説明

電気二重層用キャパシタ電極及びそれを用いた電気二重層キャパシタ

【課題】電気二重層キャパシタの長期性能低下等に悪影響を及ぼす水分が電気二重層キャパシタ内に混入することを防止する分極性電極及び電気二重層キャパシタを提供する。
【解決手段】電気二重層キャパシタにおける分極性電極24において、該分極性電極24の上層に水分吸着層25を積層する。前記水分吸着層25を構成する水分吸着剤は、孔径0.4nm以下、粒径10μm以下の水分吸着材料であり、該水分吸着材料を300℃以上の温度で活性化処理した後、有機溶剤及び有機溶剤系バインダによりスラリーとし、該スラリーを前記分極性電極24上に塗布、乾燥して形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は分極性電極を有する電気二重層キャパシタ用電極の構造とその電極を用いた電気二重層キャパシタに関する。
【背景技術】
【0002】
電気二重層キャパシタで有機系の電解液を用いたものの代表的なものに筒型のセルがある。
【0003】
この筒型の代表的な構造を図2に示す。
正極となる複数枚のシート状の分極性電極1と負極となる複数枚のシート状の分極性電極2はセパレータ3を介在させた状態で、交互に積層され、電解液4を含浸させた状態で、筒形の金属製のケース5内に収容されている。
なお、分極性電極1、2は活性炭を主成分としたカーボンブラックの微粉やバインダを混合してシ−ト状に形成された活性炭シートをアルミ箔製の集電体に接着させて構成されている。
【0004】
そして、前記各分極性電極1はリード線6に、各分極性電極2はリード線7にそれぞれ接続され、それらリード線6及び7が、合成樹脂製の端子台8に設けられた正極端子9及び負極端子10にそれぞれ接続されている。
また、端子台8にはケース5内の内部圧力が増大すると開く圧力放出弁12が取り付かられている。
【0005】
前記分極性電極1,2等は、真空加熱乾燥機により乾燥された後、真空チャンバー内に収納され、そのチャンバー内が真空にされた後に高純度の窒素ガス雰囲気とされ、その中でケース11内に組付けられ、更に電解液4が注入され、端子台8が取付けられるようになっている。なお、この場合、前記電解液4としては有機系電解液、例えば溶媒としてのプロピレンカーボネート(PC)に、電解質としてのテトラエチルアンモニウム・テトラフルオロボレート(EtNBF)を溶解したものが用いられる。
【0006】
上記分極性電極1,2の材質としては、粒径20〜30μmの活性炭粉末に、粒径数μmのメソカーボンを混合して、焼結成形したものが知られている(例えば特許文献1参照)。活性炭は、その表面に、0.1nm〜100nmと非常に小さい無数のポアと呼ぶ穴が存在するため、2000〜3000m/gもの広い表面積を有している。電気二重層キャパシタは、この膨大な比表面積を利用して、従来のコンデンサには見られない大きな静電容量を得ている。
【0007】
しかし、上記分極性電極1,2を構成する活性炭のポアは、環境中に存在する水蒸気やガスなども吸着してしまうことがあり、またそのような活性炭による吸着以外にも、いくつかの要因で電気二重層キャパシタ内に水(水蒸気)が供給されてしまう問題がある。この水の混入が、電気二重層キャパシタの寿命を著しく低下させる(劣化により静電容量が短期間で低下する)ことが、明らかとなっている。
【0008】
以上のような活性炭の水分吸着等の問題を解決するため、特許文献2では吸着剤(モレキュラシ−ブ4A等)をセパレータやその他セル内の部品に混合することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平03−201516号公報
【特許文献2】特開2004−193251号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところが、上記特許文献2において用いられる吸着剤によると、吸着剤の使用段階において、既に水分を吸着した状態にあり、水分吸着性能はあまり高くないと考えられる。さらに、吸着剤をセパレータや分極性電極内に混合する工程で、水を分散媒として用いているため、折角の吸着剤の吸着性能が著しく低下するという問題がある。
【0011】
従って、本発明は上記電気二重層キャパシタ内における水分による悪影響をさらになくすキャパシタ用電極及びそれを用いた電気二重層キャパシタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
以上の課題に鑑み、本発明は、分極性電極を有する電気二重層キャパシタ用電極において、前記分極性電極の上層に水分吸着層を積層することを特徴としている。
【0013】
また、より具体的には、前記分極性電極の上層に積層する水分吸着層を構成する水分吸着剤は、孔径0.4nm以下、粒径μm以下の水分吸着材料であり、該水分吸着材料を300℃以上の温度で活性化処理した後、有機溶剤及び有機溶剤系バインダによりスラリーとし、該スラリーを前記分極性電極上に塗布、乾燥して形成されてなることを特徴としている。
【0014】
また、以上の電気二重層キャパシタ用電極を用いた電気二重層キャパシタであることを特徴としている。
【0015】
なお、上記した水分吸着剤としては、モレキュラーシーブ(商品名)〔A型ゼオライト〕等を採用することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によると、水分吸着材料を活性化処理した後、有機溶剤及び有機溶剤系バインダによりスラリーとして、水分吸着剤を作製し、分極性電極上に塗布、乾燥するので、水との接触がほとんどなく、したがって、水分吸着能が高い状態を保持したまま分極性電極上に水分吸着層を積層できる。
また、分極性電極を構成する活性炭に水分(水蒸気)などが吸着することがないので、電気二重層キャパシタの寿命が著しく低下することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る電気二重層キャパシタ用電極の概略図である。
【図2】従来の電気二重層キャパシタの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施の形態について添付の図に基づいて説明する。
1.電気二重層キャパシタ用電極
図1は本発明に係る電気二重層キャパシタ用電極の概略図を示す。
【0019】
本発明の電気二重層キャパシタ用電極21はアルミ箔製の集電体22上にスラリー状の活性炭を塗布した活性炭層23からなる分極性電極24の活性炭層23上に塗布した水分吸着剤を主成分とする水分吸着層25から構成されている。
【0020】
前記水分吸着剤は孔径0.4nm以下、粒径10μm以下の水分吸着材料であり、例えばモレキュラーシーブ(A型ゼオライト)である。
【0021】
前記電気二重層キャパシタ用電極21の作製方法としては、水分吸着材料を300℃以上の温度で活性化処理した後、有機溶剤及び有機溶剤系バインダによりスラリーとし、該スラリーを前記分極性電極24上に塗布、乾燥して作製する。
【0022】
なお、乾燥の過程で、有機溶剤系バインダに対して貧溶媒であるアルコール(プロパノールやブタノール)等に浸漬し、水分吸着層を多孔質にしてもよい。
【0023】
以下、水分吸着層を有する場合と有しない場合の電気二重層キャパシタ電極およびそれを用いた電気二重層キャパシタの作製方法及び性能試験結果について説明する。
【0024】
(実施例1)
(1)分極性電極の作製
ヤシガラ活性炭100重量部、アセチレンブラック5重量部、カルボキシメチルセルロース及びスチレンブタジエンゴムのそれぞれ3重量部を適量の蒸留水で分散混合した分散液の3種類を混合したスラリーを、電解エッチングを施したアルミ箔集電体22上に塗布乾燥し、厚さ50μmの分極性電極24を作製した。
【0025】
(2)水分吸着層の形成
粉末状(粒径10μm以下)のモレキュラーシーブ3Aを300℃にて8時間熱処理し、窒素雰囲気下で冷却した後、n-メチルピロドロン(NMP)にポリビニリデンフルオイド(PVDF)を溶解させた溶液と混合し、有機溶剤系のスラリーを作製した後、前記分極性電極24上に塗布し、厚み30μmの水分吸着層25を形成した。
【0026】
(3)電気二重層キャパシタセルの作製
前記分極性電極24上に前記水分吸着層25を積層した電気二重層キャパシタ用電極21を2枚対抗させ、市販のセルロース製セパレータを挟んで積層し、引き出し用の外部電極を取り付けた後、アルミラミネートパックし、電解液としてトリエチルメチルアンモニウムテトラフルオロボートをプロピレンカーボネート溶媒に溶解させたもの(TEMA・BF4/PC)を注液し、封止して電気二重層キャパシタセルを製作した。
【0027】
(比較例1)
実施例1と同様な方法で分極性電極24を作製した後、水分吸着層25を形成しないで、電気二重層キャパシタ用電極とし、電気キャパシタセルを作製した。
【0028】
(比較例2)
(1)分極性電極の作製
ヤシガラ活性炭100重量部、アセチレンブラック5重量部、あらかじめ300℃にて8時間熱処理した粉末状(粒径10μm以下)のモレキュラーシーブ3A重量部、カルボキシメチルセルロース及びスチレンブタジエンゴムをそれぞれ4重量部を適量の蒸留水で分散混合した分散液の4種を混合したスラリーを、電解エッチングを施したアルミ箔上に塗布乾燥し、厚さ50μmの分極性電極24を作製した。
【0029】
(2)電気二重層キャパシタセルの作製
前記分極性電極24を用い、実施例1と同様の方法で電気二重層キャパシタセルを作製した。
【0030】
以上の実施例1及び比較例1及び2の電気二重層キャパシタセルについて60℃、2.5Vにて1000時間課電した後の静電容量の変化を調べ初期値に対する低下率を調べた。その結果を以下に示す。
【0031】

