積比を80:20とし、それ以外の事項については実施例1と同様とした。
【0044】
比較例4の電気二重層キャパシタ11では、非水電解液を構成する有機溶媒をスルホランに変更し、スルホランと上記第4級アンモニウム塩との体積比を80:20とし、それ以外の事項については実施例1と同様とした。
【0045】
比較例5の電気二重層キャパシタ11では、現行品であるPCベースの有機溶媒(支持電解質としてLiClOを含む)を使用して第4級アンモニウム塩を全く含まない非水電解液とし、それ以外の事項については実施例1と同様とした。
【0046】
そして、上記構成の実施例1〜3及び比較例1〜5の電気二重層キャパシタ11を各々50個程度作製し、最高温度240℃のリフロー炉に投入した。次いで、常温常湿で24時間放置した後、試験前の放電容量と内部抵抗とを測定した。次に、長期保存時の耐過充電特性を調べるための試験として、高温環境下(60℃)にて3.3Vの電圧で連日充電を行った。その際、10日おきに放電容量と内部抵抗とを測定し、平均値を求めた。その結果を表1に示す。また、実施例2及び比較例5についての放電容量の保存による推移を図2のグラフに示し、内部抵抗の保存による推移を図3のグラフに示す。
【表1】

【0047】
表1、図2から明らかなように、実施例1〜3では放電容量の低下が比較的小さかった。特に実施例2では放電容量の低下が極めて小さくて、しかも放電容量が急激に低下するようなこともなかった。また、これらのものにおいては、容器17の膨れ等も認められなかった。つまり、実施例1〜3のものは、優れた耐過充電特性を備えていることがわかった。これに対して、比較例1,2では放電容量の低下が比較的大きかった。比較例5では放電容量の低下が最も多く、放電容量の急激な低下も認められた。そのため、比較例1,2,5は、実施例1〜3ほど優れた耐過充電特性を備えていないことが明らかであった。ちなみに、比較例5の一部のものについては、容器17の膨れ等が認められた。なお、比較例4では、非水電解液の粘度が高くなりすぎてしまい(振動式粘度計で28℃にて測定したときの粘度が16.4mPa・sとなり)、非水電解液として使用できなかった。また、比較例3では、前記粘度計で28℃にて測定したときの粘度が4.41mPa・sであったが、スルホラン(及びEC)は常温下(23℃下)で結晶化するため粘度に関わらず非水電解液として使用困難なものであった。その点、例えば実施例1〜3のものについては、非水電解液の粘度が高くなりすぎることもなく(前記条件で常温下にて測定したとき、6.1mPa・s〜12.4mPa・s)、非水電解液としての使用に好適なものであった。
【0048】
また、実施例2では内部抵抗の上昇が比較的穏やかであったのに対し、比較例5では比較的早期から内部抵抗の急激な上昇が認められた(図3参照)。
【0049】
従って、本実施の形態によれば以下の効果を得ることができる。
(1)本実施形態の電気二重層キャパシタ11では、上記組成の非水電解液を用いた結果、過充電時においてもPCの分解が効果的に抑制されるので、キャパシタ内のガス発生が抑制される。よって、容器17の膨れが防止されるとともに、放電容量の急激な低下や内部抵抗の急激な上昇も防止される。従って、耐過充電特性を向上することができる。また、PCと当該PCよりも体積比で少量の第4級アンモニウム塩とを含む非水電解液は、粘度がそれほど高くならないため、非水電解液としての使用に好適な性状を有するものとすることができる。また、本実施形態では、正極21及び負極22の両方が活性炭と炭素導電剤とを含む混合物からなるものとしている。そして、これらが上記組成の非水電解液の下で機能することも、耐過充電特性の向上を図るうえで貢献していると考えられる。
【0050】
(2)また、本実施形態の電気二重層キャパシタ11では、PC及び第4級アンモニウム塩の体積比を上記好適範囲内にて設定している。従って、非水電解液としての好適な性状を保持しつつ耐過充電特性を確実に向上することができる。
【0051】
(3)本実施形態の電気二重層キャパシタ11では、炭素導電剤としてABを用いているため、耐過充電特性をより確実に向上することができる。また、正極21や負極22の導電性が向上するため、これに伴って大電流放電が期待できるようになる。加えて、活性炭として椰子殻活性炭を用いているため、耐過充電特性をより確実に向上することができる。しかも、本実施形態の電気二重層キャパシタ11によれば、個々の構成材料についてリフロー時の温度(230℃〜270℃)に耐えうるものを選択しているので、耐熱性に優れたものとすることができる。言い換えると、本実施形態によれば、耐過充電特性に優れた高品質なリフロー用の電気二重層キャパシタ11を実現することができる。
【0052】
なお、本発明の各実施の形態は以下のように変更してもよい。
【0053】
・上記実施形態では、本発明をコイン型の電気二重層キャパシタとして具体化したが、これに代えて円筒型の電気二重層キャパシタ、角型の電気二重層キャパシタ、ラミネート型の電気二重層キャパシタとして具体化してもよい。
【0054】
・上記実施形態では、正極21及び負極22の両方について椰子殻活性炭と炭素導電剤であるABとを含む混合物からなるものとしたが、正極21のみまたは負極22のみを上記混合物からなるものとしてもよい。
【0055】
次に、特許請求の範囲に記載された技術的思想のほかに、前述した各実施の形態によって把握される技術的思想を以下に列挙する。
(1)上記手段1乃至4のいずれか1項において、前記電気二重層キャパシタはリフロー用の電気二重層キャパシタであること。
(2)上記手段1乃至4のいずれか1項において、前記電気二重層キャパシタはコイン型をしたリフロー用の電気二重層キャパシタであること。
(3)容器内に正極、負極、セパレータ及び非水電解液を収容した電気二重層キャパシタにおいて、前記正極及び前記負極の両方が、椰子殻活性炭と炭素導電剤であるアセチレンブラックとを含む混合物からなり、前記非水電解液が、有機溶媒としてのプロピレンカーボネート及び第4級アンモニウム塩を70:30〜90:10の体積比で含むことを特徴とする電気二重層キャパシタ。
【符号の説明】
【0056】
11…電気二重層キャパシタ
17…容器
21…正極
22…負極
23…セパレータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器内に正極、負極、セパレータ及び非水電解液を収容した電気二重層キャパシタにおいて、
前記正極及び前記負極のうちの少なくとも一方が活性炭と炭素導電剤とを含む混合物からなり、前記非水電解液が、有機溶媒としてのプロピレンカーボネートと、前記プロピレンカーボネートよりも体積比で少量の第4級アンモニウム塩とを含むことを特徴とする電気二重層キャパシタ。
【請求項2】
前記非水電解液が、前記プロピレンカーボネート及び前記第4級アンモニウム塩を70:30〜90:10の体積比で含むことを特徴とする請求項1に記載の電気二重層キャパシタ。
【請求項3】
前記炭素導電剤がアセチレンブラックであることを特徴とする請求項1または2に記載の電気二重層キャパシタ。
【請求項4】
前記活性炭が椰子殻活性炭であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の電気二重層キャパシタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−212741(P2012−212741A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−76906(P2011−76906)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000177081)FDK鳥取株式会社 (28)
【Fターム(参考)】