低下率
実施例1 3%
比較例1 10%
比較例2 6%

【0032】
以上の結果、本発明の水分吸着層25を積層した分極性電極を用いた電気二重層キャパシタセルの静電容量の劣化率が低いことわかる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
長期性能低下を抑えることのできる電気二重層キャパシタとして利用できる。
【符号の説明】
【0034】
1、2 分極性電極
3 セパレータ
4 電解液
5 ケース
6、7 リード線
8 端子台
9 正極端子
10 負極端子
11 ガスケット
12 圧力放出弁
21 電気二重層キャパシタ電極
22 集電体
23 活性炭層
24 分極性電極
25 水分吸着層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分極性電極を有する電気二重層キャパシタ用電極において、前記分極性電極の上層に水分吸着層を積層することを特徴とする電気二重層キャパシタ用電極。
【請求項2】
前記水分吸着層を構成する水分吸着剤は、孔径0.4nm以下、粒径10μm以下の水分吸着材料であり、該水分吸着材料を300℃以上の温度で活性化処理した後、有機溶剤及び有機溶剤系バインダによりスラリーとし、該スラリーを前記分極性電極上に塗布、乾燥して形成してなる請求項1に記載のキャパシタ用電極。
【請求項3】
請求項1及び2に記載のキャパシタ用電極を用いた電気二重層キャパシタ。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−182263(P2012−182263A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−43450(P2011−43450)
【出願日】平成23年3月1日(2011.3.1)
【出願人】(000003942)日新電機株式会社 (328)
【Fターム(参考)】